説明

回路基板、回路基板形成用インキおよび回路基板の形成方法

【課題】基板上に、スクリーン印刷法やインクジェット法では達成できなかった線幅サブμm〜20μmの導電性回路を高い信頼性をもって形成すること。
【解決手段】前記絶縁性基板上に、パラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子とバインダ樹脂を含むインキで厚さが5nm〜5μmの回路パターンを形成し、その上に金属めっき層を形成して導電回路パターンとする。これによって、線幅サブμm〜20μmの所望の精細度の導電性回路を高い信頼性をもって一度に作製することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属微粒子を用いた配線回路、アンテナ回路、電磁波シールド膜、インダクター、コンデンサー、電極などの回路基板、この回路基板の形成に用いる回路基板形成用インキ及びこの回路基板形成用インキを用いた前記回路基板の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基体上に導電回路の形成された回路基板を形成する方法としては、次のような方法が知られている。
(1)銅張り積層板上に、フォトレジスト膜を被覆し、フォトリソグラフィー法により回路パターンを露光し、未露光部フォトレジスト膜の溶解除去− 除去部の銅のエッチング除去− 露光部のフォトレジスト膜除去、のプロセスにより銅線パターンを形成する方法
(2)絶縁性基体上にスクリーン印刷法により導電性ペーストにより所望の回路パターンを印刷し、非酸化雰囲気中で熱処理して導電ペースト中の金属粒子どうしが接触した状態で熱硬化膜を形成して導電性パターンを形成する方法
(3)絶縁性基体上に、金属薄膜を蒸着し、上述のフォトリソグラフィー法により導電性パターンを形成する方法
(4)絶縁性基体上にインクジェット法により金属微粒子を含むインクで回路パターンを直接印刷する方法
【0003】
しかしながら、(1)の銅張り積層板のフォトリソグラフィー法による回路基板の形成方法は、幅広の配線パターンを形成する目的には適しているが、高精細パターンの形成には不向きである。また、レジストの溶解や銅箔のエッチングなど、配線パターンを得るまでの工程が複雑になって、設備費や生産コストがかさむという問題点がある。さらにまた、大部分の銅を溶解し去るので銅資源が無駄に消費されるだけでなく、廃液の処理が必要で、環境上の問題が派生するおそれがある。
【0004】
(2)のスクリーン印刷による方法は、スクリーンメッシュの強度の問題から、50μm以下の細線パターンを得ることが難しく、今後ますます高まりつつあるパターンの高精細化に対応することが難しい。
【0005】
(3)の蒸着薄膜をエッチングする方法は、製造工程が銅張り積層板とほぼ同じであり、細線パターンを得るには適しているものの、設備、生産コスト、環境問題における問題点の解決が要求されている。
【0006】
さらに、(4)のインクジェット法は、細線パターンの作製、製造工程の簡素化においては前三者による問題点を解決することができるが、一度の印字で形成される金属粒子膜が薄く、必要な膜厚を得るために複数回重ね合わせて印字が必要なこと、スループットを確保するには大掛かりな装置が必要なこと、さらに高速度で信頼性のある細線パターンを連続して描画するためのインクジェットヘッドが必要であること、インクジェットで描画できるパターンには限度があり、線幅20μm以下の細線描画が困難であること、また線間が狭くなるにつれてサテライト粒子が致命的な問題となってくるという問題点がある。
【0007】
このため、これらの回路基板の形成方法には、今後要求される高精細回路基板の実現にあたって、さらなる技術的改良が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したとおり、従来から行われてきた銅張り積層板による方法、蒸着薄膜にフォトリソグラフィー法を応用した方法、スクリーン印刷やインクジェットによる導電性パターンの作製法によっては、高精細パターンの作製、プロセスの簡略化、環境負荷の軽減、信頼性確保などの課題を解決し高信頼性で高速かつ連続生産が可能な回路基板の形成方法は実現されていない。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、従来得られなかった高精細パターンの形成が可能で、生産工程を簡素化することができる回路基板を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、この回路基板の形成に用いられる回路基板形成用インキ及びこの回路基板形成用インキを用いた従来法に比較して環境負荷がほとんどないか、環境負荷を著しく軽減した回路基板の形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、形成された高精細パターンの欠落などを起こさず、十分な導電性を示す高信頼性の導電性回路を高速かつ連続して製造できる前記回路基板形成用インキを用いた回路基板の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の回路基板は、絶縁性基体上に、導電回路が形成されてなる回路基板において、前記導電回路が、前記絶縁性基体上に形成された、少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子とバインダ樹脂を含むインキにより形成された厚さが5nm〜5μmの導電回路パターンと、前記導電回路パターン上に形成された金属めっき層とからなることを特徴とする。
【0013】
本発明に使用される絶縁性基体としては、無機、有機いずれのものでもよく、その形状はモールド品のような固形状のもの、板状のもの、あるいはフィルム状のもの、のいずれであってもよい。このような絶縁性基体としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネート基板、アクリル基板、ガラスエポキシ基板、紙―フェノール基板、セラミックス基板、シリコーン基板、ガラス基板、エポキシ樹脂モールド品、フェノール樹脂モールド品、液晶樹脂モールド材品、熱可塑性樹脂とガラス繊維のような有機バインダと無機フィラーからなるモールド品、などが例示される。また、これらの絶縁性基体の表面にインキ層を保持させるための5nm〜10μmの細孔を形成してアンカー効果より回路パターンの密着性を高めることもできる。このような細孔は、絶縁性基体の表面に、基体物質そのもの、あるいは他の有機物化合物、無機化合物あるいはその複合体からなる厚み1μm以上の層として形成することができる。このような細孔層は、たとえばバインダ樹脂溶液に有機あるいは無機の微粒子を分散させた塗料を絶縁性基体表面に塗布・乾燥することによって容易に形成することができ、微粒子の粒径とバインダ樹脂との比率を変えることによってその大きさと密度を調節することができる。また、絶縁性基体がガラスエポキシ樹脂基板やフェノール樹脂含浸紙のように、もともと基体の繊維間に細孔が存在するものである場合には、含浸させるバインダ樹脂の量を調節して細孔を形成させるとともに、その大きさと密度を制御することもできる。さらに、絶縁性基体がたとえばガラス板のような場合には、その表面にフッ化水素酸の蒸気を接触させて表面を梨地処理するようなエッチング法によっても細孔を形成することが可能である。
【0014】
さらに、細孔を有する絶縁性基体と細孔のない基体を積層して複合絶縁性基体として使用することも可能である。たとえばガラスやアルミナなどの無機材料基体上に上記した各種有機フィルムの薄層を設け、この薄層上に細孔を形成した絶縁性基体を積層して用いることができる。また、有機の絶縁性基体の上に、細孔が形成された別の有機絶縁層を塗布あるいは貼り合わせて表面に細孔を形成するようにしてもよい。
【0015】
この細孔表面には、金属粒子が付着し、次いで金属めっき層により細孔が充填されるため、細孔径が大きすぎると導電性回路を形成するのに多大の時間を要するだけでなく、得られたメッキ層の基体表面への接着力も弱くなる。したがって、接着力のあるメッキパターンを迅速に得るための細孔の大きさは 5nm〜10μm 程度、望ましくは50nm〜5μmの範囲となるように調節される。
【0016】
本発明に係る回路基板に配線パターン形成には、Pd、又はPdとAu, Pt, Ag, Cu, Ni, Cr, Rh, Pd, Zn, Co, Mo, Ru, W, Os, Ir, Fe, Mn, Ge, Sn, Ga, Al, Ti, V, Taおよび In から選ばれた少なくとも1種の金属コロイドからなる回路基板形成用インキが用いられる。
【0017】
上記の金属コロイドは、蒸着あるいはスパッターして得られた金属粒子のクラスター、有機金属粒子を分解して析出させた金属微粒子、あるいは金属イオンを含む溶液中に還元剤を添加したときに発生する金属微粒子などに保護膜を被覆して作製した保護コロイドが用いられる。この保護コロイドは、粒径は0.5〜300 nm 、望ましくは 1〜100 nmであって、水または有機溶剤中で極めて安定に分散している。これらの保護コロイドのうち、 金属イオンを含む溶液中に還元剤を添加して析出した金属コロイドは、特に水やアルコールあるいはアクリル系モノマーなどの親水性分散媒中に安定な分散体を与える。典型的な保護コロイドは、たとえば硝酸銀の水溶液中に櫛型ポリマーに代表されるような分散剤を共存せしめた中に、第3級アミンを加えて徐々に注下して銀粒子が析出せしめることにより得られる。析出した銀粒子の表面には、ただちに櫛型ポリマーが吸着して保護コロイド層が形成されて、粒径1〜100 nm の粒度範囲で平均粒径20nm程度の粒度分布のシャープな銀微粒子の分散液を容易に得ることができる。得られた銀粒子液は、たとえば限外ろ過によって硝酸イオンおよび余剰の櫛型ポリマーを除去したのち、所望濃度に濃縮して用いる。
【0018】
このようにして得られた金属コロイドの分散性は非常に安定で常温下、密栓状態で1年間以上保存しても凝集あるいは沈殿して固形化するような問題は生じないのみならず、高固形分にしても低粘度を示すので、5nm〜10μmの細孔内に容易かつ均一に浸み込ませることができる。
【0019】
本発明の水性インキは、少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子と、水溶性樹脂又は10nm〜5μm の樹脂粒子を含み、その粘度が1 cP〜200 cPの範囲にあることを特徴とする。
【0020】
金属コロイドは、パラジウムコロイドと他の金属コロイドを混合した複合体として使用される。混合する金属コロイドとしては、Ag, Au, Pt, Ni, Cr, Sn,などが特に望ましい。
【0021】
通常、インク中には金属コロイド粒子が0.01 wt%〜20wt%望ましくは0.5wt%〜5wt%を含有するように調整されるが、これを水やアルコールなどの有機溶剤に分散させたものの粘度は1 cP 以下であり、これを印刷版に塗布して印刷するにはあまりにも低粘度であるため、水溶性樹脂あるいは樹脂エマルションと混合してその粘度を 1 cP〜200 cP の範囲に調節する。
【0022】
このようにして得られた回路基板形成用インキを絶縁性基体上に印刷して乾燥・定着させて得たコロイド膜は全く導電性を示さないが、これをたとえば銅イオンなどの金属イオンを含む金属めっき浴に浸漬すると、著しいめっき触媒能を示し、容易に印刷パターンに応じた導電性回路を得ることができる。上記インキ中に樹脂バインダあるいは樹脂エマルションが混在していても、印刷パターンを乾燥・定着した後のパターン表面には金属コロイド粒子が露出しているため、この露出した金属コロイド粒子が触媒核となってめっきが進行する。金属コロイドのインキ中での含有率が0.01wt%でもこの触媒能が発現するが、0.5 wt% 以上になるとより安定した触媒能が得られるようになる。インキ中の金属コロイド粒子の含有率を20 wt% 以上にすると、印刷パターン上の金属コロイド膜の厚さが増して、めっき膜の剥離強度が低下するようになる。これはめっき膜の剥離が金属コロイド粒子の間で生ずるようになるためと考えられる。したがって、望ましい水溶性インキ注の金属コロイド膜の含有率は0.5 wt%〜5wt%の範囲である。
【0023】
上記インキを絶縁性基体表面に塗布して配線パターンを形成するための印刷版としては、弾性のある凸版が適している。このような凸版は通常フレキソ印刷の印刷版に用いられているが必ずしもこれに限定されるものではない。凸版の表面には基板のインキ吸収量に応じて適量のインキが供給されたのち、この版を絶縁性基体表面に押圧することにより基板上には所望厚みのインキ層を有する配線パターンが印刷される。形成された配線パターンは乾燥後紫外線あるいは熱線を照射して定着する。基板表面に細孔が存在する場合、印刷されたインキ量は、定着時に熱融解して細孔に浸入した樹脂バインダおよび樹脂エマルション量が細孔の吸収能力以上の量となり細孔からあふれ出るような状態とならない量に調節することが望ましい。このようにして得られた乾燥・定着工程後のインキパターン部では、印刷されたパターンの表面上に、あるいは細孔を有する基体上への印刷パターンでは印刷部の細孔の内壁および周囲に、触媒能のある金属コロイド粒子が析出しており、めっき層はこれ等の金属コロイドを核として金属めっき層を形成し、パターンに応じた忠実な導電回路を得ることができる。
【0024】
本発明における金属コロイドはめっき触媒として働くので、全ての金属微粒子が隣接した金属コロイド粒子と接触している必要はなく、多数の金属コロイド粒子が細孔の側面又は底面に所定の密度で、すなわち金属めっきをしたときに金属微粒子上に連続した導電パターンの形成が可能な分布状態で付着していればよい。
【0025】
上記の導電回路形成メカニズムから分かるように、インキの厚みは印刷版の精細度に応じて調節する必要があり、線幅あるいは線間が10μm以下サブμmに至る高精細パターンを印字する版上へのインキ厚は当然これ等の線幅あるいは線間の1/10 以下の厚みとなるように調整される。
【0026】
このようにして基体表面に付着した金属コロイドはその表面を被覆している保護コロイド層が、水溶性樹脂、熱可塑性粒子あるいはワックス粒子からなるため、絶縁性を示していることが多い。しかしながら、この金属コロイド含有層に、加熱あるいは紫外線を照射すると保護コロイド層、水溶性樹脂、熱可塑性粒子あるいはワックス粒子は基板の表面に融着するか、基板表面に細孔が存在する場合には層細孔中に滲み込んでその表面に融着する。その結果、基体表面あるいは細孔の表面では金属コロイドが相互に接触して固形化し、金属コロイドのネットワークないしは金属コロイドの凝集体が析出する。このような金属コロイド層は導電性を示すようになるだけでなく、水や有機溶媒に不溶となるため、例えばめっき浴などに浸漬してもめっき浴中に溶け出してくることがなくなる。この結果、得られたパターン形成基板を無電解めっき浴あるいは電解めっき浴、中に浸漬すると、パターン上に金属めっき層が析出する。上記パターン上への電解めっき膜の形成において、初めに無電解めっき浴中に浸漬してパターンを導電性を高め、しかる後にパターン自体を電極として電解めっきするとめっき速度が著しく増加して信頼性の高い金属めっきパターンを得ることができる。
【0027】
なお、金属微コロイドの種類によっては、特に、加熱や紫外線照射のような工程を必要とせずに、分散媒を揮散させただけで導電性を示す場合があるが、この場合には、加熱や紫外線照射の工程を省略することができる。
【0028】
金属メッキに用いられる金属としてはAu, Cu, Pt, Ag, Ni, Cr, Al, Ti, Ta, V から選ばれる1種以上が例示される。
【発明の効果】
【0029】
上記したように、本発明によれば、細孔を有する絶縁性基体表面に形成した金属微コロイドパターン上に金属めっきを施して導電性パターンを形成することにより、スクリーン印刷法やインクジェット法では達成することができなかった線幅サブμm〜20μmの導電性回路を高い信頼性をもって形成することができる。
【0030】
また、本発明における水性インキをフレキソ印刷などの印刷法によって絶縁性基体上に印刷した場合には、高速印字が可能になるだけでなく印字厚みの調節が容易なことから、所望の精細度を有する回路形成が可能となる。
【0031】
また、線幅の大きなベタパターンから微細線幅の導電性回路を一度に作製することが可能であり、めっき金属そのものの体積抵抗率を得ることができる。
【0032】
さらに、本発明の細孔を形成した絶縁性基体に形成された導電回路では、めっき膜が絶縁性基体の細孔中に食い込んでいるので、機械的摩擦による損耗を受けても必要な導電度を維持し、平面状に突起として存在する従来の導電回路と比較してすぐれた密着性と折り曲げなどに対する耐久性が著しく優れた導電回路が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を述べる。
【0034】
〔実施例1〕
スチレン・マレイン酸共重合樹脂(酸価210, 分子量Mw 13000, 軟化点140℃)を 5 %モルフォリン水溶液中に 15% 濃度で溶解させて得た水溶液40重量部に対して、平均粒径2nm のパラジウムコロイド20% 水分散液0.5重量部、平均粒径3nmの20%銀コロイド水分散液0.5重量部、平均粒径1μmの20%ワックス分散液10重量部を混合し、水を加えて全体を100重量部とし、回路形成用インキを得た。得られた分散液を20℃の雰囲気下でB型粘度計にて粘度を測定したところ50cPであった。
【0035】
得られたインキを、アニロックスロールを介して線幅10μm, 線間10μm、のウレタン系フレキソ印刷版に塗布したのち、この版を、孔径0.5μの細孔を有する厚み30μmのスチレン系発砲層をポリエステル樹脂に貼り付けた絶縁性基体に押圧して基板上にインキを転移せしめ、厚さ1μmの配線パターンの印刷物を得た。得られたパターンを150℃のオーブン中で15分保持した後、銅めっき浴に浸漬したところ線幅および線間の寸法が忠実に再現された銅の配線パターンが得られ、めっき膜厚5μとしたときの抵抗値は6 mΩ/□と優れたものであった。
【0036】
〔実施例2〜実施例4〕
実施例1におけるインキ中のパラジウムコロイドおよび銀コロイドの添加量を表1に示す割合で変化させたインキ(金属コロイド量は100%コロイドの重量%で示している)で表面に細孔を有するポリエステル基板上に同様に線幅20μm、線間20μm , 膜厚1μmの配線パターンを形成し、この上に銅めっき膜を形成させて銅の配線パターンを得た。このパターンは線幅、線間とも印刷版のパターンを忠実に再現しており、このパターンを形成するインキ中のパラジウムの含有率が0.1wt%以上であって0.05wt%以上の銀コロイドを併用した金属コロイドを含むインキを用いた場合は十分なめっき触媒能を発揮することが確認でき、めっき膜厚を3μm以上としたときのめっき膜の抵抗値として 5〜10mΩ/□ のすぐれた導電性パターンが得られた。
【0037】
〔比較例1〜比較例4〕
一方インキ中のパラジウムの含有率が0 .1 wt%であっても銀コロイドを含有していない比較例1のインキ、あるいはパラジウムコロイドの含有率が0.001wt% 以下である比較例2および比較例3のインキを用いて同様に作製した配線パターンでは、めっき速度が遅いかまたはめっき不能であり、とくに後二者においては銀コロイドの添加量を増してもめっき速度の向上が見られなかった。
【0038】
逆にパラジウムコロイドおよび銀コロイドの含有率がともに20wt%を超える比較例4のインキを用いた場合、めっき速度は向上したが、得られためっき膜の密着性が劣り、セロテープ(登録商標)剥離テストでは、形成しためっき膜のはがれてしまうことがわかった。
【表1】

【0039】
〔実施例5〕
紫外線硬化組成物DPHA(ナイガイニッカ株式会社)40重量部、ビスコート(大阪有機化学株式会社) 30重量部、イルガキュア907(チバスペシャルテイケミカルズ)3重量部、平均粒径1nm のパラジウムコロイド20% 酢酸エチル分散液0.5重量部、平均粒径2nmの20%銀コロイド酢酸エチル分散液0.5重量部、に酢酸エチルを加えて100重量部とし、回路形成用インキを得た。
【0040】
得られたインキを、アニロックスロールを介して線幅5μm, 線間5mμ、のシリコーンゴム系フレキソ印刷版に塗布したのち、この版を、孔径1.0μmの細孔を有する厚み100μmのガラスエポキシ樹脂基体に押圧して基板上にインキを転移せしめ、厚さ0.3μmの配線パターンの印刷物を得た。得られたパターンを150℃のオーブン中で15分保持した後、紫外線を照射し、得られた基板を銅めっき浴に浸漬したところ線幅および線間の寸法が忠実に再現された銅の配線パターンが得られ、めっき膜厚5μmとしたときの抵抗値は5 mΩ/□と優れたものであった。
【0041】
〔実施例6〕
実施例5で得られた回路形成用インキを線幅1μm, 線間5μm、のシリコーンゴム系フレキソ印刷版に同様に塗布したのち、表面粗さが100nm のガラス基体上に押圧して基体上にインキを転移せしめたところ厚み30nmの配線パターンの印刷物を得た。得られたパターンを150℃のオーブン中で15分保持した後、紫外線を照射し、銅の無電解めっき浴に浸漬したところ線幅および線間の寸法が忠実に再現された銅の配線パターンが得られ、めっき膜厚5μmとしたときの抵抗値は5mΩ/□と優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基体上に、導電回路が形成されてなる回路基板において、
前記導電回路が、前記絶縁性基体上に形成された、少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子とバインダ樹脂を含むインキにより形成された厚さが5nm〜5μmの導電回路パターンと、前記導電回路パターン上に形成された金属めっき層とからなることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記絶縁性基体の表面には、孔径 5nm〜10μmの細孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記金属コロイドが、Au, Pt, Ag, Cu, Ni, Cr, Rh, Pd, Zn, Co, Mo, Ru, W, Os, Ir, Fe, Mn, Ge, Sn, Ga, Al, Ti, Ta, Vおよび In から選ばれた少なくとも1種とPd をコロイドとして含むことを特徴とする請求項1又は2記載の回路基板。
【請求項4】
前記金属めっき層が、Ag, Cu, Au, Pt, Ni, Cr, Ta, Ti, V, Al, Sn, In から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の回路基板。
【請求項5】
少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子と、バインダ樹脂を含み、その粘度が1cP〜200cPの範囲に調整されていることを特徴とする回路基板形成用水性インキ。
【請求項6】
少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nm の金属コロイド粒子と、水溶性樹脂及び/又は樹脂粒子を含み、その粘度が1cP〜200cPの範囲に水で調整されていることを特徴とする回路基板形成用水性インキ。
【請求項7】
前記樹脂粒子が、粒径10nm〜5μmの熱可塑性樹脂粒子又はワックス粒子であることを特徴とする請求項6記載の導電回路形成用インキ。
【請求項8】
少なくともパラジウムコロイドを含む粒径 1nm〜100nmの金属コロイド粒子と、紫外線硬化型のモノマー及び/又はオリゴマーを含み、その粘度が1cP〜200cPの範囲に調整されていることを特徴とする回路基板形成用インキ。
【請求項9】
絶縁性基体上に請求項5乃至8のいずれか1項記載の回路基板形成用インキを印刷版の印刷面に付着させる工程と、
前記印刷版を絶縁性基体上に押しつけて前記印刷版に付着した前記回路基板形成用インキで前記絶縁性基体上に印刷する工程と、
前記絶縁性基体に印刷された回路基板形成用インキを乾燥させて前記絶縁性基体上に定着させる工程と、
前記絶縁性基体の前記回路基板形成用インキによる印刷面上に金属めっきを施す工程と
を含むことを特徴とする回路基板の形成方法。
【請求項10】
印刷版が、弾性基板に所定のパターンを突出させた凸版であることを特徴とする請求項9記載の回路基板の形成方法。

【公開番号】特開2007−49101(P2007−49101A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234896(P2005−234896)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000191962)森村ケミカル株式会社 (12)
【出願人】(000191984)森村商事株式会社 (4)
【Fターム(参考)】