説明

回路基板の乾燥方法および装置

本発明は、回路基板(13)、特に半導体基板の乾燥方法および装置に関する。本発明によれば、回路表面(30)を、洗浄段階中に洗浄液(10)を用いて洗浄し、後続の乾燥段階で乾燥させる。洗浄段階において、回路面と液面との間でそれらの相対移動に応じて変わる移行領域内に液体メニスカスが形成されるように、回路基板がその平面の延長方向に、洗浄液鏡面の液面(28)を横断しかつそれに対して相対的に移動され、乾燥段階において、液体メニスカスで濡れた移行領域に熱輻射(36)を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄工程で洗浄液を用いて回路基板の回路面を洗浄し、後続の乾燥工程で回路面を乾燥させる、回路基板、特に半導体基板の乾燥方法に関する。さらに、本発明は、上記方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、特にチップの製造に用いられる半導体ウェハを用意した後、端面構造を備えるチップに分離するが、この端面構造により、これらのチップに後で接点を設けることが可能になり、これは端面上で適切な接点のメタライゼーションを実施することを含む。この目的で、一般に、接点のメタライゼーションを層状に堆積できるようにする化学堆積法が使用される。特に、ウェハ、および/または分離によってそれから作成されるチップの接点側表面が腐食するのを避けるために、端面または回路面を洗って、堆積手順によって生じる、表面を汚染するイオン性またはアニオン性の汚染物質を除去する必要がある。この目的で、洗浄水中に許容可能なイオン濃度しか測定できないようになるまで、半導体基板の端面を脱イオン水を用いて繰返し洗浄することが知られている。
【0003】
洗浄手順に続いて端面を乾燥させた場合、端面上に残っている洗浄水の残留物を蒸発させた後に、腐食ポケット(corrosion pockets)が端面上に残ることが分かっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、これまで、洗浄手順の直後に、できるだけ残留物を残さずに端面を乾燥できるようにするために、様々な試みがなされてきた。これら可能な手段の1つは、できるだけ迅速にかつ残留物なしに洗浄水を蒸発させることができるように、洗浄液を適用した後または洗浄浴から取り除いた後に、回路基板に温度を適用することである。しかし、これは、既知の乾燥に伴う温度ひずみが、回路基板を完全に機能させるのにちょうど許容可能な温度ひずみの範囲に達し、さらにはそれを越えてしまうことが多いという、不利な点を伴う。さらに、残留物をできるだけ少なくして洗浄水を回路表面からより迅速に除去できるようにするために、様々な処置によって水の表面張力を低減させることが知られている。しかし、例えば、この目的で洗浄水への添加物として用いられる界面活性剤は、一般に、やはり端面上に残留物を生じさせることが明らかになっている。この種の残留物は、アルコールを添加して洗った場合には回避することができるが、洗浄液としてアルコールを用いることで、爆発しやすい物質を補助的に用いる必要が生じるので、この種の方法を実施するには特別に爆発から保護することが必要になり、またそれに応じて費用がかさむ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、方法を実施する際、かつ/またはそれに対応する装置の動作中に、回路基板の温度ひずみが大きくなりすぎず、かつ/または費用が高くなりすぎずに、回路基板を本質的に残留物なしに洗うことができるようにする方法および/また方法を実施するための装置を提案することを目的とする。
【0006】
上記目的は、請求項1に記載の方法および/または請求項7に記載の装置によって達成される。
【0007】
洗浄工程で洗浄液を用いて回路基板の回路面を洗浄し、後続の乾燥工程で回路面を乾燥させる、本発明による方法では、洗浄工程において、回路面と相対的移動によって変化する液面との間の移行領域に液体メニスカスが形成されるように、回路基板がその平面の延長方向に、洗浄液の液面を横断しかつそれに対して相対的に移動され、乾燥工程において、液体メニスカスで濡れた移行領域に熱輻射を与える。
【0008】
本発明による方法を使用した場合、回路基板には、液体メニスカスで濡れた移行領域において熱輻射を与えるので、熱輻射の吸収によって回路基板内で液体メニスカスの温度上昇が生じ、それが蒸発をもたらす。場合によって異なるが、回路基板の一部分、大半の場合、大きな部分が、温度を適用している間液浴中にあるので、温度の適用と並行して、熱が常に回路基板から液浴中に放散され、そのため、基板が過熱されるのを可能な限り排除することができる。それに加えて、熱輻射によって温度を適用することで、本質的に対流なしに回路基板を加熱することが可能になるので、対流によって運ばれる汚染物質による汚染を、可能な限り排除することができる。
【0009】
この方法の好ましい変形例によれば、熱輻射を、赤外線放熱器を用いて与えるので、熱を特に有効に回路基板に導入することができる。
【0010】
この方法を実施するのに必要な空間に関して特に有利な変形例は、液面と回路基板とを相対的に移動させるものであり、回路基板が、液浴容器に収容された洗浄液中に配置され、液面が下げられる。
【0011】
液面を横断する方向に熱輻射を与える場合、並べて配置された複数の回路基板に同時に熱輻射を与えることができる。
【0012】
それに加えて、液面の上方に設けられた容器の空間の換気を、液面にほぼ平行に行うと、それによって、回路基板上の液体メニスカスの領域で蒸発した液体が、その後に凝縮するのを防ぐことができるので、特に有利であることが分かっている。
【0013】
液浴容器中で乾燥工程を実施する前に、容器を繰返し満水にすることによって洗浄工程を複数回実施した場合、この方法により、回路基板の端面を残留物なしに乾燥させた後の清浄化部分工程が可能になるだけでなく、それに加えて、後続の乾燥工程の前に、回路表面上にイオンおよび/またはアニオン濃度を生み出すことを最終目的として、先行する複数回の洗浄手順も、単一の装置で連続する1つの方法として実施することが可能になる。
【0014】
回路基板、特に半導体基板を乾燥させるこの方法を実施するための本発明による装置は、取入れユニットおよび排水ユニットを有する液浴容器を備え、少なくとも1つの回路基板を受け入れる受入れシステムが、回路基板が平面内で容器の床面方向に延びるように配置される。それに加えて、本発明による装置は、液浴容器の容器開口を閉塞するカバーユニットと、受入れシステムの上方に配置された放熱器ユニットとを備える。
【0015】
この装置の特に有利な一実施形態では、放熱器ユニットは赤外線放熱器を備える。
【0016】
放熱器ユニットをカバーユニット上に配置すると、単に放熱器ユニットを液面の上方に配置することができ、それにより、受入れシステム内に受け入れられた複数の回路基板に同時に熱を与えることが可能になる。
【0017】
さらに、放熱器を容器内部から分離するために透明な板の上方に配置すると、放熱器自体が容器内部の攻撃的な雰囲気の外に保護された形で置かれるので、有利である。
【0018】
液浴容器を、換気ユニットを備えたカバーユニットの領域内に設けると、装置の効率をより一層向上させることができる。換気ユニットをカバーユニット上に配置すると、装置の設計を簡単にするのに特に有利である。
【0019】
以下に、本発明による装置の好ましい変形例、および好ましくはこの目的に使用できる装置を、図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、この例では脱イオン水から形成された洗浄液10を満たした液浴容器11を示しており、その中には、複数のウェハ13が均等に中に配置された受入れシステム12が配置される。受入れシステム12は、ウェハ表面に自由にアクセス可能な状態を維持できるように、例えば周縁部付近でウェハ13をその間に受け入れる2つの掴み具を有していてもよい。
【0021】
液浴容器11は、その容器床面14の領域に、入口弁15を備えた流入ユニット16を備える。さらに、容器床面14の領域に、排水弁18を有する流出ユニット17が設けられる。それに加えて、流出ユニット17は、流出ユニット17から流出する洗浄液10の流速を設定できるようにするフローバルブ19を具備する。
【0022】
容器床面14と正反対の側に位置し、受入れシステム12内に配置されるウェハ13の挿入および除去を可能にする、容器11の容器開口24の領域には、容器開口24を閉塞するカバーユニット20が配置され、これによって、液浴容器11を、環境に対して閉じた処理チャンバとして動作させることが可能になる。
【0023】
カバーユニット20は、本例では、カバー内部21を有するハウジングのような形で実施され、本例では複数の赤外線放熱器を備えた放熱器23を有する放熱器ユニット22が、その中に収容される。熱が蓄積するのを避けるため、カバーユニット20は換気孔(ここでは詳細に示さず)を備えてもよい。容器開口24に直接向かい合って位置するカバー壁部25は、透明であり、本例ではカバーユニット20に挿入されたガラス板25として提供される。容器開口24の平面と平行に走る複数の換気チャネル26を有する換気ユニット27が、容器開口24に隣接し、図1では完全に満水になった状態で示される、液浴容器11の液面28の上方に配置される。換気チャネル26は、本例では、外部から液浴容器11の容器後壁34内に換気を行い、液面28と平行な方向な向きの、非常に低い流速を有する換気流を供給し、またはこれを除去することができる。
【0024】
図1に示す装置を動作させるために、ウェハ13を中に受け入れた受入れシステム12が液浴容器11に挿入され、液浴容器11がカバーユニット20を用いて閉じられる。後続の充填手順では、液浴容器11は、流出ユニット17の排水弁18が閉じられ、洗浄液10が、図1に示す液面28に達し、容器床面14に向かって延びるウェハ13を完全に覆うまで流入ユニット16によって洗浄液10で満水にされる。
【0025】
図1に示す液浴容器11が満水にされた状態に続いて、フローバルブ19が開かれ、液面28は次に、ウェハ13のますます大きな部分が洗浄液10の外に出るように、好ましくは連続的に下がる。液面28が下がるにつれて、図2に示すように、液面28を横断するウェハ13の表面29、30と液面28との間の移行領域35に、液体メニスカス31、32が生じる。表面29、30の少なくとも1つが、接点のメタライゼーションを配置した回路面として提供される。
【0026】
液面28が下がっているとき、この例示的な実施形態ではIR輻射を放出する、放熱器ユニット22が、ガラス板25によって液面28から分離されている放熱器23によって動作中である。熱輻射36がウェハ13の半導体材料に吸収されるので、ウェハ13のうち液面28の上方に位置する部分は加熱されるが、反対に、ウェハ13のうち洗浄液10中に位置する部分は、半導体材料と洗浄液10の間の伝熱によって相対的に冷却される。これにより、半導体材料の加熱が、液体メニスカス31、32の領域で洗浄液10が蒸発するのには十分であるにも関わらず、ウェハの機能を損なう半導体材料の過熱が生じることは防止される。液体メニスカス31、32の領域で洗浄液10が蒸発することによって、ウェハ13の表面29、30に洗浄液の残留物がほとんど残らないことが保証される。液体メニスカス31、32の領域で洗浄液が蒸発するのに加えて、液体メニスカスの表面張力も、液体メニスカス31、32の領域での半導体材料の加熱によって減少するので、液体メニスカス31、32の領域での洗浄液10の濡れ特性が向上し、洗浄液10が表面29、30からより良好に除去されるようになる。
【0027】
ウェハ13の表面29、30と液体メニスカス31、32との境界領域にほぼ限定される熱転移により、洗浄液の加熱とそれに伴う表面張力の低下が、確実に上述の境界領域内だけで起こるようになるので、その領域に隣接する洗浄液の表面張力が本質的に維持され、液体メニスカス31、32の領域で液滴が生じるのが防止される。ウェハ13の表面29、30と液体メニスカス31、32との接触時間が上述の効果を達成するのに十分な時間になるように、液面28が下がる速度を選択することも、この有利な効果の助けとなる。
【0028】
図1に示す液浴容器11が満水にされた状態に続いて、液面28とガラス板25の間に形成された空間33は、液面28が下がるにつれて絶えず大きくなる。熱輻射36を当てた結果蒸発した洗浄液10が、冷却後に、ウェハ13の表面29、30上の液面28の上方で再び凝縮するのを防ぐために、空間33は換気ユニット27によって換気される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】半導体基板を清浄化するための装置の断面図である。
【図2】液面と半導体基板の回路面との間に形成される液体メニスカスの拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記回路基板(13)、特に半導体基板を乾燥するための方法であり、洗浄工程において、洗浄液(10)を用いて回路基板の回路面(29、30)を洗浄し、続いて行なわれる乾燥工程において、前記回路面を乾燥する工程を含む方法であって、
前記洗浄工程において、前記回路基板を、その平面の延長方向において横方向に、前記洗浄液の前記液面(28)に対して相対的に移動して、前記回路面と、前記基板に対する相対移動によって変化する液面との間の移行領域(35)で液体メニスカス(31、32)を生じさせ、
前記乾燥工程において、前記液体メニスカスによって濡らされた前記移行領域に熱輻射(36)を与える
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱輻射(36)を、赤外線放熱器を用いて与えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液面(28)と前記回路基板(13)の相対移動を行うために、前記回路基板を、液浴容器(11)に収容された前記洗浄液(10)中に配置し、前記液面を下げることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱輻射(36)を、前記液面(28)に、横方向に与えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記液面(28)より上方に設けられた容器空間(33)の換気を、前記液面(28)に対してほぼ平行に行なうことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記液浴容器(11)中で前記乾燥工程を実施するに先立って、前記液浴容器を繰返し満水にすることによって、洗浄工程を複数回実施することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の、回路基板(13)、特に半導体基板を乾燥するための方法を実施するための装置であって、流入ユニット(16)および流出ユニット(17)を有し、そして、カバーユニット(20)を用いて閉塞可能な液浴容器(11)と、前記回路基板が、平面内で容器床面(14)の方向に延びるように、少なくとも1つの回路基板を受け入れるために、前記液浴容器内に配置された受入れシステム(12)と、前記受入れシステムの上方に配置された放熱器ユニット(22)とを備える装置。
【請求項8】
前記放熱器ユニット(22)が、赤外線放熱器を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記放熱器ユニット(22)が、前記カバーユニット(20)上に配置されることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記放熱器ユニット(22)が、容器内部から分離するための透明な板(25)の上方に配置されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記液浴容器(11)が、前記カバーユニット(20)の領域内に、換気ユニット(27)を備えることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
前記換気ユニット(27)が、前記カバーユニット(20)上に配置されることを特徴とする、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524232(P2007−524232A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529632(P2006−529632)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002827
【国際公開番号】WO2005/062358
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(501198796)パック テック−パッケージング テクノロジーズ ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】