説明

回路部品実装構造ならびにその実装基板

【課題】実装基板上に実装される回路部品の動作上の効率を改善する。
【解決手段】回路部品が導電性配線パターンおよびバスバーを導電路として実装されている実装基板であって、少なくとも電圧に高低差がある一対のパワーラインを基板面上においてその全体または一部分を一対のバスバーで対向配置すると共に、上記一対のバスバーの対向間に導体が介在することを極力排除した構成とすると共に上記回路部品を上記一対のバスバーの対向間の外部に配置した回路部品実装構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータなどの、パワーラインに大電流が流れる電源装置やその他の回路部品を基板上に実装する回路部品実装構造および該実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池から負荷へ電力を供給するにあたり、DC/DCコンバータ等の電源装置により電圧を調整する技術がある(例えば、特許文献1を参照)。このようなDC/DCコンバータの回路部品の実装基板は、絶縁性樹脂基板上に35μm厚の銅箔配線を配置したものである。
【0003】
図5はフルブリッジ型のDC/DCコンバータの回路を示し、図6は実装基板上においてDC/DCコンバータを構成する回路部品の実装状態を平面模式的に示す。
【0004】
図5において、上記DC/DCコンバータは、絶縁型であり、燃料電池に対して並列に接続される複数の平滑コンデンサC1−C6からなる平滑コンデンサ回路部1と、この平滑コンデンサ回路部1により平滑化された燃料電池直流出力を8個のFETQ1−Q8のスイッチング動作によりパルス電圧に変換するフルブリッジ回路部2と、3個の電流共振用コンデンサC7−C9からなる電流共振用コンデンサ回路部3と、一次側コイルT11と二次側コイルT12とを具備する電力変換トランス4と、を具備する。この電力変換トランス4の二次側コイルT12には図示略の整流平滑回路部が接続される。
【0005】
上記回路において、L1−L5は、パワーラインであり、太い実線は実装基板PB上でバスバーB11−B16で構成するパワーライン部分を示す。
【0006】
図6を参照して、この実装基板PBにおいて、太実線は長方形の中実断面を持つ導電体であるバスバーB11−B16を示す。第1、第2バスバーB11,B12の対向隙間には、平滑コンデンサ回路部1を構成する平滑コンデンサC1−C6のうち、平滑コンデンサC2,C4,C6が介在している。第3、第4、第5バスバーB13,B14,B15の対向間にはフルブリッジ回路部2の8個のMOSFETQ1−Q8が介在している。放熱板の図示は略している。図5におけるMOSFETQ5,Q6の共通接続部Aは、図6で、配線W1で接続され、電力変換トランスT1の一次側コイルT11の一端側Bは、配線W2で接続され、同一次側コイルT11の他端側Cは、配線W3を介して、バスバーB15に接続されている。これら配線は実装基板PBをエッチングするなどして形成した導電性配線パターンにより構成したり、あるいは空中配線により構成したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−36308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構造を備えた実装基板PBの場合、その基板面上に実装したDC/DCコンバータの電力変換効率はよくなかった。そこで、本発明者らが、上記電力変換効率を改善すべく実装基板PB上での回路部品の実装状態その他を種々に変更して試作を繰り返して実験したところ、その実装状態によっては、交流抵抗の増加が大きくなり、このことが電力変換効率の低下となっていた可能性があることを見出した。
【0009】
この交流抵抗の増加に関してさらにその原因を鋭意究明したところ、その原因の1つに、例えば燃料電池からは、プラスとマイナスの一対のパワーラインL1,L2を構成するバスバーB13,B14間に大電流が流れてくるが、このバスバーB13,B14間がループ状となっていること、また、もう1つに、そのループ内には電源装置の回路部品が介在し、また、この回路部品以外に実装基板PBの銅箔配線パターン等の導体が比較的大面積の領域を占めて介在していること、にあるという結論を得ることができた。
【0010】
そこで、本発明は、上記結論に基づいて、回路部品の回路動作上の効率、例えばDC/DCコンバータ等の電源装置であれば、電力変換効率等を改善できる回路部品実装構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による回路部品実装構造は、回路部品の少なくとも一部を基板上においてバスバーを導電路として実装する構造であって、少なくとも一対のパワーラインを基板上においてその全体または一部分を対向する少なくとも一対のバスバーで構成し、上記少なくとも一対のバスバーを互いに電気的に絶縁を保った状態で対向設定すると共に上記回路部品を少なくとも一対のバスバーの対向間の外部に配置した、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記一対のバスバーの対向間は、それらの対向間に導体の介在を少なくするほどの狭い空間を介在させて、対向することが好ましい。また、上記一対のバスバーの対向間は電気的絶縁材を介在させて対向することもできる。上記一対のバスバーは、電圧にプラスとマイナスとなって高低差があるバスバーであることが好ましい。上記バスバーは、導電性を有する低抵抗な材料が構成することが好ましい。上記バスバーは、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム、スズ、鉛、ニッケル、それらの合金が好適に用いられる。バスバーの形状は長方形の中実断面を持つ導電体が好ましいものの、これに限定されない。上記一対のバスバーの対向間には、極力、回路部品が介在しないことが好ましい。上記一対のバスバーの対向間隔は、回路部品や導体が介在できないか、もしくは極力介在できる領域が狭い間隔であることが好ましい。上記導電性配線パターンは、実装基板の銅箔に対するエッチングにより形成されたパターンを一例としてあげることができる。
【0013】
上記回路部品は、スイッチング素子により入力電圧を処理するDC/DCコンバータ等の電源装置の回路部品であることが好ましいものの、必ずしもこれに限定されない。上記入力電圧は、好ましくは、燃料電池からの入力電圧が好ましいものの、必ずしもこれに限定されない。上記導体は実装基板の銅箔配線パターン、その他を含む。
【0014】
本発明による実装基板は、上記回路部品実装構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の回路部品実装構造によれば、基板上で、電圧に高低差がある対向する少なくとも一対のパワーラインを対向する一対のバスバーで構成した場合、その一対のバスバーがループ状とならないよう、これら対向する一対のバスバーの対向隙間を狭くして回路部品や導体等がその隙間に存在できる領域を極力狭く設定し、また、回路部品はこれらバスバーの対向隙間外に配置した構成とすることが可能な構造であるから、実装基板上に例えば電源装置を配置した場合、該電源装置における交流抵抗の増加を抑制して、当該電源装置の電力変換効率を改善することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかり、実装基板上ではバスバーで構成されるパワーラインを太実線で示すDC/DCコンバータの回路図である。
【図2】図2は図1のDC/DCコンバータの回路部品実装基板において、その基板面上での実装状態を平面的に示す図である。
【図3】図3は同実装状態を斜めから見た図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態を他の一般回路に適用した例を示す。
【図5】図5は従来例にかかり、実装基板上ではバスバーで構成されるパワーラインを太実線で示すDC/DCコンバータの回路図である。
【図6】図6は図5のDC/DCコンバータの回路部品実装基板において、その基板面上での実装状態を平面的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図1ないし図3を参照して、本発明の実施の形態に係る電源装置の回路部品用実装構造を説明する。この電源装置としてDC/DCコンバータに適用する。図1は、DC/DCコンバータの回路図であり、図4と同じ回路であるが、図1においては、DC/DCコンバータのパワーラインのうち、バスバーで構成されるパワーラインを太実線で示す。また、図2は図1のDC/DCコンバータの回路部品実装基板を平面的に示す図であり、図3は回路部品を実装した状態の同実装基板を斜めから見た図である。
【0018】
まず、図1を参照して、一対の第1、第2パワーラインL1,L2間には、平滑コンデンサ回路部1を構成する6個の平滑コンデンサC1−C6が並列に接続されている。同じく一対の第1、第2パワーラインL1,L2間には、フルブリッジ回路部2を構成する8個のMOSFETQ1−Q8が接続されている。具体的には、MOSFETQ1,Q2の並列接続組と、MOSFETQ3,Q4の並列接続組とが直列に、また、MOSFETQ5,Q6の並列接続組と、MOSFETQ7,Q8の並列接続組とが直列に、それぞれ、一対の第1、第2パワーラインL1,L2間に接続されている。
【0019】
第3、第5パワーラインL3,L5間には、電流共振コンデンサ回路部3を構成する3個の電流共振コンデンサC7−C9が並列に接続されている。第4、第5パワーラインL4,L5間には、電力変換トランスT1の一次側コイルT11が接続されている。
【0020】
図2、図3を参照して、実装基板PB上の構成について説明する。実装基板PB上において、第1、第2パワーラインL1,L2は、実装基板PB上に縦方向に互いに電気的に絶縁状態を保った状態すなわち所定間隔を隔てて立設された、断面矩形形状で薄肉厚の第1、第2バスバーB1,B2で構成される。これら第1、第2バスバーB1,B2の実装基板PBの基板面からの立設高さは、平滑コンデンサC1−C6の基板面からの配置高さと略同等となっている。また、第1パワーラインL1は、第2パワーラインL2よりも電圧が高圧であり、第1バスバーB1は高圧バスバー、第2バスバーB2は低圧バスバーと称することができる。これら第1、第2バスバーB1,B2は、それぞれ、短手部分B1a,B2aと長手部分B1b,B2bとで平面視L字形状となったバスバーであり、その短手部分B1a,B2aは図示略の燃料電池のプラス端子と、マイナス端子とが接続されるようになっていると共に、その長手部分B1b,B2bは絶縁を保つための空間として狭い空間ないし隙間を隔てて平行に対向している。この対向隙間の距離は、第1、第2バスバーB1,B2に対する印加電位差により決まり、電位差が小さければ、それだけその対向隙間をより狭くすることができるようになる。また、第1、第2バスバーB1,B2それぞれの長手部分B1b,B2bの隙間外であって、当該長手部分B1b,B2bの隙間外の一方側に3個の平滑コンデンサC1、C3、C5ならびにMOSFETQ1,Q2,Q5,Q6が、また同隙間外他方側に3個の平滑コンデンサC2、C4、C6、ならびにMOSFETQ3,Q4,Q7,Q8がそれぞれ並んで配置されている。したがって、これら第1、第2バスバーB1,B2間には、導体が存在しない。なお、第1、第2バスバーB1,B2の長手部分B1b,B2bの対向隙間に絶縁物を介在させれば、これら長手部分B1b,B2bの対向隙間に空間を介在させなくてもよい。MOSFETQ1,Q2,Q5,Q6は放熱板HS1に、MOSFETQ3,Q4,Q7,Q8は放熱板HS2に、それぞれ、取り付けられている。
【0021】
第3パワーラインL3は、断面矩形形状で薄肉厚の第3バスバーB3で構成される。第3バスバーB3は一対の平行部分B3a,B3bが平面視T字形状になったバスバーであり、第4パワーラインL4は、断面矩形形状で薄肉厚の第4バスバーB4で構成される。第4バスバーB4は、短手部分B4aと、長手部分B4bとにより平面視L字形状になったバスバーである。第5パワーラインL5は、断面矩形形状で薄肉厚の第5バスバーB5で構成される。第5バスバーB5は、短手部分B5aと、長手部分B5bとにより平面視L字形状になったバスバーである。これらバスバーB3−B5それぞれの実装基板PBの基板面からの高さは、MOSFETQ1−Q8それぞれの実装基板PBからの取り付け高さ、また、電流共振コンデンサC7−C9の実装基板PBからの取り付け高さに応じて設定するとよいが、実施の形態では、それら回路部品は、第1、第2バスバーB1,B2と略同等の高さとしているが、本発明は、これらの高さ関係に限定されるものではない。
【0022】
そして、第3バスバーB3の長手部分B3aは、第2バスバーB2の長手部分B2bに平行に狭い隙間を隔ててかつ互いに電気的に絶縁状態を保った状態で対向配置され、短手部分B4aには電力変換トランスT1の一次側コイルT11の一端側が接続されている。第3バスバーB3の一方の平行部分B3aは、第1バスバーB1の長手部分B1bに平行に狭い隙間を隔ててかつ互いに電気的に絶縁状態を保った状態で対向配置され、他方の直交部分B3bは、第5バスバーB5の長手部分B5bと平行に対向配置され、これらの間に、3個の電流共振コンデンサC7−C9が並置されている。
【0023】
以上の構成において、本実施の形態では、実装基板PB上において、例えば、第1、第2バスバーB1,B2の対向隙間には、当該隙間が狭く設定されているために、回路部品を含め、実装基板PBの銅箔等の配線パターンを含む導体が存在しないか、もしくは存在する領域として狭いから、交流抵抗の増加が格段に抑制されるようになり、この結果として、電力変換効率が改善された。
【0024】
詳しく説明すると、本発明者らが検討したところによると、一対のバスバーがループ状になって、これらバスバーに電流がループ状に流れると、バスバー周囲に磁界が発生するが、この場合、従来では、対向する一対のバスバー間に回路部品や導体等が介在していると、これらが交流抵抗増加要因として作用し、これにより、電力変換効率が低下すると考えられる。
【0025】
これに対して、本実施の形態では、一対のバスバーがループ状になって、これらバスバーに電流がループ状に流れ、バスバー周囲に磁界が発生するものの、この場合、対向する一対のバスバーの対向間隔が極めて小さく、それら対向間には回路部品や導体等が介在していないか、介在量がごくわずかとしたから、上記した従来のような交流抵抗増加要因が減り、これにより、電力変換効率が改善すると考えられる。
【0026】
実施の形態では電源装置であったが、他の一般回路に適用した例を図4を参照して説明すると、図4(a)は、パワーラインLX,LY間に、素子例えばコンデンサEX,EYが接続されている。4(b)は、図4(a)の等価回路を示し、図4(a)と電気的に同様の回路であるが、図面上、パワーラインLX,LY間にはコンデンサEX,EYが設けられていない。図4(c)は、実装基板PB上にパワーラインLX,LYに対応するバスバーBX,BYが立設され、バスバーBX,BYの対向間の外部の一方と他方とのそれぞれにコンデンサEX,EYが配置され、それぞれ、バスバーBX,BYに対して点線で示すように電気的に接続されている。図4(d)は、バスバーBX,BYの対向間の外部の一方側にのみコンデンサEX,EYが配置され、それぞれ、バスバーBX,BYに対して点線で示すように電気的に接続されている。以上の構成において、バスバーBX,BYの対向間隔dは極力狭くされている。この対向間隔dを狭くすると、これにバスバーBX,BYの対向間に導体が介在しにくくなり、より電力変換効率をあげることができる。なお、バスバーBX,BYの基板面からの高さH1と、コンデンサEX,EYの基板面からの高さH2とは任意の高さ関係でよく、必ずしも、いずれか一方が高いことである必要はない。また、バスバーBX,BYの対向間に、実装基板PBの銅箔配線パターン等の導体ができれば介在していないことが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 平滑コンデンサ回路部
2 フルブリッジ回路部
3 電流共振コンデンサ回路部
4 電力変換トランス部
L1−L5 パワーライン
B1−B5 バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部品の少なくとも一部を基板上においてバスバーを導電路として実装する構造であって、
少なくとも一対のパワーラインを基板上においてその全体または一部分を対向する少なくとも一対のバスバーで構成し、
上記少なくとも一対のバスバーを互いに電気的に絶縁を保った状態で対向設定すると共に上記回路部品を上記少なくとも一対のバスバーの対向間の外部に配置した、
ことを特徴とする回路部品実装構造。
【請求項2】
上記一対のバスバーを、互いに高低電圧差があるバスバーで構成した、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
上記バスバーを、長方形の中実断面を持つ導電体により構成した、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
上記回路部品を、スイッチング素子により入力電圧を処理する電源装置用の回路部品とした、請求項1ないし3のいずれかに記載の構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の回路部品実装構造を具備した、ことを特徴とする実装基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142251(P2011−142251A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2766(P2010−2766)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構電力変換装置の技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】