回転ダンパ、電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置
【課題】回転ダンパの粘性流体の漏れ防止用のシール部材の悪影響を抑制する。
【解決手段】本回転ダンパ30Aは、回転軸としての入力軸3に粘性抵抗を与える。回転ダンパ30Aは、シール部材32により封止され回転軸が挿通された粘性流体封入部33と、粘性流体封入部33内で回転軸と同伴回転する回転体35と、回転体35と粘性流体31を介して粘性連結された連結体36と、連結体36を保持するとともに粘性流体封入部33の一部を区画するホルダ37と、車体側部材に固定された固定部としてのステアリングコラム27とホルダ37との間に介在して回転軸の回転方向A2にホルダ37を弾性支持する弾性体39とを有している。回転ダンパ30Aは、電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置に適用される。
【効果】微小トルクでも回転軸を回転開始できる。
【解決手段】本回転ダンパ30Aは、回転軸としての入力軸3に粘性抵抗を与える。回転ダンパ30Aは、シール部材32により封止され回転軸が挿通された粘性流体封入部33と、粘性流体封入部33内で回転軸と同伴回転する回転体35と、回転体35と粘性流体31を介して粘性連結された連結体36と、連結体36を保持するとともに粘性流体封入部33の一部を区画するホルダ37と、車体側部材に固定された固定部としてのステアリングコラム27とホルダ37との間に介在して回転軸の回転方向A2にホルダ37を弾性支持する弾性体39とを有している。回転ダンパ30Aは、電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置に適用される。
【効果】微小トルクでも回転軸を回転開始できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ダンパ、電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘性流体を利用して回転軸の回転振動を抑制する回転ダンパにおいて、回転軸を回転させ始めるときの抵抗を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1の回転ダンパでは、上述の抵抗を抑制するために、粘性流体を収容する収容部の一部を拡幅している。
【0003】
特許文献2の回転ダンパは、粘性流体を収容する一対の収容部を仕切るとともに回転軸と同伴回転するベーンを有している。このベーンの周囲には、封止用の溝が形成されている。この溝の一部を広くすることにより、上述の抵抗を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224818号公報
【特許文献2】特開2006−316863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2の何れにおいても、上述の抵抗の抑制効果は十分ではなかった。というのは、粘性流体の漏れを防止するためのシール部材が回転軸に摺接しているので、回転軸を回転させ始めるときにシール部材の摩擦による悪影響が生じる。具体的には、シール部材の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さなトルクを回転軸に作用させても、回転軸は回転しない。
【0006】
その結果、回転ダンパをパワーステアリング装置に適用する場合には、微小な操舵トルクが伝達されないので、動作遅れが生じる結果、操舵感が悪くなる。また、回転ダンパにおけるシール部材の上述の悪影響を解決することは、ステアリング装置以外の分野においても要望されている。
そこで、本発明の目的は、シール部材の悪影響を抑制できる回転ダンパ、並びに、これを有する電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、回転軸(3,5,7,9;46)に粘性抵抗を与える回転ダンパ(30A;30B;30C;30D;30E;30F;30G)において、シール部材(32)により封止され上記回転軸が挿通された粘性流体封入部(33)と、上記粘性流体封入部内で上記回転軸と同伴回転する回転体(35;35G)と、上記回転体と粘性流体(31)を介して粘性連結された連結体(36;36G)と、上記連結体を保持し、上記粘性流体封入部の一部を区画するホルダ(37;37D;37E;37F;37G)と、取付部材(14)に固定された固定部(15,27;41)と上記ホルダとの間に介在し、上記回転軸の回転方向(A2)に上記ホルダを弾性支持する弾性体(39;39D;39E)とを備えることを特徴とする回転ダンパである。
【0008】
本発明によれば、連結体のホルダを固定部に弾性支持したので、シール部材の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さい微小トルクが回転軸に作用したときに、その微小トルクにより弾性体を変形させることができる。その結果、ホルダ、連結体、および回転体を、回転軸と同伴回転させることができる。従って、シール部材の悪影響を抑制できる。
また、本発明において、上記回転軸を回転可能に支持し、上記ホルダを上記回転軸の軸方向(A1)および径方向(A3)に位置決めする軸受(56)を備える場合がある(請求項2)。この場合、ホルダを回転軸の軸方向および径方向に容易に位置決めすることができる。また、回転ダンパを、軸受を含む一体的なユニットに構成することも可能となる。この場合には、回転ダンパを組み付け易くできる。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の上記回転ダンパと、上記固定部としてのモータハウジング(41)と、上記モータハウジングに固定されたステータ(42)と、上記回転軸(46)と同伴回転するロータ(43)とを備えることを特徴とする電動モータ(23B)であってもよい(請求項3)。
この場合、回転ダンパによりロータの回転方向の振動を抑制することができる。しかも、電動モータのロータの回転を、微小トルクが作用する状態から、速やかに立ち上げることができる。また、ロータの回転が動的に安定するので、ロータの回転を制御し易くできる。従って、振動し難くて応答性の優れた電動モータを実現することができる。また、回転ダンパがモータハウジングに保持されているので、電動モータの組み付けに伴って、回転ダンパの組み付けを達成することができる。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の上記回転ダンパと、上記回転軸としてのピニオン軸(9)と、上記ピニオン軸と係合するラック軸(12)とを備えることを特徴とするステアリング装置用転舵機構(13)であってもよい(請求項4)。この場合、回転ダンパによりピニオン軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、ピニオン軸において回転ダンパにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材を通じて振動を感じることを抑制できる。また、回転ダンパを剛性支持する場合と比較して、小さな操舵トルクでピニオン軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0011】
また、本発明は、操舵部材(2)の操作に応じて転舵軸(12)を軸方向(X1)に駆動するステアリング装置(1A;1B)において、上記本発明の上記回転ダンパと、上記回転軸としての操舵軸(3,5,7,9)とを備えることを特徴とするステアリング装置であってもよい(請求項5)。
この場合、回転ダンパにより操舵軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、操舵軸において回転ダンパにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材を通じて振動を感じることを抑制できる。また、電動パワーステアリング装置の場合、電動モータの出力軸の回転方向の振動が操舵部材に伝達されることを抑制することも可能となる。また、回転ダンパを剛性支持する場合と比較して、小さな操舵トルクで操舵軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0012】
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1に示す回転ダンパの斜視図である。
【図3】図2に示す回転ダンパの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図5】図4に示す電動モータの断面図である。
【図6】図5の回転ダンパの拡大図である。
【図7】図6に示すホルダ、弾性体、およびモータハウジングの斜視図である。
【図8】さらに他の実施形態の回転ダンパの断面図であり、図9のVIII-VIII 断面を示す。
【図9】図8のIX-IX 断面の断面図である。
【図10】図8とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパの模式図である。
【図11】図10とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、回転ダンパが、自動車の電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)に適用された場合に則して説明する。なお、本実施形態の回転ダンパが、電動パワーステアリング装置以外の装置に適用されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1Aは、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結している第1の操舵軸としての入力軸3と、この入力軸3にトーションバー4を介して連結された第2の操舵軸としての出力軸5とを有している。また、電動パワーステアリング装置1Aは、出力軸5に第1の自在継手6を介して連結された操舵軸としての中間軸7と、中間軸7に第2の自在継手8を介して連結された操舵軸としてのピニオン軸9と、ピニオン軸9の端部近傍に設けられたピニオン10に噛み合うラック11を有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸12とを有している。
【0015】
ピニオン軸9およびラック軸12により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構13が構成されている。ラック軸12は、車体側部材14に固定されるハウジング15内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラック軸12には、一対のタイロッドが結合されている。各タイロッドは対応するナックルアームを介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0016】
操舵部材2が操作されて入力軸3、トーションバー4および出力軸5が回転されると、この回転がピニオン10およびラック11によって、自動車の左右方向に関するラック軸12の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
また、入力軸3および出力軸5はトーションバー4を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸3に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー4が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸3および出力軸5が相対回転するようになっている。
【0017】
トーションバー4を介する入力軸3および出力軸5の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵力(本実施形態では操舵補助力)を発生するためのアクチュエータとしての電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機構24とが設けられている。
【0018】
減速機構24は、平行軸歯車機構を含んでいる。減速機構24は、電動モータ23により回転駆動される駆動ギヤ25と、この駆動ギヤ25に噛み合うと共に出力軸5と同伴回転するように連結される従動ギヤ26とを有している。具体的には、駆動ギヤ25は、相対的に小径の斜歯歯車であり、従動ギヤ26は、相対的に大径の斜歯歯車である。また、斜歯歯車に代えて平歯車を用いてもよい。また、減速機構24は、上述の平行軸歯車機構以外の歯車機構、例えば、ウォームギヤを含んでいてもよい。この場合、駆動ギヤ25は、ウォームであり、従動ギヤ26は、ウォームホイールである。
【0019】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機構24を介して減速されてピニオン軸9に伝達され、ラック軸12の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0020】
また、電動パワーステアリング装置1Aは、複数の軸受(図示せず)を介して、入力軸3、トーションバー4および出力軸5を回転可能に支持するステアリングコラム27を有している。ステアリングコラム27は、筒状をなし、取付部材としての車体側部材14に支持されている。
また、電動パワーステアリング装置1Aは、回転ダンパ30A,30B,30Cを有している。本実施形態では、3つの回転ダンパ30A,30B,30Cを有する場合に則して説明するが、後述するようにこれらのうちの少なくとも一つがあればよい。
【0021】
回転ダンパ30A,30B,30Cは、粘性流体の剪断抵抗や攪拌抵抗を利用して、回転軸に粘性抵抗を与える。これにより、上述の回転軸の回転運動における振動を抑制することができる。回転ダンパ30A,30B,30Cは、取り付け対象が異なっている。
回転ダンパ30Aは、回転軸としての入力軸3の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Aは、入力軸3と固定部としてのステアリングコラム27との間に介在する。固定部としてのステアリングコラム27は、取付部材としての車体側部材14に固定されている。
【0022】
回転ダンパ30Bは、回転軸としての出力軸5の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Bは、出力軸5と固定部としてのステアリングコラム27との間に介在する。出力軸5は、トーションバー4と連結される第1の連結部分501と、従動ギヤ26と連結される第2の連結部分502とを有している。回転ダンパ30Bは、第1の連結部分501と第2の連結部分502との間に配置されている。
【0023】
回転ダンパ30Cは、回転軸としてのピニオン軸9の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Cは、ピニオン軸9と固定部としてのハウジング15との間に介在する。固定部としてのハウジング15は、取付部材としての車体側部材14に固定されている。回転ダンパ30Cは、ピニオン軸9において第2の自在継手8と連結される部分とピニオン10との間に配置されている。
【0024】
回転ダンパ30A,30B,30Cは、互いに同じに構成されている。以下では、回転ダンパ30Aに則して説明し、回転ダンパ30B,30Cについては、回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明する。また、回転ダンパ30B,30Cの構成には、回転ダンパ30Aの同じ構成と同じ符合を付しておき、その説明を省略する。
図2は、図1に示す回転ダンパ30Aの斜視図である。図3は、図2に示す回転ダンパ30Aの断面図である。図2および図3を参照する。回転ダンパ30Aは、粘性流体31が封入されているとともにシール部材32により封止された粘性流体封入部33を有している。粘性流体封入部33に、回転軸としての入力軸3が挿通している。
【0025】
また、回転ダンパ30Aは、粘性流体封入部33内で回転軸としての入力軸3と同伴回転する回転体35を有している。また、回転ダンパ30Aは、回転体35を入力軸3と同伴回転可能に取り付ける取付部34を有している。また、回転ダンパ30Aは、粘性流体31を介して回転体35と粘性連結された連結体36を有している。
また、回転ダンパ30Aは、連結体36を保持するとともに粘性流体封入部33の一部を区画するホルダ37を有している。また、回転ダンパ30Aは、回転軸の回転方向A2(本実施形態では入力軸3の回転方向に相当する。)にホルダ37を弾性支持する弾性体39を有している。弾性体39は、複数、例えば、2つが用いられている。なお、弾性体39は、少なくとも一つあればよい。各弾性体39は、ホルダ37と、固定部としてのステアリングコラム27の受け部38との間に介在している。
【0026】
このように回転ダンパ30Aの連結体36のホルダ37を固定部としてのステアリングコラム27に弾性支持したので、シール部材32の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さい微小トルクが回転軸としての入力軸3に作用したときに、その微小トルクにより弾性体39を変形させることができる。その結果、ホルダ37、連結体36、および回転体35を、入力軸3と同伴回転させることができる。従って、シール部材32の抵抗トルクによる悪影響を抑制できる。すなわち、入力軸3を微小トルクでも回転させ始めることができる。
【0027】
本実施形態の回転ダンパ30Aを詳細に説明する。すなわち、粘性流体封入部33は、回転体35の一部およびホルダ37により円柱形状に区画されている。粘性流体封入部33に、粘性流体31、例えば、作動油が収容されている。
シール部材32は、取付部34の外周とホルダ37の内周との間を封止しており、粘性流体封入部33からの粘性流体31の漏れを防止する。シール部材32は、環状の弾性部材、例えば、Oリングからなり、締め付け状態で取付部34の外周と摺動可能に接している。
【0028】
取付部34は、筒状をなしている。取付部34の内周が、回転軸としての入力軸3の外周に嵌合している。取付部34と入力軸3とは、同伴回転可能に、互いに連結されている。
回転体35は、取付部34と、単一部材により一体に形成されているが、互いに別部材により構成されて互いに固定されてもよい。
【0029】
回転体35は、粘性流体31と接している。回転体35はフィンを形成している。回転体35のフィンは、円筒部分と、環状部分とを有する。円筒部分および環状部分は、入力軸3の中心軸線と同心に配置されている。
連結体36は、粘性流体31と接している。連結体36はフィンを形成している。連結体36のフィンは、円筒形状をなしている。連結体36のフィンは、入力軸3の中心軸線と同心に配置されている。
【0030】
回転体35および取付部34を含む回転側のユニットと、連結体36およびホルダ37を含み固定部によって弾性支持された側のユニットとは、互いに接触しないように配置されている。回転体35および連結体36の間には、隙間がある。この隙間に、粘性流体31が充填されている。
回転軸としての入力軸3には、当該入力軸3の回転速度に応じた抵抗トルクが発生するようになっている。すなわち、入力軸3を回転すると、回転体35のフィンは、粘性流体31内で移動する。これとともに、粘性流体31は、入力軸3と同じ回転方向に流れる。このとき、粘性流体31の粘性により、回転体35と連結体36との間に、回転を妨げる方向に、剪断抵抗が発生する。
【0031】
なお、回転体35および連結体36はともに、フィンに形成されるのが、抵抗を発生するのに好ましいが、フィンの形状は、上述のものに限定されない。例えば、後述する実施形態で示すように、回転体35および連結体36のフィンは、円筒部分と、環状部分との少なくとも一方を有していればよい。また、回転体35および連結体36の少なくとも一方がフィンを形成しない場合も考えられる。
【0032】
ホルダ37は、断面溝形をなす無端状の環状部分371と、この環状部分371の外周から径方向A3に延びる一対の延設部372とを有している。環状部分371がなす溝形状は、径方向内方に向けて開放されている。ホルダ37の一部は、粘性流体31を収容するケースとして機能する。ホルダ37の環状部分371の内周に、シール部材32が保持されている。一対の延設部372は、径方向外方へ向けて互いに逆向きに延びている。延設部372の少なくとも一部と、受け部38とが、互いに対向している。互いに対向する方向に沿って見るときに、延設部372と受け部38の少なくとも一部同士が、互いに重なりあうようになっている。
【0033】
ステアリングコラム27は、受け部38を有している。受け部38は、弾性体39を受けるストッパとして機能する。受け部38は、ステアリングコラム27の残りの部分としての主体部に固定されている。また、本実施形態では、ステアリングコラム27の主体部に対する受け部38の固定位置は、回転軸の軸方向A1について調節可能とされている。これにより、受け部38とホルダ37の延設部372との互いに対向する面積を調節することができる。これにより、ホルダ37を受けるときの弾性体39の弾性係数を、ひいては弾性体39の弾性力や剛性を調整することができる。
【0034】
弾性体39は、ゴム部材により板状に形成されている。なお、弾性体39としては、ゴム部材の他、ばねを用いてもよい。弾性体39は、ホルダ37の延設部372と受け部38とが互いに対向する方向(弾性体39の板形状の厚み方向に相当する。)についての一端と他端とを有している。弾性体39の一端は、ホルダ37の各延設部372に固定されている。また、弾性体39の他端は、弾性変形を受けない自然状態で受け部38に受けられてもよいし、弾性圧縮変形された状態で受け部38に受けられてもよい。また、弾性体39の一端がホルダ37に固定されることと、弾性体39の他端が受け部38に固定されることとの少なくとも一方が実現されていればよい。
【0035】
本実施形態では、回転ダンパ30Aは、振動抑制対象である回転軸としての入力軸3に取り付けられる取付部34を含んでいる。さらに、シール部材32、粘性流体封入部33、取付部34、回転体35、連結体36、ホルダ37、および弾性体39を、一体的に扱える単一のユニットに構成している。これにより、回転ダンパ30Aを組み付け易くできる。
【0036】
図1および図3を参照して、回転ダンパ30Aの回転体35と、回転軸であり且つ操舵軸としての入力軸3とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Aの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのステアリングコラム27の受け部38に受けられて、固定されている。
また、詳しくは図示していないが、回転ダンパ30Bの回転体35と操舵軸としての出力軸5とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Bの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのステアリングコラム27に固定されている。回転ダンパ30Cの回転体35と操舵軸としてのピニオン軸9とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Cの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのハウジング15に固定されている。
【0037】
操舵部材2の操作に応じて転舵軸としてのラック軸12をその軸方向X1に駆動する操舵補助力を電動モータ23によって発生する電動パワーステアリング装置1Aが、回転ダンパ30A,30B,30Cと、これらの振動抑制対象である回転軸としての操舵軸、具体的には、入力軸3、出力軸5、およびピニオン軸9とを備えている。
これにより、回転ダンパ30A,30B,30Cにより上述の操舵軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、操舵軸において回転ダンパ30A,30B,30Cにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材2を通じて振動を感じることを抑制できる。また、本実施形態では、回転ダンパを剛性支持する従来の場合と比較して、小さな操舵トルクで操舵軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0038】
なお、この効果を得るには、回転ダンパ30A,30B,30Cがともに用いられるのが好ましいが、少なくとも一つの任意の回転ダンパ30A,30B,30Cが、回転軸としての上述の操舵軸に粘性抵抗を付与するように取り付けられてもよい。また、上述の操舵軸としての中間軸7に粘性抵抗を付与する回転ダンパ(図示せず)を設けてもよい。
また、回転ダンパ30A,30Bにより、電動モータ23の出力軸の回転方向の振動が操舵部材2に伝達されることを確実に抑制することが可能となる。
【0039】
電動パワーステアリング装置用転舵機構13は、回転ダンパ30Cと、回転軸であり操舵軸としてのピニオン軸9と、ピニオン軸9と係合するラック軸12とを有している。これにより、回転ダンパ30Cによりピニオン軸9の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、ピニオン軸9において回転ダンパ30Cにより減衰させることができ、ひいては、ドライバーが操舵部材2を通じて振動を感じることを抑制できる。また、本実施形態では、回転ダンパを剛性支持する従来の場合と比較して、小さな操舵トルクでピニオン軸9を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0040】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
例えば、図4は、本発明の他の実施形態の電動パワーステアリング装置1Bの概略構成の模式図である。図5は、図4に示す電動モータ23Bの断面図である。図4に示す電動パワーステアリング装置1Bは、図1の操舵補助用の電動モータ23に代えて、図4の電動モータ23Bを有している。電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dを有している点で、図1の電動モータ23と異なっている。
【0041】
図5を参照して、電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dと、固定部としてのモータハウジング41と、モータハウジング41に固定されたステータ42と、回転可能に支持された環状のロータ43とを備えている。また、電動モータ23Bは、モータハウジング41に軸受44,45を介して回動可能に支持された出力軸46を有している。ロータ43は、回転軸としての出力軸46と同伴回転可能に連結されている。ロータ43は、永久磁石を含んでいる。ステータ42は、ロータ43の永久磁石を取り囲み環状をなすステータコア47と、このステータコア47に巻かれた複数のコイル48とを有している。
【0042】
モータハウジング41は、筒部材411と、この筒部材411の両端を覆う一対の端部材412,413とを有している。モータハウジング41の内部に、ロータ43およびステータ42が収容されている。出力軸46とロータ43とステータ42とは、互いに同心に配置されている。
また、電動パワーステアリング装置1Bは、電動モータ23Bのステータ42に対するロータ43の回転角度を検出する角度検出器としてのレゾルバ49を有している。レゾルバ49は、検出部としての環状のレゾルバステータ50と、可動部としての環状のレゾルバロータ51とを有している。
【0043】
図4と図5を参照して、回転ダンパ30Dは、回転軸としての出力軸46の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Dは、出力軸46と固定部としてのモータハウジング41との間に介在する。固定部としてのモータハウジング41は、ステアリングコラム27に固定され、このステアリングコラム27を介して取付部材としての車体側部材14に固定されている。
【0044】
本実施形態では、回転ダンパ30A,30B,30Cによる上述した効果に加えて、回転ダンパ30Dによる以下の効果を得ることができる。
すなわち、回転ダンパ30Dによりロータ43の回転方向の振動を抑制することができる。しかも、電動モータ23Bのロータ43の回転を、微小トルクが作用する状態から、速やかに立ち上げることができる。また、ロータ43の回転が動的に安定するので、ロータ43の回転を制御し易くできる。従って、振動し難くて応答性の優れた電動モータ23Bを実現することができる。例えば、電動モータ23Bのロータ43の慣性と出力軸46の剛性に起因する固有振動を抑制することができる。
【0045】
また、電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dを含むユニットを構成し、回転ダンパ30Dがモータハウジング41に保持されている。これにより、電動モータ23Bの組み付けに伴って、回転ダンパ30Dの組み付けを容易に達成することができる。
回転ダンパ30Dを、汎用性の高い電動モータ23Bに内蔵したので、回転ダンパ30Dを広い範囲の機械、装置に容易に適用できる。ひいては、回転ダンパ30Dの大量生産や、低コスト化を図ることができる。
【0046】
また、回転ダンパ30Dの少なくとも一部が、ステータ42の径方向内方に配置されている。この場合には、回転ダンパ30D付きの電動モータ23Bを、ロータ43の軸方向に小型化することができる。図5では、ステータ42の一部としての軸方向端部と、回転ダンパ30Dの一部とが、ステータ42の径方向に見たときに互いに重なり合って見えるように配置されているが、ステータ42の一部と、回転ダンパ30Dの全体とが、互いに重なり合って見えるように配置されてもよい。
【0047】
図6は、図5の回転ダンパ30Dの拡大図である。図7は、図6に示すホルダ37D、弾性体39D、およびモータハウジング41の斜視図である。図6および図7を参照して、回転ダンパ30Dについては、上述の回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明し、同じ構成については、回転ダンパ30Aの対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0048】
回転ダンパ30Dは、粘性流体31と、シール部材32と、粘性流体封入部33と、取付部34と、回転体35と、連結体36とを有している。また、回転ダンパ30Dは、ホルダ37Dと、複数の弾性体39Dとを備えている。回転ダンパ30Dの弾性体39Dの一部が、固定部としての筒状のモータハウジング41の内側部分に固定されている。
ホルダ37Dは、出力軸46と同心に配置された環状の板に形成されている。モータハウジング41の端部材413は、固定部としての複数の凸部52を有している。これらの凸部52は、出力軸46の軸方向に沿って、モータハウジング41の内方に向けて突出している。これらの凸部52は、軸受45の周囲に環状をなして均等に配置されている。各凸部52の外周には、環状の弾性体39Dの内周が嵌合されて取り付けられている。弾性体39Dは、環状の弾性部材、例えば、Oリングにより構成されている。弾性体39Dの外周が、ホルダ37Dに形成された凹部373に嵌合されている。これにより、ホルダ37Dは、弾性支持されている。
【0049】
また、回転体35は、筒状の単一のフィン351と、粘性流体封入部33の一部を区画するケース54とを有している。このケース54は、取付部34と同伴回転可能に連結されており、フィン351を保持している。ケース54と、フィン351と、取付部34とは、単一部材により一体に形成されている。ホルダ37Dと一体に形成された連結体36は、筒状の2つのフィンにより構成されている。
【0050】
一方のシール部材32は、ホルダ37Dの内周と、取付部34の外周との間に介在している。他方のシール部材32は、ケース54の内周と、ホルダ37Dの外周との間に介在している。
なお、回転ダンパ30A,30B,30C,30Dをともに用いるのが、振動抑制には好ましいが、4つの回転ダンパ30A,30B,30C,30Dから任意に選択された少なくとも一つを用いることも考えられる。この場合には、選択された回転ダンパによる効果を得ることができる。
【0051】
図8は、さらに他の実施形態の回転ダンパ30Eの断面図であり、図9のVIII-VIII 断面を示す。図9は、図8のIX-IX 断面の断面図である。図8の回転ダンパ30Eは、軸受56を含む点で、図3の回転ダンパ30Aと相違しており、他の点では同じである。
以下では、回転ダンパ30Eを、回転ダンパ30Aに代えて、入力軸3に取り付けた場合に則して説明する。また、回転ダンパ30Eについては、上述の回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明し、同じ構成については、回転ダンパ30Aの対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。なお、後述する他の実施形態についても同様とする。
【0052】
回転ダンパ30Eは、粘性流体31と、シール部材32と、粘性流体封入部33と、取付部34と、回転体35と、連結体36とを有している。また、回転ダンパ30Eは、ホルダ37Eと、複数の弾性体39Eとを有している。回転ダンパ30Eは、軸受56を有している。
軸受56は、回転軸としての入力軸3を回転可能に支持し、ホルダ37Eを回転軸の軸方向A1(入力軸3の軸方向が相当する)および回転軸の径方向A3に位置決めしている。軸受56は、ホルダ37Eに対して、上述の回転軸の軸方向A1および径方向A3についての回転体35の移動を規制している。具体的には、軸受56は、転がり軸受である。軸受56は、内輪561と、外輪562と、転動体としての複数のボール563とを有している。
【0053】
回転ダンパ30Eのホルダ37Eは、上述した図3に示したホルダ37の環状部371と同様に形成されており、上述の延設部372は有していない。また、ホルダ37Eは、二面幅を形成する一対の平面374を有している。平面374は、回転軸の回転方向A2に対して交差する部分を含む。この平面374と、固定部としてのステアリングコラム27の内周面との間に、弾性体39Eが介在している。
【0054】
弾性体39Eは、板状をなし、板の厚み方向に対向する一対の面としての平面と湾曲面とを有している。
弾性体39Eの一部としての平面は、ホルダ37Eの平面374に接している。弾性体39Eの一部としての湾曲面は、固定部としてのステアリングコラム27の内周面に固定されている。
【0055】
また、ホルダ37Eと、軸受56の外輪562とは、互いに同心に配置されており、ステアリングコラム27の内周面にともに嵌合している。これとともに、ホルダ37Eおよび外輪562の端面同士が、互いに当接している。これにより、回転軸の軸方向A1に関して、ホルダ37Eと外輪562とが互いに位置決めされている。
回転ダンパ30Eの取付部34と軸受56の内輪561とは、互いに同心に配置されており、ともに回転軸としての入力軸3の外周に嵌合している。取付部34の端面と、内輪561の端面とが、互いに当接している。これにより、回転軸の軸方向A1に関して、取付部34と内輪561とが互いに位置決めされている。
【0056】
回転ダンパ30Eが軸受56を含むことにより、ホルダ37Eを回転軸の軸方向A1および径方向A3に容易に位置決めすることができる。また、回転ダンパ30Eを、軸受56を含む一体的なユニットに構成する場合には、回転ダンパ30Eを組み付け易くできる。
また、回転ダンパ30Eの軸受56を利用することを通じて、ステアリング装置等の装置全体のなかの他の軸受支持構造を簡素化することが可能となる。その結果、装置全体としての小型化、軽量化を図ることが可能となる。また、回転ダンパ30Eが汎用部品としての軸受56の機能を有するので、回転ダンパ30Eの汎用性が向上し、ひいては、大量生産することによる低コスト化が可能となる。
【0057】
また、回転軸の軸方向A1および径方向A3に関して、回転体35と連結体36との相対移動を規制できるので、粘性抵抗を安定して得ることができる。
図10は、図8とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパ30Fの模式図である。本実施形態の回転ダンパ30Fのホルダ37Fは、単一の延設部372を有しており、この点で、図2に示す回転ダンパ30Aのホルダ37と異なっている。延設部372は、回転軸の回転方向A2について、互いに逆向きに付勢されるように、両側から一対の弾性体39により挟持されている。
【0058】
図11は、図10とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパ30Gの半断面図である。本実施形態の回転ダンパ30Gの回転体35Gは、円筒状の複数のフィンを形成している。回転体35Gの複数のフィンは、環状の連結板58を介して回転軸としての入力軸3と同伴回転可能に連結されている。また、連結体36Gは、円筒状の複数のフィンを形成している。これらのフィンは、ホルダ37Gにより保持されている。
【0059】
ホルダ37Gは、円筒状部分375と、この円筒状部分375の内周から径方向内方に延びる環状板部分376とを有している。ホルダ37Gと、連結板58とにより、粘性流体封入部33が区画されている。
一方のシール部材32は、ホルダ37Gの環状板部分376の内周と、取付部34の外周との間に介在している。他方のシール部材32は、環状の連結板58の外周と、ホルダ37Gの円筒状部分375の内周との間に介在している。
【0060】
また、上述の各実施形態の回転ダンパ30D,30E,30F,30Gを、回転ダンパ30Bに代えて出力軸5の振動抑制に用いてもよいし、回転ダンパ30Cに代えてピニオン軸9の振動抑制に用いてもよいし、中間軸7に用いてもよい。また、上述の回転ダンパ30A,30E,30F,30Gを、電動モータ23Bの回転ダンパ30Dに代えて用いてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、いわゆるコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置1A,1Bに本発明が適用された例について説明したが、これに限らず、いわゆるピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置や、いわゆるラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に、本発明を適用してもよい。また、電動パワーステアリング装置以外に、ステアリング装置全般に本発明を適用してもよい。また、本発明の電動モータ23Bを電動パワーステアリング装置以外の装置に適用してもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B…電動パワーステアリング装置、2…操舵部材、3…入力軸(操舵軸、回転軸)、5…出力軸(操舵軸、回転軸)、7…中間軸(操舵軸、回転軸)、9…ピニオン軸(操舵軸、回転軸)、12…ラック軸(転舵軸)、13…転舵機構、14…車体側部材(取付部材)、15…ハウジング(固定部)、23,23B…電動モータ、27…ステアリングコラム(固定部)、30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G…回転ダンパ、31…粘性流体、32…シール部材、33…粘性流体封入部、35,35G…回転体、36,36G…連結体、37,37D,37E,37F,37G…ホルダ、39,39D,39E…弾性体、41…モータハウジング(固定部)、42…ステータ、43…ロータ、46…出力軸(回転軸)、56…軸受、A1…回転軸の軸方向、A2…回転軸の回転方向、A3…回転軸の径方向、X1…転舵軸の軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ダンパ、電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘性流体を利用して回転軸の回転振動を抑制する回転ダンパにおいて、回転軸を回転させ始めるときの抵抗を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1の回転ダンパでは、上述の抵抗を抑制するために、粘性流体を収容する収容部の一部を拡幅している。
【0003】
特許文献2の回転ダンパは、粘性流体を収容する一対の収容部を仕切るとともに回転軸と同伴回転するベーンを有している。このベーンの周囲には、封止用の溝が形成されている。この溝の一部を広くすることにより、上述の抵抗を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224818号公報
【特許文献2】特開2006−316863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2の何れにおいても、上述の抵抗の抑制効果は十分ではなかった。というのは、粘性流体の漏れを防止するためのシール部材が回転軸に摺接しているので、回転軸を回転させ始めるときにシール部材の摩擦による悪影響が生じる。具体的には、シール部材の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さなトルクを回転軸に作用させても、回転軸は回転しない。
【0006】
その結果、回転ダンパをパワーステアリング装置に適用する場合には、微小な操舵トルクが伝達されないので、動作遅れが生じる結果、操舵感が悪くなる。また、回転ダンパにおけるシール部材の上述の悪影響を解決することは、ステアリング装置以外の分野においても要望されている。
そこで、本発明の目的は、シール部材の悪影響を抑制できる回転ダンパ、並びに、これを有する電動モータ、ステアリング装置用転舵機構、およびステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、回転軸(3,5,7,9;46)に粘性抵抗を与える回転ダンパ(30A;30B;30C;30D;30E;30F;30G)において、シール部材(32)により封止され上記回転軸が挿通された粘性流体封入部(33)と、上記粘性流体封入部内で上記回転軸と同伴回転する回転体(35;35G)と、上記回転体と粘性流体(31)を介して粘性連結された連結体(36;36G)と、上記連結体を保持し、上記粘性流体封入部の一部を区画するホルダ(37;37D;37E;37F;37G)と、取付部材(14)に固定された固定部(15,27;41)と上記ホルダとの間に介在し、上記回転軸の回転方向(A2)に上記ホルダを弾性支持する弾性体(39;39D;39E)とを備えることを特徴とする回転ダンパである。
【0008】
本発明によれば、連結体のホルダを固定部に弾性支持したので、シール部材の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さい微小トルクが回転軸に作用したときに、その微小トルクにより弾性体を変形させることができる。その結果、ホルダ、連結体、および回転体を、回転軸と同伴回転させることができる。従って、シール部材の悪影響を抑制できる。
また、本発明において、上記回転軸を回転可能に支持し、上記ホルダを上記回転軸の軸方向(A1)および径方向(A3)に位置決めする軸受(56)を備える場合がある(請求項2)。この場合、ホルダを回転軸の軸方向および径方向に容易に位置決めすることができる。また、回転ダンパを、軸受を含む一体的なユニットに構成することも可能となる。この場合には、回転ダンパを組み付け易くできる。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の上記回転ダンパと、上記固定部としてのモータハウジング(41)と、上記モータハウジングに固定されたステータ(42)と、上記回転軸(46)と同伴回転するロータ(43)とを備えることを特徴とする電動モータ(23B)であってもよい(請求項3)。
この場合、回転ダンパによりロータの回転方向の振動を抑制することができる。しかも、電動モータのロータの回転を、微小トルクが作用する状態から、速やかに立ち上げることができる。また、ロータの回転が動的に安定するので、ロータの回転を制御し易くできる。従って、振動し難くて応答性の優れた電動モータを実現することができる。また、回転ダンパがモータハウジングに保持されているので、電動モータの組み付けに伴って、回転ダンパの組み付けを達成することができる。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の上記回転ダンパと、上記回転軸としてのピニオン軸(9)と、上記ピニオン軸と係合するラック軸(12)とを備えることを特徴とするステアリング装置用転舵機構(13)であってもよい(請求項4)。この場合、回転ダンパによりピニオン軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、ピニオン軸において回転ダンパにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材を通じて振動を感じることを抑制できる。また、回転ダンパを剛性支持する場合と比較して、小さな操舵トルクでピニオン軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0011】
また、本発明は、操舵部材(2)の操作に応じて転舵軸(12)を軸方向(X1)に駆動するステアリング装置(1A;1B)において、上記本発明の上記回転ダンパと、上記回転軸としての操舵軸(3,5,7,9)とを備えることを特徴とするステアリング装置であってもよい(請求項5)。
この場合、回転ダンパにより操舵軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、操舵軸において回転ダンパにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材を通じて振動を感じることを抑制できる。また、電動パワーステアリング装置の場合、電動モータの出力軸の回転方向の振動が操舵部材に伝達されることを抑制することも可能となる。また、回転ダンパを剛性支持する場合と比較して、小さな操舵トルクで操舵軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0012】
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1に示す回転ダンパの斜視図である。
【図3】図2に示す回転ダンパの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図5】図4に示す電動モータの断面図である。
【図6】図5の回転ダンパの拡大図である。
【図7】図6に示すホルダ、弾性体、およびモータハウジングの斜視図である。
【図8】さらに他の実施形態の回転ダンパの断面図であり、図9のVIII-VIII 断面を示す。
【図9】図8のIX-IX 断面の断面図である。
【図10】図8とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパの模式図である。
【図11】図10とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、回転ダンパが、自動車の電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)に適用された場合に則して説明する。なお、本実施形態の回転ダンパが、電動パワーステアリング装置以外の装置に適用されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1Aは、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結している第1の操舵軸としての入力軸3と、この入力軸3にトーションバー4を介して連結された第2の操舵軸としての出力軸5とを有している。また、電動パワーステアリング装置1Aは、出力軸5に第1の自在継手6を介して連結された操舵軸としての中間軸7と、中間軸7に第2の自在継手8を介して連結された操舵軸としてのピニオン軸9と、ピニオン軸9の端部近傍に設けられたピニオン10に噛み合うラック11を有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸12とを有している。
【0015】
ピニオン軸9およびラック軸12により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構13が構成されている。ラック軸12は、車体側部材14に固定されるハウジング15内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラック軸12には、一対のタイロッドが結合されている。各タイロッドは対応するナックルアームを介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0016】
操舵部材2が操作されて入力軸3、トーションバー4および出力軸5が回転されると、この回転がピニオン10およびラック11によって、自動車の左右方向に関するラック軸12の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
また、入力軸3および出力軸5はトーションバー4を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸3に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー4が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸3および出力軸5が相対回転するようになっている。
【0017】
トーションバー4を介する入力軸3および出力軸5の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵力(本実施形態では操舵補助力)を発生するためのアクチュエータとしての電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機構24とが設けられている。
【0018】
減速機構24は、平行軸歯車機構を含んでいる。減速機構24は、電動モータ23により回転駆動される駆動ギヤ25と、この駆動ギヤ25に噛み合うと共に出力軸5と同伴回転するように連結される従動ギヤ26とを有している。具体的には、駆動ギヤ25は、相対的に小径の斜歯歯車であり、従動ギヤ26は、相対的に大径の斜歯歯車である。また、斜歯歯車に代えて平歯車を用いてもよい。また、減速機構24は、上述の平行軸歯車機構以外の歯車機構、例えば、ウォームギヤを含んでいてもよい。この場合、駆動ギヤ25は、ウォームであり、従動ギヤ26は、ウォームホイールである。
【0019】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機構24を介して減速されてピニオン軸9に伝達され、ラック軸12の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0020】
また、電動パワーステアリング装置1Aは、複数の軸受(図示せず)を介して、入力軸3、トーションバー4および出力軸5を回転可能に支持するステアリングコラム27を有している。ステアリングコラム27は、筒状をなし、取付部材としての車体側部材14に支持されている。
また、電動パワーステアリング装置1Aは、回転ダンパ30A,30B,30Cを有している。本実施形態では、3つの回転ダンパ30A,30B,30Cを有する場合に則して説明するが、後述するようにこれらのうちの少なくとも一つがあればよい。
【0021】
回転ダンパ30A,30B,30Cは、粘性流体の剪断抵抗や攪拌抵抗を利用して、回転軸に粘性抵抗を与える。これにより、上述の回転軸の回転運動における振動を抑制することができる。回転ダンパ30A,30B,30Cは、取り付け対象が異なっている。
回転ダンパ30Aは、回転軸としての入力軸3の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Aは、入力軸3と固定部としてのステアリングコラム27との間に介在する。固定部としてのステアリングコラム27は、取付部材としての車体側部材14に固定されている。
【0022】
回転ダンパ30Bは、回転軸としての出力軸5の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Bは、出力軸5と固定部としてのステアリングコラム27との間に介在する。出力軸5は、トーションバー4と連結される第1の連結部分501と、従動ギヤ26と連結される第2の連結部分502とを有している。回転ダンパ30Bは、第1の連結部分501と第2の連結部分502との間に配置されている。
【0023】
回転ダンパ30Cは、回転軸としてのピニオン軸9の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Cは、ピニオン軸9と固定部としてのハウジング15との間に介在する。固定部としてのハウジング15は、取付部材としての車体側部材14に固定されている。回転ダンパ30Cは、ピニオン軸9において第2の自在継手8と連結される部分とピニオン10との間に配置されている。
【0024】
回転ダンパ30A,30B,30Cは、互いに同じに構成されている。以下では、回転ダンパ30Aに則して説明し、回転ダンパ30B,30Cについては、回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明する。また、回転ダンパ30B,30Cの構成には、回転ダンパ30Aの同じ構成と同じ符合を付しておき、その説明を省略する。
図2は、図1に示す回転ダンパ30Aの斜視図である。図3は、図2に示す回転ダンパ30Aの断面図である。図2および図3を参照する。回転ダンパ30Aは、粘性流体31が封入されているとともにシール部材32により封止された粘性流体封入部33を有している。粘性流体封入部33に、回転軸としての入力軸3が挿通している。
【0025】
また、回転ダンパ30Aは、粘性流体封入部33内で回転軸としての入力軸3と同伴回転する回転体35を有している。また、回転ダンパ30Aは、回転体35を入力軸3と同伴回転可能に取り付ける取付部34を有している。また、回転ダンパ30Aは、粘性流体31を介して回転体35と粘性連結された連結体36を有している。
また、回転ダンパ30Aは、連結体36を保持するとともに粘性流体封入部33の一部を区画するホルダ37を有している。また、回転ダンパ30Aは、回転軸の回転方向A2(本実施形態では入力軸3の回転方向に相当する。)にホルダ37を弾性支持する弾性体39を有している。弾性体39は、複数、例えば、2つが用いられている。なお、弾性体39は、少なくとも一つあればよい。各弾性体39は、ホルダ37と、固定部としてのステアリングコラム27の受け部38との間に介在している。
【0026】
このように回転ダンパ30Aの連結体36のホルダ37を固定部としてのステアリングコラム27に弾性支持したので、シール部材32の静止摩擦による抵抗トルクよりも小さい微小トルクが回転軸としての入力軸3に作用したときに、その微小トルクにより弾性体39を変形させることができる。その結果、ホルダ37、連結体36、および回転体35を、入力軸3と同伴回転させることができる。従って、シール部材32の抵抗トルクによる悪影響を抑制できる。すなわち、入力軸3を微小トルクでも回転させ始めることができる。
【0027】
本実施形態の回転ダンパ30Aを詳細に説明する。すなわち、粘性流体封入部33は、回転体35の一部およびホルダ37により円柱形状に区画されている。粘性流体封入部33に、粘性流体31、例えば、作動油が収容されている。
シール部材32は、取付部34の外周とホルダ37の内周との間を封止しており、粘性流体封入部33からの粘性流体31の漏れを防止する。シール部材32は、環状の弾性部材、例えば、Oリングからなり、締め付け状態で取付部34の外周と摺動可能に接している。
【0028】
取付部34は、筒状をなしている。取付部34の内周が、回転軸としての入力軸3の外周に嵌合している。取付部34と入力軸3とは、同伴回転可能に、互いに連結されている。
回転体35は、取付部34と、単一部材により一体に形成されているが、互いに別部材により構成されて互いに固定されてもよい。
【0029】
回転体35は、粘性流体31と接している。回転体35はフィンを形成している。回転体35のフィンは、円筒部分と、環状部分とを有する。円筒部分および環状部分は、入力軸3の中心軸線と同心に配置されている。
連結体36は、粘性流体31と接している。連結体36はフィンを形成している。連結体36のフィンは、円筒形状をなしている。連結体36のフィンは、入力軸3の中心軸線と同心に配置されている。
【0030】
回転体35および取付部34を含む回転側のユニットと、連結体36およびホルダ37を含み固定部によって弾性支持された側のユニットとは、互いに接触しないように配置されている。回転体35および連結体36の間には、隙間がある。この隙間に、粘性流体31が充填されている。
回転軸としての入力軸3には、当該入力軸3の回転速度に応じた抵抗トルクが発生するようになっている。すなわち、入力軸3を回転すると、回転体35のフィンは、粘性流体31内で移動する。これとともに、粘性流体31は、入力軸3と同じ回転方向に流れる。このとき、粘性流体31の粘性により、回転体35と連結体36との間に、回転を妨げる方向に、剪断抵抗が発生する。
【0031】
なお、回転体35および連結体36はともに、フィンに形成されるのが、抵抗を発生するのに好ましいが、フィンの形状は、上述のものに限定されない。例えば、後述する実施形態で示すように、回転体35および連結体36のフィンは、円筒部分と、環状部分との少なくとも一方を有していればよい。また、回転体35および連結体36の少なくとも一方がフィンを形成しない場合も考えられる。
【0032】
ホルダ37は、断面溝形をなす無端状の環状部分371と、この環状部分371の外周から径方向A3に延びる一対の延設部372とを有している。環状部分371がなす溝形状は、径方向内方に向けて開放されている。ホルダ37の一部は、粘性流体31を収容するケースとして機能する。ホルダ37の環状部分371の内周に、シール部材32が保持されている。一対の延設部372は、径方向外方へ向けて互いに逆向きに延びている。延設部372の少なくとも一部と、受け部38とが、互いに対向している。互いに対向する方向に沿って見るときに、延設部372と受け部38の少なくとも一部同士が、互いに重なりあうようになっている。
【0033】
ステアリングコラム27は、受け部38を有している。受け部38は、弾性体39を受けるストッパとして機能する。受け部38は、ステアリングコラム27の残りの部分としての主体部に固定されている。また、本実施形態では、ステアリングコラム27の主体部に対する受け部38の固定位置は、回転軸の軸方向A1について調節可能とされている。これにより、受け部38とホルダ37の延設部372との互いに対向する面積を調節することができる。これにより、ホルダ37を受けるときの弾性体39の弾性係数を、ひいては弾性体39の弾性力や剛性を調整することができる。
【0034】
弾性体39は、ゴム部材により板状に形成されている。なお、弾性体39としては、ゴム部材の他、ばねを用いてもよい。弾性体39は、ホルダ37の延設部372と受け部38とが互いに対向する方向(弾性体39の板形状の厚み方向に相当する。)についての一端と他端とを有している。弾性体39の一端は、ホルダ37の各延設部372に固定されている。また、弾性体39の他端は、弾性変形を受けない自然状態で受け部38に受けられてもよいし、弾性圧縮変形された状態で受け部38に受けられてもよい。また、弾性体39の一端がホルダ37に固定されることと、弾性体39の他端が受け部38に固定されることとの少なくとも一方が実現されていればよい。
【0035】
本実施形態では、回転ダンパ30Aは、振動抑制対象である回転軸としての入力軸3に取り付けられる取付部34を含んでいる。さらに、シール部材32、粘性流体封入部33、取付部34、回転体35、連結体36、ホルダ37、および弾性体39を、一体的に扱える単一のユニットに構成している。これにより、回転ダンパ30Aを組み付け易くできる。
【0036】
図1および図3を参照して、回転ダンパ30Aの回転体35と、回転軸であり且つ操舵軸としての入力軸3とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Aの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのステアリングコラム27の受け部38に受けられて、固定されている。
また、詳しくは図示していないが、回転ダンパ30Bの回転体35と操舵軸としての出力軸5とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Bの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのステアリングコラム27に固定されている。回転ダンパ30Cの回転体35と操舵軸としてのピニオン軸9とが、互いに同伴回転するように互いに連結されている。また、回転ダンパ30Cの弾性体39の上述の他端が、固定部としてのハウジング15に固定されている。
【0037】
操舵部材2の操作に応じて転舵軸としてのラック軸12をその軸方向X1に駆動する操舵補助力を電動モータ23によって発生する電動パワーステアリング装置1Aが、回転ダンパ30A,30B,30Cと、これらの振動抑制対象である回転軸としての操舵軸、具体的には、入力軸3、出力軸5、およびピニオン軸9とを備えている。
これにより、回転ダンパ30A,30B,30Cにより上述の操舵軸の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、操舵軸において回転ダンパ30A,30B,30Cにより減衰させることができ、ドライバーが操舵部材2を通じて振動を感じることを抑制できる。また、本実施形態では、回転ダンパを剛性支持する従来の場合と比較して、小さな操舵トルクで操舵軸を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0038】
なお、この効果を得るには、回転ダンパ30A,30B,30Cがともに用いられるのが好ましいが、少なくとも一つの任意の回転ダンパ30A,30B,30Cが、回転軸としての上述の操舵軸に粘性抵抗を付与するように取り付けられてもよい。また、上述の操舵軸としての中間軸7に粘性抵抗を付与する回転ダンパ(図示せず)を設けてもよい。
また、回転ダンパ30A,30Bにより、電動モータ23の出力軸の回転方向の振動が操舵部材2に伝達されることを確実に抑制することが可能となる。
【0039】
電動パワーステアリング装置用転舵機構13は、回転ダンパ30Cと、回転軸であり操舵軸としてのピニオン軸9と、ピニオン軸9と係合するラック軸12とを有している。これにより、回転ダンパ30Cによりピニオン軸9の回転方向の振動を抑制することができる。従って、例えば、路面からの逆入力振動を、ピニオン軸9において回転ダンパ30Cにより減衰させることができ、ひいては、ドライバーが操舵部材2を通じて振動を感じることを抑制できる。また、本実施形態では、回転ダンパを剛性支持する従来の場合と比較して、小さな操舵トルクでピニオン軸9を回転できるので、応答性のよい良好な操舵感を実現できる。
【0040】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
例えば、図4は、本発明の他の実施形態の電動パワーステアリング装置1Bの概略構成の模式図である。図5は、図4に示す電動モータ23Bの断面図である。図4に示す電動パワーステアリング装置1Bは、図1の操舵補助用の電動モータ23に代えて、図4の電動モータ23Bを有している。電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dを有している点で、図1の電動モータ23と異なっている。
【0041】
図5を参照して、電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dと、固定部としてのモータハウジング41と、モータハウジング41に固定されたステータ42と、回転可能に支持された環状のロータ43とを備えている。また、電動モータ23Bは、モータハウジング41に軸受44,45を介して回動可能に支持された出力軸46を有している。ロータ43は、回転軸としての出力軸46と同伴回転可能に連結されている。ロータ43は、永久磁石を含んでいる。ステータ42は、ロータ43の永久磁石を取り囲み環状をなすステータコア47と、このステータコア47に巻かれた複数のコイル48とを有している。
【0042】
モータハウジング41は、筒部材411と、この筒部材411の両端を覆う一対の端部材412,413とを有している。モータハウジング41の内部に、ロータ43およびステータ42が収容されている。出力軸46とロータ43とステータ42とは、互いに同心に配置されている。
また、電動パワーステアリング装置1Bは、電動モータ23Bのステータ42に対するロータ43の回転角度を検出する角度検出器としてのレゾルバ49を有している。レゾルバ49は、検出部としての環状のレゾルバステータ50と、可動部としての環状のレゾルバロータ51とを有している。
【0043】
図4と図5を参照して、回転ダンパ30Dは、回転軸としての出力軸46の回転方向の振動を抑制する。回転ダンパ30Dは、出力軸46と固定部としてのモータハウジング41との間に介在する。固定部としてのモータハウジング41は、ステアリングコラム27に固定され、このステアリングコラム27を介して取付部材としての車体側部材14に固定されている。
【0044】
本実施形態では、回転ダンパ30A,30B,30Cによる上述した効果に加えて、回転ダンパ30Dによる以下の効果を得ることができる。
すなわち、回転ダンパ30Dによりロータ43の回転方向の振動を抑制することができる。しかも、電動モータ23Bのロータ43の回転を、微小トルクが作用する状態から、速やかに立ち上げることができる。また、ロータ43の回転が動的に安定するので、ロータ43の回転を制御し易くできる。従って、振動し難くて応答性の優れた電動モータ23Bを実現することができる。例えば、電動モータ23Bのロータ43の慣性と出力軸46の剛性に起因する固有振動を抑制することができる。
【0045】
また、電動モータ23Bは、回転ダンパ30Dを含むユニットを構成し、回転ダンパ30Dがモータハウジング41に保持されている。これにより、電動モータ23Bの組み付けに伴って、回転ダンパ30Dの組み付けを容易に達成することができる。
回転ダンパ30Dを、汎用性の高い電動モータ23Bに内蔵したので、回転ダンパ30Dを広い範囲の機械、装置に容易に適用できる。ひいては、回転ダンパ30Dの大量生産や、低コスト化を図ることができる。
【0046】
また、回転ダンパ30Dの少なくとも一部が、ステータ42の径方向内方に配置されている。この場合には、回転ダンパ30D付きの電動モータ23Bを、ロータ43の軸方向に小型化することができる。図5では、ステータ42の一部としての軸方向端部と、回転ダンパ30Dの一部とが、ステータ42の径方向に見たときに互いに重なり合って見えるように配置されているが、ステータ42の一部と、回転ダンパ30Dの全体とが、互いに重なり合って見えるように配置されてもよい。
【0047】
図6は、図5の回転ダンパ30Dの拡大図である。図7は、図6に示すホルダ37D、弾性体39D、およびモータハウジング41の斜視図である。図6および図7を参照して、回転ダンパ30Dについては、上述の回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明し、同じ構成については、回転ダンパ30Aの対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0048】
回転ダンパ30Dは、粘性流体31と、シール部材32と、粘性流体封入部33と、取付部34と、回転体35と、連結体36とを有している。また、回転ダンパ30Dは、ホルダ37Dと、複数の弾性体39Dとを備えている。回転ダンパ30Dの弾性体39Dの一部が、固定部としての筒状のモータハウジング41の内側部分に固定されている。
ホルダ37Dは、出力軸46と同心に配置された環状の板に形成されている。モータハウジング41の端部材413は、固定部としての複数の凸部52を有している。これらの凸部52は、出力軸46の軸方向に沿って、モータハウジング41の内方に向けて突出している。これらの凸部52は、軸受45の周囲に環状をなして均等に配置されている。各凸部52の外周には、環状の弾性体39Dの内周が嵌合されて取り付けられている。弾性体39Dは、環状の弾性部材、例えば、Oリングにより構成されている。弾性体39Dの外周が、ホルダ37Dに形成された凹部373に嵌合されている。これにより、ホルダ37Dは、弾性支持されている。
【0049】
また、回転体35は、筒状の単一のフィン351と、粘性流体封入部33の一部を区画するケース54とを有している。このケース54は、取付部34と同伴回転可能に連結されており、フィン351を保持している。ケース54と、フィン351と、取付部34とは、単一部材により一体に形成されている。ホルダ37Dと一体に形成された連結体36は、筒状の2つのフィンにより構成されている。
【0050】
一方のシール部材32は、ホルダ37Dの内周と、取付部34の外周との間に介在している。他方のシール部材32は、ケース54の内周と、ホルダ37Dの外周との間に介在している。
なお、回転ダンパ30A,30B,30C,30Dをともに用いるのが、振動抑制には好ましいが、4つの回転ダンパ30A,30B,30C,30Dから任意に選択された少なくとも一つを用いることも考えられる。この場合には、選択された回転ダンパによる効果を得ることができる。
【0051】
図8は、さらに他の実施形態の回転ダンパ30Eの断面図であり、図9のVIII-VIII 断面を示す。図9は、図8のIX-IX 断面の断面図である。図8の回転ダンパ30Eは、軸受56を含む点で、図3の回転ダンパ30Aと相違しており、他の点では同じである。
以下では、回転ダンパ30Eを、回転ダンパ30Aに代えて、入力軸3に取り付けた場合に則して説明する。また、回転ダンパ30Eについては、上述の回転ダンパ30Aとの相違点を中心に説明し、同じ構成については、回転ダンパ30Aの対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。なお、後述する他の実施形態についても同様とする。
【0052】
回転ダンパ30Eは、粘性流体31と、シール部材32と、粘性流体封入部33と、取付部34と、回転体35と、連結体36とを有している。また、回転ダンパ30Eは、ホルダ37Eと、複数の弾性体39Eとを有している。回転ダンパ30Eは、軸受56を有している。
軸受56は、回転軸としての入力軸3を回転可能に支持し、ホルダ37Eを回転軸の軸方向A1(入力軸3の軸方向が相当する)および回転軸の径方向A3に位置決めしている。軸受56は、ホルダ37Eに対して、上述の回転軸の軸方向A1および径方向A3についての回転体35の移動を規制している。具体的には、軸受56は、転がり軸受である。軸受56は、内輪561と、外輪562と、転動体としての複数のボール563とを有している。
【0053】
回転ダンパ30Eのホルダ37Eは、上述した図3に示したホルダ37の環状部371と同様に形成されており、上述の延設部372は有していない。また、ホルダ37Eは、二面幅を形成する一対の平面374を有している。平面374は、回転軸の回転方向A2に対して交差する部分を含む。この平面374と、固定部としてのステアリングコラム27の内周面との間に、弾性体39Eが介在している。
【0054】
弾性体39Eは、板状をなし、板の厚み方向に対向する一対の面としての平面と湾曲面とを有している。
弾性体39Eの一部としての平面は、ホルダ37Eの平面374に接している。弾性体39Eの一部としての湾曲面は、固定部としてのステアリングコラム27の内周面に固定されている。
【0055】
また、ホルダ37Eと、軸受56の外輪562とは、互いに同心に配置されており、ステアリングコラム27の内周面にともに嵌合している。これとともに、ホルダ37Eおよび外輪562の端面同士が、互いに当接している。これにより、回転軸の軸方向A1に関して、ホルダ37Eと外輪562とが互いに位置決めされている。
回転ダンパ30Eの取付部34と軸受56の内輪561とは、互いに同心に配置されており、ともに回転軸としての入力軸3の外周に嵌合している。取付部34の端面と、内輪561の端面とが、互いに当接している。これにより、回転軸の軸方向A1に関して、取付部34と内輪561とが互いに位置決めされている。
【0056】
回転ダンパ30Eが軸受56を含むことにより、ホルダ37Eを回転軸の軸方向A1および径方向A3に容易に位置決めすることができる。また、回転ダンパ30Eを、軸受56を含む一体的なユニットに構成する場合には、回転ダンパ30Eを組み付け易くできる。
また、回転ダンパ30Eの軸受56を利用することを通じて、ステアリング装置等の装置全体のなかの他の軸受支持構造を簡素化することが可能となる。その結果、装置全体としての小型化、軽量化を図ることが可能となる。また、回転ダンパ30Eが汎用部品としての軸受56の機能を有するので、回転ダンパ30Eの汎用性が向上し、ひいては、大量生産することによる低コスト化が可能となる。
【0057】
また、回転軸の軸方向A1および径方向A3に関して、回転体35と連結体36との相対移動を規制できるので、粘性抵抗を安定して得ることができる。
図10は、図8とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパ30Fの模式図である。本実施形態の回転ダンパ30Fのホルダ37Fは、単一の延設部372を有しており、この点で、図2に示す回転ダンパ30Aのホルダ37と異なっている。延設部372は、回転軸の回転方向A2について、互いに逆向きに付勢されるように、両側から一対の弾性体39により挟持されている。
【0058】
図11は、図10とは異なるさらに他の実施形態の回転ダンパ30Gの半断面図である。本実施形態の回転ダンパ30Gの回転体35Gは、円筒状の複数のフィンを形成している。回転体35Gの複数のフィンは、環状の連結板58を介して回転軸としての入力軸3と同伴回転可能に連結されている。また、連結体36Gは、円筒状の複数のフィンを形成している。これらのフィンは、ホルダ37Gにより保持されている。
【0059】
ホルダ37Gは、円筒状部分375と、この円筒状部分375の内周から径方向内方に延びる環状板部分376とを有している。ホルダ37Gと、連結板58とにより、粘性流体封入部33が区画されている。
一方のシール部材32は、ホルダ37Gの環状板部分376の内周と、取付部34の外周との間に介在している。他方のシール部材32は、環状の連結板58の外周と、ホルダ37Gの円筒状部分375の内周との間に介在している。
【0060】
また、上述の各実施形態の回転ダンパ30D,30E,30F,30Gを、回転ダンパ30Bに代えて出力軸5の振動抑制に用いてもよいし、回転ダンパ30Cに代えてピニオン軸9の振動抑制に用いてもよいし、中間軸7に用いてもよい。また、上述の回転ダンパ30A,30E,30F,30Gを、電動モータ23Bの回転ダンパ30Dに代えて用いてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、いわゆるコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置1A,1Bに本発明が適用された例について説明したが、これに限らず、いわゆるピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置や、いわゆるラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に、本発明を適用してもよい。また、電動パワーステアリング装置以外に、ステアリング装置全般に本発明を適用してもよい。また、本発明の電動モータ23Bを電動パワーステアリング装置以外の装置に適用してもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B…電動パワーステアリング装置、2…操舵部材、3…入力軸(操舵軸、回転軸)、5…出力軸(操舵軸、回転軸)、7…中間軸(操舵軸、回転軸)、9…ピニオン軸(操舵軸、回転軸)、12…ラック軸(転舵軸)、13…転舵機構、14…車体側部材(取付部材)、15…ハウジング(固定部)、23,23B…電動モータ、27…ステアリングコラム(固定部)、30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G…回転ダンパ、31…粘性流体、32…シール部材、33…粘性流体封入部、35,35G…回転体、36,36G…連結体、37,37D,37E,37F,37G…ホルダ、39,39D,39E…弾性体、41…モータハウジング(固定部)、42…ステータ、43…ロータ、46…出力軸(回転軸)、56…軸受、A1…回転軸の軸方向、A2…回転軸の回転方向、A3…回転軸の径方向、X1…転舵軸の軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に粘性抵抗を与える回転ダンパにおいて、
シール部材により封止され上記回転軸が挿通された粘性流体封入部と、
上記粘性流体封入部内で上記回転軸と同伴回転する回転体と、
上記回転体と粘性流体を介して粘性連結された連結体と、
上記連結体を保持し、上記粘性流体封入部の一部を区画するホルダと、
取付部材に固定された固定部と上記ホルダとの間に介在し、上記回転軸の回転方向に上記ホルダを弾性支持する弾性体とを備えることを特徴とする回転ダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転ダンパにおいて、
上記回転軸を回転可能に支持し、上記ホルダを上記回転軸の軸方向および径方向に位置決めする軸受を備えることを特徴とする回転ダンパ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記固定部としてのモータハウジングと、
上記モータハウジングに固定されたステータと、
上記回転軸と同伴回転するロータとを備えることを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記回転軸としてのピニオン軸と、
上記ピニオン軸と係合するラック軸とを備えることを特徴とするステアリング装置用転舵機構。
【請求項5】
操舵部材の操作に応じて転舵軸を軸方向に駆動するステアリング装置において、
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記回転軸としての操舵軸とを備えることを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
回転軸に粘性抵抗を与える回転ダンパにおいて、
シール部材により封止され上記回転軸が挿通された粘性流体封入部と、
上記粘性流体封入部内で上記回転軸と同伴回転する回転体と、
上記回転体と粘性流体を介して粘性連結された連結体と、
上記連結体を保持し、上記粘性流体封入部の一部を区画するホルダと、
取付部材に固定された固定部と上記ホルダとの間に介在し、上記回転軸の回転方向に上記ホルダを弾性支持する弾性体とを備えることを特徴とする回転ダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転ダンパにおいて、
上記回転軸を回転可能に支持し、上記ホルダを上記回転軸の軸方向および径方向に位置決めする軸受を備えることを特徴とする回転ダンパ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記固定部としてのモータハウジングと、
上記モータハウジングに固定されたステータと、
上記回転軸と同伴回転するロータとを備えることを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記回転軸としてのピニオン軸と、
上記ピニオン軸と係合するラック軸とを備えることを特徴とするステアリング装置用転舵機構。
【請求項5】
操舵部材の操作に応じて転舵軸を軸方向に駆動するステアリング装置において、
請求項1または2に記載の回転ダンパと、
上記回転軸としての操舵軸とを備えることを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−174500(P2011−174500A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37571(P2010−37571)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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