説明

回転体の肉厚等測定装置

【課題】 軸方向位置によって外径・内径寸法が異なる筒状の回転体であっても、肉厚、偏肉、偏心状態等を簡単に精度良く測定できる回転体の肉厚等測定装置を提供する。
【解決手段】 被測定物支持台装置1で支持した被測定物Wの中心軸Oに直交する方向に移動自在な水平移動台11を有する水平移動テーブル機構10と、水平移動台11にこれと同方向に移動自在にプローブ支持体22を設けた測定テーブル機構20とを備える。被測定物Wの内外周面への測定端子の接触を検出するプローブ30を、プローブ支持体22に設ける。水平移動台11の進退位置を水平位置検出手段40で、水平移動台11に対するプローブ支持体22の変位量を変位量検出手段50で検出する。被測定物内周面と対向位置の外周面へ測定端子を接触させたときの、変位量検出手段50の変位量検出値と水平位置検出手段40の位置検出値から被測定物Wの肉厚を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒状の回転体形状の被測定物における内周面中心軸と外周面中心軸のズレによって生ずる偏肉等を測定する回転体の肉厚等測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒体の偏肉状態を測定する技術として、以下の構成のもの(例えば特許文献1)が知られている。
この測定技術では、予め外径寸法および内径寸法が判明している円筒体に対して、その外周円上の任意の一点と外径の仮想中心点とを通る第1の直線を想定し、この第1の直線が前記円筒体の外周円および内周円と交わる点である4点の座標をポテンショメータなどの位置検出手段で測定する。あるいは、この位置検出手段で、さらに前記第1の直線に対して仮想中心点で直行する第2の直線を想定し、この第2の直線が前記円筒体の外周円および内周円と交わる点である4点の座標を測定する。このようにして測定した4点または8点の座標データと、予め判明している外径寸法および内径寸法に基づいて、外径の中心点と内径の中心点のズレ量( 偏心) 、最大肉厚寸法、最小肉厚寸法、および最大肉厚寸法と最小肉厚寸法との差である最大偏肉を、演算器によって算出することにより円筒体の偏肉状態を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−318301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の円筒体の偏肉測定技術では、測定対象である円筒体の外径および内径を、別途、測定器により予め測定しておく必要があり手間を要する。また、前記偏肉測定技術では、被測定物の外径寸法あるいは内径寸法が軸方向に一定でない場合は、被測定物の軸方向における外径寸法の位置、内径寸法の位置、および位置検出手段の測定位置を一致させて測定する必要がある。前記偏肉測定技術の場合、円筒状の被測定物を測定対象としているため、前記測定位置を軸方向に一致させる手段が無く、偏肉・ 偏心測定が困難である。
【0005】
この発明の目的は、被測定物が円筒状である場合に限らず、軸方向位置によって外径寸法および内径寸法が異なる筒状の回転体であっても、その偏肉・偏心状態や外周面および内周面の形状を簡単に精度良く測定することができる回転体の肉厚等測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の回転体の肉厚等測定装置は、筒状の回転体形状の被測定物Wを支持する被測定物支持台装置1と、この被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oに対して直交する方向に進退移動自在な水平移動台11、およびこの水平移動台11を進退駆動する水平駆動機構12を有する水平移動テーブル機構10と、前記水平移動台11にこの水平移動台11の進退可能方向と同方向に進退移動自在にプローブ支持体22を設置した測定テーブル機構20と、前記プローブ支持体22に基端が取付けられて先端に被測定物Wの内周面および外周面に接触可能な測定端子31,32を有しこの測定端子31,32が接触することで検出信号を発生するプローブ30と、前記水平移動台11の進退位置を検出する水平位置検出手段40と、前記水平移動台11に対する前記プローブ支持体22の変位量を検出する変位量検出手段50と、前記水平駆動機構12により前記水平移動台11を移動させて前記プローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの内周面に接触させたとき、およびこの接触位置に対向する被測定物Wの外周面に前記測定端子31,32を接触させたときの、前記変位量検出手段50の変位量検出値および前記水平位置検出手段40の位置検出値から前記被測定物Wの肉厚を演算する肉厚演算手段74とを備える。なお、回転体とは平面内の図形をこの平面内の直線回りに回転させたときの図形の軌跡を言うが、上記回転体形状はこのような回転体の形状を言う。
この構成によると、水平移動台11を進退させてプローブ30を測定の準備位置に位置させた後、水平移動台11に設置されたプローブ支持体22と共にプローブ30を水平方向に進退移動させてプローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの内周面および外周面に接触させる。この接触時の、水平移動台11の進退位置の位置検出値、および水平移動台11に対するプローブ支持体22の変位量の検出値を用いて肉厚演算手段74により被測定物Wの肉厚を演算する。そのため、個々の被測定物W毎に事前に別方式によって内外周面の水平断面円の直径を測定していなくても、被測定物Wの所定高さにおける肉厚を容易に測定することができる。
【0007】
この発明において、前記被測定物Wの中心軸Oに対して直交する直線と前記被測定物Wの内周面および外周面との交点である4つの交点に前記測定端子31,32を接触させたときの、前記変位量検出手段50の変位量検出値および前記水平位置検出手段40の位置検出値から、被測定物Wの2箇所の肉厚を演算し、かつこれら2箇所の肉厚の演算値の差から偏肉量を演算する偏肉量演算手段75を設けても良い。
この構成の場合、被測定物Wの偏肉量を容易に測定することができる。
【0008】
この発明において、前記測定テーブル機構20は、前記水平移動台11にこの水平移動台11の進退可能方向と同方向にプローブ支持体ベース21を進退移動自在に設置し、このプローブ支持体ベース21に前記プローブ支持体22を前記水平移動台11の進退可能方向と同方向に進退自在に設置した2段重ね構造であり、前記プローブ支持体ベース21を前記水平移動台11に対して進退可能方向の一方に、前記水平移動台11に設けられたストッパ23で止められる位置まで付勢する第1のばね部材25と、前記プローブ支持体22を前記プローブ支持体ベース21に対して進退可能方向の一方に、前記プローブ支持体ベース21に設けられたストッパ24で止められる位置まで付勢する第2のばね部材26を有し、前記プローブ30は前記測定端子31,32を、プローブ支持体22の進退方向に対して互いに反対側を向いて2個有し、前記変位量検出手段50は、前記測定端子31,32の中心線となる前記プローブ支持体22の進退方向に沿う直線上の変位を検出するものであっても良い。
この構成の場合、測定端子31,32が被測定物Wに接触してから、水平移動台11がオーバランして停止しても、測定端子31,32が被測定物Wに接触する位置を精度良く測定することができる。
【0009】
この発明において、基台6に対して前記水平移動テーブル機構10を、前記被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oと平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台61、およびこの垂直移動台61を昇降駆動する垂直駆動機構62を有する垂直移動テーブル機構60を設けても良い。
この構成の場合、プローブ30の測定端子31,32を接触させる被測定物Wの測定高さ位置を容易に可変設定することができる。
【0010】
この発明において、前記被測定物支持台装置1は、被測定物Wを搭載してチャック2により把持可能な回転台3と、この回転台3を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構4と、前記回転台3の回転角度を検出する回転角度検出手段5とを有し、前記水平移動テーブル機構10は、前記プローブ30が前記回転台3の中心線Oに直交する直線上を、前記中心線Oの前後両側に移動可能に設けても良い。
この構成の場合、被測定物Wを容易に任意の回転角度に停止位置決めできると共に、プローブ30を被測定物Wの内外で容易に水平移動させることができる。
【0011】
この発明において、前記被測定物支持台装置1は、被測定物Wを搭載してチャック2により把持可能な回転台3と、この回転台3を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構4と、前記回転台3の回転角度を検出する回転角度検出手段5とを有し、前記水平移動テーブル機構10は、前記プローブ30が前記回転台2の中心線Oに直交する直線上を、前記中心線Oの前後両側に移動可能に設け、
かつ前記水平駆動機構12および前記回転駆動機構4の制御を行う機械的動作制御手段71と、前記プローブ30の検出信号を取り込む信号取り込み手段72と、前記肉厚演算手段74および偏肉量演算手段75を有する演算器73を備える制御装置70を設け、
前記機械的動作制御手段71は、所定の角度毎に前記回転台3をインデックス回転させ、前記水平移動テーブル機構10によって前記測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させ、前記信号取り込み手段72は、前記測定端子31,32を被測定物に接触させたときの、前記水平位置検出手段40で検出される進退位置、および前記変位量検出手段50で検出される変位量、並びに前記回転角度検出手段5で検出される回転角度を演算器73に取り込み、前記演算器73は、前記信号取り込み手段72で取り込んだ各情報から被測定物Wの内周面と外周面間の肉厚、偏肉量、偏心量、並びに内周面および外周面の直径を演算するものとしても良い。
この構成の場合、被測定物Wの肉厚、偏肉量、内周面および外周面の直径を容易に測定することができる。
【0012】
この発明において、基台6に対して前記水平移動テーブル機構10を、前記被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oと平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台61、およびこの垂直移動台61を昇降駆動する垂直駆動機構62を有する垂直移動テーブル機構60を設け、
前記機械的動作制御手段71は、被測定物Wの設定高さに測定端子31,32が接触する昇降位置に前記水平移動テーブル機構10を移動させて、その設定高さで前記測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させるものとしても良い。
この構成の場合、被測定物Wの肉厚、偏肉量、内周面および外周面の直径をより容易に測定することができる。
【0013】
この発明において、基台1に対して前記水平移動テーブル機構10を、前記被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oと平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台61、およびこの垂直移動台61を昇降駆動する垂直駆動機構62を有する垂直移動テーブル機構60を設け、前記垂直移動台61の高さ位置を検出する垂直位置検出手段63を設け、前記垂直移動テーブル機構60によって測定端子31,32の被測定物Wの高さ方向に移動させて各高さ位置で測定端子31,32を被測定物Wの外周面または内周面に接触させたときの、前記水平位置検出手段40,変位量検出手段50,および前記垂直位置検出手段63の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の垂直断面の形状を演算する垂直断面形状演算手段78を設けても良い。
この構成の場合、被測定物Wの垂直断面形状を容易に測定することができる。
【0014】
この発明において、前記被測定物支持台装置1は、被測定物Wを搭載してチャック2により把持可能な回転台3と、この回転台3を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構4と、前記回転台3の回転角度を検出する回転角度検出手段5とを有し、前記回転駆動機構4によって被測定物Wの回転台3と共に回転させて各回転角度で測定端子31,32を被測定物Wに接触させたときの、前記水平位置検出手段40、変位量検出手段50、および前記回転角度検出手段5の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の水平断面の形状を演算する水平断面形状演算手段79を設けても良い。
この構成の場合、被測定物Wの水平断面形状を容易に測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の回転体の肉厚等測定装置は、筒状の回転体形状の被測定物を支持する被測定物支持台装置と、この被測定物支持台装置に支持された被測定物の中心軸に対して直交する方向に進退移動自在な水平移動台、およびこの水平移動台を進退駆動する水平駆動機構を有する水平移動テーブル機構と、前記水平移動台にこの水平移動台の進退可能方向と同方向に進退移動自在にプローブ支持体を設置した測定テーブル機構と、前記プローブ支持体に基端が取付けられて先端に被測定物の内周面および外周面に接触可能な測定端子を有しこの測定端子が接触することで検出信号を発生するプローブと、前記水平移動台の進退位置を検出する水平位置検出手段と、前記水平移動台に対する前記プローブ支持体の変位量を検出する変位量検出手段と、前記水平駆動機構により前記水平移動台を移動させて前記プローブの測定端子を被測定物の内周面に接触させたとき、およびこの接触位置に対向する被測定物の外周面に前記測定端子を接触させたときの、前記変位量検出手段の変位量検出値および前記水平位置検出手段の位置検出値から前記被測定物の肉厚を演算する肉厚演算手段とを備えるので、被測定物が円筒状である場合に限らず、軸方向位置によって外径寸法および内径寸法が異なる筒状の回転体であっても、その偏肉・偏心状態や外周面および内周面の形状を簡単に精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態にかかる回転体の肉厚等測定装置の概略図である。
【図2】同肉厚等測定装置における部分平面図である。
【図3】同肉厚等測定装置における部分正面図である。
【図4】同肉厚等測定装置における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同肉厚等測定装置による被測定物の測定位置の説明図である。
【図6】同肉厚等測定装置による測定動作の一例の説明図である。
【図7】同肉厚等測定装置による測定動作の他の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図7と共に説明する。この回転体の肉厚等測定装置は、図5に示すような筒状の回転体形状の被測定物Wの肉厚,偏肉量,偏心量等を測定する装置である。この回転体の肉厚等測定装置は、図1に示すように、前記被測定物Wを支持する被測定物支持台装置1と、水平移動テーブル機構10と、測定テーブル機構20と、プローブ30と、水平位置検出手段40と、変位量検出手段50と、垂直移動テーブル機構60と、制御装置70とを備える。
【0018】
被測定物支持台装置1は、被測定物Wを搭載してチャック2により把持可能な回転台3と、この回転台3を回転させて任意の回転角度で停止位置決め可能な回転駆動機構4と、回転台3の回転角度を検出する回転角度検出手段5とを有する。この被測定物支持台装置1は、前記回転台3の中心線Oが垂直方向(Z軸方向)に向く姿勢となるように基台6上に設置される。回転角度検出手段5は、例えば分解能0.01°のロータリエンコーダからなる。この被測定物支持台装置1により、被測定物Wを任意の回転角度に位置決め可能である。ここでは、前記チャック2は、被測定物Wをその内周面側で把持して、内周面の中心軸が回転台3の中心線Oと一致するように回転台3に搭載する。以下の説明において、被測定物Wの中心軸と言うときは、被測定物Wの内周面の中心軸を指すものとする。また、被測定物Wの中心軸は回転台3の中心線Oと一致するため、被測定物Wの中心軸を、回転台3の中心線Oと同じ符号Oで示す。
【0019】
水平移動テーブル機構10は、前記被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oに対して直交する方向(X軸方向)に進退移動自在な水平移動台11と、この水平移動台11を進退駆動する水平駆動機構12とを備える。水平駆動機構12は、図示しないボールねじや、このボールねじを駆動する水平駆動モータ13などからなる。
【0020】
垂直移動テーブル機構60は、垂直移動台61と、この垂直移動台61を垂直方向(Z軸方向)に昇降駆動する垂直駆動機構62と、垂直移動台61の高さ位置を検出する垂直位置検出手段63とを備える。垂直駆動機構62は、図示しないボールねじや、このボールねじを駆動する上下駆動モータ64などからなる。垂直移動台61には、前記水平移動テーブル機構10が設置されている。垂直駆動機構62は、前記基台6上に垂直姿勢で設置される。これにより、水平移動テーブル機構10は、前記被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸(回転台3の中心線O)と平行な方向に昇降移動可能とされ、垂直移動台61を介して垂直駆動機構62により昇降駆動される。前記垂直位置検出手段63は、例えば分解能0.1μmのリニアエンコーダからなる。この垂直移動テーブル機構60により、水平移動テーブル機構10を所定の垂直方向位置に位置決めできる。
【0021】
測定テーブル機構20は、図2および図3に平面図および正面図で示すように、プローブ支持体ベース21と、このプローブ支持体ベース21に重ねて設置したプローブ支持体22とを備える2段重ね構造の機構である。プローブ支持体ベース21は、前記水平移動テーブル機構10における水平移動台11にこの水平移動台11の進退可能方向と同方向に進退移動自在に設置される。プローブ支持体22は、前記プローブ支持体ベース21の上に前記水平移動台11の進退可能方向と同方向に進退自在に設置される。図6および図7に概略図で示すように、プローブ支持体ベース21は、前記水平移動台11に設けられたストッパ23により水平移動台11に対して進退可能方向の一方(被測定物Wに対向する側)に止めらる。また、プローブ支持体ベース21と水平移動台11との間には、プローブ支持体ベース21を水平移動台11に対して進退可能方向の一方に、前記ストッパ23で止められる位置まで付勢する第1のばね部材25が繋がれている。さらに、プローブ支持体22は、プローブ支持体ベース21に設けられたストッパ24によりプローブ支持体ベース21に対して進退可能方向の一方(被測定物Wに対向する側とは反対側)に止められる。また、プローブ支持体ベース21とプローブ支持体22との間には、プローブ支持体22をプローブ支持体ベース21に対して進退可能方向の一方に、前記ストッパ24で止められる位置まで付勢する第2のばね部材26が繋がれている。
【0022】
前記プローブ支持体22の被測定物Wに対向する一端側に前記プローブ30が取付けられる。図3に示すように、プローブ30は、プローブ本体30aが下向きに開口する概形が逆U字状とされ、そのプローブ本体30aの基端がプローブ支持体22の一端に取付けられる。プローブ30は、プローブ本体30aの先端に被測定物Wの内周面および外周面に接触可能な2個の測定端子31,32を有し、この測定端子31,32が接触することで検出信号を発生する。2個の測定端子31,32は、プローブ支持体22の進退方向に対して互いに反対側を向いて配置される。測定テーブル機構20の動作安定性を確保するために、前記ストッパ23,24、およびばね部材25,26は、前記測定端子31,32の中心線となる直線Lを挟んで上下に等配してそれぞれ1対設けられる。
【0023】
図1において、水平位置検出手段40は、前記水平移動テーブル機構10における水平移動台11の進退位置を検出するセンサである。この水平位置検出手段40は、例えば分解能0.1μmのリニアエンコーダからなる。変位量検出手段50は、前記測定テーブル機構20におけるプローブ支持体22の前記水平移動台11に対する変位量を検出するセンサである。具体的には、変位量検出手段50は、プローブ30における測定端子31,32の中心線となるプローブ支持体22の進退方向に沿う直線L上の変位を検出するものである。この変位量検出手段50の検出部50aは、アッベの原理を考慮して、図3のように測定端子31,32の中心線と同一直線L上に配置され、これにより測定誤差の最小化が図られている。
【0024】
図6および図7に示す概略図では、変位量検出手段50の動作説明を簡単にするために、測定端子31,32が被測定物Wに接触していない状態で、変位量検出手段50の検出部50aがプローブ支持体22の一端から所定間隔G0だけ離れた位置に変位量検出手段50を配置している。しかし、実際の構成では、図3のように、変位量検出手段50の検出部50aは変位量検出手段50の基体に対してプローブ支持体22の進退方向と同方向に進退自在に設けられ、図示しないばねの付勢力によりプローブ支持体22の一端に押し当てられている。
【0025】
図1において、制御装置70は、この回転体の肉厚等測定装置の測定動作の全体を制御するものであって、マイクロコンピュータ等のコンピュータおよびこれに実行されるプログラム、並びに電子回路等からなり、これらよって機械的動作制御手段71と、信号取り込み手段72と、演算器73が設けられている。機械的動作制御手段71は、前記水平移動テーブル機構10における水平駆動機構12、および前記被測定物支持台装置1における回転駆動機構5の制御を行う制御手段である。信号取り込み手段72は前記プローブ30の検出信号を取り込む。
【0026】
具体的には、前記機械的動作制御手段71は、被測定物支持台装置1における回転台3を所定の角度毎にインデックス回転させ、水平移動テーブル機構10によってプローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させる。また、機械的動作制御手段71は、被測定物Wの設定高さにプローブ30の測定端子31,32が接触する昇降位置に水平移動テーブル機構10を昇降移動させて、その設定高さで測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させる。
【0027】
前記信号取り込み手段72は、プローブ30の測定端子31,32を被測定物Wに接触させたときの、水平位置検出手段40で検出される進退位置、変位量検出手段50で検出される変位量、および回転角度検出手段5で検出される回転角度、並びに垂直位置検出手段63で検出される高さ位置を演算器73に取り込む。
【0028】
演算器73は、信号取り込み手段72で取り込んだ各情報から被測定物Wの内周面と外周面の間の肉厚、偏肉量、偏心量、内周面および外周面の水平断面円の直径等を演算する。具体的には、演算器73は、図4のように、肉厚演算手段74、偏肉量演算手段75、偏心量演算手段76、直径演算手段77、垂直断面形状演算手段78、および水平断面形状演算手段79を有する。
【0029】
肉厚演算手段74は、前記水平移動機構12により水平移動台11を移動させてプローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの内周面に接触させたとき、およびこの接触位置に対向する被測定物Wの外周面に測定端子31,32を接触させたときの、変位量検出手段50の変位量検出値および水平位置検出手段40の位置検出値から被測定物Wの肉厚を演算する手段である。
【0030】
偏肉量演算手段75は、図5のように、被測定物Wの中心軸(内周面の中心軸)Oに対して直交する直線Lと、被測定物Wの内周面および外周面との交点である4つの交点A,B,C,Dにプローブ30の測定端子31,32を接触させたときの、前記変位量検出手段50の変位量検出値および前記水平位置検出手段40の位置検出値から、被測定物Wの2箇所(交点A,B間の肉厚部分、および交点C,D間の肉厚部分)の肉厚を演算し、これらの2箇所の肉厚の演算値の差から偏肉量を演算する手段である。なお、この場合の肉厚の演算値は、前記肉厚演算手段74での演算結果を利用するものであっても良く、あるいは肉厚演算手段74とは別に、偏肉量演算手段75の一部として肉厚演算部を有するものとしても良い。
【0031】
垂直断面形状演算手段78は、垂直移動テーブル機構60によってプローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの高さ方向に移動させて各高さ位置で測定端子31,32を被測定物Wの外周面または内周面に接触させたときの、前記水平位置検出手段40,変位量検出手段50,および前記垂直位置検出手段63の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の垂直断面の形状を演算する手段である。
【0032】
水平断面形状演算手段79は、前記被測定物支持台装置1における回転駆動機構4によって被測定物Wを回転台3と共に回転させて各回転角度で測定端子31,32を被測定物Wに接触させたときの、前記水平位置検出手段40,変位量検出手段50,および回転角度検出手段5の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の水平断面の形状を演算する手段である。
【0033】
次に、この回転体の肉厚等測定装置による被測定物Wの肉厚等の測定動作について説明する。
先ず、垂直移動テーブル機構60の垂直移動台61を垂直駆動機構62で昇降させ、垂直移動台61を所定の昇降位置に位置決めする。これにより、水平移動テーブル機構10が、所定の高さ位置に位置決めされる。一方、被測定物支持台装置1では、回転駆動機構4により回転台3が任意の回転角度に回転され、これにより回転台3に搭載された被測定物Wが任意の回転角度に位置決めされる。このとき、プローブ30の測定端子31,32の中心線となる直線Lは、図5のように被測定物Wの中心軸(回転台3の中心線O)に直交する。
【0034】
昇降移動台61に設置された水平移動テーブル機構10では、その水平移動台11がその進退方向の所定の基準位置で停止している。この状態から、水平駆動機構12の駆動により、測定テーブル機構20を搭載した水平移動台11を被測定物Wに向けて水平移動させる。このときの測定テーブル機構20の動作を図6に示す。水平移動台11の移動開始時に、図6(A)のようにプローブ支持体ベース21はストッパ23で止められ、プローブ支持体22はストッパ24で止められている。プローブ30の被測定物Wに向く測定端子22が被測定物Wの外周面に接触すると、プローブ30が検出信号を発生し、この検出信号を制御装置70における信号取り込み手段72が取り込む。測定端子22が被測定物Wに接触したとき、制御装置70の機械的動作制御手段71から水平移動テーブル機構10の水平駆動モータ13に停止指令が与えられて、水平移動台11が停止する。このときの測定端子31の停止位置は、図5におけるA点の位置である。このとき図6(B)のように、水平移動台11は測定端子31が被測定物Wに接触したときの位置を越えて停止する。このとき、プローブ支持体ベース21は第1のばね部材25の付勢力に抗してストッパ23から所定量ΔX1だけ変位する。言い換えると、水平移動台11に対してプローブ支持体22が所定量ΔX1だけ変位する。この変位量ΔX1を変位量検出手段50が検出する。また、水平位置検出手段40は、このときの水平移動台11の進退移動位置を検出する。これら変位量検出手段50および水平位置検出手段40の検出値を信号取り込み手段72が取り込む。
制御装置70における演算器73の肉厚演算手段74では、水平位置検出手段40による検出位置から変位量検出手段50の検出する変位量ΔX1を差し引いて前記A点の進退方向位置を割り出す。
【0035】
次に、垂直移動テーブル機構60がその垂直移動台61を所定量だけ上昇させ、プローブ30が被測定物Wと干渉しない高さまで水平移動テーブル機構10を上昇させる。次に、水平移動テーブル機構10がその水平移動台11を、プローブ30の先端部が被測定物Wの内側に対向する進退位置まで水平移動させる。次に、垂直移動テーブル機構60がその垂直移動台61を所定量だけ下降させ、プローブ30の測定端子32を被測定物Wの内周面のB点に対向させる。図7(A)はこのときの測定テーブル機構20の状態を示す。この状態から、水平駆動機構12の駆動により、測定テーブル機構20を搭載した水平移動台11を被測定物Wから離れる方向に向けて水平移動させる。水平移動台11の移動開始時に、図7(A)のようにプローブ支持体ベース21はストッパ23で止められ、プローブ支持体22はストッパ24で止められている。プローブ30の被測定物Wの内周面に向く測定端子32が被測定物Wの内周面に接触すると、プローブ30が検出信号を発生し、この検出信号を制御装置70における信号取り込み手段72が取り込む。測定端子32が被測定物Wに接触したとき、制御装置70の機械的動作制御手段71から水平移動テーブル機構10の水平駆動モータ13に停止指令が与えられて、水平移動台11が停止する。このときの測定端子32の停止位置は、図5におけるB点の位置である。このとき図7(B)のように、水平移動台11は測定端子32が被測定物Wに接触したときの位置を越えて停止する。このとき、プローブ支持体22は第2のばね部材26の付勢力に抗してストッパ24から所定量ΔX2だけ変位する。言い換えると、水平移動台11に対してプローブ支持体22が所定量ΔX2だけ変位する。この変位量ΔX2を変位量検出手段50が検出する。また、水平位置検出手段40は、このときの水平移動台11の進退移動位置を検出する。これら変位量検出手段50および水平位置検出手段40の検出値を信号取り込み手段72が取り込む。
制御装置70における演算器73の肉厚演算手段74では、水平位置検出手段40による検出位置から変位量検出手段50の検出する変位量ΔX2を差し引いて前記B点の進退方向位置を割り出す。さらに、これらA点およびB点の2箇所の進退方向位置からAB間の肉厚を演算する。
【0036】
図5におけるC点の進退方向位置も、A点の位置を割り出す場合と同様に、プローブ30の測定端子31を被測定物Wの内周面に接触させることで割り出すことができる。また、図5におけるD点の進退方向位置も、B点の位置を割り出す場合と同様に、プローブ30の測定端子32を被測定物Wの外周面に接触させることで割り出すことができる。さらに、肉厚演算手段74では、これらC点およびD点の2箇所の進退方向位置からCD間の肉厚を演算する。また、制御装置70における演算器73の偏肉量演算手段75では、前記2箇所の肉厚の演算値の差から偏肉量を演算する。
【0037】
このようにして、被測定物WのA,B,C,Dの4点の位置から肉厚および偏肉量を測定した後、被測定物支持台装置1では回転駆動機構4により回転台3を任意の回転角度だけ回転させる。これにより、回転台3に搭載された被測定物Wは、先の測定時から回転台3の回転角度だけ回転した位置に位置決めされる。この位置決め状態で、先の測定時と同様の手順で、被測定物WのA,B,C,Dの4点の進退方向位置を割り出し、その位置情報から肉厚および偏肉量を演算する。このような、測定を被測定物Wの回転角度を変えながら、複数回行うことで、それぞれの回転角度での前記4点の位置、肉厚、および偏肉量を測定する。
【0038】
回転台3の回転角度を順次変更する処理は、制御装置70における機械的動作制御手段71から回転駆動機構4に与えられる指令によって、所定の角度毎に回転台3をインデックス回転させることで行なわれる。
【0039】
制御装置70の演算器73における偏心量演算手段75では、各回転角度毎に求められる前記A,B,C,Dの4点の位置情報から、被測定物Wの内周面および外周面の水平断面円を演算し、さらにその演算値から両水平断面円間の偏心量を算出する。直径演算手段77は、演算された両水平断面円からそれらの直径を演算する。内周面および外周面の水平断面円の演算は、前記各回転角度毎に求められるA,B,C,Dの位置情報を最小二乗法で処理することにより可能である。演算器73における水平断面形状演算79では、前記内周面および外周面の水平断面円から、このときの高さ位置における被測定物Wの水平断面形状を演算する。
【0040】
また、被測定物支持台装置1の回転台3を所定の回転角度に位置決めした状態で、垂直移動テーブル機構60の垂直移動台61を複数の高さ位置に順次昇降移動させ、各高さ位置毎に、被測定物Wにおける前記各交点A,B,C,Dの位置を上記した手順で測定することにより、これらの位置情報に基づき演算器73における垂直断面形状演算手段78によって被測定物Wの垂直断面形状を演算することができる。また、この測定処理を、前記回転台3の回転角度を順次変えて行うことにより、各回転角度での垂直断面形状を演算することができる。
【0041】
なお、この回転体の肉厚等測定装置の調整では、外径または内径の正確な値が分かっている模範の被測定物Wを用い、前記した交点A,B,C,Dの位置測定を同様にして行う。このとき、交点A,D間の距離として求められる外周面の水平断面円の直径を、模範の被測定物Wの既知の外径値と比較することにより、あるいは交点B,C間の距離として求められる内周面の水平断面円の直径を、模範の被測定物Wの既知の内径値と比較することにより、補正値を求めることができる。このようにして求めた補正値は、演算器73における各演算手段74〜79での演算に使用するデータとして演算器73の図示しないメモリに書き込まれる。
【0042】
このように、この回転体の肉厚等測定装置は、水平移動台11を進退させてプローブ30を測定の準備位置に位置させた後、水平移動台11に設置されたプローブ支持体30と共にプローブ30を水平方向に進退移動させてプローブ30の測定端子31,32を被測定物Wの内周面および外周面に接触させる。この接触時の、水平移動台11の進退位置の位置検出値、および水平移動台11に対するプローブ支持体22の変位量の検出値を用いて肉厚演算手段75により被測定物Wの肉厚を演算する。そのため、個々の被測定物W毎に事前に別方式によって内外周面の水平断面円の直径を測定していなくても、被測定物Wの所定高さにおける肉厚を容易に測定することができる。
【0043】
この実施形態では、被測定物Wの中心軸Oに対して直交する直線Lと被測定物Wの内周面および外周面との交点である4つの交点A,B,C,Dに測定端子31,32を接触させたときの、前記変位量検出手段50の変位量検出値および前記水平位置検出手段40の位置検出値から、被測定物Wの2箇所の肉厚を演算し、かつこれら2箇所の肉厚の演算値の差から偏肉量演算手段75で偏肉量を演算するようにしているので、被測定物Wの偏肉量を容易に測定することができる。
【0044】
また、前記測定テーブル機構20を、プローブ支持体ベース21とプローブ支持体22との2段重ね構造として、それぞればね部材25,26でストッパ23,24で止められる位置まで付勢するものとし、前記プローブ30は前記測定端子31,32を、プローブ支持体22の進退方向に対して互いに反対側を向いて2個有するものとしている。また、前記変位量検出手段50が、前記測定端子31,32の中心線となる前記プローブ支持体22の進退方向に沿う直線L上の変位を検出するものとしている。このため、測定端子31,32が被測定物Wに接触してから、水平移動台11がオーバランして停止しても、測定端子31,32が被測定物Wに接触する位置を精度良く測定することができる。
【0045】
また、基台6に対して前記水平移動テーブル機構10を、被測定物支持台装置1に支持された被測定物Wの中心軸Oと平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台61、およびこの垂直移動台61を昇降駆動する垂直駆動機構62を有する垂直移動テーブル機構60を設けているので、プローブ30の測定端子31,32を接触させる被測定物Wの測定高さ位置を容易に可変設定することができる。
【0046】
前記被測定物支持台装置1は、被測定物Wを搭載してチャック2により把持可能な回転台3と、この回転台3を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構4と、前記回転台3の回転角度を検出する回転角度検出手段5とを有し、前記水平移動テーブル機構10を、前記プローブ30が前記回転台3の中心線Oに直交する直線L上を、前記中心線Oの前後両側に移動可能に設けているので、被測定物Wを容易に任意の回転角度に停止位置決めできると共に、プローブ30を被測定物Wの内外で容易に水平移動させることができる。
【0047】
また、前記水平駆動機構12および前記回転駆動機構4の制御を行う機械的動作制御手段71と、前記プローブ30の検出信号を取り込む信号取り込み手段72と、前記肉厚演算手段74および偏肉量演算手段75を有する演算器73を備える測定制御装置70を設け、前記機械的動作制御手段71は、所定の角度毎に前記回転台3をインデックス回転させ、前記水平移動テーブル機構10によって前記測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させ、前記信号取り込み手段72は、前記測定端子31,32を被測定物Wに接触させたときの、前記水平位置検出手段40で検出される進退位置、および前記変位量検出手段50で検出される変位量、並びに前記回転角度検出手段5で検出される回転角度を演算器73に取り込み、前記演算器73は、前記信号取り込み手段72で取り込んだ各情報から被測定物Wの内周面と外周面の間の肉厚、偏肉量、偏心量、並びに内周面および外周面の直径を演算するものとしているので、被測定物Wの肉厚、偏肉量、内周面および外周面の直径を容易に測定することができる。
【0048】
前記機械的動作制御手段60は、被測定物Wの設定高さに測定端子が接触する昇降位置に前記水平移動テーブル機構10を移動させて、その設定高さで前記測定端子31,32を被測定物Wの内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させるものとしているので、被測定物Wの肉厚、偏肉量、内周面および外周面の直径をより容易に測定することができる。
【0049】
また、垂直移動テーブル機構60において、その垂直移動台61の高さ位置を検出する垂直位置検出手段63を設け、前記垂直移動テーブル機構60によって測定端子31,32を被測定物Wの高さ方向に移動させて各高さ位置で測定端子31,32を被測定物Wの外周面または内周面に接触させたときの、前記水平位置検出手段40,変位量検出手段50,および前記垂直位置検出手段63の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の垂直断面の形状を演算する垂直断面形状演算手段78を設けているので、被測定物Wの垂直断面形状を容易に測定することができる。
【0050】
さらに、前記被測定物支持台装置1の回転駆動機構4によって被測定物Wを回転台3と共に回転させて各回転角度で測定端子31,32を被測定物Wに接触させたときの、前記水平位置検出手段40、変位量検出手段50、および前記回転角度検出手段5の検出値から、被測定物Wの外周面または内周面の水平断面の形状を演算する水平断面形状演算手段79を設けているので、被測定物Wの水平断面形状を容易に測定することができる。
【0051】
なお、この実施形態では、被測定物支持台装置の回転台3に、被測定物Wをその内周面の中心軸が回転台3の中心線Oに一致するように搭載した場合につき説明した。しかし、これに限らず、被測定物Wをその外周面の中心軸が回転台3の中心線Oに一致するように回転台3に搭載しても良く、この場合にも被測定物Wの肉厚,偏肉量、偏心量等を同様に精度良く簡単に測定することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…被測定物支持台装置
2…チャック
3…回転台
4…回転駆動機構
5…回転角度検出手段
6…基台
10…水平移動テーブル機構
11…水平移動台
12…水平駆動機構
20…測定テーブル機構
21…プローブ支持体ベース
22…プローブ支持体
23,24…ストッパ
25…第1のばね部材
26…第2のばね部材
30…プローブ
31,32…測定端子
40…水平位置検出手段
50…変位量検出手段
60…垂直移動テーブル機構
61…垂直移動台
62…垂直駆動機構
63…垂直位置検出手段
70…制御装置
71…機械的動作制御手段
72…信号取り込み手段
73…演算器
74…肉厚演算手段
75…偏肉量演算手段
76…偏心量演算手段
77…直径演算手段
78…垂直断面形状演算手段
79…水平断面形状演算手段
O…回転台の中心線(被測定物の中心軸)
W…被測定物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の回転体形状の被測定物を支持する被測定物支持台装置と、
この被測定物支持台装置に支持された被測定物の中心軸に対して直交する方向に進退移動自在な水平移動台、およびこの水平移動台を進退駆動する水平駆動機構を有する水平移動テーブル機構と、
前記水平移動台にこの水平移動台の進退可能方向と同方向に進退移動自在にプローブ支持体を設置した測定テーブル機構と、
前記プローブ支持体に基端が取付けられて先端に被測定物の内周面および外周面に接触可能な測定端子を有しこの測定端子が接触することで検出信号を発生するプローブと、
前記水平移動台の進退位置を検出する水平位置検出手段と、
前記水平移動台に対する前記プローブ支持体の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記水平駆動機構により前記水平移動台を移動させて前記プローブの測定端子を被測定物の内周面に接触させたとき、およびこの接触位置に対向する被測定物の外周面に前記測定端子を接触させたときの、前記変位量検出手段の変位量検出値および前記水平位置検出手段の位置検出値から前記被測定物の肉厚を演算する肉厚演算手段とを備える、
ことを特徴とする回転体の肉厚等測定装置。
【請求項2】
請求項1において、前記被測定物の中心軸に対して直交する直線と前記被測定物の内周面および外周面との交点である4つの交点に前記測定端子を接触させたときの、前記変位量検出手段の変位量検出値および前記水平位置検出手段の位置検出値から、被測定物の2箇所の肉厚を演算し、かつこれら2箇所の肉厚の演算値の差から偏肉量を演算する偏肉量演算手段を設けた回転体の肉厚等測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記測定テーブル機構は、前記水平移動台にこの水平移動台の進退可能方向と同方向にプローブ支持体ベースを進退移動自在に設置し、このプローブ支持体ベースに前記プローブ支持体を前記水平移動台の進退可能方向と同方向に進退自在に設置した2段重ね構造であり、前記プローブ支持体ベースを前記水平移動台に対して進退可能方向の一方に、前記水平移動台に設けられたストッパで止められる位置まで付勢する第1のばね部材と、前記プローブ支持体を前記プローブ支持体ベースに対して進退可能方向の一方に、前記プローブ支持体ベースに設けられたストッパで止められる位置まで付勢する第2のばね部材を有し、前記プローブは前記測定端子を、プローブ支持体の進退方向に対して互いに反対側を向いて2個有し、前記変位量検出手段は、前記測定端子の中心線となる前記プローブ支持体の進退方向に沿う直線上の変位を検出するものである回転体の肉厚等測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、基台に対して前記水平移動テーブル機構を、前記被測定物支持台装置に支持された被測定物の中心軸と平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台、およびこの垂直移動台を昇降駆動する垂直駆動機構を有する垂直移動テーブル機構を設けた回転体の肉厚等測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記被測定物支持台装置は、被測定物を搭載してチャックにより把持可能な回転台と、この回転台を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構と、前記回転台の回転角度を検出する回転角度検出手段とを有し、前記水平移動テーブル機構は、前記プローブが前記回転台の中心線に直交する直線上を、前記中心線の前後両側に移動可能に設けた回転体の肉厚等測定装置。
【請求項6】
請求項2において、前記被測定物支持台装置は、被測定物を搭載してチャックにより把持可能な回転台と、この回転台を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構と、前記回転台の回転角度を検出する回転角度検出手段とを有し、前記水平移動テーブル機構は、前記プローブが前記回転台の中心線に直交する直線上を、前記中心線の前後両側に移動可能に設け、
かつ前記水平駆動機構および前記回転駆動機構の制御を行う機械的動作制御手段と、前記プローブの検出信号を取り込む信号取り込み手段と、前記肉厚演算手段および偏肉量演算手段を有する演算器を備える制御装置を設け、
前記機械的動作制御手段は、所定の角度毎に前記回転台をインデックス回転させ、前記水平移動テーブル機構によって前記測定端子を被測定物の内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させ、前記信号取り込み手段は、前記測定端子を被測定物に接触させたときの、前記水平位置検出手段で検出される進退位置、および前記変位量検出手段で検出される変位量、並びに前記回転角度検出手段で検出される回転角度を演算器に取り込み、前記演算器は、前記信号取り込み手段で取り込んだ各情報から被測定物の内周面と外周面間の肉厚、偏肉量、偏心量、並びに内周面および外周面の直径を演算するものとした回転体の肉厚等測定装置。
【請求項7】
請求項6において、基台に対して前記水平移動テーブル機構を、前記被測定物支持台装置に支持された被測定物の中心軸と平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台、およびこの垂直移動台を昇降駆動する垂直駆動機構を有する垂直移動テーブル機構を設け、
前記機械的動作制御手段は、被測定物の設定高さに測定端子が接触する昇降位置に前記水平移動テーブル機構を移動させて、その設定高さで前記測定端子を被測定物の内周面または外周面における所定の測定位置に移動させて接触させるものとした回転体の肉厚等測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、基台に対して前記水平移動テーブル機構を、前記被測定物支持台装置に支持された被測定物の中心軸と平行な方向である垂直方向に昇降移動可能に設置された垂直移動台、およびこの垂直移動台を昇降駆動する垂直駆動機構を有する垂直移動テーブル機構を設け、前記垂直移動台の高さ位置を検出する垂直位置検出手段を設け、前記垂直移動テーブル機構によって測定端子を被測定物の高さ方向に移動させて各高さ位置で測定端子を被測定物外周面または内周面に接触させたときの、前記水平位置検出手段,変位量検出手段,および前記垂直位置検出手段の検出値から、被測定物外周面または内周面の垂直断面の形状を演算する垂直断面形状演算手段を設けた回転体の肉厚等測定装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記被測定物支持台装置は、被測定物を搭載してチャックにより把持可能な回転台と、この回転台を回転させて任意の角度で停止位置決め可能な回転駆動機構と、前記回転台の回転角度を検出する回転角度検出手段とを有し、前記回転駆動機構によって被測定物の回転台と共に回転させて各回転角度で測定端子を被測定物に接触させたときの、前記水平位置検出手段、変位量検出手段、および前記回転角度検出手段の検出値から、被測定物外周面または内周面の水平断面の形状を演算する水平断面形状演算手段を設けた回転体の肉厚等測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243185(P2010−243185A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88937(P2009−88937)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】