説明

回転体支持構造における冷却構造、プロセスユニット及び画像形成装置

【課題】回転可能に支持される回転被支持部材に対して相対的に摺動する摺動部材の温度上昇を効果的に抑制できる回転体支持構造における冷却構造を提供する。
【解決手段】回転体2と、回転体2に固定されると共に回転可能に支持される回転被支持部材70と、回転する回転被支持部材70に対して相対的に摺動する摺動部材80とを備える回転体支持構造における冷却構造である。摺動部材80に冷却媒体が通過する冷却用流路80bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を支持する回転体支持構造における冷却構造、その冷却構造を備えるプロセスユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、例えば、感光体を画像形成装置本体に対して位置決めして回転可能に支持する支持構造として、図10に示すようなものがある。図10に示す支持構造では、感光体2の端部にフランジ70が固定されており、そのフランジ70の軸部70aをプロセスユニットの側板101に設けられた軸受け80によって回転可能に支持している。
【0003】
一般に、フランジには、コストや製造の容易さの観点から樹脂材料が多く用いられ、軸受けには、耐久性や寸法精度に優れコストも安い焼結金属が多く用いられている。ところが、樹脂の方が金属よりも熱膨張係数が大きいため、フランジと軸受けとの間で生じる摩擦熱や画像形成装置内の雰囲気温度によってフランジと軸受けが温度上昇すると、外側の軸受けよりも内側のフランジが大きく膨張し、両者間の隙間が減少してしまう。このことから、フランジと軸受けとの隙間は、両者の熱膨張を考慮して設定しておく必要がある。一方、フランジと軸受けとの隙間を大きくすると、ガタが大きくなって感光体が高精度に位置決めできなくなる問題が生じる。
【0004】
そこで、フランジと軸受けの熱膨張係数を同じにすることにより、温度変化に伴う隙間の変化をなくすことができる。しかし、この場合、フランジを軸受け同様に金属材料で構成すると、高コストとなる上、金属フランジを感光体の端部に圧入する際に感光体が変形するといった問題が生じる。また、反対に、軸受けをフランジと同様に樹脂材料で構成すると、耐久性の低下が危惧される。
【0005】
また、別の対策として、感光体の外側や内側で気流を発生させてフランジや軸受けの温度上昇を抑制する方法がある。例えば、特許文献1には、プロセスユニットの外側から気流を当てて、プロセスユニット内に配設された感光体等の温度上昇を抑制する方法が開示されている。これにより、感光体の端部に設けられたフランジや軸受けの温度上昇が間接的に抑制される。また、特許文献2に記載されている画像形成装置では、感光体内に複数のフィンを設け、フィンを回転させることにより感光体内に気流を発生させて、フランジに気流を当てて温度上昇を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、フランジや軸受けに直接気流が当たらないため、これらの摺動部における温度上昇を効果的に抑制することは困難である。また、上記特許文献2に記載の画像形成装置は、フランジに気流が当たっているが、軸受けには気流が直接当たっていないため、温度上昇の効果的な抑制は難しい。このため、従来の方法では、感光体の高精度な位置決めを行うことができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑み、回転可能に支持されるフランジ等の回転被支持部材に対して相対的に摺動する軸受け等の摺動部材の温度上昇を効果的に抑制できる回転体支持構造における冷却構造、その冷却構造を備えたプロセスユニット及び画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、回転体と、当該回転体に固定されると共に回転可能に支持される回転被支持部材と、回転する前記回転被支持部材に対して相対的に摺動する摺動部材とを備える回転体支持構造における冷却構造であって、前記摺動部材に冷却媒体が通過する冷却用流路を形成したものである。
【0009】
摺動部材に冷却用流路を形成することにより、その冷却用流路に冷却媒体を通過させて、摺動部材を効果的に冷却することができ、摺動部材の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記摺動部材に、前記冷却用流路としての貫通孔を形成したものである。
【0011】
この場合、貫通孔に冷却媒体を通過させて摺動部材を冷却することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記摺動部材に、前記冷却用流路としての溝を形成したものである。
【0013】
この場合、溝に冷却媒体を通過させて摺動部材を冷却することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記貫通孔を、前記摺動部材の前記回転被支持部材が押し当てられる部分に少なくとも形成したものである。
【0015】
摺動時に回転被支持部材と摺動部材との間で発生する摩擦熱は、特に回転被支持部材が摺動部材に押し当てられる箇所で発生するため、その部分に少なくとも貫通孔を形成することで、発熱による温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記溝を、前記摺動部材の前記回転被支持部材が押し当てられる面を除いて形成したものである。
【0017】
溝を、摺動部材の回転被支持部材が押し当てられる面に形成すると、回転被支持部材と摺動部材との接触面積が減少するため、接触圧が増大し、摺動時の摩擦による発熱量が増加する。このため、上記のように、溝を、回転被支持部材が押し当てられる面を除いて形成することによって、接触面積の減少を回避することができ、発熱を抑制することが可能となる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項3又は5に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記溝を、前記摺動部材の前記回転被支持部材側の面に形成したものである。
【0019】
溝を回転被支持部材側の面に形成した場合は、気流が回転被支持部材にも接触しながら通過するので、回転被支持部材の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記冷却媒体としての気流を発生させる気流発生手段を設けたものである。
【0021】
気流発生手段を設けることにより、冷却用流路に気流を積極的に送ることができ、摺動部材の冷却をより確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記気流発生手段は、前記回転体内に配設され当該回転体の回転に伴って回転するフィンを有するものである。
【0023】
フィンを回転体内に配設することにより、省スペースとなり、回転体自体も内部から冷却できるので効率的である。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記回転体は表面に静電潜像が担持される像担持体としての感光体、前記回転被支持部材は前記感光体の端部に固定されたフランジ、前記摺動部材は前記フランジを回転可能に支持する軸受けである。
【0025】
この場合、冷却用流路に冷却媒体を通過させることにより、軸受けを冷却することができるので、軸受けとそれに支持されるフランジの温度上昇を効果的に抑制できる。これにより、軸受けとフランジが熱膨張することによる両者間の隙間の変化を高度に抑制することができ、感光体の位置決めを高精度に行えるようになる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項9に記載の回転体支持構造における冷却構造において、前記フランジを樹脂材料で構成し、前記軸受けを金属材料で構成したものである。
【0027】
フランジを樹脂材料で構成し、軸受けを金属材料で構成することにより、低コストで、耐久性、製造性、寸法精度に優れた構成となる。また、この場合、樹脂材料と金属材料との熱膨張係数が異なるが、上記のように、冷却用流路に冷却媒体を通過させることにより、軸受けとフランジを効果的に冷却することができ、軸受けとフランジが熱膨張することによる両者間の隙間の変化を抑制することができる。
【0028】
請求項11の発明は、表面に静電潜像を担持する像担持体としての感光体と、当該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、前記感光体上の静電潜像に現像剤を供給して顕像化する現像手段と、前記感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段のうちの少なくとも2つを一体的に備えると共に、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスユニットにおいて、請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造を備えるものである。
【0029】
プロセスユニットが請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造を備えるので、これらの冷却構造による上記効果が得られる。
【0030】
請求項12の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造、又は請求項11に記載のプロセスユニットを備える画像形成装置である。
【0031】
画像形成装置が、請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造、又は請求項11に記載のプロセスユニットを備えるので、これらの冷却構造による上記効果が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、従来と異なり、摺動部材に冷却用流路を形成しているので、摺動部材の温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、熱膨張による摺動部材と回転被支持部材との間の隙間の変化を抑制することができ、位置決めをより高精度に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】プロセスユニットの概略構成図である。
【図3】感光体の端部周辺を拡大した断面図である。
【図4】図3におけるX−X断面図である。
【図5】気流発生手段の概略構成図である。
【図6】冷却用流路として溝を設けた軸受けの断面図である。
【図7】感光体が受ける力の合力を説明するための図である。
【図8】フランジが受ける力を考慮して前記溝又は貫通孔を配設した軸受けの断面図である。
【図9】軸受けが受ける力を考慮して前記溝を配設した軸受けの断面図である。
【図10】従来の感光体の支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0035】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
ただし、本発明に係る画像形成装置は図1に示す画像形成装置に限らず、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
図1に示すように、この画像形成装置には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが、画像形成装置本体100に対して着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0036】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、表面に静電潜像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電装置3と、感光体2上の静電潜像に現像剤を供給して顕像化する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置5と、感光体2の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置6とを一体的に有する。なお、図1では、イエローのプロセスユニット1Yが備える帯電装置3、現像装置4、クリーニング装置5、潤滑剤塗布装置6のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1C,1M,1Bkにおいては符号を省略している。
【0037】
画像形成装置本体100の上部には、現像剤としての各色のトナーを充填したトナーボトル7が設けてある。トナーボトル7内の各色トナーは、図示しないトナー移送管を介して対応する現像装置4へ移送されるようになっている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、各感光体2の表面を露光する露光装置8が配設されている。露光装置8からは、各感光体2へレーザ光が照射されるようになっている。また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、転写装置9が配設されている。転写装置9は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト11を有する。中間転写ベルト11は、複数の支持ローラ12,13,14,15によって張架されている。複数の支持ローラ12,13,14,15のうちの1つが駆動ローラとなっており、その駆動ローラが回転することにより、中間転写ベルト11は図の矢印に示す方向に走行する。
【0038】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ16が配設されている。各一次転写ローラ16と各感光体2とによって中間転写ベルト11を挟み込んだ箇所には、一次転写ニップが形成されている。また、中間転写ベルト11の図の右側の外周面に、二次転写手段としての二次転写ローラ17が当接している。この二次転写ローラ17とこれに対向する支持ローラ12とによって中間転写ベルト11を挟み込んだ箇所には、二次転写ニップが形成されている。また、中間転写ベルト11の図の左端の外周面には、中間転写ベルト11の表面を清掃するベルトクリーニング装置18が配設されている。
【0039】
画像形成装置本体100の下部には、紙やOHP等のシート状の記録媒体Pを収容した給紙トレイ19や、給紙トレイ19から記録媒体Pを給送する給紙ローラ20等が設けてある。また、画像形成装置本体100内には、給紙トレイ19から上方へ記録媒体Pを案内するための搬送経路Rが形成されている。この搬送経路Rにおいて、給紙ローラ20を配設した位置から二次転写ローラ17を配設した位置に至る途中には、記録媒体Pの姿勢を補正すると共に搬送タイミングを計るための一対のレジストローラ21が配設されている。また、二次転写ローラ17の配設位置の上方には、記録媒体P上の画像を定着させるための定着装置22を配設している。さらに、定着装置22の上方には、画像形成装置本体100の上面を凹ませて形成したストック部23に記録媒体Pを排出するための一対の排紙ローラ24が配設されている。
【0040】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体2の表面が帯電装置3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体2の表面には、露光装置8からレーザ光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視画像化)される。
【0041】
中間転写ベルト11を張架する駆動ローラが回転駆動することにより、中間転写ベルト11が図の矢印で示す方向に走行する。また、各一次転写ローラ16に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ16と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト11上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト11はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、トナー画像の転写を終えた各感光体2の表面に、潤滑剤塗布装置6によって潤滑剤が塗布され、次いで、クリーニング装置5によって各感光体2の表面に残留するトナーが除去される。
【0042】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ20の回転を開始し、給紙トレイ19に収容された記録媒体Pが搬送経路Rに送り出される。搬送経路Rに送り出された記録媒体Pは、レジストローラ21によって一旦停止され記録媒体Pの姿勢が補正される。その後、レジストローラ21の駆動を再開し、記録媒体Pを、上記中間転写ベルト11上のトナー画像とタイミングを合わせて、二次転写ローラ17と中間転写ベルト11との間の二次転写ニップに送る。このとき二次転写ローラ17には、中間転写ベルト11上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、記録媒体Pと中間転写ベルト11上のトナー画像とが二次転写ニップに到達した際、二次転写ニップに形成されている転写電界によって、中間転写ベルト11上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。また、転写後の中間転写ベルト11上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置18によって除去される。トナー画像が転写された記録媒体Pは定着手段22へと搬送され、そこでトナー画像が記録媒体Pに定着される。その後、記録媒体Pは排紙ローラ24によってストック部23へと排出される。
【0043】
以上の説明は、記録媒体上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0044】
図2は、上記プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの概略構成図である。以下、図2に基づいて、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの構成を説明する。
図2に示すように、帯電装置3は、感光体2に対向して配設された帯電ローラ30と、帯電ローラ30の感光体2との対向面とは反対側の面に当接するように配置された帯電クリーニングローラ31とを有する。また、感光体2は、円筒状の導電性基材と、その導電性基材の外周に配設された感光層によって構成されている。
【0045】
現像装置4は、現像剤を収容した現像ケース40と、この現像ケース40に回転自在に支持され、かつ現像ケース40に形成された開口を通して感光体2に対向して配置された現像ローラ41と、その現像ローラ41上の現像剤量を規制する現像ブレード42と、現像ケース40内の現像剤を現像ローラ41に搬送する搬送スクリュー43とを有している。ここでは、現像剤として、トナーとキャリアを有する二成分系現像剤を用いている。
【0046】
クリーニング装置5は、感光体2上の残留トナーを除去するクリーニングブレード50と、除去されたトナーを図示していない廃トナーボトルに搬送する廃トナー回収コイル51とを有する。クリーニングブレード50は保持部材52に保持されており、この保持部材52を加圧部材53が加圧することによって、クリーニングブレード50は感光体2に当接されている。
【0047】
潤滑剤塗布装置6は、固形状の潤滑剤60と、潤滑剤塗布部材としてのブラシローラ61と、潤滑剤60を保持する潤滑剤保持部材62と、潤滑剤60をブラシローラ61に接触させるように付勢する加圧部材としての加圧スプリング63と、潤滑剤60をブラシローラ61に対して接離する方向に案内するガイド部材64とを有している。ブラシローラ61は、感光体2の表面に接触しており、感光体2の回転方向に対してトレーリング方向(順方向)に回転するようになっている。潤滑剤60は、加圧スプリング63の加圧によってブラシローラ61に接触している。本実施形態では、潤滑剤60をブラシローラ60に接触させるために加圧スプリング63を用いているが、潤滑剤60に錘を設け、その錘に作用する重力によって潤滑剤60をブラシローラ61に接触させるようにしてもよい。あるいは、潤滑剤60をその自重によってブラシローラ61に接触させるように構成してもよい。また、潤滑剤60は潤滑剤保持部材62に対して両面粘着テープや接着剤等によって固定されている。
【0048】
潤滑剤60は、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等から成るものが使用できるが、感光体2の摩擦を低減する効果の大きい点で、特に脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、スタエリン酸、アレイン酸等の直鎖状炭化水素の脂肪酸金属塩が挙げられ、金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チラン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄などが好ましく、特にステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0049】
次に、図2を参照して、上記プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkに設けられた各種装置の動作について説明する。
作像動作が開始されると、感光体2は図2の時計回りに回転駆動され、このとき帯電電圧を印加された帯電ローラ30によって感光体2が所定の極性に帯電される。そして、上述のように、図1に示す露光装置8によって感光体2の帯電面に静電潜像が形成される。また、帯電ローラ30は、帯電クリーニングローラ31によって清掃される。
【0050】
現像装置4では、搬送スクリュー43によってトナーが現像ローラ41へ搬送され、回転駆動する現像ローラ41上に現像剤が担持される。そして、現像ブレード42によって現像ローラ41上の現像剤が所定の厚さに規制された後、現像剤は現像ローラ41と感光体2との間の現像領域に運ばれて、ここで現像剤中のトナーが感光体2上の静電潜像に静電的に移行して、当該静電潜像がトナー画像として可視像化される。そして、感光体2上のトナー画像は、感光体2の回転に伴って図の上部位置に移動し、中間転写ベルト(図示省略)に転写される。
【0051】
上記トナー画像が転写された後、感光体2の表面には、ブラシローラ61によって削り取られた潤滑剤60が塗布される。その後、感光体2の表面に残留するトナーがクリーニングブレード50によって除去され、除去された残留トナーは、廃トナー回収コイル51によって図示しない廃トナーボトルに搬送される。以上のようにして、プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの一連の動作が終了する。
【0052】
以下、本発明の特徴部分の構成について説明する。
図3は、感光体の端部周辺を拡大した断面図であり、図4は、図3におけるX−X断面図である。
図3に示すように、円筒状に形成された感光体2の一端部には、フランジ70が圧入固定されており、フランジ70は、プロセスユニットの側板101に設けられた軸受け80によって回転可能に支持されている。このように、感光体2が軸受け80を介して側板101に支持されることによって、感光体2はプロセスユニット内での位置が決定される。また、プロセスユニットを画像形成装置本体に装着する場合は、軸受け80の外周と、画像形成装置に設けてある図示しない位置決め部とを嵌合させて位置決めが行われる。
【0053】
フランジ70は、軸受け80に支持される小径円筒状の軸部70aと、感光体2に圧入して嵌合される大径円筒状の嵌合部70bと、軸部70aと嵌合部70bとを接続する段差部70cとで構成される。また、軸受け80は、フランジ70の軸部70aが挿入される挿入孔80aを有する円筒状の部材である。
【0054】
フランジ70の段差部70cには、軸方向に貫通孔70dが複数形成されており、これら貫通孔70dを介して感光体2の内外が連通した状態となっている。また、軸受け80にも軸方向に貫通孔80bが複数形成されている。図3の例では、フランジ70及び軸受け80の各貫通孔70d,80bは、軸方向に沿って配設されている。言い換えれば、各貫通孔70d,80bは、回転時にフランジ70と軸受け80とが摺動する摺動方向と略直交方向に配設されている。ただし、各貫通孔70d,80bの配設方向(向き)はこれに限定されず、略直交方向以外の摺動方向と交差する方向であってもよい。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、軸受け80の周方向に上記複数の貫通孔80bが等間隔に並んで設けられている。また、図示省略するが、フランジ70に設けた上記複数の貫通孔70dは、それぞれ軸受け80に設けた貫通孔80bに対応する位置に配設されている。このように、フランジ70と軸受け80にそれぞれ設けた貫通孔70d,80bを対応させて配設することにより、各貫通孔70d,80bを通して空気を通過させることが可能となっている。図3に示す矢印がその空気の流れを示している。
【0056】
また、図示省略するが、図3に示す感光体2の端部と反対側の端部においても、上記と同様に構成されている。
【0057】
図5に示すように、感光体2の内部には、気流を発生させる気流発生手段として、回転軸91上に設けられた複数のフィン90が配設されている。回転軸91は感光体2に一体的に取り付けられており、感光体2が回転駆動されることによりフィン90が回転して感光体2に長手方向に気流を発生するようになっている。
【0058】
上記のように構成された本実施形態の画像形成装置において、感光体2を回転駆動させると、フランジ70と軸受け80との間の摺動部において摩擦熱が生じる。しかし、このとき、感光体2が回転することにより、内部のフィン90が回転して気流が発生し、その気流が図3に示すようにフランジ70と軸受け80の各貫通孔70d,80bを通過する。これにより、貫通孔70d,80bを通過する気流によって、フランジ70と軸受け80が冷却され、それらの温度上昇を抑制することができる。また、図3に示す感光体2の端部とは反対側の端部においてもフランジと軸受けとの各貫通孔を気流が通過するので、同様にフランジと軸受けの温度上昇が抑制される。このように、フランジ70と軸受け80に設けた各貫通孔70d,80bは、冷却媒体としての気流を通過させる冷却用流路として機能する。
【0059】
上記のように、本発明の実施形態では、フランジ70と軸受け80を冷却することができるので、摺動による摩擦熱、あるいは機内の雰囲気温度の上昇によるフランジ70及び軸受け80の温度上昇を抑制することができる。特に、本発明は、従来と異なり、軸受け80に冷却用流路を形成しているので、軸受け80の温度上昇を効果的に抑制することが可能である。これにより、フランジ70の材料に軸受け80の材料よりも熱膨張係数の大きい材料を選択しても(例えば、フランジ70を樹脂、軸受け80を燒結金属で構成しても)、フランジ70と軸受け80が熱膨張することによる両者間の隙間の減少を高度に抑制することができる。その結果、フランジ70と軸受け80との隙間を小さくすることが可能となり、感光体の位置決めをより高精度に行えるようになる。
【0060】
また、本実施形態では、気流発生手段によって積極的に気流を発生させているため、フランジ70及び軸受け80の冷却をより確実に行うことができる。しかも、気流発生手段(ファン等)を感光体2内に配設しているので、省スペースとなり、感光体2自体も内部から冷却できるので効率的である。
【0061】
また、軸受け80に形成する冷却用流路は、上記貫通孔80b以外に、図6に示す溝80cとしてもよい。また、貫通孔80bと溝80cの両方を用いて冷却用流路を構成してもよい。図6の(a)では、溝80cを軸受け80の外周面に形成し、同図の(b)では、溝80cを軸受け80の内周面に形成している。特に、軸受け80の内周面に溝80cを設けた場合は、気流がフランジ70にも接触しながら通過するので、フランジ70の温度上昇を効果的に抑制することが可能である。例えば、フランジ70を樹脂部材で構成し、軸受け80を金属部材(燒結金属)で構成している場合は、溝80cを軸受け80の内周面(フランジ70側の面)に形成することにより、熱膨張が大きい樹脂製のフランジ70側を効果的に冷却できるので好ましい。
【0062】
ところで、感光体には帯電ローラや現像ローラ、クリーニングブレード等が当接しているため、感光体は各部材の接触圧を受ける。例えば、図7に示す例では、感光体2に対して、帯電ローラ30、現像ローラ41、クリーニングブレード50、ブラシローラ61、一次転写ローラ16が当接しており、各部材から感光体2に対してそれぞれ接触圧f30,f41,f50,f61,f16が作用している。また、これらの各接触圧f30,f41,f50,f61,f16を足し合わせた合力が符号Fで示す矢印であり、感光体2はこの合力Fの方向へ力を受ける。従って、感光体2に設けられているフランジは、軸受けの内周面全体に均等に接触しているのではなく、軸受けに対して合力Fの方向に押し当てられるため、特にその押し当てられた部分において摺動による摩擦熱が生じる。
【0063】
図8に示す実施形態では、上記フランジの押し当てられる方向を考慮して、溝80c又は貫通孔80bを配設している。
具体的には、図8の(a)に示す実施形態では、溝80cを、軸受け80のフランジ70(その軸部70a)が押し当てられる面(内周面)を除いて形成している。これは、フランジ70が押し当てられる面に溝80cを形成すると、フランジ70と軸受け80との接触面積が減少するため、接触圧が増大し、摺動時の摩擦による発熱量が増加するからである。このため、フランジ70が押し当てられる面を除いて溝80cを形成することによって、接触面積の減少を回避することができ、発熱を抑制することが可能となる。
【0064】
また、図8の(b)に示す実施形態では、貫通孔80bを、軸受け80のフランジ70(その軸部70a)が押し当てられる部分に形成している。回転時にフランジ70と軸受け80との間で発生する摩擦熱は、特にフランジ70が軸受け80に押し当てられる箇所で発生するため、その部分に少なくとも貫通孔80bを形成することで、発熱による温度上昇を効果的に抑制することが可能である。
【0065】
また、図9に示すように、軸受け80の外周面が矢印に示す方向から力を受ける場合は、その力を受ける面を除いて溝80cを形成することにより、力を受ける面での圧力の増大を回避することが可能である。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記貫通孔又は溝を通過させる冷却媒体として、空気(気流)以外に、水等の冷却液、その他の冷却媒体を使用することも可能である。ただし、気流による空冷式の冷却装置は、冷却液を用いた液冷式のものよりも部品点数が少なくなる点で好ましい。
【0067】
また、上述の各実施形態では、感光体を回転可能に支持する支持構造において本発明の構成(冷却構造)を適用した場合を例に説明したが、本発明の構成は、感光体以外の回転体の支持構造に対しても適用可能である。従って、上述の実施形態のフランジに代えて、他の回転体に固定され回転可能に支持される回転被支持部材を適用し、軸受けに代えて、前記回転被支持部材に対して相対的に摺動する他の摺動部材とすることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1Y,1C,1M,1Bk プロセスユニット
2 感光体(回転体)
3 帯電装置(帯電手段)
4 現像装置(現像手段)
5 クリーニング装置(クリーニング手段)
70 フランジ(回転被支持部材)
80 軸受け(摺動部材)
80b 貫通孔(冷却用流路)
80c 溝(冷却用流路)
90 フィン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2006−215291号公報
【特許文献2】特開2009−204749号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、当該回転体に固定されると共に回転可能に支持される回転被支持部材と、回転する前記回転被支持部材に対して相対的に摺動する摺動部材とを備える回転体支持構造における冷却構造であって、
前記摺動部材に冷却媒体が通過する冷却用流路を形成したことを特徴とする回転体支持構造における冷却構造。
【請求項2】
前記摺動部材に、前記冷却用流路としての貫通孔を形成した請求項1に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項3】
前記摺動部材に、前記冷却用流路としての溝を形成した請求項1に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項4】
前記貫通孔を、前記摺動部材の前記回転被支持部材が押し当てられる部分に少なくとも形成した請求項2に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項5】
前記溝を、前記摺動部材の前記回転被支持部材が押し当てられる面を除いて形成した請求項3に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項6】
前記溝を、前記摺動部材の前記回転被支持部材側の面に形成した請求項3又は5に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項7】
前記冷却媒体としての気流を発生させる気流発生手段を設けた請求項1から6のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項8】
前記気流発生手段は、前記回転体内に配設され当該回転体の回転に伴って回転するフィンを有する請求項7に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項9】
前記回転体は表面に静電潜像が担持される像担持体としての感光体、前記回転被支持部材は前記感光体の端部に固定されたフランジ、前記摺動部材は前記フランジを回転可能に支持する軸受けである請求項1から8のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項10】
前記フランジを樹脂材料で構成し、前記軸受けを金属材料で構成した請求項9に記載の回転体支持構造における冷却構造。
【請求項11】
表面に静電潜像を担持する像担持体としての感光体と、当該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、前記感光体上の静電潜像に現像剤を供給して顕像化する現像手段と、前記感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段のうちの少なくとも2つを一体的に備えると共に、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスユニットにおいて、
請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造を備えることを特徴とするプロセスユニット。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の回転体支持構造における冷却構造、又は請求項11に記載のプロセスユニットを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−83376(P2012−83376A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226786(P2010−226786)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】