回転情報算出装置、ステアリング装置、電動パワーステアリング装置、センサ付き軸受装置、車両、異常検出装置、回転情報算出方法及び異常検出方法
【課題】3相の磁気検出器の磁気検出信号の異常を検出することが可能であり、異常発生後も、3相中の2相の磁気検出信号が正常な場合に、継続して回転情報の計算を正確に行うことが可能な回転情報算出装置を提供する。
【解決手段】3相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cを取得し、取得したサンプリング値に基づいて、各相に対する回転角度位置を算出する。そして、これら算出した回転角度位置に基づき各相のサンプリング値の異常を検出するとともに、1相のサンプリング値のみに異常が検出されたときは、異常検出フラグを出力すると共に残りの2相のサンプリング値で回転角度位置の算出を行う。2相以上のサンプリング値の異常が検出されたときは、回転情報算出装置の動作を停止する。また、正常な相のサンプリング値に基づいて算出した回転角度位置の平均値を出力用の回転角度位置として算出する。
【解決手段】3相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cを取得し、取得したサンプリング値に基づいて、各相に対する回転角度位置を算出する。そして、これら算出した回転角度位置に基づき各相のサンプリング値の異常を検出するとともに、1相のサンプリング値のみに異常が検出されたときは、異常検出フラグを出力すると共に残りの2相のサンプリング値で回転角度位置の算出を行う。2相以上のサンプリング値の異常が検出されたときは、回転情報算出装置の動作を停止する。また、正常な相のサンプリング値に基づいて算出した回転角度位置の平均値を出力用の回転角度位置として算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度等を算出する回転情報算出装置、ステアリング装置、電動パワーステアリング装置、センサ付き軸受装置、車両、異常検出装置、回転情報算出方法及び異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の回転軸の回転角度や回転角速度などを検出するセンサとして、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
特許文献1には、磁界を発生する磁石と、磁界内に設けられた4つの磁気検出器(ホール素子)と、各磁気検出器間に設けられていて、磁気検出器に固定されて一体に回転するように結合された、強磁性材製の磁束案内部材とを備え、磁石は、磁気検出器および磁束案内部材に関して回転可能に構成された角度センサが開示されている。
また、回転軸の回転状態を示す情報を検出する機能を有するセンサを軸受に付加したセンサ付き軸受装置が提案されている。例えば、多極に着磁された磁石の磁極をデジタル出力のホールICで検出し、ホールICからパルス信号を出力するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−506530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1の従来技術は、磁束案内部材を磁石の外周に沿って、磁石を囲むように配置するため、センサの円周方向のサイズを小さくすることが困難であった。また、上記した特許文献1の従来技術は、軸方向(回転軸方向)のサイズも小さくすることができない。したがって、特許文献1の角度センサは、円周方向のサイズ、或いは軸方向のサイズの少なくとも一方を小さくすることができないので、小型化の面で問題がある。
【0005】
また、特許文献1の従来技術では、4つのホール素子のうち1つでも故障すると、角度センサとしての機能が維持できなくなる。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、センサの円周方向のサイズを小さくし、或いは装置の軸方向のサイズを小さくすることで小型化を図ることができ、磁気検出器等から構成されるセンサ部分を軸受に組み込むことで取り付けも容易に行うことが可能な回転情報算出装置を提供することを第1の目的としている。
【0006】
また、所定の磁気検出器の磁気検出信号の異常を検出することが可能であり、異常発生後も、他の磁気検出器の磁気検出信号が正常な場合に、継続して軸受の回転輪の回転状態を示す情報の計算を正確に行うことが可能な回転情報算出装置、これを備えたステアリング装置、電動パワーステアリング装置、センサ付き軸受装置、車両、異常検出装置、回転情報算出方法及び異常検出方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕
上記目的を達成するために、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備え、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置した。
【0008】
〔発明2〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1において、前記磁気検出器は、アナログホールICである。
〔発明3〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明2において、前記アナログホールICは、温度変化に伴う出力変動を補正することができるプログラマブルホールICである。
【0009】
〔発明4〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をアナログ信号として出力する。
〔発明5〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をデジタル信号として出力する。
【0010】
〔発明6〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をパルス信号として出力する。
〔発明7〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報として、相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つを算出する。
【0011】
〔発明8〕
また、一の実施形態に係るステアリング装置は、ステアリングホイールの相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つの回転状態を示す情報を、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置で算出し、算出した前記回転状態を示す情報を出力することを特徴とする。
【0012】
〔発明9〕
また、一の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを、発明1乃至7の何れかに記載の回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した前記操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにした。
【0013】
〔発明10〕
また、一の実施形態に係るセンサ付き軸受装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備え、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置した。
【0014】
〔発明11〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
〔発明12〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明8のステアリング装置及び発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
〔発明13〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明9の電動パワーステアリング装置及び発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
【0015】
〔発明14〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置の異常検出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置し、前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【0016】
〔発明15〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置の異常検出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、前記磁路部材の複数の磁路は、平板を円弧状に形成した複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に複数の空隙を設けて円環板状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状とした2つの着磁部材を互いの周方向端部を向か合わせることで円環板状をなして構成され、前記磁石を前記円環板状に配置した前記複数の円弧板に回転軸方向に対向して配置し、前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された面が前記円弧板に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された面が前記円弧板に対向するように配置し、前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【0017】
〔発明16〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出方法は、静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備えた回転情報算出方法において、前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づいて、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する前記異常検出手段を備え、前記回転情報算出手段は、前記複数の磁気検出信号のうち、前記異常検出手段によって異常が検出された磁気検出信号以外の磁気検出信号の各相に対する、当該異常の検出に用いた前記回転角度位置の平均値を、前記回転輪の回転角度位置として算出するとともに、前記回転情報算出手段は、前記異常検出手段によって、前記複数の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が検出されたときに、当該異常の検出された磁気検出信号の相を除く、残りの相の磁気検出信号に対するサンプリング値に基づき前記回転状態を示す情報を算出する。
【0018】
〔発明17〕
また、一の実施形態に係る異常検出方法は、静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備えた回転情報算出装置において、磁気検出信号の異常を検出する異常検出方法であって、前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、算出した前記各相に対する前記回転角度位置同士の差分値に基づき、前記位相の異なる複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、発明1によれば、磁路部材を、円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された複数の磁気検出器の間に配設したので、磁路部材の円周方向のサイズを磁石の円周方向のサイズ以下にして回転情報算出装置の小型化を図ることができるとともに、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状の2つの着磁部材で磁石を構成したので、磁気検出器を通る磁束の量が正弦波状に変化し、磁気検出信号も正弦波状にすることができる。
【0020】
また、発明2から発明7によれば、回転角度位置の信頼性を高めることができる。
また、発明8によれば、ステアリングホイールの舵角や回転方向等の回転情報を回転情報算出装置で算出し、この回転情報算出装置で算出した舵角や回転方向等の情報を出力するようにしたので、高精度、且つフェールセーフを考慮した回転情報を提供することができる。
【0021】
また、発明9によれば、ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達された運転者の操舵トルクを、回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにしたので、運転者の操舵力をアシストすることができる。
また、発明10によれば、磁気検出器を通る磁束の量が正弦波状に変化し、磁気検出信号も正弦波状にすることができるセンサ付き軸受装置を提供することができる。
また、発明11〜13によれば、運転者の操舵力をアシストすることができる車両を提供することができる。
【0022】
また、発明14,15によれば、複数相の磁気検出器から出力される複数の磁気検出信号の異常を検出することができるので、回転角度位置の信頼性を高めることができる。
また、発明16によれば、回転角度位置の信頼性を高めて回転状態を高精度に検出する回転情報算出方法を提供することができる。
さらに、発明17によれば、複数の磁気検出信号の異常を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の回転情報算出装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の軸方向の断面図である。
【図5】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の磁気検出器から出力される磁気検出信号を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【図7】回転情報算出器における回転情報算出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態の回転情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態の回転情報算出装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施の形態の異常検出部の異常検出処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態の回転情報算出部の回転情報算出処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図13】第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の軸方向の断面図である。
【図14】第3の実施の形態の磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【図15】本発明に係る第4の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図16】本発明に係る第5の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図17】本発明に係る第6の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図18】本発明に係る第7の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図19】本発明に係る第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図20】本発明に係る第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図21】本発明に係る第4の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図22】本発明に係る第5の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図23】本発明に係る第6の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図24】本発明に係る第7の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図25】本発明に係る電動パワーステアリング装置を示す全体構成図である。
【図26】本発明に係る電動パワーステアリング装置のトルクセンサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図7は、本発明に係る回転情報算出装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る回転情報算出装置の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回転情報算出装置1の構成を示すブロック図である。
【0025】
回転情報算出装置1は、図1に示すように、モータ等の回転軸に回転自在に取り付けられた磁気センサ付き軸受装置100と、磁気センサ付き軸受装置100からの磁気検出信号に基づいて回転軸の回転状態を示す情報である回転情報を算出する回転情報算出器200とを有して構成されている。なお、図1に示す、磁気センサ付き軸受装置100は、径方向の断面図である。
【0026】
更に、図2〜図6に基づき、磁気センサ付き軸受装置100の詳細な構成を説明する。
ここで、図2は、磁気センサ付き軸受装置100の斜視図であり、図3は、磁気センサ付き軸受装置100の分解斜視図であり、図4は、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向の断面図である。また、図5は、磁気センサ付き軸受装置100の磁気検出器60a〜60cから出力される磁気検出信号を示す図である。また、図6は、磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、玉軸受を備え、当該玉軸受には回転軸の回転状態を検出するための磁気センサが組み込まれている。
玉軸受は、内輪24と、外輪22と、内輪24及び外輪22との間に介在する転動体としての複数個のボール26とを備えた構成となっている。また、内輪24及び外輪22のうちの一方が静止輪となり、他方が回転輪となる。回転輪は、モータ等の回転軸の回転に連動して、静止輪との間に介在するボール26を転動させながら回転する。
【0028】
以下、内輪24を回転輪として構成を説明する。
内輪24を回転輪とすると、内輪24には円環状の磁石ホルダ30が支持される。磁石ホルダ30は磁性体として、磁性材料から構成されている。更に、磁石ホルダ30には、円環板状の磁石40が支持される。磁石40は、その半周の円周面がS極に着磁され、あとの半周の円周面がN極に着磁されている。つまり、磁石40は、2極に着磁されている。
【0029】
一方、静止輪となる外輪22には、磁路部材50と、円環板状の一部を切り欠くことで軸方向から見て馬蹄形に形成した回路基板70とが支持される。回路基板70の板厚方向の一方の面には、3つの磁気検出器60a〜60cがそれぞれ電気角120°の位相をもつように実装されている。なお、本実施の形態においては、磁気検出器60a〜60cにアナログホールICを用いる。
【0030】
磁性材料で構成された磁路部材50は、磁石40からの磁束を磁気検出器60a〜60cに導くための3つの磁路を形成する。この3つの磁路は、軸方向から見て回路基板70と略同一の円形状となるように、互いの周方向端部の間に3箇所の空隙52を設けて配置した円弧形状の3つの円弧部51と、各円弧部51の周方向端部から板厚方向(軸方向)の一方に向けて突設され、空隙52を挟んで対向している複数の壁部50aとを備えることで、各空隙52に、一対の壁部50aの間に挟み込むように回路基板70に実装した磁気検出器60a〜60cを配置し、空隙52に磁束が通り、空隙52を通る磁束を壁部50aが案内することで磁路を形成している。
【0031】
そして、円環板状とした磁石40の板厚方向に直交する面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部51の壁部50aが突設している面に対して反対側の面とが、アキシャル方向に対向して配置されている。
また、磁路部材50、磁気検出器60a〜60c、磁石40、磁石ホルダ30によって構成される磁気センサ部は、センサカバー80で覆われている。
【0032】
上記のような構成の磁気センサ付き軸受装置100は、図3に示すように、磁気センサ部を構成する、磁気検出器60a〜60c、磁路部材50、磁石40、及び磁石ホルダ30がそれぞれ軸方向(アキシャル方向)に積層された構造となる。
また、図4に示すように、磁石40と磁路部材50との間には空間ギャップがある。この空間ギャップは、狭い方が磁気検出器60a〜60cに案内される磁束の量が多くなるが、あまり狭すぎると磁石40と磁路部材50が接触する可能性があるので、0.1[m
m]〜2.0[mm]くらいが望ましい。
【0033】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石40が回転する。この回転によって、磁石40と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この変化によって、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の量及び磁極がそれぞれ変化し、磁気検出信号は、図5に示すように、それぞれが120°ずつ位相のずれた3つの正弦波として出力される。つまり、象限判別が可能となるので、磁気検出器60a〜60cから出力される磁気検出信号に基づいて回転角度位置θなどを算出することができる。
【0034】
図6の下図は、磁石40と磁路部材50との径方向の断面を軸方向から見たときの両者の位置関係を示す図であり、図6の上図には、下図中の丸で囲んだ位置にある磁気検出器60aの出力信号の変化が示されている。磁石40が、図6の下図に示す、102の位置から108に示す位置へと回転位置104〜106を介して順に右回転することによって、磁気検出器60aと磁石40との位置関係が変化し、磁気検出器60aを通る磁束の量及び磁極が変化する。これにより、磁気検出器60aの出力も、図6の上図に示すように変化し、この出力の変化が正弦波を形成する。
【0035】
また、磁気検出器60a〜60cの信号出力部(不図示)は、回転情報算出器200の信号入力部(不図示)に接続されている。
図1に戻って、回転情報算出器200は、磁気センサ付き軸受装置100から出力される3つの磁気検出信号に基づき、絶対回転角度位置θ、回転角速度ω、回転方向などの回転輪(回転軸)の回転状態を示す回転情報を周期的に算出する。そして、算出した回転情報は、不図示の出力対象へと出力される。
【0036】
また、回転情報算出器200は、回転角速度ωを算出するために、回転輪の回転に応じたパルス信号を出力する不図示のパルス発生器と、そのパルス信号をカウントする不図示のパルスカウンタとを有している。
また、回転情報算出器200は、回転方向を算出するために、算出した絶対回転角度位置θをRAMに保持するようになっている。
【0037】
また、回転情報算出器200は、図示しないが、各種制御や演算処理を担う演算処理装置(Processing Unit)と、主記憶装置(Main Storage)を構成するRAM(Random Access Memory)と、読み出し専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory)と、前記各装置間をデータ授受可能に接続するバスとを有した構成となっている。
そして、ROMに予め記憶された専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従って演算処理装置が各種ハードウェアの制御および各種演算処理を行うことで前述した回転情報の算出処理を実現するようになっている。
【0038】
更に、図7に基づき、回転情報算出器200における回転情報算出処理の流れを説明する。ここで、図7は、回転情報算出器200における回転情報算出処理を示すフローチャートである。
回転情報算出処理は、回転情報算出器200で実行されると、図7に示すように、まずステップS100に移行し、回転情報算出器200において、磁気検出器60a〜60cから、磁気検出信号のサンプリング値を取得したか否かを判定し、取得したと判定された場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、取得するまで待機する。
【0039】
ステップS102に移行した場合は、回転情報算出器200において、ステップS100で取得したサンプリング値に基づき、絶対回転角度位置θを算出してステップS104に移行する。
ステップS104では、回転情報算出器200において、ステップS102で算出した絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタでカウントした、内輪24の回転に応じたパルス信号数とに基づき回転角速度ωを算出して、ステップS106に移行する。
【0040】
ステップS106では、回転情報算出器200において、ステップS102で算出した絶対回転角度位置θと、過去に算出した絶対回転角度位置θとに基づき回転方向を算出して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、回転情報算出器200において、ステップS102〜S106の算出結果の信号を出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0041】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
ここでは、磁気センサ付き軸受装置100を、モータの回転軸の軸受に適用した場合の動作を説明する。
不図示のドライバからの駆動信号に応じてモータが駆動すると、モータの回転軸が回転し、この回転に連動して磁気センサ付き軸受装置100の内輪24が回転する。内輪24には磁石40が支持されているので、内輪24と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。
【0042】
磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号を出力する。
磁気検出器60a〜60cから出力される3つの磁気検出信号は、先述したように、磁気検出器60a〜60cが電気角120°の位相を有するように配置されているため、磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)となって出力される。ここで、磁気検出器60aの出力をA相、磁気検出器60bの出力をB相、磁気検出器60cの出力をC相とする。
【0043】
回転情報算出器200は、サンプリングタイミングになると、磁気検出器60a〜60cから出力される、A相、B相、C相の3つの磁気検出信号について、サンプリング値a、b、cを同時に取得する(ステップS100)。そして、取得したサンプリング値a、b、cに基づき、絶対回転角度位置θを算出する(ステップS102)。絶対回転角度位置θは、本実施の形態においては、3相のサンプリング値a、b、cを、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求める。
【0044】
絶対回転角度位置θが算出されると、この絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタによってカウントされた回転輪の回転に応じたパルス信号のカウント数とに基づき、回転角速度ωを算出する。
例えば、1周を10ビット(1024)に分割し、パルス発生器から、内輪24の回転に応じてパルス信号を出力する。このパルス信号をパルスカウンタでカウントし、このカウント値から回転に応じた時間tを算出する。そして、この時間tと、絶対回転角度位置θとにより、回転角速度ωを算出する。
【0045】
回転角速度ωが算出されると、次に、RAMに保持してある過去(例えば、1回前)の絶対回転角度位置θと、今回の絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出(判別)する(ステップS106)。
回転方向が算出されると、これと、上記算出した、絶対回転角度位置θと、回転角速度ωとの情報を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS108)。
【0046】
ここで、回転情報算出器200は、上記算出結果を、アナログ又はデジタルの信号で出力することが可能である。アナログの信号で出力する場合は、例えば、絶対回転角度位置θであれば、0〜360°を0〜5Vに均等に割り当て、角度に応じたアナログ電圧信号を出力する。また、上記算出結果を、デジタルの信号で出力する場合は、例えば、絶対回転角度位置θであれば、0〜360°を10ビット(0〜1023)に均等に割り当て、角度に応じたデジタル信号を出力する。
【0047】
以上、本実施の形態の回転情報算出装置1は、その磁気センサ付き軸受装置100の構成を、磁路部材50と、3つの磁気検出器60a〜60cと、磁石40とを積み重ねた積層構成とし、且つ、磁路部材50を、磁石40からの磁束を軸方向に磁気検出器60a〜60cまで案内するように構成したので、磁路部材50の円周方向のサイズを、容易に磁石40の円周方向のサイズ以下にすることが可能である。
【0048】
また、回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cから出力される3相の磁気検出信号に基づき、内輪24(回転軸)の回転状態を示す回転情報を算出することが可能である。
上記第1の実施の形態において、回転情報算出装置1が、本願発明の回転情報算出装置に対応し、外輪22及び内輪24が、本願発明の静止輪及び回転輪に対応し、回転情報算出器200及びステップS100〜S108が、本願発明の回転情報算出手段に対応する。
【0049】
なお、上記第1の実施の形態において、回転情報算出装置1を、回転情報算出器200がセンサ付き軸受装置100とは別体となる構成としたが、これに限らず、回転情報算出器200を、センサ付き軸受装置100に組み込んで一体とする構成としても良い。
また、上記第1の実施の形態において、回転角度位置を、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求めたが、これに限らず、他の方法を用いて求める構成としても良い。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図8〜図11は、本発明に係る回転情報算出装置の第2の実施の形態を示す図である。
まず、本発明の第2の実施の形態に係る回転情報算出装置の構成を図8に基づき説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る回転情報算出装置2の構成を示すブロック図である。
【0051】
回転情報算出装置2は、図8に示すように、モータ等の回転軸に回転自在に取り付けられた磁気センサ付き軸受装置100からの磁気検出信号に基づいて回転軸の回転状態を示す情報である回転情報を算出する回転情報算出器200を有して構成されている。なお、図8に示す、磁気センサ付き軸受装置100は、径方向の断面図である。
ここで、磁気センサ付き軸受装置100は、上記第1の実施の形態と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。
【0052】
更に、図9に基づき、回転情報算出器200の詳細な構成を説明する。
ここで、図9は、回転情報算出器200の詳細な構成を示すブロック図である。
回転情報算出器200は、図9に示すように、磁気センサ付き軸受装置100からの、3相のアナログの磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)の異常を検出する異常検出部2aと、回転輪(内輪24)の回転情報を算出する回転情報算出部2bとを有して構成されている。以下、上記第1の実施の形態と同様に、磁気検出器60a〜60cの構成する各相をそれぞれA相〜C相とする。
【0053】
異常検出部2aは、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cに基づき、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づき、各相の磁気検出信号に異常が発生しているか否かを検出する。
具体的に、異常検出部2aは、A相、B相、C相の各相毎に、サンプリング値a、b、cを用いて絶対回転角度位置を算出する第1式を、サンプリング値a、b、cの数学的関係を用いて変形した第2〜第4式を用いて、前記各相の絶対回転角度位置を算出する。
【0054】
ここで、第2式は、第1式を、サンプリング値a及びbの数学的関係に基づき、サンプリング値cを含まないように変形した算出式である。また、第3式は、第1式を、サンプリング値a及びcの数学的関係に基づき、サンプリング値bを含まないように変形した算出式である。また、第4式は、第1式を、サンプリング値b及びcの数学的関係に基づき、サンプリング値aを含まないように変形した算出式である。
【0055】
そして、第2式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値と、第3式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値と、第4式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値とに基づき、サンプリング値a、b、cの何れかに異常が発生しているか否かを検出する。
【0056】
サンプリング値a、b、cの何れか1つに異常が検出された場合は、該当する相に異常が発生していることを示す異常検出フラグを外部装置等に出力すると共に、A相〜C相に対して、正常なサンプリング値のみで算出された3つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力する。
一方、サンプリング値a、b、cのうち2つ以上に異常が発生している場合は、動作停止用の異常検出フラグを、回転情報算出器200内部の不図示の動作制御部及び外部装置に出力する。
【0057】
また、サンプリング値a、b、cのいずれも正常である場合は、第2〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力する。
回転情報算出部2bは、異常検出部2aから入力された絶対回転角度位置を平均して、外部出力用の絶対回転角度位置θとして算出し、更に、回転角速度ω、回転方向を回転情報として算出する。そして、当該算出した回転情報を、不図示の出力対象に出力する。
【0058】
また、回転情報算出器200は、回転角速度ωを算出するために、回転輪(内輪24)の回転に応じたパルス信号を出力する不図示のパルス発生器と、そのパルス信号をカウントする不図示のパルスカウンタとを有している。
また、回転情報算出器200は、回転方向を算出するために、算出した絶対回転角度位置θをRAMに保持するようになっている。
【0059】
また、回転情報算出器200は、前記異常検出部2a、前記回転情報算出部2bなどにおける上記各機能をソフトウェア上で実現するため、及び上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するための不図示のコンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムのハードウェア構成は、各種制御や演算処理を担う演算処理装置(Processing Unit)と、主記憶装置(Main Storage)を構成するRAM(Random Access Memory)と、読み出し専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory)と、前記各装置間をデータ授受可能に接続する各種内外バスとを有した構成となっている。
【0060】
そして、電源を投入すると、ROMに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従って演算処理装置が各種ハードウェアの制御及び各種演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0061】
更に、図10に基づき、異常検出部2aにおける異常検出処理の流れを説明する。
ここで、図10は、異常検出部2aの異常検出処理を示すフローチャートである。
異常検出処理は、専用のソフトウェアを演算処理装置に実行させることで行われる処理であって、回転情報算出装置2の演算処理装置において実行されると、図10に示すように、まずステップS200に移行する。
【0062】
ステップS200では、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cからの3相の磁気検出信号の各相のサンプリング値a、b、cを同時に取得して、ステップS202に移行する。
ステップS202では、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びbと、A相、B相、C相の各相に対応する第2式とを用いて絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出して、ステップS204に移行する。
【0063】
ステップS204では、異常検出部2aにおいて、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS206に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS216に移行する。
具体的に、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2の各2つの差分値(θA2-θB2)、(θA2-θC2)、(θB2-θC2)が、所定の誤差範囲内に3つとも収まっているときに等しいと判定される。以下、第3式及び第4式においても同様の方法で判定を行う。
【0064】
ここで、θA2、θB2、θC2は、A相、B相、C相に対する第2式を用いて算出した絶対回転角度位置である。同様に、θA3、θB3、θC3は、A相、B相、C相に対する第3式を用いて算出した絶対回転角度位置であり、θA4、θB4、θC4は、A相、B相、C相に対する第4式を用いて算出した絶対回転角度位置である。つまり、下付き文字のアルファベットが磁気検出器60a〜60cの相の種類を表し、数字が算出式の種類を表している。
【0065】
ステップS206に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第3式とを用いて絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出して、ステップS208に移行する。
ステップS208では、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、
ステップS210に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS214に移行する。
【0066】
ステップS210に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値b及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第4式とを用いて絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出して、ステップS212に移行する。
ステップS212では、異常検出部2aにおいて、第2〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0067】
一方、ステップS208において、第3式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS214に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるC相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すC相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
また、ステップS204において、第2式で算出した回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS216に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第3式とを用いて絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出して、ステップS218に移行する。
【0068】
ステップS218では、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS220に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS222に移行する。
ステップS220に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるB相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すB相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0069】
また、ステップS218において、第3式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS222に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値b及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第4式とを用いて絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出して、ステップS224に移行する。
ステップS224では、異常検出部2aにおいて、第4式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS226に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS228に移行する。
【0070】
ステップS226に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第4式で算出した3つの絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるA相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すA相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
一方、ステップS228に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、動作停止用の異常検出フラグを、内部の動作制御部(演算処理装置)や外部装置などに出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0071】
更に、図11に基づき、回転情報算出部2bの回転情報算出処理の流れを説明する。
ここで、図11は、回転情報算出部2bの回転情報算出処理を示すフローチャートである。
回転情報算出処理は、専用のソフトウェアを演算処理装置に実行させることで行われる処理であって、回転情報算出装置2の演算処理装置において実行されると、図11に示すように、まずステップS300に移行する。
【0072】
ステップS300では、回転情報算出部2bにおいて、異常検出部2aから絶対回転角度位置を取得したか否かを判定し、取得したと判定された場合(Yes)は、ステップS302に移行し、そうでない場合(No)は、取得するまで待機する。
ステップS302に移行した場合は、回転情報算出部2bにおいて、取得した絶対回転角度位置の平均値を、内輪24(回転軸)の絶対回転角度位置θとして算出して、ステップS304に移行する。
【0073】
ステップS304では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302で算出した絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタでカウントした、内輪24の回転に応じたパルス信号数とに基づき回転角速度ωを算出して、ステップS306に移行する。
ステップS306では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302で算出した絶対回転角度位置θと、過去に算出した絶対回転角度位置θとに基づき回転方向を算出して、ステップS308に移行する。
ステップS308では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302〜S306の算出結果の信号を出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0074】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
まず、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相に対する回転角度位置の算出に用いられる算出式について説明する。
磁気検出器60a〜60cのA相〜C相からの磁気検出信号のサンプリング値a、b、cは、下式(1)で表すことができる。
【0075】
A相:a=cosθ
B相:b=cos(θ-2π/3) ・・・(1)
C相:c=cos(θ-4π/3)
上式(1)より、サンプリング値a、b、cの数学的関係を利用して、異常検出用の回転角度位置の算出式(上述した第1式〜第4式)を求めるための異常検出パラメータとして、下式(2)を求める。
【0076】
【数1】
【0077】
更に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、サンプリング値a、b、cを全て用いた回転角度位置の算出式である、下式(3)に示す第1式を求める。次に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、第1式を変形し、下式(3)に示すように、サンプリング値a及びbのみを変数とした第2式を求める。同様に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、第1式を変形し、下式(3)に示すように、サンプリング値a及びcのみを変数とした第3式、並びにサンプリング値b及びcのみを変数とした第4式を求める。
【0078】
【数2】
【0079】
以下、上記のようにして求めた、上式(3)に示す、第2〜第4式を用いて、回転情報算出装置2の異常検出処理及び回転情報算出処理の動作を説明する。
ここでは、磁気センサ付き軸受装置100を、モータの回転軸の軸受に適用した場合の動作を説明する。
不図示のドライバからの駆動信号に応じてモータが駆動すると、モータの回転軸が回転し、この回転に連動して磁気センサ付き軸受装置100の内輪24が回転する。内輪24には磁石40が支持されているので、内輪24と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。
【0080】
磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)が出力される。
回転情報算出器200は、サンプリングタイミングになると、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cから出力される3相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cを取得する(ステップS200)。
異常検出部2aは、サンプリング値a、b、cを取得すると、まず、サンプリング値a及びbと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第2式とを用いて、絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出する(ステップS202)。
【0081】
次に、異常検出部2aは、第2式で算出したθA2、θB2、θC2に対して、各2つの差分値「θA2-θB2」、「θA2-θC2」、「θB2-θC2」を算出する。そして、これら差分値と、予め設定されている閾値Et=±0.1[°]とを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS204の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS204の「No」の分岐)。
ここで、閾値Etを−0.1[°]〜+0.1[°]の範囲にしたのは、ノイズによる誤差や、A/D変換による誤差等を考慮するためである。
【0082】
以下、第2式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しかった場合の動作を説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第3式とを用いて、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出する(ステップS206)。
【0083】
そして、上記第2式のときと同様に、第3式で算出したθA3、θB3、θC3に対して、各2つの差分値「θA3-θB3」、「θA3-θC3」、「θB3-θC3」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS208の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS208の「No」の分岐)。
【0084】
ここで、第3式に対する3つの絶対回転角度位置が等しくない場合は、既にサンプリング値a及びbが正常であることが解っているので、サンプリング値cにのみ異常があることが解る。また、サンプリング値cを変数に含む第4式についても異常値が算出されることが解る。
従って、異常検出部2aは、第2式で算出した絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を回転情報算出部2bに出力すると共に、C相の信号に異常が発生していることを示すC相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS214)。
【0085】
例えば、C相信号異常検出フラグを外部のコンピュータなどに出力し、そこで異常個所を示すメッセージ画像等を表示装置に表示することで、磁気検出器60a〜60cに異常が発生していることが解ると共に、異常の発生箇所も解るので迅速な対応が可能となる。
また、異常検出部2aは、C相に異常があるという情報を保持し、以降は、A相及びB相からのサンプリング値a及びbのみを用いて、第2式から3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cにおけるC相(磁気検出器60c)に異常があっても、残りのA相及びB相(磁気検出器60a及び60b)が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
【0086】
また、異常検出部2aにおいては、例えば、電源投入毎、又はサンプリングタイミング毎など定期的に異常検出処理を行うようにすることで、残り2つの相に異常が発生したときにも対応することが可能である。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を取得すると(ステップS300)、まず、3つの絶対回転角度位置の平均値「(θA2+θB2+θC2)/3」を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0087】
絶対回転角度位置θが算出されると、回転情報算出部2bは、次に、回転角速度ωを算出する(ステップS304)。回転角速度ωの算出方法は、上記第1の実施の形態と同様となるので具体的な説明を省略する。
更に、回転角速度ωが算出されると、回転情報算出部2bは、次に、回転位置を算出する(ステップS306)。回転位置の算出方法は、上記第1の実施の形態と同様となるので具体的な説明を省略する。
【0088】
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向の情報を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。この信号は、アナログ又はデジタルの信号で出力され、その出力方法は、上記第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0089】
次に、上式(3)に示す、第2式及び第3式で算出した絶対回転角度位置が正常である場合(ステップS208の「Yes」の分岐)の動作について説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a、b、cが全て正常であることが解るので、更に、サンプリング値b及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第4式とを用いて、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出する(ステップS210)。そして、上記取得したサンプリング値a、b、c、及び第2式〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置の全てを、回転情報算出部2bに出力する(ステップS212)。
【0090】
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、9つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2、θA3、θB3、θC3、θA4、θB4、θC4とを取得すると(ステップS300)、これら9つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
そして、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
【0091】
つまり、磁気検出器60a〜60cの各相に異常がない場合は、9つの絶対回転角度位置の平均値を、出力用の絶対回転角度位置θとして算出することができるので、高精度な絶対回転角度位置θ及び回転角速度ωを出力対象に出力することが可能である。また、この場合は、異常が無いので異常検出フラグは出力されない。
【0092】
次に、上式(3)に示す、第2式で算出した回転角度位置が異常と判定された場合(ステップS104の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第3式とを用いて、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出する(ステップS216)。
【0093】
そして、上記第2式のときと同様に、第3式で算出したθA3、θB3、θC3に対して、各2つの差分値「θA3-θB3」、「θA3-θC3」、「θB3-θC3」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS218の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと
判定する(ステップS218の「No」の分岐)。
【0094】
ここで、3つの絶対回転角度位置が等しいと判定された場合(ステップS218の「Yes」の分岐)は、サンプリング値a及びbの何れか一方が異常であることに加え、サンプリング値a及びcが正常であることが解るので、これにより、サンプリング値bのみに異常があることが解る。従って、異常検出部2aは、第3式で算出した絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を回転情報算出部2bに出力すると共に、B相の信号に異常が発生していることを示すB相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS220)。
【0095】
また、異常検出部2aは、B相に異常があるという情報を保持し、以降は、A相及びC相からのサンプリング値a及びcのみを用いて、第3式から3つの絶対回転角度位置をθA3、θB3、θC3を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cのB相に異常があっても、残りのA相及びC相が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を取得すると(ステップS300)、これら3つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0096】
更に、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。
【0097】
次に、第2式及び第3式で算出した回転角度位置が異常と判定された場合(ステップS218の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合は、サンプリング値a及びbの何れか一方、及びサンプリング値a及びcの何れか一方に異常があることが解る。しかし、これだけでは、サンプリング値aのみに異常があるのか、サンプリング値b及びcに異常があるのかが正確に解らない。従って、異常検出部2aは、更に、サンプリング値b及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第4式とを用いて、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出する(ステップS222)。
【0098】
そして、上記第2式のときと同様に、第4式で算出したθA4、θB4、θC4に対して、各2つの差分値「θA4-θB4」、「θA4-θC4」、「θB4-θC4」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS224の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS224の「No」の分岐)。
【0099】
ここで、3つの絶対回転角度位置が等しいと判定された場合(ステップS224の「Yes」の分岐)は、サンプリング値aのみが異常であることが解るので、異常検出部2aは、第4式で算出した絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を回転情報算出部2bに出力すると共に、A相の信号に異常が発生していることを示すA相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS226)。
【0100】
また、異常検出部2aは、A相に異常があるという情報を保持し、以降は、B相及びC相からのサンプリング値b及びcのみを用いて、第4式から3つの絶対回転角度位置をθA4、θB4、θC4を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cのA相に異常があっても、残りのB相及びC相が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を取得すると(ステップS300)、これら3つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0101】
更に、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。
【0102】
次に、第2式〜第4式で算出した回転角度位置が全て異常と判定された場合(ステップS224の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合は、サンプリング値a、b、cのうち2つ以上に異常があることが解るので、異常検出部2aは、回転情報の算出処理を正常に機能させることは不可能であると判断し、動作停止用の異常検出フラグを、内部の動作制御部及び外部装置に出力する(ステップS228)。
回転情報算出器200の内部にある動作制御部は、異常検出部2aから動作停止用の異常検出フラグを取得すると、停止コマンドを発行して、異常検出部2a及び回転情報算出部2bの動作を停止する。
【0103】
上記したように、本実施の形態の回転情報算出器200は、異常検出部2aにおいて、3相の磁気検出信号のサンプリング値のうちA相及びB相の値a、b、A相及びC相の値a、c、並びにB相及びC相の値b、cと、上式(3)の第2式〜第4式とに基づき、絶対回転角度位置θA2〜θC2、θA3〜θC3、θA4〜θC4を算出することが可能である。また、各算出式で算出した各3つの絶対回転角度位置の差分値と閾値Etとの比較結果に基づき、サンプリング値の異常を検出することが可能である。また、異常があったときに、該当するサンプリング値の相に対する異常検出フラグや、動作停止用の異常検出フラグを出力することが可能である。
【0104】
これにより、磁気検出器60a〜60cのどの相に異常があるのかを正確に判断することができると共に、異常検出フラグを外部装置等に出力することで、異常の有無及び異常個所を判断することができるので、迅速な対応が可能となる。また、正常な情報を算出できないときは動作を停止することができるので、出力対象の誤動作等を防ぐことが可能である。
【0105】
また、本実施の形態の回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cにそれぞれ対応するA相、B相、C相のうち、異常の発生していない相が1つしかない場合に、残り2つの正常な相のサンプリング値を用いて、継続して絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向の算出処理を行うことが可能である。
これにより、1相だけに異常が発生した場合でも回転情報の算出処理を継続し、出力対象の正常な動作を維持できるので、誤動作による出力対象の破損や危険の発生等を防ぐことが可能である。
【0106】
また、本実施の形態の回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cにそれぞれ対応するA相、B相、C相のうち、正常な相に対する上記第1〜第4式で算出した絶対回転角度位置の平均値を、出力用の絶対回転角度位置θとして算出することが可能である。
これにより、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出が可能である。
なお、上記第2の実施の形態において、磁気検出器60a〜60cが本願発明3つの磁気検出器に対応し、ステップS200が本願発明のサンプリング値取得手段に対応し、異常検出部2a及びステップS202〜S228が本願発明の異常検出手段に対応し、回転情報算出部2b及びステップS300〜S308が本願発明の回転情報算出手段に対応する。
【0107】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について、図12から図14に基づき説明する。
本実施の形態は、磁気センサ付き軸受装置100の磁石ホルダ30に支持されている磁石41が、図12に示すように、円環筒状の部材であり、筒部半周の領域がS極に着磁され、残りの筒部半周の領域がN極に着磁されている。
【0108】
外輪22に支持されている磁路部材50は、磁石41からの磁束を磁気検出器60a〜60cに導くための3つの磁路を形成している。これら3つの磁路は、軸方向から見て回路基板70と略同一直径の円環筒を略均等に3分割してなる板厚方向に湾曲した形状であり、且つ、互いの周方向端部の間に空隙53を設けて円環状に配置した3つの円弧部54と、各円弧部54の周方向端部から径方向外方に向けて突設され、空隙53を挟んで対向している複数の壁部55とを備えており、各空隙53に、一対の壁部55の間に挟み込むように回路基板70に実装した3つの磁気検出器60a〜60cを配置し、空隙53に磁束が通り、空隙53を通る磁束を壁部55が案内することで磁路を形成している。
【0109】
そして、円環筒状とした磁石41の内周面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とが、ラジアル方向に対向して配置されている。
上記構成の磁気センサ付き軸受装置100は、図13に示すように、磁気検出器60a〜60c、磁路部材50及び磁石ホルダ30がそれぞれ軸方向に積層されているとともに、磁路部材50の径方向内方に磁石41が配置された構造となっている。
【0110】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石41が回転する。この回転によって、磁石41と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この変化によって、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の量及び磁極がそれぞれ変化し、磁気検出信号は、それぞれが120°ずつ位相のずれた3つの正弦波として出力される。
【0111】
図14の下図は、磁石41と磁路部材50との位置関係を示す図であり、図14の上図には、下図中の丸で囲んだ位置にある磁気検出器60aの出力信号の変化が示されている。磁石41が、図14の下図に示す102の位置から108に示す位置へと回転位置104〜106を介して順に右回転することによって、磁気検出器60aと磁石41との位置関係が変化し、磁気検出器60aを通る磁束の量及び磁極が変化する。これにより、磁気検出器60aの出力も、図14の上図に示すように変化し、この出力の変化が正弦波を形成する。
【0112】
本実施の形態の回転情報算出装置1によると、磁気センサ付き軸受装置100を構成する磁石41を円環筒状とし、磁石41からの磁束を磁気検出器60a〜60cまで案内する磁路部材50を、磁石41の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
【0113】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について、図15に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、第1の実施の形態と同形状の磁路部材50に対してアキシャル方向に対向配置されている磁石42が、軸方向から見て2つの三日月板状の着磁部材42a,42bを円環状に配置することで構成されている。すなわち、2つの着磁部材42a,42bは、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化している部材であり、軸方向から見て磁路部材50と略同一の円形状となるように、互いの最も板幅が小さい部分が向かい合う状態で配置されている。
【0114】
ここで、2つの着磁部材42a,42bの具体的な形状は、下式(4),(5)の通りで求められる。
着磁部材42a,42bの内周面の形状FIN=r-(Acosθ/2) ・・・(4)
着磁部材42a,42bの外周面の形状Fout=r+(Acosθ/2) ・・・(5)
ただし、θは絶対回転角度位置、rは磁石42の中心半径、Aは磁石42の最大半径である。
【0115】
そして、一方の着磁部材42aの磁路部材50に対向する面はN極に着磁され、磁石ホルダ30に対向する面はS極に着磁されている。また、他方の着磁部材42bの磁路部材50に対向する面はS極に着磁され、磁石ホルダ30に対向する面はN極に着磁されている。
そして、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bの板厚方向に直交する面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部51の壁部50aが突設している面に対して反対側の面とが、アキシャル方向に対向して配置されている。
【0116】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石42が回転する。この回転によって、磁石42と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bは、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化している三日月板状の部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0117】
本実施の形態によると、回路基板70に実装された3つの磁気検出器60a〜60cは電気角120°位相で配置されているので、120°位相の3相正弦波が出力され、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式に基づき、3相のうち2相を用いて絶対回転角度位置を算出することにより、3通りの絶対回転角度位置が算出され、比較演算によりフェールセーフを実現することができる。また、回転角度位置θを、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値を求めると、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
【0118】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について、図16に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、2つの磁気検出器60a,60bを電気角90°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板71と、磁性材料で構成した磁路部材50と、第4の実施の形態と同一形状の磁石42とが軸方向(アキシャル方向)に積層された構造とされている。
【0119】
本実施の形態の磁路部材50は、互いの周方向端部の間に4箇所の空隙52を設けて配置した円弧形状の4つの円弧部51と、各円弧部51の周方向端部から板厚方向(軸方向)の一方に向けて突設され、空隙52を挟んで対向している複数の壁部50aとを備えている。そして、隣接する所定の2つの空隙52に、一対の壁部50aの間に挟み込むように回路基板71に実装した磁気検出器60a,60bを配置し、空隙52に磁束が通り、空隙52を通る磁束を壁部50aが案内することで2つの磁路を形成している。
【0120】
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石42が回転する。この回転によって、磁石42と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bは板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状の部材なので、磁気検出器60a,60bを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
そして、回路基板71に実装された磁気検出器60a,60bは電気角90°位相で配置されているので、90°位相の2相正弦波が出力され、その比(アークタンジェント)を取ることにより絶対回転角度位置を算出する。
【0121】
したがって、本実施の形態も、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
なお、第5の実施の形態は、2つの磁気検出器60a,60bを実装した回路基板71を使用しているが、電気角90°位相の4つの磁気検出器を実装した回路基板を使用し、磁路部材50の4箇所の空隙52のそれぞれに磁気検出器を配置することにより差動出力を得てシングルエンドに変換すると、ノイズに強い2相正弦波を得ることができる。
【0122】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施の形態について、図17に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、3つの磁気検出器60a〜60cを電気角120°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板70(第4の実施の形態と同様の回路基板70)と、3つの円弧部54を備えた円環筒状の磁路部材50(第3の実施の形態の磁路部材50)とを軸方向(アキシャル方向)に積層し、磁路部材50の内径側(ラジアル方向)に磁石43を配置した構造としている。
【0123】
磁石43は、磁路部材50の内径寸法より小さな外径寸法の円環筒状であり、2つの円弧形状の着磁部材43a,43bで構成されている。
2つの着磁部材43a,43bは、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材であり、互いの最も板幅が小さい部分が向かい合わされて円環筒状に配置されている。
【0124】
ここで、2つの着磁部材43a,43bの軸方向の厚さFAXの具体的な形状は、下式(6)の通りで求められる。
FAX=Acosθ ・・・(6)
ただし、θは絶対回転角度位置、Aは磁石43の最大半径であり、着磁部材の厚さは軸方向の中心を基準に対称である。
【0125】
そして、一方の着磁部材43aの内周面はN極に着磁され、外周面はS極に着磁されている。また、他方の着磁部材43bの内周面はS極に着磁され、外周面はN極に着磁されている。
そして、円環筒状に配置した2つの円弧形状の着磁部材43a,43bと、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とが、ラジアル方向に対向して配置されている。
【0126】
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石43が回転する。この回転によって、磁石43と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石43を構成する2つの着磁部材43a,43bが、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0127】
本実施の形態によると、回路基板70に実装された磁気検出器60a〜60cは電気角120°位相で配置されているので、120°位相の3相正弦波が出力され、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式に基づき、3相のうち2相を用いて絶対回転角度位置を算出することにより、3通りの絶対回転角度位置が算出され、比較演算によりフェールセーフを実現することができる。また、回転角度位置θを、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値を求めると、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
また、円環筒状とした磁石43を、円環筒状とした磁路部材50の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
【0128】
〔第7の実施の形態〕
さらに、本発明の第7の実施の形態について、図18に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、2つの磁気検出器60a,60bを電気角90°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板71(第5の実施の形態と同様の回路基板71)と、4つの円弧部54を備えた円環筒状の磁路部材50とを軸方向(アキシャル方向)に積層し、磁路部材50の内径側(ラジアル方向)に磁石43(第6の実施の形態と同様の磁石43)を配置した構造としている。
【0129】
本実施の形態の磁路部材50は、互いの周方向端部の間に空隙53を設けて円環状に配置した4つの円弧部54と、各円弧部54の周方向端部から径方向外方に向けて突設され、空隙53を挟んで対向している複数の壁部55とを備えている。そして、隣接する所定の2つの空隙53に、一対の壁部55の間に挟み込むように回路基板71に実装した磁気検出器60a,60bを配置し、空隙53に磁束が通り、空隙53を通る磁束を壁部55が案内することで2つの磁路を形成している。
【0130】
そして、2つの円弧形状の着磁部材43a,43bを円環筒状に配置した磁石43と、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とを、ラジアル方向に対向して配置する。
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石43が回転する。この回転によって、磁石43と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石43を構成する2つの着磁部材43a,43bが、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0131】
そして、回路基板71に実装された磁気検出器60a,60bは電気角90°位相で配置されているので、90°位相の2相正弦波が出力され、その比(アークタンジェント)を取ることにより絶対回転角度位置を算出する。
したがって、本実施の形態も、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
【0132】
また、円環筒状とした磁石43を、円環筒状とした磁路部材50の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
なお、第7の実施の形態は、2つの磁気検出器60a,60bを実装した回路基板71を使用しているが、電気角90°位相の4つの磁気検出器を実装した回路基板を使用し、磁路部材50の4箇所の空隙53のそれぞれに磁気検出器を配置することにより差動出力を得てシングルエンドに変換すると、ノイズに強い2相正弦波を得ることができる。
【0133】
なお、上記第1の実施の形態において、着磁ホルダ30は磁性体として磁性材料から構成されているとしたが、これに限らず磁性体でなくてもよい。しかし、より多い磁束を集めるために、磁石ホルダは磁性材料で構成されるのが望ましい。
また、上記第1の実施の形態において回路基板70は馬蹄形に形成したものとしたが、これに限らずリング状やその他形状でもよい。
また、上記第2の実施の形態においては、異常検出部2aの異常検出処理及び回転情報算出部2bの回転情報算出処理を、演算処理装置に専用のソフトウェアを実行させることで行う構成としたが、これに限らず、ハードウェア主体で前記各処理を実行する構成としても良い。
【0134】
また、上記第2の実施の形態においては、事前に異常検出パラメータから、上式(3)を求めておき、異常検出部2aはこの算出式を用いて、異常検出処理を実行する構成としたが、これに限らず、例えば、電源投入毎、又は出荷後の最初の電源投入時などに、異常検出パラメータの算出処理及び上式(3)に示す回転角度位置の算出式の生成処理を行う構成としても良い。また、一度生成した算出式は、電源が落ちるまで保持するか又は電源が落ちた後も保持し続けるようにすることで、上式(3)に示す算出式の生成処理負荷を軽減することが可能である。
【0135】
また、上記第2の実施の形態において、異常検出部の閾値を−0.1〔°〕〜+0.1〔°〕としたが、これに限らず閾値は適宜決定してよい。
また、上記第2の実施の形態においては、磁気センサ付き軸受装置100と、回転情報算出装置2とを別々の構成としたが、これに限らず、回転情報算出装置2に磁気センサ付き軸受装置100を含む構成としても良い。この場合に、回転情報算出装置2を、センサ付き軸受装置100に組み込んで一体とする構成としても良い。
【0136】
また、上記第2の実施の形態において、回転角度位置θを、上記第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値により求める構成としたが、これに限らず、回転角度位置θを、平均する前の値の何れか1つとしてもよいし、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求める構成やその他の構成としても良い。
【0137】
また、上記第4、第5、第6、第7の各実施の形態において着磁部材は端が尖っている形状の構成を示したが、これに限らず生産性を考えて着磁部材の端に丸みをつけた形状でもよい。この場合、端が尖っている形状の場合と同じ位置に着磁部材を配置するため、着磁部材間に空隙を設けて配置する。
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100に、回転情報算出装置2を適用したが、これに限らず、回転軸の回転に応じた3相の磁気検出信号が得られるのであれば、磁気センサと、軸受とが別体となったものや、磁気センサ付き軸受装置が別の構成であるものなど、他の構成のものに適用しても良い。
【0138】
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100に、回転情報算出装置2を適用したが、これに限らず、軸受装置以外の回転子を有する装置に適用してもよい。
また、上記4〜7の実施の形態において、磁石の形状が回転方向に正弦波状に変化している構成を説明したが、これに限らず円環状の磁石を正弦波状に着磁する方法でもよい。
【0139】
また、上記各実施の形態において、磁石が2極に着磁された構成を説明したが、これに限らず、磁石を、4極以上に着磁した多極着磁の構成としても良い。この場合は、絶対回転角度位置を算出することができないが、相対回転角度位置を正確に算出することができる。
また、上記各実施の形態において磁路部材50に壁部50a,55を有している構成を説明したが、図19から図24に示す磁気センサ付き軸受装置のように、磁路部材50に壁部を設けない構造としてもよい。この場合は、ホールICのホール素子部が磁路部材の厚さ方向の中心部に配置されるようにホールICの位置を決定することが望ましい。
【0140】
また、上記各実施の形態において、磁気検出器60a〜60cがアナログホールICである構成を説明したが、これに限らず、他のアナログ素子であっても良い。しかしながら、ホール素子等のような一般のアナログ素子の場合、感度が低く、外部に増幅回路が必要になるが、アナログホールICを使用すると、アナログホールIC内部に増幅回路が組み込まれているので、外部に増幅回路を設ける必要がなくなるため、アナログホールICを使うのが望ましい。
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100が玉軸受を有する構成を説明したが、これに限らず、円錐ころ軸受、ニードル軸受、ころ軸受、複列軸受その他任意の種類の軸受を有する構成としても良い。
【0141】
〔第8の実施の形態〕
さらにまた、本発明の第8の実施の形態について、図25及び図26に基づき説明する。
図25は、本発明に係る回転情報算出装置を電動直結式パワーステアリング装置(以下、電動パワーステアリング装置と称する)に適用した場合を示す全体構成図である。
【0142】
図25の符号3は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール3に運転者から作用される操舵力が入力軸4aと出力軸4bとを有するステアリングシャフト4に伝達される。このステアリングシャフト4は、入力軸4aの一端がステアリングホイール3に連結され、入力軸4aの他端は、回転情報算出装置を備えたトルクセンサ5を介して出力軸4bの一端に連結されている。
【0143】
出力軸4bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント6を介してロアシャフト7に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント8を介してピニオンシャフト9に伝達される。このピニオンシャフト9に伝達された操舵力はステアリングギヤ10を介してタイロッド11に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ10は、ピニオンシャフト9に連結されたピニオン10aとこのピニオン10aに噛合するラック10bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン10aに伝達された回転運動をラック10bで直進運動に変換している。
【0144】
ステアリングシャフト4の出力軸4bには、操舵補助力を出力軸4bに伝達する操舵補助機構12が連結されている。この操舵補助機構12は、出力軸4bに連結した減速ギヤ13と、この減速ギヤ13に連結されて操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ14とを備えている。
トルクセンサ5から出力される操舵トルクTはコントローラ16に入力される。また、コントローラ16には、操舵トルクTの他に車速センサ17から出力される車速検出値Vも入力する。コントローラ16は、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力を電動モータ14で発生するための電流指令値を演算し、当該電流指令値に基づいて電動モータ14を駆動制御する。
【0145】
トルクセンサ5は、図26に示すように、ステアリングシャフト4の入力軸4a及び出力軸4bの間に同軸に連結され、捩じれトルクが入力されると自身に捩じれが生じる弾性部材からなるトーションバー18と、入力軸4aに連結された第1の回転情報算出装置2Aと、出力軸に4bに連結された第2の回転情報算出装置2Bと、演算部15とで構成されている。
【0146】
第1の回転情報算出装置2Aは、前述した第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であり、第1の磁気センサ付き軸受装置100a及び第1の回転情報算出器200aとで構成され、第1の磁気センサ付き軸受装置100aの内輪24が入力軸4aの外周に外嵌されている。また、第2の回転情報算出装置1bも、前述した第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であり、第2の磁気センサ付き軸受装置100b及び第2の回転情報算出器200bとで構成され、第2の磁気センサ付き軸受装置100bの内輪24が出力軸4bの外周に外嵌されている。
【0147】
次に、本実施形態における動作及び効果について、図3、図8から図11、図25及び図26を参照して説明する。
運転者がステアリングホイール3を操作すると、ステアリングホイール3に連結された入力軸4aが回転し、この回転に連動して第1の回転情報算出装置2Aの第1の磁気センサ付き軸受装置100aの磁石ホルダ30が回転する。磁石ホルダ30には磁石40が支持されているので、磁石ホルダ30と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号cosθ、cos(θ−2π/3)、cos(θ−4π/3)が出力される。そして、第1の回転情報算出器200aは、上記3相の磁気検出信号に基づいて入力軸4aの絶対回転角度位置θ1を算出し、これを演算部15に出力する。
【0148】
また、入力軸4aが回転すると、この回転トルクがトーションバー18を介して出力軸4bに伝達されて出力軸4bが回転し、この回転に連動して第2の回転情報算出装置2Bの第2の磁気センサ付き軸受装置100bの磁石ホルダ30が回転する。そして、第2の回転情報算出器200bは、第2の磁気センサ付き軸受装置100bから出力される3相の磁気検出信号に基づいて、出力軸4bの絶対回転角度位置θ2を算出し、これを演算部15に出力する。
【0149】
演算部15は、絶対回転角度位置θ1と絶対回転角度位置θ2との差分値を算出し、当該差分値に基づいて操舵トルクTを算出し、これをコントローラ16に出力する。
コントローラ16は、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値を演算し、当該電流指令値に基づいて電動モータ14が駆動制御されることで、電動モータ14の発生トルクが減速ギヤ13を介してステアリングシャフト4の回転トルクに変換されて、運転者の操舵力がアシストされる。
【0150】
本実施の形態によると、トルクセンサ5を構成する2つの回転情報算出装置2A,2Bは3相の磁気検出信号を用いて回転状態を算出しており、3相の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が発生した場合であっても、残りの2相の磁気検出信号に基づいて回転状態を検出することができる。したがって、操舵トルクTを算出する装置として2重系を構成することができ、信頼性の高いトルクセンサ5を備えたフェールセーフ制御を実行することができる。
また、第1及び第2の回転情報算出器200a,200bに、3相の磁気検出信号の異常を検出する異常検出部2aを設けることで、トルクセンサ5で検出される回転角度位置の信頼性を高めることができ、より信頼性の高いトルクセンサとすることができる。
【0151】
なお、上記の実施の形態においては、第1の磁気センサ付き軸受装置100aを入力軸4aに同軸に連結する場合について説明したが、第1の磁気センサ付き軸受装置100aをトーションバー18の入力軸4a側の端部に連結してもよい。同様に、第2の磁気センサ付き軸受装置100bをトーションバー18の出力軸4b側端部に連結してもよい。
また、本実施の形態のトルクセンサ5の第1の回転情報算出装置2A及び第2の回転情報算出装置2Bは、第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成としたが、前述した第1の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であってもよい。
【0152】
また、トーションバー18の捩れ角より小さい誤差である2つの絶対回転角度を検出しているため、その誤差が許容範囲ならば、ステアリングホイール3の舵角や回転方向等の回転情報を算出する舵角センサとして2重系を構成することができる。
また、本実施の形態は、電動モータ14の操舵補助力を減速ギヤ13に伝達するパワーステアリング装置に適用したが、オイルポンプを電動モータで駆動して油圧を発生する電動油圧式のパワーステアリング装置に適用してもよい。
【0153】
また、本実施の形態は、第1の回転情報算出装置2Aだけを具備してもよい。それによって、高精度の絶対回転角度位置等の回転情報を算出し、出力することができる。また、第1の回転情報算出装置2Aは3相の磁気検出信号を用いて回転情報を算出しており、3相の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が発生した場合であっても、残りの2相の磁気検出信号に基づいて回転情報を検出することができる。したがって、絶対回転角度位置等の回転情報を算出する装置として2重系を構築することができ、信頼性の高い回転情報を得ることができる。
また、第1の回転情報算出装置2Aだけを具備する場合、電動パワーステアリング装置だけでなく、油圧パワーステアリング装置やアシスト機能がないステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1,2…回転情報算出装置、2a…異常検出部、2b…回転情報算出部、2A…第1の回転情報算出装置、2B…第2の回転情報算出装置、3…ステアリングホイール、4a…入力軸、4b…出力軸、4…ステアリングシャフト、5…トルクセンサ、14…電動モータ、16…コントローラ、18…トーションバー、22…外輪、24…内輪、26…ボール(転動体)、30…磁石ホルダ、40,41,42,43…磁石、42a,42b…着磁部材、43a,43b…着磁部材、50…磁路部材、50a,55…壁部、51,54…円弧部、52,53…空隙、55…壁部、60a〜60c…磁気検出器、70,71…回路基板、80…センサカバー、100…磁気センサ付き軸受装置、200…回転情報算出器、100a…第1の磁気センサ付き軸受装置、200a…第1の回転情報算出器、100b…第2の磁気センサ付き軸受装置、200b…第2の回転情報算出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度等を算出する回転情報算出装置、ステアリング装置、電動パワーステアリング装置、センサ付き軸受装置、車両、異常検出装置、回転情報算出方法及び異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の回転軸の回転角度や回転角速度などを検出するセンサとして、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
特許文献1には、磁界を発生する磁石と、磁界内に設けられた4つの磁気検出器(ホール素子)と、各磁気検出器間に設けられていて、磁気検出器に固定されて一体に回転するように結合された、強磁性材製の磁束案内部材とを備え、磁石は、磁気検出器および磁束案内部材に関して回転可能に構成された角度センサが開示されている。
また、回転軸の回転状態を示す情報を検出する機能を有するセンサを軸受に付加したセンサ付き軸受装置が提案されている。例えば、多極に着磁された磁石の磁極をデジタル出力のホールICで検出し、ホールICからパルス信号を出力するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−506530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1の従来技術は、磁束案内部材を磁石の外周に沿って、磁石を囲むように配置するため、センサの円周方向のサイズを小さくすることが困難であった。また、上記した特許文献1の従来技術は、軸方向(回転軸方向)のサイズも小さくすることができない。したがって、特許文献1の角度センサは、円周方向のサイズ、或いは軸方向のサイズの少なくとも一方を小さくすることができないので、小型化の面で問題がある。
【0005】
また、特許文献1の従来技術では、4つのホール素子のうち1つでも故障すると、角度センサとしての機能が維持できなくなる。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、センサの円周方向のサイズを小さくし、或いは装置の軸方向のサイズを小さくすることで小型化を図ることができ、磁気検出器等から構成されるセンサ部分を軸受に組み込むことで取り付けも容易に行うことが可能な回転情報算出装置を提供することを第1の目的としている。
【0006】
また、所定の磁気検出器の磁気検出信号の異常を検出することが可能であり、異常発生後も、他の磁気検出器の磁気検出信号が正常な場合に、継続して軸受の回転輪の回転状態を示す情報の計算を正確に行うことが可能な回転情報算出装置、これを備えたステアリング装置、電動パワーステアリング装置、センサ付き軸受装置、車両、異常検出装置、回転情報算出方法及び異常検出方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕
上記目的を達成するために、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備え、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置した。
【0008】
〔発明2〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1において、前記磁気検出器は、アナログホールICである。
〔発明3〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明2において、前記アナログホールICは、温度変化に伴う出力変動を補正することができるプログラマブルホールICである。
【0009】
〔発明4〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をアナログ信号として出力する。
〔発明5〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をデジタル信号として出力する。
【0010】
〔発明6〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をパルス信号として出力する。
〔発明7〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置は、発明1乃至3において、前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報として、相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つを算出する。
【0011】
〔発明8〕
また、一の実施形態に係るステアリング装置は、ステアリングホイールの相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つの回転状態を示す情報を、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置で算出し、算出した前記回転状態を示す情報を出力することを特徴とする。
【0012】
〔発明9〕
また、一の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを、発明1乃至7の何れかに記載の回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した前記操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにした。
【0013】
〔発明10〕
また、一の実施形態に係るセンサ付き軸受装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備え、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置した。
【0014】
〔発明11〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
〔発明12〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明8のステアリング装置及び発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
〔発明13〕
また、一の実施形態に係る車両は、発明9の電動パワーステアリング装置及び発明10のセンサ付き軸受装置を備えている。
【0015】
〔発明14〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置の異常検出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置し、前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【0016】
〔発明15〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出装置の異常検出装置は、回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、前記磁路部材の複数の磁路は、平板を円弧状に形成した複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に複数の空隙を設けて円環板状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、前記磁石は、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状とした2つの着磁部材を互いの周方向端部を向か合わせることで円環板状をなして構成され、前記磁石を前記円環板状に配置した前記複数の円弧板に回転軸方向に対向して配置し、前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された面が前記円弧板に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された面が前記円弧板に対向するように配置し、前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【0017】
〔発明16〕
また、一の実施形態に係る回転情報算出方法は、静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備えた回転情報算出方法において、前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づいて、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する前記異常検出手段を備え、前記回転情報算出手段は、前記複数の磁気検出信号のうち、前記異常検出手段によって異常が検出された磁気検出信号以外の磁気検出信号の各相に対する、当該異常の検出に用いた前記回転角度位置の平均値を、前記回転輪の回転角度位置として算出するとともに、前記回転情報算出手段は、前記異常検出手段によって、前記複数の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が検出されたときに、当該異常の検出された磁気検出信号の相を除く、残りの相の磁気検出信号に対するサンプリング値に基づき前記回転状態を示す情報を算出する。
【0018】
〔発明17〕
また、一の実施形態に係る異常検出方法は、静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備えた回転情報算出装置において、磁気検出信号の異常を検出する異常検出方法であって、前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、算出した前記各相に対する前記回転角度位置同士の差分値に基づき、前記位相の異なる複数の磁気検出信号の異常を検出する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、発明1によれば、磁路部材を、円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された複数の磁気検出器の間に配設したので、磁路部材の円周方向のサイズを磁石の円周方向のサイズ以下にして回転情報算出装置の小型化を図ることができるとともに、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状の2つの着磁部材で磁石を構成したので、磁気検出器を通る磁束の量が正弦波状に変化し、磁気検出信号も正弦波状にすることができる。
【0020】
また、発明2から発明7によれば、回転角度位置の信頼性を高めることができる。
また、発明8によれば、ステアリングホイールの舵角や回転方向等の回転情報を回転情報算出装置で算出し、この回転情報算出装置で算出した舵角や回転方向等の情報を出力するようにしたので、高精度、且つフェールセーフを考慮した回転情報を提供することができる。
【0021】
また、発明9によれば、ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達された運転者の操舵トルクを、回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにしたので、運転者の操舵力をアシストすることができる。
また、発明10によれば、磁気検出器を通る磁束の量が正弦波状に変化し、磁気検出信号も正弦波状にすることができるセンサ付き軸受装置を提供することができる。
また、発明11〜13によれば、運転者の操舵力をアシストすることができる車両を提供することができる。
【0022】
また、発明14,15によれば、複数相の磁気検出器から出力される複数の磁気検出信号の異常を検出することができるので、回転角度位置の信頼性を高めることができる。
また、発明16によれば、回転角度位置の信頼性を高めて回転状態を高精度に検出する回転情報算出方法を提供することができる。
さらに、発明17によれば、複数の磁気検出信号の異常を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の回転情報算出装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の軸方向の断面図である。
【図5】第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の磁気検出器から出力される磁気検出信号を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【図7】回転情報算出器における回転情報算出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態の回転情報算出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態の回転情報算出装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施の形態の異常検出部の異常検出処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態の回転情報算出部の回転情報算出処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図13】第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の軸方向の断面図である。
【図14】第3の実施の形態の磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【図15】本発明に係る第4の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図16】本発明に係る第5の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図17】本発明に係る第6の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図18】本発明に係る第7の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置の分解斜視図である。
【図19】本発明に係る第1の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図20】本発明に係る第3の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図21】本発明に係る第4の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図22】本発明に係る第5の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図23】本発明に係る第6の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図24】本発明に係る第7の実施の形態の磁気センサ付き軸受装置一部を改良した図である。
【図25】本発明に係る電動パワーステアリング装置を示す全体構成図である。
【図26】本発明に係る電動パワーステアリング装置のトルクセンサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図7は、本発明に係る回転情報算出装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る回転情報算出装置の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回転情報算出装置1の構成を示すブロック図である。
【0025】
回転情報算出装置1は、図1に示すように、モータ等の回転軸に回転自在に取り付けられた磁気センサ付き軸受装置100と、磁気センサ付き軸受装置100からの磁気検出信号に基づいて回転軸の回転状態を示す情報である回転情報を算出する回転情報算出器200とを有して構成されている。なお、図1に示す、磁気センサ付き軸受装置100は、径方向の断面図である。
【0026】
更に、図2〜図6に基づき、磁気センサ付き軸受装置100の詳細な構成を説明する。
ここで、図2は、磁気センサ付き軸受装置100の斜視図であり、図3は、磁気センサ付き軸受装置100の分解斜視図であり、図4は、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向の断面図である。また、図5は、磁気センサ付き軸受装置100の磁気検出器60a〜60cから出力される磁気検出信号を示す図である。また、図6は、磁気検出信号の出力原理を示す図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、玉軸受を備え、当該玉軸受には回転軸の回転状態を検出するための磁気センサが組み込まれている。
玉軸受は、内輪24と、外輪22と、内輪24及び外輪22との間に介在する転動体としての複数個のボール26とを備えた構成となっている。また、内輪24及び外輪22のうちの一方が静止輪となり、他方が回転輪となる。回転輪は、モータ等の回転軸の回転に連動して、静止輪との間に介在するボール26を転動させながら回転する。
【0028】
以下、内輪24を回転輪として構成を説明する。
内輪24を回転輪とすると、内輪24には円環状の磁石ホルダ30が支持される。磁石ホルダ30は磁性体として、磁性材料から構成されている。更に、磁石ホルダ30には、円環板状の磁石40が支持される。磁石40は、その半周の円周面がS極に着磁され、あとの半周の円周面がN極に着磁されている。つまり、磁石40は、2極に着磁されている。
【0029】
一方、静止輪となる外輪22には、磁路部材50と、円環板状の一部を切り欠くことで軸方向から見て馬蹄形に形成した回路基板70とが支持される。回路基板70の板厚方向の一方の面には、3つの磁気検出器60a〜60cがそれぞれ電気角120°の位相をもつように実装されている。なお、本実施の形態においては、磁気検出器60a〜60cにアナログホールICを用いる。
【0030】
磁性材料で構成された磁路部材50は、磁石40からの磁束を磁気検出器60a〜60cに導くための3つの磁路を形成する。この3つの磁路は、軸方向から見て回路基板70と略同一の円形状となるように、互いの周方向端部の間に3箇所の空隙52を設けて配置した円弧形状の3つの円弧部51と、各円弧部51の周方向端部から板厚方向(軸方向)の一方に向けて突設され、空隙52を挟んで対向している複数の壁部50aとを備えることで、各空隙52に、一対の壁部50aの間に挟み込むように回路基板70に実装した磁気検出器60a〜60cを配置し、空隙52に磁束が通り、空隙52を通る磁束を壁部50aが案内することで磁路を形成している。
【0031】
そして、円環板状とした磁石40の板厚方向に直交する面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部51の壁部50aが突設している面に対して反対側の面とが、アキシャル方向に対向して配置されている。
また、磁路部材50、磁気検出器60a〜60c、磁石40、磁石ホルダ30によって構成される磁気センサ部は、センサカバー80で覆われている。
【0032】
上記のような構成の磁気センサ付き軸受装置100は、図3に示すように、磁気センサ部を構成する、磁気検出器60a〜60c、磁路部材50、磁石40、及び磁石ホルダ30がそれぞれ軸方向(アキシャル方向)に積層された構造となる。
また、図4に示すように、磁石40と磁路部材50との間には空間ギャップがある。この空間ギャップは、狭い方が磁気検出器60a〜60cに案内される磁束の量が多くなるが、あまり狭すぎると磁石40と磁路部材50が接触する可能性があるので、0.1[m
m]〜2.0[mm]くらいが望ましい。
【0033】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石40が回転する。この回転によって、磁石40と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この変化によって、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の量及び磁極がそれぞれ変化し、磁気検出信号は、図5に示すように、それぞれが120°ずつ位相のずれた3つの正弦波として出力される。つまり、象限判別が可能となるので、磁気検出器60a〜60cから出力される磁気検出信号に基づいて回転角度位置θなどを算出することができる。
【0034】
図6の下図は、磁石40と磁路部材50との径方向の断面を軸方向から見たときの両者の位置関係を示す図であり、図6の上図には、下図中の丸で囲んだ位置にある磁気検出器60aの出力信号の変化が示されている。磁石40が、図6の下図に示す、102の位置から108に示す位置へと回転位置104〜106を介して順に右回転することによって、磁気検出器60aと磁石40との位置関係が変化し、磁気検出器60aを通る磁束の量及び磁極が変化する。これにより、磁気検出器60aの出力も、図6の上図に示すように変化し、この出力の変化が正弦波を形成する。
【0035】
また、磁気検出器60a〜60cの信号出力部(不図示)は、回転情報算出器200の信号入力部(不図示)に接続されている。
図1に戻って、回転情報算出器200は、磁気センサ付き軸受装置100から出力される3つの磁気検出信号に基づき、絶対回転角度位置θ、回転角速度ω、回転方向などの回転輪(回転軸)の回転状態を示す回転情報を周期的に算出する。そして、算出した回転情報は、不図示の出力対象へと出力される。
【0036】
また、回転情報算出器200は、回転角速度ωを算出するために、回転輪の回転に応じたパルス信号を出力する不図示のパルス発生器と、そのパルス信号をカウントする不図示のパルスカウンタとを有している。
また、回転情報算出器200は、回転方向を算出するために、算出した絶対回転角度位置θをRAMに保持するようになっている。
【0037】
また、回転情報算出器200は、図示しないが、各種制御や演算処理を担う演算処理装置(Processing Unit)と、主記憶装置(Main Storage)を構成するRAM(Random Access Memory)と、読み出し専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory)と、前記各装置間をデータ授受可能に接続するバスとを有した構成となっている。
そして、ROMに予め記憶された専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従って演算処理装置が各種ハードウェアの制御および各種演算処理を行うことで前述した回転情報の算出処理を実現するようになっている。
【0038】
更に、図7に基づき、回転情報算出器200における回転情報算出処理の流れを説明する。ここで、図7は、回転情報算出器200における回転情報算出処理を示すフローチャートである。
回転情報算出処理は、回転情報算出器200で実行されると、図7に示すように、まずステップS100に移行し、回転情報算出器200において、磁気検出器60a〜60cから、磁気検出信号のサンプリング値を取得したか否かを判定し、取得したと判定された場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、取得するまで待機する。
【0039】
ステップS102に移行した場合は、回転情報算出器200において、ステップS100で取得したサンプリング値に基づき、絶対回転角度位置θを算出してステップS104に移行する。
ステップS104では、回転情報算出器200において、ステップS102で算出した絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタでカウントした、内輪24の回転に応じたパルス信号数とに基づき回転角速度ωを算出して、ステップS106に移行する。
【0040】
ステップS106では、回転情報算出器200において、ステップS102で算出した絶対回転角度位置θと、過去に算出した絶対回転角度位置θとに基づき回転方向を算出して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、回転情報算出器200において、ステップS102〜S106の算出結果の信号を出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0041】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
ここでは、磁気センサ付き軸受装置100を、モータの回転軸の軸受に適用した場合の動作を説明する。
不図示のドライバからの駆動信号に応じてモータが駆動すると、モータの回転軸が回転し、この回転に連動して磁気センサ付き軸受装置100の内輪24が回転する。内輪24には磁石40が支持されているので、内輪24と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。
【0042】
磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号を出力する。
磁気検出器60a〜60cから出力される3つの磁気検出信号は、先述したように、磁気検出器60a〜60cが電気角120°の位相を有するように配置されているため、磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)となって出力される。ここで、磁気検出器60aの出力をA相、磁気検出器60bの出力をB相、磁気検出器60cの出力をC相とする。
【0043】
回転情報算出器200は、サンプリングタイミングになると、磁気検出器60a〜60cから出力される、A相、B相、C相の3つの磁気検出信号について、サンプリング値a、b、cを同時に取得する(ステップS100)。そして、取得したサンプリング値a、b、cに基づき、絶対回転角度位置θを算出する(ステップS102)。絶対回転角度位置θは、本実施の形態においては、3相のサンプリング値a、b、cを、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求める。
【0044】
絶対回転角度位置θが算出されると、この絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタによってカウントされた回転輪の回転に応じたパルス信号のカウント数とに基づき、回転角速度ωを算出する。
例えば、1周を10ビット(1024)に分割し、パルス発生器から、内輪24の回転に応じてパルス信号を出力する。このパルス信号をパルスカウンタでカウントし、このカウント値から回転に応じた時間tを算出する。そして、この時間tと、絶対回転角度位置θとにより、回転角速度ωを算出する。
【0045】
回転角速度ωが算出されると、次に、RAMに保持してある過去(例えば、1回前)の絶対回転角度位置θと、今回の絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出(判別)する(ステップS106)。
回転方向が算出されると、これと、上記算出した、絶対回転角度位置θと、回転角速度ωとの情報を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS108)。
【0046】
ここで、回転情報算出器200は、上記算出結果を、アナログ又はデジタルの信号で出力することが可能である。アナログの信号で出力する場合は、例えば、絶対回転角度位置θであれば、0〜360°を0〜5Vに均等に割り当て、角度に応じたアナログ電圧信号を出力する。また、上記算出結果を、デジタルの信号で出力する場合は、例えば、絶対回転角度位置θであれば、0〜360°を10ビット(0〜1023)に均等に割り当て、角度に応じたデジタル信号を出力する。
【0047】
以上、本実施の形態の回転情報算出装置1は、その磁気センサ付き軸受装置100の構成を、磁路部材50と、3つの磁気検出器60a〜60cと、磁石40とを積み重ねた積層構成とし、且つ、磁路部材50を、磁石40からの磁束を軸方向に磁気検出器60a〜60cまで案内するように構成したので、磁路部材50の円周方向のサイズを、容易に磁石40の円周方向のサイズ以下にすることが可能である。
【0048】
また、回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cから出力される3相の磁気検出信号に基づき、内輪24(回転軸)の回転状態を示す回転情報を算出することが可能である。
上記第1の実施の形態において、回転情報算出装置1が、本願発明の回転情報算出装置に対応し、外輪22及び内輪24が、本願発明の静止輪及び回転輪に対応し、回転情報算出器200及びステップS100〜S108が、本願発明の回転情報算出手段に対応する。
【0049】
なお、上記第1の実施の形態において、回転情報算出装置1を、回転情報算出器200がセンサ付き軸受装置100とは別体となる構成としたが、これに限らず、回転情報算出器200を、センサ付き軸受装置100に組み込んで一体とする構成としても良い。
また、上記第1の実施の形態において、回転角度位置を、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求めたが、これに限らず、他の方法を用いて求める構成としても良い。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図8〜図11は、本発明に係る回転情報算出装置の第2の実施の形態を示す図である。
まず、本発明の第2の実施の形態に係る回転情報算出装置の構成を図8に基づき説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る回転情報算出装置2の構成を示すブロック図である。
【0051】
回転情報算出装置2は、図8に示すように、モータ等の回転軸に回転自在に取り付けられた磁気センサ付き軸受装置100からの磁気検出信号に基づいて回転軸の回転状態を示す情報である回転情報を算出する回転情報算出器200を有して構成されている。なお、図8に示す、磁気センサ付き軸受装置100は、径方向の断面図である。
ここで、磁気センサ付き軸受装置100は、上記第1の実施の形態と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。
【0052】
更に、図9に基づき、回転情報算出器200の詳細な構成を説明する。
ここで、図9は、回転情報算出器200の詳細な構成を示すブロック図である。
回転情報算出器200は、図9に示すように、磁気センサ付き軸受装置100からの、3相のアナログの磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)の異常を検出する異常検出部2aと、回転輪(内輪24)の回転情報を算出する回転情報算出部2bとを有して構成されている。以下、上記第1の実施の形態と同様に、磁気検出器60a〜60cの構成する各相をそれぞれA相〜C相とする。
【0053】
異常検出部2aは、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cに基づき、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づき、各相の磁気検出信号に異常が発生しているか否かを検出する。
具体的に、異常検出部2aは、A相、B相、C相の各相毎に、サンプリング値a、b、cを用いて絶対回転角度位置を算出する第1式を、サンプリング値a、b、cの数学的関係を用いて変形した第2〜第4式を用いて、前記各相の絶対回転角度位置を算出する。
【0054】
ここで、第2式は、第1式を、サンプリング値a及びbの数学的関係に基づき、サンプリング値cを含まないように変形した算出式である。また、第3式は、第1式を、サンプリング値a及びcの数学的関係に基づき、サンプリング値bを含まないように変形した算出式である。また、第4式は、第1式を、サンプリング値b及びcの数学的関係に基づき、サンプリング値aを含まないように変形した算出式である。
【0055】
そして、第2式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値と、第3式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値と、第4式を用いて算出したA〜C相の3つの絶対回転角度位置の各2つの絶対回転角度位置の差分値とに基づき、サンプリング値a、b、cの何れかに異常が発生しているか否かを検出する。
【0056】
サンプリング値a、b、cの何れか1つに異常が検出された場合は、該当する相に異常が発生していることを示す異常検出フラグを外部装置等に出力すると共に、A相〜C相に対して、正常なサンプリング値のみで算出された3つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力する。
一方、サンプリング値a、b、cのうち2つ以上に異常が発生している場合は、動作停止用の異常検出フラグを、回転情報算出器200内部の不図示の動作制御部及び外部装置に出力する。
【0057】
また、サンプリング値a、b、cのいずれも正常である場合は、第2〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力する。
回転情報算出部2bは、異常検出部2aから入力された絶対回転角度位置を平均して、外部出力用の絶対回転角度位置θとして算出し、更に、回転角速度ω、回転方向を回転情報として算出する。そして、当該算出した回転情報を、不図示の出力対象に出力する。
【0058】
また、回転情報算出器200は、回転角速度ωを算出するために、回転輪(内輪24)の回転に応じたパルス信号を出力する不図示のパルス発生器と、そのパルス信号をカウントする不図示のパルスカウンタとを有している。
また、回転情報算出器200は、回転方向を算出するために、算出した絶対回転角度位置θをRAMに保持するようになっている。
【0059】
また、回転情報算出器200は、前記異常検出部2a、前記回転情報算出部2bなどにおける上記各機能をソフトウェア上で実現するため、及び上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するための不図示のコンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムのハードウェア構成は、各種制御や演算処理を担う演算処理装置(Processing Unit)と、主記憶装置(Main Storage)を構成するRAM(Random Access Memory)と、読み出し専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory)と、前記各装置間をデータ授受可能に接続する各種内外バスとを有した構成となっている。
【0060】
そして、電源を投入すると、ROMに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従って演算処理装置が各種ハードウェアの制御及び各種演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0061】
更に、図10に基づき、異常検出部2aにおける異常検出処理の流れを説明する。
ここで、図10は、異常検出部2aの異常検出処理を示すフローチャートである。
異常検出処理は、専用のソフトウェアを演算処理装置に実行させることで行われる処理であって、回転情報算出装置2の演算処理装置において実行されると、図10に示すように、まずステップS200に移行する。
【0062】
ステップS200では、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cからの3相の磁気検出信号の各相のサンプリング値a、b、cを同時に取得して、ステップS202に移行する。
ステップS202では、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びbと、A相、B相、C相の各相に対応する第2式とを用いて絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出して、ステップS204に移行する。
【0063】
ステップS204では、異常検出部2aにおいて、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS206に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS216に移行する。
具体的に、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2の各2つの差分値(θA2-θB2)、(θA2-θC2)、(θB2-θC2)が、所定の誤差範囲内に3つとも収まっているときに等しいと判定される。以下、第3式及び第4式においても同様の方法で判定を行う。
【0064】
ここで、θA2、θB2、θC2は、A相、B相、C相に対する第2式を用いて算出した絶対回転角度位置である。同様に、θA3、θB3、θC3は、A相、B相、C相に対する第3式を用いて算出した絶対回転角度位置であり、θA4、θB4、θC4は、A相、B相、C相に対する第4式を用いて算出した絶対回転角度位置である。つまり、下付き文字のアルファベットが磁気検出器60a〜60cの相の種類を表し、数字が算出式の種類を表している。
【0065】
ステップS206に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第3式とを用いて絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出して、ステップS208に移行する。
ステップS208では、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、
ステップS210に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS214に移行する。
【0066】
ステップS210に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値b及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第4式とを用いて絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出して、ステップS212に移行する。
ステップS212では、異常検出部2aにおいて、第2〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置を、回転情報算出部2bに出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0067】
一方、ステップS208において、第3式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS214に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第2式で算出した3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるC相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すC相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
また、ステップS204において、第2式で算出した回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS216に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値a及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第3式とを用いて絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出して、ステップS218に移行する。
【0068】
ステップS218では、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS220に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS222に移行する。
ステップS220に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第3式で算出した3つの絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるB相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すB相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0069】
また、ステップS218において、第3式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しくなく、ステップS222に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、ステップS200で取得したサンプリング値b及びcと、A相、B相、C相の各相に対応する第4式とを用いて絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出して、ステップS224に移行する。
ステップS224では、異常検出部2aにおいて、第4式で算出した3つの絶対回転角度位置は、3つとも等しいか否かを判定し、3つとも等しいと判定された場合(Yes)は、ステップS226に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS228に移行する。
【0070】
ステップS226に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、第4式で算出した3つの絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を回転情報算出部2bに出力すると共に、磁気検出器60a〜60cにおけるA相の磁気検出信号に異常が発生していることを示すA相信号異常検出フラグを外部装置に出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
一方、ステップS228に移行した場合は、異常検出部2aにおいて、動作停止用の異常検出フラグを、内部の動作制御部(演算処理装置)や外部装置などに出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0071】
更に、図11に基づき、回転情報算出部2bの回転情報算出処理の流れを説明する。
ここで、図11は、回転情報算出部2bの回転情報算出処理を示すフローチャートである。
回転情報算出処理は、専用のソフトウェアを演算処理装置に実行させることで行われる処理であって、回転情報算出装置2の演算処理装置において実行されると、図11に示すように、まずステップS300に移行する。
【0072】
ステップS300では、回転情報算出部2bにおいて、異常検出部2aから絶対回転角度位置を取得したか否かを判定し、取得したと判定された場合(Yes)は、ステップS302に移行し、そうでない場合(No)は、取得するまで待機する。
ステップS302に移行した場合は、回転情報算出部2bにおいて、取得した絶対回転角度位置の平均値を、内輪24(回転軸)の絶対回転角度位置θとして算出して、ステップS304に移行する。
【0073】
ステップS304では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302で算出した絶対回転角度位置θと、不図示のパルスカウンタでカウントした、内輪24の回転に応じたパルス信号数とに基づき回転角速度ωを算出して、ステップS306に移行する。
ステップS306では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302で算出した絶対回転角度位置θと、過去に算出した絶対回転角度位置θとに基づき回転方向を算出して、ステップS308に移行する。
ステップS308では、回転情報算出部2bにおいて、ステップS302〜S306の算出結果の信号を出力し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
【0074】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
まず、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cのA相、B相、C相の各相に対する回転角度位置の算出に用いられる算出式について説明する。
磁気検出器60a〜60cのA相〜C相からの磁気検出信号のサンプリング値a、b、cは、下式(1)で表すことができる。
【0075】
A相:a=cosθ
B相:b=cos(θ-2π/3) ・・・(1)
C相:c=cos(θ-4π/3)
上式(1)より、サンプリング値a、b、cの数学的関係を利用して、異常検出用の回転角度位置の算出式(上述した第1式〜第4式)を求めるための異常検出パラメータとして、下式(2)を求める。
【0076】
【数1】
【0077】
更に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、サンプリング値a、b、cを全て用いた回転角度位置の算出式である、下式(3)に示す第1式を求める。次に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、第1式を変形し、下式(3)に示すように、サンプリング値a及びbのみを変数とした第2式を求める。同様に、上式(2)に示す異常検出パラメータを用いて、A相、B相、C相の各相に対して、第1式を変形し、下式(3)に示すように、サンプリング値a及びcのみを変数とした第3式、並びにサンプリング値b及びcのみを変数とした第4式を求める。
【0078】
【数2】
【0079】
以下、上記のようにして求めた、上式(3)に示す、第2〜第4式を用いて、回転情報算出装置2の異常検出処理及び回転情報算出処理の動作を説明する。
ここでは、磁気センサ付き軸受装置100を、モータの回転軸の軸受に適用した場合の動作を説明する。
不図示のドライバからの駆動信号に応じてモータが駆動すると、モータの回転軸が回転し、この回転に連動して磁気センサ付き軸受装置100の内輪24が回転する。内輪24には磁石40が支持されているので、内輪24と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。
【0080】
磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号cosθ、cos(θ-2π/3)、cos(θ-4π/3)が出力される。
回転情報算出器200は、サンプリングタイミングになると、異常検出部2aにおいて、磁気検出器60a〜60cから出力される3相の磁気検出信号のサンプリング値a、b、cを取得する(ステップS200)。
異常検出部2aは、サンプリング値a、b、cを取得すると、まず、サンプリング値a及びbと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第2式とを用いて、絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出する(ステップS202)。
【0081】
次に、異常検出部2aは、第2式で算出したθA2、θB2、θC2に対して、各2つの差分値「θA2-θB2」、「θA2-θC2」、「θB2-θC2」を算出する。そして、これら差分値と、予め設定されている閾値Et=±0.1[°]とを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS204の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS204の「No」の分岐)。
ここで、閾値Etを−0.1[°]〜+0.1[°]の範囲にしたのは、ノイズによる誤差や、A/D変換による誤差等を考慮するためである。
【0082】
以下、第2式で算出した絶対回転角度位置が3つとも等しかった場合の動作を説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第3式とを用いて、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出する(ステップS206)。
【0083】
そして、上記第2式のときと同様に、第3式で算出したθA3、θB3、θC3に対して、各2つの差分値「θA3-θB3」、「θA3-θC3」、「θB3-θC3」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS208の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS208の「No」の分岐)。
【0084】
ここで、第3式に対する3つの絶対回転角度位置が等しくない場合は、既にサンプリング値a及びbが正常であることが解っているので、サンプリング値cにのみ異常があることが解る。また、サンプリング値cを変数に含む第4式についても異常値が算出されることが解る。
従って、異常検出部2aは、第2式で算出した絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を回転情報算出部2bに出力すると共に、C相の信号に異常が発生していることを示すC相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS214)。
【0085】
例えば、C相信号異常検出フラグを外部のコンピュータなどに出力し、そこで異常個所を示すメッセージ画像等を表示装置に表示することで、磁気検出器60a〜60cに異常が発生していることが解ると共に、異常の発生箇所も解るので迅速な対応が可能となる。
また、異常検出部2aは、C相に異常があるという情報を保持し、以降は、A相及びB相からのサンプリング値a及びbのみを用いて、第2式から3つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cにおけるC相(磁気検出器60c)に異常があっても、残りのA相及びB相(磁気検出器60a及び60b)が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
【0086】
また、異常検出部2aにおいては、例えば、電源投入毎、又はサンプリングタイミング毎など定期的に異常検出処理を行うようにすることで、残り2つの相に異常が発生したときにも対応することが可能である。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2を取得すると(ステップS300)、まず、3つの絶対回転角度位置の平均値「(θA2+θB2+θC2)/3」を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0087】
絶対回転角度位置θが算出されると、回転情報算出部2bは、次に、回転角速度ωを算出する(ステップS304)。回転角速度ωの算出方法は、上記第1の実施の形態と同様となるので具体的な説明を省略する。
更に、回転角速度ωが算出されると、回転情報算出部2bは、次に、回転位置を算出する(ステップS306)。回転位置の算出方法は、上記第1の実施の形態と同様となるので具体的な説明を省略する。
【0088】
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向の情報を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。この信号は、アナログ又はデジタルの信号で出力され、その出力方法は、上記第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0089】
次に、上式(3)に示す、第2式及び第3式で算出した絶対回転角度位置が正常である場合(ステップS208の「Yes」の分岐)の動作について説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a、b、cが全て正常であることが解るので、更に、サンプリング値b及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第4式とを用いて、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出する(ステップS210)。そして、上記取得したサンプリング値a、b、c、及び第2式〜第4式で算出した9つの絶対回転角度位置の全てを、回転情報算出部2bに出力する(ステップS212)。
【0090】
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、9つの絶対回転角度位置θA2、θB2、θC2、θA3、θB3、θC3、θA4、θB4、θC4とを取得すると(ステップS300)、これら9つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
そして、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
【0091】
つまり、磁気検出器60a〜60cの各相に異常がない場合は、9つの絶対回転角度位置の平均値を、出力用の絶対回転角度位置θとして算出することができるので、高精度な絶対回転角度位置θ及び回転角速度ωを出力対象に出力することが可能である。また、この場合は、異常が無いので異常検出フラグは出力されない。
【0092】
次に、上式(3)に示す、第2式で算出した回転角度位置が異常と判定された場合(ステップS104の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合、異常検出部2aは、サンプリング値a及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第3式とを用いて、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を算出する(ステップS216)。
【0093】
そして、上記第2式のときと同様に、第3式で算出したθA3、θB3、θC3に対して、各2つの差分値「θA3-θB3」、「θA3-θC3」、「θB3-θC3」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS218の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと
判定する(ステップS218の「No」の分岐)。
【0094】
ここで、3つの絶対回転角度位置が等しいと判定された場合(ステップS218の「Yes」の分岐)は、サンプリング値a及びbの何れか一方が異常であることに加え、サンプリング値a及びcが正常であることが解るので、これにより、サンプリング値bのみに異常があることが解る。従って、異常検出部2aは、第3式で算出した絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を回転情報算出部2bに出力すると共に、B相の信号に異常が発生していることを示すB相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS220)。
【0095】
また、異常検出部2aは、B相に異常があるという情報を保持し、以降は、A相及びC相からのサンプリング値a及びcのみを用いて、第3式から3つの絶対回転角度位置をθA3、θB3、θC3を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cのB相に異常があっても、残りのA相及びC相が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA3、θB3、θC3を取得すると(ステップS300)、これら3つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0096】
更に、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。
【0097】
次に、第2式及び第3式で算出した回転角度位置が異常と判定された場合(ステップS218の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合は、サンプリング値a及びbの何れか一方、及びサンプリング値a及びcの何れか一方に異常があることが解る。しかし、これだけでは、サンプリング値aのみに異常があるのか、サンプリング値b及びcに異常があるのかが正確に解らない。従って、異常検出部2aは、更に、サンプリング値b及びcと、上式(3)に示す、A相、B相、C相にそれぞれ対応する第4式とを用いて、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を算出する(ステップS222)。
【0098】
そして、上記第2式のときと同様に、第4式で算出したθA4、θB4、θC4に対して、各2つの差分値「θA4-θB4」、「θA4-θC4」、「θB4-θC4」を算出する。更に、これら差分値と閾値Etとを比較し、差分値が3つとも閾値Etの範囲内にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しいと判定する(ステップS224の「Yes」の分岐)。また、差分値が1つでも閾値Etの範囲外にあるときは、3つの絶対回転角度位置は等しくないと判定する(ステップS224の「No」の分岐)。
【0099】
ここで、3つの絶対回転角度位置が等しいと判定された場合(ステップS224の「Yes」の分岐)は、サンプリング値aのみが異常であることが解るので、異常検出部2aは、第4式で算出した絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を回転情報算出部2bに出力すると共に、A相の信号に異常が発生していることを示すA相信号異常検出フラグを外部装置等に出力する(ステップS226)。
【0100】
また、異常検出部2aは、A相に異常があるという情報を保持し、以降は、B相及びC相からのサンプリング値b及びcのみを用いて、第4式から3つの絶対回転角度位置をθA4、θB4、θC4を算出し、これらを回転情報算出部2bに出力する。つまり、磁気検出器60a〜60cのA相に異常があっても、残りのB相及びC相が正常であれば、回転角度位置の算出処理を継続して行い、算出結果を回転情報算出部2bに出力する。
一方、回転情報算出部2bは、異常検出部2aから、絶対回転角度位置θA4、θB4、θC4を取得すると(ステップS300)、これら3つの絶対回転角度位置の平均値を出力用の絶対回転角度位置θとして算出する(ステップS302)。
【0101】
更に、この絶対回転角度位置θを用いて回転角速度ωを算出する(ステップS304)。一方、上記算出した絶対回転角度位置θと、1回前に算出した絶対回転角度位置θとに基づき、回転方向を算出する(ステップS306)。
そして、上記算出した絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向を含む信号を、不図示の出力対象に出力する(ステップS308)。
【0102】
次に、第2式〜第4式で算出した回転角度位置が全て異常と判定された場合(ステップS224の「No」の分岐)の動作について説明する。
この場合は、サンプリング値a、b、cのうち2つ以上に異常があることが解るので、異常検出部2aは、回転情報の算出処理を正常に機能させることは不可能であると判断し、動作停止用の異常検出フラグを、内部の動作制御部及び外部装置に出力する(ステップS228)。
回転情報算出器200の内部にある動作制御部は、異常検出部2aから動作停止用の異常検出フラグを取得すると、停止コマンドを発行して、異常検出部2a及び回転情報算出部2bの動作を停止する。
【0103】
上記したように、本実施の形態の回転情報算出器200は、異常検出部2aにおいて、3相の磁気検出信号のサンプリング値のうちA相及びB相の値a、b、A相及びC相の値a、c、並びにB相及びC相の値b、cと、上式(3)の第2式〜第4式とに基づき、絶対回転角度位置θA2〜θC2、θA3〜θC3、θA4〜θC4を算出することが可能である。また、各算出式で算出した各3つの絶対回転角度位置の差分値と閾値Etとの比較結果に基づき、サンプリング値の異常を検出することが可能である。また、異常があったときに、該当するサンプリング値の相に対する異常検出フラグや、動作停止用の異常検出フラグを出力することが可能である。
【0104】
これにより、磁気検出器60a〜60cのどの相に異常があるのかを正確に判断することができると共に、異常検出フラグを外部装置等に出力することで、異常の有無及び異常個所を判断することができるので、迅速な対応が可能となる。また、正常な情報を算出できないときは動作を停止することができるので、出力対象の誤動作等を防ぐことが可能である。
【0105】
また、本実施の形態の回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cにそれぞれ対応するA相、B相、C相のうち、異常の発生していない相が1つしかない場合に、残り2つの正常な相のサンプリング値を用いて、継続して絶対回転角度位置θ、回転角速度ω及び回転方向の算出処理を行うことが可能である。
これにより、1相だけに異常が発生した場合でも回転情報の算出処理を継続し、出力対象の正常な動作を維持できるので、誤動作による出力対象の破損や危険の発生等を防ぐことが可能である。
【0106】
また、本実施の形態の回転情報算出器200は、磁気検出器60a〜60cにそれぞれ対応するA相、B相、C相のうち、正常な相に対する上記第1〜第4式で算出した絶対回転角度位置の平均値を、出力用の絶対回転角度位置θとして算出することが可能である。
これにより、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出が可能である。
なお、上記第2の実施の形態において、磁気検出器60a〜60cが本願発明3つの磁気検出器に対応し、ステップS200が本願発明のサンプリング値取得手段に対応し、異常検出部2a及びステップS202〜S228が本願発明の異常検出手段に対応し、回転情報算出部2b及びステップS300〜S308が本願発明の回転情報算出手段に対応する。
【0107】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について、図12から図14に基づき説明する。
本実施の形態は、磁気センサ付き軸受装置100の磁石ホルダ30に支持されている磁石41が、図12に示すように、円環筒状の部材であり、筒部半周の領域がS極に着磁され、残りの筒部半周の領域がN極に着磁されている。
【0108】
外輪22に支持されている磁路部材50は、磁石41からの磁束を磁気検出器60a〜60cに導くための3つの磁路を形成している。これら3つの磁路は、軸方向から見て回路基板70と略同一直径の円環筒を略均等に3分割してなる板厚方向に湾曲した形状であり、且つ、互いの周方向端部の間に空隙53を設けて円環状に配置した3つの円弧部54と、各円弧部54の周方向端部から径方向外方に向けて突設され、空隙53を挟んで対向している複数の壁部55とを備えており、各空隙53に、一対の壁部55の間に挟み込むように回路基板70に実装した3つの磁気検出器60a〜60cを配置し、空隙53に磁束が通り、空隙53を通る磁束を壁部55が案内することで磁路を形成している。
【0109】
そして、円環筒状とした磁石41の内周面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とが、ラジアル方向に対向して配置されている。
上記構成の磁気センサ付き軸受装置100は、図13に示すように、磁気検出器60a〜60c、磁路部材50及び磁石ホルダ30がそれぞれ軸方向に積層されているとともに、磁路部材50の径方向内方に磁石41が配置された構造となっている。
【0110】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石41が回転する。この回転によって、磁石41と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この変化によって、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の量及び磁極がそれぞれ変化し、磁気検出信号は、それぞれが120°ずつ位相のずれた3つの正弦波として出力される。
【0111】
図14の下図は、磁石41と磁路部材50との位置関係を示す図であり、図14の上図には、下図中の丸で囲んだ位置にある磁気検出器60aの出力信号の変化が示されている。磁石41が、図14の下図に示す102の位置から108に示す位置へと回転位置104〜106を介して順に右回転することによって、磁気検出器60aと磁石41との位置関係が変化し、磁気検出器60aを通る磁束の量及び磁極が変化する。これにより、磁気検出器60aの出力も、図14の上図に示すように変化し、この出力の変化が正弦波を形成する。
【0112】
本実施の形態の回転情報算出装置1によると、磁気センサ付き軸受装置100を構成する磁石41を円環筒状とし、磁石41からの磁束を磁気検出器60a〜60cまで案内する磁路部材50を、磁石41の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
【0113】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について、図15に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、第1の実施の形態と同形状の磁路部材50に対してアキシャル方向に対向配置されている磁石42が、軸方向から見て2つの三日月板状の着磁部材42a,42bを円環状に配置することで構成されている。すなわち、2つの着磁部材42a,42bは、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化している部材であり、軸方向から見て磁路部材50と略同一の円形状となるように、互いの最も板幅が小さい部分が向かい合う状態で配置されている。
【0114】
ここで、2つの着磁部材42a,42bの具体的な形状は、下式(4),(5)の通りで求められる。
着磁部材42a,42bの内周面の形状FIN=r-(Acosθ/2) ・・・(4)
着磁部材42a,42bの外周面の形状Fout=r+(Acosθ/2) ・・・(5)
ただし、θは絶対回転角度位置、rは磁石42の中心半径、Aは磁石42の最大半径である。
【0115】
そして、一方の着磁部材42aの磁路部材50に対向する面はN極に着磁され、磁石ホルダ30に対向する面はS極に着磁されている。また、他方の着磁部材42bの磁路部材50に対向する面はS極に着磁され、磁石ホルダ30に対向する面はN極に着磁されている。
そして、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bの板厚方向に直交する面と、磁路部材50を構成する3つの円弧部51の壁部50aが突設している面に対して反対側の面とが、アキシャル方向に対向して配置されている。
【0116】
また、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石42が回転する。この回転によって、磁石42と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bは、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化している三日月板状の部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0117】
本実施の形態によると、回路基板70に実装された3つの磁気検出器60a〜60cは電気角120°位相で配置されているので、120°位相の3相正弦波が出力され、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式に基づき、3相のうち2相を用いて絶対回転角度位置を算出することにより、3通りの絶対回転角度位置が算出され、比較演算によりフェールセーフを実現することができる。また、回転角度位置θを、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値を求めると、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
【0118】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について、図16に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、2つの磁気検出器60a,60bを電気角90°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板71と、磁性材料で構成した磁路部材50と、第4の実施の形態と同一形状の磁石42とが軸方向(アキシャル方向)に積層された構造とされている。
【0119】
本実施の形態の磁路部材50は、互いの周方向端部の間に4箇所の空隙52を設けて配置した円弧形状の4つの円弧部51と、各円弧部51の周方向端部から板厚方向(軸方向)の一方に向けて突設され、空隙52を挟んで対向している複数の壁部50aとを備えている。そして、隣接する所定の2つの空隙52に、一対の壁部50aの間に挟み込むように回路基板71に実装した磁気検出器60a,60bを配置し、空隙52に磁束が通り、空隙52を通る磁束を壁部50aが案内することで2つの磁路を形成している。
【0120】
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石42が回転する。この回転によって、磁石42と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石42を構成する2つの着磁部材42a,42bは板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状の部材なので、磁気検出器60a,60bを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
そして、回路基板71に実装された磁気検出器60a,60bは電気角90°位相で配置されているので、90°位相の2相正弦波が出力され、その比(アークタンジェント)を取ることにより絶対回転角度位置を算出する。
【0121】
したがって、本実施の形態も、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
なお、第5の実施の形態は、2つの磁気検出器60a,60bを実装した回路基板71を使用しているが、電気角90°位相の4つの磁気検出器を実装した回路基板を使用し、磁路部材50の4箇所の空隙52のそれぞれに磁気検出器を配置することにより差動出力を得てシングルエンドに変換すると、ノイズに強い2相正弦波を得ることができる。
【0122】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施の形態について、図17に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、3つの磁気検出器60a〜60cを電気角120°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板70(第4の実施の形態と同様の回路基板70)と、3つの円弧部54を備えた円環筒状の磁路部材50(第3の実施の形態の磁路部材50)とを軸方向(アキシャル方向)に積層し、磁路部材50の内径側(ラジアル方向)に磁石43を配置した構造としている。
【0123】
磁石43は、磁路部材50の内径寸法より小さな外径寸法の円環筒状であり、2つの円弧形状の着磁部材43a,43bで構成されている。
2つの着磁部材43a,43bは、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材であり、互いの最も板幅が小さい部分が向かい合わされて円環筒状に配置されている。
【0124】
ここで、2つの着磁部材43a,43bの軸方向の厚さFAXの具体的な形状は、下式(6)の通りで求められる。
FAX=Acosθ ・・・(6)
ただし、θは絶対回転角度位置、Aは磁石43の最大半径であり、着磁部材の厚さは軸方向の中心を基準に対称である。
【0125】
そして、一方の着磁部材43aの内周面はN極に着磁され、外周面はS極に着磁されている。また、他方の着磁部材43bの内周面はS極に着磁され、外周面はN極に着磁されている。
そして、円環筒状に配置した2つの円弧形状の着磁部材43a,43bと、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とが、ラジアル方向に対向して配置されている。
【0126】
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石43が回転する。この回転によって、磁石43と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石43を構成する2つの着磁部材43a,43bが、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0127】
本実施の形態によると、回路基板70に実装された磁気検出器60a〜60cは電気角120°位相で配置されているので、120°位相の3相正弦波が出力され、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式に基づき、3相のうち2相を用いて絶対回転角度位置を算出することにより、3通りの絶対回転角度位置が算出され、比較演算によりフェールセーフを実現することができる。また、回転角度位置θを、第2の実施の形態で示した(3)の第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値を求めると、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
また、円環筒状とした磁石43を、円環筒状とした磁路部材50の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
【0128】
〔第7の実施の形態〕
さらに、本発明の第7の実施の形態について、図18に基づき説明する。
本実施の形態の磁気センサ付き軸受装置100は、2つの磁気検出器60a,60bを電気角90°の位相をもつように実装した円弧形状の回路基板71(第5の実施の形態と同様の回路基板71)と、4つの円弧部54を備えた円環筒状の磁路部材50とを軸方向(アキシャル方向)に積層し、磁路部材50の内径側(ラジアル方向)に磁石43(第6の実施の形態と同様の磁石43)を配置した構造としている。
【0129】
本実施の形態の磁路部材50は、互いの周方向端部の間に空隙53を設けて円環状に配置した4つの円弧部54と、各円弧部54の周方向端部から径方向外方に向けて突設され、空隙53を挟んで対向している複数の壁部55とを備えている。そして、隣接する所定の2つの空隙53に、一対の壁部55の間に挟み込むように回路基板71に実装した磁気検出器60a,60bを配置し、空隙53に磁束が通り、空隙53を通る磁束を壁部55が案内することで2つの磁路を形成している。
【0130】
そして、2つの円弧形状の着磁部材43a,43bを円環筒状に配置した磁石43と、磁路部材50を構成する3つの円弧部54の内周面とを、ラジアル方向に対向して配置する。
本実施の形態によると、内輪24が回転すると、それに伴って磁石ホルダ30及び磁石43が回転する。この回転によって、磁石43と磁路部材50の磁路との位置関係(重なり具合)が周期的に変化する。この際、磁石43を構成する2つの着磁部材43a,43bが、軸方向を向く一方の端面及び他方の端面が回転方向に正弦波状に変化している部材なので、磁気検出器60a〜60cを通る磁束の強さも正弦波状に変化し、その結果、磁気検出信号も正弦波状となる。
【0131】
そして、回路基板71に実装された磁気検出器60a,60bは電気角90°位相で配置されているので、90°位相の2相正弦波が出力され、その比(アークタンジェント)を取ることにより絶対回転角度位置を算出する。
したがって、本実施の形態も、信頼性の高い高精度な回転角度位置の算出結果を得ることができる。
【0132】
また、円環筒状とした磁石43を、円環筒状とした磁路部材50の径方向内方に配置しているので、磁気センサ付き軸受装置100の軸方向サイズを小さくすることができる。
なお、第7の実施の形態は、2つの磁気検出器60a,60bを実装した回路基板71を使用しているが、電気角90°位相の4つの磁気検出器を実装した回路基板を使用し、磁路部材50の4箇所の空隙53のそれぞれに磁気検出器を配置することにより差動出力を得てシングルエンドに変換すると、ノイズに強い2相正弦波を得ることができる。
【0133】
なお、上記第1の実施の形態において、着磁ホルダ30は磁性体として磁性材料から構成されているとしたが、これに限らず磁性体でなくてもよい。しかし、より多い磁束を集めるために、磁石ホルダは磁性材料で構成されるのが望ましい。
また、上記第1の実施の形態において回路基板70は馬蹄形に形成したものとしたが、これに限らずリング状やその他形状でもよい。
また、上記第2の実施の形態においては、異常検出部2aの異常検出処理及び回転情報算出部2bの回転情報算出処理を、演算処理装置に専用のソフトウェアを実行させることで行う構成としたが、これに限らず、ハードウェア主体で前記各処理を実行する構成としても良い。
【0134】
また、上記第2の実施の形態においては、事前に異常検出パラメータから、上式(3)を求めておき、異常検出部2aはこの算出式を用いて、異常検出処理を実行する構成としたが、これに限らず、例えば、電源投入毎、又は出荷後の最初の電源投入時などに、異常検出パラメータの算出処理及び上式(3)に示す回転角度位置の算出式の生成処理を行う構成としても良い。また、一度生成した算出式は、電源が落ちるまで保持するか又は電源が落ちた後も保持し続けるようにすることで、上式(3)に示す算出式の生成処理負荷を軽減することが可能である。
【0135】
また、上記第2の実施の形態において、異常検出部の閾値を−0.1〔°〕〜+0.1〔°〕としたが、これに限らず閾値は適宜決定してよい。
また、上記第2の実施の形態においては、磁気センサ付き軸受装置100と、回転情報算出装置2とを別々の構成としたが、これに限らず、回転情報算出装置2に磁気センサ付き軸受装置100を含む構成としても良い。この場合に、回転情報算出装置2を、センサ付き軸受装置100に組み込んで一体とする構成としても良い。
【0136】
また、上記第2の実施の形態において、回転角度位置θを、上記第2式〜第4式の何れかで算出したA相〜C相に対する回転角度位置の平均値により求める構成としたが、これに限らず、回転角度位置θを、平均する前の値の何れか1つとしてもよいし、3相−2相変換で2相に変換し、その比(アークタンジェント)から求める構成やその他の構成としても良い。
【0137】
また、上記第4、第5、第6、第7の各実施の形態において着磁部材は端が尖っている形状の構成を示したが、これに限らず生産性を考えて着磁部材の端に丸みをつけた形状でもよい。この場合、端が尖っている形状の場合と同じ位置に着磁部材を配置するため、着磁部材間に空隙を設けて配置する。
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100に、回転情報算出装置2を適用したが、これに限らず、回転軸の回転に応じた3相の磁気検出信号が得られるのであれば、磁気センサと、軸受とが別体となったものや、磁気センサ付き軸受装置が別の構成であるものなど、他の構成のものに適用しても良い。
【0138】
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100に、回転情報算出装置2を適用したが、これに限らず、軸受装置以外の回転子を有する装置に適用してもよい。
また、上記4〜7の実施の形態において、磁石の形状が回転方向に正弦波状に変化している構成を説明したが、これに限らず円環状の磁石を正弦波状に着磁する方法でもよい。
【0139】
また、上記各実施の形態において、磁石が2極に着磁された構成を説明したが、これに限らず、磁石を、4極以上に着磁した多極着磁の構成としても良い。この場合は、絶対回転角度位置を算出することができないが、相対回転角度位置を正確に算出することができる。
また、上記各実施の形態において磁路部材50に壁部50a,55を有している構成を説明したが、図19から図24に示す磁気センサ付き軸受装置のように、磁路部材50に壁部を設けない構造としてもよい。この場合は、ホールICのホール素子部が磁路部材の厚さ方向の中心部に配置されるようにホールICの位置を決定することが望ましい。
【0140】
また、上記各実施の形態において、磁気検出器60a〜60cがアナログホールICである構成を説明したが、これに限らず、他のアナログ素子であっても良い。しかしながら、ホール素子等のような一般のアナログ素子の場合、感度が低く、外部に増幅回路が必要になるが、アナログホールICを使用すると、アナログホールIC内部に増幅回路が組み込まれているので、外部に増幅回路を設ける必要がなくなるため、アナログホールICを使うのが望ましい。
また、上記各実施の形態において、磁気センサ付き軸受装置100が玉軸受を有する構成を説明したが、これに限らず、円錐ころ軸受、ニードル軸受、ころ軸受、複列軸受その他任意の種類の軸受を有する構成としても良い。
【0141】
〔第8の実施の形態〕
さらにまた、本発明の第8の実施の形態について、図25及び図26に基づき説明する。
図25は、本発明に係る回転情報算出装置を電動直結式パワーステアリング装置(以下、電動パワーステアリング装置と称する)に適用した場合を示す全体構成図である。
【0142】
図25の符号3は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール3に運転者から作用される操舵力が入力軸4aと出力軸4bとを有するステアリングシャフト4に伝達される。このステアリングシャフト4は、入力軸4aの一端がステアリングホイール3に連結され、入力軸4aの他端は、回転情報算出装置を備えたトルクセンサ5を介して出力軸4bの一端に連結されている。
【0143】
出力軸4bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント6を介してロアシャフト7に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント8を介してピニオンシャフト9に伝達される。このピニオンシャフト9に伝達された操舵力はステアリングギヤ10を介してタイロッド11に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ10は、ピニオンシャフト9に連結されたピニオン10aとこのピニオン10aに噛合するラック10bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン10aに伝達された回転運動をラック10bで直進運動に変換している。
【0144】
ステアリングシャフト4の出力軸4bには、操舵補助力を出力軸4bに伝達する操舵補助機構12が連結されている。この操舵補助機構12は、出力軸4bに連結した減速ギヤ13と、この減速ギヤ13に連結されて操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ14とを備えている。
トルクセンサ5から出力される操舵トルクTはコントローラ16に入力される。また、コントローラ16には、操舵トルクTの他に車速センサ17から出力される車速検出値Vも入力する。コントローラ16は、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力を電動モータ14で発生するための電流指令値を演算し、当該電流指令値に基づいて電動モータ14を駆動制御する。
【0145】
トルクセンサ5は、図26に示すように、ステアリングシャフト4の入力軸4a及び出力軸4bの間に同軸に連結され、捩じれトルクが入力されると自身に捩じれが生じる弾性部材からなるトーションバー18と、入力軸4aに連結された第1の回転情報算出装置2Aと、出力軸に4bに連結された第2の回転情報算出装置2Bと、演算部15とで構成されている。
【0146】
第1の回転情報算出装置2Aは、前述した第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であり、第1の磁気センサ付き軸受装置100a及び第1の回転情報算出器200aとで構成され、第1の磁気センサ付き軸受装置100aの内輪24が入力軸4aの外周に外嵌されている。また、第2の回転情報算出装置1bも、前述した第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であり、第2の磁気センサ付き軸受装置100b及び第2の回転情報算出器200bとで構成され、第2の磁気センサ付き軸受装置100bの内輪24が出力軸4bの外周に外嵌されている。
【0147】
次に、本実施形態における動作及び効果について、図3、図8から図11、図25及び図26を参照して説明する。
運転者がステアリングホイール3を操作すると、ステアリングホイール3に連結された入力軸4aが回転し、この回転に連動して第1の回転情報算出装置2Aの第1の磁気センサ付き軸受装置100aの磁石ホルダ30が回転する。磁石ホルダ30には磁石40が支持されているので、磁石ホルダ30と共に磁石40も回転する。そして、磁石40が回転することにより、磁路部材50の各磁路と磁石40との位置関係も周期的に変化する。磁気検出器60a〜60cには、磁路部材50の各磁路を介して磁石40からの磁束が通過し、それぞれ、通過磁束に対応する磁気検出信号cosθ、cos(θ−2π/3)、cos(θ−4π/3)が出力される。そして、第1の回転情報算出器200aは、上記3相の磁気検出信号に基づいて入力軸4aの絶対回転角度位置θ1を算出し、これを演算部15に出力する。
【0148】
また、入力軸4aが回転すると、この回転トルクがトーションバー18を介して出力軸4bに伝達されて出力軸4bが回転し、この回転に連動して第2の回転情報算出装置2Bの第2の磁気センサ付き軸受装置100bの磁石ホルダ30が回転する。そして、第2の回転情報算出器200bは、第2の磁気センサ付き軸受装置100bから出力される3相の磁気検出信号に基づいて、出力軸4bの絶対回転角度位置θ2を算出し、これを演算部15に出力する。
【0149】
演算部15は、絶対回転角度位置θ1と絶対回転角度位置θ2との差分値を算出し、当該差分値に基づいて操舵トルクTを算出し、これをコントローラ16に出力する。
コントローラ16は、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値を演算し、当該電流指令値に基づいて電動モータ14が駆動制御されることで、電動モータ14の発生トルクが減速ギヤ13を介してステアリングシャフト4の回転トルクに変換されて、運転者の操舵力がアシストされる。
【0150】
本実施の形態によると、トルクセンサ5を構成する2つの回転情報算出装置2A,2Bは3相の磁気検出信号を用いて回転状態を算出しており、3相の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が発生した場合であっても、残りの2相の磁気検出信号に基づいて回転状態を検出することができる。したがって、操舵トルクTを算出する装置として2重系を構成することができ、信頼性の高いトルクセンサ5を備えたフェールセーフ制御を実行することができる。
また、第1及び第2の回転情報算出器200a,200bに、3相の磁気検出信号の異常を検出する異常検出部2aを設けることで、トルクセンサ5で検出される回転角度位置の信頼性を高めることができ、より信頼性の高いトルクセンサとすることができる。
【0151】
なお、上記の実施の形態においては、第1の磁気センサ付き軸受装置100aを入力軸4aに同軸に連結する場合について説明したが、第1の磁気センサ付き軸受装置100aをトーションバー18の入力軸4a側の端部に連結してもよい。同様に、第2の磁気センサ付き軸受装置100bをトーションバー18の出力軸4b側端部に連結してもよい。
また、本実施の形態のトルクセンサ5の第1の回転情報算出装置2A及び第2の回転情報算出装置2Bは、第2の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成としたが、前述した第1の実施の形態の回転情報算出装置2と同一構成であってもよい。
【0152】
また、トーションバー18の捩れ角より小さい誤差である2つの絶対回転角度を検出しているため、その誤差が許容範囲ならば、ステアリングホイール3の舵角や回転方向等の回転情報を算出する舵角センサとして2重系を構成することができる。
また、本実施の形態は、電動モータ14の操舵補助力を減速ギヤ13に伝達するパワーステアリング装置に適用したが、オイルポンプを電動モータで駆動して油圧を発生する電動油圧式のパワーステアリング装置に適用してもよい。
【0153】
また、本実施の形態は、第1の回転情報算出装置2Aだけを具備してもよい。それによって、高精度の絶対回転角度位置等の回転情報を算出し、出力することができる。また、第1の回転情報算出装置2Aは3相の磁気検出信号を用いて回転情報を算出しており、3相の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が発生した場合であっても、残りの2相の磁気検出信号に基づいて回転情報を検出することができる。したがって、絶対回転角度位置等の回転情報を算出する装置として2重系を構築することができ、信頼性の高い回転情報を得ることができる。
また、第1の回転情報算出装置2Aだけを具備する場合、電動パワーステアリング装置だけでなく、油圧パワーステアリング装置やアシスト機能がないステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1,2…回転情報算出装置、2a…異常検出部、2b…回転情報算出部、2A…第1の回転情報算出装置、2B…第2の回転情報算出装置、3…ステアリングホイール、4a…入力軸、4b…出力軸、4…ステアリングシャフト、5…トルクセンサ、14…電動モータ、16…コントローラ、18…トーションバー、22…外輪、24…内輪、26…ボール(転動体)、30…磁石ホルダ、40,41,42,43…磁石、42a,42b…着磁部材、43a,43b…着磁部材、50…磁路部材、50a,55…壁部、51,54…円弧部、52,53…空隙、55…壁部、60a〜60c…磁気検出器、70,71…回路基板、80…センサカバー、100…磁気センサ付き軸受装置、200…回転情報算出器、100a…第1の磁気センサ付き軸受装置、200a…第1の回転情報算出器、100b…第2の磁気センサ付き軸受装置、200b…第2の回転情報算出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備え、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置したことを特徴とする回転情報算出装置。
【請求項2】
前記磁気検出器は、アナログホールICであることを特徴とする請求項1記載の回転情報算出装置。
【請求項3】
前記アナログホールICは、温度変化に伴う出力変動を補正することができるプログラマブルホールICであることを特徴とする請求項2記載の回転情報算出装置。
【請求項4】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をアナログ信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項5】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をデジタル信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項6】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をパルス信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項7】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報として、相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項8】
ステアリングホイールの相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つの回転状態を示す情報を、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置で算出し、算出した前記回転状態を示す情報を出力することを特徴とするステアリング装置。
【請求項9】
ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した前記操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備え、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置したことを特徴とするセンサ付き軸受装置。
【請求項11】
請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項12】
請求項8記載のステアリング装置及び請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項13】
請求項9記載の電動パワーステアリング装置及び請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項14】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置し、
前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、
前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出装置。
【請求項15】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、
前記磁路部材の複数の磁路は、平板を円弧状に形成した複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に複数の空隙を設けて円環板状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状とした2つの着磁部材を互いの周方向端部を向か合わせることで円環板状をなして構成され、
前記磁石を前記円環板状に配置した前記複数の円弧板に回転軸方向に対向して配置し、前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された面が前記円弧板に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された面が前記円弧板に対向するように配置し、
前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、
前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出装置。
【請求項16】
静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備えた回転情報算出方法において、
前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、
前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づいて、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する前記異常検出手段を備え、
前記回転情報算出手段は、前記複数の磁気検出信号のうち、前記異常検出手段によって異常が検出された磁気検出信号以外の磁気検出信号の各相に対する、当該異常の検出に用いた前記回転角度位置の平均値を、前記回転輪の回転角度位置として算出するとともに、
前記回転情報算出手段は、前記異常検出手段によって、前記複数の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が検出されたときに、当該異常の検出された磁気検出信号の相を除く、残りの相の磁気検出信号に対するサンプリング値に基づき前記回転状態を示す情報を算出することを特徴とする回転情報算出方法。
【請求項17】
静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備えた回転情報算出装置において、磁気検出信号の異常を検出する異常検出方法であって、
前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、算出した前記各相に対する前記回転角度位置同士の差分値に基づき、前記位相の異なる複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出方法。
【請求項1】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備え、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置したことを特徴とする回転情報算出装置。
【請求項2】
前記磁気検出器は、アナログホールICであることを特徴とする請求項1記載の回転情報算出装置。
【請求項3】
前記アナログホールICは、温度変化に伴う出力変動を補正することができるプログラマブルホールICであることを特徴とする請求項2記載の回転情報算出装置。
【請求項4】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をアナログ信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項5】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をデジタル信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項6】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報をパルス信号として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項7】
前記回転情報算出手段は、前記回転状態を示す情報として、相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の回転情報算出装置。
【請求項8】
ステアリングホイールの相対回転角度、絶対回転角度、回転角速度及び回転方向の少なくとも1つの回転状態を示す情報を、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置で算出し、算出した前記回転状態を示す情報を出力することを特徴とするステアリング装置。
【請求項9】
ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを、請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転情報算出装置を搭載したトルクセンサで算出し、算出した前記操舵トルクに基づいて電動モータから前記ステアリングシャフトに補助トルクを伝達するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備え、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置したことを特徴とするセンサ付き軸受装置。
【請求項11】
請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項12】
請求項8記載のステアリング装置及び請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項13】
請求項9記載の電動パワーステアリング装置及び請求項10記載のセンサ付き軸受装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項14】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、
前記磁路部材の複数の磁路は、板厚方向に同一曲率で湾曲している複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に空隙を設けて円環筒状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向に同一曲率で湾曲し、互いの周方向端部を向かい合わせることで円環筒状をなす2つの着磁部材で構成され、前記2つの着磁部材の回転軸方向を向く端面は回転方向に正弦波状に変化する面として形成されており、
前記磁石を円環筒状に配置した前記複数の円弧部の内径側に配置し、前記磁石を構成する前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された外周面が前記円弧部に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された外周面が前記円弧部に対向するように配置し、
前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、
前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出装置。
【請求項15】
回転子に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、固定子に支持され、当該固定子の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記固定子に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転子の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転子の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段、を備えた回転情報算出装置において、
前記磁路部材の複数の磁路は、平板を円弧状に形成した複数の円弧部を、互いの周方向の端部の間に複数の空隙を設けて円環板状に配置することで構成され、前記複数の磁気検出器は、前記複数の円弧部の間に設けた前記空隙にそれぞれ配置されているとともに、
前記磁石は、板厚方向の外周面及び内周面が回転方向に正弦波状に変化する三日月板状とした2つの着磁部材を互いの周方向端部を向か合わせることで円環板状をなして構成され、
前記磁石を前記円環板状に配置した前記複数の円弧板に回転軸方向に対向して配置し、前記2つの着磁部材の一方のS極に着磁された面が前記円弧板に対向し、前記2つの着磁部材の他方のN極に着磁された面が前記円弧板に対向するように配置し、
前記複数の磁気検出器から入力した複数の磁気検出信号に基づいてサンプリング値を取得し、
前記サンプリング値に基づき、前記複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出装置。
【請求項16】
静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、を備えた回転情報算出方法において、
前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、
前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、当該算出した回転角度位置に基づいて、前記複数の磁気検出信号の異常を検出する前記異常検出手段を備え、
前記回転情報算出手段は、前記複数の磁気検出信号のうち、前記異常検出手段によって異常が検出された磁気検出信号以外の磁気検出信号の各相に対する、当該異常の検出に用いた前記回転角度位置の平均値を、前記回転輪の回転角度位置として算出するとともに、
前記回転情報算出手段は、前記異常検出手段によって、前記複数の磁気検出信号のうち何れか1つに異常が検出されたときに、当該異常の検出された磁気検出信号の相を除く、残りの相の磁気検出信号に対するサンプリング値に基づき前記回転状態を示す情報を算出することを特徴とする回転情報算出方法。
【請求項17】
静止輪と回転輪との間に複数の転動体が配設された軸受と、前記回転輪に支持された磁石ホルダと、前記磁石ホルダに支持された磁石と、前記静止輪に支持され、当該静止輪の円周方向にそれぞれ所定間隔で配置された、入力磁束に応じた信号を出力する複数の磁気検出器と、前記静止輪に支持され且つ前記複数の磁気検出器の円周方向の間に配設された、前記複数の磁気検出器に前記磁石からの磁束を導く複数の磁路を有した磁路部材と、
前記回転輪の回転時に、前記磁路部材の各磁路と前記磁石との位置関係に応じて位相の変化する、前記複数の磁気検出器からの複数相の出力信号に基づき、前記回転輪の回転状態を示す情報を算出する回転状態算出手段と、を備えた回転情報算出装置において、磁気検出信号の異常を検出する異常検出方法であって、
前記位相の異なる複数の磁気検出信号のサンプリング値に基づいて、前記磁気検出器の構成する複数の相の各相毎に、少なくとも2通りの算出方法で、前記回転情報の1つである回転角度位置を算出し、算出した前記各相に対する前記回転角度位置同士の差分値に基づき、前記位相の異なる複数の磁気検出信号の異常を検出することを特徴とする回転情報算出装置の異常検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−61346(P2013−61346A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259850(P2012−259850)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2009−24768(P2009−24768)の分割
【原出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2009−24768(P2009−24768)の分割
【原出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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