説明

回転検出装置の信号処理回路

【課題】検出対象の実質的な回転方向を含む回転情報をより正確に生成出力することのできる回転検出装置の信号処理装置を提供する。
【解決手段】出力部8は、クランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨が2回数連続して判定される場合、これら一連の判定のうちの最初の判定時直前の第1判定タイミングにおけるクランクロータ1の回転方向に係る判定結果を用いて第3パルス信号Scを生成出力する。また、出力部8は、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨が判定される場合、この逆転が有った旨が判定されてからクランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨が2回連続して判定されるまでにおいては、これら一連の判定のうちの最初の逆転が有った旨の判定時直前における第3パルス信号Scの信号レベルを継続して出力する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載エンジンのクランクシャフトやカムシャフト等を検出対象とする回転検出装置の信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転検出装置の信号処理回路としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この回転検出装置の信号処理回路は、基本的に、例えば自動車のタイヤと一体になって回転する回転体の外周と対向するように配置されて回転体の回転角度に応じた回転信号をそれぞれ出力する例えばMREからなる第1及び第2磁気センサと、これら第1及び第2磁気センサからそれぞれ取り込んだ回転信号を1/4の位相差をもった第1及び第2パルス信号としてそれぞれ出力する第1及び第2波形整形部と、これら第1及び第2波形整形部からそれぞれ取り込んだ第1及び第2パルス信号に基づき回転体の回転方向を判定するとともに判定した回転方向を示す方向判定信号を出力する回転方向判定部と、第1波形整形部から出力される第1パルス信号がそのまま出力される第1出力端子とを備える。また、回転検出装置の信号処理回路は、回転体の逆転を示す方向判定信号が回転方向判定部から出力されているとき、第1波形整形部から取り込んだ第1パルス信号を第2出力端子にそのまま出力する一方、回転体の正転を示す方向判定信号が回転方向判定部から出力されているとき、第1波形整形部から取り込んだ第1パルス信号に替えて一定信号を第2出力端子に出力する出力判定回路をさらに備える。これにより、回転体の回転方向が正転である場合、第1波形整形部から第1パルス信号が第1出力端子に出力されるとともに、出力判定回路から一定信号が第2出力端子に出力されることになる。一方、回転体の回転方向が逆転である場合、第1波形整形部から第1パルス信号が第1出力端子及び第2出力端子にそれぞれ出力されることになる。このように、第1出力端子及び第2出力端子に出力される信号の種類の組み合わせによって、回転体の回転方向を含む回転情報が生成され、回転検出装置の信号処理回路の後段に接続される例えば車両制御ECUに、そうした回転情報が出力されるようになる。
【0003】
他に例えば、特許文献2に記載の技術が知られている。この文献に記載の技術を含め一般的に知られている回転検出装置の信号処理回路は、まず、例えば車載エンジンのクランクシャフト(検出対象)の回転に伴って回転するクランクロータ(回転体)の外周に対向するように配置され、クランクロータの回転に応じた回転信号をそれぞれ出力する第1及び第2磁気センサと、これら第1及び第2磁気センサから出力された第1及び第2回転信号をそれぞれ取り込みつつ波形整形し、位相差を有する第1及び第2パルス信号をそれぞれ出力する第1及び第2波形整形部と、これら第1及び第2波形整形部から出力された第1及び第2パルス信号をそれぞれ取り込み、これら第1及び第2パルス信号の位相の関係に基づいてクランクロータの回転方向の逆転を判定する逆転判定部とを備える。また、この回転検出装置の信号処理回路は、上記逆転判定部を通じてクランクロータの回転方向が逆転した旨判定された直後における第1パルス信号の最初の立ち上がりから最初の立ち下がりまでの1パルス分をマスクするとともに、このマスクした第1パルス信号の論理レベルを反転させた信号であるマスク信号を生成出力するマスク部と、第1及び第2波形整形部から出力される第1及び第2パルス信号の位相の関係に基づいて、クランクロータの回転方向を判定する回転方向判定部と、回転方向判定部を通じて判定されるクランクロータの回転方向に係る判定結果に応じて異なる信号レベル帯にて上記マスク部から取り込んだマスク信号を出力信号として出力する出力部とを備える。これにより、クランクロータの回転方向に係る判定結果を含む回転情報が生成され、回転検出装置の信号処理回路の後段に接続される例えば車両制御ECUに、そうした出力信号が出力されるようになる。
【特許文献1】特開2006−234504号公報
【特許文献2】特開2007−170922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術を例えばクランクシャフトの回転に伴って回転するクランクロータにそのまま適用すると、次のような課題が生じる。すなわち、例えば回転検出装置の信号処理回路を搭載する車両が停止しているとき、クランクシャフトの回転も停止しており、したがって、クランクロータの回転も停止している。そのため、本来、回転検出装置の信号処理回路の出力信号も、その波形は変化することがないはずである。ところが、クランクシャフトとクランクロータとの間のバックラッシ及び車両の振動に主に起因して、クランクロータに微振動が生じることがある。このようにクランクロータに微振動が生じると、回転検出装置の信号処理回路を構成する回転方向判定部は、クランクロータは実質的に停止しているにもかかわらず、クランクロータの回転方向が正転方向あるいは逆転方向に短期間に切り換わっていると誤判定してしまうことがある。そして、上記特許文献1に記載の技術では、そうした回転方向判定部による回転体の回転方向の判定結果を即座に使用して第1出力端子及び第2出力端子に出力する信号の種類の組み合わせを変えてしまうため、後段に接続される車両制御ECUでは、各種車両制御を適切に実行することができなくなるおそれがある。
【0005】
一方、上記特許文献2に記載の技術を含めた一般的な技術では、第1パルス信号をそのまま利用して出力信号が生成されるのではなく、クランクロータの回転方向が逆転した旨判定された直後における第1パルス信号の最初の立ち上がりから最初の立ち下がりまでの1パルス分がマスクされたマスク信号を利用して出力信号を生成し、後段に接続される車両制御ECUに対し即座に出力している。そのため、車両に振動が生じるようなことがあると、出力信号に含まれるパルス数は低減されているため、後段に接続される車両制御ECUにおいて、クランクロータの回転速度はほぼ零である旨を判定することは可能である。すなわち、車両は実質的には停止している旨を判定することは可能である。ただし、クランクロータ自体が実質的に停止しているにもかかわらず、クランクロータの回転方向が正転方向あるいは逆転方向に短期間に頻繁に切り換わっている旨が依然として判定されており、そうした判定結果に応じて異なる信号レベル帯にて出力信号が生成され、後段に接続される車両制御ECUに出力されてしまっている。結局は、後段に接続される車両制御ECUにおいて、各種車両制御を適切に実行することができなくなるおそれを払拭できていない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、検出対象の実質的な回転方向を含む正確な回転情報を生成出力することのできる回転検出装置の信号処理回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
こうした目的を達成するため、例えば請求項1に記載の発明では、検出対象の回転に伴って回転する回転体の回転に応じた複数の回転信号を各々異なる位相にて出力する複数のセンサ素子と、前記複数のセンサ素子からそれぞれ出力される前記複数の回転信号を複数のパルス信号にそれぞれ整形する複数の波形整形手段と、前記複数の波形整形手段からそれぞれ出力される前記複数のパルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のエッジをそれぞれ検出して複数のエッジ信号を生成する複数のエッジ信号生成手段と、前記複数のエッジ信号生成手段を通じて生成された前記複数のエッジ信号に含まれるエッジに基づいて、前記回転体の回転方向が第1の方向であるか、または、この第1の方向とは逆方向である第2の方向であるかを所定の第1判定タイミング毎に繰り返し判定するとともに、前記回転体の回転方向に係る判定結果を次回の第1判定タイミングまで保持する回転方向判定手段と、前記複数のエッジ信号生成手段を通じて生成された前記複数のエッジ信号に含まれるエッジに基づき、前記回転体の回転方向の逆転の有無を所定の第2判定タイミング毎に繰り返し判定する逆転判定手段と、前記回転方向判定手段を通じて判定される前記回転体の回転方向に係る判定結果及び前記複数の波形整形手段から出力される前記パルス信号を用いて、前記回転体の回転方向を含めた回転情報を出力信号として生成出力する出力手段とを備える、回転検出装置の信号処理回路として、前記出力手段は、前記逆転判定手段によって前記回転体の回転方向に逆転が有った旨が判定されたとき、この逆転が有った旨の判定後、前記逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定するまで、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向を前記回転体の回転方向としてそのまま継続して用いるとともに、前記逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定すると、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向とは逆方向の回転方向を前記回転体の回転方向として用いることとした。
【0008】
回転検出装置の信号処理回路としてのこのような構成では、逆転判定手段によって回転体の回転方向に逆転が有った旨が判定されたとき、出力手段は、次のように出力信号を生成出力する。詳しくは、出力手段は、まず、逆転が有った旨の判定後、逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定するまでにおいて、すなわち、ある第2判定タイミングにおいて回転体の回転方向に逆転があった旨を逆転判定手段を通じて判定すると、その後、逆転が繰り返されなくなり、回転方向が落ち着いたことが確認されるまで、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向を回転体の回転方向としてそのまま継続して用いて出力信号を生成出力する。出力手段は、次に、逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定すると、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向とは逆方向の回転方向を回転体の回転方向として用いて出力信号を生成出力する。すなわち、出力手段は、回転方向が落ち着いたとき、その落ち着いた回転方向に応じて出力信号を生成出力する。
【0009】
したがって、回転検出装置の信号処理回路としての上記構成によれば、例えば検出対象と回転体との間にバックラッシが存在するとともに検出対象に振動が生じるとき、これらバックラッシ及び検出対象の振動に起因して回転体に微振動が生じるようなことがあったとしても、回転体が実質的に停止しているにもかかわらず、回転体の回転方向が第1方向あるいは第2方向に短期間に切り換わっていると誤判定してしまい、そうした誤った判定結果を用いて出力信号を生成し、特に出力してしまうことがなくなる。換言すれば、上記構成を有する回転検出装置の信号処理回路は、検出対象に生じる振動が回転体に伝達される場合であれ、検出対象の実質的な回転方向を含む正確な回転情報を生成出力することができるようになる。
【0010】
上記請求項1に記載の構成において、例えば請求項2に記載の発明のように、当該回転検出装置の信号処理回路は、各種処理をクロックに同期して実行することが望ましい。これにより、信号処理回路が各種処理をクロックに同期することなく非同期にて実行する場合と比較して、動作が安定するようになる。
【0011】
上記請求項1または2に記載の構成において、例えば請求項3に記載の発明のように、前記複数のセンサ素子は、第1及び第2センサ素子の計2個のセンサ素子であり、記複数の波形整形手段は、前記第1及び第2センサ素子からそれぞれ出力される回転信号をそれぞれ整形して第1及び第2パルス信号を生成する第1及び第2波形整形手段であり、前記複数のエッジ信号生成手段は、前記第1パルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出して第1エッジ信号を生成する第1エッジ信号生成手段と、前記第2パルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出して第2エッジ信号を生成する第2エッジ信号生成手段とを有することが望ましい。これにより、上記回転検出装置の信号処理回路を最小限の構成要素数で構成することが可能となる。
【0012】
なお、上記所定回数は、出力手段が出力信号を生成する際に用いる回転体の回転方向が、実質的な回転体の回転方向となる限り任意である。そうした回数としては、例えば請求項4に記載の発明のように、2回を採用することが望ましい。
【0013】
ところで、回転体の回転方向が逆転するとき、第1エッジ信号及び第2エッジ信号に含まれるエッジの検出態様としては、「第1エッジ信号及び第2エッジ信号のいずれか一方には、回転体の回転方向の逆転時を挟んで前後に1つずつ連続して計2つのエッジが検出されるとともに、その他方には、一方の2つのエッジを挟むように前後に1つずつ計2つのエッジが検出される」パターン、及び、「第1エッジ信号及び第2エッジ信号のいずれか一方には、回転体の回転方向の逆転時を挟んで前後に1つずつ連続して計2つのエッジが検出されるとともに、その他方には、エッジが検出されない」パターンの2つのパターンが挙げられる。
【0014】
その点、上記請求項2〜4のいずれかに記載の構成において、例えば請求項5に記載の発明のように、前記第2判定タイミングは、立ち上がりあるいは立ち下がりのエッジが前記第1エッジ信号に検出されるタイミングであり、前記逆転判定部は、前回の第2判定タイミングから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、前記第2エッジ信号にエッジが2つ連続して検出されるとき、あるいは、前記第2エッジ信号にエッジが検出されないとき、前記回転体の回転方向が逆転した旨を判定するとよい。あるいは、例えば請求項6に記載の発明のように、前記第2判定タイミングを、立ち上がりあるいは立ち下がりのエッジが前記第2エッジ信号に検出されるタイミングであり、前記逆転判定部は、前回の第2判定タイミングから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、前記第1エッジ信号にエッジが2つ連続して検出されるとき、あるいは、前記第1エッジ信号にエッジが検出されないとき、前記回転体の回転方向が逆転した旨を判定するとよい。
【0015】
回転検出装置の信号処理回路としてのこのような構成によれば、簡素な構成でありながらも確実に、回転体の回転方向の逆転に係る判定を繰り返し実行することができるようになる。なお、上記請求項4に記載の構成及び上記請求項5に記載の構成は併用することも可能である。併用した場合にあっては、回転体の回転方向の逆転に係る判定を高い精度でもって繰り返し実行することができるようになる。
【0016】
一方、上記請求項1〜6のいずれかに記載の構成において、例えば請求項7に記載の発明のように、前記出力手段は、前記回転体の回転方向が前記第1の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるときと、前記回転体の回転方向が前記第2の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるときとで、パルス高さが異なる第3パルス信号を前記出力信号として生成出力することとしてもよい。あるいは、例えば請求項8に記載の発明のように、前記出力手段は、前記回転体の回転方向が前記第1の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるとき第1の信号レベルに維持されるとともに、前記回転体の回転方向が前記第2の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるとき前記第1の信号レベルとは異なる第2の信号レベルに維持される方向判定信号を前記出力信号として生成出力することとしてもよい。
【0017】
ちなみに、回転検出装置の信号処理回路としての上記請求項7に記載の構成では、回転体の回転方向についての情報が第3パルス信号のパルス高さに含められる。そのため、回転体の回転方向を含む回転情報を単一の出力端子を介して回転検出装置外へ伝達することができるようになる。また、回転検出装置の信号処理回路としての上記請求項8に記載の構成では、回転体の回転方向を含む回転情報を各別の出力端子を介して回転検出装置外へ伝達することができるようになる。
【0018】
なお、請求項1〜8のいずれかに記載の構成において、例えば請求項9に記載の発明のように、前記複数のセンサ素子は、磁気抵抗素子から構成されていることとしてもよい。これにより、磁気抵抗素子という一般的なセンサ素子を採用して、すなわち、特別なセンサ素子を採用しなくとも、上記各種効果を奏する回転検出装置の信号処理回路を実現することができる。
【0019】
また、課題の欄に記載したような、回転体に伝達されて誤判定を招く振動は、例えばカムシャフトやクランクシャフトを検出対象とするときに発生することが多い。その点、請求項1〜9のいずれかに記載の構成において、例えば請求項10に記載の発明のように、前記検出対象を、車載エンジンのカムシャフトとし、前記回転体を、前記カムシャフトにギアを介して接続されて前記カムシャフトの回転に伴って回転することとしてもよい。あるいは、例えば請求項11に記載の発明のように、前記検出対象を、車載エンジンのクランクシャフトとし、前記回転体を、クランクロータであることとしてもよい。これにより、上述した各種効果がより顕著に発揮されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る回転検出装置の信号処理回路の一実施の形態について、図1〜図9を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態の全体構成を示すブロック図である。はじめに、図1を参照して、本実施の形態の回転検出装置の信号処理回路(以下、単に信号処理回路とも記載する)の構成について説明する。
【0021】
本実施の形態は、例えば車載エンジンのクランクシャフト(図示略)をその検出対象としており、実際には、このクランクシャフトの回転に伴って回転するクランクロータ1の回転方向を含む回転情報を生成出力している。そして、後段に接続される図示しない適宜の処理回路やECU等を通じて、この回転情報に基づいて、クランクシャフトの回転情報、例えばクランクシャフトの回転角度や単位時間当たりの回転数並びに回転方向等が取得される。なお、クランクロータ1は、例えば磁性体により構成され、クランクロータ1の外周部には、山部1a及び谷部1bが所定のピッチにて交互に形成されている。
【0022】
図1に示すように、信号処理回路2は、基本的に、第1及び第2磁気センサ(センサ素子)3a及び3b、第1及び第2波形整形部4a及び4b、第1及び第2エッジ検出部5a及び5b、回転方向判定部6、逆転判定部7並びに出力部8等々を有する。
【0023】
このうち、第1及び第2磁気センサ3a及び3bは、例えば磁気抵抗素子(MRE)を用いて構成され、クランクロータ1の外周部と対向するように配置されている。また。これら第1及び第2磁気センサ3a及び3bの間は、山部1aのピッチの整数倍の距離に例えば「1/4」ピッチ分の距離を加算あるいは減算した距離に設定されている。そして、第1及び第2磁気センサ3a及び3bはそれぞれ、クランクロータ1の回転角度に応じた回転信号を、具体的には、クランクロータ1外周部の山部1aが対向している状態にあっては例えば「5.0[V]」の回転信号を、クランクロータ1の谷部1bが対向している状態にあっては例えば「0.0[V]」の回転信号を、後段に接続された第1及び第2波形整形部4a及び4bにそれぞれ出力する。
【0024】
第1及び第2波形整形部4a及び4bは、第1及び第2磁気センサ3a及び3bからそれぞれ取り込んだ回転信号をパルス信号にそれぞれ波形整形し、後述する例えば図8(a)及び(b)あるいは図9(a)及び(b)にそれぞれ示すように、例えば「1/4」の位相差をもった第1及び第2パルス信号Sa及びSbとして出力する。なお、第1及び第2波形整形部4a及び4bの出力端子は、図1に示すように、第1及び第2エッジ検出部5a及び5bの入力端子にそれぞれ接続されているとともに、回転方向判定部6の入力端子に接続されている。さらに、第1波形整形部4aの出力端子は、図1に示すように、出力部8の入力端子にも接続されている。
【0025】
第1エッジ検出部5aは、主に、図示しないDタイプのフリップフロップを有する回路によって構成されている。第1エッジ検出部5aの入力端子は、第1波形整形部4aの出力端子に接続されており、上記第1パルス信号Saを取り込んでいる。そして、第1エッジ検出部5aは、こうして取り込んだ第1パルス信号Saに基づいて、この信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。具体的には、後述する例えば図8(c)及び(d)あるいは図9(c)及び(d)にそれぞれ示すように、第1エッジ検出部5aは、第1パルス信号Saに含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジに対応してエッジを有するエッジ信号Ea1、及び、第1パルス信号Saに含まれる立ち下がりのエッジに対応するエッジを有するエッジ信号Ea2をそれぞれ生成する。また、第1エッジ検出部5aの出力端子は逆転判定部7の入力端子に接続されており、上述のようにして生成した上記エッジ信号Ea1及びEa2を逆転判定部7の入力端子に出力している。
【0026】
第2エッジ検出部5bは、主に、図示しないDタイプのフリップフロップを有する回路によって構成されている。第2エッジ検出部5bの入力端子は、第2波形整形部4bの出力端子に接続されており、上記第2パルス信号Sbを取り込んでいる。そして、第2エッジ検出部5bは、こうして取り込んだ第2パルス信号Sbに基づいて、この信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。具体的には、後述する例えば図8(e)あるいは図9(e)に示すような、第2エッジ検出部5bは、第2パルス信号Sbに含まれる立ち上がり及び立ち下がりの両エッジに対応するエッジを有するエッジ信号Ebを生成する。また、第2エッジ検出部5bの出力端子は、逆転判定部7の入力端子に接続されており、上述のようにして生成した上記エッジ信号Ebを、逆転判定部7の入力端子に出力している。
【0027】
回転方向判定部6は、主に、図示しないDタイプのフリップフロップを多数有する回路あるいはマイクロコンピュータ等によって構成されている。回転方向判定部6の入力端子は、第1及び第2波形整形部4a及び4b並びに第1エッジ検出部5aの出力端子にそれぞれ接続されており、上記第1及び第2パルス信号Sa及びSb並びにエッジ信号Ea2をそれぞれ取り込んでいる。そして、回転方向判定部6は、例えば第1パルス信号Saが第2パルス信号Sbに先行している、あるいは、第2パルス信号Sbが第1パルス信号Saに先行している等、第1及び第2パルス信号Sa及びEbの位相の関係に基づいて、クランクロータ1の回転方向が「正転」であるか、あるいは、この正転とは逆方向である「逆転」であるかを所定の第1判定タイミング毎に繰り返し判定する。また、回転方向判定部6は、クランクロータ1の回転方向に係る判定結果を適宜の記憶保持部(図示略)に次回の第1判定タイミングまで一時的に記憶保持する。なお、本実施の形態では、回転方向判定部6の「正転」及び「逆転」を、図1中において例えば時計回り及び反時計回りとしている。また、上記第1判定タイミングとしては、第1エッジ検出部5aから出力されたエッジ信号Ea2に、立ち下がりのエッジが検出されるタイミングを採用している。そして、回転方向判定部6の出力端子は、出力部8の入力端子に接続されており、回転方向に係る判定結果に対応する信号Rを出力部8の入力端子に出力している。なお、クランクロータ1の回転方向に係る具体的な判定方法については、図2及び図3を参照しつつ後述する。
【0028】
逆転判定部7は、主に、図示しないDタイプのフリップフロップを多数有する回路あるいはマイクロコンピュータ等によって構成されている。逆転判定部7の入力端子は、第1及び第2エッジ検出部5a及び5bの出力端子にそれぞれ接続されており、上記エッジ信号Ea1及びEbをそれぞれ取り込んでいる。そして、逆転判定部7の出力端子は、出力部8の入力端子に接続されており、後述する例えば図8(f)あるいは図9(f)に示すような、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無に係る判定結果に対応する信号Dを出力部8の入力端子に出力している。なお、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無に係る具体的な判定方法については、図2及び図4を参照しつつ後述する。
【0029】
また、出力部8は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成されている。出力部8の入力端子は、回転方向判定部6及び逆転判定部7並びに第1波形整形部4aにそれぞれ接続されており、クランクロータ1の回転方向に係る判定結果に対応する信号R及びクランクロータ1の回転方向の逆転の有無に係る判定結果に対応する信号D並びに第1パルス信号Saをそれぞれ取り込んでいる。そして出力部8の出力端子は、信号処理回路2の出力端子に接続されており、出力部8は、第3パルス信号Scを出力端子に出力している。なお、出力部8が生成出力する第3パルス信号Scについては図2及び図5を参照しつつ後述する。
【0030】
また、信号処理回路2を構成する各部は、図1に示すように、給電端子並びに接地端子に接続されている。信号処理回路2を構成する各部は給電端子に接続されているとともに、この給電端子には信号処理回路2外に設けられた図示しないバッテリーなどの外部電源の端子が接続されている。そして、これら各部に外部電源から給電されている。さらに、信号処理回路2を構成する各部は、図示しないクロックを内蔵するものであり、このクロックから出力されるクロック信号に同期して以下に詳述する各種処理を実行している。
【0031】
以下、図2〜図5を併せ参照して本実施の形態の信号処理回路2の各部の動作についてさらに詳述する。なお、図2は、本実施の形態で実行される回転方向判定処理及び逆転判定処理並びに出力信号生成出力処理の処理手順を併せ示すフローチャートである。図3は、回転方向判定部にて実行される回転方向判定処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャートであり、図4は、逆転判定部にて実行される逆転判定処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャートであり、図5は、出力部にて実行される出力信号生成出力処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャートである。
【0032】
はじめに、図2に示すように、外部電源から給電端子を介して信号処理回路2の各部に電源が供給されると、回転方向判定部6は、ステップS60の処理として、図3を参照しつつ後述する回転方向判定処理を実行する。この回転方向判定処理が実行されると、逆転判定部7は、続くステップS70の処理として、図4を参照しつつ後述する逆転判定処理を実行する。この逆転判定処理が実行されると、出力部8は、続くステップS80の処理として、図5を参照しつつ後述する出力信号生成出力処理を実行する。なお、処理回路2は、ステップS60〜S80の一連の処理を繰り返し実行する。
【0033】
詳しくは、回転方向判定部6は、既述したように、第1及び第2波形整形回路4a及び4b並びに第1エッジ検出部5aに接続されており、エッジ信号Ea2に含まれるエッジに同期して、第1及び第2パルス信号Sa及びSbに基づき、図3に示す回転方向判定処理を実行する。すなわち、回転方向判定部6は、図3に示すように、エッジ信号Ea2にエッジを検出すると、ステップS61の判断処理として、第2パルス信号Sbの信号レベルは論理Hレベルに対応する信号レベルであるか否かを判定する。
【0034】
ここで、第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Hレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS61の判断処理において「YES」)、第1パルス信号Saの立ち下がりのタイミングにおいて第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Hレベルに対応する信号レベルであるから、第1パルス信号Saが第2パルス信号Sbに先行している。したがって、回転方向判定部6は、ステップS62の処理として、クランクロータ1の回転方向は正転である旨を判定し、さらに続くステップS63の処理として、次回の第1判定タイミングまで継続して論理Hレベルにて信号Rを出力部8に出力する。
【0035】
一方、第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Hレベルに対応する信号レベルでないとき、すなわち、第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Lレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS61の判断処理において「NO」)、第1パルス信号Saの立ち下がりのタイミングにおいて第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Lレベルに対応する信号レベルであるから、第2パルス信号Sbが第1パルス信号Saに先行している。したがって、回転方向判定部6は、ステップS64の処理として、クランクロータ1の回転方向は逆転である旨を判定し、さらに続くステップS65の処理として、次回の第1判定タイミングまで継続して論理Lレベルにて信号Rを出力部8に出力する。
【0036】
こうして回転方向判定部6による回転方向判定処理を終えると、逆転判定部7は逆転判定処理を実行する。逆転判定部7は、既述したように、第1及び第2エッジ検出部5a及び5bにそれぞれ接続されており、エッジ信号Ea1に含まれるエッジに同期して、第1及び第2エッジ信号Ea1及びEbに基づき、図4に示す逆転判定処理を実行する。
【0037】
ここで、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に、クランクロータ1の回転方向が逆転したときの第1パルス信号Sa及び第2パルス信号Sbの波形を示す。これら図6及び図7に示されるように、クランクロータ1の回転方向が逆転したときの第1パルス信号Sa及び第2パルス信号Sbは、これら8つのパターンのいずれかに当てはまることが発明者らによって確認されている。
【0038】
詳しくは、図6(a)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する2つの山部1aがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が逆転から正転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。同様に、図6(b)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する2つの谷部1bがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が逆転から正転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。一方、図6(c)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する谷部1b及び山部1aがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が逆転から正転に、さらに正転から逆転に、短い期間に繰り返し転じ、最終的に正転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。同様に、図6(d)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する山部1a及び谷部1bがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が逆転から正転に、さらに正転から逆転に、短い期間に繰り返し転じ、最終的に正転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。
【0039】
また、図7(a)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する2つの山部1aがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が正転から逆転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。同様に、図7(b)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する2つの谷部1bがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が正転から逆転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。一方、図7(c)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する山部1a及び谷部1bがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が正転から逆転に、さらに逆転から正転に、短い期間に繰り返し転じ、最終的に逆転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。同様に、図7(d)は、第1及び第2磁気センサ3a及び3bに隣接する谷部1b及び山部1aがそれぞれ対向した際に、クランクロータ1の回転方向が正転から逆転に、さらに逆転から正転に、短い期間に繰り返し転じ、最終的に逆転に転じたときの、第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形を示している。
【0040】
これら8つの信号波形パターンは、次の2つの信号波形パターンに大別される。そのうちの一方の信号波形パターンは、図6(a)及び(b)並びに図7(a)及び(b)に示されるように、「第1及び第2パルス信号Sa及びSbのいずれか一方には、クランクロータ1の回転方向の逆転時を挟んで前後に1つずつ連続して計2つのエッジが検出されるとともに、その他方には、一方の2つのエッジを挟むように前後に1つずつ計2つのエッジが検出される」信号波形パターンである。他方のパターンは、図6(c)及び(d)並びに図7(c)及び(d)に示すように、「第1及び第2パルス信号Sa及びSbのいずれか一方には、クランクロータ1の回転方向の逆転時を挟んで前後に1つずつ連続して計2つのエッジが検出されるとともに、その他方には、エッジが検出されない」信号波形パターンである。ちなみに、本実施の形態では、逆転判定部7は、クランクロータ1の回転方向の逆転に係る判定を第2判定タイミング毎に、すなわち、第1エッジ信号Ea1に同期して実行することは既述した通りである。
【0041】
したがって、そうした第2判定タイミング並びに図6及び図7に鑑みれば、前回の第2判定タイミングから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、第2エッジ信号Ebにエッジが2つ連続して検出されるとき、あるいは、第2エッジ信号Ebにエッジが検出されないとき、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨判定することができる。一方、前回の第2判定タイミングがから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、第2エッジ信号Ebにエッジが1つだけ検出されるとき、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった(クランクロータ1は同一方向に回転している)旨判定することができる。
【0042】
そこで、逆転判定部7は、先の図4に示すように、エッジ信号Ea1にエッジを検出すると、まず、ステップS71の判断処理として、エッジ信号Ea1に検出されるエッジのうち連続する2つのエッジの間に、エッジ信号Ebにエッジが検出されるか否かを判断する。このとき、エッジ信号Ea1に検出されるエッジのうち連続する2つのエッジの間に、エッジ信号Ebにエッジが検出されると(ステップS71の判断処理で「YES」)、逆転判定部7は、続くステップS72の判断処理として、エッジ信号Ebに検出されたエッジは2つであるか否かを判定する。このとき、エッジ信号Ebに検出されたエッジは2つでないとき(ステップS72の判断処理で「NO」)、逆転判定部7は、続くステップS73及びS74の処理を通じて、逆転は無かった旨に対応する例えば論理Lレベルで信号Dを出力部8に出力する。
【0043】
一方、先のステップS71の判断処理において、エッジ信号Ea1に検出されるエッジのうち連続する2つのエッジの間に、エッジ信号Ebにエッジが検出されないとき(ステップS71の判断処理で「NO」)、あるいは、先のステップS72の判断処理において、エッジ信号Ebに検出されたエッジは2つであるとき(ステップS72の判断処理で「YES」)、逆転判定部7は、続くステップS75及び76の処理を通じて、逆転が有った旨に対応する例えば論理Hレベルで信号Dを出力部8に出力する。
【0044】
このように、逆転判定部7による逆転判定処理を終えると、出力部8は出力信号生成出力処理を実行する。出力部8は、既述したように、第1波形整形部4a及び回転方向判定部6並びに逆転判定部7にそれぞれ接続されており、第1パルス信号Sa及び信号D並びに信号Rに基づき、図5に示す出力信号生成出力処理を実行する。
【0045】
詳しくは、出力部8は、図5に示すように、ステップS81の判断処理として、逆転判定部7から出力される信号Dの信号レベルが2回連続して論理Lレベルに対応する信号レベルであるか否かを判断する。ここで、信号Dの信号レベルが2回連続して論理Lレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS81の判断処理で「YES」)、クランクロータ1は同一方向に回転していることを意味するため、出力部8は、続くステップS82の判断処理として、一連の判定(ステップS81の判断処理)のうちの最初の判定時直前の第1判定タイミングにおける信号Rの信号レベルが論理Hレベルに対応しているか否かを判断する。ここで、信号Rの信号レベルが論理Hレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS82の判断処理で「YES」)、クランクロータ1の回転方向は正転であるため、出力部8は、続くステップS83及びS85の処理を通じて、信号レベル帯を「0.0〜5.0[V]」と設定した上で、第3パルス信号Scを出力端子に生成出力する。他方、出力部8は、先のステップS82の判断処理において、回転方向判定部6から出力される信号Rの信号レベルが論理Lレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS82の判断処理で「NO」)、クランクロータ1の回転方向は逆転であるため、出力部8は、続くステップS84及びS85の処理を通じて、信号レベル帯を「2.5〜5.0[V]」と設定した上で、第3パルス信号Scを出力端子に生成出力する。そして、ステップS85の処理を終えると、出力部8は出力信号生成出力処理を一旦終了する。
【0046】
また、出力部8は、先のステップS81の判断処理において、逆転判定部7から出力される信号Dの信号レベルが2回連続して論理Lレベルに対応する信号レベルでないとき(ステップS81の判断処理で「NO」)、クランクロータ1の回転方向に逆転があったことを意味する。そのため、出力部8は、続くステップS86の処理において、一連の判定(先のステップS81の判断処理)のうちの最初の逆転が有った旨の判定時直前における、第3パルス信号Scの信号レベルを継続して出力(保持)する。なお、出力部8は、信号Dの信号レベルが2回連続して論理Lレベルであると判断される(ステップS87の判断処理において「YES」)まで、すなわち、クランクロータ1の回転方向の逆転が無かった旨が2回連続して判定されるまで、上記第3パルス信号Scの信号レベルを保持する。そして、出力部8は、続くステップS88の判断処理として、一連の判定(ステップS87の判断処理)のうちの最後の逆転が無かった旨の判定時におけるクランクロータの回転方向に係る判定結果、すなわち、信号Rの信号レベルが論理Hレベルか否かを判断する。ここで、信号Rの信号レベルが論理Hレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS88の判断処理で「YES」)、クランクロータ1の回転方向は正転であるため、出力部8は、続くステップS89及びS85の処理を通じて、信号レベル帯を「0.0〜5.0[V]」と設定した上で、第3パルス信号Scを出力端子に生成出力する。他方、出力部8は、先のステップS88の判断処理において、回転方向判定部6から出力される信号Rの信号レベルが論理Lレベルに対応する信号レベルであるとき(ステップS88の判断処理で「NO」)、クランクロータ1の回転方向は逆転であるため、出力部8は、続くステップS90及びS85の処理を通じて、信号レベル帯を「2.5〜5.0[V]」と設定した上で、第3パルス信号Scを出力端子に生成出力する。そして、ステップS85の処理を終えると、出力部8は出力信号生成出力処理を一旦終了する。
【0047】
以下、図8及び図9を併せ参照しつつ、本実施の形態の動作の一例を説明する。まず、図8(a)及び(b)は、クランクロータ1が正転している状態から例えば時刻t115に逆転に転じる状況において、第1及び第2波形整形回路4a及び4bから出力される第1及び第2パルス信号Sa及びSbの波形をそれぞれ示したものである。これら図8(a)及び(b)に示すように、第1及び第2波形整形部4a及び4bは、クランクロータ1が正転している状態にあっては、破線よりも左側に示すように、第1及び第2パルス信号Sa及びSbをそれぞれ出力している。この状態にあっては、第1パルス信号Saが第2パルス信号Sbに先行している。一方、クランクロータ1が逆転している状態にあっては、破線よりも右側に示すように、第1及び第2パルス信号Sa及びSbをそれぞれ出力している。この状態にあっては、第2パルス信号Sbが第1パルス信号Saに先行している。
【0048】
また、第1及び第2磁気センサ3a及び3bは、クランクロータ1の山部1aが対向している状態では論理Hレベル(例えば5V)に対応する回転信号を出力し、谷部1bが対向している状態では論理Lレベル(例えば0V)に対応する回転信号を出力する。したがって、第1及び第2磁気センサ3a及び3bにそれぞれ接続される第1及び第2波形整形部4a及び4bは、山部1aと対向している状態から次の山部1aが対向するまでの1ピッチに対して、第1及び第2パルス信号Sa及びSbを出力する。なお、第1及び第2磁気センサ3a及び3bの配置関係に起因して、第1パルス信号Sa及びSbは、図8(a)及び(b)に示すように、略「1/4」ピッチ分だけ位相が互いにずれた出力となっている。
【0049】
また、図8(c)及び(d)は、クランクロータ1が正転している状態から例えば時刻t115に逆転に転じる状況において、第1エッジ検出部5aから出力されるエッジ信号Ea1及びEa2の波形をそれぞれ示したものである。既述したように、また、先の図1に示すように、上記第1パルス信号Saは、第1エッジ検出部5aに入力される。この第1エッジ検出部5aでは、入力された第1パルス信号Saに基づき、この第1パルス信号Saに含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出し、このエッジに対応するエッジを有するエッジ信号Ea1を生成する。そのため、先の図8(a)に示した第1パルス信号Saの波形は、図8(c)に示すエッジ信号Ea1の波形となる。詳しくは、エッジ信号Ea1は、例えば時刻「t101、t103、・・・、t127、t129」においてエッジが生じる波形となる。また、第1エッジ検出部5aでは、入力された第1パルス信号Saに基づき、この第1パルス信号Saに含まれる立ち下がりの片エッジを検出し、この片エッジに対応するエッジを有するエッジ信号Ea2を生成する。そのため、先の図8(a)に示した第1パルス信号Saの波形は、図8(d)に示すエッジ信号Ea2の波形となる。詳しくは、エッジ信号Ea2は、例えば時刻「t103、t107、・・・、t125、t129」においてエッジが生じる波形となる。
【0050】
また、図8(e)は、クランクロータ1が正転している状態から例えば時刻t2に逆転に転じた状況において、第2エッジ検出部から出力されるエッジ信号Ebの波形を示したものである。既述したように、また、先の図1に示すように、上記第2パルス信号Sbは、第2エッジ検出部5bに入力される。この第2エッジ検出部5bでは、入力された第2パルス信号Sbに基づき、この第2パルス信号Sbに含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出し、このエッジに対応するエッジを有するエッジ信号Ebを生成する。そのため、先の図8(b)に示した第2パルス信号Sbの波形は、図8(e)に示すエッジ信号Ebの波形となる。詳しくは、エッジ信号Ebは、例えば時刻「t102、t104、・・・、t126、t128」においてエッジが生じる波形となる。
【0051】
こうした図8(c)〜(e)に示すエッジ信号Ea1及びEa2並びにEbは、逆転判定部7に入力される。そして、既述したように、逆転判定部7は、こうして入力されたエッジ信号Ea1及びEbに含まれるエッジに基づいて、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無を所定の第2判定タイミング毎に繰り返し判定する。すなわち、逆転判定部7は、第2判定タイミングとして、図8(c)に示す例えば時刻「t101、t103、t105、・・・、t127、t129」に、すなわち、エッジ信号Ea1に含まれるエッジに同期して、クランクロータ1の回転方向が逆転しているか否かを判定している。
【0052】
このような判定タイミングの1つである、例えば時刻t107においては、逆転判定部7は、今回の判定タイミングである時刻t107と前回の判定タイミングt105との間に、エッジ信号Ebにエッジが生じていたか否かを判定し、エッジが生じていたと判定するとさらに、エッジ信号Ebにエッジが連続して発生していたか否かを判定する。図8に示す動作例にあっては、時刻t105とt107との間の時刻である時刻t106において、エッジ信号Ebにエッジが生じていたものの連続して生じていなかった。そのため、逆転判定部7は、クランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨を判定する。
【0053】
一方、上記判定タイミングの1つである、例えば時刻t117においては、先の時刻t107と同様に、逆転判定部7は、今回の判定タイミングである時刻t117と前回の判定タイミングである時刻t113との間に、エッジ信号Ebにエッジが生じていたか否かを判定し、エッジが発生していたと判定するとさらに、エッジ信号Ebにエッジが連続して発生していたか否かを判定する。図8に示す動作例にあっては、時刻t117とt113との間の時刻である時刻t114及びt116において、エッジ信号Ebにエッジが連続して生じていた。そのため、逆転判定部7は、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨を判定する。
【0054】
そして、逆転判定部7は、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無に係る判定結果に対応する信号Dを出力部8に出力する。具体的には、図8(f)に示すように、逆転判定部7は、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨判定された時刻t117を除き、論理Hレベルに対応するエッジを有する信号を生成する。
【0055】
一方、図8(a)に示す第1パルス信号Sa及び図8(b)に示す第2パルス信号Sb並びに図8(d)に示すエッジ信号Ea2は、回転方向判定部6に入力される。そして、既述したように、回転方向判定部6は、こうして入力された第1及び第2パルス信号Sa及びSbに基づいて、クランクロータ1の回転方向を所定の第1判定タイミング毎に繰り返し判定する。
【0056】
具体的には、回転方向判定部6は、第1判定タイミングとして、図8(d)に示す例えば時刻「t103、t107、t111、・・・、t125、t129」に、すなわち、エッジ信号Ea2に含まれるエッジに同期して、クランクロータ1の回転方向は正転であるか逆転であるかを判定している。
【0057】
このような判定タイミングの1つである、例えば時刻t111においては、回転方向判定部6は、第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Hレベルに相当する信号レベルであるか、あるいは、論理Lレベルに相当する信号レベルであるかを判定する。図8に示す動作例にあっては、時刻t111における第2パルス信号Ebの信号レベルは論理Hレベルに相当する信号レベルであるため、回転方向判定部6は、第1パルス信号Saが第2パルス信号Sbに先行している、すなわち、クランクロータ1の回転方向は正転であると判定する。
【0058】
一方、上記判定タイミングの1つである、例えば時刻t125においては、先の時刻t111と同様に、回転方向判定部6は、第2パルス信号Sbの信号レベルが論理Hレベルに相当する信号レベルであるか、あるいは、論理Lレベルに相当する信号レベルであるかを判定する。図8に示す動作例にあっては、時刻t125における第2パルス信号Ebの信号レベルは論理Lレベルに相当する信号レベルであるため、回転方向判定部6は、第2パルス信号Sbが第1パルス信号Saに先行している、すなわち、クランクロータ1の回転方向は逆転であると判定する。
【0059】
そして、回転方向判定部6は、クランクロータ1の回転方向に係る判定結果に対応する信号Rを出力部8に出力する。具体的には、回転方向判定部6は、今回の判定タイミングにおいてクランクロータ1の回転方向が正転であると判定したとき、次回の判定タイミングまで、論理Hレベル(例えば「5.0V」)の一定信号レベルにて信号Rを出力部8に出力する。一方、回転方向判定部6は、今回の判定タイミングにおいてクランクロータ1の回転方向が逆転であると判定したとき、次回の判定タイミングまで、論理Lレベル(例えば「0.0V」)の一定信号レベルにて信号Rを出力部8に出力する。
【0060】
そして、図8(a)に示す第1パルス信号Sa及び図8(f)に示す信号D並びに信号Rは、出力部8に入力される。
【0061】
ここで、出力部8は、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった旨判定されるとき、クランクロータ1の回転方向に係る判定結果(すなわち信号Rの信号レベル)に応じた信号レベル帯にて、第1パルス信号Saの反転信号を第3パルス信号Scとして生成するとともに出力端子に出力する。一方、出力部8は、クランクロータ1の回転方向に逆転があった旨判定されるとき、その判定後、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった旨が2回連続して判定されるまで、逆転があった旨判定される直前に出力していた第3パルス信号Scの信号レベルを保持しつつ出力端子に出力する。なお、本実施の形態では、そうした信号レベル帯として、クランクロータ1が正転しているときには例えば「0[V]〜5[V]」の信号レベル帯を、クランクロータ1が逆転しているときには例えば「2.5[V]〜5.0[V]」の信号レベル帯をそれぞれ採用している。
【0062】
具体的には、例えば時刻t111においては、まず、回転方向判定部6から出力部8に入力される信号Rの信号レベルは論理Hレベルであるため、クランクロータ1は正転方向に回転している。同時刻t111においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Hレベルであるため、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった。すなわち、クランクロータ1は正転方向に回転し続けていた。そのため、出力部8は、クランクロータ1の正転時に対応する「0[V]〜5[V]」の信号レベル帯にて、第1波形整形部4aから出力部8に入力される第1パルス信号Saを反転するとともに、この反転信号を第3パルス信号Scとして出力端子に出力する。
【0063】
続く時刻t113は、回転方向判定部6によるクランクロータ1の回転方向の判定タイミングに該当しない。そのため、信号Rの信号レベルは、同時刻t113において、先の時刻t111における判定結果に対応する信号レベル(ここでは論理Hレベル)が維持されており、クランクロータ1は正転方向に回転していることを意味する。同時刻t113においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Hレベルであるため、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった。すなわち、クランクロータ1は正転方向に回転し続けていた。そのため、出力部8は、クランクロータ1の正転時に対応する「0[V]〜5[V]」の信号レベル帯にて、第1波形整形部4aから出力部8に入力される第1パルス信号Saを反転するとともに、この反転信号を第3パルス信号Scとして出力端子に出力する。
【0064】
続いて、例えば時刻t117においては、まず、回転方向判定部6から出力部8に入力される信号Rの信号レベルは論理Lレベルであるため、クランクロータ1は逆転方向に回転している。また、同時刻t117においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Lレベルであるため、クランクロータ1の回転方向は逆転している。そのため、出力部8は、時刻t117以後、クランクロータ1の回転方向が逆転していない旨が逆転判定部7を通じて2回連続して判定されるまで、時刻t117の直前まで出力していたパルス信号Scの信号レベル(ここでは論理Lレベルに対応する信号レベル)を保持しつつ出力端子に出力することになる。
【0065】
すなわち、図8に示すように、時刻t121が「時刻t117以後、クランクロータ1の回転方向が逆転していない旨が逆転判定部7を通じて2回連続して判定される」時刻となる。そのため、出力部8は、クランクロータ1の逆転時に対応する「2.5[V]〜5[V]」の信号レベル帯にて、第1波形整形部4aから出力部8に入力される第1パルス信号Saを反転するとともに、この反転信号を第3パルス信号Scとして出力端子に出力することになる。
【0066】
ちなみに、背景技術の欄に記載した特許文献2に記載の技術では、クランクロータ1の回転方向が逆転した旨判定した直後における第1パルス信号Saの最初の立ち上がりから最初の立ち下がりまでの1パルス分がマスクされたマスク信号を利用して出力信号を生成する。具体的には、図8に示す動作例では、時刻t117においてクランクロータ1の回転方向が逆転した旨が判定されるため、マスク信号は、図8(a)に示す第1パルス信号Saのうち、時刻t117〜時刻119までの1パルスをマスクした波形となる。そして、出力信号は、マスク信号に基づいて、クランクロータ1の回転方向に係る判定結果(ここでは逆転方向)に応じた信号レベル帯「2.5〜5.0V」にて生成される。そして、図8(g)に破線にて示すように、出力信号は、時刻t117〜時刻t119の間、「2.5V」の信号が出力されてしまうことになる。課題の欄にも記載したように、こうした出力信号に起因して、後段に接続される車両制御ECUにおいて各種車両制御を適切に実行することができなくなるおそれが生じることになる。しかしながら、本実施の形態では、上述したように、また、図8(g)に実線にて示すように、先の時刻t117〜時刻t119の間、第3パルス信号Scは「0.0V」が維持されているため、上述したおそれは生じなくなる。
【0067】
以下、図9を参照しつつ本実施の形態の信号処理回路2の動作についてさらに説明する。この図9に示されるように、クランクロータ1は、例えば時刻t201以前から逆転方向に回転していたところ、例えば時刻t215において回転方向が逆転方向から正転方向へ転じ、再び、時刻t220において回転方向が正転方向から逆転方向へ転じた状況において、処理回路2の各部から出力される信号をそれぞれ示したものである。
【0068】
こうした状況にあっては、時刻t217において、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Lレベルとなっており、クランクロータ1の回転方向が逆転した旨判定されている。そのため、出力部8は、時刻t217以後、クランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨2回連続して判定されるまで、時刻t217の直前まで出力していたパルス信号Scの信号レベル、すなわち論理Lレベルに対応する信号レベルを保持しつつ出力端子に出力することになる。
【0069】
続く時刻t218においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Hレベルとなっており、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった旨が判定されている。しかしながら、こうした逆転が無かった旨が判定されたのは、時刻t217以後1回目であるため、出力部8は、時刻t217の直前まで出力していたパルス信号Scの信号レベルを論理Lレベルに対応する信号レベルに保持しつつ出力端子に出力している。
【0070】
続く時刻221においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Lレベルとなっており、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨が判定されている。そのため、出力部8は、時刻t221以後、クランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨2回連続して判定されるまで、時刻t221の直前まで出力していたパルス信号Scの信号レベル、すなわち論理Lレベルに対応する信号レベルを保持しつつ出力端子に出力することになる。
【0071】
続く時刻t223においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Hレベルとなっており、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった旨が判定されている。しかしながら、こうした逆転が無かった旨が判定されたのは、時刻t223以後1回目であるため、出力部8は、時刻t217の直前まで出力していたパルス信号のScの信号レベルを論理Lレベルに対応する信号レベルに保持しつつ出力端子に出力している。
【0072】
そして続く時刻t225においては、逆転判定部7から出力部8に入力される信号Dの信号レベルは論理Hレベルとなっており、クランクロータ1の回転方向に逆転は無かった旨が判定されている。そのため、こうした逆転が無かった旨が判定されたのは、時刻t223以後2回目であるため、出力部8は、クランクロータ1の正転時に対応する「0.0[V]〜5.0[V]」の信号レベル帯にて、第1波形整形部4aから出力部8に入力される第1パルス信号Saを反転するとともに、この反転信号を第3パルス信号Scとして出力端子に出力することになる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態の回転検出装置によれば、次のような効果を得ることができるようになる。
【0074】
上記実施の形態では、出力部8は、クランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨が2回連続して判定される場合、これら一連の判定のうちの最初の判定時直前の第1判定タイミングにおけるクランクロータ1の回転方向に係る判定結果を用いて出力信号Scを生成出力する一方、クランクロータ1の回転方向に逆転が有った旨が判定される場合、この逆転が有った旨が判定されてからクランクロータ1の回転方向に逆転が無かった旨が2回連続して判定されるまでにおいては、これら一連の判定のうちの最初の逆転が有った旨の判定時直前における出力信号Scの信号レベルを継続して出力するとともに、この一連の判定後においては、これら一連の判定のうちの最後の逆転が無かった旨の判定時におけるクランクロータ1の回転方向に係る判定結果を用いて出力信号Scを生成出力することとした。これにより、例えばクランクシャフトとクランクロータ1との間にバックラッシが存在するとともにクランクシャフトに振動が生じるとき、これらバックラッシ及びクランクシャフトの振動に起因してクランクロータ1に微振動が生じるようなことがあったとしても、クランクロータ1が実質的に停止しているにもかかわらず、クランクロータ1の回転方向が正転方向あるいは逆転方向に短期間に切り換わっていると誤判定してしまい、そうした誤った判定結果を用いて出力信号Scを出力生成してしまうことがなくなる。換言すれば、上記構成を有する回転検出装置の信号処理回路は、クランクシャフトに生じる振動がクランクロータ1に伝達される場合であれ、クランクシャフトの実質的な回転方向を含む正確な回転情報を生成出力することができるようになる。
【0075】
上記実施の形態では、回転検出装置の信号処理回路2は、各種処理をクロックに同期して実行することとした。これにより、信号処理回路2が各種処理をクロックに同期することなく非同期にて実行する場合と比較して、動作が安定するようになる。
【0076】
上記実施の形態では、出力部8は、クランクロータ1の回転方向が正転であるとの回転方向判定部6の判定結果であるときと、クランクロータ1の回転方向が逆転であるとの回転方向判定部6の判定結果であるときとで、含まれる信号レベルが異なる第3パルス信号Scを出力していた。これにより、第3パルス信号Scのパルス高さによってクランクロータ1の回転方向についての情報を出力端子に出力するとともに、第3パルス信号Scのパルス数によってクランクロータ1の回転数についての情報を出力端子に出力することができるようになる。すなわち、クランクロータ1の回転方向及び回転数についての情報を単一の出力端子を介して当該信号処理回路2外へ伝達することができるようになる。
【0077】
なお、本発明に係る回転検出装置は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0078】
上記実施の形態では、クランクロータ1の回転方向を判定する第1所定タイミングとして、エッジ信号Ea2に立ち下がりの片エッジが検出されるタイミングを採用していたがこれに限らない。他にも、エッジ信号Ea1に立ち上がりの片エッジが検出されるタイミングや、エッジ信号Ebに立ち下がりあるいは立ち上がりの片エッジが検出されるタイミングを採用することとしてもよい。
【0079】
上記実施の形態では、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無を判定する第2所定タイミングとして、エッジ信号Ea1に両エッジが検出されるタイミングを採用していたがこれに限らない。他に例えば、エッジ信号Ebに両エッジが検出されるタイミングを採用することとしてもよい。この場合、逆転判定部7は、連続する2つの第2判定タイミングの間に、エッジ信号Ea1に連続してエッジが検出されるとき、あるいは、エッジ信号Ea1にエッジが検出されないとき、クランクロータ1の回転方向が逆転した旨を判定することとしてもよい。また他に例えば、これらを併用することもできる。すなわち、逆転判定部7は、エッジ信号Ea1及びエッジ信号Ebの双方に同期して、エッジ信号Ebに含まれるエッジ及びエッジ信号Ea1に含まれるエッジに基づき、クランクロータ1の回転方向が逆転した旨を判定することとしてもよい。併用した場合にあっては、クランクロータ1の回転方向の逆転に係る判定を高い精度でもって繰り返し実行することができるようになる。また、第2所定タイミングとしては、エッジ信号Ea1及びエッジ信号Ebの少なくとも一方にエッジが検出されるタイミングに同期しなくともよい。要は、クランクロータ1の回転方向の逆転の有無を検出することができれば任意である。
【0080】
上記実施の形態では、出力部8は、所定回数として「2回」を採用していたが、所定回数は「2回」に限らず任意である。要は、クランクロータ1の回転方向及び回転数に基づき検出されるクランクシャフトの回転方向及び回転数が、実質的な回転方向及び回転数を反映することができればよく、そうした回数に設定することができる。
【0081】
上記実施の形態では、出力部8は、クランクロータ1の回転方向が正転であるとの回転方向判定部6の判定結果であるときと、クランクロータ1の回転方向が逆転であるとの回転方向判定部6の判定結果であるときとで、含まれる信号レベルが異なる第3パルス信号Scを出力していたがこれに限らない。他に例えば、先の図1に対応する図として図6に信号処理回路2aの全体構成をブロック図にて示すように、出力部8aは、先の第3パルス信号Scの信号レベルが含まれる信号レベル帯がクランクロータ1の回転方向に拘わらず同一の信号レベル帯となった第4パルス信号Sdを第1出力端子に出力する。さらに、出力部8aは、クランクロータ1の回転方向が正転方向である旨回転方向判定部6を通じて判定されるとき論理Hレベルに対応する信号レベルに維持されるとともに、クランクロータ1の回転方向が逆転方向である旨回転方向判定部6を通じて判定されるとき論理Lレベルに対応する信号レベルに維持される方向判定信号Seを第2出力端子に出力することとしてもよい。要は、クランクロータ1の回転方向についての情報及びクランクロータ1の回転数についての情報を各別の出力端子に出力することとしてもよい。
【0082】
上記実施の形態では、クランクロータ1の回転角度に応じた複数の回転信号を各々異なる位相にて出力する複数のセンサ素子として、磁気抵抗素子(MRE)から構成される第1及び第2磁気センサ3a及び3bを採用したがこれに限らない。他に例えばホール素子から構成されるセンサ素子を採用することとしてもよい。要は、クランクロータ1の回転角度に応じた2つの回転信号を各々異なる位相にて出力することができれば、センサ素子の構成及び動作原理等は任意である。
【0083】
上記実施の形態では、車載エンジンのクランクシャフトの回転方向及び回転数を検出する回転検出装置として具体化していたが、適用先についてはこれに限らない。他に例えば、車載エンジンのカムシャフトの回転方向及び回転数を検出する回転検出装置として具体化しても良い。要は、検出対象の回転に伴って回転する回転体の回転方向及び回転数に基づいて検出対象の回転方向及び回転数を検出する回転検出装置であれば、検出対象は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る回転検出装置の信号処理回路の一実施の形態について、全体の構成を示す模式図。
【図2】同実施の形態において実行される回転方向判定処理及び逆転判定処理並びに出力信号生成出力処理の処理手順を併せ示すフローチャート。
【図3】同実施の形態を構成する回転方向判定部にて実行される回転方向判定処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャート。
【図4】同実施の形態を構成する逆転判定部にて実行される逆転判定処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャート。
【図5】同実施の形態を構成する出力部にて実行される出力信号生成出力処理について、その処理手順を詳細に示すフローチャート。
【図6】(a)〜(d)は、クランクロータの回転方向が逆転したときの第1パルス信号Sa及び第2パルス信号Sbの波形をそれぞれ示す図。
【図7】(a)〜(d)は、クランクロータの回転方向が逆転したときの第1パルス信号Sa及び第2パルス信号Sbの波形をそれぞれ示す図。
【図8】同実施の形態について、その動作の一例を示すタイミングチャート。
【図9】同実施の形態について、その動作の他の一例を示すタイミングチャート。
【図10】本発明に係る回転検出装置の信号処理回路の変形例について、その全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0085】
1…クランクロータ(回転体)、1a…山歯、1b…谷歯、2…処理回路、3a…第1磁気センサ(センサ素子)、3b…第2磁気センサ(センサ素子)、4a…第1波形整形部(第1波形整形手段)、4b…第2波形整形部(第2波形整形手段)、5a…第1エッジ検出部(エッジ検出手段)、5b…第2エッジ検出部(エッジ検出手段)、6…回転方向判定部、7…逆転判定部(逆転判定手段)、8…出力部(出力手段)、10、10a…回転検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の回転に伴って回転する回転体の回転に応じた複数の回転信号を各々異なる位相にて出力する複数のセンサ素子と、
前記複数のセンサ素子からそれぞれ出力される前記複数の回転信号を複数のパルス信号にそれぞれ整形する複数の波形整形手段と、
前記複数の波形整形手段からそれぞれ出力される前記複数のパルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のエッジをそれぞれ検出して複数のエッジ信号を生成する複数のエッジ信号生成手段と、
前記複数のエッジ信号生成手段を通じて生成された前記複数のエッジ信号に含まれるエッジに基づいて、前記回転体の回転方向が第1の方向であるか、または、この第1の方向とは逆方向である第2の方向であるかを所定の第1判定タイミング毎に繰り返し判定するとともに、前記回転体の回転方向に係る判定結果を次回の第1判定タイミングまで保持する回転方向判定手段と、
前記複数のエッジ信号生成手段を通じて生成された前記複数のエッジ信号に含まれるエッジに基づき、前記回転体の回転方向の逆転の有無を所定の第2判定タイミング毎に繰り返し判定する逆転判定手段と、
前記回転方向判定手段を通じて判定される前記回転体の回転方向に係る判定結果及び前記複数の波形整形手段から出力される前記パルス信号を用いて、前記回転体の回転方向を含めた回転情報を出力信号として生成出力する出力手段とを備える、回転検出装置の信号処理回路であって、
前記出力手段は、前記逆転判定手段によって前記回転体の回転方向に逆転が有った旨が判定されたとき、この逆転が有った旨の判定後、前記逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定するまで、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向を前記回転体の回転方向としてそのまま継続して用いるとともに、前記逆転判定手段が所定回数連続して逆転していないことを判定すると、逆転が有った旨の判定時直前における回転方向とは逆方向の回転方向を前記回転体の回転方向として用いることを特徴とする、回転検出装置の信号処理回路。
【請求項2】
当該回転検出装置の信号処理回路は、各種処理をクロックに同期して実行することを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項3】
前記複数のセンサ素子は、第1及び第2センサ素子の計2個のセンサ素子であり、
前記複数の波形整形手段は、前記第1及び第2センサ素子からそれぞれ出力される回転信号をそれぞれ整形して第1及び第2パルス信号を生成する第1及び第2波形整形手段であり、
前記複数のエッジ信号生成手段は、前記第1パルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出して第1エッジ信号を生成する第1エッジ信号生成手段と、前記第2パルス信号に含まれる立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出して第2エッジ信号を生成する第2エッジ信号生成手段とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項4】
前記所定回数は、2回であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項5】
前記第2判定タイミングは、立ち上がりあるいは立ち下がりのエッジが前記第1エッジ信号に検出されるタイミングであり、
前記逆転判定部は、前回の第2判定タイミングから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、前記第2エッジ信号にエッジが2つ連続して検出されるとき、あるいは、前記第2エッジ信号にエッジが検出されないとき、前記回転体の回転方向が逆転した旨を判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項6】
前記第2判定タイミングは、立ち上がりあるいは立ち下がりのエッジが前記第2エッジ信号に検出されるタイミングであり、
前記逆転判定部は、前回の第2判定タイミングから今回の第2判定タイミングまでの連続する2つの第2判定タイミングの間に、前記第1エッジ信号にエッジが2つ連続して検出されるとき、あるいは、前記第1エッジ信号にエッジが検出されないとき、前記回転体の回転方向が逆転した旨を判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項7】
前記出力手段は、前記回転体の回転方向が前記第1の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるときと、前記回転体の回転方向が前記第2の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるときとで、パルス高さが異なる第3パルス信号を前記出力信号として生成出力することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項8】
前記出力手段は、前記回転体の回転方向が前記第1の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるとき第1の信号レベルに維持されるとともに、前記回転体の回転方向が前記第2の方向であるとの前記回転方向判定手段の判定結果であるとき前記第1の信号レベルとは異なる第2の信号レベルに維持される方向判定信号を前記出力信号として生成出力することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項9】
前記複数のセンサ素子は、磁気抵抗素子から構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項10】
前記検出対象は、車載エンジンのカムシャフトであり、
前記回転体は、前記カムシャフトにギアを介して接続されて前記カムシャフトの回転に伴って回転することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。
【請求項11】
前記検出対象は、車載エンジンのクランクシャフトであり、
前記回転体は、クランクロータであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転検出装置の信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−58476(P2009−58476A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228165(P2007−228165)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(300034529)株式会社フュートレック (16)
【Fターム(参考)】