回転検出装置
【課題】回転検出対象と一体回転する回転体の回転態様を当該回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、その取付対象への装着の前後で前記回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる回転検出装置を提供する。
【解決手段】舵角センサのハウジングの内部には、主動歯車24の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と、当該係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位する第1及び第2のストッパ部材42,43を設けた。係合位置に保持されている第1及び第2のストッパ部材42,43は、舵角センサのセンサ収容部15に対する装着に伴い係合位置から非係合位置へ向けて変位し、舵角センサのセンサ収容部15に対する装着状態においては非係合位置に保持される。
【解決手段】舵角センサのハウジングの内部には、主動歯車24の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と、当該係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位する第1及び第2のストッパ部材42,43を設けた。係合位置に保持されている第1及び第2のストッパ部材42,43は、舵角センサのセンサ収容部15に対する装着に伴い係合位置から非係合位置へ向けて変位し、舵角センサのセンサ収容部15に対する装着状態においては非係合位置に保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の回転検出対象の回転態様を検出する回転検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、例えば車両のステアリング装置には、ステアリングの操舵角を検出するための回転検出装置が組み込まれている。この種の回転検出装置としては、操舵角を絶対値で検出する絶対角検出方式及び操舵角を相対値で検出する相対角検出方式がある。さらに絶対角検出方式の回転検出装置には、光学式のものと、磁気式のものとに区分される。これら検出方式のいずれを採用するかは製品仕様等に応じて決定される。
【0003】
光学式のものとしては、例えば特許文献1に示されるような構成が知られている。この回転検出装置は、ステアリングシャフトに貫通状態で装着される回転板を備えるとともに、当該回転板における異なる半径の複数の円周上には、異なるパターンのスリット列が設けられている。また、回転板には、一対を一組とするスリット列と同数組の発光素子及び受光素子が各スリット列に対応するように配設されている。各光センサは、スリット列のスリットの有無に基づいて合計複数ビット(スリット列の列数と同数)のコードを出力する。前記スリット列は、当該コードが回転板の1回転中において重複しないように設けられているため、回転検出装置は、当該コードに基づいて、回転板の1回転中(360°以内)の回転角度を絶対値で検出することができる。
【0004】
一方、磁気式の回転検出装置としては、例えば特許文献2に示されるような構成が知られている。この回転角度検出装置は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車と、当該歯車に歯合する2つの従動歯車とを備えている。2つの従動歯車の歯数は異なっていることから、主動歯車の回転に伴う両従動歯車の回転角度も異なったものとなる。また両従動歯車には磁石が固定されるとともに、当該磁石に対向するように磁気センサが配設されている。磁気センサは、磁石から発せられる磁界の強度を検出するとともに、両従動歯車の回転に伴う磁石の磁束の方向の変化を検出する。回転検出装置は、両磁気センサからの検出信号に基づいて両従動歯車の回転角度を検出し、それら検出した回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求める。
【0005】
このように、絶対角検出方式の回転検出装置は、光学式及び磁気式のいずれのものであれ、回転板あるいは主動歯車の回転方向において設定された基準位置(絶対角0度)を原点とするこれらの回転態様を、回転検出対象であるステアリングシャフトの回転態様、すなわち中立位置を基準とする正逆両方向に複数回転されるステアリングホイールの回転情報として検出する。このため、絶対角検出方式の回転検出装置は、その絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置に組み込む必要がある。
【0006】
しかし、回転検出装置をステアリング装置へ装着する際に、回転板あるいは主動歯車が意図せず回転し、回転検出装置の前記基準位置とステアリングの中立位置との間にずれが生じるおそれがある。この場合には、ステアリングの実際の操舵角と回転検出装置を通じて得られる操舵角(ステアリングシャフトの回転角)との間にも前述したずれと同じだけずれが生じることから、ステアリングの操舵角の検出精度の低下が懸念される。なお、前述した相対角検出方式のものにおいては、こうした問題は生じることはない。
【0007】
そこで、例えば特許文献3に記載されるように、ピンを使用して回転板を回転規制状態に保持することにより同回転板を前記基準位置に保持するようにした光学式の回転検出装置が従来提案されている。この回転検出装置は、ピンにより回転板の回転が規制された状態でステアリング装置に組み込まれ、その組み込み作業が完了した際には前記ピンが引き抜かれることにより回転板の回転規制状態が解除される。この構成によれば、回転検出装置をステアリング装置へ装着する際に回転板が回転することはないため、回転検出装置はその絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置に組み込まれる。
【特許文献1】特開2002−98522号公報
【特許文献2】特表平11−500828号公報
【特許文献3】特開2006−17663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記特許文献3の回転検出装置では、前記回転板の回転を規制する際には、これを収容するハウジングの一面に固着されたピンホルダに前記ピンを挿入するとともに、このピンをハウジングの内部に配設された前記回転板の貫通孔に挿通し、さらに当該ハウジングの他面側へ突出させるようにしている。こうしたピンをハウジング及び回転板の各貫通孔に挿入する作業は難しく、且つ煩わしいものであった。また、前記ピンにより回転板の回転が規制された状態の回転検出装置をステアリング装置に装着した後には、装着前に取り付けたピンを引き抜く必要がある。すなわち、回転検出装置のステアリング装置に対する装着の前後においてピンの着脱作業が必要であり、組み立て作業効率の点では改善の余地があった。さらに、回転検出装置のステアリング装置への装着作業の際に、ピンが脱落するおそれもあり、この場合には、前述したような回転板の回転位置ずれが発生する。なお、引用文献3のピンによる回転板の固定方式を、引用文献2に示される磁気式の回転検出装置に適用することも考えられるところ、この場合であれ前述と同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、回転検出対象と一体回転する回転体の回転態様を当該回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、その取付対象への装着の前後で前記回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、 特定の取付対象に装着されるハウジングに内包された状態で、特定の軸線を中心として回転する回転検出対象に対して同軸状に且つ一体回転可能に設けられる回転体を備え、その回転方向における基準位置を原点とする当該回転体の回転態様を前記回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、前記ハウジングの内部には、前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合状態と前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合状態との間で状態変化するストッパ部材を設け、前記ストッパ部材は、前記ハウジングが前記取付対象に装着されていない非装着状態にあっては前記係合状態に弾性保持される一方、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴う当該取付対象の一部分との係合を通じて前記係合状態から前記非係合状態へ状態変化するとともに前記ハウジングが前記取付対象に装着された装着状態にあっては前記非係合位置に保持されるようにしたことをその要旨とする。
【0011】
この構成によれば、例えば回転検出装置の輸送時及び取付対象に対する組み付け時等のように、ハウジングが取付対象に装着されていない非装着状態に保持されている場合には、ストッパ部材が回転体の一部分に係合することにより当該回転体の回転が規制される。このため、回転検出装置はその基準位置を回転検出対象の基準位置に合致させた状態で取付対象に組み付けることができる。そして、ハウジングが取付対象に装着されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。したがって、回転検出装置の取付対象への装着の前後において、回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。またストッパ部材はハウジングの内部に収容されていることから、これが脱落することもない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、合成樹脂材料により一体形成されてなることをその要旨とする。この構成によれば、ストッパ部材の構成の簡素化が図られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記ハウジングの内部において前記回転体の一部分に係合する係合部材及び当該係合部材に連結されてその一部あるいは全部が前記ハウジングの外面から突出する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてハウジングの内方へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにしたことをその要旨とする。
【0014】
この構成によれば、ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い、一部あるいは全部がハウジングの外面から突出する作動部材がハウジングの内方へ押圧されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。前述したように、作動部材はハウジングの外面から突出していることから、当該作動部材には外力を加えやすい。このため、取付対象の一部分との係合を通じてストッパ部材を係合状態から非係合状態へ容易に状態変化させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記回転体の一部分に係合する係合部材及び前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い当該ハウジングの内部に挿入される前記取付対象の一部分に係合する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてその挿入方向へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ハウジングの取付対象に対する装着に伴いハウジングの内部に挿入される取付対象の一部分により、ストッパ部材を構成する作動部材が取付部材の一部分のハウジングに対する挿入方向へ押圧されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。ストッパ部材はその全体がハウジングの内部に収容されることから、好適に保護される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記係合状態として前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と前記非係合状態として前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位可能に設け、前記ハウジングの内部には、前記ストッパ部材を前記係合位置側へ常に付勢する付勢部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
【0018】
この構成によれば、ハウジングの取付対象に対する非装着状態にあっては、ストッパ部材は付勢部材による付勢力により回転体の一部分に係合する係合位置に好適に保持される。そしてハウジングの取付対象に対する装着に伴いストッパ部材は、付勢部材の付勢力に抗して、係合位置から非係合位置へ変位する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転検出対象と一体回転する回転体の回転態様を当該回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、その取付対象への装着の前後で前記回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を車両におけるステアリングの操舵角を絶対値で検出する舵角センサに具体化した第1の実施の形態を図1〜図5(a),(b)に基づいて説明する。
【0021】
図1に示されるように、箱体状をなす舵角センサ11は、図示しないステアリングホイールの背面側に配設される円柱状の回転コネクタ12と一体をなす箱体状のブラケット13に装着された状態で車両のステアリング装置(操舵装置)に取り付けられる。これら回転コネクタ12及びブラケット13並び舵角センサ11には、ステアリングホイールに一体回転可能に連結されるステアリングシャフト14が貫通される。
【0022】
回転コネクタ12は、ステアリングホイールに設けられる図示しないエアバッグを膨らませるインフレータへの通電部品であって、車両側に固定されるステータハウジング12a及びその中央に回転可能に支持された状態でステアリングシャフト14が一体回転可能に挿入されるロータ12bを備えている。当該ステータハウジング12aの内部において、その内周面とロータ12bの外周面との間には、可撓性を有する図示しないケーブルが巻回された状態で収容される。このケーブルは、ロータ12bの正逆回転を通じて、巻き締めあるいは巻き戻しが行われる。
【0023】
ブラケット13は、回転コネクタ12のステアリングホイールと反対側の部位に固定されている。当該ブラケット13の両端部、正確にはステアリングシャフト14を間に挟んで互いに反対側に位置する部分には、レバーコンビネーションスイッチを構成する図示しない2つの操作レバーの基端部が所定の支持構造を介して上下左右方向へ傾動操作可能に支持される。
【0024】
ブラケット13において、前記操作レバーが設けられる2つの側部と異なる他の側部には、舵角センサ11を収容可能としたセンサ収容部15が開口して形成されている。このセンサ収容部15の内側面には、舵角センサ11において互いに反対側に位置する2つの側面に設けられる2つの係合爪16,16に係合する図示しない被係合部が形成される。そしてセンサ収容部15にその外方から舵角センサ11が挿入された際には、その係合爪16,16が前記被係合部に係合することにより当該舵角センサ11のセンサ収容部15に対する抜け止めが図られる。
【0025】
なお、ステアリングシャフト14は、回転コネクタ12、ブラケット13及び舵角センサ11が一体に組み付けられた状態でこれらを貫通するように取り付けられる。
<舵角センサ>
次に、舵角センサ11の内部構造について詳細に説明する。図1に示されるように、舵角センサ11のハウジング21は、下面が開口した有蓋箱体状のアッパーハウジング22及び上面が開口した有底箱体状のロアハウジング23がこれらの開口部を突き合わせるかたちで組み合わせられることにより、全体として直方体状に形成されてなる。そして図2(a),(b)に示すように、このハウジング21の内部には、ステアリングシャフト14に一体回転可能に外嵌される主動歯車24、並びに当該主動歯車24に噛合する第1及び第2の従動歯車25,26がそれぞれ回転可能に支持されている。主動歯車24並びに第1及び第2の従動歯車25,26は、電気絶縁性を有する合成樹脂材料(ポリエチレン等の熱可塑性樹脂)により一体形成されている。
【0026】
主動歯車24において、ステアリングシャフト14が挿入される部分である挿通孔24aは、アッパーハウジング22及びロアハウジング23の当該挿通孔24aに対応する部位に形成された円形の開口部22a,23cを介して外部に露出している。これにより、ハウジング21の内部に収容された主動歯車24には、ステアリングシャフト14をハウジング21の外部から挿入可能となる。
【0027】
また、主動歯車24の表裏両面には、挿通孔24aを囲むように形成された壁である円筒状の支持部27,28が突設されている。主動歯車24は、これら支持部27,28がアッパーハウジング22及びロアハウジング23の開口部22a,23cに挿入された状態でアッパーハウジング22及びロアハウジング23に対して回転可能に支持されている。アッパーハウジング22の開口部22aに挿入される支持部27において、第1及び第2の従動歯車25,26と反対側の部位には、第1及び第2の切欠部27a,27bが当該主動歯車24の回転方向において所定間隔をおいて形成されている。
【0028】
したがって、ステアリングシャフト14が回転すると、これに外嵌される主動歯車24が一体的に回転し、それに伴って第1及び第2の従動歯車25,26もそれぞれ回転する。なお、第1及び第2の従動歯車25,26の歯数は、主動歯車24よりも小さく、且つ互いに異なる歯数に設定されている。このため、主動歯車24の回転量に対する第1及び第2の従動歯車25,26の回転量は、当該主動歯車24の回転量よりも大きく、またそれぞれ異なる。
【0029】
図3に示すように、ロアハウジング23の内底面に固定された電気絶縁性を有する基板31の上面には、第1及び第2の磁気センサ32,33が設けられている。第1及び第2の磁気センサ32,33は、それぞれブリッジ状に接続された4つの異方性磁気抵抗素子(AMR素子)が単一のICチップとして集積化されたものである。この異方性磁気抵抗素子は、異方性磁気抵抗効果を有するNi−Co等の強磁性体からなり、その抵抗値は与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、第1及び第2の磁気センサ32,33はこれらに与えられる磁界の変化に応じて前記ブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。
【0030】
基板31の上面には、電気絶縁性を有する合成樹脂材料により板状に一体形成された軸受け部材34が固定されている。軸受け部材34において第1及び第2の磁気センサ32,33に対応する部位には、2つの透孔34a,34aが形成されている。これら透孔34a,34aを介して、第1及び第2の磁気センサ(正確には、これらの感磁面)32,33は、ハウジング21の内部に露出している。また、軸受け部材34の上面において、2つの透孔34a,34aを囲むように形成された筒状の2つの支持部34b,34bには、第1及び第2の従動歯車25,26の下部に設けられた下部軸部25a,26aが摺動回転可能に支持されている。これら下部軸部25a,26aには、例えばネオジウム及びサマリウムからなる直方体状の永久磁石35,36が、第1及び第2の磁気センサ32,33(正確には、それらの感磁面となる上面)に対向するように設けられている。第1及び第2の磁気センサ32,33には、永久磁石35,36から発せられる所定強度の磁界が常に付与される。なお、第1及び第2の従動歯車25,26の上部に設けられた上部軸部25b,26bは、アッパーハウジング22の内頂面に形成された支持部37a,37bに摺動回転可能に支持されている。
【0031】
そして前述したように、ステアリングホイールの操作を通じて主動歯車24が回転した際には第1及び第2の従動歯車25,26も回転するところ、これら第1及び第2の従動歯車25,26の回転は次のようにして検出される。すなわち、図4に模式的に示されるように、第1及び第2の磁気センサ32,33は、第1及び第2の従動歯車25,26の回転に伴う永久磁石35,36から発せられる磁界の方向の変化を検出する。そして第1及び第2の磁気センサ32,33は、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2に応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれマイクロコンピュータ38に出力する。
【0032】
マイクロコンピュータ38は、図示しないCPU(中央演算装置)、A/D変換器、ROM及びRAM等から構成されている。ROMには、舵角センサ11の全体を統括的に制御するための各種の制御プログラム及び各種のデータが予め格納されている。制御プログラムとしては、例えば回転角度算出プログラムがある。この回転角度検出プログラムはA/D変換器によりデジタル変換された第1及び第2の磁気センサ32,33からの正弦信号及び余弦信号に基づいてステアリングシャフト14の回転角度θ(正確には、主動歯車24の回転角度)を算出するためのプログラムである。RAMは、ROMの制御プログラムを展開してCPUが各種処理を実行するためのデータ記憶領域、すなわち作業領域である。そして、マイクロコンピュータ38はROMに格納された回転角度算出プログラムに従って、主動歯車24の回転角度をステアリングシャフト14の回転角度θとして算出する。
【0033】
マイクロコンピュータ38は、第1及び第2の磁気センサ32,33からそれぞれ出力される2つの信号、すなわち正弦信号及び余弦信号の逆正接を求め、この求められた逆正接の値に基づき第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2を算出する。ここで、前述したように、第1及び第2の従動歯車25,26の歯数は異なっていることから、主動歯車24の回転に伴う第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2も異なる値となる。このため、ステアリングホイールがその中立位置(ステアリング操作角度=0°)にある状態で回転操作された場合、当該操作角度の変化に対して、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2の差は直線的に変化する。すなわち、ステアリングシャフト14の回転角度θと、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2の差とは比例関係にあることから、当該回転角度φ1,φ2の差は主動歯車24、ひいてはステアリングシャフト14の回転角度θに対して固有の値となる。このため、当該回転角度φ1,φ2の差に基づいて主動歯車24、すなわちステアリングシャフト14の回転角度θ(絶対値)の即時検出が可能となる。
【0034】
<ストッパ機構>
前述したように、絶対角検出方式の舵角センサ11は、主動歯車24の回転方向において設定された基準位置(絶対角0度)を原点とする当該主動歯車24の回転態様を、回転検出対象であるステアリングシャフト14の回転態様、すなわち中立位置を基準とする正逆両方向に複数回転されるステアリングホイールの回転情報として検出する。このため、絶対角検出方式の舵角センサ11は、その絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置(ここでは、回転コネクタ12)に組み込む必要がある。
【0035】
しかし、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着する際には主動歯車24が意図せず回転することが想定されるところ、この場合には舵角センサ11の前記基準位置とステアリングの中立位置との間にずれが生じた状態で舵角センサ11が回転コネクタ12に装着されるおそれがある。そしてこの場合には、ステアリングの実際の操舵角と舵角センサ11を通じて得られる操舵角(ステアリングシャフト14の回転角度)との間にも前述したずれと同じ分だけずれが生じる。
【0036】
そこで、図5(a)に示されるように、舵角センサ11には、回転コネクタ12に対する非装着状態において、主動歯車24を回転規制状態に保持することにより当該舵角センサ11をその絶対角0度となる前記基準位置に保持するストッパ機構41が設けられている。同図に示されるように、ストッパ機構41は、ハウジング21の内部において、主動歯車24の第1及び第2の従動歯車25,26と反対側の部位に回転可能に支持された第1及び第2のストッパ部材42,43を備えてなる。第1及び第2のストッパ部材42,43は、主動歯車24における第1及び第2の従動歯車25,26と反対側に位置する部位を間に挟むようなかたちで配設されている。
【0037】
<第1のストッパ部材>
第1のストッパ部材42は、ハウジング21の内部において回転可能に支持される軸部51、及び当該軸部51に対し互いに反対側へ延設された第1及び第2の腕部52,53を備えてなる。第1の腕部52は主動歯車24に近接する方向へ、また第2の腕部53は主動歯車24から離間する方向へ延設されている。第1及び第2の腕部52,53は、これらの軸線が互いに鈍角をなすように形成されている。第1の腕部52は、第1のストッパ部材42が後述する所定の回転範囲内で回転するに際して、主動歯車24に干渉しないように設けられている。また、第2の腕部53の長さは、第1の腕部52よりも大きく設定されている。なお、第1及び第2の腕部52,53の長さは、センサ収容部15の形状又はサイズ等に応じて適宜調節される。
【0038】
第1の腕部52の先端部において、アッパーハウジング22側(紙面手前側)の側面には、当該第1の腕部52の延びる方向に対して直交する係合部材54が主動歯車24側へ突設されている。この係合部材54(正確には、その下面)は、主動歯車24の支持部27が突設された側面の上方に位置し、当該側面及び主動歯車24の歯に干渉しないように設けられている。そして係合部材54は、主動歯車24の支持部27に形成された第1の切欠部27aに挿入されている。
【0039】
第2の腕部53の先端部は、ハウジング21、正確にはロアハウジング23の側壁において当該第2の腕部53に対応する部位に形成された貫通孔23aを介して外部に露出している。ハウジング21の外部において、第2の腕部53の先端部には、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向(図中上方)へ延びる作動部材55が設けられている。作動部材55は、第2の腕部53の軸線に対して鈍角をなして若干内側(図5(a)中の左側)へ傾斜している。この作動部材55の先端部には、ハウジング21と反対側(図5(a)中の右側)へ延びる当接部56が形成されている。
【0040】
そしてこのように構成された第1のストッパ部材42の軸部51には捻りコイルばね57が装着されている。この捻りコイルばね57の一端は、第1のストッパ部材42の一部分、すなわち係合部材54の第1の切欠部27aに挿入される側の端部と反対側の端部に、同じく他端は、ロアハウジング23の内底面において軸部51の近傍に形成された係止突部58に係止されている。
【0041】
そしてこの捻りコイルばね57の弾性力により第1のストッパ部材42は、軸部51を中心として反時計方向へ常時付勢されている。この第1のストッパ部材42の反時計方向への回転は、図5(a)に示されるように、係合部材54が第1の切欠部27aにおける第2の切欠部27bと反対側の内側面、すなわち主動歯車24の周方向において第2の切欠部27bに対して遠い方の内側縁に係合することにより規制される。すなわち、第1のストッパ部材42の係合部材54が第1の切欠部27aに係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の反時計方向への回転が規制される。
【0042】
なお、第1のストッパ部材42の反時計方向への回転は、次のようにして規制することも可能である。すなわち、図5(a),(b)に二点鎖線で示されるように、ロアハウジング23の内底面において、第1の腕部52と主動歯車24との間には第1の腕部52を係止する係止部材59を形成する。この係止部材59に第1の腕部52が係止されることにより第1のストッパ部材42の反時計方向への回転が規制される。またこのとき、係合部材54は、第1の切欠部27aに対して非係合状態に保持されるとともに、主動歯車24が反時計方向へ僅かに回転した際に第1の切欠部27aに係合するように設ける。
【0043】
そしてこのように反時計方向への回転が規制された第1のストッパ部材42の当接部56に対し舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与された際には、第1のストッパ部材42は、捻りコイルばね57の弾性力に抗して軸部51を中心として時計方向へ回転する。この第1のストッパ部材42の時計方向への回転は、図5(b)に示されるように、第2の腕部53がロアハウジング23の貫通孔23aの内側面に係合することにより規制される。そしてこの第2の腕部53が貫通孔23aに係合した状態において、係合部材54の先端部は主動歯車24の支持部27の外側に位置している。すなわち、係合部材54は第1の切欠部27aとの係合が解除された非係合状態となる。
【0044】
なお、第1のストッパ部材42の回転に伴い係合部材54が前記係合状態と前記非係合状態との間で状態変位する際において、当該係合部材54と第1の切欠部27aとの間で干渉が生じないように、当該係合部材54及び第1の切欠部27aは設けられている。
【0045】
<第2のストッパ部材>
一方、第2のストッパ部材43は、前述した第1のストッパ部材42と同様の構成とされている。すなわち、第2のストッパ部材43は、ハウジング21の内部において回転可能に支持される軸部61、及び当該軸部61に対し互いに反対側へ延設された第1及び第2の腕部62,63を備えてなる。第1の腕部62は主動歯車24に近接する方向へ、第2の腕部63は主動歯車24から離間する方向へ延設されている。第1及び第2の腕部62,63は、これらの軸線が互いに鈍角をなすように形成されている。第1の腕部62は、第2のストッパ部材43が後述する所定の回転範囲内で回転するに際して、主動歯車24に干渉しないように設けられている。また、第2の腕部63の長さは、第1の腕部62よりも大きく設定されている。なお、第1及び第2の腕部62,63の長さは、センサ収容部15の形状又はサイズ等に応じて適宜調節される。
【0046】
第1の腕部62の先端部において、アッパーハウジング22側の側面には、当該第1の腕部62の延びる方向に対して直交する係合部材64が主動歯車24側へ突設されている。この係合部材64(正確には、その下面)は、主動歯車24の支持部27が突設された側面の上方に位置し、当該側面及び主動歯車24の歯に干渉しないように設けられている。そして係合部材64は、主動歯車24の支持部27に形成された第2の切欠部27bに挿入されている。
【0047】
第2の腕部63の先端部は、ハウジング21、正確にはロアハウジング23の側壁において当該第2の腕部63に対応する部位に形成された貫通孔23bを介して外部に露出している。ハウジング21の外部において、第2の腕部63の先端部には、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向へ延びる作動部材65が設けられている。作動部材65は、第2の腕部63の軸線に対して鈍角をなして若干内側(図5(a)中の右側)へ傾斜している。この作動部材65の先端部には、ハウジング21と反対側(図5(a)中の左側)へ延びる当接部66が形成されている。
【0048】
そしてこのように構成された第2のストッパ部材43の軸部61には捻りコイルばね67が装着されている。この捻りコイルばね67の一端は、第2のストッパ部材43の一部分、すなわち係合部材64の第2の切欠部27bに挿入される側の端部と反対側の端部に、同じく他端は、ロアハウジング23の内底面において軸部61の近傍に形成された係止突部68に係止されている。
【0049】
そしてこの捻りコイルばね67の弾性力により第2のストッパ部材43は、軸部61を中心として時計方向へ常時付勢されている。この第2のストッパ部材43の時計方向への回転は、図5(a)に示されるように、係合部材64が第2の切欠部27bにおける第1の切欠部27aと反対側の内側面、すなわち主動歯車24の周方向において第1の切欠部27aに対して遠い方の内側縁に係合することにより規制される。すなわち、第2のストッパ部材43の係合部材64が第2の切欠部27bに係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の時計方向への回転が規制される。
【0050】
なお、第2のストッパ部材43の時計方向への回転は、次のようにして規制することも可能である。すなわち、図5(a),(b)に二点鎖線で示されるように、ロアハウジング23の内底面において、第1の腕部62と主動歯車24との間には第1の腕部62を係止する係止部材69を形成する。この係止部材69に第1の腕部62が係止されることにより第2のストッパ部材43の時計方向への回転が規制される。またこのとき、係合部材64は、第2の切欠部27bに対して非係合状態に保持されるとともに、主動歯車24が時計方向へ僅かに回転した際に第2の切欠部27bに係合するように設ける。
【0051】
そしてこのように時計方向への回転が規制された第2のストッパ部材43の当接部66に対し舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与された際には、第2のストッパ部材43は、捻りコイルばね67の弾性力に抗して軸部61を中心として反時計方向へ回転する。この第2のストッパ部材43の反時計方向への回転は、図5(b)に示されるように、第2の腕部63がロアハウジング23の貫通孔23bの内側面に係合することにより規制される。そしてこの第2の腕部63が貫通孔23bに係合した状態において、係合部材64の先端部は主動歯車24の支持部27の外側に位置している。すなわち、係合部材64は第2の切欠部27bとの係合が解除された非係合状態となる。
【0052】
なお、第2のストッパ部材43の回転に伴い係合部材64が前記係合状態と前記非係合状態との間で状態変位する際において、当該係合部材64と第2の切欠部27bとの間で干渉が生じないように、当該係合部材64及び第2の切欠部27bは設けられている。
【0053】
以上のように、第1及び第2のストッパ部材42,43は、これらの係合部材54,64が第1及び第2の切欠部27a,27bに係合する図5(a)に示される係合位置と、同じく第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合が解除される図5(b)に示される非係合位置との間を回転変位する。そして、第1及び第2のストッパ部材42,43の双方が非係合位置にある場合にのみ、主動歯車24は回転可能となる。
【0054】
なお、主動歯車24の下面に設けられた支持部28に、前述した第1及び第2の切欠部27a,27bに相当する係合構造を設け、この係合構造に対して第1及び第2のストッパ部材42,43を係合させることにより主動歯車24の回転を規制するようにしてもよい。
【0055】
<実施の形態の作用>
次に、前述のように構成された舵角センサ11をブラケット13のセンサ収容部15に装着する際の動作を説明する。なお、ブラケット13は、回転コネクタ12に予め取り付けられている。また、回転コネクタ12のロータ12bは、図示しないロック機構によりその回転中立位置に保持されている。
【0056】
さて、舵角センサ11は、第1及び第2のストッパ部材42,43が図5(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちこれらの係合部材54,64が主動歯車24の支持部27に形成された第1及び第2の切欠部27a,27bに係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構41によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態でセンサ収容部15に挿入される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0057】
舵角センサ11がセンサ収容部15に挿入されると、第1及び第2のストッパ部材42,43の当接部56,66がセンサ収容部15の内底面15aに当接する。そして舵角センサ11がセンサ収容部15の内方へさらに押し込まれると、これに伴い第1のストッパ部材42は捻りコイルばね57の弾性力に抗して時計方向へ、第2のストッパ部材43は捻りコイルばね67の弾性力に抗して反時計方向へ回転する。
【0058】
そして舵角センサ11の先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで当該舵角センサ11が挿入されたとき、第1及び第2のストッパ部材42,43は、図5(b)に示される非係合位置に達する。すなわち、係合部材54,64の第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合状態は、これらが第1及び第2の切欠部27a,27bに対して係合する係合状態から、これらの第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合が解除される非係合状態へと変化する。したがって、主動歯車24は回転可能になる。
【0059】
またこのとき、舵角センサ11の挿入方向に直交する方向において互いに反対側に位置する2つの側面に設けられた2つの係合爪16,16が、センサ収容部15の内側面に設けられる図示しない被係合部に係合する。これにより舵角センサ11のセンサ収容部15に対する抜け止めが図られる。以上で、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着作業は完了となる。
【0060】
なお、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着に伴い、主動歯車24の上部に設けられる図示しない係合構造が回転コネクタ12のロータ12b下部に設けられる図示しない被係合構造に係合することにより、主動歯車24とロータ12bとは一体回転可能に連結される。また、前述したように、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着時には、主動歯車24及びロータ12bの双方がロックされた状態に保持されることから、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する装着完了時において、舵角センサ11の絶対角0度となる基準位置と回転コネクタ12のロータ12bの回転中立位置とは合致した状態に保持される。
【0061】
このように、舵角センサ11は、センサ収容部15に挿入して装着するだけで、ストッパ機構41による主動歯車24の回転規制状態が自動的に解除されることから、舵角センサ11のブラケット13に対する組み立て作業は簡単なものとなる。例えば、ピンを使用して主動歯車24のハウジング21に対する相対回転を規制することも考えられるものの、この場合には舵角センサ11のセンサ収容部15に対する組み付けの前後において当該ピンの着脱作業が必要となる。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に組み付ける際に当該ピンが脱落することも懸念される。本実施の形態によれば、ストッパ機構41がハウジング21の内部に組み込まれていることからこのような問題はなく、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する装着の前後において、主動歯車24のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、係合部材54,64を主動歯車24の支持部27に形成される第1及び第2の切欠部27a,27bに係合させることにより、主動歯車24の回転を規制するようにしたが、次のような構成を採用してもよい。すなわち、係合部材54,64を主動歯車24の歯に係合させることにより主動歯車24の回転を規制する。この場合、これら係合部材54,64が主動歯車24の歯に好適に係合するように、その形状等を設定する。
【0063】
また第1及び第2のストッパ部材42,43のいずれか一方を省略するようにしてもよい。このようにした場合であれ、主動歯車24の正逆回転が規制される。
さらに、センサ収容部15の形状によっては、第1及び第2のストッパ部材42,43における作動部材55,65及び当接部56,65を省略することも可能である。すなわち、舵角センサ11をセンサ収容部15に挿入した際に、第2の腕部53,63(正確には、その外端部)とセンサ収容部15の一部分との係合を通じて、当該第2の腕部53,63に舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与されればよい。第2の腕部53,63に係合するセンサ収容部15の一部分として、例えばセンサ収容部15の内部に、舵角センサ11の挿入に伴い第2の腕部53,63に係合する図示しない係合構造を設ける。
【0064】
<実施の形態の効果>
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)舵角センサ11の輸送時及びブラケット13に対する組み付け時には、第1及び第2のストッパ部材42,43が主動歯車24の一部分に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制される。そして、舵角センサ11のセンサ収容部15への取り付けに伴い、第1及び第2のストッパ部材42,43の主動歯車24に対する係合が自動的に解除される。このため、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。ひいては舵角センサ11のブラケット13に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。また、第1及び第2のストッパ部材42,43は、ハウジング21の内部に組み込まれるかたちで設けられるので、舵角センサ11の輸送時あるいはブラケット13への取り付け作業時に、これら第1及び第2のストッパ部材42,43が脱落することはなく、主動歯車24を確実にロック状態、すなわちその回転が規制された状態に維持することができる。
【0065】
(2)作動部材55,65はハウジング21の外面から突出していることから、当該作動部材55,65には外力を加えやすい。このため、センサ収容部15の一部分である内底面との係合を通じて第1及び第2のストッパ部材42,43を係合状態から非係合状態へ容易に状態変化させることができる。
【0066】
(3)第2の腕部53,63の長さは、第1の腕部52,62よりも大きくした。これにより、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着する際に、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力、すなわち舵角センサ11のセンサ収容部15に対する押し込み力の低減化が図られる。このため、舵角センサ11を、より少ない力で容易にセンサ収容部15へ装着することができる。これは、いわゆる梃子の原理を応用したものであって、作動部材55,65(正確には、その先端の当接部56,66)が力点に、軸部51,61が支点に、係合部材54,64が作用点に相当する。
【0067】
なお、第1の腕部52,62及び第2の腕部53,63の長さを調節することにより、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力、すなわち舵角センサ11のセンサ収容部15に対する押し込み力を調節することが可能である。例えば、第1の腕部52,62を短くするほど、また第2の腕部53,63を長くするほど、少ない力で第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させることができる。逆に、第1の腕部52,62を長くするほど、また第2の腕部53,63を短くするほど、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力は大きくなる。
【0068】
(4)第1及び第2のストッパ部材42,43は、合成樹脂材料により一体形成されていることから、これら第1及び第2のストッパ部材42,43の構造、ひいてはストッパ機構41の構成の簡素化が図られる。
【0069】
(5)第1及び第2のストッパ部材42,43(正確には、これらの係合部材54,64)は、主動歯車24の歯以外の部位、すなわち支持部27の第1及び第2の切欠部27a,27bに係合させるようにした。主動歯車24の歯を保護する等の観点で、当該歯以外の部分で主動歯車24の回転を規制することが求められる場合も想定されるところ、このような要求に対応することができる。
【0070】
なお、前述したように主動歯車24の歯の部分に係合部材54,64を係合させることも可能であるところ、これら係合部材54,64の主動歯車24に対する係合部位を、歯の部分に設定するのか、あるいは歯以外の部分に設定するのかは、舵角センサ11の製品仕様等に応じて設定される。係合部材54,64の主動歯車24に対する係合部位を、歯の部分に設定する場合には、主動歯車24に係合部材54,64を係合させる部位、すなわち第1及び第2の切欠部27a,27bを形成する必要がないことから、主動歯車24の構造の簡素化が図られる。
【0071】
(6)第1及び第2のストッパ部材42,43の軸部51,61に捻りコイルばね57,67を装着し、この弾性力により第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置に弾性保持するようにした。このため、ストッパ機構41の構成を複雑化することなく、係合部材54,64の主動歯車24に対する好適な係合力を得ることができる。
【0072】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、舵角センサのステアリング装置に対する取り付けの態様、及び主動歯車の回転を規制するストッパ機構の構成の点で前記第1の実施の形態と主に異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図6に示すように、本実施の形態において、舵角センサ11は、回転コネクタ12と、当該回転コネクタ12のステアリングホイールと反対側の側面である下面(図6中の左側の側面)に固定されるブラケット13とにより挟持されている。正確には、舵角センサ11は、そのハウジング21を構成するアッパーハウジング22を回転コネクタ12側へ向けて当該回転コネクタ12の下面に位置決め状態で固定され、この固定された舵角センサ11を下方から覆うようにブラケット13が当該舵角センサ11のハウジング21に固定される。そしてこの舵角センサ11のハウジング21の内部には、前記第1の実施の形態と同様に、当該舵角センサ11の回転コネクタ12に対する装着の前後で、主動歯車24の回転を規制する回転規制状態と、主動歯車24の回転を許容する回転許容状態との間において状態が変化するストッパ機構81が設けられている。
【0074】
図7(a)に示すように、このストッパ機構81は、主動歯車24の軸線方向(図中の上下方向)において変位するストッパ部材82を備えてなる。ストッパ部材82は、合成樹脂材料により全体としてL字状に形成されている。ストッパ部材82は、主動歯車24の下面に対向配置されてその半径方向へ延びる矩形平板状の係合部材83、及び係合部材83の外端部に立設された矩形平板状の腕部84、及び腕部84の上端部に設けられた直方体状の作動部材85を備えてなる。
【0075】
係合部材83は、その内端部、すなわち腕部84が形成された端部と反対側の端部が、主動歯車24の下面側の支持部28に切欠形成された係合凹部28aに対し上下方向において対応するように、且つ、挿通孔24aの内周面から突出しないように形成されている。また、係合部材83は、その外端部が主動歯車24の歯先よりも外側に位置するように形成されている。そして、この係合部材83の主動歯車24の歯先よりも外側に位置する部分に、前記腕部84が主動歯車24の歯先に対向した状態で上方へ延びるように形成されている。
【0076】
そしてこの腕部84の上端部に設けられた作動部材85は、その主動歯車24側の側面が腕部84の主動歯車24側の側面に対して段差のない状態、すなわち面一とされるとともに、腕部84に対して主動歯車24と反対側へ突出するかたちで設けられている。また、作動部材85は、その上部がアッパーハウジング22に形成された開口部22bを介して外部に突出するように設けられている。
【0077】
さらに作動部材85の下面と当該下面に対向するロアハウジング23の内底面との間には、圧縮コイルばね86が設けられている。圧縮コイルばね86の弾性力により、ストッパ部材82は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材82の上方への変位は、作動部材85における主動歯車24と反対側の側面の下部に突設された係合部85aが、アッパーハウジング22の内頂面における開口部22bの周縁部に内側から係合することにより規制される。この状態において、係合部材83は、図7(a)に実線で示されるように、主動歯車24の支持部28に形成された係合凹部28aに進入した状態に保持される。すなわち、係合部材83が係合凹部28aに対して主動歯車24の回転方向において係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の回転が規制される。
【0078】
なお、圧縮コイルばね86の両端部には、作動部材85の下面に形成された突部87、及びロアハウジング23の内底面に形成された突部88が挿入されることにより、ハウジング21の内部における位置決めがなされている。
【0079】
作動部材85の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位に対し、上方から所定の外力が付与された際には、ストッパ部材82は、圧縮コイルばね86の弾性力に抗して下方へ変位する。そして図7(a)に二点鎖線で示されるように、作動部材85の上面がアッパーハウジング22の上面に対して面一になる位置まで当該作動部材85が下方へ変位したときに、係合部材83は主動歯車24の係合凹部28aの下方に位置する。すなわち、係合部材83は、係合凹部28aとの係合が解除された非係合状態となる。なお、ロアハウジング23において、係合部材83に対応する部位には、当該係合部材83の下方への変位を許容する逃げ部89が開口して形成されている。
【0080】
なお、アッパーハウジング22の開口部22bの内形形状を作動部材85の外形形状とほぼ同じとし、ストッパ部材82の上下方向への変位が作動部材85を介して案内されるようにすることも可能である。すなわちこの場合、アッパーハウジング22の開口部22bが形成された部位は、ストッパ部材82の上下方向への変位を案内する案内手段として機能する。また、ハウジング21の内部にストッパ部材82の上下方向への変位を案内する構成を別途設けるようにしてもよい。このような構成を採用した場合には、ストッパ部材82の上下方向への変位が円滑に行われる。
【0081】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材82が図7(a)に実線で示される係合位置に保持された状態、すなわち係合部材83が主動歯車24の支持部28に形成された係合凹部28aに係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、回転コネクタ12に装着される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構81によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態で回転コネクタ12に装着される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0082】
そして前述したように、舵角センサ11は、そのアッパーハウジング22の上面を回転コネクタ12の下面に対して押し付けるようにして取り付けられる。舵角センサ11のアッパーハウジング22が回転コネクタ12の下面に押し付けられるのに伴い、ストッパ部材82の作動部材85にはその上方から押圧力が作用し、ストッパ部材82の全体が下方へ変位する。ストッパ部材82は、アッパーハウジング22の上面が回転コネクタ12の下面に密接されるまで下方へ変位し、図7(a)に二点鎖線で示される非係合位置に至る。すなわち、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着することにより、ストッパ部材82は作動部材85のアッパーハウジング22の上面に対する突出量の分だけ下方へ変位し、これにより、図7(a)に実線で示される係合位置から同じく二点鎖線で示される非係合位置へ変位する。この結果、主動歯車24の回転が許容される。
【0083】
したがって、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様に、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業は簡単なものとなる。さらに、ストッパ部材82は、ハウジング21の内部に組み込まれるかたちで設けられるので、舵角センサ11の輸送時あるいは回転コネクタ12への取り付け作業時に、これらストッパ部材82が脱落することはなく、主動歯車24を確実にロック状態、すなわちその回転が規制された状態に維持することができる。
【0084】
なお、本実施の形態のストッパ機構81を備えた舵角センサ11は、前記第1の実施の形態に示されるように、ブラケット13のセンサ収容部15(図1参照)に装着することも可能である。この場合、作動部材85の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位には、例えば図7(b)に示されるように、センサ収容部15に対する舵角センサ11の挿入方向へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面90を形成する。そして舵角センサ11のセンサ収容部15への挿入に伴い、作動部材85の傾斜面90がセンサ収容部15の一部分、例えば当該センサ収容部15の内部に設けられる係合構造に対して相対的に係合することにより、ストッパ部材82の全体が下方へ変位するように構成する。このようにすれば、本実施の形態のストッパ機構81を備えた舵角センサ11をセンサ収容部15に装着することにより、ストッパ部材82を図7(a)に実線で示される係合位置から同じく二点鎖線で示される非係合位置へ変位させることができる。
【0085】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ部材を主動歯車の歯に係合させるようにした点で、前記第2の実施の形態と異なる。
【0086】
図8に示されるように、ハウジング21(同図では図示略)の内部には、主動歯車24の回転を規制するストッパ機構91が当該主動歯車24の側方に近接して配設されている。このストッパ機構91のケース92は、上部が開口した有底角筒状に形成され、ハウジング21の内部に固定されている。そしてこのケース92の内部には、合成樹脂材料により一体形成されたストッパ部材93が上下方向へ変位可能に設けられている。図9(a)に示すように、ストッパ部材93の直方体状の本体94において、その主動歯車24側の側面には2つの係合部材95,96が主動歯車24の回転方向に沿う方向において所定の間隔をおいて突設されている。
【0087】
本体94の主動歯車24側の一部分及びその側面に設けられた2つの係合部材95,96は、ケース92の主動歯車24側の側壁に形成された開口部97を介して主動歯車24側へ突出している。そして2つの係合部材95,96は、これらの間に主動歯車24の1つの歯が介在可能となるように、換言すれば主動歯車24の各歯の間に介在可能となるように、ケース92の主動歯車24側の側面からの突出量が設定されている。また、2つの係合部材95,96は、図10に示されるように、主動歯車24の各歯に噛み合うかたちで係合するように、それらの形状が設定されている。さらに、図9(a)に示されるように、2つの係合部材95,96の上部には、これらの先端側、すなわち主動歯車24側へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面95a,96aが形成されている。
【0088】
また、本体94の上部には、直方体状の作動部材98が立設されている。この作動部材98は、図8に二点鎖線で示されるアッパーハウジング22の開口部22bを介して外部に突出するように設けられている。
【0089】
さらに、図9(a)に示されるように、本体94において、主動歯車24の回転方向に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面には、上下方向へ延びる2つの突条99a,99bが形成されている。また、本体94の係合部材95,96が形成された側面と反対側の側面にも上下方向へ延びる突条99cが形成されている。これら突条99a,99b,99cは、ケース92の側壁において、これら突条99a,99b,99cに対応して形成された3つの案内溝100a,100b,100c内に上下方向において摺動可能に嵌合されている。この構成により、ストッパ部材93の上下方向への変位が円滑に行われる。
【0090】
そして図9(b)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間には、圧縮コイルばね101が設けられている。圧縮コイルばね101の弾性力により、ストッパ部材93は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材93の上方への変位は、本体94の上面がケース92の内側面の上部に形成された2つの係合突部102a,102bに係合することにより規制される。ここでは、これら係合突部102a,102bは、ケース92において、主動歯車24の回転方向に沿う方向において互いに対向する2つの内側面の上部に形成されている。
【0091】
本体94の上面がケース92の2つの係合突部102a,102bに係合した状態において、ストッパ部材93の2つの係合部材95,96は、図10及び図11(a)に示されるように、主動歯車24の各歯の間に進入し噛み合った状態に保持される。すなわち、係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合することにより当該主動歯車24の回転が規制される。なお、圧縮コイルばね101の両端部には、本体94の下面に形成された突部103、及びケース92の内底面に形成された突部104が挿入されることにより、ケース92の内部における位置決めがなされている。
【0092】
そして作動部材98の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位に対し、上方から所定の外力が付与された際には、ストッパ部材93は、圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ変位する。図11(b)に示されるように、作動部材98の上面がアッパーハウジング22の上面に対して面一になる位置まで当該作動部材98が下方へ変位したときに、係合部材95,96は主動歯車24の各歯の下方に位置する。すなわち、係合部材95,96は、主動歯車24の歯との係合が解除された非係合状態となる。
【0093】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材93が図11(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわち係合部材95,96が主動歯車24の各歯に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、回転コネクタ12に装着される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構91によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態で回転コネクタ12に装着される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0094】
そして前述したように、舵角センサ11は、そのアッパーハウジング22の上面を回転コネクタ12の下面に対して押し付けるようにして取り付けられるところ、これに伴いストッパ部材93の作動部材98にはその上方から押圧力が作用し、ストッパ部材93の全体が下方へ変位する。ストッパ部材93は、アッパーハウジング22の上面が回転コネクタ12の下面に密接されるまで下方へ変位し、図11(b)に示される非係合位置に至る。すなわち、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着することにより、ストッパ部材93は、作動部材98のアッパーハウジング22の上面に対する突出量の分だけ下方へ変位し、これにより、図11(a)に示される係合位置から図11(b)に示される非係合位置へ変位する。
【0095】
したがって、本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様に、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業は簡単なものとなる。さらに、本実施の形態のストッパ機構91は、ストッパ部材93及び圧縮コイルばね101が単一のケース92の内部に組み込まれてなる単一のユニットとして構成されている。このため、ストッパ部材93及び圧縮コイルばね101をハウジング21の内部に直接的に組み付けるようにした場合に比べ、ストッパ機構91のハウジング21の内部への取り付け作業が簡単になる。
【0096】
なお、本実施の形態では、2つの係合部材95,96を主動歯車24の歯に係合させるようにしたが、一方を省略してもよい。逆に、3つあるいはそれ以上の係合部材を設けるようにしてもよい。この場合、3つあるいはそれ以上の係合部材は、主動歯車24の各歯にかみ合いやすくするために、主動歯車24の外形形状に応じて曲線状に配設することが好ましい。また本実施の形態では、単一のストッパ機構91により主動歯車24の回転を規制するようにしたが、複数のストッパ機構91により主動歯車24の回転を規制するようにしてもよい。
【0097】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、舵角センサのステアリング装置に対する取り付けの態様を前記第1の実施の形態と同様にした点、及びこれに伴いストッパ部材の構造を変更した点において、前記第3の実施の形態と主に異なる。したがって、前記第1及び第3の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0098】
本実施の形態の舵角センサ11は、図1に示されるように、ステアリングホイールの背面側に配設される円柱状の回転コネクタ12と一体をなす箱体状のブラケット13のセンサ収容部15に側方から装着された状態で車両のステアリング装置(操舵装置)に取り付けられる。また、本実施の形態の舵角センサ11のハウジング21に収容されるストッパ機構は、基本的には図8あるいは図9に示される前記第3の実施の形態のストッパ機構91と同様の構成を備えてなる。
【0099】
すなわち、図12に示されるように、本実施の形態のストッパ機構110のストッパ部材111は、第3の実施の形態と同様に本体94を有してなり、この上面(紙面手前側)には、台形断面を有する作動部材112が設けられている。詳述すると、図13(a)に示すように、作動部材112において、主動歯車24と反対側の部位には、上部へ向かうにつれて主動歯車24側へ傾斜する傾斜面112aが形成されている。また作動部材112の上部にはアッパーハウジング22の内頂面に当接する平面として当接面112bが形成されている。
【0100】
そして図13(a)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間に設けられた圧縮コイルばね101の弾性力により、ストッパ部材111は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材111の上方への変位は、作動部材112の上面でもある当接面112bがアッパーハウジング22の内頂面に係合することにより規制される。そしてこの状態において、2つの係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合するように、作動部材112の本体94の上面からの突出量が設定されている。2つの係合部材95,96は、図12及び図13(a)に示されるように、主動歯車24の各歯の間に進入し噛み合った状態に保持される。
【0101】
なお、本実施の形態においては、作動部材112の一部をハウジング21の外方へ突出させる必要がないことから、第3の実施の形態におけるアッパーハウジング22の開口部22bは省略されている。
【0102】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材111が図13(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちその係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構110によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態でセンサ収容部15に挿入される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0103】
図13(a)に示されるように、舵角センサ11のセンサ収容部15への挿入に伴い、当該センサ収容部15の内部に設けられる直方体状の押圧部材113が、ハウジング21の図示しない挿通孔及びケース92の主動歯車24と反対側の側壁の上部に形成された切欠部114を介して、ケースの内部に進入する。そして、図13(a)に二点鎖線で示されるように、押圧部材113(正確には、その先端下部)が作動部材112の傾斜面112aに当接した状態で、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部へさらに押し込まれると、当該押圧部材113はその先端下部において傾斜面112aに案内されながら当該傾斜面112aに対しその上部側へ相対的に変位するとともに、ケース92の内方へさらに進入する。この押圧部材113の進入に伴って、ストッパ部材111は圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ押し下げられる。すなわち、押圧部材113を通じてストッパ部材111に付与される主動歯車24側(図13(a)中の左側)への押圧力は、傾斜面112aにより当該ストッパ部材111に対する下方への押圧力に変換される。
【0104】
そして押圧部材113が傾斜面112aと当接面112bとの境界部分を乗り越えたとき、ストッパ部材111は、図13(b)に示される非係合位置まで押し下げられる。すなわち、2つの係合部材95,96の主動歯車24の歯に対する係合状態は、これら歯に対して係合する係合状態から、同じく歯に対する係合が解除される非係合状態へと変化する。したがって、主動歯車24は回転可能になる。
【0105】
また、押圧部材113が傾斜面112aと当接面112bとの境界部分を乗り越えた後は、押圧部材113のハウジング21の内方へのさらなる進入に伴い、作動部材112の当接面112bは押圧部材113の下面に対し相対的に当該押圧部材113の挿入方向と反対側へ摺動する。そして、舵角センサ11の先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで当該舵角センサ11が挿入されると、当該舵角センサ11のセンサ収容部15への装着は完了となる。このとき、押圧部材113の先端部は、主動歯車24に干渉しない程度に、ケース92の開口部97を介して主動歯車24側へ突出している。
【0106】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
・前記第3の実施の形態と同様に、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。
【0107】
・加えて、回転コネクタ12の下面に対するハウジング21の装着に伴い当該ハウジング21の内部に挿入される押圧部材113により、作動部材112が押圧部材113のハウジング21に対する挿入方向へ押圧されることにより、ストッパ部材111の主動歯車24に対する係合が自動的に解除される。すなわち、ストッパ部材111はその全体がハウジング21の内部に収容されることから、好適に保護される。
【0108】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ部材を主動歯車の本体平面部分に係合させるようにした点で、前記第4の実施の形態と主に異なる。
【0109】
図14に示すように、主動歯車24の本体平面部分には、3つの係合孔120が形成されている。これら係合孔120は、当該本体平面部分の半径よりも小さな半径を有する同一の仮想円周上に所定間隔をおいて設けられている。そして、主動歯車24の下方(図14における紙面奥側)には、3つのストッパ機構121が3つの係合孔120に対応するように配設されている。
【0110】
このストッパ機構121は、基本的には図12あるいは図13(a),(b)に示される前記第4の実施の形態のストッパ機構110と同様の構成を備えてなる。すなわち、図15(a)に示されるように、本実施の形態のストッパ機構121のストッパ部材122は、第4の実施の形態と同様に本体94を有してなる。この本体94の上面には、図15(c)に併せて示されるように、台形断面を有する前述と同様の作動部材112に加え、台形断面を有する係合部材123が主動歯車24の回転方向に沿う方向において並設されている。また本実施の形態において、作動部材112の上面でもある当接面112bは、図15(a)に示されるように、ケース92の主動歯車24側の側壁の上部に当該ケース92の内方へ向けて突設された係合壁124の下面に係合する。
【0111】
一方、図15(a)に示されるように、係合部材123はその本体94の上面に対する突出高さが、作動部材112の本体94の上面に対する突出高さよりも大きくなるように設定されている。また、作動部材112の当接面112bがケース92の係合壁124の下面に当接した状態において、係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120の内部にその下方から挿入されるように、本体94の上面に対する突出高さが設定されている。さらに、係合部材123において、主動歯車24と反対側の部位には、上部へ向かうにつれて主動歯車24側へ傾斜する傾斜面123aが形成されている。なお、本実施の形態においては、ストッパ部材122の一部を主動歯車24の歯に係合させる必要がないことから、第4の実施の形態における係合部材95,96は省略されている。
【0112】
そして前述したように、ストッパ部材122は、図15(a)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間に介装された圧縮コイルばね101の弾性力により常時上方へ付勢されている。このストッパ部材111の上方への変位は、作動部材112の当接面112bがケース92の係合壁124の下面に当接することにより規制される。この状態において、ストッパ部材122の係合部材123の先端部は、主動歯車24の係合孔120の内部にその下方から進入した状態に保持される。すなわち、係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120の内側面に係合することにより当該主動歯車24はその回転が規制された状態となる。
【0113】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材122が図15(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちその係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すると、これに伴いセンサ収容部15の内部に設けられる押圧部材113が、ハウジング21の図示しない挿通孔及びケース92の主動歯車24と反対側の側壁の上部に形成された切欠部114を介して、ケースの内部に進入する。
【0114】
そして、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部へさらに押し込まれると、ストッパ部材122は、その作動部材112と押圧部材113との係合を通じて圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ押し下げられ、図15(b)に示される非係合位置に至る。すなわち、係合部材123の主動歯車24の係合孔120に対する係合状態は、当該係合孔120に対して係合する係合状態から、同じく当該係合孔120に対する係合が解除される非係合状態へと変化する。このとき、係合部材123の先端は、主動歯車24の下方に位置していることから、主動歯車24の回転が許容される。舵角センサ11が、その先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで挿入されると、当該舵角センサ11のセンサ収容部15への装着は完了となる。
【0115】
このように、本実施の形態によれば、前記第4の実施の形態と同様に、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。
【0116】
なお、本実施の形態において、ストッパ機構121の個数あるいは主動歯車24に対する配置については、製品仕様等に応じて適宜変更可能である。少なくとも単一のストッパ機構121を設ければよい。この場合、主動歯車24には、ストッパ機構121の個数あるいは配置に応じて係合孔120を形成する。また、主動歯車24の係合孔120は、主動歯車24の下面に形成される凹部等に置換可能である。すなわち、ストッパ機構121の係合部材123が主動歯車24の本体平面部分の一部に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制されればよい。
【0117】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ機構の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。舵角センサとしての基本的な構成は、先の図2〜図4に示される通りである。
【0118】
図16に示すように、ストッパ機構130は、ハウジング21の内部に設けられる第1及び第2のストッパ部材131,132を備えてなる。第1及び第2のストッパ部材131,132の間には主動歯車24が配設されている。これら第1及び第2のストッパ部材131,132は合成樹脂材料により角棒状に形成されるとともに、その基端側の図示しない部分を支点として主動歯車24に対して離間する方向への柔軟性を有してなる。そして、第1及び第2のストッパ部材131,132の先端部が主動歯車24を挟み込むかたちで当該主動歯車24の歯に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制される。
【0119】
ここで、第1及び第2のストッパ部材131,132の構造は、これらが主動歯車24に対して図中の左側あるいは右側のいずれの位置に配置されるのかということに起因する突部等の突出方向程度の差異しかない。このため、ここでは主動歯車24に対して図16中の左側に配置される第1のストッパ部材131の構成について代表的に説明することとし、主動歯車24に対して図16中の右側に配置される第2のストッパ部材132については、第1のストッパ部材131の各部構造と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0120】
さて、舵角センサ11が、前記第1の実施形態と同様に、センサ収容部15に装着されるものである場合には、図17(a)に示される第1のストッパ部材131が採用される。一方、舵角センサ11が、前記第2の実施の形態と同様に、回転コネクタ12の下面に装着されるものである場合には、図17(b)に示される第1のストッパ部材131が採用される。
【0121】
そこでまず、センサ収容部15に装着される舵角センサ11に適用される第1のストッパ部材131の構造について説明する。すなわち、図17(a)に示されるように、第1のストッパ部材131の先端部において、主動歯車24側(同図中の右側)の側面には、係合部材133が突設されている。この係合部材133は、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態にあっては、主動歯車24の互いに隣り合う2つの歯の間に噛み合うかたちで介在される。また、この第1のストッパ部材131の先端部における主動歯車24側の側面において、係合部材133よりも上側の部位には、当該第1のストッパ部材131の先端側へ向かうにつれて主動歯車24から離間する方向へ傾斜する傾斜面134が形成されている。
【0122】
そして、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部に挿入されると、当該センサ収容部15の内部に設けられる押圧部材113の先端部が、ハウジング21の図示しない挿通孔を介して、第1のストッパ部材131の傾斜面134に係合する。さらに舵角センサ11がセンサ収容部15に挿入されると、押圧部材113の先端部は傾斜面134に案内されつつ第1のストッパ部材131の基端側へ変位し、これに伴い第1のストッパ部材131は図17(a)に二点鎖線で示されるように、その基端側の部位を支点として主動歯車24に対して離間する方向へ撓む。これにより、係合部材133と主動歯車24との係合が解除され、当該主動歯車24の回転が許容される。
【0123】
次に、回転コネクタ12の下面に装着される舵角センサ11に適用される第1のストッパ部材131の構造について説明する。すなわち、図17(b)に示されるように、第1のストッパ部材131の先端部において、主動歯車24側(同図中の右側)の側面に係合部材133が突設されている点は、図17(a)に示されるものと同様であるものの、次の点で構造が異なる。すなわち、第1のストッパ部材131において、主動歯車24側の側面の上部には、上方へ向かうにつれて主動歯車24から離間する方向へ傾斜する傾斜面135が形成されている。そして舵角センサ11の回転コネクタ12の下面に対する装着に伴い、押圧部材113の先端部が傾斜面135に上方から係合することにより、第1のストッパ部材131は、図17(b)に二点鎖線で示されるように、その基端側の部位を支点として主動歯車24に対して離間する方向へ撓む。これにより、係合部材133と主動歯車24との係合が解除され、当該主動歯車24の回転が許容される。
【0124】
なお、第1及び第2のストッパ部材131,132において、複数の係合部材133を設けるようにしてもよい。また、本実施の形態において、第1及び第2のストッパ部材131,132において、傾斜面134,135が形成される部位が本発明の作動部材に相当する。
【0125】
したがって、本実施の形態によっても、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、あるいは回転コネクタ12の下面に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。また、第1及び第2のストッパ部材131,132自身が有する弾性を利用して係合部材133を係合状態に保持するようにしていることから、係合部材133、あるいは第1及び第2のストッパ部材131,132を主動歯車24側へ付勢するばね等の付勢部材を別途設ける必要がない。このため、第1及び第2のストッパ部材131,132の構造の簡素化、ひいてはストッパ機構130の構成の簡素化が図られる。
【0126】
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1〜第6の実施の形態では、磁気式の舵角センサを例に挙げて説明したが、これら実施の形態は、光学式の舵角センサにも適用することができる。すなわち、図18に示されるように、光学式の舵角センサ140は、ステアリングシャフト14に貫通状態で装着される回転板141を備えてなる。当該回転板141において、異なる半径を有する複数の円周上には、異なるパターンのスリット列142が設けられている。そして一対を一組とする複数組(スリット列142の列数と同数)の発光素子143及び受光素子144が、回転板141を間に挟むように且つ各スリット列142に対応するように配設されている。なお、図18では、便宜上、一組の発光素子143及び受光素子144のみを示す。
【0127】
発光素子143から出た光は、回転板141が回転量に応じて光の透過と遮断とが繰り返される。各受光素子144は、その対応するスリット列142のスリット142aを通過してきた光の有無、すなわちスリット142aの有無に応じて電気信号を出力する。換言すれば、各受光素子144は、合計で、スリット列142の列数と同数ビットのコードを出力する。スリット列142は、各受光素子144から出力されるコードが回転板141の1回転中において重複しないように設けられているため、光学式の舵角センサは、各受光素子144から出力されるコードに基づいて、回転板の1回転中(360°以内)の回転角度を絶対値で検出することができる。
【0128】
そしてこのように構成された舵角センサ140に第1の実施の形態を適用する場合には、回転板141の上面あるいは下面に、支持部27,28(第1及び第2の切欠部27a,27b)に相当する係合構造を設け、この係合構造に対して第1及び第2のストッパ部材42,43の係合部材54,64を係合させる。
【0129】
次に、舵角センサ140に第2の実施の形態を適用する場合には、回転板141の下面に、円筒状の支持部28(係合凹部28a)に相当する係合構成を設け、この係合構造に対してストッパ部材82の係合部材83を係合させる。
【0130】
次に、舵角センサ140に第3及び第4の実施の形態を適用する場合には、回転板141の外周縁あるいはその一部分に、主動歯車24の歯に相当する係合構造を設け、この係合構造に対してストッパ部材93の係合部材95,96を係合させる。
【0131】
次に、舵角センサ140に第5の実施の形態を適用する場合には、回転板141の平面部分において各スリット列142から外れた部位に、単数又は複数の係合孔120に相当する係合構造を設け、この係合構造に対してストッパ部材122の係合部材123を係合させる。またこの場合には、係合部材123を回転板141のスリット142aに係合させることにより主動歯車24の回転を規制することも可能である。このようにすれば、係合孔120等のような係合部材123が係合する部分を回転板141に別途設ける必要がない。
【0132】
最後に、舵角センサ140に第6の実施の形態を適用する場合には、回転板141の外周縁あるいはその一部分に、主動歯車24の歯に相当する係合構成を設け、この係合構造に対して第1のストッパ部材131の係合部材133、及び第2のストッパ部材132の係合部材を係合させる。
【0133】
・各実施の形態では、主動歯車24の回転を直接的に規制するようにしたが、当該主動歯車24に噛合する第1及び第2の従動歯車25,26の少なく一方の回転を規制するようにしてもよい。第1及び第2の従動歯車25,26の少なく一方の回転が規制されることにより、主動歯車24の回転も規制される。この場合には、ストッパ機構の体格あるいはハウジング21の内部における配置等については、適宜調整する。
【0134】
・各実施の形態に示される磁気式あるいは光学式の舵角センサの搭載先は、車両のステアリング装置に限られない。軸等の回転部品の回転角度を検出する必要のある機器及び装置であれば、適宜適用することができる。
【0135】
・各実施の形態に示されるストッパ機構の搭載先は、軸等の回転部品の回転角度を検出するものに限られない。特定の軸部材と一体回転する主動歯車24あるいは回転板141の回転態様を当該軸部材の回転態様として検出する回転検出装置全般に好適である。
【0136】
<他の技術的思想>
次に、前記各実施の形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材が係合する前記回転体の一部は、当該回転体の軸線に交わる平面部分に設けられた被係合部である回転検出装置。この構成によれば、ストッパ部材が回転体の軸線に交わる平面部分に設けられた被係合部に係合することにより、回転体の回転が規制される。
【0137】
(ロ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記回転体として歯車を採用するとともにこれに噛合する2つの他の歯車の回転態様に基づき前記回転体としての歯車の回転態様を検出するようにし、前記ストッパ部材が係合する前記回転体の一部は、当該回転体としての歯車の歯又は前記他の歯車の歯のいずれかである回転検出装置。この構成によれば、係合部材が前記回転体としての歯車の歯又は前記他の歯車の歯のいずれかに係合することにより、回転体の回転が規制される。また、係合部材が係合する部分を歯車に別途設ける必要がない。
【0138】
(ハ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記回転体として特定の光学パターンが貫通して設けられた回転板を採用するとともに当該回転板の光学パターンを光学的に読み取ることにより当該回転体の回転態様を検出するようにし、前記係合部材が係合する前記回転体の一部は、前記回転板の光学パターンが形成される部位である回転検出装置。この構成によれば、係合部材が前記回転板の光学パターンが形成される部位に係合することにより、回転体の誤回転が規制される。また、係合部材が係合する部分を回転板に別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】第1の実施形態における舵角センサの取付態様の概略を示す斜視図。
【図2】同じく(a)は、主動歯車とハウジングとの組立態様を示す分解斜視図、(b)は、舵角センサの内部構造の概略を示す斜視図。
【図3】同じく従動歯車、永久磁石及び磁気センサの組付態様を示す図1の1−1線断面図。
【図4】磁気式の舵角センサの電気的な構成を示すブロック図。
【図5】(a)は、第1の実施の形態において、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図6】第2の実施の形態の舵角センサの取付態様の概略を示す斜視図。
【図7】同じく(a)は、ストッパ機構の概略構成を示す図6の2−2線断面図、同じく(b)はストッパ部材の変形例を示す要部斜視図。
【図8】第3の実施の形態におけるストッパ機構の概略構成を示す斜視図。
【図9】同じく(a)は、ストッパ機構の分解斜視図、(b)はストッパ機構を係合部材側から見た正面図。
【図10】同じくストッパ機構の平面図。
【図11】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図12】第4の実施の形態におけるストッパ機構の平面図。
【図13】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図14】第5の実施の形態におけるストッパ機構の主動歯車に対する配置状態を示す平面図。
【図15】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(c)は、同じくストッパ部材の概略構成を示す斜視図。
【図16】第6の実施の形態におけるストッパ機構の主動歯車に対する配置状態を示す平面図。
【図17】同じく(a),(b)は、ストッパ部材の概略構成を示す要部斜視図。
【図18】他の実施の形態における光学式の舵角センサの概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0140】
11…舵角センサ(回転検出装置)、12…回転コネクタ(取付対象)、13…ブラケット(取付対象)、14…ステアリングシャフト(回転検出対象)、21…ハウジング、24…主動歯車(回転体)、27a…第1の切欠部27a(被係合部)、41…ストッパ機構、42…第1のストッパ部材、43…第2のストッパ部材、54,64…係合部材、55,65…作動部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の回転検出対象の回転態様を検出する回転検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、例えば車両のステアリング装置には、ステアリングの操舵角を検出するための回転検出装置が組み込まれている。この種の回転検出装置としては、操舵角を絶対値で検出する絶対角検出方式及び操舵角を相対値で検出する相対角検出方式がある。さらに絶対角検出方式の回転検出装置には、光学式のものと、磁気式のものとに区分される。これら検出方式のいずれを採用するかは製品仕様等に応じて決定される。
【0003】
光学式のものとしては、例えば特許文献1に示されるような構成が知られている。この回転検出装置は、ステアリングシャフトに貫通状態で装着される回転板を備えるとともに、当該回転板における異なる半径の複数の円周上には、異なるパターンのスリット列が設けられている。また、回転板には、一対を一組とするスリット列と同数組の発光素子及び受光素子が各スリット列に対応するように配設されている。各光センサは、スリット列のスリットの有無に基づいて合計複数ビット(スリット列の列数と同数)のコードを出力する。前記スリット列は、当該コードが回転板の1回転中において重複しないように設けられているため、回転検出装置は、当該コードに基づいて、回転板の1回転中(360°以内)の回転角度を絶対値で検出することができる。
【0004】
一方、磁気式の回転検出装置としては、例えば特許文献2に示されるような構成が知られている。この回転角度検出装置は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車と、当該歯車に歯合する2つの従動歯車とを備えている。2つの従動歯車の歯数は異なっていることから、主動歯車の回転に伴う両従動歯車の回転角度も異なったものとなる。また両従動歯車には磁石が固定されるとともに、当該磁石に対向するように磁気センサが配設されている。磁気センサは、磁石から発せられる磁界の強度を検出するとともに、両従動歯車の回転に伴う磁石の磁束の方向の変化を検出する。回転検出装置は、両磁気センサからの検出信号に基づいて両従動歯車の回転角度を検出し、それら検出した回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求める。
【0005】
このように、絶対角検出方式の回転検出装置は、光学式及び磁気式のいずれのものであれ、回転板あるいは主動歯車の回転方向において設定された基準位置(絶対角0度)を原点とするこれらの回転態様を、回転検出対象であるステアリングシャフトの回転態様、すなわち中立位置を基準とする正逆両方向に複数回転されるステアリングホイールの回転情報として検出する。このため、絶対角検出方式の回転検出装置は、その絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置に組み込む必要がある。
【0006】
しかし、回転検出装置をステアリング装置へ装着する際に、回転板あるいは主動歯車が意図せず回転し、回転検出装置の前記基準位置とステアリングの中立位置との間にずれが生じるおそれがある。この場合には、ステアリングの実際の操舵角と回転検出装置を通じて得られる操舵角(ステアリングシャフトの回転角)との間にも前述したずれと同じだけずれが生じることから、ステアリングの操舵角の検出精度の低下が懸念される。なお、前述した相対角検出方式のものにおいては、こうした問題は生じることはない。
【0007】
そこで、例えば特許文献3に記載されるように、ピンを使用して回転板を回転規制状態に保持することにより同回転板を前記基準位置に保持するようにした光学式の回転検出装置が従来提案されている。この回転検出装置は、ピンにより回転板の回転が規制された状態でステアリング装置に組み込まれ、その組み込み作業が完了した際には前記ピンが引き抜かれることにより回転板の回転規制状態が解除される。この構成によれば、回転検出装置をステアリング装置へ装着する際に回転板が回転することはないため、回転検出装置はその絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置に組み込まれる。
【特許文献1】特開2002−98522号公報
【特許文献2】特表平11−500828号公報
【特許文献3】特開2006−17663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記特許文献3の回転検出装置では、前記回転板の回転を規制する際には、これを収容するハウジングの一面に固着されたピンホルダに前記ピンを挿入するとともに、このピンをハウジングの内部に配設された前記回転板の貫通孔に挿通し、さらに当該ハウジングの他面側へ突出させるようにしている。こうしたピンをハウジング及び回転板の各貫通孔に挿入する作業は難しく、且つ煩わしいものであった。また、前記ピンにより回転板の回転が規制された状態の回転検出装置をステアリング装置に装着した後には、装着前に取り付けたピンを引き抜く必要がある。すなわち、回転検出装置のステアリング装置に対する装着の前後においてピンの着脱作業が必要であり、組み立て作業効率の点では改善の余地があった。さらに、回転検出装置のステアリング装置への装着作業の際に、ピンが脱落するおそれもあり、この場合には、前述したような回転板の回転位置ずれが発生する。なお、引用文献3のピンによる回転板の固定方式を、引用文献2に示される磁気式の回転検出装置に適用することも考えられるところ、この場合であれ前述と同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、回転検出対象と一体回転する回転体の回転態様を当該回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、その取付対象への装着の前後で前記回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、 特定の取付対象に装着されるハウジングに内包された状態で、特定の軸線を中心として回転する回転検出対象に対して同軸状に且つ一体回転可能に設けられる回転体を備え、その回転方向における基準位置を原点とする当該回転体の回転態様を前記回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、前記ハウジングの内部には、前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合状態と前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合状態との間で状態変化するストッパ部材を設け、前記ストッパ部材は、前記ハウジングが前記取付対象に装着されていない非装着状態にあっては前記係合状態に弾性保持される一方、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴う当該取付対象の一部分との係合を通じて前記係合状態から前記非係合状態へ状態変化するとともに前記ハウジングが前記取付対象に装着された装着状態にあっては前記非係合位置に保持されるようにしたことをその要旨とする。
【0011】
この構成によれば、例えば回転検出装置の輸送時及び取付対象に対する組み付け時等のように、ハウジングが取付対象に装着されていない非装着状態に保持されている場合には、ストッパ部材が回転体の一部分に係合することにより当該回転体の回転が規制される。このため、回転検出装置はその基準位置を回転検出対象の基準位置に合致させた状態で取付対象に組み付けることができる。そして、ハウジングが取付対象に装着されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。したがって、回転検出装置の取付対象への装着の前後において、回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。またストッパ部材はハウジングの内部に収容されていることから、これが脱落することもない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、合成樹脂材料により一体形成されてなることをその要旨とする。この構成によれば、ストッパ部材の構成の簡素化が図られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記ハウジングの内部において前記回転体の一部分に係合する係合部材及び当該係合部材に連結されてその一部あるいは全部が前記ハウジングの外面から突出する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてハウジングの内方へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにしたことをその要旨とする。
【0014】
この構成によれば、ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い、一部あるいは全部がハウジングの外面から突出する作動部材がハウジングの内方へ押圧されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。前述したように、作動部材はハウジングの外面から突出していることから、当該作動部材には外力を加えやすい。このため、取付対象の一部分との係合を通じてストッパ部材を係合状態から非係合状態へ容易に状態変化させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記回転体の一部分に係合する係合部材及び前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い当該ハウジングの内部に挿入される前記取付対象の一部分に係合する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてその挿入方向へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ハウジングの取付対象に対する装着に伴いハウジングの内部に挿入される取付対象の一部分により、ストッパ部材を構成する作動部材が取付部材の一部分のハウジングに対する挿入方向へ押圧されることにより、ストッパ部材の回転体に対する係合が自動的に解除される。ストッパ部材はその全体がハウジングの内部に収容されることから、好適に保護される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材は、前記係合状態として前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と前記非係合状態として前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位可能に設け、前記ハウジングの内部には、前記ストッパ部材を前記係合位置側へ常に付勢する付勢部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
【0018】
この構成によれば、ハウジングの取付対象に対する非装着状態にあっては、ストッパ部材は付勢部材による付勢力により回転体の一部分に係合する係合位置に好適に保持される。そしてハウジングの取付対象に対する装着に伴いストッパ部材は、付勢部材の付勢力に抗して、係合位置から非係合位置へ変位する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転検出対象と一体回転する回転体の回転態様を当該回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、その取付対象への装着の前後で前記回転体のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を車両におけるステアリングの操舵角を絶対値で検出する舵角センサに具体化した第1の実施の形態を図1〜図5(a),(b)に基づいて説明する。
【0021】
図1に示されるように、箱体状をなす舵角センサ11は、図示しないステアリングホイールの背面側に配設される円柱状の回転コネクタ12と一体をなす箱体状のブラケット13に装着された状態で車両のステアリング装置(操舵装置)に取り付けられる。これら回転コネクタ12及びブラケット13並び舵角センサ11には、ステアリングホイールに一体回転可能に連結されるステアリングシャフト14が貫通される。
【0022】
回転コネクタ12は、ステアリングホイールに設けられる図示しないエアバッグを膨らませるインフレータへの通電部品であって、車両側に固定されるステータハウジング12a及びその中央に回転可能に支持された状態でステアリングシャフト14が一体回転可能に挿入されるロータ12bを備えている。当該ステータハウジング12aの内部において、その内周面とロータ12bの外周面との間には、可撓性を有する図示しないケーブルが巻回された状態で収容される。このケーブルは、ロータ12bの正逆回転を通じて、巻き締めあるいは巻き戻しが行われる。
【0023】
ブラケット13は、回転コネクタ12のステアリングホイールと反対側の部位に固定されている。当該ブラケット13の両端部、正確にはステアリングシャフト14を間に挟んで互いに反対側に位置する部分には、レバーコンビネーションスイッチを構成する図示しない2つの操作レバーの基端部が所定の支持構造を介して上下左右方向へ傾動操作可能に支持される。
【0024】
ブラケット13において、前記操作レバーが設けられる2つの側部と異なる他の側部には、舵角センサ11を収容可能としたセンサ収容部15が開口して形成されている。このセンサ収容部15の内側面には、舵角センサ11において互いに反対側に位置する2つの側面に設けられる2つの係合爪16,16に係合する図示しない被係合部が形成される。そしてセンサ収容部15にその外方から舵角センサ11が挿入された際には、その係合爪16,16が前記被係合部に係合することにより当該舵角センサ11のセンサ収容部15に対する抜け止めが図られる。
【0025】
なお、ステアリングシャフト14は、回転コネクタ12、ブラケット13及び舵角センサ11が一体に組み付けられた状態でこれらを貫通するように取り付けられる。
<舵角センサ>
次に、舵角センサ11の内部構造について詳細に説明する。図1に示されるように、舵角センサ11のハウジング21は、下面が開口した有蓋箱体状のアッパーハウジング22及び上面が開口した有底箱体状のロアハウジング23がこれらの開口部を突き合わせるかたちで組み合わせられることにより、全体として直方体状に形成されてなる。そして図2(a),(b)に示すように、このハウジング21の内部には、ステアリングシャフト14に一体回転可能に外嵌される主動歯車24、並びに当該主動歯車24に噛合する第1及び第2の従動歯車25,26がそれぞれ回転可能に支持されている。主動歯車24並びに第1及び第2の従動歯車25,26は、電気絶縁性を有する合成樹脂材料(ポリエチレン等の熱可塑性樹脂)により一体形成されている。
【0026】
主動歯車24において、ステアリングシャフト14が挿入される部分である挿通孔24aは、アッパーハウジング22及びロアハウジング23の当該挿通孔24aに対応する部位に形成された円形の開口部22a,23cを介して外部に露出している。これにより、ハウジング21の内部に収容された主動歯車24には、ステアリングシャフト14をハウジング21の外部から挿入可能となる。
【0027】
また、主動歯車24の表裏両面には、挿通孔24aを囲むように形成された壁である円筒状の支持部27,28が突設されている。主動歯車24は、これら支持部27,28がアッパーハウジング22及びロアハウジング23の開口部22a,23cに挿入された状態でアッパーハウジング22及びロアハウジング23に対して回転可能に支持されている。アッパーハウジング22の開口部22aに挿入される支持部27において、第1及び第2の従動歯車25,26と反対側の部位には、第1及び第2の切欠部27a,27bが当該主動歯車24の回転方向において所定間隔をおいて形成されている。
【0028】
したがって、ステアリングシャフト14が回転すると、これに外嵌される主動歯車24が一体的に回転し、それに伴って第1及び第2の従動歯車25,26もそれぞれ回転する。なお、第1及び第2の従動歯車25,26の歯数は、主動歯車24よりも小さく、且つ互いに異なる歯数に設定されている。このため、主動歯車24の回転量に対する第1及び第2の従動歯車25,26の回転量は、当該主動歯車24の回転量よりも大きく、またそれぞれ異なる。
【0029】
図3に示すように、ロアハウジング23の内底面に固定された電気絶縁性を有する基板31の上面には、第1及び第2の磁気センサ32,33が設けられている。第1及び第2の磁気センサ32,33は、それぞれブリッジ状に接続された4つの異方性磁気抵抗素子(AMR素子)が単一のICチップとして集積化されたものである。この異方性磁気抵抗素子は、異方性磁気抵抗効果を有するNi−Co等の強磁性体からなり、その抵抗値は与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、第1及び第2の磁気センサ32,33はこれらに与えられる磁界の変化に応じて前記ブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。
【0030】
基板31の上面には、電気絶縁性を有する合成樹脂材料により板状に一体形成された軸受け部材34が固定されている。軸受け部材34において第1及び第2の磁気センサ32,33に対応する部位には、2つの透孔34a,34aが形成されている。これら透孔34a,34aを介して、第1及び第2の磁気センサ(正確には、これらの感磁面)32,33は、ハウジング21の内部に露出している。また、軸受け部材34の上面において、2つの透孔34a,34aを囲むように形成された筒状の2つの支持部34b,34bには、第1及び第2の従動歯車25,26の下部に設けられた下部軸部25a,26aが摺動回転可能に支持されている。これら下部軸部25a,26aには、例えばネオジウム及びサマリウムからなる直方体状の永久磁石35,36が、第1及び第2の磁気センサ32,33(正確には、それらの感磁面となる上面)に対向するように設けられている。第1及び第2の磁気センサ32,33には、永久磁石35,36から発せられる所定強度の磁界が常に付与される。なお、第1及び第2の従動歯車25,26の上部に設けられた上部軸部25b,26bは、アッパーハウジング22の内頂面に形成された支持部37a,37bに摺動回転可能に支持されている。
【0031】
そして前述したように、ステアリングホイールの操作を通じて主動歯車24が回転した際には第1及び第2の従動歯車25,26も回転するところ、これら第1及び第2の従動歯車25,26の回転は次のようにして検出される。すなわち、図4に模式的に示されるように、第1及び第2の磁気センサ32,33は、第1及び第2の従動歯車25,26の回転に伴う永久磁石35,36から発せられる磁界の方向の変化を検出する。そして第1及び第2の磁気センサ32,33は、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2に応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれマイクロコンピュータ38に出力する。
【0032】
マイクロコンピュータ38は、図示しないCPU(中央演算装置)、A/D変換器、ROM及びRAM等から構成されている。ROMには、舵角センサ11の全体を統括的に制御するための各種の制御プログラム及び各種のデータが予め格納されている。制御プログラムとしては、例えば回転角度算出プログラムがある。この回転角度検出プログラムはA/D変換器によりデジタル変換された第1及び第2の磁気センサ32,33からの正弦信号及び余弦信号に基づいてステアリングシャフト14の回転角度θ(正確には、主動歯車24の回転角度)を算出するためのプログラムである。RAMは、ROMの制御プログラムを展開してCPUが各種処理を実行するためのデータ記憶領域、すなわち作業領域である。そして、マイクロコンピュータ38はROMに格納された回転角度算出プログラムに従って、主動歯車24の回転角度をステアリングシャフト14の回転角度θとして算出する。
【0033】
マイクロコンピュータ38は、第1及び第2の磁気センサ32,33からそれぞれ出力される2つの信号、すなわち正弦信号及び余弦信号の逆正接を求め、この求められた逆正接の値に基づき第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2を算出する。ここで、前述したように、第1及び第2の従動歯車25,26の歯数は異なっていることから、主動歯車24の回転に伴う第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2も異なる値となる。このため、ステアリングホイールがその中立位置(ステアリング操作角度=0°)にある状態で回転操作された場合、当該操作角度の変化に対して、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2の差は直線的に変化する。すなわち、ステアリングシャフト14の回転角度θと、第1及び第2の従動歯車25,26の回転角度φ1,φ2の差とは比例関係にあることから、当該回転角度φ1,φ2の差は主動歯車24、ひいてはステアリングシャフト14の回転角度θに対して固有の値となる。このため、当該回転角度φ1,φ2の差に基づいて主動歯車24、すなわちステアリングシャフト14の回転角度θ(絶対値)の即時検出が可能となる。
【0034】
<ストッパ機構>
前述したように、絶対角検出方式の舵角センサ11は、主動歯車24の回転方向において設定された基準位置(絶対角0度)を原点とする当該主動歯車24の回転態様を、回転検出対象であるステアリングシャフト14の回転態様、すなわち中立位置を基準とする正逆両方向に複数回転されるステアリングホイールの回転情報として検出する。このため、絶対角検出方式の舵角センサ11は、その絶対角0度となる基準位置をステアリングの中立位置に合致させた状態でステアリング装置(ここでは、回転コネクタ12)に組み込む必要がある。
【0035】
しかし、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着する際には主動歯車24が意図せず回転することが想定されるところ、この場合には舵角センサ11の前記基準位置とステアリングの中立位置との間にずれが生じた状態で舵角センサ11が回転コネクタ12に装着されるおそれがある。そしてこの場合には、ステアリングの実際の操舵角と舵角センサ11を通じて得られる操舵角(ステアリングシャフト14の回転角度)との間にも前述したずれと同じ分だけずれが生じる。
【0036】
そこで、図5(a)に示されるように、舵角センサ11には、回転コネクタ12に対する非装着状態において、主動歯車24を回転規制状態に保持することにより当該舵角センサ11をその絶対角0度となる前記基準位置に保持するストッパ機構41が設けられている。同図に示されるように、ストッパ機構41は、ハウジング21の内部において、主動歯車24の第1及び第2の従動歯車25,26と反対側の部位に回転可能に支持された第1及び第2のストッパ部材42,43を備えてなる。第1及び第2のストッパ部材42,43は、主動歯車24における第1及び第2の従動歯車25,26と反対側に位置する部位を間に挟むようなかたちで配設されている。
【0037】
<第1のストッパ部材>
第1のストッパ部材42は、ハウジング21の内部において回転可能に支持される軸部51、及び当該軸部51に対し互いに反対側へ延設された第1及び第2の腕部52,53を備えてなる。第1の腕部52は主動歯車24に近接する方向へ、また第2の腕部53は主動歯車24から離間する方向へ延設されている。第1及び第2の腕部52,53は、これらの軸線が互いに鈍角をなすように形成されている。第1の腕部52は、第1のストッパ部材42が後述する所定の回転範囲内で回転するに際して、主動歯車24に干渉しないように設けられている。また、第2の腕部53の長さは、第1の腕部52よりも大きく設定されている。なお、第1及び第2の腕部52,53の長さは、センサ収容部15の形状又はサイズ等に応じて適宜調節される。
【0038】
第1の腕部52の先端部において、アッパーハウジング22側(紙面手前側)の側面には、当該第1の腕部52の延びる方向に対して直交する係合部材54が主動歯車24側へ突設されている。この係合部材54(正確には、その下面)は、主動歯車24の支持部27が突設された側面の上方に位置し、当該側面及び主動歯車24の歯に干渉しないように設けられている。そして係合部材54は、主動歯車24の支持部27に形成された第1の切欠部27aに挿入されている。
【0039】
第2の腕部53の先端部は、ハウジング21、正確にはロアハウジング23の側壁において当該第2の腕部53に対応する部位に形成された貫通孔23aを介して外部に露出している。ハウジング21の外部において、第2の腕部53の先端部には、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向(図中上方)へ延びる作動部材55が設けられている。作動部材55は、第2の腕部53の軸線に対して鈍角をなして若干内側(図5(a)中の左側)へ傾斜している。この作動部材55の先端部には、ハウジング21と反対側(図5(a)中の右側)へ延びる当接部56が形成されている。
【0040】
そしてこのように構成された第1のストッパ部材42の軸部51には捻りコイルばね57が装着されている。この捻りコイルばね57の一端は、第1のストッパ部材42の一部分、すなわち係合部材54の第1の切欠部27aに挿入される側の端部と反対側の端部に、同じく他端は、ロアハウジング23の内底面において軸部51の近傍に形成された係止突部58に係止されている。
【0041】
そしてこの捻りコイルばね57の弾性力により第1のストッパ部材42は、軸部51を中心として反時計方向へ常時付勢されている。この第1のストッパ部材42の反時計方向への回転は、図5(a)に示されるように、係合部材54が第1の切欠部27aにおける第2の切欠部27bと反対側の内側面、すなわち主動歯車24の周方向において第2の切欠部27bに対して遠い方の内側縁に係合することにより規制される。すなわち、第1のストッパ部材42の係合部材54が第1の切欠部27aに係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の反時計方向への回転が規制される。
【0042】
なお、第1のストッパ部材42の反時計方向への回転は、次のようにして規制することも可能である。すなわち、図5(a),(b)に二点鎖線で示されるように、ロアハウジング23の内底面において、第1の腕部52と主動歯車24との間には第1の腕部52を係止する係止部材59を形成する。この係止部材59に第1の腕部52が係止されることにより第1のストッパ部材42の反時計方向への回転が規制される。またこのとき、係合部材54は、第1の切欠部27aに対して非係合状態に保持されるとともに、主動歯車24が反時計方向へ僅かに回転した際に第1の切欠部27aに係合するように設ける。
【0043】
そしてこのように反時計方向への回転が規制された第1のストッパ部材42の当接部56に対し舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与された際には、第1のストッパ部材42は、捻りコイルばね57の弾性力に抗して軸部51を中心として時計方向へ回転する。この第1のストッパ部材42の時計方向への回転は、図5(b)に示されるように、第2の腕部53がロアハウジング23の貫通孔23aの内側面に係合することにより規制される。そしてこの第2の腕部53が貫通孔23aに係合した状態において、係合部材54の先端部は主動歯車24の支持部27の外側に位置している。すなわち、係合部材54は第1の切欠部27aとの係合が解除された非係合状態となる。
【0044】
なお、第1のストッパ部材42の回転に伴い係合部材54が前記係合状態と前記非係合状態との間で状態変位する際において、当該係合部材54と第1の切欠部27aとの間で干渉が生じないように、当該係合部材54及び第1の切欠部27aは設けられている。
【0045】
<第2のストッパ部材>
一方、第2のストッパ部材43は、前述した第1のストッパ部材42と同様の構成とされている。すなわち、第2のストッパ部材43は、ハウジング21の内部において回転可能に支持される軸部61、及び当該軸部61に対し互いに反対側へ延設された第1及び第2の腕部62,63を備えてなる。第1の腕部62は主動歯車24に近接する方向へ、第2の腕部63は主動歯車24から離間する方向へ延設されている。第1及び第2の腕部62,63は、これらの軸線が互いに鈍角をなすように形成されている。第1の腕部62は、第2のストッパ部材43が後述する所定の回転範囲内で回転するに際して、主動歯車24に干渉しないように設けられている。また、第2の腕部63の長さは、第1の腕部62よりも大きく設定されている。なお、第1及び第2の腕部62,63の長さは、センサ収容部15の形状又はサイズ等に応じて適宜調節される。
【0046】
第1の腕部62の先端部において、アッパーハウジング22側の側面には、当該第1の腕部62の延びる方向に対して直交する係合部材64が主動歯車24側へ突設されている。この係合部材64(正確には、その下面)は、主動歯車24の支持部27が突設された側面の上方に位置し、当該側面及び主動歯車24の歯に干渉しないように設けられている。そして係合部材64は、主動歯車24の支持部27に形成された第2の切欠部27bに挿入されている。
【0047】
第2の腕部63の先端部は、ハウジング21、正確にはロアハウジング23の側壁において当該第2の腕部63に対応する部位に形成された貫通孔23bを介して外部に露出している。ハウジング21の外部において、第2の腕部63の先端部には、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向へ延びる作動部材65が設けられている。作動部材65は、第2の腕部63の軸線に対して鈍角をなして若干内側(図5(a)中の右側)へ傾斜している。この作動部材65の先端部には、ハウジング21と反対側(図5(a)中の左側)へ延びる当接部66が形成されている。
【0048】
そしてこのように構成された第2のストッパ部材43の軸部61には捻りコイルばね67が装着されている。この捻りコイルばね67の一端は、第2のストッパ部材43の一部分、すなわち係合部材64の第2の切欠部27bに挿入される側の端部と反対側の端部に、同じく他端は、ロアハウジング23の内底面において軸部61の近傍に形成された係止突部68に係止されている。
【0049】
そしてこの捻りコイルばね67の弾性力により第2のストッパ部材43は、軸部61を中心として時計方向へ常時付勢されている。この第2のストッパ部材43の時計方向への回転は、図5(a)に示されるように、係合部材64が第2の切欠部27bにおける第1の切欠部27aと反対側の内側面、すなわち主動歯車24の周方向において第1の切欠部27aに対して遠い方の内側縁に係合することにより規制される。すなわち、第2のストッパ部材43の係合部材64が第2の切欠部27bに係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の時計方向への回転が規制される。
【0050】
なお、第2のストッパ部材43の時計方向への回転は、次のようにして規制することも可能である。すなわち、図5(a),(b)に二点鎖線で示されるように、ロアハウジング23の内底面において、第1の腕部62と主動歯車24との間には第1の腕部62を係止する係止部材69を形成する。この係止部材69に第1の腕部62が係止されることにより第2のストッパ部材43の時計方向への回転が規制される。またこのとき、係合部材64は、第2の切欠部27bに対して非係合状態に保持されるとともに、主動歯車24が時計方向へ僅かに回転した際に第2の切欠部27bに係合するように設ける。
【0051】
そしてこのように時計方向への回転が規制された第2のストッパ部材43の当接部66に対し舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与された際には、第2のストッパ部材43は、捻りコイルばね67の弾性力に抗して軸部61を中心として反時計方向へ回転する。この第2のストッパ部材43の反時計方向への回転は、図5(b)に示されるように、第2の腕部63がロアハウジング23の貫通孔23bの内側面に係合することにより規制される。そしてこの第2の腕部63が貫通孔23bに係合した状態において、係合部材64の先端部は主動歯車24の支持部27の外側に位置している。すなわち、係合部材64は第2の切欠部27bとの係合が解除された非係合状態となる。
【0052】
なお、第2のストッパ部材43の回転に伴い係合部材64が前記係合状態と前記非係合状態との間で状態変位する際において、当該係合部材64と第2の切欠部27bとの間で干渉が生じないように、当該係合部材64及び第2の切欠部27bは設けられている。
【0053】
以上のように、第1及び第2のストッパ部材42,43は、これらの係合部材54,64が第1及び第2の切欠部27a,27bに係合する図5(a)に示される係合位置と、同じく第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合が解除される図5(b)に示される非係合位置との間を回転変位する。そして、第1及び第2のストッパ部材42,43の双方が非係合位置にある場合にのみ、主動歯車24は回転可能となる。
【0054】
なお、主動歯車24の下面に設けられた支持部28に、前述した第1及び第2の切欠部27a,27bに相当する係合構造を設け、この係合構造に対して第1及び第2のストッパ部材42,43を係合させることにより主動歯車24の回転を規制するようにしてもよい。
【0055】
<実施の形態の作用>
次に、前述のように構成された舵角センサ11をブラケット13のセンサ収容部15に装着する際の動作を説明する。なお、ブラケット13は、回転コネクタ12に予め取り付けられている。また、回転コネクタ12のロータ12bは、図示しないロック機構によりその回転中立位置に保持されている。
【0056】
さて、舵角センサ11は、第1及び第2のストッパ部材42,43が図5(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちこれらの係合部材54,64が主動歯車24の支持部27に形成された第1及び第2の切欠部27a,27bに係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構41によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態でセンサ収容部15に挿入される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0057】
舵角センサ11がセンサ収容部15に挿入されると、第1及び第2のストッパ部材42,43の当接部56,66がセンサ収容部15の内底面15aに当接する。そして舵角センサ11がセンサ収容部15の内方へさらに押し込まれると、これに伴い第1のストッパ部材42は捻りコイルばね57の弾性力に抗して時計方向へ、第2のストッパ部材43は捻りコイルばね67の弾性力に抗して反時計方向へ回転する。
【0058】
そして舵角センサ11の先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで当該舵角センサ11が挿入されたとき、第1及び第2のストッパ部材42,43は、図5(b)に示される非係合位置に達する。すなわち、係合部材54,64の第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合状態は、これらが第1及び第2の切欠部27a,27bに対して係合する係合状態から、これらの第1及び第2の切欠部27a,27bに対する係合が解除される非係合状態へと変化する。したがって、主動歯車24は回転可能になる。
【0059】
またこのとき、舵角センサ11の挿入方向に直交する方向において互いに反対側に位置する2つの側面に設けられた2つの係合爪16,16が、センサ収容部15の内側面に設けられる図示しない被係合部に係合する。これにより舵角センサ11のセンサ収容部15に対する抜け止めが図られる。以上で、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着作業は完了となる。
【0060】
なお、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着に伴い、主動歯車24の上部に設けられる図示しない係合構造が回転コネクタ12のロータ12b下部に設けられる図示しない被係合構造に係合することにより、主動歯車24とロータ12bとは一体回転可能に連結される。また、前述したように、舵角センサ11のセンサ収容部15への装着時には、主動歯車24及びロータ12bの双方がロックされた状態に保持されることから、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する装着完了時において、舵角センサ11の絶対角0度となる基準位置と回転コネクタ12のロータ12bの回転中立位置とは合致した状態に保持される。
【0061】
このように、舵角センサ11は、センサ収容部15に挿入して装着するだけで、ストッパ機構41による主動歯車24の回転規制状態が自動的に解除されることから、舵角センサ11のブラケット13に対する組み立て作業は簡単なものとなる。例えば、ピンを使用して主動歯車24のハウジング21に対する相対回転を規制することも考えられるものの、この場合には舵角センサ11のセンサ収容部15に対する組み付けの前後において当該ピンの着脱作業が必要となる。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に組み付ける際に当該ピンが脱落することも懸念される。本実施の形態によれば、ストッパ機構41がハウジング21の内部に組み込まれていることからこのような問題はなく、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する装着の前後において、主動歯車24のロック及びアンロックを簡単に且つ確実に行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、係合部材54,64を主動歯車24の支持部27に形成される第1及び第2の切欠部27a,27bに係合させることにより、主動歯車24の回転を規制するようにしたが、次のような構成を採用してもよい。すなわち、係合部材54,64を主動歯車24の歯に係合させることにより主動歯車24の回転を規制する。この場合、これら係合部材54,64が主動歯車24の歯に好適に係合するように、その形状等を設定する。
【0063】
また第1及び第2のストッパ部材42,43のいずれか一方を省略するようにしてもよい。このようにした場合であれ、主動歯車24の正逆回転が規制される。
さらに、センサ収容部15の形状によっては、第1及び第2のストッパ部材42,43における作動部材55,65及び当接部56,65を省略することも可能である。すなわち、舵角センサ11をセンサ収容部15に挿入した際に、第2の腕部53,63(正確には、その外端部)とセンサ収容部15の一部分との係合を通じて、当該第2の腕部53,63に舵角センサ11のセンサ収容部15に対する挿入方向と反対方向の外力が付与されればよい。第2の腕部53,63に係合するセンサ収容部15の一部分として、例えばセンサ収容部15の内部に、舵角センサ11の挿入に伴い第2の腕部53,63に係合する図示しない係合構造を設ける。
【0064】
<実施の形態の効果>
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)舵角センサ11の輸送時及びブラケット13に対する組み付け時には、第1及び第2のストッパ部材42,43が主動歯車24の一部分に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制される。そして、舵角センサ11のセンサ収容部15への取り付けに伴い、第1及び第2のストッパ部材42,43の主動歯車24に対する係合が自動的に解除される。このため、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。ひいては舵角センサ11のブラケット13に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。また、第1及び第2のストッパ部材42,43は、ハウジング21の内部に組み込まれるかたちで設けられるので、舵角センサ11の輸送時あるいはブラケット13への取り付け作業時に、これら第1及び第2のストッパ部材42,43が脱落することはなく、主動歯車24を確実にロック状態、すなわちその回転が規制された状態に維持することができる。
【0065】
(2)作動部材55,65はハウジング21の外面から突出していることから、当該作動部材55,65には外力を加えやすい。このため、センサ収容部15の一部分である内底面との係合を通じて第1及び第2のストッパ部材42,43を係合状態から非係合状態へ容易に状態変化させることができる。
【0066】
(3)第2の腕部53,63の長さは、第1の腕部52,62よりも大きくした。これにより、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着する際に、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力、すなわち舵角センサ11のセンサ収容部15に対する押し込み力の低減化が図られる。このため、舵角センサ11を、より少ない力で容易にセンサ収容部15へ装着することができる。これは、いわゆる梃子の原理を応用したものであって、作動部材55,65(正確には、その先端の当接部56,66)が力点に、軸部51,61が支点に、係合部材54,64が作用点に相当する。
【0067】
なお、第1の腕部52,62及び第2の腕部53,63の長さを調節することにより、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力、すなわち舵角センサ11のセンサ収容部15に対する押し込み力を調節することが可能である。例えば、第1の腕部52,62を短くするほど、また第2の腕部53,63を長くするほど、少ない力で第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させることができる。逆に、第1の腕部52,62を長くするほど、また第2の腕部53,63を短くするほど、第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置から非係合位置へ変位させるのに要する外力は大きくなる。
【0068】
(4)第1及び第2のストッパ部材42,43は、合成樹脂材料により一体形成されていることから、これら第1及び第2のストッパ部材42,43の構造、ひいてはストッパ機構41の構成の簡素化が図られる。
【0069】
(5)第1及び第2のストッパ部材42,43(正確には、これらの係合部材54,64)は、主動歯車24の歯以外の部位、すなわち支持部27の第1及び第2の切欠部27a,27bに係合させるようにした。主動歯車24の歯を保護する等の観点で、当該歯以外の部分で主動歯車24の回転を規制することが求められる場合も想定されるところ、このような要求に対応することができる。
【0070】
なお、前述したように主動歯車24の歯の部分に係合部材54,64を係合させることも可能であるところ、これら係合部材54,64の主動歯車24に対する係合部位を、歯の部分に設定するのか、あるいは歯以外の部分に設定するのかは、舵角センサ11の製品仕様等に応じて設定される。係合部材54,64の主動歯車24に対する係合部位を、歯の部分に設定する場合には、主動歯車24に係合部材54,64を係合させる部位、すなわち第1及び第2の切欠部27a,27bを形成する必要がないことから、主動歯車24の構造の簡素化が図られる。
【0071】
(6)第1及び第2のストッパ部材42,43の軸部51,61に捻りコイルばね57,67を装着し、この弾性力により第1及び第2のストッパ部材42,43を係合位置に弾性保持するようにした。このため、ストッパ機構41の構成を複雑化することなく、係合部材54,64の主動歯車24に対する好適な係合力を得ることができる。
【0072】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、舵角センサのステアリング装置に対する取り付けの態様、及び主動歯車の回転を規制するストッパ機構の構成の点で前記第1の実施の形態と主に異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図6に示すように、本実施の形態において、舵角センサ11は、回転コネクタ12と、当該回転コネクタ12のステアリングホイールと反対側の側面である下面(図6中の左側の側面)に固定されるブラケット13とにより挟持されている。正確には、舵角センサ11は、そのハウジング21を構成するアッパーハウジング22を回転コネクタ12側へ向けて当該回転コネクタ12の下面に位置決め状態で固定され、この固定された舵角センサ11を下方から覆うようにブラケット13が当該舵角センサ11のハウジング21に固定される。そしてこの舵角センサ11のハウジング21の内部には、前記第1の実施の形態と同様に、当該舵角センサ11の回転コネクタ12に対する装着の前後で、主動歯車24の回転を規制する回転規制状態と、主動歯車24の回転を許容する回転許容状態との間において状態が変化するストッパ機構81が設けられている。
【0074】
図7(a)に示すように、このストッパ機構81は、主動歯車24の軸線方向(図中の上下方向)において変位するストッパ部材82を備えてなる。ストッパ部材82は、合成樹脂材料により全体としてL字状に形成されている。ストッパ部材82は、主動歯車24の下面に対向配置されてその半径方向へ延びる矩形平板状の係合部材83、及び係合部材83の外端部に立設された矩形平板状の腕部84、及び腕部84の上端部に設けられた直方体状の作動部材85を備えてなる。
【0075】
係合部材83は、その内端部、すなわち腕部84が形成された端部と反対側の端部が、主動歯車24の下面側の支持部28に切欠形成された係合凹部28aに対し上下方向において対応するように、且つ、挿通孔24aの内周面から突出しないように形成されている。また、係合部材83は、その外端部が主動歯車24の歯先よりも外側に位置するように形成されている。そして、この係合部材83の主動歯車24の歯先よりも外側に位置する部分に、前記腕部84が主動歯車24の歯先に対向した状態で上方へ延びるように形成されている。
【0076】
そしてこの腕部84の上端部に設けられた作動部材85は、その主動歯車24側の側面が腕部84の主動歯車24側の側面に対して段差のない状態、すなわち面一とされるとともに、腕部84に対して主動歯車24と反対側へ突出するかたちで設けられている。また、作動部材85は、その上部がアッパーハウジング22に形成された開口部22bを介して外部に突出するように設けられている。
【0077】
さらに作動部材85の下面と当該下面に対向するロアハウジング23の内底面との間には、圧縮コイルばね86が設けられている。圧縮コイルばね86の弾性力により、ストッパ部材82は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材82の上方への変位は、作動部材85における主動歯車24と反対側の側面の下部に突設された係合部85aが、アッパーハウジング22の内頂面における開口部22bの周縁部に内側から係合することにより規制される。この状態において、係合部材83は、図7(a)に実線で示されるように、主動歯車24の支持部28に形成された係合凹部28aに進入した状態に保持される。すなわち、係合部材83が係合凹部28aに対して主動歯車24の回転方向において係合する係合状態に保持されることにより、主動歯車24の回転が規制される。
【0078】
なお、圧縮コイルばね86の両端部には、作動部材85の下面に形成された突部87、及びロアハウジング23の内底面に形成された突部88が挿入されることにより、ハウジング21の内部における位置決めがなされている。
【0079】
作動部材85の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位に対し、上方から所定の外力が付与された際には、ストッパ部材82は、圧縮コイルばね86の弾性力に抗して下方へ変位する。そして図7(a)に二点鎖線で示されるように、作動部材85の上面がアッパーハウジング22の上面に対して面一になる位置まで当該作動部材85が下方へ変位したときに、係合部材83は主動歯車24の係合凹部28aの下方に位置する。すなわち、係合部材83は、係合凹部28aとの係合が解除された非係合状態となる。なお、ロアハウジング23において、係合部材83に対応する部位には、当該係合部材83の下方への変位を許容する逃げ部89が開口して形成されている。
【0080】
なお、アッパーハウジング22の開口部22bの内形形状を作動部材85の外形形状とほぼ同じとし、ストッパ部材82の上下方向への変位が作動部材85を介して案内されるようにすることも可能である。すなわちこの場合、アッパーハウジング22の開口部22bが形成された部位は、ストッパ部材82の上下方向への変位を案内する案内手段として機能する。また、ハウジング21の内部にストッパ部材82の上下方向への変位を案内する構成を別途設けるようにしてもよい。このような構成を採用した場合には、ストッパ部材82の上下方向への変位が円滑に行われる。
【0081】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材82が図7(a)に実線で示される係合位置に保持された状態、すなわち係合部材83が主動歯車24の支持部28に形成された係合凹部28aに係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、回転コネクタ12に装着される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構81によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態で回転コネクタ12に装着される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0082】
そして前述したように、舵角センサ11は、そのアッパーハウジング22の上面を回転コネクタ12の下面に対して押し付けるようにして取り付けられる。舵角センサ11のアッパーハウジング22が回転コネクタ12の下面に押し付けられるのに伴い、ストッパ部材82の作動部材85にはその上方から押圧力が作用し、ストッパ部材82の全体が下方へ変位する。ストッパ部材82は、アッパーハウジング22の上面が回転コネクタ12の下面に密接されるまで下方へ変位し、図7(a)に二点鎖線で示される非係合位置に至る。すなわち、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着することにより、ストッパ部材82は作動部材85のアッパーハウジング22の上面に対する突出量の分だけ下方へ変位し、これにより、図7(a)に実線で示される係合位置から同じく二点鎖線で示される非係合位置へ変位する。この結果、主動歯車24の回転が許容される。
【0083】
したがって、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様に、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業は簡単なものとなる。さらに、ストッパ部材82は、ハウジング21の内部に組み込まれるかたちで設けられるので、舵角センサ11の輸送時あるいは回転コネクタ12への取り付け作業時に、これらストッパ部材82が脱落することはなく、主動歯車24を確実にロック状態、すなわちその回転が規制された状態に維持することができる。
【0084】
なお、本実施の形態のストッパ機構81を備えた舵角センサ11は、前記第1の実施の形態に示されるように、ブラケット13のセンサ収容部15(図1参照)に装着することも可能である。この場合、作動部材85の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位には、例えば図7(b)に示されるように、センサ収容部15に対する舵角センサ11の挿入方向へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面90を形成する。そして舵角センサ11のセンサ収容部15への挿入に伴い、作動部材85の傾斜面90がセンサ収容部15の一部分、例えば当該センサ収容部15の内部に設けられる係合構造に対して相対的に係合することにより、ストッパ部材82の全体が下方へ変位するように構成する。このようにすれば、本実施の形態のストッパ機構81を備えた舵角センサ11をセンサ収容部15に装着することにより、ストッパ部材82を図7(a)に実線で示される係合位置から同じく二点鎖線で示される非係合位置へ変位させることができる。
【0085】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ部材を主動歯車の歯に係合させるようにした点で、前記第2の実施の形態と異なる。
【0086】
図8に示されるように、ハウジング21(同図では図示略)の内部には、主動歯車24の回転を規制するストッパ機構91が当該主動歯車24の側方に近接して配設されている。このストッパ機構91のケース92は、上部が開口した有底角筒状に形成され、ハウジング21の内部に固定されている。そしてこのケース92の内部には、合成樹脂材料により一体形成されたストッパ部材93が上下方向へ変位可能に設けられている。図9(a)に示すように、ストッパ部材93の直方体状の本体94において、その主動歯車24側の側面には2つの係合部材95,96が主動歯車24の回転方向に沿う方向において所定の間隔をおいて突設されている。
【0087】
本体94の主動歯車24側の一部分及びその側面に設けられた2つの係合部材95,96は、ケース92の主動歯車24側の側壁に形成された開口部97を介して主動歯車24側へ突出している。そして2つの係合部材95,96は、これらの間に主動歯車24の1つの歯が介在可能となるように、換言すれば主動歯車24の各歯の間に介在可能となるように、ケース92の主動歯車24側の側面からの突出量が設定されている。また、2つの係合部材95,96は、図10に示されるように、主動歯車24の各歯に噛み合うかたちで係合するように、それらの形状が設定されている。さらに、図9(a)に示されるように、2つの係合部材95,96の上部には、これらの先端側、すなわち主動歯車24側へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面95a,96aが形成されている。
【0088】
また、本体94の上部には、直方体状の作動部材98が立設されている。この作動部材98は、図8に二点鎖線で示されるアッパーハウジング22の開口部22bを介して外部に突出するように設けられている。
【0089】
さらに、図9(a)に示されるように、本体94において、主動歯車24の回転方向に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面には、上下方向へ延びる2つの突条99a,99bが形成されている。また、本体94の係合部材95,96が形成された側面と反対側の側面にも上下方向へ延びる突条99cが形成されている。これら突条99a,99b,99cは、ケース92の側壁において、これら突条99a,99b,99cに対応して形成された3つの案内溝100a,100b,100c内に上下方向において摺動可能に嵌合されている。この構成により、ストッパ部材93の上下方向への変位が円滑に行われる。
【0090】
そして図9(b)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間には、圧縮コイルばね101が設けられている。圧縮コイルばね101の弾性力により、ストッパ部材93は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材93の上方への変位は、本体94の上面がケース92の内側面の上部に形成された2つの係合突部102a,102bに係合することにより規制される。ここでは、これら係合突部102a,102bは、ケース92において、主動歯車24の回転方向に沿う方向において互いに対向する2つの内側面の上部に形成されている。
【0091】
本体94の上面がケース92の2つの係合突部102a,102bに係合した状態において、ストッパ部材93の2つの係合部材95,96は、図10及び図11(a)に示されるように、主動歯車24の各歯の間に進入し噛み合った状態に保持される。すなわち、係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合することにより当該主動歯車24の回転が規制される。なお、圧縮コイルばね101の両端部には、本体94の下面に形成された突部103、及びケース92の内底面に形成された突部104が挿入されることにより、ケース92の内部における位置決めがなされている。
【0092】
そして作動部材98の上部、すなわちアッパーハウジング22の上面から突出した部位に対し、上方から所定の外力が付与された際には、ストッパ部材93は、圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ変位する。図11(b)に示されるように、作動部材98の上面がアッパーハウジング22の上面に対して面一になる位置まで当該作動部材98が下方へ変位したときに、係合部材95,96は主動歯車24の各歯の下方に位置する。すなわち、係合部材95,96は、主動歯車24の歯との係合が解除された非係合状態となる。
【0093】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材93が図11(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわち係合部材95,96が主動歯車24の各歯に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、回転コネクタ12に装着される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構91によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態で回転コネクタ12に装着される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0094】
そして前述したように、舵角センサ11は、そのアッパーハウジング22の上面を回転コネクタ12の下面に対して押し付けるようにして取り付けられるところ、これに伴いストッパ部材93の作動部材98にはその上方から押圧力が作用し、ストッパ部材93の全体が下方へ変位する。ストッパ部材93は、アッパーハウジング22の上面が回転コネクタ12の下面に密接されるまで下方へ変位し、図11(b)に示される非係合位置に至る。すなわち、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着することにより、ストッパ部材93は、作動部材98のアッパーハウジング22の上面に対する突出量の分だけ下方へ変位し、これにより、図11(a)に示される係合位置から図11(b)に示される非係合位置へ変位する。
【0095】
したがって、本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様に、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11を回転コネクタ12に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができる。このため、舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業は簡単なものとなる。さらに、本実施の形態のストッパ機構91は、ストッパ部材93及び圧縮コイルばね101が単一のケース92の内部に組み込まれてなる単一のユニットとして構成されている。このため、ストッパ部材93及び圧縮コイルばね101をハウジング21の内部に直接的に組み付けるようにした場合に比べ、ストッパ機構91のハウジング21の内部への取り付け作業が簡単になる。
【0096】
なお、本実施の形態では、2つの係合部材95,96を主動歯車24の歯に係合させるようにしたが、一方を省略してもよい。逆に、3つあるいはそれ以上の係合部材を設けるようにしてもよい。この場合、3つあるいはそれ以上の係合部材は、主動歯車24の各歯にかみ合いやすくするために、主動歯車24の外形形状に応じて曲線状に配設することが好ましい。また本実施の形態では、単一のストッパ機構91により主動歯車24の回転を規制するようにしたが、複数のストッパ機構91により主動歯車24の回転を規制するようにしてもよい。
【0097】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、舵角センサのステアリング装置に対する取り付けの態様を前記第1の実施の形態と同様にした点、及びこれに伴いストッパ部材の構造を変更した点において、前記第3の実施の形態と主に異なる。したがって、前記第1及び第3の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0098】
本実施の形態の舵角センサ11は、図1に示されるように、ステアリングホイールの背面側に配設される円柱状の回転コネクタ12と一体をなす箱体状のブラケット13のセンサ収容部15に側方から装着された状態で車両のステアリング装置(操舵装置)に取り付けられる。また、本実施の形態の舵角センサ11のハウジング21に収容されるストッパ機構は、基本的には図8あるいは図9に示される前記第3の実施の形態のストッパ機構91と同様の構成を備えてなる。
【0099】
すなわち、図12に示されるように、本実施の形態のストッパ機構110のストッパ部材111は、第3の実施の形態と同様に本体94を有してなり、この上面(紙面手前側)には、台形断面を有する作動部材112が設けられている。詳述すると、図13(a)に示すように、作動部材112において、主動歯車24と反対側の部位には、上部へ向かうにつれて主動歯車24側へ傾斜する傾斜面112aが形成されている。また作動部材112の上部にはアッパーハウジング22の内頂面に当接する平面として当接面112bが形成されている。
【0100】
そして図13(a)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間に設けられた圧縮コイルばね101の弾性力により、ストッパ部材111は上方へ常時付勢されている。このストッパ部材111の上方への変位は、作動部材112の上面でもある当接面112bがアッパーハウジング22の内頂面に係合することにより規制される。そしてこの状態において、2つの係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合するように、作動部材112の本体94の上面からの突出量が設定されている。2つの係合部材95,96は、図12及び図13(a)に示されるように、主動歯車24の各歯の間に進入し噛み合った状態に保持される。
【0101】
なお、本実施の形態においては、作動部材112の一部をハウジング21の外方へ突出させる必要がないことから、第3の実施の形態におけるアッパーハウジング22の開口部22bは省略されている。
【0102】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材111が図13(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちその係合部材95,96が主動歯車24の歯に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すなわち、舵角センサ11はストッパ機構110によりその絶対角0度となる基準位置に保持された状態でセンサ収容部15に挿入される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。
【0103】
図13(a)に示されるように、舵角センサ11のセンサ収容部15への挿入に伴い、当該センサ収容部15の内部に設けられる直方体状の押圧部材113が、ハウジング21の図示しない挿通孔及びケース92の主動歯車24と反対側の側壁の上部に形成された切欠部114を介して、ケースの内部に進入する。そして、図13(a)に二点鎖線で示されるように、押圧部材113(正確には、その先端下部)が作動部材112の傾斜面112aに当接した状態で、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部へさらに押し込まれると、当該押圧部材113はその先端下部において傾斜面112aに案内されながら当該傾斜面112aに対しその上部側へ相対的に変位するとともに、ケース92の内方へさらに進入する。この押圧部材113の進入に伴って、ストッパ部材111は圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ押し下げられる。すなわち、押圧部材113を通じてストッパ部材111に付与される主動歯車24側(図13(a)中の左側)への押圧力は、傾斜面112aにより当該ストッパ部材111に対する下方への押圧力に変換される。
【0104】
そして押圧部材113が傾斜面112aと当接面112bとの境界部分を乗り越えたとき、ストッパ部材111は、図13(b)に示される非係合位置まで押し下げられる。すなわち、2つの係合部材95,96の主動歯車24の歯に対する係合状態は、これら歯に対して係合する係合状態から、同じく歯に対する係合が解除される非係合状態へと変化する。したがって、主動歯車24は回転可能になる。
【0105】
また、押圧部材113が傾斜面112aと当接面112bとの境界部分を乗り越えた後は、押圧部材113のハウジング21の内方へのさらなる進入に伴い、作動部材112の当接面112bは押圧部材113の下面に対し相対的に当該押圧部材113の挿入方向と反対側へ摺動する。そして、舵角センサ11の先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで当該舵角センサ11が挿入されると、当該舵角センサ11のセンサ収容部15への装着は完了となる。このとき、押圧部材113の先端部は、主動歯車24に干渉しない程度に、ケース92の開口部97を介して主動歯車24側へ突出している。
【0106】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
・前記第3の実施の形態と同様に、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。
【0107】
・加えて、回転コネクタ12の下面に対するハウジング21の装着に伴い当該ハウジング21の内部に挿入される押圧部材113により、作動部材112が押圧部材113のハウジング21に対する挿入方向へ押圧されることにより、ストッパ部材111の主動歯車24に対する係合が自動的に解除される。すなわち、ストッパ部材111はその全体がハウジング21の内部に収容されることから、好適に保護される。
【0108】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ部材を主動歯車の本体平面部分に係合させるようにした点で、前記第4の実施の形態と主に異なる。
【0109】
図14に示すように、主動歯車24の本体平面部分には、3つの係合孔120が形成されている。これら係合孔120は、当該本体平面部分の半径よりも小さな半径を有する同一の仮想円周上に所定間隔をおいて設けられている。そして、主動歯車24の下方(図14における紙面奥側)には、3つのストッパ機構121が3つの係合孔120に対応するように配設されている。
【0110】
このストッパ機構121は、基本的には図12あるいは図13(a),(b)に示される前記第4の実施の形態のストッパ機構110と同様の構成を備えてなる。すなわち、図15(a)に示されるように、本実施の形態のストッパ機構121のストッパ部材122は、第4の実施の形態と同様に本体94を有してなる。この本体94の上面には、図15(c)に併せて示されるように、台形断面を有する前述と同様の作動部材112に加え、台形断面を有する係合部材123が主動歯車24の回転方向に沿う方向において並設されている。また本実施の形態において、作動部材112の上面でもある当接面112bは、図15(a)に示されるように、ケース92の主動歯車24側の側壁の上部に当該ケース92の内方へ向けて突設された係合壁124の下面に係合する。
【0111】
一方、図15(a)に示されるように、係合部材123はその本体94の上面に対する突出高さが、作動部材112の本体94の上面に対する突出高さよりも大きくなるように設定されている。また、作動部材112の当接面112bがケース92の係合壁124の下面に当接した状態において、係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120の内部にその下方から挿入されるように、本体94の上面に対する突出高さが設定されている。さらに、係合部材123において、主動歯車24と反対側の部位には、上部へ向かうにつれて主動歯車24側へ傾斜する傾斜面123aが形成されている。なお、本実施の形態においては、ストッパ部材122の一部を主動歯車24の歯に係合させる必要がないことから、第4の実施の形態における係合部材95,96は省略されている。
【0112】
そして前述したように、ストッパ部材122は、図15(a)に示されるように、本体94の下面とケース92の内底面との間に介装された圧縮コイルばね101の弾性力により常時上方へ付勢されている。このストッパ部材111の上方への変位は、作動部材112の当接面112bがケース92の係合壁124の下面に当接することにより規制される。この状態において、ストッパ部材122の係合部材123の先端部は、主動歯車24の係合孔120の内部にその下方から進入した状態に保持される。すなわち、係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120の内側面に係合することにより当該主動歯車24はその回転が規制された状態となる。
【0113】
さて、舵角センサ11は、ストッパ部材122が図15(a)に示される係合位置に保持された状態、すなわちその係合部材123の先端部が主動歯車24の係合孔120に係合して当該主動歯車24の回転が規制された状態で、ブラケット13のセンサ収容部15に挿入される。すると、これに伴いセンサ収容部15の内部に設けられる押圧部材113が、ハウジング21の図示しない挿通孔及びケース92の主動歯車24と反対側の側壁の上部に形成された切欠部114を介して、ケースの内部に進入する。
【0114】
そして、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部へさらに押し込まれると、ストッパ部材122は、その作動部材112と押圧部材113との係合を通じて圧縮コイルばね101の弾性力に抗して下方へ押し下げられ、図15(b)に示される非係合位置に至る。すなわち、係合部材123の主動歯車24の係合孔120に対する係合状態は、当該係合孔120に対して係合する係合状態から、同じく当該係合孔120に対する係合が解除される非係合状態へと変化する。このとき、係合部材123の先端は、主動歯車24の下方に位置していることから、主動歯車24の回転が許容される。舵角センサ11が、その先端面がセンサ収容部15の内底面15aに当接する位置まで挿入されると、当該舵角センサ11のセンサ収容部15への装着は完了となる。
【0115】
このように、本実施の形態によれば、前記第4の実施の形態と同様に、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態において主動歯車24はロック状態に保持される。このため、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する取り付け作業の過程で、主動歯車24が回転することはない。また、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。
【0116】
なお、本実施の形態において、ストッパ機構121の個数あるいは主動歯車24に対する配置については、製品仕様等に応じて適宜変更可能である。少なくとも単一のストッパ機構121を設ければよい。この場合、主動歯車24には、ストッパ機構121の個数あるいは配置に応じて係合孔120を形成する。また、主動歯車24の係合孔120は、主動歯車24の下面に形成される凹部等に置換可能である。すなわち、ストッパ機構121の係合部材123が主動歯車24の本体平面部分の一部に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制されればよい。
【0117】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ストッパ機構の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。舵角センサとしての基本的な構成は、先の図2〜図4に示される通りである。
【0118】
図16に示すように、ストッパ機構130は、ハウジング21の内部に設けられる第1及び第2のストッパ部材131,132を備えてなる。第1及び第2のストッパ部材131,132の間には主動歯車24が配設されている。これら第1及び第2のストッパ部材131,132は合成樹脂材料により角棒状に形成されるとともに、その基端側の図示しない部分を支点として主動歯車24に対して離間する方向への柔軟性を有してなる。そして、第1及び第2のストッパ部材131,132の先端部が主動歯車24を挟み込むかたちで当該主動歯車24の歯に係合することにより、当該主動歯車24の回転が規制される。
【0119】
ここで、第1及び第2のストッパ部材131,132の構造は、これらが主動歯車24に対して図中の左側あるいは右側のいずれの位置に配置されるのかということに起因する突部等の突出方向程度の差異しかない。このため、ここでは主動歯車24に対して図16中の左側に配置される第1のストッパ部材131の構成について代表的に説明することとし、主動歯車24に対して図16中の右側に配置される第2のストッパ部材132については、第1のストッパ部材131の各部構造と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0120】
さて、舵角センサ11が、前記第1の実施形態と同様に、センサ収容部15に装着されるものである場合には、図17(a)に示される第1のストッパ部材131が採用される。一方、舵角センサ11が、前記第2の実施の形態と同様に、回転コネクタ12の下面に装着されるものである場合には、図17(b)に示される第1のストッパ部材131が採用される。
【0121】
そこでまず、センサ収容部15に装着される舵角センサ11に適用される第1のストッパ部材131の構造について説明する。すなわち、図17(a)に示されるように、第1のストッパ部材131の先端部において、主動歯車24側(同図中の右側)の側面には、係合部材133が突設されている。この係合部材133は、舵角センサ11のセンサ収容部15に対する非装着状態にあっては、主動歯車24の互いに隣り合う2つの歯の間に噛み合うかたちで介在される。また、この第1のストッパ部材131の先端部における主動歯車24側の側面において、係合部材133よりも上側の部位には、当該第1のストッパ部材131の先端側へ向かうにつれて主動歯車24から離間する方向へ傾斜する傾斜面134が形成されている。
【0122】
そして、舵角センサ11がセンサ収容部15の内部に挿入されると、当該センサ収容部15の内部に設けられる押圧部材113の先端部が、ハウジング21の図示しない挿通孔を介して、第1のストッパ部材131の傾斜面134に係合する。さらに舵角センサ11がセンサ収容部15に挿入されると、押圧部材113の先端部は傾斜面134に案内されつつ第1のストッパ部材131の基端側へ変位し、これに伴い第1のストッパ部材131は図17(a)に二点鎖線で示されるように、その基端側の部位を支点として主動歯車24に対して離間する方向へ撓む。これにより、係合部材133と主動歯車24との係合が解除され、当該主動歯車24の回転が許容される。
【0123】
次に、回転コネクタ12の下面に装着される舵角センサ11に適用される第1のストッパ部材131の構造について説明する。すなわち、図17(b)に示されるように、第1のストッパ部材131の先端部において、主動歯車24側(同図中の右側)の側面に係合部材133が突設されている点は、図17(a)に示されるものと同様であるものの、次の点で構造が異なる。すなわち、第1のストッパ部材131において、主動歯車24側の側面の上部には、上方へ向かうにつれて主動歯車24から離間する方向へ傾斜する傾斜面135が形成されている。そして舵角センサ11の回転コネクタ12の下面に対する装着に伴い、押圧部材113の先端部が傾斜面135に上方から係合することにより、第1のストッパ部材131は、図17(b)に二点鎖線で示されるように、その基端側の部位を支点として主動歯車24に対して離間する方向へ撓む。これにより、係合部材133と主動歯車24との係合が解除され、当該主動歯車24の回転が許容される。
【0124】
なお、第1及び第2のストッパ部材131,132において、複数の係合部材133を設けるようにしてもよい。また、本実施の形態において、第1及び第2のストッパ部材131,132において、傾斜面134,135が形成される部位が本発明の作動部材に相当する。
【0125】
したがって、本実施の形態によっても、舵角センサ11をセンサ収容部15に装着するだけで、あるいは回転コネクタ12の下面に装着するだけで、ロック状態の主動歯車24を簡単にアンロック状態にすることができ、ひいては舵角センサ11の回転コネクタ12に対する組み立て作業を簡単なものとすることができる。また、第1及び第2のストッパ部材131,132自身が有する弾性を利用して係合部材133を係合状態に保持するようにしていることから、係合部材133、あるいは第1及び第2のストッパ部材131,132を主動歯車24側へ付勢するばね等の付勢部材を別途設ける必要がない。このため、第1及び第2のストッパ部材131,132の構造の簡素化、ひいてはストッパ機構130の構成の簡素化が図られる。
【0126】
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1〜第6の実施の形態では、磁気式の舵角センサを例に挙げて説明したが、これら実施の形態は、光学式の舵角センサにも適用することができる。すなわち、図18に示されるように、光学式の舵角センサ140は、ステアリングシャフト14に貫通状態で装着される回転板141を備えてなる。当該回転板141において、異なる半径を有する複数の円周上には、異なるパターンのスリット列142が設けられている。そして一対を一組とする複数組(スリット列142の列数と同数)の発光素子143及び受光素子144が、回転板141を間に挟むように且つ各スリット列142に対応するように配設されている。なお、図18では、便宜上、一組の発光素子143及び受光素子144のみを示す。
【0127】
発光素子143から出た光は、回転板141が回転量に応じて光の透過と遮断とが繰り返される。各受光素子144は、その対応するスリット列142のスリット142aを通過してきた光の有無、すなわちスリット142aの有無に応じて電気信号を出力する。換言すれば、各受光素子144は、合計で、スリット列142の列数と同数ビットのコードを出力する。スリット列142は、各受光素子144から出力されるコードが回転板141の1回転中において重複しないように設けられているため、光学式の舵角センサは、各受光素子144から出力されるコードに基づいて、回転板の1回転中(360°以内)の回転角度を絶対値で検出することができる。
【0128】
そしてこのように構成された舵角センサ140に第1の実施の形態を適用する場合には、回転板141の上面あるいは下面に、支持部27,28(第1及び第2の切欠部27a,27b)に相当する係合構造を設け、この係合構造に対して第1及び第2のストッパ部材42,43の係合部材54,64を係合させる。
【0129】
次に、舵角センサ140に第2の実施の形態を適用する場合には、回転板141の下面に、円筒状の支持部28(係合凹部28a)に相当する係合構成を設け、この係合構造に対してストッパ部材82の係合部材83を係合させる。
【0130】
次に、舵角センサ140に第3及び第4の実施の形態を適用する場合には、回転板141の外周縁あるいはその一部分に、主動歯車24の歯に相当する係合構造を設け、この係合構造に対してストッパ部材93の係合部材95,96を係合させる。
【0131】
次に、舵角センサ140に第5の実施の形態を適用する場合には、回転板141の平面部分において各スリット列142から外れた部位に、単数又は複数の係合孔120に相当する係合構造を設け、この係合構造に対してストッパ部材122の係合部材123を係合させる。またこの場合には、係合部材123を回転板141のスリット142aに係合させることにより主動歯車24の回転を規制することも可能である。このようにすれば、係合孔120等のような係合部材123が係合する部分を回転板141に別途設ける必要がない。
【0132】
最後に、舵角センサ140に第6の実施の形態を適用する場合には、回転板141の外周縁あるいはその一部分に、主動歯車24の歯に相当する係合構成を設け、この係合構造に対して第1のストッパ部材131の係合部材133、及び第2のストッパ部材132の係合部材を係合させる。
【0133】
・各実施の形態では、主動歯車24の回転を直接的に規制するようにしたが、当該主動歯車24に噛合する第1及び第2の従動歯車25,26の少なく一方の回転を規制するようにしてもよい。第1及び第2の従動歯車25,26の少なく一方の回転が規制されることにより、主動歯車24の回転も規制される。この場合には、ストッパ機構の体格あるいはハウジング21の内部における配置等については、適宜調整する。
【0134】
・各実施の形態に示される磁気式あるいは光学式の舵角センサの搭載先は、車両のステアリング装置に限られない。軸等の回転部品の回転角度を検出する必要のある機器及び装置であれば、適宜適用することができる。
【0135】
・各実施の形態に示されるストッパ機構の搭載先は、軸等の回転部品の回転角度を検出するものに限られない。特定の軸部材と一体回転する主動歯車24あるいは回転板141の回転態様を当該軸部材の回転態様として検出する回転検出装置全般に好適である。
【0136】
<他の技術的思想>
次に、前記各実施の形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記ストッパ部材が係合する前記回転体の一部は、当該回転体の軸線に交わる平面部分に設けられた被係合部である回転検出装置。この構成によれば、ストッパ部材が回転体の軸線に交わる平面部分に設けられた被係合部に係合することにより、回転体の回転が規制される。
【0137】
(ロ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記回転体として歯車を採用するとともにこれに噛合する2つの他の歯車の回転態様に基づき前記回転体としての歯車の回転態様を検出するようにし、前記ストッパ部材が係合する前記回転体の一部は、当該回転体としての歯車の歯又は前記他の歯車の歯のいずれかである回転検出装置。この構成によれば、係合部材が前記回転体としての歯車の歯又は前記他の歯車の歯のいずれかに係合することにより、回転体の回転が規制される。また、係合部材が係合する部分を歯車に別途設ける必要がない。
【0138】
(ハ)請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記回転体として特定の光学パターンが貫通して設けられた回転板を採用するとともに当該回転板の光学パターンを光学的に読み取ることにより当該回転体の回転態様を検出するようにし、前記係合部材が係合する前記回転体の一部は、前記回転板の光学パターンが形成される部位である回転検出装置。この構成によれば、係合部材が前記回転板の光学パターンが形成される部位に係合することにより、回転体の誤回転が規制される。また、係合部材が係合する部分を回転板に別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】第1の実施形態における舵角センサの取付態様の概略を示す斜視図。
【図2】同じく(a)は、主動歯車とハウジングとの組立態様を示す分解斜視図、(b)は、舵角センサの内部構造の概略を示す斜視図。
【図3】同じく従動歯車、永久磁石及び磁気センサの組付態様を示す図1の1−1線断面図。
【図4】磁気式の舵角センサの電気的な構成を示すブロック図。
【図5】(a)は、第1の実施の形態において、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図6】第2の実施の形態の舵角センサの取付態様の概略を示す斜視図。
【図7】同じく(a)は、ストッパ機構の概略構成を示す図6の2−2線断面図、同じく(b)はストッパ部材の変形例を示す要部斜視図。
【図8】第3の実施の形態におけるストッパ機構の概略構成を示す斜視図。
【図9】同じく(a)は、ストッパ機構の分解斜視図、(b)はストッパ機構を係合部材側から見た正面図。
【図10】同じくストッパ機構の平面図。
【図11】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図12】第4の実施の形態におけるストッパ機構の平面図。
【図13】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図。
【図14】第5の実施の形態におけるストッパ機構の主動歯車に対する配置状態を示す平面図。
【図15】同じく(a)は、係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(b)は、同じく非係合位置にあるストッパ部材と主動歯車との位置関係を示す要部平面図、(c)は、同じくストッパ部材の概略構成を示す斜視図。
【図16】第6の実施の形態におけるストッパ機構の主動歯車に対する配置状態を示す平面図。
【図17】同じく(a),(b)は、ストッパ部材の概略構成を示す要部斜視図。
【図18】他の実施の形態における光学式の舵角センサの概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0140】
11…舵角センサ(回転検出装置)、12…回転コネクタ(取付対象)、13…ブラケット(取付対象)、14…ステアリングシャフト(回転検出対象)、21…ハウジング、24…主動歯車(回転体)、27a…第1の切欠部27a(被係合部)、41…ストッパ機構、42…第1のストッパ部材、43…第2のストッパ部材、54,64…係合部材、55,65…作動部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の取付対象に装着されるハウジングに内包された状態で、特定の軸線を中心として回転する回転検出対象に対して同軸状に且つ一体回転可能に設けられる回転体を備え、その回転方向における基準位置を原点とする当該回転体の回転態様を前記回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、
前記ハウジングの内部には、前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合状態と前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合状態との間で状態変化するストッパ部材を設け、
前記ストッパ部材は、前記ハウジングが前記取付対象に装着されていない非装着状態にあっては前記係合状態に弾性保持される一方、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴う当該取付対象の一部分との係合を通じて前記係合状態から前記非係合状態へ状態変化するとともに前記ハウジングが前記取付対象に装着された装着状態にあっては前記非係合位置に保持されるようにした回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、合成樹脂材料により一体形成されてなる回転検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記ハウジングの内部において前記回転体の一部分に係合する係合部材及び当該係合部材に連結されてその一部あるいは全部が前記ハウジングの外面から突出する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてハウジングの内方へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにした回転検出装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記回転体の一部分に係合する係合部材及び前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い当該ハウジングの内部に挿入される前記取付対象の一部分に係合する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてその挿入方向へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにした回転検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記係合状態として前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と前記非係合状態として前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位可能に設け、
前記ハウジングの内部には、前記ストッパ部材を前記係合位置側へ常に付勢する付勢部材を配設するようにした回転検出装置。
【請求項1】
特定の取付対象に装着されるハウジングに内包された状態で、特定の軸線を中心として回転する回転検出対象に対して同軸状に且つ一体回転可能に設けられる回転体を備え、その回転方向における基準位置を原点とする当該回転体の回転態様を前記回転検出対象の回転態様として検出する回転検出装置において、
前記ハウジングの内部には、前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合状態と前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合状態との間で状態変化するストッパ部材を設け、
前記ストッパ部材は、前記ハウジングが前記取付対象に装着されていない非装着状態にあっては前記係合状態に弾性保持される一方、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴う当該取付対象の一部分との係合を通じて前記係合状態から前記非係合状態へ状態変化するとともに前記ハウジングが前記取付対象に装着された装着状態にあっては前記非係合位置に保持されるようにした回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、合成樹脂材料により一体形成されてなる回転検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記ハウジングの内部において前記回転体の一部分に係合する係合部材及び当該係合部材に連結されてその一部あるいは全部が前記ハウジングの外面から突出する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてハウジングの内方へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにした回転検出装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記回転体の一部分に係合する係合部材及び前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い当該ハウジングの内部に挿入される前記取付対象の一部分に係合する作動部材を備えるとともに、前記ハウジングの前記取付対象に対する装着に伴い前記作動部材が当該取付対象の一部分との係合を通じてその挿入方向へ押圧されることにより前記係合部材が前記回転体の一部分に係合する係合状態から当該係合が解除される非係合状態へ状態変化するようにした回転検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転検出装置において、
前記ストッパ部材は、前記係合状態として前記回転体の一部分に係合してその回転を規制する係合位置と前記非係合状態として前記回転体の一部分に対する係合が解除されてその回転を許容する非係合位置との間を変位可能に設け、
前記ハウジングの内部には、前記ストッパ部材を前記係合位置側へ常に付勢する付勢部材を配設するようにした回転検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−8218(P2010−8218A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167692(P2008−167692)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]