説明

回転検出装置

【課題】回転角度を算出することなく、回転軸が予め定めた角度に位置することを検出することができる回転検出装置を提供する。
【解決手段】シフトポジション検出装置1は、シャフト3の回転に伴って磁界の向きが変わるように配置された磁石21と、磁石21の磁界に応じて信号を出力し、シャフト3が予め定めた回転角度にあるときに出力する信号が切り替わるように配置されるMRセンサと、複数のMRセンサ200a〜200dの出力する信号が切り替わる回転角度がそれぞれ異なるようにMRセンサ200a〜200dを配置し、複数のMRセンサ200a〜200dの出力する信号の組み合わせに応じてシャフト3の角度範囲を検出するシフトポジション検出手段801とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転角度を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界の変化を磁気検出素子により検出して回転軸の回転角度を検出する回転検出装置がある(例えば、特許文献1参照)。この回転検出装置は、回転軸の回転に伴い回転軸の周りを回転する2つの磁石と、回転軸が回転するときに2つの磁石から発せられる磁界の変化を検出して信号を出力する磁気センサと、磁気センサから出力された信号から回転軸の回転角度を算出する演算回路及び制御部とを備える。
【0003】
この回転検出装置によれば、磁気センサとして磁気抵抗素子をブリッジ回路によって構成した検出部を、それぞれが磁界を検出する方向が異なるように2つ設け、2つの検出部の出力信号の差分を演算することで、回転軸の回転に伴い回転軸の周りを回転する2つの磁石から発せられる磁界の変化を検出する。このため、連続的に回転軸の回転角度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−38766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す回転検出装置は、検出した回転軸の回転角度が予め定めた回転角度の範囲であるかどうかを判断するためには、回転軸の回転角度を算出した後に、検出した回転角度が予め定めた回転角度の範囲であるかどうか判断する必要があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、回転角度を算出することなく、回転軸が予め定めた角度に位置することを検出することができる回転検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、回転軸の回転に伴って磁界の向きが変わるように前記回転軸に対して配置された磁石と、前記磁石の磁界に応じて信号を出力し、前記回転軸が予め定めた回転角度にあるときに出力する信号が切り替わるように配置される磁気センサと、前記磁気センサの出力する信号が切り替わる回転角度がそれぞれ異なるように前記磁気センサを複数配置し、前記複数の磁気センサの出力する信号の組み合わせに応じて前記回転軸の角度範囲を検出する検出手段とを有する回転検出装置を提供する。
【0008】
上記回転検出装置は、前記回転軸の回転角度と前記磁石の磁界の方向の回転角度とを予め定めた比率で伝達する減速機をさらに有してもよい。
【0009】
上記回転検出装置の前記磁石は、平板状に形成され、表面に平行に磁界が生じるよう着磁されており、前記磁気センサは、前記磁石の表面に平行に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転角度を算出することなく、回転軸が予め定めた角度に位置することを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置を示す概略斜視図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2の構成を示す概略図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るMRセンサ200aの配置関係を説明するための図であり、図3(a)は概略平面図、図3(b)は基準方向Aに対する配置関係を示す図表である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2の回路構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション情報810の内容を示す図である。
【図6】図6(a)〜(e)は、本発明の第1の実施の形態に係る磁石21及びシフトレバー4のシフトポジション70a〜70eにおける配置を示す概略平面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2のMRセンサ200a〜200dの出力信号を示すグラフ図及び対応表である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係るシフトポジション検出装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
(シフトポジション検出装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置を示す概略斜視図である。
【0013】
このシフトポジション検出装置2は、例えば、車両のシフトユニット1に設けられるものであって、金属製のシャフト3の一端に取り付けられた円盤状の磁石21と、シャフト3の回転に伴って変化する磁石21の磁界の向きを検出する磁気センサユニット20とを有する。磁気センサユニット20は、検出した磁界の向きに応じて信号を出力し、その出力信号から後述するECUがシャフト3の回転位置を判定する。
【0014】
磁気センサユニット20は、後述する複数のMR(Magneto Resistance)センサを有し、MRセンサは、例えば、複数のMR素子を用いたブリッジ回路及びそのブリッジ回路の出力を変換して信号を出力するICによって構成される。ブリッジ回路は、予め定めた感磁方向を有し、その感磁方向に対する外部の磁界の正弦成分に比例した値を出力する。つまり、感磁方向と外部の磁界の方向が一致したとき(又は感磁方向と外部の磁界の方向が逆向きのとき)、出力値が最も大きく(又は小さくなる)。また、感磁方向と外部の磁界の方向が直交したとき、出力値は0となる。ICは、ブリッジ回路の出力が正のときHigh信号(例えば、+5V)を、負のときLow信号(例えば、0V)を出力する。
【0015】
シフトユニット1は、一端をシャフト3に連結部材30で連結されて他端をグリップ部としたシフトレバー4と、シフトレバー4を案内するシフトゲート5及びシフトレバー4のシフトポジションを視覚的に運転者に提示するシフトポジション表示部7を備えた合成樹脂からなるシフトパネル6とを有する。
【0016】
シフトレバー4は、シフトポジション表示部7の表示「P」、「R」、「N」、「D」、「L」に応じたシフトポジション70a〜70eをステップ式に移動するよう構成される。シャフト3は、シフトレバー4がステップ式に移動するようシフトポジション70a〜70eに応じた位置に図示しないノッチ等を有する。なお、「P」、「R」、「N」、「D」、「L」はそれぞれ車両の駆動系の動作状態を示しており、パーキング、リア、ニュートラル、ドライブ、ローギヤの状態を示す。また、シャフト3の磁石21が設けられた一端と逆側の他端がシフトロック機構等の他の機構に接続されていてもよい。
【0017】
図2(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2の構成を示す概略図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
【0018】
磁気センサユニット20は、円盤状の回路基板200上に配置された複数のMRセンサ200a〜200dを有する。磁石21は、半円状のN極21a及びS極21bから構成されて直径15mm程度の円盤形状を有し、シャフト3の一端に接着等により取り付けられる。なお、磁石21の大きさは一例であり、適宜変更してもよい。
【0019】
磁気センサユニット20及び磁石21は、それぞれシャフト3の中心軸上に中心を有して、互いに盤面が平行になるよう、また、磁石21の磁界を検出できるよう十分近くに配置される。
【0020】
MRセンサ200a〜200dは、磁石21の盤面に平行な磁界を検出するため、回路基板200の盤面にシャフト3の軸方向から投影した磁石21の盤面より内側に配置され、それぞれの感磁方向を異なる向きに設定される。なお、MRセンサは、4つに限らずシフトポジションの数に基づいて増減してもよい。
【0021】
図3(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るMRセンサ200aの配置関係を説明するための図であり、図3(a)は概略平面図、図3(b)は基準方向Aに対する配置関係を示す図表である。
【0022】
図3(a)に示すように、MRセンサ200aは、その感磁方向Bに直交して無感磁方向NBを有し、無感磁方向NBが予め定めた基準方向Aに対してαの角度をなすように配置される。なお、図示を省略するが、MRセンサ200b〜200dについても同様に、無感磁方向NB〜NBが基準方向Aに対してα〜αの角度をなすように配置される。また、基準方向Aは、製造者又は利用者が自由に設定することができるようにしてもよい。
【0023】
図3(b)に示すように、MRセンサ200a〜200dは、それぞれ基準方向Aに対して無感磁方向NB〜NBがそれぞれ15°、30°、45°、60°の角度をなすように配置される。なお、これらの角度はMRセンサが磁界を検出する角度の周期180°以内であれば、自由に設定可能である。また、MRセンサが180°と異なる角度の周期を有する場合は、その周期内で設定可能である。
【0024】
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2の回路構成を説明するためのブロック図である。
【0025】
シフトポジション検出装置2は、複数のMRセンサ200a〜200dと接続されて出力信号を受け付けるとともに演算等によって演算結果を出力するECU80と、情報を記憶する不揮発性のフラッシュメモリ等である記憶部81と、ECU80の演算結果に基づいた出力信号を出力先に適した信号に変換して出力する出力部82とを有する。
【0026】
ECU80は、MRセンサ200a〜200dの出力信号をそれぞれ受け付けるMRセンサ出力受付手段800と、MRセンサ出力受付手段800が受け付けた出力信号と記憶部81に記憶された後述するシフトポジション情報810とに基づいてシフトレバー4がシフトポジション70a〜70eのいずれに位置するか検出するシフトポジション検出手段801とを有する。シフトポジション検出手段801は、検出したシフトポジションに基づいて演算結果として出力信号を生成し、出力部82に出力する。
【0027】
出力部82は、ECU80のシフトポジション検出手段801の出力信号を受け付けて、出力先に適した信号に変換して出力する。出力先は、例えば、メーターパネルに設けられたシフトポジション表示のランプであり、該当するシフトポジションのランプを点灯させる信号を出力する。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション情報810の内容を示す図である。
シフトポジション情報810は、予め登録される情報であり、シフトポジション70a〜70eに対応付けてMRセンサ200a〜200dの出力信号の組み合わせを定義する。シフトポジション検出手段801は、シフトポジション情報810のうちMRセンサ200a〜200dの出力信号の組み合わせと一致するシフトポジションにシフトレバー4が位置すると判断する。
【0029】
(動作)
まず、運転者がシフトゲート5に沿ってシフトレバー4をいずれかのシフトポジション70a〜70eに移動すると、シフトレバー4の移動に伴ってシャフト3が回転する。磁石21は、シャフト3と共に回転し、その磁界の方向が追従して変化する。
【0030】
図6(a)〜(e)は、本発明の第1の実施の形態に係る磁石21及びシフトレバー4のシフトポジション70a〜70eにおける配置を示す概略平面図である。
【0031】
図6(a)に示すように、シフトレバー4がシフトポジション70aに位置する場合、磁石21の盤面の磁界の方向が基準方向Aと平行となる回転角度から時計反対回りに15°の範囲内に磁石21が配置される。
【0032】
図6(b)〜(e)における磁石21は、図6(a)の回転角度を基準として時計反対回りに15°づつ回転されたものであり、シフトレバー4は、それぞれシフトポジション70b〜70eに位置する。
【0033】
次に、磁気センサユニット20のMRセンサ200a〜200dは、磁石21による磁界を検出し、Low(L)信号又はHigh(H)信号を出力する。
【0034】
図7(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るシフトポジション検出装置2のMRセンサ200a〜200dの出力信号を説明する図であり、図7(a)はMRセンサ200a〜200dの検出する磁界と磁石21の角度の関係を示すグラフ図、図7(b)はMRセンサ200a〜200dが出力する信号と磁石21の角度の関係を示すグラフ図である。
【0035】
MRセンサ200a〜200dは、感磁方向Bに対する磁界の正弦成分を検出するため、図7(a)に示すように、それぞれシャフト3の回転角度に基づいて周期180°の正弦関数として振舞う。正弦関数は、MRセンサ200a〜200dの無感磁方向NBと磁石21の磁界の方向が一致するとき0となり、感磁方向Bと磁石21の磁界の方向が一致するとき又は反対となるとき、最大値又は最小値となる。
【0036】
MRセンサ200a〜200dは、正の磁界を検出しているときH信号を出力し、負の磁界を検出しているときL信号を出力するため、図6(b)に示すように、MRセンサ200a〜200dは、それぞれ無感磁方向NBと磁石21の磁界の方向が一致する回転角度においてL信号とH信号が切り替わるように信号を出力する。
【0037】
次に、ECU80のMRセンサ出力受付手段800は、MRセンサ200a〜200dの出力信号を受け付けて、シフトポジション検出手段801は、受け付けられたL信号とH信号の組み合わせに一致するシフトポジションをシフトポジション情報810に基づいて検出する。
【0038】
例えば、シフトレバー4がシフトポジション70bに位置するとき、磁石21の磁界の方向は、基準方向Aに対して回転角度15°〜30°の範囲内に位置するため、MRセンサ200aはH信号を、MRセンサ200b〜200dはL信号を出力する。シフトポジション検出手段801は、これらの信号及びシフトポジション情報810からシフトレバー4をシフトポジション70bの位置に検出する。
【0039】
(第1の実施の形態の効果)
上記した第1の実施の形態によると、MRセンサ200a〜200bの配置角度と磁石21の磁界の方向との関係性によって出力するL信号又はH信号の組み合わせから、シフトポジション検出手段801は、シャフト3の回転角度を検出するため、MR素子の磁気抵抗等から回転角度を算出する等の演算を実行することなく、回転軸が予め定めた角度に位置することを検出することができる。
【0040】
また、MRセンサ200a〜200b及びシフトポジション検出手段801は、いずれも磁界の強さを検出する必要がないため、シフトポジション検出装置2の組立の際に精密な位置合わせ等を必要とせず、組立工程を減少することができる。
【0041】
なお、シフトポジション検出装置2は、シフトユニット1に限らずシャフト3を有しているものであれば、例えば、ブレーキペダルやアクセルペダル、ステアリングシャフト等に設置しても良い。
【0042】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るシフトポジション検出装置を示す概略斜視図である。
【0043】
シフトポジション検出装置2Aは、第1の実施の形態のシフトポジション検出装置2の構成に加えてさらに減速機22を有する。減速機22は、シャフト3に接続されたギヤ22aと、磁石21に接続されたギヤ22bとを噛み合わせることで構成される。減速機22は、ギヤ22aの歯数をギヤ22bの歯数より少なく設定し、シャフト3の回転角度をギヤ22aとギヤ22bのギヤ比により減速して磁石21に伝達する。
【0044】
(第2の実施の形態の効果)
上記した第2の実施の形態によると、シャフト3の回転角度をギヤ22aとギヤ22bのギヤ比により減速して磁石21に伝達するように構成したため、磁気センサユニット20の回転角度の周期である180°以上のシャフト3の回転角度の位置を検出することができる。
【0045】
また、ギヤ比を逆転させることでシャフト3の回転角度をより精密に検出することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは調整しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…シフトユニット、2、2A…シフトポジション検出装置、3…シャフト、4…シフトレバー、5…シフトゲート、6…シフトパネル、7…シフトポジション表示部、15…回転角度、20…磁気センサユニット、21…磁石、21a…N極、21b…S極、22…減速機、22a、22b…ギヤ、30…連結部材、70a-70e…シフトポジション、81…記憶部、82…出力部、200…回路基板、200a-200d…MRセンサ、800…MRセンサ出力受付手段、801…シフトポジション検出手段、810…シフトポジション情報、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に伴って磁界の向きが変わるように前記回転軸に対して配置された磁石と、
前記磁石の磁界に応じて信号を出力し、前記回転軸が予め定めた回転角度にあるときに出力する信号が切り替わるように配置される磁気センサと、
前記磁気センサの出力する信号が切り替わる回転角度がそれぞれ異なるように前記磁気センサを複数配置し、前記複数の磁気センサの出力する信号の組み合わせに応じて前記回転軸の角度範囲を検出する検出手段とを有する回転検出装置。
【請求項2】
前記回転軸の回転角度と前記磁石の磁界の方向の回転角度とを予め定めた比率で伝達する減速機をさらに有する請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記磁石は、平板状に形成され、表面に平行に磁界が生じるよう着磁されており、
前記磁気センサは、前記磁石の表面に平行に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2716(P2012−2716A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138977(P2010−138977)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】