説明

回転角度検出装置

【課題】関節付き機械における関節部分や旋回軸付き機械における旋回軸の回転角度の検出に適用されて、小型・高分解能で、絶対角度の検出が可能であり、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】 関節部分を有する建設機械または産業機械等の関節付き機械において、前記関節部分の回転角度を検出する回転角度検出装置である。前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材のうちの片方の関節構成部材に回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段28を設ける。この磁気発生手段28の回転中心の軸方向に対向してもう片方の関節構成部材に、前記磁気発生手段28の磁気を検出する磁気アレイセンサ29を設ける。この磁気アレイセンサ29の出力から磁気発生手段28の回転角度を算出する角度算出手段30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設機械や産業機械等の関節付き機械における関節部分の回転角度や、旋回軸を有する建設機械等の旋回軸付き機械における旋回軸の回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、産業機械、ロボットなどの関節部や旋回軸の回転角度を検出するために、接触式のポテンショメータや、MRセンサやホールセンサ等の磁気式の回転センサを、関節部や旋回軸等に設置することが多い。
【0003】
なお、小型の機器に組み込みが可能で、かつ高精度な回転検出が可能な回転角度検出装置としては、磁気発生手段と磁気ラインセンサとを組み合わせたものが提案されている(特許文献2)。これには、小型モータの回転制御のための回転検出や、事務機器の位置検出のための回転検出に用いられることが開示されている。また、軸受と回転検出手段とを一体化して回転検出装置付き軸受とすることが開示されている。
【特許文献1】特開平9−105604号公報
【特許文献2】特開2004−037133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、接触式のポテンショメータでは、以下に挙げるような問題が有る。
(1)接触式では摩耗が生じることから耐久性に問題が有り、さらに接触子の接触圧力管理など組立調整が必要である。
(2)接触式では抵抗体の抵抗値(電圧値)から回転角度への換算が必要で、検出精度を上げるために非線型性の補正も必要である。
【0005】
また、磁気式の回転センサでも、以下に挙げるような問題が有る。
(1)磁気式では、パルス出力方式の場合には絶対角度が検出できないため、絶対角度の原点を検出する手段を別途設けて、運転前に原点出し動作を実行する必要がある。
(2)磁気式では分解能を上げるためにセンサギャップを厳しく管理する必要があり、組立調整作業が複雑化する。
(3)磁気センサで検出する磁気パターンを細かくしなければならず、小径化、小型化が難しい。
(4)磁気式で絶対角度を検出する場合は、検出精度を確保するためにセンサの非線型性を補正する手段が必要で、温度特性の補正も必要となる。
【0006】
特許文献2に示される磁気ラインセンサ式の回転角度検出装置は、種々の優れた機能を有するが、適用例として、小型モータの回転制御のための回転検出や、事務機器の位置検出のための回転検出が開示されているのみで、関節部や旋回軸等への適用例は開示されていない。
【0007】
この発明の目的は、関節付き機械における関節部分や旋回軸付き機械における旋回軸の回転角度の検出に適用されて、小型・高分解能で、絶対角度の検出が可能であり、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる回転角度検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の発明にかかる回転角度検出装置は、関節部分を有する建設機械または産業機械等の関節付き機械において、前記関節部分の回転角度を検出する装置であって、前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材のうちの片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の回転中心の軸方向に対向してもう片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものであることを特徴とする。
上記磁気アレイセンサと磁気発生手段の組み合わせによると、磁界の分布測定により回転角度を検出できるため、磁界の強さで検出するものと異なり、小型・高分解能で、絶対角度検出が可能な回転角度検出装置となる。そのため、関節付き機械の関節部分に上記構成の回転角度検出装置を搭載すると、省スペースで関節部分の絶対回転角度を高分解能に検出できる。また、この回転角度検出装置は磁界分布測定に基づく原理を利用したものであるため、磁気発生手段の温度特性の影響を受けず、環境変化に強いという特性が得られる。これにより、取付け調整の精度も不要となり、組み付け作業を簡便化できる。その結果、コンパクトで、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる。
【0009】
この発明において、前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材が、軸受を介して互いに回転自在に連結されたものであり、前記軸受が、前記磁気発生手段および磁気アレイセンサを有する角度検出部が設けられた回転検出装置付き軸受であっても良い。
このように軸受に回転角度検出装置を一体化することで、取付調整を簡略化でき、また軸受使用機器である関節付き機械の部品点数、組立工数の削減、およびより一層のコンパクト化が図れる。
【0010】
この発明の第2の発明にかかる回転角度検出装置は、旋回軸を有する建設機械等の旋回軸付き機械において、前記旋回軸の回転角度を検出する装置であって、前記旋回軸またはこの旋回軸と一体に旋回する部材に設けられて旋回中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の旋回中心の軸方向に対向して非旋回側部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものであることを特徴とする。
この構成の場合も、磁気アレイセンサと磁気発生手段の組み合わせにより、小型・高分解能で、絶対角度検出が可能という利点が効果的に発揮できる。特に、旋回軸に適用する場合、上記磁気アレイセンサによると、旋回軸の外周面を回転角度の検出に使用しなくて済むので、小型化の利点がより効果的なものとなり、旋回軸の絶対回転角度を高い分解能で検出できる。その結果、装置の高分解能化とコンパクト化が実現できる。また、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる。
【0011】
この発明において、前記旋回軸が軸受を介して旋回自在に支持されたものであり、前記軸受が、前記磁気発生手段および磁気アレイセンサを有する角度検出部が設けられた回転検出装置付き軸受であっても良い。
この構成の場合も、軸受に回転角度検出装置を一体化することで、取付調整を簡略化でき、また軸受使用機器である旋回軸付き機械の部品点数、組立工数の削減、およびより一層のコンパクト化が図れる。
【0012】
この発明の第3の発明にかかる回転角度検出装置接続体は、上記発明のいずれかの回転角度検出装置を複数設け、これら複数の回転角度検出装置の間で互いに信号を送受するデータ伝送手段を設けたものである。
このようにデータ伝送手段を設けた場合、回転角度検出装置を設ける装置が直列多関節ロボットのような構成であっても、1系統の配線で各回転角度検出装置間を接続できる。そのため、回転角度検出装置をコンパクトに構成できると共に、接続ケーブルの本数が減少し配線作業での接続ミスも低減できる。また、直列多関節ロボット等の装置の設計自由度も高まる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の第1の発明にかかる回転角度検出装置は、関節部分を有する建設機械または産業機械等の関節付き機械において、前記関節部分の回転角度を検出する装置であって、前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材のうちの片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の回転中心の軸方向に対向してもう片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものとしたため、関節付き機械における関節部分の回転角度の検出に適用して、省スペースで高分解能な絶対角度の検出が可能で、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる。
【0014】
この発明の第2の発明にかかる回転角度検出装置は、旋回軸を有する建設機械等の旋回軸付き機械において、前記旋回軸の回転角度を検出する装置であって、前記旋回軸またはこの旋回軸と一体に旋回する部材に設けられて旋回中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の旋回中心の軸方向に対向して非旋回側部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものとしたため、旋回軸付き機械における旋回軸の回転角度の検出に適用して、省スペースで高分解能な絶対角度の検出が可能で、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる。
【0015】
この発明の第3の発明にかかる回転角度検出装置接続体は、この発明の上記いずれかの構成の回転角度検出装置を複数設け、これら複数の回転角度検出装置の間で互いに信号を送受するデータ伝送手段を設けたものであるため、多数のセンサ信号を少ない配線で取り出すことが可能になり、多関節ロボット等に適用した場合に、回転角度検出装置をコパクトに構成できると共に、省配線化も可能となり、ロボット等の設計自由度が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は、この実施形態の回転角度検出装置を適用した関節付き機械である多関節ロボットと、その制御装置のケーブル接続図を示す。多関節ロボット1は、複数のアーム部3を関節部分2で直列に接続し、各アーム部3を関節部分2で互いに回動自在とした直列多関節ロボットであって、各関節部分2の軸4がそれぞれ回転検出装置付き軸受5で支持されている。すなわち、各関節部分2は関節構成部材である互いに回転自在な一対のアーム部3,3で構成され、これら両アーム部3のうち片方のアーム部3の一端に前記軸4が設けられ、この軸4に前記回転検出装置付き軸受5を介してもう片方のアーム部3の一端が回動自在に接続されている。各軸受5の回転角度検出装置6A〜6D(図2)と多関節ロボット1の全体を制御する制御装置20とは、ケーブル7を介してデイジーチェーン方式で接続して、各回転角度検出装置6A〜6Dから出力される検出信号である回転情報(回転数または回転角度)を制御装置20へ送信するようになされている。
【0017】
図2は、前記多関節ロボット1に搭載される回転検出装置付き軸受5の一例を示す断面図である。この回転検出装置付き軸受5は、内輪21と外輪22の転走面間に、保持器23に保持された転動体24を介在させた転がり軸受である。転動体24はボールからなり、この転がり軸受5は深溝玉軸受とされている。また、例えば回転部材となる軸4が内輪21に嵌合し、転動体24を介して外輪22に支持されている。図1における隣接する2つのアーム部3において、その一方のアーム部3に前記軸4が設けられ、他方のアーム部3に前記外輪22が設置される。
【0018】
内輪21には磁気発生手段取付部材26が取付けられ、この磁気発生手段取付部材26に磁気発生手段28が取付けられている。外輪22には、センサ取付部材27が取付けられ、このセンサ取付部材27に、図3の磁気アレイセンサ29および角度算出手段30の集積された半導体チップからなる角度検出部8が取付けられている。また、このセンサ取付部材27にケーブル7も取付けられている。これらの構造と、データ通信部9a(図5)とで回転検出装置6A〜6Dが構成される。
【0019】
図3は、前記回転検出装置付き軸受5における回転検出装置6A〜6Dの概念構成を示す斜視図である。図2の軸受5における相対的に回転する内輪21および外輪22のうち、内輪21側(磁気発生手段取付部材26)に磁気発生手段28が設けられ、軸4の回転中心O回りを相対回転する。外輪22側(センサ取付部材27)には、磁気アレイセンサ29および角度算出手段30の集積された半導体チップからなる角度検出部8が設けられている。
【0020】
磁気発生手段28は磁気を発生する部材であり、永久磁石の単体、あるいは永久磁石と磁性材の複合体からなり、回転中心O回りの方向性を有する。ここでは、磁気発生手段28は、1つの永久磁石31を2つの磁性体ヨーク32,32で挟んで一体化して概形が二叉のフォーク状とされ、一方の磁性体ヨーク32の一端がN磁極、他方の磁性体ヨーク32の一端がS磁極となる。
【0021】
磁気アレイセンサ29は磁気発生手段28の磁気を検出するセンサであって、図4のように仮想の矩形の4辺における各辺に沿って配置されたセンサ列29A〜29Dからなる。各辺のセンサ列29A〜29Dは、磁気センサ素子29aを1列または複列に並べた磁気ラインセンサからなる。この場合、前記矩形の中心は、軸4の回転中心Oに一致する。各磁気センサ素子29aは、例えば磁気トランジスタ素子またはホール素子等からなる。磁気アレイセンサ29における各磁気センサ素子29aの出力は、増幅されてAD変換回路によってディジタル化される。
角度算出手段30は集積回路からなり、半導体チップ上に、磁気アレイセンサ29と共に集積されている。各磁気センサ素子29aの出力の信号から、角度算出手段30が所定の関係式または所定の関係テーブル等に従って回転角度を算出することにより、角度信号を出力することができる。
なお、磁気アレイセンサ29は、上記のようなセンサ列29A〜29Dを矩形に配置したものとする代わりに、縦横に複数列のマトリクス状に磁気センサ素子を配置したものであっても良い。
【0022】
この構成の回転角度検出装置6A〜6Dによると、半導体に集積されたセンサ素子29aと角度算出手段30によって、角度検出処理が実現されているため、単体で絶対角度を精度良く検出できる。磁界の強さそのものを用いて検出する方式では、磁石の温度特性や、センサの非線形特性による影響が大きいため、複雑な補正処理が必要になる。しかし、この磁気アレイセンサ29上の磁界の分布から角度を検出するために、温度や非線形特性等の影響を受けず、補正処理の必要がない。そのため、回転角度検出装置6A〜6Dの構成が単純になり、部品点数も少なく、コンパクトな構成で高分解能の角度検出を実現できる。また、非接触式であるため、摩耗の問題もない。
【0023】
図5は、上記多関節ロボット1における回転角度検出装置接続体10の一部を示すブロック図である。ケーブル7は、データケーブル7Aと電源ケーブル7Bを含む。回転角度検出装置6A〜6Dは、回転角度あるいは回転数を検出する角度検出部8と、この角度検出部8の回転情報を識別番号IDと共に出力端子から送信するデータ通信部9aと、他の回転角度検出装置から送信された回転情報および識別番号IDを入力可能な入力端子とを備える。各回転角度検出装置6A〜6Dのデータ通信部9a、よびデータケーブル7Aにより、各回転角度検出装置6A〜6Dの間で互いに信号を送受するデータ伝送手段9が構成される。具体的には、データ通信部9aは、制御装置20から見た各回転角度検出装置6A〜6Dの識別番号IDを、複数の回転検出装置6A〜6Dの接続状態によって決定する識別番号決定機能を有する。すなわち、識別番号決定機能は、入力端子に入力された他の回転角度検出装置の回転情報および識別番号IDのうち、識別番号IDに所定の演算を施して前記回転情報と共に出力端子から出力すると共に、自己の識別番号IDを付与する。ここでは、各回転角度検出装置6A〜6Dで付与する自己の識別番号IDは、いずれも同一(具体的にはID=0)とされる。
【0024】
この回転角度検出装置接続体10における情報伝達動作を、図6と共に、図5を参照して以下に説明する。この回転角度検出装置接続体10におけるデータの流れでは、回転角度検出装置6Aから見ると、回転角度検出装置6Bは上流側となり、制御装置20は下流側となる。さらに、回転角度検出装置6Cは回転角度検出装置6Bから見て上流側となり、回転角度検出装置6Dは回転角度検出装置6Cから見て上流側となる。例えば、回転検出装置6Bからの出力信号は、下流の回転検出装置6Aを経て制御装置20に入力される。回転検出装置6Aからの出力信号を受け取った制御装置20は、受け取った回転情報がいずれの回転角度検出装置のものかを識別する必要があるため、以下の手順によってその識別を行う。
【0025】
例えば回転角度検出装置6Bのデータ通信部9a(図5)から送信されたパケット(識別番号ID+回転情報)は、回転角度検出装置6Aで受信された後、制御装置20へ送信される。すべての回転角度検出装置6A〜6Dは、自己の回転情報(回転数や角度)に識別番号IDとして0番を付けたパケットを下流側へ送信する。各回転検出装置6A〜6Dは、他の回転角度検出装置からパケット受信したとき、そのパケットの中の識別番号IDに1を加算して下流へ送信する。下流へ送信するときに、誤り訂正符号が識別番号IDに依存するときは、誤り訂正符号も訂正する。
制御装置20がパケットを受信したとき、パケットの中の識別番号IDが0番であれば、そのパケットの回転情報は回転角度検出装置6Aのものであり、パケットの中の識別番号IDが1番であれば、制御装置20は、そのパケットの回転情報が回転角度検出装置6Bのものであると判別できる。
【0026】
すなわち、以上の動作を要約すると、次のようになる。
(1) 各回転検出装置6A〜6Dの固有の識別番号IDは0番とされており、各回転角度検出装置6A〜6Dは、それらの識別番号IDを回転情報と共にヘッダや誤り符号等を付加し1つのパケットとして下流へ出力する。
(2) 各回転角度検出装置6A〜6Dは、上流から得た回転角度検出装置のパケットについては、識別番号IDに1を加算して下流へ送信する。
上記手順によって、制御装置20から見た各回転角度検出装置6A〜6Dの識別番号IDは、回転角度検出装置6Aが0番、回転角度検出装置6Bが1番、回転角度検出装置6Cが2番、回転角度検出装置6Dが3番となり、制御装置20において回転角度検出装置6A〜6Dの識別が可能となる。つまり、各回転検出装置6A〜6Dと制御装置20とはケーブル7を介してデイジーチェーン方式で接続されているので、制御装置20に信号が入力された時点で識別番号IDが自動的に決定される。なお、回転角度検出装置6Dよりもさらに上流に回転角度検出装置が接続されている場合、その回転角度検出装置の識別番号IDは4番となり、上流側に至るほど、制御装置20から見た回転角度検出装置の識別番号IDの値が増えて行く。
【0027】
このように、多関節ロボット1に上記回転角度検出装置6A〜6Dを搭載した場合、省スペースで関節部分2の絶対回転角度を高分解能に検出できる。また、回転角度検出装置6A〜6Dは磁界分布測定に基づく原理を利用したものであるため、磁気発生手段28の構成部材である永久磁石31(図3)の温度特性の影響を受けず、環境変化に強いという特性が得られる。これにより、取付け調整の精度も不要となり、組み付け作業を簡便化できる。とくに、この実施形態では、回転角度検出装置6A〜6Dと軸受を一体化した回転検出装置付き軸受5(図2)を多関節ロボット1に搭載しているので、取付調整を不要とできる。その結果、コンパクトで、環境変化にも強く、組立性・組込性を向上させることができる。また、回転角度検出装置6A〜6Dが非接触式であるため摩耗の問題もない。
【0028】
また、図5に示した構成の回転角度検出装置接続体10によると、各回転角度検出装置6A〜6Dの自己の識別番号IDは全て0番であるため、回転角度検出装置6A〜6Dに固有の識別番号IDを設定する必要がない。したがって、固有の識別番号IDを設定するスイッチや、回転角度検出装置6A〜6D内に書き込み可能な不揮発性メモリを設けて識別番号IDを記憶させる必要がなく、回転角度検出装置6A〜6Dをコンパクトに、かつ低コストで構成することができると共に、識別番号IDが重複しないように管理する必要もなくなることから制御装置20の構成を単純化できる。
また、各回転角度検出装置6A〜6Dと制御装置20とがデイジーチェーン方式で接続されるため、関節付き機械が直列多関節ロボット1のような構成であっても、先端まで1系統の配線でよいことからケーブル7の本数が減少し、制御装置20の入力端子数を減らすことができて、ケーブル7の配線作業での接続ミスも低減できる。また、多関節ロボット1の設計自由度も高まる。
【0029】
図7は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、図2〜図4に示した回転角度検出装置を関節付き機械である人間型ロボットにおける多関節ハンド15に適用したものであり、多関節ハンド15の各指15A〜15Eの関節部分にそれぞれ回転角度検出装置6が設けられている。この実施形態における回転角度検出装置接続体10では、全ての回転角度検出装置6を一筆書き状にケーブル7で接続するのではなく、各指15A〜15Eの回転角度検出装置6毎にデイジーチェーン方式で接続し、各指のケーブル7と制御装置20とを5入力・1出力の中継装置16で中継している。
【0030】
この実施形態における回転検出装置接続体10の情報伝達動作において、各指15A〜15E毎に並ぶ回転角度検出装置から中継装置16へのデータの流れは、図1〜図6に示した第1の実施形態における制御装置20へのデータの流れと同じである。前記データ伝送手段9は、この中継装置16、図5のデータ通信部9a、およびデータケーブル7Aにより構成される。図7の実施形態では、中継装置16において、各入力端子から入力されてくる各指15A〜15Eからのパケットの識別信号IDに各指毎に異なる所定の数値(0を含む)を加算してから、1つの出力端子より制御装置20に出力する。これにより、制御装置20が受信したパケットにおいて、各回転角度検出装置6A1〜6E3の識別番号IDが異なることになり、制御装置20は各回転角度検出装置6A1〜6E3の回転情報を認識することができる。
【0031】
多関節ハンド15に回転角度検出装置6を搭載したこの実施形態では、各指15A〜15Eの関節部分の絶対角度がコンパクトな回転角度検出装置6で検出され、デジタル化された数値として出力される。これらのデータ収集に必要な配線は最小限で済むため、ロボットの配線が単純化されて、信頼性、組立性、メンテナンス性を向上させることができる。
【0032】
図8は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、互いに交差する複数の回転軸からなる関節部分2を有するロボット等の関節付き機械に、第1の実施形態で示した回転角度検出装置(図3)を搭載したものである。この場合の関節部分2は、垂直に配置された回転軸13と、水平に配置された回転軸14とを有する。垂直回転軸13の上端には断面U字状の第1の関節構成部材11が設けられ、この関節構成部材11の左右一対の立板部11a,11a間に第2の関節構成部材12が配置されている。また、第1の関節構成部材11の両立板部11a,11a間に跨がって上記水平回転軸14が回転自在に横架されており、この水平回転軸14が第2の関節構成部材12を貫通して関節構成部材12に連結されている。これにより、第2の関節構成部材12は、垂直回転軸13の軸心回りに旋回自在で、かつ水平回転軸14の軸心回りに揺動自在となる。垂直回転軸13は、基台19上に突設された軸受ハウジング17に軸受を介して回転自在に支持され、軸受ハウジング17と垂直回転軸13との間に回転角度検出装置6が設けられる。
【0033】
この場合、固定側部材である軸受ハウジング17に磁気発生手段28(図3)が、また回転側部材である垂直回転軸13に磁気アレイセンサ29および角度算出手段30を含む角度検出部8(図3)がそれぞれ設けられる。また、水平回転軸14も、前記第2の関節構成部材12の片方の立板部11aに固定された軸受ハウジング18に軸受を介して回転自在に支持され、軸受ハウジング18と水平回転軸14との間に回転角度検出装置6が設けられる。
【0034】
このように複数の回転軸13,14が交差する構造の関節部分2に回転角度検出装置6を搭載した場合にも、回転角度検出装置6がコンパクトで検出分解能も高いことから、搭載が容易で関節モジュールの設計の自由度を高めることができると共に、十分な回転角度検出能力を確保することができる。
また、前記各回転軸13,14をモータによって駆動する構成の場合、これら回転軸13,14とモータの出力軸との間に減速機が介在することから、減速後の回転角度を検出しなければならない場合がある。この場合、前記回転角度検出装置6と軸受を一体化した第1の実施形態における回転検出装置付き軸受5(図2)を用いることにより、コンパクトに搭載できて回転軸13,14の回転角度検出を容易に行うことができる。
【0035】
図9は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、複数の関節部分2を有する建設機械に、第1の実施形態で示した回転角度検出装置(図3)を搭載したものである。この場合の建設機械25は、複数のアーム34,35を関節部分2で屈曲可能に連結したショベルカーである。第1のアーム34の一端部が関節部分2で車体33に連結され、そのアーム34の他端部に第2のアーム35の基部が関節部分2で連結されている。第1のアーム34はシリンダ36により車体33側の関節部分2回りに回動され、第2のアーム35はシリンダ37により基部の関節部分2回りに回動される。また、第2のアーム35の先端部には関節部分2でショベル38が揺動自在に連結され、図示しないワイヤーによってショベル38が揺動駆動される。この場合、アーム34,35の先端の動作を制御したり、車体33との干渉を防止するために、上記各関節部分2に、第1の実施形態における回転角度検出装置6(図3)、あるいは回転検出装置付き軸受5(図2)が搭載され、アーム34,35の回転角度が検出される。なお、車体33は、走行用のクローラ39の上に旋回軸40を介して旋回自在に設置されるが、旋回軸40にも車体33の旋回角度を検出する回転角度検出装置6(図3)が設けられる。旋回軸40の支持には、例えば薄形大径リング状の軸受であるターンテーブル軸受(図示せず)等が用いられる。
【0036】
このように関節付き機械であるショベルカー25に回転角度検出装置6を搭載した場合には、回転角度検出装置6における磁気発生手段28(図3)の磁気強度が温度変化によって変化しても角度検出でき、また非接触方式であることから、信頼性の高い回転角度検出が可能となる。また、回転角度検出装置6を上記各関節部分2に直接搭載するのに代えて、回転角度検出装置6と軸受を一体化した第1の実施形態における回転検出装置付き軸受5(図2)を搭載しても良く、この場合にはコンパクトに搭載できて組付け調整も不要となる。また、各回転角度検出装置6を、第1の実施形態における回転角度検出装置接続体10(図5)で接続することにより、アーム35の先端までのケーブルの配線も少なくできる。
【0037】
図10は、建設機械等の旋回軸付き機械に使用される磁気アレイセンサ・ポテンショメータ併用形の回転角度検出装置41の例を示す。旋回軸42は段付き軸からなり、ハウジング43に嵌入された2個の軸受44により、軸大径部42aが回転自在に支持されている。旋回軸42の一端の軸小径部42bは、ハウジング43の天板部の孔から外部に突出している。旋回軸42の他端は段付き形状をしており、リング状の軸受幅押え45と刷子アッセンブリ46とが、互いに同心に配置されてビスで固定されている。刷子アッセンブリ46にはブラシ46aが軸方向に取付けられている。また、旋回軸42の他端の中央には、第1の実施形態における回転角度検出装置6(図3)の磁気発生手段28が固定されている。
【0038】
ハウジング43は、上端に端壁を有する竪形円筒状に形成されて、下端の開口外周に鍔43aを有しており、下端開口は蓋体である押え蓋47で閉じられている。押え蓋47は、ハウジング43の下端開口の周縁に設けられた座繰状部に嵌合してハウジング43にビス固定される。この押え蓋47は、前記座繰状部に続くハウジング43内の内径面に嵌合したリング状のスペーサ48を介して軸受44の外輪を押し込んでいる。押え蓋47の外側面には封止樹脂49が設けられている。
【0039】
押え蓋47の内側面には、刷子アッセンブリ46と対応する径方向位置に、ポテンショメータ50を構成する電気抵抗体50aと電極50bとが同心のリング状に設けられている。これら電気抵抗体50aおよび電極50bは、押え蓋47に固定された回路基板51に設けられている。ポテンショメータ50と接触させる刷子アッセンブリ46には予圧を与える必要があるため、旋回軸42の軸端と回路基板51とのギャップはある程度の精度が確保されている。前記回路基板51のポテンショメータ配置面の中央には、前記磁気発生手段28に対応する位置に、回転角度検出装置6の磁気アレイセンサ29(図3)を含む角度検出部8が設けられている。前記旋回軸42側の刷子アッセンブリ50と押え蓋47側のポテンショメータ50とで、非接触式の回転角度検出装置6とは別の接触式の回転角度検出装置部52が構成される。
【0040】
この回転角度検出装置41は、接触式センサの電気抵抗体50aが印刷された回路基板51上に、磁気センサ素子をアレイ状に並べた磁気アレイセンサを搭載したものであるため、1枚の回路基板51に2種類のセンサを実装することができる。電気抵抗体50aと接触させる電極50bには予圧を与える必要があるため、軸端と回路基板51とのギャップはある程度の精度が確保されている必要がある。非接触式の回転角度検出装置6の場合はギャップ変化の影響を受けにくいため、あらためてギャップ管理をする必要はない。
【0041】
押え蓋47の外側面から離れた位置にはバックプレート53が固定されている。この押え蓋47とバックプレート53の間の空間は、調整検査終了後に、封止樹脂49で固められる。前記回路基板51に接続されたケーブル54は、ハウジング43の外部へ径方向に導出されて、コネクタを介して外部機器(いずれも図示せず)に接続される。
【0042】
この構成によると、接触式の回転角度検出装置部52と非接触式の回転角度検出装置6とを組み合わせているので、信頼性の高い回転角度検出が可能となる。
このような旋回軸付き機械41において、旋回軸42の回転角度を検出するのに、旋回軸42の外周面にホールセンサ等の磁気センサを配置することで、非接触で回転角度を検出する構成が知られているが、この場合には検出能力を確保するために磁気センサの配置半径をできるだけ大きくする必要があり、コンパクト化が難しい。また、磁気センサを外周面付近に配置し、さらに信号処理回路も別に必要なため部品点数が多くなる。さらに、外周面で回転角度を検出する方式であるため、絶対角度の検出も難しい。
これに対して、この実施形態の場合、旋回軸42の端面を利用して回転検出を行うものであるため、旋回軸42の外周面を回転角度の検出に使用しなくて済む。そのため、装置の小型化が可能で、絶対回転角度を高い分解能で検出でき装置の高機能化とコンパクト化を実現できる。
【0043】
図11は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、図10の実施形態において、旋回軸42における押え蓋47側に向く軸端を軸極小径部42cとし、この軸極小径部42cを、回転角度検出装置6と軸受を一体化した第1の実施形態における回転検出装置付き軸受5(図2)を介して押え蓋47で支持するようにしたものである。この場合、図2と同様に外輪22に取付けられたセンサ取付部材27に固定した角度検出部8は、回転部材に固定された磁気発生手段28と対向する位置に固定されている。角度検出部8からのリード線55は、回路基板51に接続されたケーブル54と共に、ハウジング43の外部へ径方向に導出されて、コネクタを介して外部機器(いずれも図示せず)に接続される。その他の構成は図10の実施形態の場合と同じである。
【0044】
この構成によると、非接触式の回転角度検出装置6が回転検出装置付き軸受5として軸受とユニット化されているので、回路基板51への実装などの手間が不要となり、メンテナンス性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載した多関節ロボットとその制御装置のケーブル接続図である。
【図2】同多関節ロボットに搭載される回転検出装置付き軸受の一例を示す断面図である。
【図3】同回転検出装置付き軸受における回転角度検出装置の概念構成を示す斜視図である。
【図4】同回転角度検出装置における半導体チップ上での磁気アレイセンサおよび角度算出手段の配置例を示す平面図である。
【図5】多関節ロボットに適用される回転角度検出装置接続体のブロック図である。
【図6】同回転角度検出装置接続体における情報伝達動作の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載した多関節ハンドとその制御装置のケーブル接続図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載した関節部分の斜視図である。
【図9】この発明のさらに他の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載したショベルカーの側面図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載した旋回軸付き機械の断面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態にかかる回転角度検出装置を搭載した旋回軸付き機械の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…多関節ロボット
2…関節部分
3…アーム部(関節構成部材)
5…回転検出装置付き軸受
6,6A〜6D…回転角度検出装置
8…角度検出部
9a…データ通信部
9…データ伝送手段
10…回転角度検出装置接続体
11,12…関節構成部材
15…多関節ハンド
25…ショベルカー
28…磁気発生手段
29…磁気アレイセンサ
30…角度算出手段
34,35…アーム
41…回転角度検出装置
42…旋回軸
52…回転角度検出装置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部分を有する建設機械または産業機械等の関節付き機械において、前記関節部分の回転角度を検出する装置であって、前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材のうちの片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて回転中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の回転中心の軸方向に対向してもう片方の関節構成部材またはこの関節構成部材と一体化された部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものであることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記関節部分を構成する互いに回転自在な一対の関節構成部材が、軸受を介して互いに回転自在に連結されたものであり、前記軸受が、前記磁気発生手段および磁気アレイセンサを有する角度検出部が設けられた回転検出装置付き軸受である回転角度検出装置。
【請求項3】
旋回軸を有する建設機械等の旋回軸付き機械において、前記旋回軸の回転角度を検出する装置であって、前記旋回軸またはこの旋回軸と一体に旋回する部材に設けられて旋回中心回りの円周方向異方性を有する磁気発生手段と、この磁気発生手段の旋回中心の軸方向に対向して非旋回側部材に設けられて前記磁気発生手段の磁気を検出する磁気アレイセンサと、この磁気アレイセンサの出力から磁気発生手段の回転角度を算出する角度算出手段とを備えたものであることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項3において、前記旋回軸が軸受を介して旋回自在に支持されたものであり、前記軸受が、前記磁気発生手段および磁気アレイセンサを有する角度検出部が設けられた回転検出装置付き軸受である回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置を複数設け、これら複数の回転角度検出装置の間で互いに信号を送受するデータ伝送手段を設けた回転角度検出装置接続体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−71612(P2007−71612A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257259(P2005−257259)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】