説明

回転角検出装置

【課題】非接触で電源オフ時に回転体が回転された場合でも正確に絶対回転角を検出することができる回転角検出装置を提供する。
【解決手段】回転自在に支持された回転体に円周方向に少なくとも1組のN極及びS極を有する硬磁性体を配設し、該硬磁性体に対向して、当該硬磁性体によって互いに磁気的に90度の位相差を有するパルス電圧を発生する4個の発電型磁気検出部GMa〜GMdと所定数の磁気検出部MD1,MD2とを配設し、少なくとも電源オフ時に各発電型磁気検出部GMa〜GMdで発生されるパルス電圧によって駆動されてパルス電圧数を回転方向に基づいて加減算計数して回転領域に応じた計数値を生成して記憶する計数手段14cと、電源オン時に前記計数手段14cに記憶されている計数値に基づく回転領域と前記磁気検出部から出力される磁気的周期とに基づいて絶対回転角を検出する回転角検出部15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自在に支持された回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転角検出装置としては、例えばステアリングロッドの速度と同じ速度で旋回し、多数のピックアップにより走査検出される第1の符号ディスクと、この第1の符号ディスクの速度の4分の1で旋回し、3つの符号トラックを有し、相応のピックアップによって走査検出される第2の符号ディスクとを有し、各ピックアップで走査検出した微信号及び粗信号を適切に結合して操舵角を検出するようにしたステアリング角度を検出するセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の回転角検出装置としては、例えばスプリングを介して本体に回転可能に取り付けられたカムと、このカムに係止され、多極の磁界と一極の磁界を並行に配置して形成した磁石リングと、前記多極の磁界を検知する複数個の第1の磁気抵抗素子と、前記一極の磁界を検知する第2の磁気抵抗素子と、第1及び第2の磁気抵抗素子の検知した磁界の変化をパルス信号に変換する回路とを備えた回転角検出装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特表平8−511350号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特許第2532469号明細書(第1頁、図4、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、ステアリングロッドに第2の符号ディスクが遊星ギヤを介して連結されているので、構造が複雑でヒステリシスが大きく、また遊星ギヤの叩音の発生や摩耗等による経年変化を生じるという未解決の課題がある。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、ステアリング軸の回転に対して、非接触で回転を検出することができるものであるが、電源オフ時にステアリングホイールが回転すると、このときのステアリングシャフトの回転数は検出できず、電源オン時に正確な操舵絶対角を検出することができないという未解決の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、非接触で電源オフ時に回転体が回転された場合でも正確に絶対回転角を検出することができる回転角検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る回転角検出装置は、回転自在に支持された回転体に円周方向に少なくとも1組のN極及びS極を有する硬磁性体を配設し、該硬磁性体に対向して、当該硬磁性体によって互いに磁気的に90度の位相差を有するパルス電圧を発生する4個の発電型磁気検出部と所定数の磁気検出部とを配設し、少なくとも電源オフ時に各発電型磁気検出部で発生されるパルス電圧によって駆動されてパルス電圧数を回転方向に基づいて加減算計数して回転領域に応じた計数値を生成して記憶する計数手段と、電源オン時に前記計数手段に記憶されている計数値に基づく回転領域と前記磁気検出部から出力される磁気的周期とに基づいて絶対回転角を検出する回転角検出部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に係る回転角検出装置は、請求項1に係る発明において、前記硬磁性体は前記回転体の外周面に配設されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る回転角検出装置は、請求項1に係る発明において、前記硬磁性体は前記回転体の端面に配設されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る回転角検出装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記発電型磁気検出部は、大バルクハウゼン現象を応用した磁気センサで構成されていることを特徴としている。
【0009】
なおさらに、請求項5に係る回転角検出装置は、請求項4に係る発明において、前記磁気センサは、中心部分と外郭部分とで異なる磁気特性を有する複合磁性ワイヤと該複合磁性ワイヤに巻装した検出コイルとで構成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項6に係る回転角検出装置は、請求項1乃至5の何れか1つに係る発明において、前記計数手段は、発電型磁気検出部から出力されるパルス電圧で駆動される不揮発性メモリに形成された加減算カウンタで構成されていることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項7に係る回転角検出装置は、請求項1乃至6の何れか1つに係る発明において、前記回転体は操舵装置を構成するステアリングシャフトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転体の回転に伴って回転する硬磁性体に対向して、発電型磁気検出部を配設することにより、この発電型磁気検出部から硬磁性体の回転に応じてパルス電圧を出力し、このパルス電圧で計数手段を駆動して、当該パルス電圧を操舵方向に応じて加減算計数して記憶しておくことにより、電源オフ時に回転体が回転されたときの回転領域を特定することができ、電源オン時に、記憶されている計数値に基づく回転領域と磁気検出部から検出される磁気的周期とに基づいて回転角検出部で正確な絶対回転角を検出することができるという効果が得られる。
【0013】
また、本発明を、操舵装置を構成するステアリングシャフトに適用することにより、操舵装置で電源オフ時に操舵を行っても操舵装置の絶対操舵角を正確に検出することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を操舵装置に適用した場合の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が回転体としてのステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、一端がステアリングホイール1に連結された入力軸2aと、この入力軸2aの他端に図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとで構成されている。そして、ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角が操舵角センサ3によって検出されると共に、ステアリングシャフト2に伝達される操舵トルクが操舵トルクセンサ4によって検出される。
【0015】
一方、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント5を介してロアシャフト6に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント7を介してピニオンシャフト8に伝達される。このピニオンシャフト8に伝達された操舵力はステアリングギヤ9を介してタイロッド10に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ9は、ピニオンシャフト8に連結されたピニオン9aとこのピニオン9aに噛合するラック9bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン9aに伝達された回転運動をラック9bで直進運動に変換している。
【0016】
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構11が連結されている。この操舵補助機構11は、出力軸2bに連結した減速ギヤ12と、この減速ギヤ12に連結された操舵補助力を発生する例えば直流モータで構成される電動モータ13とを備えている。
【0017】
操舵角センサ3は、図2に示すように、ステアリングシャフト2の入力軸2aの外周面に取付けられた左半部をN極に、右半部をS極に励磁されたリング状の硬磁性体21と、この硬磁性体21の外周側に近接対向して円周方向に90°の間隔で固定配置された発電型磁気センサGMa〜GMdと、例えば発電型磁気センサGMd及びGMdと並列に夫々硬磁性体21の外周側に近接対向して円周方向に90°の間隔で固定配置された硬磁性体21の磁気的周期を検出する磁気検出部としての磁気検出素子MD1及びMD2とを備えている。
【0018】
ここで、発電型磁気センサGMa〜GMdの夫々は、図3(a)に示すように、複合磁性ワイヤ22と、この複合磁性ワイヤ22の回りに巻装された検出コイル23とで構成されている。複合磁性ワイヤ22は、中心部と外郭部とで磁気を通し易い特性と磁石に近い特性との異なる磁気特性を有して、磁性体が磁化される時に、磁性体内部の微少な磁石単位の境界である磁壁が一度に移動する大バルクハウゼン現象を生じるように構成されている。
【0019】
この複合磁性ワイヤ22が硬磁性体21のN極によって磁化されると、急激な磁化の状態変化を生じ、この状態変化は短時間で発生するので、検出コイル23に電磁誘導による起電力が発生し、この起電力がパルス電圧として回転領域検出部14に出力される。
【0020】
これらの発電型磁気センサGMa〜GMdで発生されるパルス電圧は、図3(b)に示すように、発電型磁気センサGMa〜GMdに硬磁性体21のN極及びS極による正弦波の磁界が加わるものとしたときに、N極による正の磁界が加えられたときに、所定のタイミング例えば磁界が零の状態から正方向に増加して所定値に達したとき例えば45°の位置で外部磁界による急激な状態変化を生じて、電磁誘導により検出コイル23からパルス電圧PRiが出力される。このため、ステアリングホイール1を右切りしたときには、磁界が零である0°の状態から正方向に増加して例えば45°となったときに実線図示のパルス電圧PRi(i=a,b,c,d)を生成し、逆にステアリングホイール1を左切りしたときには、磁界が零である180°の状態から正方向に増加して例えば135°となったときに点線図示のパルス電圧PLiを生成する。
【0021】
この回転領域検出部14は、図4に示すように、発電型磁気センサGMa〜GMdから出力されるパルス電圧PRa〜PRd及びPLa〜PLbが入力され、入力されたパルス電圧PRi及びPLiによって駆動される第1の論理回路14aと、第2の論理回路14bと、不揮発性メモリ14cと、カウンタメモリ14dと、信号出力回路14eとを備えている。
【0022】
ここで、第1の論理回路14aは、入力されるパルス電圧PRi及びPLiによって駆動され、イグニッションスイッチ18がオン状態からオフ状態となった直後の初期状態で、入力されたパルス電圧PRi及びPLiに基づいて出力した発電型磁気センサGMi(i=a〜d)を判別し、判別した発電型磁気センサGMiの2ビットで表される識別コードA(00)、B(01)、C(10)、D(11)を不揮発性メモリ14cに形成された例えば3段のシフトレジスタ領域の先頭位置に順次書込むように構成されている。
【0023】
また、第2の論理回路14bは、入力されるパルス電圧PRi及びPLiによって駆動され、イグニッションスイッチ18がオン状態からオフ状態となった直後の初期状態で、不揮発性メモリ14cのシフトレジスタ領域に三つ目の識別コードの書込みが完了した時点で、シフトレジスタ領域に格納されている現在及び過去2つの計3つの識別コードを入力順に読出し、これら3つの識別コードの並び順が予め設定した8つの操舵パターンの何れに該当するかを判定し、その判定結果に基づいて角度領域を表す変数Nに応じた数のカウントパルスをカウンタメモリ14dへ出力すると共に、アップ/ダウン信号をカウンタメモリ14dへ出力する。また、第2の論理回路14bは、上記初期状態が完了した後は、順次入力される識別コードと前回の識別コードとを比較してステアリングシャフト2の入力軸2aの操舵方向を判断し、右操舵であるときにはアップ信号及び1つのパルス信号をカウンタメモリ14dに出力し、左操舵であるときにはダウン信号及び1つのパルス信号をカウンタメモリ14dに出力する。
【0024】
ここで、ステアリングシャフト2の入力軸の初期状態における操舵パターンとしては、図5に示すように、13種類の操舵パターンに分類される。
先ず、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前が右操舵状態で、イグニッションスイッチ18のオフ状態後も右操舵状態を継続する場合の右操舵パターンPR1がある。この右操舵パターンP1は、図5に示すように、「ABC」、「BCD」、「CDA」及び「DAB」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「+2」である。
【0025】
また、図6に示すように、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前が左操舵状態で、イグニッションスイッチ18のオフ状態後も左操舵状態を継続した後、右操舵状態に反転する場合の右操舵パターンP2がある。この右操舵パターンP2では、図5に示すように、「ACD」、「BDA」、「CAB」及び「DBC」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「+3」である。
【0026】
すなわち、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後に、図6(a)に示すように、例えば発電型磁気センサGMaでパルス電圧PLaが発生し、その直後に右操舵に反転したときに、発電型磁気センサGMbではパルス電圧PRbを発生するタイミングが図6(a)で過ぎているのでパルス電圧PRbは発生されず、ステアリングシャフト2の入力軸2aが図6(a)に対して180°右操舵された図6(c)の状態で発電型磁気センサGMcからパルス電圧PRcが発生され、続いてさらに90°右操舵された図6(d)の状態で発電型磁気センサGMdからパルス電圧PRcが発生されることになり、結局「ACD」の信号パターンとなる。
【0027】
なお、図6で、左操舵状態で各発電型磁気センサGMa〜GMdでパルス電圧PLa〜PLdを発生させる硬磁性体21のN極位置を●で表し、右操舵状態で各発電型磁気センサGMa〜GMdでパルス電圧PRa〜PRdを発生させる硬磁性体21のN極位置を○で表している。
【0028】
さらに、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前が左操舵状態で、イグニッションスイッチ18のオフ状態後も左操舵状態を継続する場合の左操舵パターンP3がある。この左操舵パターンP3は、図5に示すように、「ADC」、「BAD」、「CBA」及び「DCB」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「−2」である。
【0029】
さらにまた、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前が右操舵状態で、イグニッションスイッチ18のオフ状態後も右操舵状態で、発電型磁気センサGMaでパルス電圧PRaが発生した後に、左操舵状態に反転する場合の左操舵パターンP4がある。この左操舵パターンP4では、前述した図6の逆方向の回転となるので、図5に示すように、「ACB」、「BDC」、「CAD」及び「DBA」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「−3」である。
【0030】
なおさらに、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、右操舵で隣接する2つの発電型磁気センサで連続してパルス電圧を発生させ、2つ目のパルス電圧が発生した直後に反転させて左操舵状態とした場合の右左操舵パターンP5がある。この右左操舵パターンP5は、図5に示すように、「ABD」、「BAC」、「CBD」及び「DAC」の4種類の信号パターンとなる。
【0031】
すなわち、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後に、図7(a)に示すように、例えば、まず、右操舵によって発電型磁気センサGMaでパルス電圧PRaが発生し、その後右操舵を継続して図7(c)で発電型磁気センサGMbでパルス電圧PRbが発生し、このパルス電圧PRbが発生した直後に左操舵に反転したときに、発電型磁気センサGMbではパルス電圧PRbを発生するタイミングが図6(c)で過ぎているのでパルス電圧PRbは発生されず、ステアリングシャフト2の入力軸2aが図7(a)に対してと同じ位置に戻った図6(e)の状態で発電型磁気センサGMdからパルス電圧PRdが発生されることになり、結局「ABD」の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「0」である。
【0032】
同様に、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前が左操舵状態で、イグニッションスイッチ18のオフ状態後も左操舵状態で、発電型磁気センサGMaでパルス電圧PRaが発生した直後に、右操舵状態に反転する場合の左右操舵パターンP6がある。この左右操舵パターンP6では、前述した図7の逆方向の回転となるので、図5に示すように、「ADB」、「BDA」、「CBD」及び「DCA」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「0」である。
【0033】
また、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、右操舵で隣接する2つの発電型磁気センサで連続してパルス電圧を発生させ、2つ目のパルス電圧が発生してから3つ目のパルス電圧が発生する前に反転させて左操舵状態とした場合の右左操舵パターンP7がある。この右左操舵パターンP7は、図5に示すように、「ABA」、「BCB」、「CDC」及び「DAD」の4種類の信号パターンとなる。
【0034】
すなわち、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後に、図8(a)に示すように、例えば、まず、右操舵によって発電型磁気センサGMaでパルス電圧PRaが発生し、その後右操舵を継続して図8(c)で発電型磁気センサGMbでパルス電圧PRbが発生し、このパルス電圧PRbが発生してからさらに右操舵を継続して図8(d)に示すように、3つめのパルス電圧PRcが発生する前に左操舵に反転したときには、発電型磁気センサGMbではパルス電圧PRbを発生するタイミングが図8(d)で過ぎているのでパルス電圧PRbは発生されず、ステアリングシャフト2の入力軸2aが図8(a)に対して90°半時計方向にずれた位置となった図8(e)の状態で発電型磁気センサGMaからパルス電圧PRaが発生されることになり、結局「ABA」の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「+1」である。
【0035】
同様に、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、左操舵で隣接する2つの発電型磁気センサで連続してパルス電圧を発生させ、2つ目のパルス電圧が発生してから3つ目のパルス電圧が発生する前に反転させて右操舵状態とした場合の左右操舵パターンP8がある。この右左操舵パターンP8は、図5に示すように、「ADA」、「BAB」、「CBC」及び「DCD」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「−1」である。
【0036】
さらに、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、右操舵で1つの発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に反転させて左操舵することにより、1つ置いた発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に、再反転して1つ置いた元の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる右左右操舵パターンP9がある。この右左右操舵パターンP9は、図5に示すように、「ACA」、「BDB」、「CAC」及び「DBD」の4種類の信号パターンとなる。
【0037】
すなわち、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後に、図9(a)に示すように、例えば、まず、右操舵によって発電型磁気センサGMaでパルス電圧PRaが発生し、その直後に反転して左操舵を行うと、発電型磁気センサGMdではパルス電圧発生タイミングが過ぎているので、右操舵を継続したときに、図9(c)に示すように発電型磁気センサGMcでパルス電圧PRcが発生し、このパルス電圧PRbが発生した直後に反転して左操舵すると、図9(d)に示すように、発電型磁気センサGMdでのパルス電圧発生タイミングが過ぎているので、図9(e)に示すように、硬磁性体21が元の位置即ち発電型磁気センサGMaに戻った時点で、パルス電圧PRaが発生されることになり、結局「ACA」の信号パターンとなる。この場合の領域移動量は「0」である。
【0038】
同様に、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、左操舵で1つの発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に反転させて右操舵することにより、1つ置いた発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に、再反転して1つ置いた元の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる左右左操舵パターンP10がある。この左右左操舵パターンP10は、図5に示すように、右左右操舵パターンPC5と同様の「ACA」、「BDB」、「CAC」及び「DBD」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「0」である。
【0039】
さらにまた、他の操舵パターンとして、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、右操舵で1つの発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に、左操舵に反転し、1つ置いた発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる前に、再度反転して右操舵して、最初の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた後に、右操舵を継続して次の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる右左右操舵パターンP11がある。この右左右操舵パターンP11は、図5に示すように、「AAB」、「BBC」、「CCD」及び「DDA」の4種類の信号パターンとなる。この場合の移動領域は「+1」である。
【0040】
同様に、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後、左操舵で1つの発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた直後に、右操舵に反転し、1つ置いた発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる前に、再度反転して左操舵して、最初の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させた後に、左操舵を継続して次の発電型磁気センサでパルス電圧を発生させる左右左操舵パターンP12がある。この左右左操舵パターンP12は、図5に示すように、「AAD」、「BBA」、「CCB」及び「DDA」の4種類の信号パターンとなる。この場合の領域移動量は「−1」である。
【0041】
さらに、他の操舵パターンとして、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった後に、1つの発電型磁気センサを挟んで右操舵及び左操舵を繰り返すことにより、1つの磁気センサで3回パルス電圧を発生させる右左右操舵パターンP13がある。この右左右操舵パタンP13は、図5に示すように、「AAA」、「BBB」、「CCC」及び「DDD」の4種類の信号パターンがある。この場合の領域移動量は「0」である。
【0042】
このように、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後の3つのパルス電圧を検出し、検出した信号パターンが上述した何れの信号パターンに属するかを判定することにより、現在の回転領域としての操舵領域を正確に推定することができ、移動した操舵領域に応じてカウンタメモリ14dをアップ/ダウンカウントさせる。その後は、パルス電圧が入力される毎に、入力されたパルス電圧の識別コードと前回入力されたパルス信号の識別コードとを比較することにより、操舵領域の移動があったときに、その移動方向に応じてカウンタメモリ14dを「1」だけアップ/ダウンカウントさせる。
【0043】
ここで、第2の論理回路14bの回路構成の一例は、図10に示すように構成されている。すなわち、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後の初期状態で、メモリ14cに最初から3つのパルス電圧が検出されてそれらに対応する識別コードがシフトレジスタに格納されると、3つ目の識別コードが格納された時点で、これら3つの識別コードが6ビットの入力レジスタ100に格納される。この入力レジスタ100に格納された3つの識別コードは第1の比較部101に入力される。
【0044】
この第1の比較部101は、前述した図5の操舵パターンのうち信号パターンが同一となる操舵パターンP10を除く操舵パターンP1〜P9及びP11〜P13に応じた信号パターンが登録された4つのレジスタR1〜R4を有するレジスタ群GR1〜GR12が設けられている。
そして、入力レジスタ100に格納される3つの識別コードと各レジスタ群GR1〜GR12の各レジスタR1〜R4とが各レジスタ群GR1〜GR12に対応するアンドゲート群GAG1〜GAGN12の4つのアンドゲートAG1〜AG4で比較され、各アンドゲートAG1〜AG4の出力はオアゲートOG1〜OG12に供給される。
【0045】
一方、カウントパルスを発生するパルス発生器102が設けられ、このパルス発生器102の出力側にゲート回路103が設けられ、このゲート回路103の出力がカウンタメモリ14dのカウントパルス入力部に供給される。
また、ゲート回路103には、パルス発生器102で発生されるカウントパルスを1つだけ通過させるように時定数が設定された単安定回路104と、パルス発生器102で発生されるカウントパルスを2つだけ通過させるように時定数が設定された単安定回路105と、パルス発生器102で発生されるカウントパルスを3つだけ通過させるように時定数が設定された単安定回路106と、これら単安定回路104〜106の出力が入力されるオアゲートOR15とが設けられている。
【0046】
そして、レジスタ群RG7、RG8、RG10及びRG11の出力がオアゲートOG16を介し、選択回路SL1を介して一方の入力側にパルス発生器102で発生されるカウントパルスが入力されたアンドゲートAG13の他方の入力側に供給され、このアンドゲートAG13の出力が単安定回路104にトリが信号として入力されている。
また、レジスタ群RG1及びRG3の出力がオアゲートOG17を介し、選択回路SL2を介して一方の入力側にパルス発生器102で発生されるカウントパルスが入力されたアンドゲートAG14の他方の入力側に供給され、このアンドゲートAG14の出力が単安定回路105にトリが信号として入力されている。
【0047】
さらに、レジスタ群RG2及びRG4の出力がオアゲートOG18を介し、選択回路SL3を介して一方の入力側にパルス発生器102で発生されるカウントパルスが入力されたアンドゲートAG15の他方の入力側に供給され、このアンドゲートAG15の出力が単安定回路106
にトリが信号として入力されている。
【0048】
また、レジスタ群RG1、RG2、RG8及びRG11の出力がオアゲートOR19を介してカウンタメモリ14dのカウントアップ信号入力部に供給され、またオアゲートOG3,OG4,OG8及びOG12の出力がオアゲートOR20を介してカウンタメモリ14dのカウントダウン信号入力部に供給される。
【0049】
さらに、第2の論理回路14bは、初期状態で、三つ目の識別コードの読出しが完了した後は、不揮発性メモリ14cに識別コードが書き込まれる毎に、現在の識別コードと前回の識別コードとに基づいて操舵方向が右切り方向即ち図2で見て矢印で示す時計方向であるか左切り方向即ち図2で見て矢印とは反対側の反時計方向であるかを判別し、右切りであるときにはカウンタメモリ14dにカウントアップ信号を出力すると共に、単安定回路104によって1つのカウントパルスを出力し、左切りであるときにはカウンタメモリ14dにカウントダウン信号を出力すると共に、単安定回路104によって1つのカウントパルスを出力する第2の比較部120を備えている。
【0050】
この第2の比較部120は、不揮発性メモリ14cに書込まれる識別コードが入力される2段のシフトレジスタ121と、右操舵時に発生する識別コードパターンを格納した第1レジスタ群RG21と、左操舵時に発生する識別コードパターンを格納した第2レジスタ群RG22と、シフトレジスタ121に書込まれた識別コードと第1レジスタ群RG21に記憶された識別コードパターンとを比較するアンドゲート群GAG21と、シフトレジスタ121に書込まれた識別コードと第2レジスタ群RG22に記憶された識別コードパターンとを比較するアンドゲート群GAG22と、アンドゲート群GAG21の各アンドゲートの出力が入力されるオアゲートOR21と、アンドゲート群GAG22の各アンドゲートの出力が入力されるオアゲートOR22と、オアゲートOR21及びOR22の出力が入力されるオアゲートOR23とを備えている。
【0051】
そして、オアゲートOR21の出力が前述したオアゲートOR19の入力側に供給され、オアゲートOR22の出力が前述したオアゲートOR20の入力側に供給され、オアゲートOR23の出力が選択回路SL1に供給されている。
さらに、第2の論理回路14bは、後述するマイクロコンピュータ15から入力されるリセット信号RSがリセット端子に入力され、前出したオアゲートOR16〜OR18の出力及びレジスタ群RG5、RG6、RG9、RG12の出力が入力されるオアゲートOR30の出力がセット端子に入力されるフリップフロップ回路130を有し、このフリップフロップ回路130のリセット時に論理値“0”となる肯定出力が各選択回路SL1〜SL3に選択信号として供給されている。
【0052】
そして、カウンタメモリ14dに記憶されている回転領域を表す計数値nが後述するマイクロコンピュータ15から読取り可能とされている。
また、磁気検出素子MD1及びMD2は、硬磁性体21で発生する磁界に応じて正弦波状及び余弦波状の磁気検出信号S1及びS2が出力され、これら磁気検出信号S1及びS2が後述するマイクロコンピュータ15に入力される。
【0053】
操舵トルクセンサ4は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気的変化又は電気的変化に変換して操舵トルク検出値Tを検出するように構成されている。
【0054】
そして、マイクロコンピュータ15は、バッテリ17からの電力がイグニッションスイッチ18を介して入力されると共に、直接入力される。このマイクロコンピュータ15には、操舵トルクセンサ4で検出した操舵トルク検出値T及び車速センサ16で検出した車速検出値Vが入力されると共に、モータ電流検出回路20から入力されるモータ電流検出値IMDも入力され、さらに回転領域検出部14のカウンタメモリ14dの計数値nを読込み、操舵トルク検出値T、車速検出値V及びモータ電流検出値IMDに基づいて操舵補助制御処理を行うと共に、カウンタメモリ14dの計数値nに基づいて操舵角検出処理を実行する。
【0055】
操舵補助制御処理は、図12に示す機能ブロック図で表すように、操舵トルクセンサ4から入力される操舵トルクTが操舵補助指令値演算部40及びセンタ応答性改善部41に入力され、これら操舵補助指令値演算部40及びセンタ応答性改善部41の出力が加算器42に入力され、その加算結果がトルク制御演算部43に入力されている。センタ応答性改善部41は、アシスト特性不感帯での安定性確保、静摩擦の補償を行う、トルク制御演算部43の出力信号はモータロス電流補償部44に入力され、その出力が加算器45を経て最大電流制限部46に入力され、最大電流制限部46で最大電流値が制限されて電流制御部50に入力される。モータロス電流補償部44は、モータ電流が流れてもモータ出力に現れない電流を上乗せして、モータ出力トルク0からの立ち上がりを改善し、最大電流制限部46は、電流指令値の最大値が定格電流となるように制限している。電流制御部50の出力は、Hブリッジ特性補償部51に入力され、これにより電流ドライブ回路52を介して電動モータ13を駆動する。
【0056】
電動モータ13のモータ電流はモータ電流オフセット補正部60を経てモータ角速度推定部61、電流ドライブ切換部62及び電流制御部50に入力され、モータ端子電圧Vmは直接モータ角速度推定部61に入力される。モータ角速度推定部61で推定された角速度ωmはモータ角加速度推定部・慣性補償部63、モータロストルク補償部64及びヨーレート推定部65に入力され、ヨーレート推定部65の出力は収斂性制御部66に入力され、収斂性制御部66及びモータロストルク補償部64の各出力は、加算器67で加算され、その加算結果がさらに加算器71を経て加算器42に入力される。モータ角加速度推定部・慣性補償部63はモータ慣性を加減速させるトルクを操舵トルクから排除し、慣性感の無い操舵感にし、収斂性制御部66は車両のヨーを改善するために、ステアリングホイール1が振れ回る動作を抑制する。モータロストルク補償部64はモータ13のロストルク発生する方向、つまりモータ13のロストルクの発生する方向、つまりモータ13の回転方向に対してロストルク相当のアシストを行う。また、電流ディザ信号発生部80が設けられており、電流ディザ信号発生部80及びモータ角速度推定部・慣性補償部63の各出力が加算器81で加算され、その加算結果が加算器45に入力されている。電流ディザ信号発生部80は、モータが静摩擦で張りついてしまうのを防止する。
【0057】
また、加算器71には、ハンドル戻し制御部90からハドル戻し制御信号HRが印加され、ハンドル戻し制御部90には車速センサ16からの車速V、操舵角速度ωh及び後述する操舵角検出処理で算出した絶対操舵角θaが入力されている。操舵角速度ωhとしては、絶対操舵角θaを微分した微分値又はモータ角速度推定部61によって推定されたモータ角速度ωm、或いは舵角速度センサを設け、その舵角速度センサからの値を利用するようにしてもよい。
【0058】
ここで、ハンドル戻し制御部90の具体的構成は、図13に示すように、絶対操舵角θaに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路90Aと、車速Vを入力して所定関数により車速Vに応じたゲインGvを出力するゲイン回路90Bと、ハンドル戻し基本電流回路90Aからのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路90BからのゲインGvとを乗算する乗算器90Cと、乗算器90Cからの出力Ir・Gvを接点a又はbに切換えて出力するスイッチ90Dと、絶対操舵角θa及び操舵角速度ωhを入力し、両者の符号の一致又は不一致を判定する符号判定回路90Fと、スイッチ90Dが接点b側に切換えられたときの出力を0とする零出力回路90Eとで構成されている。
【0059】
符号判定回路90Fは、判定信号としてスイッチ信号SWを出力してスイッチ90Dの接点を切換えるが、絶対操舵角θa及び操舵角速度ωhの符号が不一致のときにスイッチ信号SWで接点bに切換える。また、スイッチ90Dの接点a,bは、操舵角速度ωhが零となったことを検出する回路(図示せず)からも切換えられるようになっている。
【0060】
一方、マイクロコンピュータ15で実行する操舵角検出処理は、イグニッションスイッチ18がオン状態となってマイクロコンピュータ15に電源が投入されている状態で、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、図14に示すように、先ず、ステップS1で、回転領域検出部14の不揮発性メモリ14cの最終パルス記憶領域に格納された、イグニッションスイッチ18をオフ状態、即ちマイクロコンピュータ15への電源をオフ状態とする前に発電型磁気センサGMa〜GMdから最後にパルス電圧を入力したときの、ステアリングシャフト2の入力軸2aの操舵領域を表す最終操舵領域SA(n-1)を読込む。
【0061】
次いで、ステップS2に移行して、回転領域検出部14のカウンタメモリ14dからイグニッションスイッチ18をオフ状態としていた間の操舵領域の移動量を表す計数値nを読込む。
次いで、ステップS3に移行して、ステップS1で読込んだ最終操舵領域SA(n-1)にステップS2で読込んだカウンタメモリ14dの計数値nを加算して、現時点における入力軸2aの操舵領域の領域値を表す現操舵領域SA(n)を算出し、算出した現操舵領域SA(n)を例えばRAM等の現操舵領域記憶領域に記憶する。
【0062】
次いで、ステップS4に移行して、磁気検出素子MD1及びMD2で検出した90度位相が異なる磁気検出信号S1及びS2を読込み、次いでステップS5に移行して、読込んだ磁気検出信号S1及びS2に基づいて下記(1)式の演算を行って舵角θを算出する。
θ=arctan(S1/S2) …………(1)
【0063】
次いで、ステップS6に移行して、現操舵領域記憶領域に記憶されている現操舵領域SA(n)と、ステップS5で算出した舵角θとから絶対操舵角θaを算出する図15に示す操舵角算出処理を実行する。
【0064】
次いで、ステップS7に移行して、パルス電圧PLa〜PLd及びPRa〜PRdの何れかが発生したか否かを判定する。この判定は、例えば、不揮発性メモリ14cに第1の論理回路14aによって識別コードが書込まれたか否かを判定することにより行う。
不揮発性メモリ14cに識別コードが書込まれたときには、ステップS8に移行して、書込まれた識別コードと前回書込まれた識別コードとに基づいてステアリングシャフト2の入力軸2aの操舵方向を判定する。
【0065】
次いでステップS9に移行して、操舵方向が右操舵であるか否かを判定し、右操舵であるときにはステップS10に移行して、不揮発性メモリ14cに記憶されている現操舵領域SA(n)に“1”を加算して新たな現操舵領域SA(n)を算出すると共に、算出した現操舵領域SA(n)を例えばRAMに形成した現操舵領域記憶領域に更新記憶してからステップS13に移行する。
【0066】
一方、ステップS9の判定結果が右操舵ではないときには、ステップS11に移行して、操舵方向が左操舵であるか否かを判定し、左操舵であるときにはステップS12に移行して、現操舵領域記憶領域に記憶されている現操舵領域SA(n)から“1”を減算した値を新たな現操舵領域SA(n)として算出し、算出した現操舵領域SA(n)をRAM等の現操舵領域記憶領域に更新記憶してから後述するステップS13に移行し、ステップS11の判定結果が左操舵ではないときには前回と同一の発電型式センサからパルス電圧が出力されているものと判断してそのまま後述するステップS13に移行する。
【0067】
ステップS13では、イグニッションスイッチ18がオフ状態となったか否かを判定し、イグニッションスイッチ18がオン状態を継続しているときには前記ステップS4へ戻り、イグニッションスイッチ18がオン状態からオフ状態に反転したときにはステップS13に移行する。
このステップS13では、RAM等の現操舵領域記憶領域に記憶されている現操舵領域SA(n)を読込み、読込んだ現操舵領域SA(n)を最終操舵領域SA(n-1)として不揮発性メモリ14cの最終操舵領域記憶領域に記憶してからステップS14に移行して、カウンタメモリ14dの計数値nを“0”にリセットしてから操舵角検出処理を終了する。
【0068】
なお、マイクロコンピュータ15はイグニッションスイッチ18がオフ状態となった場合でも、イグニッションスイッチ18がオフ状態となったときに実行すべき所定の処理が終了するまでの間、少なくとも動作可能状態を継続するように、所定の自己保持時間だけ自己保持する自己保持機能が設定されており、この自己保持時間が経過したときに、自己保持を解除してオフ状態に移行する。
【0069】
そして、図14の処理におけるステップS6の絶対操舵角算出処理は、図15に示すように、まず、ステップS21で、RAM等の現操舵領域記憶領域に記憶されている現操舵領域SA(n)を読込み、この現操舵領域SA(n)の値が零であるか符号が正負であるかを判定し、SA(n)=0であるときにはステップS22に移行して、右操舵でパルス電圧PRbが発生したときの硬磁性体21の取り得る回転範囲が−180°〜0°であり、左操舵でパルス電圧PLbが発生したときの硬磁性体21の取り得る回転範囲が−90°〜+90°であることから、現操舵領域SA(n)が“0”を表す場合の硬磁性体21の取り得る範囲は−180°〜+90の判定ということになる。
【0070】
このため、前述したステップ5で算出した舵角θが0°≦θ<90°を満足する場合には、舵角θを絶対操舵角θaとして設定し、それ以外の場合には舵角θから360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定し、これをRAM等の絶対操舵角記憶領域に更新記憶してからステップS43に移行して、絶対操舵角θaをハンドル制御部90に出力してから図14の処理におけるステップS7に戻る。
【0071】
また、前記ステップS21の判定結果が現操舵領域SA(n)の符号が正であるときには、ステップS23に移行して、現操舵領域SA(n)が+1であるか否かを判定し、SA(n)=+1であるときには、ステップS14に移行して、現操舵領域SA(n)での硬磁性体21の取り得る角度が−90°〜180°の範囲であることから、前記ステップS5で算出した舵角θが0°〜180°の範囲であるときには、舵角θを絶対操舵角θaとして設定し、その他の場合には、舵角θから360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定してからステップS40に移行する。
【0072】
さらに、ステップS23の判定結果が、SA(n)=+1ではないときには、ステップS25に移行して、現操舵領域SA(n)が+2であるか否かを判定し、SA(n)=+2であるときにはステップS26に移行して、ステップS4で算出した舵角θを絶対操舵角θaとして設定してからステップS40に移行する。
さらにまた、ステップS25の判定結果が、SA(n)=+2ではないときにはステップS27に移行して、現操舵領域SA(n)が+3であるか否かを判定し、SA(n)=+3であるときにはステップS28に移行して、ステップS4で算出した舵角θを絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS40に移行する。
【0073】
なおさらに、ステップS27の判定結果が、現操舵領域SA(n)が+3ではないときには、ステップS29に移行して、現操舵猟期SA(n)が+4であるか否かを判定し、SA(n)=+4であるときには、ステップS30に移行して、ステップS4で算出した舵角θが0°≦θ<90°の範囲であるときには舵角θに360°を加算した値を絶対操舵角θaとして設定し、それ以外の場合には舵角θをそのまま絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
【0074】
また、ステップS29の判定結果が、現操舵領域SA(n)が+4ではないときには、ステップS31に移行して、現操舵領域SA(n)が+5であるか否かを判定し、SA(n)=+5であるときにはステップS32に移行して、ステップS4で算出した舵角θが0≦θ<180°の範囲であるときには舵角θに360°を加算した値を絶対操舵角θaとして設定し、それ以外の場合には舵角θをそのまま絶対操舵角θaとして設定してからステップS43に移行する。
【0075】
さらに、ステップS31の判定結果がSA(n)=+5ではないときにはステップS33に移行して、ステップS4で算出した舵角θに360°を加算した値を絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
一方、前記ステップS21の判定結果が、現操舵領域SA(n)の符号が負であるときにはステップS34に移行して、現操舵領域SA(n)が−1であるか否かを判定し、SA(n)=−1であるときにはステップS35に移行して、ステップS4で算出した舵角θから360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
【0076】
また、ステップS34の判定結果が、現操舵領域SA(n)が−1ではないときには、ステップS36に移行し、現操舵領域SA(n)が−2であるか否かを判定し、SA(n)=−2であるときには、ステップS37に移行して、ステップS4で算出した舵角θから360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
さらに、ステップS36の判定結果が、現操舵領域SA(n)が−2ではないときにはステップS38に移行して、現操舵領域SA(n)が−3であるか否かを判定し、SA(n)=−3であるときにはステップS39に移行して、ステップS4で算出した舵角θが0°≦θ<180°の範囲であるときには舵角θから−360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定し、それ以外の場合には舵角θから−720°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
【0077】
さらにまた、前記ステップS38の判定結果が、現操舵領域SA(n)が−3ではないときにはステップS40に移行して、ステップS4で算出した舵角θが0°≦θ<90°の範囲であるときには舵角θから−360°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定し、それ以外の場合には、舵角θから−720°を減算した値絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
【0078】
なおさらに、ステップS40の判定結果が、SA(n)=−4ではないときには、ステップS42に移行して、ステップS4で算出した舵角θから720°を減算した値を絶対操舵角θaとして設定してから前記ステップS43に移行する。
【0079】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両の走行状態から例えば車両のステアリングホイール1を中立位置即ち直進走行時の絶対操舵角θaが0°となっている状態で停止させ、イグニッションスイッチ18をオフ状態としたものとする。このとき、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前に例えば右操舵状態で、発電型磁気センサGMbでパルス電圧PRbが出力され、次いで発電型磁気センサGMcでパルス電圧PRcが出力されたものとすると、図14の操舵角検出処理におけるステップS8で操舵方向が右操舵であると判定されることになり、ステップS9を経てステップS10に移行して、現操舵領域SA(n)に“1”が加算されて現操舵領域SA(n)が“0”となる。
この状態で、イグニッションスイッチ18がオフ状態となると、ステップS13で、現操舵領域SA(n)が最終操舵領域SA(n-1)として回転領域検出部14の不揮発性メモリ14cに形成された最終操舵領域記憶領域に記憶される。
【0080】
次いで、ステップS14に移行して、回転領域検出部14に対してリセット信号RSが出力される。
このため、回転領域検出部14の不揮発性メモリ14cに形成されたシフトレジスタがクリアされると共に、カウンタメモリ14dの計数値nが“0”にクリアされ、さらに第2の論理回路14bで、フリップフロップ回路130がリセットされて初期状態にセットされて、選択回路SL1〜SL3で第1の比較部101が選択される。その後、マイクロコンピュータ15による自己保持状態が解除されてマイクロコンピュータ15への通電が停止される。
【0081】
しかしながら、操舵角センサ3は、図2に示すように、発電型磁気センサGMa〜GMdを備えており、ステアリングホイール1が操舵されると、発電型磁気センサGMa〜GMdから出力されるパルス電圧PLa〜PLd又はPRa〜PRdが回転領域検出部14に供給される。
すなわち、前述したように、イグニッションスイッチ18がオフ状態となる直前で、ステアリングホイール1が操舵角0°より僅かに左操舵された位置にあるものとすると、図2に示すように、硬磁性体21のN極及びS極が発電型磁気センサGMbとGMcとの中間位置より僅かに左操舵された位置及び発電型磁気センサGMdとGMaとの中間位置より僅かに左操舵された位置にあるものとする。
【0082】
この状態では、ステアリングホイール1が操舵されていないので、各発電型磁気センサGMa〜GMdからパルス電圧PLa〜PLd及びPRa〜PRdは出力されず、回転領域検出部14も作動停止状態にあり、不揮発性メモリ14cに形成されたシフトレジスタがクリアされていると共に、カウンタメモリ14dも計数値nが“0”にクリアされている。
【0083】
この車両の停止状態で、車両に運転者が乗車して、イグニッションスイッチ18をオン状態とすることなく、ステアリングホイール1を例えば右切りすると、これに応じて硬磁性体21が図2で矢印Aで示すように時計方向に回動する。このため、発電型磁気センサGMcに硬磁性体21のN極の中心点からS極側に45°傾斜した位置が近づくことになるため、ステアリングホイール1が中立位置即ち0°に達した位置で、発電型磁気センサGMcから図11(c)に示すようにパルス電圧PRcが出力される。
【0084】
このパルス電圧PRcが第1及び第2の論理回路14a及び14bと不揮発性メモリ14c及びカウンタメモリ14dとに供給されるので、これら論理回路14a及び14cと不揮発性メモリ14c及びカウンタメモリ14dとが作動状態となり、これによって、不揮発性メモリ14cのシフトレジスタの先頭位置にパルス電圧PRcを出力した発電型磁気センサGMcを表す識別コードCが記憶される。
【0085】
この操舵角0°の状態からさらに右切りを継続して、発電型磁気センサMGd及びMGaから順次パルス電圧PRd及びPRaが出力されると、これらが第1の論理回路14aで識別コードD及びAに変換されて不揮発性メモリ14cに形成されたシフトレジスタに順次記憶される。
そして、3つ目の識別コードAがシフトレジスタに記憶された時点で、第2の論理回路14bでシフトレジスタに記憶されている3つの識別コードC,D,Aを読出して、先頭から順にレジスタ100に登録される。
【0086】
このように、レジスタ100に3つの識別コードC,D,Aが登録されると、レジスタ100の出力と、これらと同一配列となるレジスタ群RG1のレジスタR3に登録されたC,D,Aの出力とが入力されるアンドゲート群AG3の出力がオン状態となり、これがオアゲートOR1及びOR19を介してカウンタメモリ14dのカウントアップ信号入力側に供給されると共に、オアゲートOR1及びOR17を介し、さらに選択回路SL2を介してアンドゲートAG14に供給される。
【0087】
このアンドゲートAG14は、パルス発生器102から1つのカウントパルスが発生された時点で、出力がオン状態となり、これが単安定回路105にトリガ信号として入力される。このため、単安定回路105からパルス発生器102で発生されたカウントパルスを2つだけ通過させるに必要十分な時間オン状態となる矩形波信号がオアゲートOR14を介してゲート回路103に供給されるので、ゲート回路103が開状態となり、2つのカウントパルスがカウンタメモリ14dのカウントパルス入力側に供給される。このため、カウンタメモリ14dの計数値nが“0”からカウントアップされて“+2”となって、硬磁性体21の回転角度である略180°に対応した値となる。
【0088】
このように、各レジスタ群RG1〜RG12の何れかのアンドゲートAG1〜AG4からオン状態の出力信号が出力されると、この出力信号がオアゲートOR30を介してフリップフロップ回路130に入力されることにより、このフリップフロップ回路130がセットされて、その肯定出力がオン状態となることにより、単安定回路104〜106の入力側に設けられた選択回路SL1〜SL3が第2の比較部120側に切換えられる。このため、次に発電型磁気センサMGa〜MGdからパルス電圧が出力されたときに、第2の比較部120のレジスタ121と第1及び第2のレジスタ群RG21及びRG22との識別コードを比較して操舵方向を判定し、操舵方向に応じたアンドゲート群GAG21又はGAG22からオン状態の出力信号が得られ、これら出力信号が選択回路SL1を介してアンドゲートAG13に供給されると共に、操舵方向に応じてカウンタメモリ14dのカウントアップ信号入力側又はカウントダウン信号入力側に供給されて、右操舵である状態ではカウンタメモリ14dの計数値nが“1”だけカウントアップされ、左操舵である状態ではカウンタメモリ14dの計数値nが“1”だけカウントダウンされる。
【0089】
以後、ステアリングホイール2の操舵方向に応じて発電型磁気センサMGa〜MGdからパルス電圧PLa〜PLd又はPRa〜PRdが出力される毎に順次カウンタメモリ14dの計数値nが変化される。
また、イグニッションスイッチ18がオフ状態となった直後の初期状態における操舵パターンが第1〜第12レジスタ群GR1〜GR12に全て記憶されているので、発電型磁気センサMGa〜MGdから3つのパルス電圧が得られる迄の初期状態で、カウンタメモリ14dの計数値nを操舵パターンに応じた操舵領域の移動量に応じた値に正確に追従させることができる。
【0090】
すなわち、前述した図7〜図9に示す操舵パターンでもステアリングホイール2の回転に応じた操舵領域の移動量に応じた正確なカウンタメモリ14dの計数値nを得ることができる。
この車両の停止状態から、車両を発進させるために、イグニッションスイッチ18をオン状態とすると、これに応じてマイクロコンピュータ15にバッテリ17からの電力が投入されることにより、このマイクロコンピュータ15で操舵補助制御処理及び図14に示す操舵角検出処理が実行開始される。
【0091】
このうち、操舵角検出処理では、図14に示すように、先ず、前回のイグニッションスイッチ18をオフ状態としたときの最終操舵領域SA(n-1)を読込み(ステップS1)、ついでカウンタメモリ14dの計数値nを読込む(ステップS2)。そして、読込んだ最終操舵領域SA(n-1)に計数値を加算して現操舵領域SA(n)を算出する(ステップS3)。
【0092】
このとき、前述したように、イグニッションスイッチ18がオフ状態であったときの初期状態で発電型磁気センサMGc、MGd及びMGaでパルス電圧PRc、PRd及びPRaが出力されて、カウンタメモリ14dの計数値nが“+2”となり、この状態で、さらに右切りを継続して、発電型磁気センサMGb及びMGcでパルス電圧PRb及びPRcが出力された場合には、右操舵状態であるので、計数値nが夫々“1”だけカウントアップして“+4”となる。
【0093】
この状態で、イグニッションスイッチ18をオン状態とすると、最終操舵領域AS(n-1)が“0”であるので、図14の操舵角検出処理が実行開始されたときに、ステップS3で最終操舵領域AS(n-1)にカウンタメモリ14dの計数値nが加算されて現操舵領域AS(n)が算出されることになり、AS(n)=+4となって、硬磁性体21が図6(c)に示す状態となっている。この状態では、硬磁性体21が右操舵で発電型磁気センサMGdでパルス電圧PRcが発生する手前から硬磁性体21が左操舵で発電型磁気センサMGaでパルス電圧PLaが発生する手前までの間の180°〜450°の範囲内の操舵角を取り得ることになる。このときに磁気センサMD1及びMD2で検出した90°位相のずれた磁気検出信号S1及びS2に基づいて前記(1)式に従って算出する舵角θが硬磁性体21の回転角に応じた45°であるものとすると、図15の絶対操舵角θaの算出処理で、ステップS29からステップS30に移行して、0°≦θ<90°であるので、θa=360°+θとなり、絶対操舵角θaが405°となり、正確な絶対操舵角θaを算出することができる。
【0094】
その後、同様に右操舵を継続すれば、順次発電型磁気センサMGb、MGc……でパルス電圧PRb、PRc……が発生されて、現操舵領域AS(n)が+1ずつ増加される。逆に、絶対操舵角θaが405°の状態から左操舵に反転した場合には、発電型磁気センサGMcでパルス電圧PLcが発生されることになり、前回が発電型磁気センサGMdでパルス電圧PRdが発生していたので、左操舵と判定されて、現操舵領域AS(n)が−1だけ減少される。
【0095】
このようにして、上記実施形態によれば、硬磁性体21の周囲に等間隔で4つの発電型磁気センサGMa〜GMdを配置したので、これら磁気センサGMa〜GMdで操舵方向に応じて異なる角度でパルス電圧PLa〜PLd又はPRa〜PRdを発生することができ、これらパルス電圧PLa〜PLd又はPRa〜PRdによって、イグニッションスイッチ18がオフ状態であって、入力電源が無い状態でも、回転領域検出部14を駆動することができると共に、パルス電圧PLa〜PLd又はPRa〜PRdによってイグニッションスイッチ18のオフ直後の初期状態では、3つのパルス電圧が入力された時点で操舵パターンを検出して、カウンタメモリ14dの計数値nをステアリングホイール2の操舵領域に応じた値に追従させることができ、イグニッションスイッチ18がオフ状態であっても、ステアリングホイール2の操舵による操舵領域の移動を確実に検出することができる。
【0096】
そして、イグニッションスイッチ18がオフ状態からオン状態となったときに、前回のイグニッションスイッチ18がオフ状態となったときの最終操舵領域AS(n-1)にカウンタメモリ14dの計数値nを加算することにより、現操舵領域SA(n)を正確に算出することができ、この現操舵領域SA(n)と磁気センサMD1及びMD2で検出した磁気検出信号S1及びS2に基づいて前記(1)式で算出した舵角θとに基づいて現在の絶対操舵角θaを正確に検出することができる。
【0097】
そして、算出された絶対操舵角θaがハンドル戻し制御部90に出力される。
このとき、ステアリングホイール2を中立位置(0°)から離れる方向に例えば左操舵して、絶対操舵角θaと操舵角速度ωhとの符号が一致する場合には、ハンドル戻し制御部90で、スイッチ90Dがb接点に切換えられることによりハンドル制御信号HRが“0”を維持し、ハンドル戻し制御が停止される。
【0098】
その後、ステアリングホイール1を中立方向に向けて右切りするハンドル戻り操舵状態となると、これに応じて操舵角算出処理で順次絶対操舵角θaの絶対値が“0”に向けて減少する。このとき、絶対操舵角θaは負であり、操舵角速度ωhの符号は右切りによる正であるので、両者の符号が異なることにより、ハンドル戻し状態であると判断されて、ハンドル戻し制御部90のスイッチ90Dがa接点側に切換えられ、これにより、絶対操舵角θaに基づいてハンドル戻し電流基本回路90Aで算出されるハンドル戻し基本電流値Irにゲイン回路90Bから出力される車速感応ゲインGvとを乗算器90Cで乗算した値Ir・Gvがハンドル戻し制御信号HRとして加算器71に出力される。このため、ハンドル戻し時にのみ良好なハンドル戻し制御を行うことができる。
【0099】
このように、上記実施形態によれば、操舵角センサ3として発電型磁気センサGMa〜GMdを採用しているので、車両が停止状態でイグニッションスイッチ18がオフ状態であって、マイクロコンピュータ15で操舵角検出が行えない状態であっても、ステアリングホイール1を操舵したときに、発電型磁気センサGMa〜GMdで発生されるパルス電圧PL1〜PL4O又はPPR1〜PR4に基づいて回転領域検出部14の第1及び第2の論理回路14a及び14bと不揮発性メモリ14cとが駆動されることにより、カウンタメモリ14dの計数値nがステアリングホイール1の操舵による回転情報を表すことから、車両のイグニッションスイッチ18をオフ状態とした停止中に、ステアリングホイール1の操舵状態を正確に記憶することができ、その後、イグニッションスイッチ18をオン状態としてマイクロコンピュータ15に電源が投入されて操舵角検出処理が実行されたときに、計数値nに基づいて正確な絶対操舵角θaを算出することができる。
【0100】
そして、正確な絶対操舵角θaに基づいてハンドル戻し制御部90でハンドル戻し制御を行うことにより、ステアリングホイール1を中立位置に戻すハンドル戻し時のみハンドル戻し制御を行うことにより、最適なハンドル戻し制御を行うことができる。
なお、上記実施形態においては、磁気検出素子MD1及びMD2を発電型磁気センサGMa及びGMdと同一位置に配設した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転方向位置は同一で上下に異なる位置に配置したり、異なる任意の位置に配設したりするようにしてもよく、要は硬磁性体21の回転位置の中立位置からの1周期の磁気的変化を検出できればよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、2つの磁気検出素子MD1及びMD2を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1つの磁気検出素子MD0で硬磁性体21の回転1周期を検出するようにしてもよい。
【0102】
さらに、上記実施形態においては、硬磁性体21の着磁形態については言及していないが、図16(a)に示すように、硬磁性体21の円周方向に1組のN極及びS極を配置したり、図16(b)に示すように、軸方向にN極及びS極を着磁し、その着磁方向を左右で逆方向として、2組の磁極部を形成したりしてもよい。さらには、図17(a)に示すように、硬磁性体21の対向する4半部を軸方向にN極及びS極を着磁し、その着磁方向を左右で逆方向として2組の磁極部を形成したり、図17(b)に示すように、硬磁性体21の対向する4半部を半径方向にN極及びS極に着磁し、その着磁方向を左右で逆方向として1組の磁極部を形成したり、図17(c)に示すように、非磁性部の円周方向の対向する4半部における外周面に軸方向に互いに逆方向に着磁した磁石部を形成したり、図17(d)に示すように、非磁性部の円周方向の対向する4半部における外周面に半径方向に互いに逆方向に着磁した磁石部を形成するようにしてもよい。
【0103】
さらにまた、上記実施形態においては、硬磁性体21を円周方向に1組のN極及びS極を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、円周方向に2組のN極及びS極を交互に形成するようにしてもよく、この場合の着磁形態としては、図18(a)に示すように、円周方向に1組のN極及びS極を配置する場合や、図18(b)に示すように、軸方向にN極及びS極を着磁してその着磁方向を順次反転させる場合としてもよい。
【0104】
なおさらに、上記実施形態においては、電動モータ13をHブリッジで駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではく、電動モータをブラシレスモータとしたインバータ回路で駆動するようにしてもよく、この場合には、操舵補助制御処理としてベクトル制御処理を適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、操舵角検出処理で検出した操舵角θaを電動パワーステアリング装置のハンドル戻し制御部90に供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、サスペンション制御装置や車両走行制御装置等の絶対操舵角θaに基づいて制御を行う任意の車載装置に本発明を適用することができる。
【0105】
さらに、上記実施形態においては、操舵角を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の回転体の絶対回転角を検出する場合に本発明を適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】操舵角センサを示す概略構成図である。
【図3】発電型磁気センサを示す説明図であって、(a)は構成図、(b)はパルス電圧波形図である。
【図4】回転領域検出部の構成を示すブロック図である。
【図5】イグニッションスイッチのオフ時における操舵パターンを示す説明図である。
【図6】右操舵パターンの一例を示す説明図である。
【図7】右左操舵パターンの一例を示す説明図である。
【図8】右左操舵パターンの他の例を示す説明図である。
【図9】右左右操舵パターンの一例を示す説明図である。
【図10】回転領域検出部の第2の論理回路の具体的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の動作の説明に供する信号波形図である。
【図12】コントローラで実行する操舵補助制御処理の機能ブロック図である。
【図13】図12のハンドル戻り制御部の具体的構成を示すブロック図である。
【図14】コントローラで実行する操舵角検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図15】操舵角検出処理の絶対操舵角算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】円周方向に1組の磁極部を形成した硬磁性体の着磁例を示す説明図である。
【図17】円周方向に1組の磁極部を形成した硬磁性体の着磁例の他の例を示す説明図である。
【図18】円周方向に2組の磁極部を形成した硬磁性体を示す説明図である。
【図19】端面に磁極部を形成した、これに対向して発電型磁気センサ及び磁気検出素子を配置した操舵角センサを示す構成図である。
【符号の説明】
【0107】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…操舵角センサ、4…操舵トルクセンサ、9…ステアリングギヤ機構、11…操舵補助機構、12…減速ギヤ、13…電動モータ、14…回転領域検出部、15…コントローラ、16…車速センサ、17…バッテリ、18…イグニッションスイッチ、40…操舵補助指令値演算部、50…電流制御部、51…Hブリッジ特性補償部、52…電流ドライブ回路、61モータ角速度推定部、90…ハンドル戻し制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持された回転体に円周方向に少なくとも1組のN極及びS極を有する硬磁性体を配設し、該硬磁性体に対向して、当該硬磁性体によって互いに磁気的に90度の位相差を有するパルス電圧を発生する4個の発電型磁気検出部と所定数の磁気検出部とを配設し、少なくとも電源オフ時に各発電型磁気検出部で発生されるパルス電圧によって駆動されてパルス電圧数を回転方向に基づいて加減算計数して回転領域に応じた計数値を生成して記憶する計数手段と、電源オン時に前記計数手段に記憶されている計数値に基づく回転領域と前記磁気検出部から出力される磁気的周期とに基づいて絶対回転角を検出する回転角検出部とを備えていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記硬磁性体は前記回転体の外周面に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記硬磁性体は前記回転体の端面に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記発電型磁気検出部は、大バルクハウゼン現象を応用した磁気センサで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサは、中心部分と外郭部分とで異なる磁気特性を有する複合磁性ワイヤと該複合磁性ワイヤに巻装した検出コイルとで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
前記計数手段は、発電型磁気検出部から出力されるパルス電圧で駆動される不揮発性メモリに形成された加減算カウンタで構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転角検出装置。
【請求項7】
前記回転体は操舵装置を構成するステアリングシャフトであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の回転角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−162730(P2009−162730A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3233(P2008−3233)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】