説明

回転角検出装置

【課題】複数のセンサの出力信号うちの1つの出力信号に異常が発生した場合に、異常が発生した出力信号を特定できるとともに、正常な他の出力信号に基づいて正確な回転角を演算することが可能となる回転角検出装置を提供する。
【解決手段】回転角演算装置20は、第1の回転角演算部21、第2の回転角演算部22、第3の回転角演算部23、異常監視部24および最終回転角演算部25を含む。異常監視部24は、第1、第2および第3の出力信号V1,V2,V3に基づいて、各出力信号V1,V2,V3が正常であるか異常であるかを判定する。最終回転角演算部25は、異常監視部24の最終判定結果と、第1、第2および第3の回転角演算部21,22,23によってそれぞれ演算された第1、第2および第3の回転角θ,θ,θに基づいて、最終的な回転角θを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置などに使用されるブラシレスモータは、ロータの回転角度に合わせてステータ巻線に電流を通電することによって制御される。そこで、たとえば、図4に示す回転角検出装置が知られている。回転角検出装置は、2つの磁極N,Sを有する磁石を含むロータ1と、ロータ1の回転中心軸を中心として90°の角度間隔をおいて配置された2つの磁気センサ11,12とを含む。各磁気センサ11,12は、互いに90°の位相差を有する正弦波信号を出力する。回転角検出装置は、これらの2つの正弦波信号に基づいてロータ1の回転角を検出する。
【0003】
図4に矢印で示す方向をロータ1の正方向の回転方向とする。そして、ロータ1が正方向に回転されるとロータ1の回転角が大きくなり、ロータ1が逆方向に回転されると、ロータ1の回転角が小さくなるものとする。ロータ1の回転角θに対して、一方の磁気センサ11からV1=A1・sinθの出力信号V1が出力されるとすると、他方の磁気センサ12からは、V2=A2・sin(θ+90°)=A2・cosθの出力信号V2が出力される。A1,A2は、それぞれ振幅を表している。
【0004】
これらの振幅A1,A2が互いに等しい値Aであるとみなすか、あるいは両振幅が所定の規定値Aとなるように両信号V1,V2を正規化したとすると、一方の出力信号V1は、V1=A・sinθと表され、他方の出力信号V2は、V2=A・cosθと表される。さらに、A=1とすると、一方の出力信号V1は、V1=sinθで表され、他方の出力信号V2は、V2=cosθで表される。そこで、説明を簡単にするために、磁気センサ11,12の出力信号V1,V2を、V1=sinθ、V2=sin(θ+90°)=cosθで表すことにする。図5に、ロータ1の回転角θに対する磁気センサ11,12の出力信号V1,V2の変化を示す。
【0005】
ロータの回転角θは、両出力信号V1,V2を用いて、たとえば、次式(1)に基づいて求めることができる。
θ=tan−1(sinθ/cosθ)
=tan−1(sinθ/sin(θ+90°))
=tan−1(V1/V2)…(1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-241411号公報
【特許文献2】特開2002-213944号公報
【特許文献3】特開2010-110147号公報
【特許文献4】特開2006-78392号公報
【特許文献5】特開2010-48760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したような従来の回転角検出装置においては、1つの磁気センサの出力信号に異常が発生すると、正確な回転角を演算できなくなる。
この発明の目的は、複数のセンサの出力信号のうちの1つの出力信号に異常が発生した場合に、異常が発生した出力信号を特定できるとともに、正常な他の出力信号に基づいて正確な回転角を演算することが可能となる回転角検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、回転体(1)の回転に応じて、互いに位相差を有する第1、第2および第3の正弦波信号をそれぞれ出力する第1、第2および第3のセンサ(11〜13)を含み、これらのセンサの出力信号に基づいて前記回転体の回転角を検出する回転角検出装置(20)であって、前記第1、第2および第3の正弦波信号に基づいて、前記各正弦波信号が正常であるか異常であるかを判定する判定手段(24)と、前記第1、第2および第3の正弦波信号のうち、前記判定手段によって正常であると判定された2以上の正弦波信号に基づいて、回転角を演算する回転角演算手段(21〜23,25)と、を含む回転角検出装置ある。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0009】
この構成では、第1、第2および第3の正弦波信号に基づいて、各正弦波信号が正常であるか異常であるかが判定される。そして、第1、第2および第3の正弦波信号のうち、判定手段によって正常であると判定された2以上の正弦波信号に基づいて、回転角が演算される。これにより、第1、第2および第3の正弦波信号のうちの一つに異常が発生した場合には、正弦波信号に異常が発生していることを検出できるとともに異常が発生した1つの正弦波信号を特定することができる。そして、第1、第2および第3の正弦波信号のうち、異常な正弦波信号を除いた正常な2つの正弦波信号によって回転角を演算することができる。したがって、3つのセンサのうちの1つのセンサが故障した場合にも、回転体の回転角を正確に演算することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記判定手段は、前記第1および第2の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第1の判定手段(24,S21〜S25)と、前記第1および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第2の判定手段(24,S26〜S30)と、前記第2および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第3の判定手段(24,S31〜S35)と、前記第1、第2および第3の判定手段の判定結果に基づいて、前記各正弦波信号が正常であるか異常であるかを判定する第4の判定手段(24,S33〜S45)とを含む、請求項1に記載の回転角検出装置である。
【0011】
この構成では、第1および第2の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。また、第1および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。また、第2および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。そして、これらの判定結果に基づいて、各正弦波信号が正常であるか異常であるかが判定される。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記第1のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、V1=sinθで表される第1の正弦波信号V1を出力するものであり、前記第2のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第2の正弦波信号の位相差αを用いてV2=sin(θ+α)で表される第2の正弦波信号V2を出力するものであり、前記第3のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第3の正弦波信号の位相差βを用いてV3=sin(θ+β)で表される第3の正弦波信号V3を出力するものであり、d(d≧0)を定数とすると、前記第1の判定手段は、次式(i)で示される第1条件を満たしているか否かに基づいて、前記第1および第2の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものであり、前記第2の判定手段は、次式(ii)で示される第2条件を満たしているか否かに基づいて、前記第1および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものであり、前記第3の判定手段は、次式(iii)で示される第3条件を満たしているか否かに基づいて、前記第2および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものである請求項2に記載の回転角検出装置である。
【0013】
【数1】

【0014】
この構成では、式(i)で示される第1条件を満たしているか否かに基づいて、第1および第2の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。また、式(ii)で示される第2条件を満たしているか否かに基づいて、第1および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。また、式(iii)で示される第3条件を満たしているか否かに基づいて、第2および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かが判定される。そして、これらの判定結果に基づいて、各正弦波信号が正常であるか異常であるかが判定される。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記回転角演算手段は、前記第1の正弦波信号と前記第2の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第1の回転角を演算する第1の回転角演算手段(21)と、前記第1の正弦波信号と前記第3の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第2の回転角を演算する第2の回転角演算手段(22)と、前記第2の正弦波信号と前記第3の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第3の回転角を演算する第3の回転角演算手段(23)と、前記第1、第2および第3の回転角演算手段によって演算された前記第1、第2および第3の回転角のうち、前記判定手段によって正常であると判定された正弦波信号の組合せに基づいて演算された回転角を用いて、最終的な回転角を演算する第4の回転角演算手段(25)とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転角検出装置である。
【0016】
この構成では、第1の正弦波信号と第2の正弦波信号とに基づいて、回転体の回転角に相当する第1の回転角が演算される。また、第1の正弦波信号と第3の正弦波信号とに基づいて、回転体の回転角に相当する第2の回転角が演算される。また、第2の正弦波信号と第3の正弦波信号とに基づいて、回転体の回転角に相当する第3の回転角が演算される。そして、第1、第2および第3の回転角のうち、判定手段によって正常であると判定された正弦波信号の組合せに基づいて演算された回転角を用いて、最終的な回転角が演算される。
【0017】
具体的には、判定手段によって第1の正弦波信号と第2の正弦波信号が正常であり、第3の正弦波信号が異常であると判定されている場合には、第1の回転角が最終的な回転角として決定される。また、判定手段によって第1の正弦波信号と第3の正弦波信号が正常であり、第2の正弦波信号が異常であると判定されている場合には、第2の回転角が最終的な回転角として決定される。また、判定手段によって第2の正弦波信号と第3の正弦波信号が正常であり、第1の正弦波信号が異常であると判定されている場合には、第3の回転角が最終的な回転角として決定される。
【0018】
また、判定手段によって全ての正弦波信号が正常であると判定されている場合には、第1、第2および第3の回転角の平均値または中央値を、最終的な回転角として演算することができる。また、この場合、第1、第2および第3の回転角のうち、最も外れているものを除外し、他の2つの平均値を、最終的な回転角として演算することもできる。さらに、この場合、第1、第2および第3の回転角のうちのいずれか1つの回転角を、最終的な回転角として用いることもできる。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記第1のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、V1=sinθで表される第1の正弦波信号V1を出力するものであり、前記第2のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第2の正弦波信号の位相差αを用いてV2=sin(θ+α)で表される第2の正弦波信号V2を出力するものであり、前記第3のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第3の正弦波信号の位相差βを用いてV3=sin(θ+β)で表される第3の正弦波信号V3を出力するものであり、前記第1の回転角演算手段は、次式(iv)により、第1の回転角θを求めるものであり、前記第2の回転角演算手段は、次式(v)により、第2の回転角θを求めるものであり、前記第3の回転角演算手段は、次式(vi)により、第3の回転角θを求めるものである、請求項4に記載の回転角検出装置である。
【0020】
【数2】

【0021】
この構成では、式(iv) により第1の回転角θが求められ、式(v) により第2の回転角θが求められ、式(vi)により、第3の回転角θが求められる。そして、第1、第2および第3の回転角のうち、判定手段によって正常であると判定された正弦波信号の組合せに基づいて演算された回転角を用いて、最終的な回転角が演算される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態に係る回転角検出装置の構成を示す模式図である。
【図2】回転角演算装置による回転角演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図3A】図2のステップS3の異常監視処理の手順を示すフローチャートである。
【図3B】図2のステップS3の異常監視処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】従来の回転角検出装置による回転角検出方法を説明するための模式図である。
【図5】2つの磁気センサ間の角度間隔が90°の場合の各磁気センサの出力信号を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、この発明をブラシレスモータのロータの回転角を検出するための回転角検出装置に適用した場合の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る回転角検出装置の構成を示す模式図である。
この回転角検出装置は、たとえば、電動パワーステアリング装置のブラシレスモータのロータの回転角を検出するために用いることができる。回転角検出装置は、たとえば、ブラシレスモータの回転に応じて回転する検出用ロータ1(以下、「ロータ1」という)を有している。ロータ1は、2つの磁極N,Sを有する磁石を含んでいる。 ロータ1の周囲には、3つの磁気センサ11,12,13が、ロータ1の周方向に間隔をおいて配置されている。これら3つの磁気センサ11,12,13を、それぞれ第1の磁気センサ11、第2の磁気センサ12および第3の磁気センサ13という場合がある。磁気センサとしては、たとえば、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁界の作用により電気的特性が変化する特性を有する素子を備えたものを用いることができる。
【0024】
第1の磁気センサ11と第2の磁気センサ12とは、ロータ1の回転中心軸を中心として、αの角度間隔をおいて配置されている。このαは、この例では、たとえば30°に設定されている。第1の磁気センサ11と第3の磁気センサ13とは、ロータ1の回転中心軸を中心として、αより大きなβの角度間隔をおいて配置されている。このβは、この例では、たとえば60°に設定されている。したがって、第2の磁気センサ12と第3の磁気センサ13との間の角度間隔は、(β−α)となる。この例では、(β−α)は、30°である。
【0025】
図1に矢印で示す方向をロータ1の正方向の回転方向とする。そして、ロータ1が正方向に回転されるとロータ1の回転角が大きくなり、ロータ1が逆方向に回転されると、ロータ1の回転角が小さくなるものとする。ロータ1の回転角θに対して、第1の磁気センサ11からV1=A1・sinθの出力信号V1が出力されるとすると、第2の磁気センサ12からは、V2=A2・sin(θ+α)の出力信号V2が出力され、第3の磁気センサ13からは、V3=A3・sin(θ+β)の出力信号V3が出力される。A1,A2,A3は、それぞれ振幅を表している。
【0026】
これらの振幅A1,A2,A3が互いに等しい値Aであるとみなすか、あるいは各振幅が所定の規定値Aとなるように各信号V1,V2,V3を正規化したとすると、各信号V1,V2,V3は、それぞれ、A・sinθ,A・sin(θ+α)およびA・sin(θ+β)と表される。ここで、A=1とすると、各信号V1,V2,V3は、それぞれ、sinθ, sin(θ+α)およびsin(θ+β)と表される。そこで、以下の説明においては、説明を簡単にするために、各磁気センサ11,12,13の出力信号V1,V2,V3を、それぞれV1=sinθ,V2=sin(θ+α)およびV3=sin(θ+β)と表すことにする。
【0027】
各磁気センサ11,12,13の出力信号V1,V2,V3は、回転角演算装置20に入力される。回転角演算装置20は、各磁気センサ11,12,13の出力信号V1,V2,V3に基づいて、ロータ1の回転角θを演算する。以下において、第1の磁気センサ11、第2の磁気センサ12および第3の磁気センサ13の出力信号V1,V2,V3を、それぞれ第1、第2および第3の出力信号V1,V1,V3という場合がある。
【0028】
回転角演算装置20は、たとえば、マイクロコンピュータから構成され、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ(ROM,RAM等)を含んでいる。回転角演算装置20は、ROMに格納された所定のプログラムをCPUが実行することにより、複数の機能処理部として機能する。この複数の機能処理部は、第1の回転角演算部(第1の回転角演算手段)21、第2の回転角演算部(第2の回転角演算手段)22、第3の回転角演算部(第3の回転角演算手段)23、異常監視部(判定手段)24および最終回転角演算部(第4の回転角演算手段)25を含む。
【0029】
第1の回転角演算部21は、第1の出力信号V1と第2の出力信号V2とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第1の回転角θを演算する。具体的には、第1の回転角演算部21は、まず、第1の出力信号V1(=sinθ)と第2の出力信号V2(=sin(θ+α))とから、第1の出力信号V1に対する位相差が90°となる信号V12(=sin(θ+90°)=cosθ)を生成する。より具体的には、第1の回転角演算部21は、次式(2)に基づいて、信号V12を生成する。
【0030】
【数3】

【0031】
つまり、第1の回転角演算部21は、第1の出力信号V1(=sinθ)と、第2の出力信号V2(=sin(θ+α))と、cosαと、sinαとから、信号V12(=cosθ)を生成する。cosα,sinαは、予めメモリに格納されている。なお、前記式(2)は、sin(θ+α)を三角関数の加法定理により展開した式に基づいて、導出することができる。
そして、第1の回転角演算部21は、前記信号V12(=cosθ)と第1の出力信号V1(=sinθ)とを用い、次式(3)に基づいて、第1の回転角θを演算する。
【0032】
【数4】

【0033】
第2の回転角演算部22は、第1の出力信号V1と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第2の回転角θを演算する。具体的には、第2の回転角演算部22は、まず、第1の出力信号V1(=sinθ)と第3の出力信号V3(=sin(θ+β))とから、第1の出力信号V1に対する位相差が90°となる信号V13(=sin(θ+90°)=cosθ)を生成する。より具体的には、第2の回転角演算部22は、次式(4)に基づいて、信号V13を生成する。
【0034】
【数5】

【0035】
つまり、第2の回転角演算部22は、第1の出力信号V1(=sinθ)と、第3の出力信号V3(=sin(θ+β))と、cosβと、sinβとから、信号V13(=cosθ)を生成する。cosβ,sinβは、予めメモリに格納されている。なお、前記式(4)は、前記式(2)と同様に、sin(θ+β)を三角関数の加法定理により展開した式に基づいて、導出することができる。
【0036】
そして、第2の回転角演算部22は、前記信号V13(=cosθ)と第1の出力信号V1(=sinθ)とを用い、次式(5)に基づいて、第2の回転角θを演算する。
【0037】
【数6】

【0038】
第3の回転角演算部23は、第2の出力信号V2と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角に相当する第3の回転角θを演算する。
第3の回転角演算部23による第3の回転角θの演算方法の考え方について説明する。第3の回転角演算部23は、まず、第2の出力信号V2と第3の出力信号V3とに基づいて、ロータ1の回転角θに対してαだけ進んだ回転角θ’(=θ+α)を演算する。そして、得られた回転角θ’からαを減算することにより、第3の回転角θを演算する。
【0039】
第3の回転角演算部23は、まず、第2の出力信号V2(=sin(θ+α))と第3の出力信号V3(=sin(θ+β))とから、第2の出力信号V2に対する位相差が90°となる信号V23(=sin(θ+α+90°))を生成する。
θ’=θ+αとして、出力信号V2を正弦波信号sinθ’で表し、出力信号V3を、この正弦波信号sinθ’に対して位相差が(β−α)進んだ正弦波信号sin(θ’+(β−α))で表すと、前記第1の回転角演算部21と同様な方法により、正弦波信号sinθ’に対して位相差が90°となる信号V23(=sin(θ’+90°)=cosθ’)を求めることができる。
【0040】
具体的には、第3の回転角演算部23は、次式(6)に基づいて、信号V23を生成する。
【0041】
【数7】

【0042】
つまり、第3の回転角演算部23は、第2の出力信号V2(=sin(θ+α))と、第3の出力信号V3(=sin(θ+β))と、cos(βーα)と、sin(βーα)とから、信号V23(=cosθ’)を生成する。cos(βーα)、sin(βーα)は、予めメモリに格納されている。
次に、第3の回転角演算部23は、前記信号V23(=cosθ’)と第2の出力信号V2(=sinθ’=sin(θ+α))とを用い、次式(7)に基づいて、回転角θ’を演算する。
【0043】
【数8】

【0044】
そして、第3の回転角演算部23は、次式(8)に基づいて、第3の回転角θを演算する。
θ=θ’−α …(8)
なお、αは予めメモリに格納されている。
異常監視部24は、第1の出力信号V1と、第2の出力信号V2と、第3の出力信号V3とに基づいて、各出力信号V1,V2,V3が正常であるか異常であるかを判定する。より具体的には、異常監視部24は、各出力信号V1,V2,V3と、前記式(2)に基づいて演算されるV12と、前記式(4)に基づいて演算されるV13と、前記式(6)に基づいて演算されるV23とを用いて、各出力信号V1,V2,V3が正常であるか異常であるかを判定する。
【0045】
言い換えれば、異常監視部24は、各磁気センサ11,12,13の故障を検出する。磁気センサ11,12,13が故障すると、その出力信号V1,V2,V3は、たとえば、零、上限値または下限値に固定される。
異常監視部24による正常・異常判定の考え方について説明する。
第1の出力信号V1はsinθで表され、第1の出力信号V1と第2の出力信号V2とから生成される前記信号V12はcosθで表される。sinθ+cosθ=1であるので、第1および第2の出力信号V1,V2が正常であれば、V1+V12=1が成立するはずである。
【0046】
そこで、異常監視部24は、V1+V12の値が1±d(d≧0)の範囲内にあれば、第1および第2の出力信号V1,V2が正常であり、範囲外であればこれらの出力信号V1,V2のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定する。ただし、この実施形態では、V1+V12の値が1±dの範囲内であるか否かを所定の演算周期毎に行ない、V1+V12の値が1±dの範囲外である状態が所定回数以上継続する場合に、第1および第2の出力信号V1,V2のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定している。この判定結果を第1判定結果という場合がある。dは定数であり、たとえば、0〜0.1の範囲内の値に設定される。dが0に設定されている場合には、V1+V12の値が1であるか否かが判別される。dが0.1に設定されている場合には、V1+V12の値が0.9以上でかつ1.1以下の範囲内であるか否かが判別される。
【0047】
また、第1の出力信号V1はsinθで表され、第1の出力信号V1と第3の出力信号V3とから生成される前記信号V13はcosθで表される。sinθ+cosθ=1であるので、第1および第3の出力信号V1,V3が正常であれば、V1+V13=1が成立するはずである。
そこで、異常監視部24は、V1+V13の値が1±d(d≧0)の範囲内にあれば、第1および第3の出力信号V1,V3が正常であり、範囲外であればこれらの出力信号V1,V3のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定する。ただし、この実施形態では、V1+V13の値が1±dの範囲内であるか否かを所定の演算周期毎に行ない、V1+V13の値が1±dの範囲外である状態が所定回数以上継続する場合に、第1および第3の出力信号V1,V3のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定している。この判定結果を第2判定結果という場合がある。
【0048】
また、前述したように、θ’=θ+αとすると、第2の出力信号V2はsinθ’で表され、第2の出力信号V2と第3の出力信号V3とから生成される前記信号V23はcosθ’で表される。sinθ’+cosθ’=1であるので、第2および第3の出力信号V2,V3が正常であれば、V2+V23=1が成立するはずである。
そこで、異常監視部24は、V2+V23の値が1±d(d≧0)の範囲内にあれば、第2および第3の出力信号V2,V3が正常であり、範囲外であればこれらの出力信号V2,V3のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定する。ただし、この実施形態では、V2+V23の値が1±dの範囲内であるか否かを所定の演算周期毎に行ない、V2+V23の値が1±dの範囲外である状態が所定回数以上継続する場合に、第2および第3の出力信号V2,V3のうちの少なくとも一方に異常が発生している可能性があると判定している。この判定結果を第3判定結果という場合がある。
【0049】
そして、異常監視部24は、第1、第2および第3判定結果に基づいて、各出力信号V1,V2,V3が正常であるか異常であるかを判定する。この判定結果を最終的な判定結果という場合がある。表1は、第1、第2および第3判定結果と、最終的な判定結果との関係を示している。
【0050】
【表1】

【0051】
具体的には、第1、第2および第3判定結果の全てが正常(異常の可能性がないとの判定結果)である場合には、異常監視部24は、全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定する。一方、第1、第2および第3判定結果の全てが異常(異常の可能性があるとの判定結果)である場合には、異常監視部24は、出力信号V1,V2,V3のうちの2以上の信号が異常であると判定する。この場合には、回転角を演算できないので、モータが停止される。
【0052】
第1判定結果および第2判定結果が異常であり、第3判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、第1の出力信号V1が異常であり、第2および第3の出力信号V2,V3が正常であると判定する。第1判定結果および第3判定結果が異常であり、第2判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、第2の出力信号V2が異常であり、第1および第3の出力信号V1,V3が正常であると判定する。第2判定結果および第3判定結果が異常であり、第1判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、第3の出力信号V3が異常であり、第1および第2の出力信号V1,V2が正常であると判定する。
【0053】
最終回転角演算部25は、異常監視部24の最終判定結果と、第1、第2および第3の回転角演算部21,22,23によってそれぞれ演算された第1、第2および第3の回転角θ,θ,θに基づいて、最終的な回転角θを演算する。具体的には、最終回転角演算部25は、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θのうち、異常監視部24によって正常であると判定された出力信号の組合せに基づいて演算された回転角に基づいて最終的な回転角θを演算する。
【0054】
より具体的には、異常監視部24によって全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定された場合には、最終回転角演算部25は、たとえば、次式(9)に基づいて、最終的な回転角θを演算する。つまり、最終回転角演算部25は、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θの平均値を、最終的な回転角θとして演算する。
θ=(θ+θ+θ)/3 …(9)
なお、異常監視部24によって全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定された場合には、最終回転角演算部25は、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θの中央値を、最終的な回転角として演算することができる。また、この場合、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θのうち、最も外れているものを除外し、他の2つの平均値を、最終的な回転角として演算することもできる。さらに、この場合、最終回転角演算部25は、第1,第2および第3の回転角θ,θ,θのいずれか1つの回転角を、最終的な回転角θとして決定してもよい。
【0055】
異常監視部24によって第1の出力信号V1が異常であり、第2および第3の出力信号V2,V3が正常であると判定された場合には、最終回転角演算部25は、第2および第3の出力信号V2,V3に基づいて演算された第3の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する。
異常監視部24によって第2の出力信号V2が異常であり、第1および第3の出力信号V1,V3が正常であると判定された場合には、最終回転角演算部25は、第1および第3の出力信号V1,V3に基づいて演算された第2の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する。
【0056】
異常監視部24によって第3の出力信号V3が異常であり、第1および第2の出力信号V1,V2が正常であると判定された場合には、最終回転角演算部25は、第1および第2の出力信号V1,V2に基づいて演算された第1の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する。
図2は、回転角演算装置20によって実行される回転角演算処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
回転角演算処理は、所定の演算周期毎に繰り返し行なわれる。まず、回転角演算装置70は、各磁気センサ11,12,13の出力信号V1(=sinθ),V2(=sin(θ+α)),V3(=sin(θ+β))を取り込む(ステップS1)。
そして、第1、第2および第3の回転角演算部21,22,23は、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θをそれぞれ演算する(ステップS2)。つまり、第1の回転角演算部21は、ステップS1で取り込まれた出力信号V1,V2と、メモリに格納されているsinαおよびcosαの値と、前記式(2),(3)とを用いて、第1の回転角θを演算する。また、第2の回転角演算部22は、ステップS1で取り込まれた出力信号V1,V3と、メモリに格納されているsinβおよびcosβの値と、前記式(4),(5)とを用いて、第2の回転角θを演算する。また、第3の回転角演算部23は、ステップS1で取り込まれた出力信号V2,V3と、メモリに格納されているα、sin(β−α)およびcos(β−α)の値と、前記式(6),(7),(8)とを用いて、第3の回転角θを演算する。
【0058】
次に、異常監視部24は、異常判定処理を行なう(ステップS3)。異常判定処理の詳細については、後述する。異常判定処理によって、2以上の出力信号が異常であると判定された場合には(ステップS4:YES)、異常監視部24はモータ停止指令を出力する(ステップS5)。これにより、モータが停止される。この場合、回転角演算処理も停止される。
【0059】
異常判定処理によって、全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定された場合には(ステップS6:YES)、最終回転角演算部25は、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θに基づいて、最終的な回転角θを演算する(ステップS7)。たとえば、最終回転角演算部25は、前記式(9)に基づいて、第1、第2および第3の回転角θ,θ,θの平均値を、最終的な回転角θとして演算する。そして、今演算周期での処理を終了する。
【0060】
異常監視部24によって第1の出力信号V1が異常であると判定された場合には(ステップS8:YES)、最終回転角演算部25は、第3の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する(ステップS9)。そして、今演算周期での処理を終了する。
異常監視部24によって第2の出力信号V2が異常であると判定された場合には(ステップS10:YES)、最終回転角演算部25は、第2の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する(ステップS11)。そして、今演算周期での処理を終了する。
【0061】
異常監視部24によって第3の出力信号V3が異常であると判定された場合には(ステップS10:NO)、最終回転角演算部25は、第1の回転角θを、最終的な回転角θとして決定する(ステップS12)。そして、今演算周期での処理を終了する。
図3Aおよび図3Bは、図2のステップS3の異常監視処理の手順を示すフローチャートである。
【0062】
異常監視部24は、V1+V12の値が1±d(d≧0)の範囲内にあるか否かを判別する(ステップS21)。つまり、異常監視部24は、次式(10)で表される第1条件を満たしているか否かを判別する。
【0063】
【数9】

【0064】
V1+V12の値が1±dの範囲内にある場合(第1条件を満たしている場合)には(ステップS21:YES)、異常監視部24は、第1カウント値K1を1だけデクリメント(−1)する(ステップS22)。そして、ステップS26に進む。第1カウント値K1の初期値は零である。また、第1カウント値K1は零以上の整数であり、負の値とならない。したがって、前記ステップS22で第1カウント値K1がデクリメントされたとしても、第1カウント値K1が零より小さい値になることはない。
【0065】
前記ステップS21において、V1+V12の値が1±dの範囲外である(第1条件を満たしていない)と判別された場合には(ステップS21:NO)、異常監視部24は、第1カウント値K1を1だけインクリメント(+1)する(ステップS23)。そして、異常監視部24は、第1カウント値K1が所定の閾値B以上であるか否かを判別する(ステップS24)。第1カウント値K1が閾値B未満である場合には(ステップS24:NO)、ステップS26に進む。
【0066】
一方、第1カウント値K1が閾値B以上であると判別された場合には(ステップS24:YES)、異常監視部24は、第1フラグF1をセット(F=1)した後(ステップS25)、ステップS26に進む。第1フラグF1は、第1判定結果を記憶するためのフラグであり、初期値は零(F1=0)である。
ステップS26では、異常監視部24は、V1+V13の値が1±d(d≧0)の範囲内にあるか否かを判別する。つまり、異常監視部24は、次式(11)で表される第2条件を満たしているか否かを判別する。
【0067】
【数10】

【0068】
V1+V13の値が1±dの範囲内にある場合(第2条件を満たしている場合)には(ステップS26:YES)、異常監視部24は、第2カウント値K2を1だけデクリメント(−1)する(ステップS27)。そして、ステップS31に進む。第2カウント値K2の初期値は零である。また、第2カウント値K2は零以上の整数であり、負の値とならない。
【0069】
前記ステップS26において、V1+V13の値が1±dの範囲外である(第2条件を満たしていない)と判別された場合には(ステップS26:NO)、異常監視部24は、第2カウント値K2を1だけインクリメント(+1)する(ステップS28)。そして、異常監視部24は、第2カウント値K2が閾値B以上であるか否かを判別する(ステップS29)。第2カウント値K2が閾値B未満である場合には(ステップS29:NO)、ステップS31に進む。
【0070】
一方、第2カウント値K2が閾値B以上であると判別された場合には(ステップS29:YES)、異常監視部24は、第2フラグF2をセット(F=1)した後(ステップS30)、ステップS31に進む。第2フラグF2は、第2判定結果を記憶するためのフラグであり、初期値は零(F2=0)である。
ステップS31では、異常監視部24は、V2+V23の値が1±d(d≧0)の範囲内にあるか否かを判別する。つまり、異常監視部24は、次式(12)で表される第3条件を満たしているか否かを判別する。
【0071】
【数11】

【0072】
V2+V23の値が1±dの範囲内にある場合(第3条件を満たしている場合)には(ステップS31:YES)、異常監視部24は、第3カウント値K3を1だけデクリメント(−1)する(ステップS32)。そして、ステップS36に進む。第3カウント値K3の初期値は零である。また、第3カウント値K3は零以上の整数であり、負の値とならない。
【0073】
前記ステップS31において、V2+V23の値が1±dの範囲外である(第3条件を満たしていない)と判別された場合には(ステップS31:NO)、異常監視部24は、第3カウント値K3を1だけインクリメント(+1)する(ステップS33)。そして、異常監視部24は、第3カウント値K3が閾値B以上であるか否かを判別する(ステップS34)。第3カウント値K3が閾値B未満である場合には(ステップS34:NO)、ステップS36に進む。
【0074】
一方、第3カウント値K3が閾値B以上であると判別された場合には(ステップS34:YES)、異常監視部24は、第3フラグF3をセット(F=1)した後(ステップS35)、ステップS36に進む。第3フラグF3は、第3判定結果を記憶するためのフラグであり、初期値は零(F3=0)である。
ステップS36では、異常監視部24は、第1、第2および第3フラグF1,F2,F3のうち2以上のフラグがセットされているか否かを判別する。第1、第2および第3フラグF1,F2,F3のうち2以上のフラグがセットされていない場合には(ステップS36:NO)、つまり、第1判定結果、第2判定結果および第3判定結果のうち、2以上の判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、全ての出力信号V1,V2,V3が正常であると判定する(ステップS37)。そして、異常監視部24は、ステップS4(図2参照)に戻る。
【0075】
前記ステップS36において、第1、第2および第3フラグF1,F2,F3のうち2以上のフラグがセットされていると判別された場合には(ステップS36:YES)、異常監視部24は、全てのフラグF1,F2,F3がセットされているか否かを判別する(ステップS38)。全てのフラグF1,F2,F3がセットされている場合には(ステップS38:YES)、つまり、第1判定結果、第2判定結果および第3判定結果が異常である場合には、異常監視部24は、第1、第2および第3の出力信号V1,V2,V3のうちの2以上の出力信号が異常であると判定する(ステップS39)。そして、異常監視部24は、ステップS4に戻る。
【0076】
一方、第1、第2および第3フラグF1,F2,F3のうち2つのフラグがセットされ、1つのフラグがリセットされている場合には(ステップS38:NO)、異常監視部24は、第1フラグF1と第2フラグF2がセットされているか否かを判別する(ステップS40)。第1フラグF1と第2フラグF2がセットされている場合には(ステップS40:YES)、つまり、第1判定結果および第2判定結果が異常であり、第3判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、第1の出力信号V1が異常であると判定する(ステップS41)。そして、異常監視部24は、ステップS4に戻る。
【0077】
前記ステップS40において、第1フラグF1および第2フラグF2のうちのいずれか一方がセットされていないと判別された場合には(ステップS40:NO)、異常監視部24は、第1フラグF1と第3フラグF3がセットされているか否かを判別する(ステップS42)。第1フラグF1と第3フラグF3がセットされている場合には(ステップS42:YES)、つまり、第1判定結果および第3判定結果が異常であり、第2判定結果が正常である場合には、異常監視部24は、第2の出力信号V2が異常であると判定する(ステップS43)。そして、異常監視部24は、ステップS4に戻る。
【0078】
前記ステップS42において、第1フラグF1および第3フラグF3のいずれか一方がセットされていないと判別された場合には(ステップS42:NO)、異常監視部24は、第2フラグF2と第3フラグF3がセットされていると判別する。つまり、異常監視部24は、第2判定結果および第3判定結果が異常であり、第1判定結果が正常であると判別する。この場合には、異常監視部24は、第3の出力信号V3が異常であると判定する(ステップS44)。そして、異常監視部24は、ステップS4に戻る。
【0079】
前記実施形態では、第1,第2および第3の出力信号V1,V2,V3のうちの一つに異常が発生した場合には、出力信号に異常が発生していることを検出できるとともに異常が発生した1つの出力信号を特定することができる。そして、第1,第2および第3の出力信号V1,V2,V3のうち、異常な出力信号を除いた正常な2つの出力信号によってロータ1の回転角θを演算することができる。したがって、3つの磁気センサ11,12,13のうちの1つの磁気センサが故障した場合にも、ロータ1の回転角θを正確に演算することができる。
【0080】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
また、この発明は、ブラシレスモータのロータ以外の回転体の回転角を検出する場合にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…ロータ、11,12,13…磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転に応じて、互いに位相差を有する第1、第2および第3の正弦波信号をそれぞれ出力する第1、第2および第3のセンサを含み、これらのセンサの出力信号に基づいて前記回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
前記第1、第2および第3の正弦波信号に基づいて、前記各正弦波信号が正常であるか異常であるかを判定する判定手段と、
前記第1、第2および第3の正弦波信号のうち、前記判定手段によって正常であると判定された2以上の正弦波信号に基づいて、回転角を演算する回転角演算手段と、を含む回転角検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記第1および第2の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第1の判定手段と、
前記第1および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第2および第3の正弦波信号に基づいて、それらの信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定する第3の判定手段と、
前記第1、第2および第3の判定手段の判定結果に基づいて、前記各正弦波信号が正常であるか異常であるかを判定する第4の判定手段とを含む、請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記第1のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、V1=sinθで表される第1の正弦波信号V1を出力するものであり、
前記第2のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第2の正弦波信号の位相差αを用いてV2=sin(θ+α)で表される第2の正弦波信号V2を出力するものであり、
前記第3のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第3の正弦波信号の位相差βを用いてV3=sin(θ+β)で表される第3の正弦波信号V3を出力するものであり、
d(d≧0)を定数とすると、前記第1の判定手段は、次式(i)で示される第1条件を満たしているか否かに基づいて、前記第1および第2の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものであり、
前記第2の判定手段は、次式(ii)で示される第2条件を満たしているか否かに基づいて、前記第1および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものであり、
前記第3の判定手段は、次式(iii)で示される第3条件を満たしているか否かに基づいて、前記第2および第3の正弦波信号の少なくとも一方に異常が発生している可能性があるか否かを判定するものである請求項2に記載の回転角検出装置。
【数1】

【請求項4】
前記回転角演算手段は、
前記第1の正弦波信号と前記第2の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第1の回転角を演算する第1の回転角演算手段と、
前記第1の正弦波信号と前記第3の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第2の回転角を演算する第2の回転角演算手段と、
前記第2の正弦波信号と前記第3の正弦波信号とに基づいて、前記回転体の回転角に相当する第3の回転角を演算する第3の回転角演算手段と、
前記第1、第2および第3の回転角演算手段によって演算された前記第1、第2および第3の回転角のうち、前記判定手段によって正常であると判定された正弦波信号の組合せに基づいて演算された回転角を用いて、最終的な回転角を演算する第4の回転角演算手段とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記第1のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、V1=sinθで表される第1の正弦波信号V1を出力するものであり、
前記第2のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第2の正弦波信号の位相差αを用いてV2=sin(θ+α)で表される第2の正弦波信号V2を出力するものであり、
前記第3のセンサは、前記回転体の回転角θに対して、前記第1および第3の正弦波信号の位相差βを用いてV3=sin(θ+β)で表される第3の正弦波信号V3を出力するものであり、
前記第1の回転角演算手段は、次式(iv)により、第1の回転角θを求めるものであり、
前記第2の回転角演算手段は、次式(v)により、第2の回転角θを求めるものであり、
前記第3の回転角演算手段は、次式(vi)により、第3の回転角θを求めるものである、請求項4に記載の回転角検出装置。
【数2】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−127801(P2012−127801A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279440(P2010−279440)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】