説明

回転電機の固定子

【課題】バッテリの充放電電流の検出精度を向上させることができ、電流検出抵抗の異常を確実に知ることができるバッテリ充放電電流検出装置を提供すること。
【解決手段】バッテリ充放電電流検出装置100は、車両に搭載されたバッテリ200の充放電電流を、バッテリ200の負極側端子に接続されたシャント抵抗210を用いて検出しており、シャント電圧を検出する電圧増幅部130、A/D132と、検出されたシャント電圧に基づいてバッテリ200の充放電電流を検出する電流値計算部150と、シャント抵抗210の異常の有無を検出するシャント異常検出部144と、異常検出時に外部に通知する警報装置160、通信処理部170とを備える。バッテリ充放電電流検出装置100の電源接続用の負極側端子は、バッテリ200の負極側端子に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載されるバッテリの充放電電流を検出するバッテリ充放電電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリの負極側端子とグランドとの間に挿入された電流検出抵抗の両端電圧に基づいてバッテリの充放電電流を検出するようにした電池残量表示装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。この電池残量表示装置では、検出された充放電電流を積算することでバッテリの残量が算出され、表示される。
【特許文献1】特開平6−176798号公報(第4−5頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、車両の利便性向上のために電子化が進み、パワーステアリングやブレーキ等の運転中に使用される大電流電気負荷が増加している。このため、車両運転中に大電流が流れることがあり、電流検出抵抗を用いてバッテリの充放電電流を検出する場合に以下のような問題が生じていた。
【0004】
他の車載機器と同様に車体をグランドとして使用した場合に、電流検出抵抗に流れる電流に応じてその電圧降下が変化するため、電池残量表示装置の電源電圧の電圧が変化し、動作が不安定になって電流検出精度が低下する。また、電流検出抵抗に電流が流れた際に温度が上昇すると、抵抗値の温度ドリフトが発生するため、電流検出精度がさらに低下する。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、バッテリの充放電電流の検出精度を向上させたバッテリ充放電電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のバッテリ充放電電流検出装置は、車両に搭載されたバッテリの充放電電流を、バッテリの負極側端子に接続された電流検出抵抗を用いて検出するバッテリ充放電電流検出装置であって、電流検出抵抗の両端電圧を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段によって検出された電流検出抵抗の両端電圧に基づいてバッテリの充放電電流を検出する電流値検出手段と、電流検出抵抗の異常の有無を検出する異常検出手段とを備えるとともに、電源接続用の負極側端子をバッテリの負極側端子に接続している。
【0007】
バッテリ充放電電流検出装置の電源接続用の負極側端子を、電流検出抵抗の一方端(バッテリと反対側)が接続されたグランドではなく、バッテリの負極側端子に接続しているため、エンジンのクランキング時等に大電流が流れた場合であっても電流検出抵抗による電圧降下の影響を排除することができ、バッテリ充放電電流検出装置の動作を安定させることによる電流検出精度の向上が可能となる。
【0008】
さらに、上述した異常検出手段によって異常が検出されたときに、電流検出抵抗と並列にバイパス手段を接続する接続切り替え手段をさらに備えている。電流検出抵抗の抵抗値が異常に高くなったり溶断等が発生した場合であっても、バッテリ充放電電流検出装置がグランドから完全に浮いてしまうことを防止することができ、電流検出抵抗の異常の有無に関係なく確実に通信を行うことが可能となる。
【0009】
また、上述した接続切り替え手段は、電流検出抵抗と電圧検出手段との間に接続されているとともに、バイパス手段は2つのスイッチからなり、一方のスイッチは電圧検出手段の入力端子間に接続され、他方のスイッチは電流検出抵抗におけるバッテリの負極側端子と接続されていない側と一方のスイッチとの間に接続されることが望ましい。
【0010】
また、上述したバイパス手段としての2つのスイッチをともにオンすることにより、接続切り替え手段を電流検出抵抗に対するバイパス手段として用いることが望ましい。
【0011】
また、上述した接続切り替え手段によって接続を切り替えることにより電流検出抵抗の両端電圧が仮想的に0となる状態を実現することで、電流検知検出手段の0点補正を行う0点補正手段をさらに備えることが望ましい。電流検出抵抗と並列にバイパス手段を接続することにより、電流検出抵抗の両端電圧を仮想的に0にすることができるため、電流検出抵抗に電流が流れていない状態をつくることができ、このときの電圧(あるいは電流)検出値を用いた0点補正を行うことにより、電流検出精度を上げることができる。
【0012】
また、上述した異常検出手段は、電圧検出手段によって検出された電流検出抵抗の両端電圧に基づいて異常の有無を検出することが望ましい。正常範囲を外れる両端電圧が検出されたときに確実に電流検出抵抗の異常を検出することができる。しかも、バッテリの充放電電流検出用に電流検出抵抗の両端電圧を検出しているため、特別な構成を追加することなく電流検出抵抗の異常を検出することができる。
【0013】
また、上述した電流検出抵抗の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、異常検出手段は、温度検出手段によって検出された温度に基づいて異常の有無を検出することが望ましい。これにより、抵抗値が異常に高くなって発熱量が許容範囲を超えた場合等の異常を検出することができる。また、電流検出抵抗の温度がわかれば、予め測定しておいた電流検出抵抗の抵抗値と温度との関係に基づいて温度補償を行うことも可能になり、容易に電流検出精度を上げることができる。
【0014】
また、上述した異常検出手段によって検出した異常を外部に通知する通知手段をさらに備えることが望ましい。これにより、電流検出抵抗の異常を検出して通知を行うことにより、それ以上状態が悪化しないように未然に負荷電流を減らしたり、修理あるいは交換等の対策を講じることが可能となる。
【0015】
また、上述した通知手段は、通信線を介さない無線通信手段によって外部制御装置に向けて異常を通知することが望ましい。電流検出抵抗の抵抗値が異常に高くなったり溶断等が発生した場合に、バッテリ充放電電流検出装置がグランドから完全に浮いてしまうと、グランドを電位の基準として通信線を介して信号を送ることができなくなるが、通信線を介さない電波や赤外線等による無線通信ではこのような不都合が無くなるため、電流検出抵抗の異常の有無に関係なく確実に通信を行うことが可能となる。
【0016】
また、上述した通知手段は、異常を視覚的あるいは聴覚的に知らせる警報装置であることが望ましい。これにより、他の装置(外部制御装置等)を用いることなく、異常を運転者等に直接知らせることができる。
【0017】
また、上述した課題を解決するために、本発明のバッテリ充放電電流検出装置は、車両に搭載されたバッテリの充放電電流を、バッテリの負極側端子に接続された電流検出抵抗を用いて検出するバッテリ充放電電流検出装置であって、電流検出抵抗の両端電圧を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段によって検出された電流検出抵抗の両端電圧に基づいてバッテリの充放電電流を検出する電流値検出手段と、電流検出抵抗の異常の有無を検出する異常検出手段とを備えるとともに、電源接続用の負極側端子をバッテリの負極側端子に接続し、電流検出抵抗と並列に接続された互いに極性が反対の第1および第2のダイオードをさらに備えている。これにより、電流検出抵抗に異常が発生してその両端電圧がダイオードの順方向電圧降下よりも高くなったときに、第1および第2のダイオードを介してバッテリとグランドとの間で電流を流すことができる。したがって、バッテリ充放電電流検出装置がグランドから完全に浮いてしまうことを防止することができ、電流検出抵抗の異常の有無に関係なく確実に通信を行うことが可能となる。また、バッテリの充放電電流を流すことが可能な第1および第2のダイオードを用いることにより、電流検出抵抗に異常が発生した場合であってもバッテリの充放電動作を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態のバッテリ充放電電流検出装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】図1に示したバッテリ充放電電流検出装置の具体的構成を示す図である。
【図3】バッテリ充放電電流検出装置において電流検出を行うメイン動作フローを示す流れ図である。
【図4】図3のステップ100において行われるシャント抵抗の異常判定の具体例を示す流れ図である。
【図5】図3のステップ101において行われるシャント異常時処理の具体例を示す流れ図である。
【図6】図3のステップ103において行われる0点補正処理の具体例を示す流れ図である。
【図7】シャント抵抗に異常が生じたときにグランドが浮くことを防止する変形例を示す図である。
【図8】シャント抵抗に異常が発生した場合に行われるシャント異常時処理において、必要に応じてグランド切り替え部による接続切り替えを行うようにした場合の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態のバッテリ充放電電流検出装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態のバッテリ充放電電流検出装置の機能ブロックを示す図である。図1に示すバッテリ充放電電流検出装置100は、車載のバッテリ200の負極側端子とグランド(例えば車両のボディ)との間に挿入された電流検出抵抗としてのシャント抵抗210の両端に現れる電圧(シャント電圧)に基づいてバッテリ200の充放電電流を検出する動作を行っている。
【0020】
このバッテリ充放電電流検出装置100は、電源回路110、GND(グランド)切り替え部120、電圧増幅部130、アナログ−デジタル変換器(A/D)132、142、温度検知部140、シャント異常検出部144、電流値計算部150、0点補正部152、記憶部154、警報装置160、通信処理部170を含んで構成されている。
【0021】
電源回路110は、バッテリ充放電電流検出装置100の各部に供給する動作電圧を生成する。電源回路110は、電源接続用の2つの端子(負極側端子と正極側端子)を有しており、電源接続用の負極側端子がバッテリ200の負極側端子に、電源接続用の正極側端子がバッテリ200の正極側端子にそれぞれ接続される。
【0022】
グランド切り替え部120は、シャント抵抗210と電圧増幅部130との間であって、シャント抵抗210と並列に接続されている。グランド切り替え部120は、2つのスイッチSW1、SW2からなる。シャント抵抗210の両端に現れる電圧を電圧増幅部130に印加する場合には、スイッチSW2のみがオンされ、スイッチSW1はオフされる。また、0点補正時には、スイッチSW1のみがオンされ、スイッチSW2はオフされる。さらに、2つのスイッチSW1、SW2をともにオンすることにより、グランド切り替え部120をシャント抵抗210に対するバイパス手段として用いることができ、シャント抵抗210を介して通電経路を迂回させることができる。
【0023】
電圧増幅部130は、シャント抵抗210の両端に現れるシャント電圧を増幅する。増幅後のシャント電圧はアナログ−デジタル変換器132によってデジタルデータ(シャント電圧データ)に変換される。温度検知部140は、シャント抵抗210の温度を検出する。検出した温度に対応する電圧はアナログ−デジタル変換器142によってデジタルデータ(シャント温度データ)に変換される。
【0024】
シャント異常検出部144は、シャント電圧データおよびシャント温度データに基づいてシャント抵抗210の異常の有無を検出する。電流値計算部150は、シャント電圧データに基づいてバッテリ200の充放電電流(シャント抵抗210に流れる電流)を計算する。また、電流値計算部150は、シャント温度データに基づいて温度補償を行い、シャント抵抗210の抵抗値の温度による変化分を補正する処理を行う。
【0025】
0点補正部152は、グランド切り替え部120内の2つのスイッチSW1、SW2の接続状態を切り替えた後、0点補正処理を行う。その結果は記憶部154に格納されて保持される。
【0026】
警報装置160は、シャント異常検出部144によってシャント抵抗210の異常が検出されたときに、その旨を外部に通知する。通信処理部170は、シャント異常検出部144によってシャント抵抗210の異常が検出されたときに、その旨を外部制御装置としてのECU300に向けて通信で送信する。
【0027】
図2は、図1に示したバッテリ充放電電流検出装置100の具体的構成を示す図であり、例えば、マイクロコンピュータを用いて実現した構成が示されている。図2に示すバッテリ充放電電流検出装置100の内部構成について、図1に示した機能ブロックとの対応を示すと以下のようになる。
【0028】
(1)グランド切り替え部120内のスイッチSW1はMOS−FET(MOS1)によって構成され、スイッチSW2はMOS−FET(MOS2)によって構成される。MOS1、MOS2をオンオフする信号は、マイクロコンピュータ180から入力される。
【0029】
(2)温度検知部140は、抵抗143と感熱素子141からなる分圧回路を含んで構成されている。感熱素子141は、温度によって抵抗値が変化する素子であり、シャント抵抗210に直接あるいは所定の基板を介して取り付けられて熱的に結合している。図2に示す例では、シャント抵抗210の温度が上昇すると感熱素子141の温度も上昇し、これに伴って感熱素子141の抵抗値が高くなり、アナログ−デジタル変換器142から出力されるシャント温度データの値が大きくなる。
【0030】
(3)警報装置160は、LED162とスピーカ164を含んで構成されている。異常を視覚的に知らせるためにLED162が用いられる。例えば、異常発生時にLEDが点灯する。また、異常を聴覚的に知らせるためにスピーカ164が用いられる。例えば、異常発生時に所定の警報音がスピーカ164から出力される。
【0031】
(4)通信処理部170は、通信コントローラ172とドライバ174を含んで構成されている。通信コントローラ172は、シャント抵抗210の異常発生時にマイクロコンピュータ180から出力されるシャント異常信号を、デジタル通信用(例えばLIN)の所定のフォーマットに変換して変調処理を行う。変調された信号(デジタル変調信号)は、ドライバ174から通信線を介してECU300に向けて送信される。
【0032】
(5)マイクロコンピュータ180は、CPU182、ROM184、RAM186、入出力処理部(I/O)188を含んで構成されており、ROM184に格納されている所定の動作プログラムをCPU182で実行することにより、図1に示したシャント異常検出部144、電流値計算部150、0点補正部152の各動作を行う。また、RAM186が記憶部154として用いられる。本実施形態では、マイクロコンピュータ180を用いてシャント異常検出部144、電流値計算部150、0点補正部152の各動作を行うようにしたが、同じ動作を専用のロジック回路で行うようにしてもよい。
【0033】
なお、電圧増幅部130は、正負のシャント電圧(バッテリ200の充放電電流)を増幅する必要があるため、そのための構成が必要となるが、本発明ではシャント電圧の検出方法自体は既存の手法をそのまま適用可能であるため詳細については省略されている。具体的には、正のシャント電圧を増幅する増幅器と負のシャント電圧を増幅する増幅器を別々に備え、シャント電圧の極性に応じてどちらか一方の増幅器の出力を用いるようにしたり、必ず正のシャント電圧(あるいは負のシャント電圧)が得られるように、所定のバイアス電圧を印加した後のシャント電圧を増幅器で増幅するなどの手法が考えられる。
【0034】
上述した電圧増幅部130、アナログ−デジタル変換器132が電圧検出手段に、電流値計算部150が電流値検出手段に、シャント異常検出部144が異常検出手段に、警報装置160、通信処理部170が通知手段に、温度検知部140、アナログ−デジタル変換器142が温度検出手段に、グランド切り替え部120が接続切り替え手段、バイパス手段に、0点補正部152が0点補正手段にそれぞれ対応する。
【0035】
本実施形態のバッテリ充放電電流検出装置100はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図3は、バッテリ充放電電流検出装置100において電流検出を行うメイン動作フローを示す流れ図である。このメイン動作フローは、一定の時間間隔(例えば4msec毎)に実施される。または、割り込み動作などで一部または全体を不定期に実行してもよい。
【0036】
まず、シャント異常検出部144は、シャント抵抗210に異常があるか否かを判定する(ステップ100)。異常がある場合には肯定判断が行われ、シャント異常検出部144は、グランド切り替え部120に指示を送ってシャント異常時処理を行う(ステップ101)。
【0037】
また、シャント抵抗210に異常がない場合はステップ100の判定において否定判断が行われ、次に、0点補正部152は、0点補正のタイミングか否かを判定する(ステップ102)。例えば、3秒間隔で0点補正を行い、その間隔をタイマで計測するものとすると、タイマ起動時から3秒が経過してタイマからタイムアップ信号が出力されたか否かを調べることにより、ステップ102の判定を行うことができる。0点補正のタイミングが到来した場合にはステップ102の判定において肯定判断が行われ、次に、0点補正部152は0点補正処理を行い(ステップ103)、タイマをリセットする(ステップ104)。
【0038】
タイマリセット後、あるいは、0点補正のタイミングが到来していない場合にはステップ102の判定において否定判断が行われた後に、電流値計算部150は、記憶部154に格納されている0点補正処理のデータを読み込み(ステップ105)、シャント電圧に基づいてシャント抵抗210を通して流れるバッテリ200の充放電電流(バッテリ電流)を計算する(ステップ106)。計算によって得られたバッテリ電流の値は、通信処理部170からECU300に送られる(ステップ107)。このようにして、一連のバッテリ電流検出動作が終了する。
【0039】
図4は、図3のステップ100において行われるシャント抵抗の異常判定の具体例を示す流れ図である。まず、シャント異常検出部144は、アナログ−デジタル変換器142から出力されるシャント温度データを読み込み(ステップ200)、この読み込んだシャント温度データに基づいてシャント抵抗210の温度が許容値の上限値であるTmaxを超えたか否かを判定する(ステップ201)。越えた場合には肯定判断が行われ、シャント異常であると判定される(ステップ202)。
【0040】
また、シャント異常検出部144は、アナログ−デジタル変換器132から出力されるシャント電圧データを読み込み(ステップ203)、この読み込んだシャント電圧データに基づいてシャント電圧が許容値の上限値Vmaxを超えていないか、下限値Vminよりも低くなっていないかを判定する(ステップ204、205)。いずれかに該当する場合には各ステップにおいて肯定判断が行われ、シャント異常であると判断される(ステップ206)。
【0041】
図5は、図3のステップ101において行われるシャント異常時処理の具体例を示す流れ図である。まず、シャント異常検出部144は、グランド切り替え部120に指示を送ってグランドの接続状態を切り替える(ステップ300)。具体的には、バッテリ電流検出時にはスイッチSW1がオフに、スイッチSW2がオンになっており、これをスイッチSW1、SW2をともにオンに切り替える。その後、警報装置160を用いてLED162の点灯とスピーカ164からの警報音の出力が行われ(ステップ301)、通信処理部170を用いてECU300に対するシャント異常信号の送信が行われる(ステップ302)。
【0042】
図6は、図3のステップ103において行われる0点補正処理の具体例を示す流れ図である。まず、0点補正部152は、グランド切り替え部120に指示を送ってスイッチSW2をオフに、スイッチSW1をオンに切り替える(ステップ400、401)。これにより、電圧増幅部130の入力端子間がスイッチSW1を介して短絡されるため、シャント抵抗210に流れる電流が0Aであってシャント電圧が0Vの状態が仮想的に生成される。
【0043】
0点補正部152は、このような接続状態に対応して得られたシャント電圧を0点として記憶部154に記録する(ステップ402)。その後、0点補正部152は、グランド切り替え部120に指示を送ってスイッチSW1をオフに、スイッチSW2をオンに切り替える(ステップ403、404)。電流値計算部150は、このようにして記憶部154に記憶された0点の値を、実際に得られたシャント電圧の値から減算することにより、0点補正後のシャント電圧を取得して正確なシャント電流を計算することができる。
【0044】
このように、本実施形態のバッテリ充放電電流検出装置100では、電源接続用の負極側端子を、シャント抵抗210の一方端(バッテリ200と反対側)が接続されたグランドではなく、バッテリ200の負極側端子に接続しているため、エンジンのクランキング時やパワーステアリング等の大電流電気負荷使用時に大電流が流れた場合であってもシャント抵抗210による電圧降下の影響を排除することができ、バッテリ充放電電流検出装置100の動作を安定させることによる電流検出精度の向上が可能となる。また、シャント抵抗210の異常を検出して通知を行うことにより、それ以上状態が悪化しないように未然に負荷電流を減らしたり、修理あるいは交換等の対策を講じることが可能となる。
【0045】
また、シャント異常検出部144はシャント電圧に基づいて異常の有無を検出しており、正常範囲を外れるシャント電圧が検出されたときに確実にシャント抵抗210の異常を検出することができる。しかも、バッテリ200の充放電電流検出用にシャント電圧を検出しているため、特別な構成を追加することなくシャント抵抗210の異常を検出することができる。
【0046】
また、シャント異常検出部144は、温度検知部140を用いて検出されたシャント温度に基づいて異常の有無を検出しており、シャント抵抗210の抵抗値が異常に高くなって発熱量が許容範囲を超えた場合等の異常を検出することができる。また、シャント抵抗210の温度がわかれば、予め測定しておいたシャント抵抗210の抵抗値と温度との関係に基づいて温度補償を行うことも可能になり、容易に電流検出精度を上げることができる。特に、電流検出抵抗と熱結合された感熱素子141を用いてシャント温度を検出することにより、シャント抵抗210の異常を確実に検出することができる。また、シャント抵抗210がバッテリ200の負極側端子と熱的に結合されている場合には、バッテリ温度を検出することが可能になるため、シャント抵抗210の異常を検出することでバッテリ200の異常を検出することもできる。
【0047】
また、上述した通知手段は、異常を視覚的あるいは聴覚的に知らせる警報装置であることが望ましい。これにより、他の装置(外部制御装置等)を用いることなく、異常を運転者等に直接知らせることができる。
【0048】
また、シャント抵抗210に異常が検出されたときに、シャント抵抗210と並列にバイパス手段を接続するグランド切り替え部120が用いられているため、シャント抵抗210の抵抗値が異常に高くなったり溶断等が発生した場合であっても、バッテリ充放電電流検出装置100がグランドから完全に浮いてしまうことを防止することができ、シャント抵抗210の異常が発生した場合であってもその旨を確実に通信でECU300に通知することができる。
【0049】
また、シャント抵抗210と並列にグランド切り替え部120によるバイパス手段を接続することにより、シャント抵抗210の両端電圧を仮想的に0にすることができるため、シャント抵抗210に電流が流れていない状態をつくることができ、このときの電圧(あるいは電流)検出値を用いた0点補正を行うことにより、電流検出精度を上げることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、シャント抵抗210に異常が発生したときにグランド切り替え部120による接続状態を切り替えたが(図5のステップ300)、別の方法でグランドが浮いてしまうことを防止するようにしてもよい。
【0051】
図7は、シャント抵抗210に異常が生じたときにグランドが浮くことを防止する変形例を示す図である。図7に示すグランド(GND)自動切り替え部190は、シャント抵抗210と並列に接続された互いに極性が反対の第1および第2のダイオード192、194を備えている。シャント抵抗210に異常が発生してその両端電圧が第1のダイオード192の順方向電圧降下よりも高くなっても(シャント抵抗210が溶断等によりオープンした場合も含む)、第1のダイオード192を介してバッテリ200とグランドとの間で電流を流すことができる。したがって、バッテリ充放電電流検出装置100がグランドから完全に浮いてしまうことを防止することができ、シャント抵抗210の異常の有無に関係なく(異常が生じた場合であっても)確実に通信を行うことが可能となる。また、バッテリ200の充放電電流を流すことが可能なパワー素子としての第1および第2のダイオード192、194を用いることにより、シャント抵抗210に異常が発生した場合であってもバッテリ200の充放電動作を継続することができる。なお、図7に示す構成は、図1に示すグランド切り替え部120とともに用いてもよいし、グランド切り替え部120と置き換えるようにしてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、シャント異常時処理(図3のステップ101)として必ずグランド切り替え部120の接続を切り替えたが(図5のステップ300)、必要な場合に限って接続切り替えを行うようにしてもよい。
【0053】
図8は、シャント抵抗210に異常が発生した場合に行われるシャント異常時処理において、必要に応じてグランド切り替え部120による接続切り替えを行うようにした場合の流れ図である。なお、図8に示す流れ図は、グランド切り替えのみに着目した動作手順が示されており、異常発生時に行われる通知については省略されている。
【0054】
異常発生時には(ステップ500において肯定判断)、シャント異常検出部144は、グランド切り替えが必要か否かを判定する(ステップ501)。例えば、シャント温度に基づいてシャント抵抗210が異常であると判定されたがシャント抵抗210の抵抗値やシャント電圧が正常範囲にある場合や、シャント抵抗210が短絡してしまってシャント電圧が正常範囲を超えて低い場合などは、シャント抵抗210が異常であるがグランド切り替えは必要ない。反対に、シャント電圧が正常範囲を越えて高くなったり、シャント電圧の変動が激しくて安定しない場合などはグランド切り替えが必要であって、ステップ501の判定において肯定判断が行われ、グランド切り替えが実施される(ステップ502)。
【0055】
また、上述した実施形態では、通信線を介してバッテリ充放電電流検出装置100とECU300との間の通信を行うようにしたが、この通信を通信線を介さない無線通信手段によって行うようにしてもよい。例えば、図2に示すドライバ174を電波を用いた無電ドライバあるいは赤外線を用いた赤外線ドライバに置き換えればよい。これにより、シャント抵抗210の抵抗値が異常に高くなったり溶断等が発生した場合に、バッテリ充放電電流検出装置100がグランドから浮くか否かにかかわらず、通信によってシャント抵抗210の異常をECU300に通知することが可能となる。なお、当然であるが、この場合にはECU300側にも電波あるいは赤外線の受信部を備える必要がある。
【符号の説明】
【0056】
100 バッテリ充放電電流検出装置
110 電源回路
120 グランド(GND)切り替え部
130 電圧増幅部
132、142 アナログ−デジタル変換器(A/D)
140 温度検知部
141 感熱素子
144 シャント異常検出部
150 電流値計算部
152 0点補正部
154 記憶部
160 警報装置
162 LED
164 スピーカ
170 通信処理部
172 通信コントローラ
174 ドライバ
180 マイクロコンピュータ
182 CPU
184 ROM
186 RAM
188 入出力処理部(I/O)
200 バッテリ
210 シャント抵抗
300 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリの充放電電流を、前記バッテリの負極側端子に接続された電流検出抵抗を用いて検出するバッテリ充放電電流検出装置において、
前記電流検出抵抗の両端電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段によって検出された前記電流検出抵抗の両端電圧に基づいて前記バッテリの充放電電流を検出する電流値検出手段と、前記電流検出抵抗の異常の有無を検出する異常検出手段とを備えるとともに、電源接続用の負極側端子を前記バッテリの負極側端子に接続し、
前記異常検出手段によって異常が検出されたときに、前記電流検出抵抗と並列にバイパス手段を接続する接続切り替え手段をさらに備えることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記接続切り替え手段は、前記電流検出抵抗と前記電圧検出手段との間に接続されているとともに、前記バイパス手段は2つのスイッチからなり、
一方のスイッチは前記電圧検出手段の入力端子間に接続され、他方のスイッチは前記電流検出抵抗における前記バッテリの負極側端子と接続されていない側と前記一方のスイッチとの間に接続されることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記バイパス手段としての2つのスイッチをともにオンすることにより、前記接続切り替え手段を前記電流検出抵抗に対するバイパス手段として用いることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記バイパス手段としての前記一方のスイッチをオンするとともに前記他方のスイッチをオフすることにより、前記電流検出抵抗の両端電圧が仮想的に0となる状態を実現することで、前記電流検知検出手段の0点補正を行う0点補正手段をさらに備えることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記接続切り替え手段によって接続を切り替えることにより前記電流検出抵抗の両端電圧が仮想的に0となる状態を実現することで、前記電流検知検出手段の0点補正を行う0点補正手段をさらに備えることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記異常検出手段は、前記電圧検出手段によって検出された前記電流検出抵抗の両端電圧に基づいて異常の有無を検出することを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記電流検出抵抗の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記異常検出手段は、前記温度検出手段によって検出された温度に基づいて異常の有無を検出することを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記異常検出手段によって検出した異常を外部に通知する通知手段をさらに備え、
前記通知手段は、通信線を介さない無線通信手段によって外部制御装置に向けて異常を通知することを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記異常検出手段によって検出した異常を外部に通知する通知手段をさらに備え、
前記通知手段は、異常を視覚的あるいは聴覚的に知らせる警報装置であることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。
【請求項10】
車両に搭載されたバッテリの充放電電流を、前記バッテリの負極側端子に接続された電流検出抵抗を用いて検出するバッテリ充放電電流検出装置において、
前記電流検出抵抗の両端電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段によって検出された前記電流検出抵抗の両端電圧に基づいて前記バッテリの充放電電流を検出する電流値検出手段と、前記電流検出抵抗の異常の有無を検出する異常検出手段とを備えるとともに、電源接続用の負極側端子を前記バッテリの負極側端子に接続し、
前記電流検出抵抗と並列に接続された互いに極性が反対の第1および第2のダイオードをさらに備えることを特徴とするバッテリ充放電電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−33632(P2011−33632A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202133(P2010−202133)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【分割の表示】特願2007−298810(P2007−298810)の分割
【原出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】