回転電機
【課題】この発明は、界磁コイルが巻回されたボビンの回り止め部との干渉を回避しつつ、大体積の永久磁石を保持できるようにし、界磁コイルの口出し線の断線などの発生を抑えて、発電量を増加できる回転電機を得る。
【解決手段】ボビン28は、回り止め部31を回り止め部収納凹部と段差部51とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて回転子15に装着され、永久磁石41は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、底面を磁石保持部の磁石載置面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバー47を磁石保持台座42に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて磁石保持台座42に保持されている。
【解決手段】ボビン28は、回り止め部31を回り止め部収納凹部と段差部51とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて回転子15に装着され、永久磁石41は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、底面を磁石保持部の磁石載置面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバー47を磁石保持台座42に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて磁石保持台座42に保持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用交流発電機などの回転電機に関し、特にランデル型の回転子における永久磁石の保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランデル型の回転子を用いる車両用交流発電機は、数十年にわたって自動車に使用されてきた。そして、近年の環境問題から車載される電装品の負荷が急増しており、ランデル型の回転子の発電量のより一層の増加が求められている。
【0003】
従来、このような状況に鑑み、ランデル型の回転子の継鉄部に永久磁石を爪状磁極部に対応するように配設して、ポールコアの磁気飽和を緩和し、発電量を増加していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−187476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の車両用交流発電機では、永久磁石の保持構造の耐遠心力性を高めるために、永久磁石を磁石ホルダの上面に形成された断面台形の磁石嵌合溝に嵌合させて磁石ホルダに保持させている。そのため、永久磁石の断面形状が例えば台形となり、永久磁石の体積を大きくできないので、永久磁石を配設することによる発電量の増加効果が少なくなってしまう。
また、特許文献1に記載された従来の車両用交流発電機では、継鉄部間のボス部に装着されている界磁コイルが巻回されたボビンの回動防止については、何ら考慮されていなかったので、回転子が高速回転され、ボビンに高角速度が付加されると、ボビンがボス部の軸周りに回動し、界磁コイルの口出し線の断線を誘発するという不具合があった。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、界磁コイルが巻回されたボビンの回り止め部との干渉を回避しつつ、大体積の永久磁石を保持できるようにし、界磁コイルの口出し線の断線などの発生を抑えて、発電量を増加できる回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による回転電機は、ボス部、該ボス部の軸方向両端縁部から径方向外方に延設された一対の継鉄部、および該一対の継鉄部のそれぞれから交互に軸方向に延設され、噛み合って周方向に配列された複数の爪状磁極部を有し、内径側に湾曲した谷部が周方向に隣り合う上記爪状磁極部間のそれぞれの上記継鉄部の部位に形成され、上記ボス部の軸心位置に挿通されたシャフトに固着されたポールコアと、上記ボス部に装着されたボビンに巻回されて、該ボス部、上記一対の継鉄部、および上記複数の爪状磁極部に囲まれた空間内に収納された界磁コイルと、を有する回転子と、上記回転子の外周を囲繞するように配設された固定子と、上記爪状磁極部の先端側内周面に対向するように上記谷部に配設された永久磁石と、を有する。さらに、回転電機は、上記谷部の底部に、溝方向を軸方向として、軸方向内方から軸方向外方に向って延設された嵌合溝と、上記継鉄部の上記嵌合溝の軸方向内方の開口縁部に凹設された回り止め部収納凹部と、嵌合部、および嵌合部の上部に形成された磁石保持部を有し、該嵌合部を上記嵌合溝に嵌着されて、径方向の移動を規制されて上記谷部に配設される磁石保持台座と、上記ボビンのフランジ部から軸方向外方に突設された回り止め部と、を備えている。そして、上記磁石保持台座は、上記嵌合部の軸方向内方の端面を上記磁石保持部の軸方向内方の端面に対して軸方向外方に変位させて形成された段差部を有し、上記ボビンは、上記回り止め部を上記回り止め部収納凹部と上記段差部とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて上記回転子に装着され、上記永久磁石は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、該底面を上記磁石保持部の上面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバーを該磁石保持台座に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて該磁石保持台座に保持されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、磁石保持台座の嵌合部の軸方向内方の端面を軸方向外方に変位させて段差部を形成し、ボビンの回り止め部を回り止め部収納凹部と段差部とによる空間内に収納させている。そこで、ボビンの回動が阻止され、界磁コイルの口出し線の断線などの発生が抑えられる。また、磁石保持部を界磁コイルに近づけることができ、永久磁石の発生する磁束が永久磁石と爪状磁極部との間を効率よく流れ、発電量の増大が図られる。
また、永久磁石が底面を矩形とする四角柱に作製されているので、永久磁石の体積を増大でき、発電量の増大が図られる。さらに、永久磁石を包み込むように装着されたカバーを磁石保持台座に固着して、永久磁石が磁石保持台座に保持されているので、磁石保持部の上面全体を永久磁石の載置面とすることができ、永久磁石の体積の更なる増大が可能となり、発電量の一層の増大が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリを示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリのボビンの要部を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部の構造を説明する要部斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す側面図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図14】この発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部を軸方向内方から見た図である。
【図15】この発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機を模式的に示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す断面図、図4はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリを示す斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリのボビンの要部を示す側面図である。図6はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図6の(a)は正面図を示し、図6の(b)は断面図を示している。図7はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部の構造を説明する要部斜視図、図8はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0012】
図1乃至図5において、回転電機としての車両用交流発電機1は、それぞれ略椀形状のアルミ製のフロントブラケット2とリヤブラケット3とからなるケース4と、シャフト16をケース4に軸受5を介して支持されて、ケース4内に回転自在に配設された回転子15と、ケース4のフロント側に延出するシャフト16の端部に固着されたプーリ6と、回転子15の軸方向の両端面に固定されたファン7と、回転子15に対して一定のエアギャップを有して、回転子15の外周を囲繞してケース4に固定された固定子10と、シャフト16のリヤ側に固定され、回転子15に電流を供給する一対のスリップリング8と、各スリップリング8に摺動するようにケース4内に配設された一対のブラシ9と、固定子10で生じた交流を直流に整流する整流器13と、固定子10で生じた交流電圧の大きさを調整する電圧調整器14と、を備えている。
【0013】
固定子10は、円筒状の固定子鉄心11と、固定子鉄心11に巻装され、回転子15の回転に伴い、後述する界磁コイル17からの磁束の変化で交流が生じる固定子コイル12と、を備えている。
【0014】
回転子15は、励磁電流が流されて磁束を発生する界磁コイル17と、界磁コイル17を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成されるポールコア18と、ポールコア18の軸心位置に貫装されたシャフト16と、を備えている。
ポールコア18は、それぞれ例えばS10Cなどの低炭素鋼で冷間鍛造製法により作製された第1および第2ポールコア体19,23に分割構成されている。
【0015】
第1ポールコア体19は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴が軸心位置を貫通して形成された第1ボス部20と、第1ボス部20の一端縁部から径方向外側に延設された厚肉リング状の第1継鉄部21と、第1継鉄部21の外周部から軸方向他端側に延設された第1爪状磁極部22とを有している。第1爪状磁極部22は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成され、第1継鉄部21の外周部に周方向に等角ピッチで例えば8つ配列されている。
【0016】
第2ポールコア体23は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴が軸心位置を貫通して形成された第2ボス部24と、第2ボス部24の他端縁部から径方向外側に延設された厚肉リング状の第2継鉄部25と、第2継鉄部25の外周部から軸方向一端側に延設された第2爪状磁極部26とを有している。第2爪状磁極部26は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成され、第2継鉄部25の外周部に周方向に等角ピッチで例えば8つ配列されている。
【0017】
ボビン28は、絶縁性樹脂からなる樹脂成型体であり、第1および第2ボス部20,24に外嵌状態に嵌装される巻胴部29と、巻胴部29の軸方向両端から径方向外方に延設された一対のフランジ部30と、一対のフランジ部30のそれぞれに等角ピッチで8つずつ突設された回り止め部31と、一対のフランジ部30の外周縁部から巻胴部29に巻回された界磁コイル17を覆うように延設されたカバー部32と、を備えている。各回り止め部31は、各フランジ部30から軸方向外方に突設されたY字状の肉厚部に構成されている。そして、界磁コイル17を構成する導線がボビン28の巻胴部29に多層に巻回され、界磁コイルアッセンブリ27が作製される。
【0018】
谷部35が、図7に示されるように、周方向に隣り合う第1爪状磁極部22間の各第1継鉄部21の部位に、内径側に向かって凸状に湾曲したU字状に凹設されている。この内径側に湾曲した谷部35は、その周方向幅が径方向内方に向って漸次狭くなり、かつ軸方向に第1継鉄部21を貫通している。そして、回り止め部収納凹部36が、谷部35の界磁コイル17側(軸方向内方)の縁部および第1継鉄部21の谷部35下方の軸方向内方の部位に、回り止め部31の肉厚と同等の軸方向深さで、かつ回り止め部31の外形形状に適合する内形形状に、凹設されている。さらに、断面優弧の嵌合溝37が溝方向を軸方向として、軸方向内方から外方に向って所定の長さを有するように、谷部35の底部側を拡張して形成されている。このとき、嵌合溝37は、第1継鉄部21の谷部35を軸方向に貫通せず、軸方向に直交する係止部としての底面37aを有する。
【0019】
なお、説明していないが、谷部35、回り止め部収納凹部36、および嵌合溝37は、第2継鉄部25にも同様に形成されている。
【0020】
永久磁石アッセンブリ40は、図6の(a),(b)に示されるように、永久磁石41と、永久磁石41を保持する磁石保持台座42と、永久磁石41を磁石保持台座42に固定するカバー47およびリベット48と、を備えている。永久磁石41は、例えば、ネオジウム・鉄・ボロン系希土類焼結磁石を用いて、底面を矩形とする所定高さの四角柱に作製されている。ここで、永久磁石41の底面の隣り合う2辺のそれぞれに沿った方向を幅方向および長さ方向とする。また、永久磁石アッセンブリ40が配設された回転子15においては、永久磁石41の幅方向、長さ方向、および高さ方向は、回転子15の周方向、軸方向、および径方向となる。
【0021】
磁石保持台座42は、鉄、鉄合金などの磁性材料を用いて鋳造により一体物に作製され、断面等脚台形の磁石保持部43と、断面優弧の嵌合部44と、磁石保持部43の断面等脚台形の短辺(上辺)と嵌合部44の断面優弧の弦とを連結する連結部45と、を有する。
断面等脚台形の長辺(下辺)により構成される磁石保持部43の上面が、磁石載置面43aとなる。この磁石載置面43aは、永久磁石41と同等の幅と長さを有する矩形に形成されている。なお、磁石保持部43の断面等脚台形の長辺が磁石載置面43aの幅である。また、磁石保持部43は、永久磁石アッセンブリ40を谷部35に装着した際に、断面等脚台形の平行でない対辺により構成される側面が谷部35の周方向に相対する側面に接する形状に作製される。さらに、リベット挿通穴46が磁石保持部43の中心位置を長さ方向に貫通するように形成されている。
【0022】
嵌合部44は、嵌合溝37に圧入、固着できる断面形状に形成されている。そして、嵌合部44と連結部45は、磁石保持部43より短い長さに形成され、長さ方向の一側に窪む段差部51を形成している。
カバー47は、ステンレスなどの非磁性材料の平板をプレス成形して作製され、磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置された永久磁石の上面、長さ方向に対向する両端面、および幅方向に対向する両側面を覆う冠部47a、冠部47aから磁石保持部43の長さ方向に対向する両端面を覆うように延在する鍔部47b、および鍔部47bにあけられたリベット挿通穴47cを有する。
【0023】
そして、永久磁石41が、磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置され、カバー47が、冠部47aで永久磁石41を包み込むように装着される。ついで、リベット48がリベット挿通穴47cと磁石保持部43に形成されたリベット挿通穴46と挿入され、リベット48の頭部をカシメて、永久磁石アッセンブリ40が組立てられる。これにより、永久磁石41は、カバー47により幅方向、長さ方向、および高さ方向の移動を規制され、かつ磁石載置面43aに接して磁気的に接続状態に磁石保持台座42に保持される。
【0024】
このように組み立てられた永久磁石アッセンブリ40は、第1ポールコア体19の軸方向内方から、嵌合部44を底面37aに当接するまで嵌合溝37に圧入し、図8に示されるように第1ポールコア体19の各谷部35に装着される。このとき、永久磁石アッセンブリ40は、嵌合溝37の断面優弧の溝形状により径方向外方への移動が規制され、磁石保持部43の側面が谷部35の周方向に相対する側面に接し、周方向の移動が規制され、嵌合部44が嵌合溝37の底面37aに当接して軸方向外方への移動が規制される。
また、磁石保持台座42は、嵌合部44の外周面が嵌合溝37の内周面に接して、磁気的に接続されて第1ポールコア体19の各谷部35に保持される。なお、永久磁石アッセンブリ40は、第2ポールコア体23の谷部35に同様に装着される。
【0025】
そして、永久磁石アッセンブリ40が各谷部35に装着された第1および第2ポールコア体19,23は、第1および第2爪状磁極部22,26を交互に噛み合わせ、かつ、第1ボス部20の他端面を第2ボス部24の一端面に突き合わせ、シャフト挿通穴に貫装されたシャフト16に固着され、回転子15が組み立てられる。ここで、第1および第2ボス部20,24および第1および第2継鉄部21,25が、それぞれポールコア18のボス部および一対の継鉄部に相当する。
【0026】
このように組み立てられた回転子15では、界磁コイルアッセンブリ27が、第1および第2ボス部20,24をボビン28の巻胴部29内に挿通させて、第1および第2ボス部20,24、第1および第2継鉄部21,25および第1および第2爪状磁極部22,26に囲まれた空間に収納されている。そして、カバー部32が巻胴部29に巻回された界磁コイル17を覆うように一対のフランジ部30の外周縁部から延在し、界磁コイル17と第1および第2爪状磁極部22,26との間の電気的な絶縁を確保している。また、ボビン28の回り止め部31が、第1および第2継鉄部21,25に形成された回り止め部収納凹部36内に収納され、ボビン28の回動が規制されるとともに、ボビン28の周方向の位置決めが行われる。さらに、回り止め部31により、永久磁石アッセンブリ40の軸方向内方への抜けが阻止される。
【0027】
ここで、永久磁石41は、第1および第2爪状磁極部22,26の先端側内周面に対向するように各谷部35に配設され、界磁コイル17を流れる界磁電流が回転子15の軸心と直交する平面において作る磁界の向きと反対となるように着磁配向されている。また、界磁コイル17の口出し線17aは、第2ポールコア体23の2つの谷部35の底部に軸方向内方から外方に至るように凹設された引き出し溝(図示せず)から引き出され、スリップリング8に接続される。
【0028】
つぎに、このように構成された車両用交流発電機1の動作について説明する。
まず、電流がバッテリ(図示せず)からブラシ9およびスリップリング8を介して回転子15の界磁コイル17に供給され、磁束が発生される。この磁束により、第1ポールコア体19の第1爪状磁極部22がN極に着磁され、第2ポールコア体23の第2爪状磁極部26がS極に着磁される。
一方、エンジンの回転トルクがベルト(図示せず)およびプーリ6を介してシャフト16に伝達され、回転子15が回転される。そこで、回転磁界が固定子10の固定子コイル12に与えられ、起電力が固定子コイル12に発生する。この交流の起電力が、整流器13で直流電流に整流され、バッテリが充電され、或いは電気負荷に供給される。
【0029】
また、界磁コイル17に通電されると、磁束が発生される。この磁束は、第1爪状磁極部22からエアギャップを通って固定子鉄心11のティース部に入る。そして、磁束は、固定子鉄心11のティース部からコアバック部を通って周方向に移動し、隣の第2爪状磁極部26に対向するティース部からエアギャップを通ってその第2爪状磁極部26に入る。ついで、第2爪状磁極部26に入った磁束は、第2継鉄部25、第2ボス部24、第1ボス部20、第1継鉄部21を通って第1爪状磁極部22に至る。ここで、従来のランデル型回転子では、第1および第2ポールコア体19,23は限界設計されているので、界磁コイル17の発生する磁界により磁気飽和し、回転子で発生する磁束が減少する。
【0030】
ここで、永久磁石41は、界磁コイル17の発生する磁界の向きと反対となるように着磁配向されているので、永久磁石41の発生する磁束は、界磁コイル17の発生する磁束と逆向きとなり、第1および第2ポールコア体19,23を構成する磁性体の磁束密度を大幅に低減することができ、磁気飽和を解消することができる。これにより、固定子10に鎖交する磁束が増加し、発電量を増加することができる。
また、永久磁石41は、第1および第2爪状磁極部22,26の先端側内周面に対向するように配設されているので、永久磁石41は、回転子15の最外周面に対して径方向内方に位置している。そこで、固定子スロット高調波は第1および第2爪状磁極部22,26の最外周面部に留まり、永久磁石41を直接誘導加熱するように作用しない。その結果、永久磁石41が加熱されて、熱減磁することが未然に防止される。
【0031】
この実施の形態1によれば、断面優弧の嵌合溝37が、溝方向を軸方向として軸方向内方から外方に向って、第1および第2ポールコア体19,23の各谷部35の底部に形成され、回り止め部収納凹部36が、第1および第2継鉄部21,25の谷部35の軸方向内方の縁部に、Y字状の回り止め部31の外形形状に適合する内形形状に凹設されている。磁石保持台座42は、嵌合部44および連結部45の長さ方向一側(軸方向内方)の端面を磁石保持部43の長さ方向一側の端面に対して長さ方向他側(軸方向外方)に所定量変位させて、長さ方向一側に窪む段差部51を形成している。
【0032】
そこで、磁石保持台座42の嵌合部44を嵌合溝37に嵌着して永久磁石アッセンブリ40を谷部35に装着した第1および第2ポールコア体19,23に界磁コイルアッセンブリ27を装着し、第1および第2ポールコア体19,23を一体化するだけで、回り止め部31が回り止め部収納凹部36と磁石保持台座42の段差部51とにより形成される空間内に収納される。これにより、界磁コイルアッセンブリ27のシャフト16周りの回動が阻止される回転子15を簡易に組み立てることができる。さらに、車両用交流発電機1が高速回転され、ボビン28に高角速度が付加されても、界磁コイルアッセンブリ27のシャフト16周りの回動が阻止され、界磁コイル17の口出し線17aの断線を防止することができる。
【0033】
また、磁石保持台座42に段差部51を設けているので、磁石保持部43を回り止め部31との干渉を回避して軸方向内方に延在でき、永久磁石41の軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、軸方向に関して、永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との重なりを大きくできるので、永久磁石41の発生する磁束が永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との間を効率よく流れて、発電量を増大することができる。
【0034】
また、嵌合溝37は谷部35を軸方向に貫通せず、軸方向に直交する三日月状の底面37aを有しているので、嵌合部44の端面が底面37aに当接するまで嵌合部44を嵌合溝37に圧入させることにより、磁石保持台座42の軸方向位置を位置決めできる。さらに、回り止め部31が嵌合溝37に嵌合された嵌合部44の軸方向内方に位置しているので、永久磁石アッセンブリ40の軸方向内方への抜けが阻止される。
【0035】
永久磁石41が底面を矩形とする四角柱に作製されているので、永久磁石41の体積を大きくでき、発電量を増大することができるとともに、歩留まりが高くなり、製造コストが削減できる。
永久磁石41を磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置し、永久磁石41を包み込むように装着されたカバー47を磁石保持台座42に固着して、永久磁石41を磁石保持台座42に保持させているので、楔状の磁石保持溝などの磁石保持構造を磁石保持台座42の磁石保持部43に形成する必要がなく、磁石保持台座42の作製が容易となる。また、磁石保持部43の上面全体を磁石載置面43aとして利用できるので、磁石載置面43aを底面とする四角柱に永久磁石41を作製でき、永久磁石41の体積が大きくなり、発電量を増大することができる。
【0036】
リベット48を用いてカバー47を磁石保持台座42に固着しているので、永久磁石アッセンブリ40の組立性が向上する。
カバー47がステンレスなどの非磁性材料で作製されているので、永久磁石41で発生した磁束がカバー47を介して磁石保持台座42に戻ることがなく、永久磁石41で発生した磁束を効率的に利用することができる。
【0037】
磁石保持台座42の断面優弧の嵌合部44を、第1および第2ポールコア体19,23の各谷部35の底部に溝方向を軸方向として形成された断面優弧の嵌合溝37に嵌合させて、磁石保持台座42を第1および第2ポールコア体19,23に保持させているので、簡易な構造で、高耐遠心力性を有する磁石保持台座42の保持構造を実現できる。
磁石保持台座42を第1および第2ポールコア体19,23に保持させたときに、磁石保持部43の幅方向の両側面が第1および第2ポールコア体19,23の谷部35の周方向に相対する壁面に接するようになっているので、磁石保持台座42の周方向の移動が規制される。そこで、磁石保持台座42の耐角加速度性が向上し、永久磁石アッセンブリ40の保持強度が高められ、信頼性が高められる。
【0038】
なお、上記実施の形態1では、永久磁石を全ての谷部に配設するものとしているが、永久磁石は任意の谷部を選択して配設するようにしてもよい。この場合、周方向にバランスよく永久磁石を配置することが望ましい。例えば、第1ポールコア体には永久磁石を配設せず、第2ポールコア体の全ての谷部に永久磁石を配設してもよい。また、第1および第2ポールコア体のそれぞれに、周方向の一つおきの谷部に永久磁石を配設してもよい。さらに、第1および第2ポールコア体のそれぞれに、周方向の一つおきの谷部に永久磁石アッセンブリを配設し、残る谷部には磁石保持台座のみを配設してもよい。このような構成をとることは、全ての谷部に永久磁石を配設した場合に比べ、発電量が少し低下するものの、部品点数を削減でき、低コスト化が図られる。
【0039】
また、上記実施の形態1では、カバーがリベットにより磁石保持台座に固着されているものとしているが、カバーの磁石保持台座への固着手段はリベットに限定されるものではなく、例えばカバーを磁石保持台座に半田により固着してもよいし、カバーの弾性を利用してカバーを磁石保持台座に弾性的に固着してもよい。
また、上記実施の形態1では、カバーをステンレスなどの非磁性材料で作製するものとしているが、カバーの材料は非磁性材料に限定されるものではなく、例えば鉄などの磁性材料でもよい。
【0040】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0041】
この実施の形態2では、図9に示されるように、嵌合部44を嵌合溝37に嵌合して磁石保持台座42を谷部35に配設した後、第1ポールコア体19の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部をカシメて、嵌合部44と嵌合溝37との嵌合強度を高めている。なお、図示していないが、嵌合部44を嵌合溝37に嵌合して磁石保持台座42を谷部35に配設した後、第2ポールコア体23の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部がカシメられている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0042】
この実施の形態2によれば、第1および第2ポールコア体19,23の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部に形成されたカシメ部49により、嵌合部44と嵌合溝37との嵌合強度が高められているので、磁石保持台座42の耐遠心力性が高められ、優れた信頼性が得られる。
【0043】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す正面図である。
【0044】
図10において、磁石保持台座42Aは、一対の位置決め用突起43bが磁石載置面43aの幅方向両端に長さ方向に延在するように突設された磁石保持部43Aと、嵌合部44と、連結部45と、を備えている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0045】
この実施の形態3によれば、一対の位置決め用突起43bが磁石保持部43Aの磁石載置面43aの幅方向両端に長さ方向に延在するように突設されているので、永久磁石41の位置決めが容易となり、永久磁石アッセンブリの組立性が向上する。
【0046】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す側面図である。
【0047】
図11において、磁石保持台座42Bは、磁石保持部43と、断面優弧の中心位置は長さ方向の一側から他側に向って一定であり、その半径が長さ方向の一側から他側に向って漸次小さくなるように形成された嵌合部44Bと、連結部45と、を備えている。また、図示していないが、第1および第2ポールコア体の谷部に形成される嵌合溝は、断面優弧の中心位置は軸方向内方から外方に向って一定であり、その半径が軸方向内方から外方に向って漸次小さくなる溝形状に形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0048】
この実施の形態4によれば、嵌合部44Bの断面優弧の半径が長さ方向の一側から他側に向って漸次小さくなっているので、嵌合部44Bの外形形状が先細り形状となっている。さらに、嵌合溝の断面優弧の半径が軸方向内方から外方に向って漸次小さくなっているので、嵌合溝の内形形状が先細り形状となっている。そこで、嵌合部44Bの嵌合溝への圧入がし易くなり、回転子の組立性が向上する。
【0049】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図12の(a)は正面図を示し、図12の(b)は断面図を示している。
【0050】
図12において、磁石保持台座42Cは、磁石保持部43と、嵌合部44Cと、連結部45Cと、を備えている。嵌合部44Cおよび連結部45Cは、磁石保持部43より短い長さに形成され、磁石保持部43に対して長さ方向の両側に同じだけ窪む段差部51を形成している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0051】
この実施の形態5では、永久磁石アッセンブリ40Cは、第1および第2ポールコア体19,23の谷部35に配設された際に、シャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40Cの幅方向の中心を通る平面について面対称、かつシャフト16の軸心と直交し、永久磁石アッセンブリ40Cの長さ方向(軸方向)の中心を通る平面について面対称となっている。そこで、遠心力が永久磁石アッセンブリ40Cに作用したときに、シャフト16の軸心と直交し、永久磁石アッセンブリ40Cの長さ方向(軸方向)の中心を通る平面において、嵌合部44Cの断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40Cを回動させるモーメント、さらにはシャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40Cの幅方向の中心を通る平面において、嵌合部44Cの長さ方向の中央位置における断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40Cを回動させるモーメントが発生しにくくなる。その結果、永久磁石アッセンブリ40Cの倒れが抑制される。
【0052】
実施の形態6.
図13はこの発明の実施の形態6に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図13の(a)は正面図を示し、図13の(b)は断面図を示している。
【0053】
図13において、磁石保持台座42Dは、例えば磁性鋼板をプレス成形して得られた薄板を積層して作製されており、磁石保持部43Dと、嵌合部44と、連結部45と、を備えている。そして、磁石保持部43Dは、リベット挿通穴46Dの両端の外径がリベット48の頭部より大径となっている。また、カバー47Dは、鍔部47bのリベット挿通穴47c周りの部位を窪ませて形成された凹部47dを有する。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0054】
この実施の形態6では、永久磁石41が、磁石保持部43Dの磁石載置面43aに載置され、カバー47Dが、冠部47aで永久磁石41を包み込むように装着される。ついで、リベット48がカバー47Dのリベット挿通穴47cと磁石保持部43Dに形成されたリベット挿通穴46と挿入され、リベット48の頭部をカシメて、永久磁石アッセンブリ40Dが組立てられる。このとき、カバー47Dの凹部47dがリベット挿通穴46Dの大径部に入り込み、リベット48の頭部が凹部47d内に入り込む。そして、リベット48の頭部がカバー47Dの鍔部47bの表面と面一となる。
【0055】
この実施の形態6によれば、リベット48の頭部がカバー47Dの鍔部47bと面一となっているので、回転子を組み立てた際に、リベット48とボビン28との干渉がなくなり、磁石保持部43D、すなわち永久磁石41の軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、軸方向に関して、永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との重なりを大きくできるので、永久磁石41の発生する磁束が永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との間を効率よく流れ、発電量を増大することができる。
【0056】
また、磁石保持部43Dの軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、永久磁石41の大きさを一定とすれば、嵌合溝の溝長さを短くすることができ、嵌合溝を加工するための型寿命を向上できる。また、嵌合溝の溝長さを一定とすれば、永久磁石41の体積を増やすことができ、発電量を増大できる。
また、磁石保持台座42Dが薄板を積層して作製されているので、薄板の抜き形状を変えるだけで両端を大径とするリベット挿通穴46Dを形成でき、磁石保持台座を鋳造で作製する場合に比べ、製造コストを削減できる。
【0057】
実施の形態7.
図14はこの発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部を軸方向内方から見た図、図15はこの発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0058】
図14において、軸方向に直交する受け面50が、第1継鉄部21の谷部35の周方向に相対する側面に形成されている。また、受け面50は、図示していないが、第2継鉄部25の谷部35の周方向に相対する側面に形成されている。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0059】
この実施の形態7では、図15に示されるように、永久磁石アッセンブリ40は、第1ポールコア体19の軸方向内方から、嵌合部44を底面37aに当接するまで嵌合溝37に圧入し、第1ポールコア体19の各谷部35に装着される。また、永久磁石アッセンブリ40は、第2ポールコア体23の各谷部35にも同様に装着される。このとき、嵌合部44は底面37aに接し、磁石保持部43の長さ方向他側の端面の幅方向両端部が受け面50に接している。
【0060】
この実施の形態7によれば、嵌合部44は底面37aに接し、磁石保持部43の長さ方向他側の端面の幅方向両端部が受け面50に接しているので、永久磁石アッセンブリ40の軸方向外方への移動を確実に阻止できる。さらに、シャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40の幅方向の中心を通る平面において、嵌合部44の長さ方向の中央位置における断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40を回動させるモーメントが受け面50に受けられ、永久磁石アッセンブリ40の倒れが阻止される。
【0061】
なお、上記各実施の形態では、嵌合溝が断面優弧に形成されているものとしているが、嵌合溝の断面形状は、嵌合溝に嵌合される磁石保持台座の嵌合部の周方向および径方向の移動を規制できればよく、優弧に限定されるものではない。
また、上記各実施の形態では、車両用交流発電機について説明しているが、この発明は、車両用交流発電機に限らず、車両用電動機や車両用発電電動機などの回転電機に適用しても、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0062】
10 固定子、15 回転子、16 シャフト、17 界磁コイル、18 ポールコア、20 第1ボス部、21 第1継鉄部、22 第1爪状磁極部、24 第2ボス部、25 第2継鉄部、26 第2爪状磁極部、28 ボビン、30 フランジ部、31 回り止め部、35 谷部、36 回り止め部収納凹部、37 嵌合溝、37a 底面、41 永久磁石、42,42A,42B,42C,42D 磁石保持台座、43,43A,43D 磁石保持部、43a 磁石載置面、44,44B,44C 嵌合部、47,47D カバー、48 リベット、50 受け面、51 段差部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用交流発電機などの回転電機に関し、特にランデル型の回転子における永久磁石の保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランデル型の回転子を用いる車両用交流発電機は、数十年にわたって自動車に使用されてきた。そして、近年の環境問題から車載される電装品の負荷が急増しており、ランデル型の回転子の発電量のより一層の増加が求められている。
【0003】
従来、このような状況に鑑み、ランデル型の回転子の継鉄部に永久磁石を爪状磁極部に対応するように配設して、ポールコアの磁気飽和を緩和し、発電量を増加していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−187476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の車両用交流発電機では、永久磁石の保持構造の耐遠心力性を高めるために、永久磁石を磁石ホルダの上面に形成された断面台形の磁石嵌合溝に嵌合させて磁石ホルダに保持させている。そのため、永久磁石の断面形状が例えば台形となり、永久磁石の体積を大きくできないので、永久磁石を配設することによる発電量の増加効果が少なくなってしまう。
また、特許文献1に記載された従来の車両用交流発電機では、継鉄部間のボス部に装着されている界磁コイルが巻回されたボビンの回動防止については、何ら考慮されていなかったので、回転子が高速回転され、ボビンに高角速度が付加されると、ボビンがボス部の軸周りに回動し、界磁コイルの口出し線の断線を誘発するという不具合があった。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、界磁コイルが巻回されたボビンの回り止め部との干渉を回避しつつ、大体積の永久磁石を保持できるようにし、界磁コイルの口出し線の断線などの発生を抑えて、発電量を増加できる回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による回転電機は、ボス部、該ボス部の軸方向両端縁部から径方向外方に延設された一対の継鉄部、および該一対の継鉄部のそれぞれから交互に軸方向に延設され、噛み合って周方向に配列された複数の爪状磁極部を有し、内径側に湾曲した谷部が周方向に隣り合う上記爪状磁極部間のそれぞれの上記継鉄部の部位に形成され、上記ボス部の軸心位置に挿通されたシャフトに固着されたポールコアと、上記ボス部に装着されたボビンに巻回されて、該ボス部、上記一対の継鉄部、および上記複数の爪状磁極部に囲まれた空間内に収納された界磁コイルと、を有する回転子と、上記回転子の外周を囲繞するように配設された固定子と、上記爪状磁極部の先端側内周面に対向するように上記谷部に配設された永久磁石と、を有する。さらに、回転電機は、上記谷部の底部に、溝方向を軸方向として、軸方向内方から軸方向外方に向って延設された嵌合溝と、上記継鉄部の上記嵌合溝の軸方向内方の開口縁部に凹設された回り止め部収納凹部と、嵌合部、および嵌合部の上部に形成された磁石保持部を有し、該嵌合部を上記嵌合溝に嵌着されて、径方向の移動を規制されて上記谷部に配設される磁石保持台座と、上記ボビンのフランジ部から軸方向外方に突設された回り止め部と、を備えている。そして、上記磁石保持台座は、上記嵌合部の軸方向内方の端面を上記磁石保持部の軸方向内方の端面に対して軸方向外方に変位させて形成された段差部を有し、上記ボビンは、上記回り止め部を上記回り止め部収納凹部と上記段差部とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて上記回転子に装着され、上記永久磁石は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、該底面を上記磁石保持部の上面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバーを該磁石保持台座に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて該磁石保持台座に保持されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、磁石保持台座の嵌合部の軸方向内方の端面を軸方向外方に変位させて段差部を形成し、ボビンの回り止め部を回り止め部収納凹部と段差部とによる空間内に収納させている。そこで、ボビンの回動が阻止され、界磁コイルの口出し線の断線などの発生が抑えられる。また、磁石保持部を界磁コイルに近づけることができ、永久磁石の発生する磁束が永久磁石と爪状磁極部との間を効率よく流れ、発電量の増大が図られる。
また、永久磁石が底面を矩形とする四角柱に作製されているので、永久磁石の体積を増大でき、発電量の増大が図られる。さらに、永久磁石を包み込むように装着されたカバーを磁石保持台座に固着して、永久磁石が磁石保持台座に保持されているので、磁石保持部の上面全体を永久磁石の載置面とすることができ、永久磁石の体積の更なる増大が可能となり、発電量の一層の増大が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリを示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリのボビンの要部を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部の構造を説明する要部斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す側面図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図である。
【図14】この発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部を軸方向内方から見た図である。
【図15】この発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機を模式的に示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子を示す断面図、図4はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリを示す斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に組み込まれる界磁コイルアッセンブリのボビンの要部を示す側面図である。図6はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図6の(a)は正面図を示し、図6の(b)は断面図を示している。図7はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部の構造を説明する要部斜視図、図8はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0012】
図1乃至図5において、回転電機としての車両用交流発電機1は、それぞれ略椀形状のアルミ製のフロントブラケット2とリヤブラケット3とからなるケース4と、シャフト16をケース4に軸受5を介して支持されて、ケース4内に回転自在に配設された回転子15と、ケース4のフロント側に延出するシャフト16の端部に固着されたプーリ6と、回転子15の軸方向の両端面に固定されたファン7と、回転子15に対して一定のエアギャップを有して、回転子15の外周を囲繞してケース4に固定された固定子10と、シャフト16のリヤ側に固定され、回転子15に電流を供給する一対のスリップリング8と、各スリップリング8に摺動するようにケース4内に配設された一対のブラシ9と、固定子10で生じた交流を直流に整流する整流器13と、固定子10で生じた交流電圧の大きさを調整する電圧調整器14と、を備えている。
【0013】
固定子10は、円筒状の固定子鉄心11と、固定子鉄心11に巻装され、回転子15の回転に伴い、後述する界磁コイル17からの磁束の変化で交流が生じる固定子コイル12と、を備えている。
【0014】
回転子15は、励磁電流が流されて磁束を発生する界磁コイル17と、界磁コイル17を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成されるポールコア18と、ポールコア18の軸心位置に貫装されたシャフト16と、を備えている。
ポールコア18は、それぞれ例えばS10Cなどの低炭素鋼で冷間鍛造製法により作製された第1および第2ポールコア体19,23に分割構成されている。
【0015】
第1ポールコア体19は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴が軸心位置を貫通して形成された第1ボス部20と、第1ボス部20の一端縁部から径方向外側に延設された厚肉リング状の第1継鉄部21と、第1継鉄部21の外周部から軸方向他端側に延設された第1爪状磁極部22とを有している。第1爪状磁極部22は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成され、第1継鉄部21の外周部に周方向に等角ピッチで例えば8つ配列されている。
【0016】
第2ポールコア体23は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴が軸心位置を貫通して形成された第2ボス部24と、第2ボス部24の他端縁部から径方向外側に延設された厚肉リング状の第2継鉄部25と、第2継鉄部25の外周部から軸方向一端側に延設された第2爪状磁極部26とを有している。第2爪状磁極部26は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成され、第2継鉄部25の外周部に周方向に等角ピッチで例えば8つ配列されている。
【0017】
ボビン28は、絶縁性樹脂からなる樹脂成型体であり、第1および第2ボス部20,24に外嵌状態に嵌装される巻胴部29と、巻胴部29の軸方向両端から径方向外方に延設された一対のフランジ部30と、一対のフランジ部30のそれぞれに等角ピッチで8つずつ突設された回り止め部31と、一対のフランジ部30の外周縁部から巻胴部29に巻回された界磁コイル17を覆うように延設されたカバー部32と、を備えている。各回り止め部31は、各フランジ部30から軸方向外方に突設されたY字状の肉厚部に構成されている。そして、界磁コイル17を構成する導線がボビン28の巻胴部29に多層に巻回され、界磁コイルアッセンブリ27が作製される。
【0018】
谷部35が、図7に示されるように、周方向に隣り合う第1爪状磁極部22間の各第1継鉄部21の部位に、内径側に向かって凸状に湾曲したU字状に凹設されている。この内径側に湾曲した谷部35は、その周方向幅が径方向内方に向って漸次狭くなり、かつ軸方向に第1継鉄部21を貫通している。そして、回り止め部収納凹部36が、谷部35の界磁コイル17側(軸方向内方)の縁部および第1継鉄部21の谷部35下方の軸方向内方の部位に、回り止め部31の肉厚と同等の軸方向深さで、かつ回り止め部31の外形形状に適合する内形形状に、凹設されている。さらに、断面優弧の嵌合溝37が溝方向を軸方向として、軸方向内方から外方に向って所定の長さを有するように、谷部35の底部側を拡張して形成されている。このとき、嵌合溝37は、第1継鉄部21の谷部35を軸方向に貫通せず、軸方向に直交する係止部としての底面37aを有する。
【0019】
なお、説明していないが、谷部35、回り止め部収納凹部36、および嵌合溝37は、第2継鉄部25にも同様に形成されている。
【0020】
永久磁石アッセンブリ40は、図6の(a),(b)に示されるように、永久磁石41と、永久磁石41を保持する磁石保持台座42と、永久磁石41を磁石保持台座42に固定するカバー47およびリベット48と、を備えている。永久磁石41は、例えば、ネオジウム・鉄・ボロン系希土類焼結磁石を用いて、底面を矩形とする所定高さの四角柱に作製されている。ここで、永久磁石41の底面の隣り合う2辺のそれぞれに沿った方向を幅方向および長さ方向とする。また、永久磁石アッセンブリ40が配設された回転子15においては、永久磁石41の幅方向、長さ方向、および高さ方向は、回転子15の周方向、軸方向、および径方向となる。
【0021】
磁石保持台座42は、鉄、鉄合金などの磁性材料を用いて鋳造により一体物に作製され、断面等脚台形の磁石保持部43と、断面優弧の嵌合部44と、磁石保持部43の断面等脚台形の短辺(上辺)と嵌合部44の断面優弧の弦とを連結する連結部45と、を有する。
断面等脚台形の長辺(下辺)により構成される磁石保持部43の上面が、磁石載置面43aとなる。この磁石載置面43aは、永久磁石41と同等の幅と長さを有する矩形に形成されている。なお、磁石保持部43の断面等脚台形の長辺が磁石載置面43aの幅である。また、磁石保持部43は、永久磁石アッセンブリ40を谷部35に装着した際に、断面等脚台形の平行でない対辺により構成される側面が谷部35の周方向に相対する側面に接する形状に作製される。さらに、リベット挿通穴46が磁石保持部43の中心位置を長さ方向に貫通するように形成されている。
【0022】
嵌合部44は、嵌合溝37に圧入、固着できる断面形状に形成されている。そして、嵌合部44と連結部45は、磁石保持部43より短い長さに形成され、長さ方向の一側に窪む段差部51を形成している。
カバー47は、ステンレスなどの非磁性材料の平板をプレス成形して作製され、磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置された永久磁石の上面、長さ方向に対向する両端面、および幅方向に対向する両側面を覆う冠部47a、冠部47aから磁石保持部43の長さ方向に対向する両端面を覆うように延在する鍔部47b、および鍔部47bにあけられたリベット挿通穴47cを有する。
【0023】
そして、永久磁石41が、磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置され、カバー47が、冠部47aで永久磁石41を包み込むように装着される。ついで、リベット48がリベット挿通穴47cと磁石保持部43に形成されたリベット挿通穴46と挿入され、リベット48の頭部をカシメて、永久磁石アッセンブリ40が組立てられる。これにより、永久磁石41は、カバー47により幅方向、長さ方向、および高さ方向の移動を規制され、かつ磁石載置面43aに接して磁気的に接続状態に磁石保持台座42に保持される。
【0024】
このように組み立てられた永久磁石アッセンブリ40は、第1ポールコア体19の軸方向内方から、嵌合部44を底面37aに当接するまで嵌合溝37に圧入し、図8に示されるように第1ポールコア体19の各谷部35に装着される。このとき、永久磁石アッセンブリ40は、嵌合溝37の断面優弧の溝形状により径方向外方への移動が規制され、磁石保持部43の側面が谷部35の周方向に相対する側面に接し、周方向の移動が規制され、嵌合部44が嵌合溝37の底面37aに当接して軸方向外方への移動が規制される。
また、磁石保持台座42は、嵌合部44の外周面が嵌合溝37の内周面に接して、磁気的に接続されて第1ポールコア体19の各谷部35に保持される。なお、永久磁石アッセンブリ40は、第2ポールコア体23の谷部35に同様に装着される。
【0025】
そして、永久磁石アッセンブリ40が各谷部35に装着された第1および第2ポールコア体19,23は、第1および第2爪状磁極部22,26を交互に噛み合わせ、かつ、第1ボス部20の他端面を第2ボス部24の一端面に突き合わせ、シャフト挿通穴に貫装されたシャフト16に固着され、回転子15が組み立てられる。ここで、第1および第2ボス部20,24および第1および第2継鉄部21,25が、それぞれポールコア18のボス部および一対の継鉄部に相当する。
【0026】
このように組み立てられた回転子15では、界磁コイルアッセンブリ27が、第1および第2ボス部20,24をボビン28の巻胴部29内に挿通させて、第1および第2ボス部20,24、第1および第2継鉄部21,25および第1および第2爪状磁極部22,26に囲まれた空間に収納されている。そして、カバー部32が巻胴部29に巻回された界磁コイル17を覆うように一対のフランジ部30の外周縁部から延在し、界磁コイル17と第1および第2爪状磁極部22,26との間の電気的な絶縁を確保している。また、ボビン28の回り止め部31が、第1および第2継鉄部21,25に形成された回り止め部収納凹部36内に収納され、ボビン28の回動が規制されるとともに、ボビン28の周方向の位置決めが行われる。さらに、回り止め部31により、永久磁石アッセンブリ40の軸方向内方への抜けが阻止される。
【0027】
ここで、永久磁石41は、第1および第2爪状磁極部22,26の先端側内周面に対向するように各谷部35に配設され、界磁コイル17を流れる界磁電流が回転子15の軸心と直交する平面において作る磁界の向きと反対となるように着磁配向されている。また、界磁コイル17の口出し線17aは、第2ポールコア体23の2つの谷部35の底部に軸方向内方から外方に至るように凹設された引き出し溝(図示せず)から引き出され、スリップリング8に接続される。
【0028】
つぎに、このように構成された車両用交流発電機1の動作について説明する。
まず、電流がバッテリ(図示せず)からブラシ9およびスリップリング8を介して回転子15の界磁コイル17に供給され、磁束が発生される。この磁束により、第1ポールコア体19の第1爪状磁極部22がN極に着磁され、第2ポールコア体23の第2爪状磁極部26がS極に着磁される。
一方、エンジンの回転トルクがベルト(図示せず)およびプーリ6を介してシャフト16に伝達され、回転子15が回転される。そこで、回転磁界が固定子10の固定子コイル12に与えられ、起電力が固定子コイル12に発生する。この交流の起電力が、整流器13で直流電流に整流され、バッテリが充電され、或いは電気負荷に供給される。
【0029】
また、界磁コイル17に通電されると、磁束が発生される。この磁束は、第1爪状磁極部22からエアギャップを通って固定子鉄心11のティース部に入る。そして、磁束は、固定子鉄心11のティース部からコアバック部を通って周方向に移動し、隣の第2爪状磁極部26に対向するティース部からエアギャップを通ってその第2爪状磁極部26に入る。ついで、第2爪状磁極部26に入った磁束は、第2継鉄部25、第2ボス部24、第1ボス部20、第1継鉄部21を通って第1爪状磁極部22に至る。ここで、従来のランデル型回転子では、第1および第2ポールコア体19,23は限界設計されているので、界磁コイル17の発生する磁界により磁気飽和し、回転子で発生する磁束が減少する。
【0030】
ここで、永久磁石41は、界磁コイル17の発生する磁界の向きと反対となるように着磁配向されているので、永久磁石41の発生する磁束は、界磁コイル17の発生する磁束と逆向きとなり、第1および第2ポールコア体19,23を構成する磁性体の磁束密度を大幅に低減することができ、磁気飽和を解消することができる。これにより、固定子10に鎖交する磁束が増加し、発電量を増加することができる。
また、永久磁石41は、第1および第2爪状磁極部22,26の先端側内周面に対向するように配設されているので、永久磁石41は、回転子15の最外周面に対して径方向内方に位置している。そこで、固定子スロット高調波は第1および第2爪状磁極部22,26の最外周面部に留まり、永久磁石41を直接誘導加熱するように作用しない。その結果、永久磁石41が加熱されて、熱減磁することが未然に防止される。
【0031】
この実施の形態1によれば、断面優弧の嵌合溝37が、溝方向を軸方向として軸方向内方から外方に向って、第1および第2ポールコア体19,23の各谷部35の底部に形成され、回り止め部収納凹部36が、第1および第2継鉄部21,25の谷部35の軸方向内方の縁部に、Y字状の回り止め部31の外形形状に適合する内形形状に凹設されている。磁石保持台座42は、嵌合部44および連結部45の長さ方向一側(軸方向内方)の端面を磁石保持部43の長さ方向一側の端面に対して長さ方向他側(軸方向外方)に所定量変位させて、長さ方向一側に窪む段差部51を形成している。
【0032】
そこで、磁石保持台座42の嵌合部44を嵌合溝37に嵌着して永久磁石アッセンブリ40を谷部35に装着した第1および第2ポールコア体19,23に界磁コイルアッセンブリ27を装着し、第1および第2ポールコア体19,23を一体化するだけで、回り止め部31が回り止め部収納凹部36と磁石保持台座42の段差部51とにより形成される空間内に収納される。これにより、界磁コイルアッセンブリ27のシャフト16周りの回動が阻止される回転子15を簡易に組み立てることができる。さらに、車両用交流発電機1が高速回転され、ボビン28に高角速度が付加されても、界磁コイルアッセンブリ27のシャフト16周りの回動が阻止され、界磁コイル17の口出し線17aの断線を防止することができる。
【0033】
また、磁石保持台座42に段差部51を設けているので、磁石保持部43を回り止め部31との干渉を回避して軸方向内方に延在でき、永久磁石41の軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、軸方向に関して、永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との重なりを大きくできるので、永久磁石41の発生する磁束が永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との間を効率よく流れて、発電量を増大することができる。
【0034】
また、嵌合溝37は谷部35を軸方向に貫通せず、軸方向に直交する三日月状の底面37aを有しているので、嵌合部44の端面が底面37aに当接するまで嵌合部44を嵌合溝37に圧入させることにより、磁石保持台座42の軸方向位置を位置決めできる。さらに、回り止め部31が嵌合溝37に嵌合された嵌合部44の軸方向内方に位置しているので、永久磁石アッセンブリ40の軸方向内方への抜けが阻止される。
【0035】
永久磁石41が底面を矩形とする四角柱に作製されているので、永久磁石41の体積を大きくでき、発電量を増大することができるとともに、歩留まりが高くなり、製造コストが削減できる。
永久磁石41を磁石保持台座42の磁石載置面43aに載置し、永久磁石41を包み込むように装着されたカバー47を磁石保持台座42に固着して、永久磁石41を磁石保持台座42に保持させているので、楔状の磁石保持溝などの磁石保持構造を磁石保持台座42の磁石保持部43に形成する必要がなく、磁石保持台座42の作製が容易となる。また、磁石保持部43の上面全体を磁石載置面43aとして利用できるので、磁石載置面43aを底面とする四角柱に永久磁石41を作製でき、永久磁石41の体積が大きくなり、発電量を増大することができる。
【0036】
リベット48を用いてカバー47を磁石保持台座42に固着しているので、永久磁石アッセンブリ40の組立性が向上する。
カバー47がステンレスなどの非磁性材料で作製されているので、永久磁石41で発生した磁束がカバー47を介して磁石保持台座42に戻ることがなく、永久磁石41で発生した磁束を効率的に利用することができる。
【0037】
磁石保持台座42の断面優弧の嵌合部44を、第1および第2ポールコア体19,23の各谷部35の底部に溝方向を軸方向として形成された断面優弧の嵌合溝37に嵌合させて、磁石保持台座42を第1および第2ポールコア体19,23に保持させているので、簡易な構造で、高耐遠心力性を有する磁石保持台座42の保持構造を実現できる。
磁石保持台座42を第1および第2ポールコア体19,23に保持させたときに、磁石保持部43の幅方向の両側面が第1および第2ポールコア体19,23の谷部35の周方向に相対する壁面に接するようになっているので、磁石保持台座42の周方向の移動が規制される。そこで、磁石保持台座42の耐角加速度性が向上し、永久磁石アッセンブリ40の保持強度が高められ、信頼性が高められる。
【0038】
なお、上記実施の形態1では、永久磁石を全ての谷部に配設するものとしているが、永久磁石は任意の谷部を選択して配設するようにしてもよい。この場合、周方向にバランスよく永久磁石を配置することが望ましい。例えば、第1ポールコア体には永久磁石を配設せず、第2ポールコア体の全ての谷部に永久磁石を配設してもよい。また、第1および第2ポールコア体のそれぞれに、周方向の一つおきの谷部に永久磁石を配設してもよい。さらに、第1および第2ポールコア体のそれぞれに、周方向の一つおきの谷部に永久磁石アッセンブリを配設し、残る谷部には磁石保持台座のみを配設してもよい。このような構成をとることは、全ての谷部に永久磁石を配設した場合に比べ、発電量が少し低下するものの、部品点数を削減でき、低コスト化が図られる。
【0039】
また、上記実施の形態1では、カバーがリベットにより磁石保持台座に固着されているものとしているが、カバーの磁石保持台座への固着手段はリベットに限定されるものではなく、例えばカバーを磁石保持台座に半田により固着してもよいし、カバーの弾性を利用してカバーを磁石保持台座に弾性的に固着してもよい。
また、上記実施の形態1では、カバーをステンレスなどの非磁性材料で作製するものとしているが、カバーの材料は非磁性材料に限定されるものではなく、例えば鉄などの磁性材料でもよい。
【0040】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0041】
この実施の形態2では、図9に示されるように、嵌合部44を嵌合溝37に嵌合して磁石保持台座42を谷部35に配設した後、第1ポールコア体19の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部をカシメて、嵌合部44と嵌合溝37との嵌合強度を高めている。なお、図示していないが、嵌合部44を嵌合溝37に嵌合して磁石保持台座42を谷部35に配設した後、第2ポールコア体23の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部がカシメられている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0042】
この実施の形態2によれば、第1および第2ポールコア体19,23の嵌合溝37の底部の回り止め部収納凹部36側の縁部に形成されたカシメ部49により、嵌合部44と嵌合溝37との嵌合強度が高められているので、磁石保持台座42の耐遠心力性が高められ、優れた信頼性が得られる。
【0043】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す正面図である。
【0044】
図10において、磁石保持台座42Aは、一対の位置決め用突起43bが磁石載置面43aの幅方向両端に長さ方向に延在するように突設された磁石保持部43Aと、嵌合部44と、連結部45と、を備えている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0045】
この実施の形態3によれば、一対の位置決め用突起43bが磁石保持部43Aの磁石載置面43aの幅方向両端に長さ方向に延在するように突設されているので、永久磁石41の位置決めが容易となり、永久磁石アッセンブリの組立性が向上する。
【0046】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される磁石保持台座を示す側面図である。
【0047】
図11において、磁石保持台座42Bは、磁石保持部43と、断面優弧の中心位置は長さ方向の一側から他側に向って一定であり、その半径が長さ方向の一側から他側に向って漸次小さくなるように形成された嵌合部44Bと、連結部45と、を備えている。また、図示していないが、第1および第2ポールコア体の谷部に形成される嵌合溝は、断面優弧の中心位置は軸方向内方から外方に向って一定であり、その半径が軸方向内方から外方に向って漸次小さくなる溝形状に形成されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0048】
この実施の形態4によれば、嵌合部44Bの断面優弧の半径が長さ方向の一側から他側に向って漸次小さくなっているので、嵌合部44Bの外形形状が先細り形状となっている。さらに、嵌合溝の断面優弧の半径が軸方向内方から外方に向って漸次小さくなっているので、嵌合溝の内形形状が先細り形状となっている。そこで、嵌合部44Bの嵌合溝への圧入がし易くなり、回転子の組立性が向上する。
【0049】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図12の(a)は正面図を示し、図12の(b)は断面図を示している。
【0050】
図12において、磁石保持台座42Cは、磁石保持部43と、嵌合部44Cと、連結部45Cと、を備えている。嵌合部44Cおよび連結部45Cは、磁石保持部43より短い長さに形成され、磁石保持部43に対して長さ方向の両側に同じだけ窪む段差部51を形成している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0051】
この実施の形態5では、永久磁石アッセンブリ40Cは、第1および第2ポールコア体19,23の谷部35に配設された際に、シャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40Cの幅方向の中心を通る平面について面対称、かつシャフト16の軸心と直交し、永久磁石アッセンブリ40Cの長さ方向(軸方向)の中心を通る平面について面対称となっている。そこで、遠心力が永久磁石アッセンブリ40Cに作用したときに、シャフト16の軸心と直交し、永久磁石アッセンブリ40Cの長さ方向(軸方向)の中心を通る平面において、嵌合部44Cの断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40Cを回動させるモーメント、さらにはシャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40Cの幅方向の中心を通る平面において、嵌合部44Cの長さ方向の中央位置における断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40Cを回動させるモーメントが発生しにくくなる。その結果、永久磁石アッセンブリ40Cの倒れが抑制される。
【0052】
実施の形態6.
図13はこの発明の実施の形態6に係る車両用交流発電機に適用される回転子に実装される永久磁石アッセンブリの構成を説明する図であり、図13の(a)は正面図を示し、図13の(b)は断面図を示している。
【0053】
図13において、磁石保持台座42Dは、例えば磁性鋼板をプレス成形して得られた薄板を積層して作製されており、磁石保持部43Dと、嵌合部44と、連結部45と、を備えている。そして、磁石保持部43Dは、リベット挿通穴46Dの両端の外径がリベット48の頭部より大径となっている。また、カバー47Dは、鍔部47bのリベット挿通穴47c周りの部位を窪ませて形成された凹部47dを有する。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0054】
この実施の形態6では、永久磁石41が、磁石保持部43Dの磁石載置面43aに載置され、カバー47Dが、冠部47aで永久磁石41を包み込むように装着される。ついで、リベット48がカバー47Dのリベット挿通穴47cと磁石保持部43Dに形成されたリベット挿通穴46と挿入され、リベット48の頭部をカシメて、永久磁石アッセンブリ40Dが組立てられる。このとき、カバー47Dの凹部47dがリベット挿通穴46Dの大径部に入り込み、リベット48の頭部が凹部47d内に入り込む。そして、リベット48の頭部がカバー47Dの鍔部47bの表面と面一となる。
【0055】
この実施の形態6によれば、リベット48の頭部がカバー47Dの鍔部47bと面一となっているので、回転子を組み立てた際に、リベット48とボビン28との干渉がなくなり、磁石保持部43D、すなわち永久磁石41の軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、軸方向に関して、永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との重なりを大きくできるので、永久磁石41の発生する磁束が永久磁石41と第1および第2爪状磁極部22,26との間を効率よく流れ、発電量を増大することができる。
【0056】
また、磁石保持部43Dの軸方向内方の位置を界磁コイル17側に近づけることができる。そこで、永久磁石41の大きさを一定とすれば、嵌合溝の溝長さを短くすることができ、嵌合溝を加工するための型寿命を向上できる。また、嵌合溝の溝長さを一定とすれば、永久磁石41の体積を増やすことができ、発電量を増大できる。
また、磁石保持台座42Dが薄板を積層して作製されているので、薄板の抜き形状を変えるだけで両端を大径とするリベット挿通穴46Dを形成でき、磁石保持台座を鋳造で作製する場合に比べ、製造コストを削減できる。
【0057】
実施の形態7.
図14はこの発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子におけるポールコアの谷部を軸方向内方から見た図、図15はこの発明の実施の形態7に係る車両用交流発電機に適用される回転子のポールコアに永久磁石アッセンブリを取り付けた状態を軸方向内方から見た図である。
【0058】
図14において、軸方向に直交する受け面50が、第1継鉄部21の谷部35の周方向に相対する側面に形成されている。また、受け面50は、図示していないが、第2継鉄部25の谷部35の周方向に相対する側面に形成されている。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0059】
この実施の形態7では、図15に示されるように、永久磁石アッセンブリ40は、第1ポールコア体19の軸方向内方から、嵌合部44を底面37aに当接するまで嵌合溝37に圧入し、第1ポールコア体19の各谷部35に装着される。また、永久磁石アッセンブリ40は、第2ポールコア体23の各谷部35にも同様に装着される。このとき、嵌合部44は底面37aに接し、磁石保持部43の長さ方向他側の端面の幅方向両端部が受け面50に接している。
【0060】
この実施の形態7によれば、嵌合部44は底面37aに接し、磁石保持部43の長さ方向他側の端面の幅方向両端部が受け面50に接しているので、永久磁石アッセンブリ40の軸方向外方への移動を確実に阻止できる。さらに、シャフト16の軸心を含み、永久磁石アッセンブリ40の幅方向の中心を通る平面において、嵌合部44の長さ方向の中央位置における断面優弧の中心周りに永久磁石アッセンブリ40を回動させるモーメントが受け面50に受けられ、永久磁石アッセンブリ40の倒れが阻止される。
【0061】
なお、上記各実施の形態では、嵌合溝が断面優弧に形成されているものとしているが、嵌合溝の断面形状は、嵌合溝に嵌合される磁石保持台座の嵌合部の周方向および径方向の移動を規制できればよく、優弧に限定されるものではない。
また、上記各実施の形態では、車両用交流発電機について説明しているが、この発明は、車両用交流発電機に限らず、車両用電動機や車両用発電電動機などの回転電機に適用しても、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0062】
10 固定子、15 回転子、16 シャフト、17 界磁コイル、18 ポールコア、20 第1ボス部、21 第1継鉄部、22 第1爪状磁極部、24 第2ボス部、25 第2継鉄部、26 第2爪状磁極部、28 ボビン、30 フランジ部、31 回り止め部、35 谷部、36 回り止め部収納凹部、37 嵌合溝、37a 底面、41 永久磁石、42,42A,42B,42C,42D 磁石保持台座、43,43A,43D 磁石保持部、43a 磁石載置面、44,44B,44C 嵌合部、47,47D カバー、48 リベット、50 受け面、51 段差部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部、該ボス部の軸方向両端縁部から径方向外方に延設された一対の継鉄部、および該一対の継鉄部のそれぞれから交互に軸方向に延設され、噛み合って周方向に配列された複数の爪状磁極部を有し、内径側に湾曲した谷部が周方向に隣り合う上記爪状磁極部間のそれぞれの上記継鉄部の部位に形成され、上記ボス部の軸心位置に挿通されたシャフトに固着されたポールコアと、上記ボス部に装着されたボビンに巻回されて、該ボス部、上記一対の継鉄部、および上記複数の爪状磁極部に囲まれた空間内に収納された界磁コイルと、を有する回転子と、
上記回転子の外周を囲繞するように配設された固定子と、
上記爪状磁極部の先端側内周面に対向するように上記谷部に配設された永久磁石と、を有する回転電機において、
上記谷部の底部に、溝方向を軸方向として、軸方向内方から軸方向外方に向って延設された嵌合溝と、
上記継鉄部の上記嵌合溝の軸方向内方の開口縁部に凹設された回り止め部収納凹部と、
嵌合部、および嵌合部の上部に形成された磁石保持部を有し、該嵌合部を上記嵌合溝に嵌着されて、径方向の移動を規制されて上記谷部に配設される磁石保持台座と、
上記ボビンのフランジ部から軸方向外方に突設された回り止め部と、を備え、
上記磁石保持台座は、上記嵌合部の軸方向内方の端面を上記磁石保持部の軸方向内方の端面に対して軸方向外方に変位させて形成された段差部を有し、
上記ボビンは、上記回り止め部を上記回り止め部収納凹部と上記段差部とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて上記回転子に装着され、
上記永久磁石は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、該底面を上記磁石保持部の上面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバーを該磁石保持台座に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて該磁石保持台座に保持されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記磁石保持台座は、上記磁石保持部の周方向両側面が上記谷部の周方向に相対する壁面に接するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
位置決め用突起が上記磁石保持部の上面の周方向両側部に突設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の回転電機。
【請求項4】
上記カバーは、上記磁石保持部を軸方向に挿通されたリベットにより上記磁石保持台座に固着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
上記リベットの軸方向内方の頭部が上記カバーと面一になっていることを特徴とする請求項4記載の回転電機。
【請求項6】
受け面が、上記磁石保持部の軸方向外方の端面の周方向両端部が接するように上記谷部の周方向に相対する壁面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
上記磁石保持台座は、上記継鉄部の上記嵌合溝の底部の上記回り止め部収納凹部側の縁部をカシメて上記ポールコアに固着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6にいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
上記磁石保持台座は、その周方向中心を通り、上記シャフトの軸心を含む平面について面対称に、かつその軸方向中心を通り、上記シャフトの軸心と直交する平面について面対称に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7にいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記嵌合部は、その外形形状が軸方向内方から軸方向外方に向って漸次小さくなる先細り形状に形成され、上記嵌合溝は、内形形状が軸方向内方から軸方向外方に向って漸次小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項1】
ボス部、該ボス部の軸方向両端縁部から径方向外方に延設された一対の継鉄部、および該一対の継鉄部のそれぞれから交互に軸方向に延設され、噛み合って周方向に配列された複数の爪状磁極部を有し、内径側に湾曲した谷部が周方向に隣り合う上記爪状磁極部間のそれぞれの上記継鉄部の部位に形成され、上記ボス部の軸心位置に挿通されたシャフトに固着されたポールコアと、上記ボス部に装着されたボビンに巻回されて、該ボス部、上記一対の継鉄部、および上記複数の爪状磁極部に囲まれた空間内に収納された界磁コイルと、を有する回転子と、
上記回転子の外周を囲繞するように配設された固定子と、
上記爪状磁極部の先端側内周面に対向するように上記谷部に配設された永久磁石と、を有する回転電機において、
上記谷部の底部に、溝方向を軸方向として、軸方向内方から軸方向外方に向って延設された嵌合溝と、
上記継鉄部の上記嵌合溝の軸方向内方の開口縁部に凹設された回り止め部収納凹部と、
嵌合部、および嵌合部の上部に形成された磁石保持部を有し、該嵌合部を上記嵌合溝に嵌着されて、径方向の移動を規制されて上記谷部に配設される磁石保持台座と、
上記ボビンのフランジ部から軸方向外方に突設された回り止め部と、を備え、
上記磁石保持台座は、上記嵌合部の軸方向内方の端面を上記磁石保持部の軸方向内方の端面に対して軸方向外方に変位させて形成された段差部を有し、
上記ボビンは、上記回り止め部を上記回り止め部収納凹部と上記段差部とで構成される空間内に収納させて周方向の移動を規制されて上記回転子に装着され、
上記永久磁石は、矩形の底面を有する四角柱に作製され、該底面を上記磁石保持部の上面に載せて配置され、径方向外方から被せられたカバーを該磁石保持台座に固着して、周方向、軸方向、および径方向の移動を規制されて該磁石保持台座に保持されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記磁石保持台座は、上記磁石保持部の周方向両側面が上記谷部の周方向に相対する壁面に接するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
位置決め用突起が上記磁石保持部の上面の周方向両側部に突設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の回転電機。
【請求項4】
上記カバーは、上記磁石保持部を軸方向に挿通されたリベットにより上記磁石保持台座に固着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
上記リベットの軸方向内方の頭部が上記カバーと面一になっていることを特徴とする請求項4記載の回転電機。
【請求項6】
受け面が、上記磁石保持部の軸方向外方の端面の周方向両端部が接するように上記谷部の周方向に相対する壁面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
上記磁石保持台座は、上記継鉄部の上記嵌合溝の底部の上記回り止め部収納凹部側の縁部をカシメて上記ポールコアに固着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6にいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
上記磁石保持台座は、その周方向中心を通り、上記シャフトの軸心を含む平面について面対称に、かつその軸方向中心を通り、上記シャフトの軸心と直交する平面について面対称に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7にいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記嵌合部は、その外形形状が軸方向内方から軸方向外方に向って漸次小さくなる先細り形状に形成され、上記嵌合溝は、内形形状が軸方向内方から軸方向外方に向って漸次小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−175773(P2012−175773A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34244(P2011−34244)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]