説明

回転電機

【課題】2重ロータ型回転電機の小型化を目的とする。
【解決手段】回転電機1は、径方向ティース13と軸方向ティース18とを有するステータコア6と、ステータコア6に巻装されるステータコイル7とを具備するステータ2を備える。また、径方向ティース13と対向する径方向突極24を有する径方向ロータ3Aと、軸方向ティース18と対向する軸方向突極を有する軸方向ロータ3Bを備える。これによれば、2重ロータ型において、2つのロータを径方向と軸方向とに分けて配置しているため、回転電機1の径方向への体格を小さくすることができる。すなわち、回転電機1を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車やトラック等に搭載される回転電機に関する。また、産業用機器、家庭電化製品等への適用も可能である。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、1つのステータに対して2つのロータを有する2重ロータ型がある。
2重ロータ型として、従来、ステータの径方向外側に2つのロータを有するものや、ステータの径方向内側外側にそれぞれ1つのロータを有するものがある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−259550号公報
【特許文献2】特開2010−183781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のようにステータの径方向外側に2つのロータを配置する場合には、回転電機の径方向への体格が大きくなってしまう。また、ステータの径方向内側に配する場合にも、ロータを配するスペースを確保するためにステータを大きくしなければならず、回転電機の径方向への体格が大きくなるという問題が生じる。
【0005】
近年、特に、車載用の回転電機(電動機、回転機、モータジェネレータ)において、小型化が求められている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2重ロータ型回転電機が小型化できる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の回転電機は、径方向に突出する径方向ティースと軸方向に突出する軸方向ティースとを有するステータコア、およびステータコアに巻装されるステータコイルを具備するステータを備える。
また、回転電機は、径方向ティースと対向する径方向極を有する第1のロータと、軸方向ティースと対向する軸方向極を有する第2のロータを備える。
【0007】
これによれば、2重ロータ型において、2つのロータを径方向と軸方向とに分けて配置しているため、回転電機の径方向への体格を小さくすることができる。すなわち、回転電機の体格を小型化することができる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の回転電機によれば、径方向極は径方向に突出する突極として形成されており、軸方向極は軸方向に突出する突極として形成されており、周方向からみて、径方向極を形成する突極と軸方向極を形成する突極とは交差して配置されている。
すなわち、第1のロータの突極と第2のロータの突極とが交差することで、交差させずに配置する場合よりも、省スペースにて2つのロータを配置することができる。
【0009】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の回転電機によれば、第1のロータは、径方向に突出する2つの脚を有する略コの字型のセグメントを周方向に複数並べることにより形成され、第2のロータは、軸方向に突出する2つの脚を有する略コの字型のセグメントを周方向に複数並べることにより形成されている。
これによれば、ロータを容易に製造することができる。
【0010】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の回転電機によれば、周方向において、径方向極同士の間に、軸方向極が配置される。
本手段は、ロータの一実施態様を示すものである。
これによれば、第1のロータの極と第2のロータの極とが周方向に交互に並ぶことになる。
【0011】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の回転電機によれば、ステータコアは、軸方向に突出する軸方向突出部と、径方向に突出する径方向突出部とを有している。
軸方向突出部は、径方向突出部の突出方向に突出する径方向ティースを有しており、径方向突出部は、軸方向突出部の突出方向に突出する軸方向ティースを有している。
本手段は、ステータの一実施態様を示すものである。
【0012】
〔請求項6の手段〕
請求項6に記載の回転電機によれば、径方向ティース間に形成されるスロットである径方向スロットと、軸方向ティース間に形成されるスロットである軸方向スロットとは、周方向において同じ位置にあり、径方向スロットと軸方向スロットとは径方向に連通して、径方向において連続してステータコイルが配される連通スロットを形成している。
本手段は、ステータの一実施態様を示すものである。
【0013】
〔請求項7の手段〕
請求項7の記載の回転電機によれば、ステータコイルは多相コイルであって、各相コイルを構成する導線は、連通スロットに収容される収容部と、連通スロットから突出するコイルエンド部とを交互に有するように周方向に波状に巻かれており、径方向スロットに配される導線部分が、第1のロータに作用するステータコイルをなし、軸方向スロットに配される導線部分が、第2のロータに作用するステータコイルをなしている。
【0014】
これによれば、1つの連続巻線によって、第1のロータ及び第2のロータに作用するステータコイルを形成することができる。
【0015】
〔請求項8の手段〕
請求項8に記載の回転電機によれば、径方向ティース及び軸方向ティースのうち、径方向外側に配される側のティースに巻回される導線は、スロット内において2列で積層される2列配置で配置され、径方向内側に配される側のティースに巻回される導線は、スロット内において1列で積層される1列配置で配置される。
【0016】
すなわち、径方向外側のスロットでは導線が2列でティースの突出方向に積層されるように巻かれ、径方向内側のスロットでは導線が1列でティースの突出方向に積層されるように巻かれる。
これによれば、径方向外側のスロットでは2列配置とするため、巻線の層方向への高さが小さくなる。すなわち、径方向外側のティースが軸方向ティースであれば、軸方向への巻線高さが小さくなる。また、径方向外側のティースが径方向ティースであれば、径方向への巻線高さが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は回転電機の構成図であり、(b)は(a)のA−A断面図である(実施例1)。
【図2】回転電機を径方向からみた模式図であり、軸方向ティースと軸方向突極とを説明する図である(実施例1)。
【図3】回転電機を模式的に示す斜視図である(実施例1)。
【図4】(a)は回転電機の構成図であり、(b)は(a)のB−B断面図である(実施例2)。
【図5】径方向ロータの平面図である(変形例)。
【図6】回転電機の断面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
実施例1の回転電機1の構成を、図1〜図3を用いて説明する。
実施例1の回転電機1は、アウターロータ型の3相交流モータであって、回転磁界を形成するステータ2と、ステータ2の外周側に配されて回転磁界によって回転可能なロータ3とを備える。
【0020】
ステータ2は、ステータコア6と、このステータコア6に分布巻き方式で巻装されるステータコイル7とを有する。そして、このステータコイル7に3相交流電流を流すことにより回転磁界を形成し、回転磁界内に配されるロータ3を回転させる。
【0021】
ステータコア6は、複数枚の電磁鋼板シートが軸方向に積層されて円筒状に形成された軸方向積層体8を有する。
軸方向積層体8は、複数枚の電磁鋼板シートを積層してなる第1積層部10と、第1積層部10の軸方向一端側で第1積層部10よりも径大の電磁鋼板シートを複数枚積層してなる第2積層部11とを有する。なお、第1積層部10の積層数の方が、第2積層部11の積層数よりも大きい。
【0022】
これにより、軸方向積層体8は、軸方向一端部にフランジを有するような形状となっている。軸方向積層体8において、第1積層部10は、軸方向他端側に突出する軸方向突出部6aをなしている。また、軸方向積層体8において、第2積層部11によりフランジ状に形成された部分は、径方向外側(外径側)に突出する径方向突出部6bをなしている。
【0023】
軸方向突出部6aである第1積層部10は、先端が外径側に突出するティース(以下、径方向ティース13と呼ぶ)と、径方向ティース13同士を磁気的に接続するバックヨーク14とを有している。
径方向ティース13は、周方向に複数個並んで設けられており、隣合う径方向ティース13同士とバックヨーク14とで囲われる空間が、スロット(以下、径方向スロット15と呼ぶ)となっている。
なお、本実施例では、周方向等間隔に42個の径方向スロット15が形成されている。
【0024】
径方向突出部6bは、第1積層部10の突出方向である軸方向他端側に突出するティース(以下、軸方向ティース18と呼ぶ)を有している。
すなわち、径方向突出部6bには、軸方向に貫通する孔19が周方向に等間隔に複数個形成されており、この孔19にはそれぞれ、直方体形状を呈するピース20が挿入固定されている。なお、ピース20は、電磁鋼板シートを径方向に積層して形成された積層体である。
【0025】
孔19は、ピース20の形状に合わせて長方形状を呈している。
ピース20は、軸方向他端部が径方向突出部6bの軸方向一端面から突出するように孔19に配され、この突出した部分が軸方向ティース18をなしている。
【0026】
軸方向ティース18は、周方向に複数個並んで設けられており、隣合う軸方向ティース18同士の間の空間が、スロット(以下、軸方向スロット23と呼ぶ)となっている。
なお、本実施例では、周方向等間隔に42個の軸方向スロット23が形成されている。そして、軸方向スロット23と径方向スロット15とは、周方向において同じ位置に存在しており、軸方向スロット23と径方向スロット15とは径方向に連通している。
【0027】
以上のように、ステータコア6は、軸方向積層体8とピース20とによって、軸方向突出部6aから径方向ティース13が径方向突出部6bの突出方向(外径側)に突出し、径方向突出部6bから軸方向ティース18が軸方向突出部6aの突出方向(軸方向他端側)に突出するように構成されている。ステータコア6は全体として、断面略L字の円環状に形成されている。
【0028】
ロータ3は、径方向ティース13に対して磁気的に作用する第1のロータ(以下、径方向ロータ3Aと呼ぶ)と、軸方向ティース18に対して磁気的に作用する第2のロータ(以下、軸方向ロータ3Bと呼ぶ)とを有する。
径方向ロータ3Aおよび軸方向ロータ3Bはともにリング状を呈しており、径方向ロータ3Aと軸方向ロータ3Bとが同心状に配されている。
【0029】
径方向ロータ3Aは、径方向ティース13と対向する突極である径方向突極24を有する。すなわち、径方向ロータ3Aは、第1積層部10の外径側で且つ第2積層部11の軸方向他端側に配され、内径側に突出する径方向突極24を有している(図1参照)。
【0030】
具体的には、径方向ロータ3Aは、セグメント25を周方向に複数並べてリング状に配置することによって形成されている。セグメント25は、コの字状を呈しており、周方向両端に設けられて径方向内側に突出する脚25aと脚25a同士を外周部で連結する連結部25bとを有している。なお、セグメント25は複数枚の電磁鋼板シートを軸方向に積層して形成されている(図1(b)、図3参照)。
【0031】
複数のセグメント25は、脚25aが内径側に向くように並べられ、外周に配されたリング状部材26に各セグメント25が固定されることによって、複数のセグメント25同士が連結されている。例えば、図1(a)に示すように、セグメント25には、連結部25bから外径側に突出して設けられた係合部25cが形成され、リング状部材26には、内周面に設けられた被係合部26aが形成され、係合部25cと被係合部26aとの係合によって、リング状部材26と各セグメント25との固定がなされている。なお、図1(a)では、複数のセグメント25の内の一部を省略して図示しているが、セグメント25はステータ2の外周を一周するリング状に配置されている。
【0032】
これにより、セグメント25の一方の脚25aと、隣合うセグメント25の他方の脚25aとが周方向に隣合い、この隣り合う2本の脚25aで1つの径方向突極24を形成している(図1(a)参照)。
本実施例では、14個のセグメント25によって、14個の径方向突極24が形成されている。
【0033】
軸方向ロータ3Bは、軸方向ティース18と対向する突極である軸方向突極30を有する。すなわち、軸方向ロータ3Bは、第1積層部10の外周側で且つ第2積層部11の軸方向他端側に配され、軸方向一端側に突出する軸方向突極30を有している(図2参照)。
【0034】
軸方向ロータ3Bも、セグメント31を周方向に複数並べて配置することによってリング状に形成されている。セグメント31は、コの字状を呈しており、周方向両端に設けられて軸方向一端側に突出する脚31aと脚31a同士を外周部で連結する連結部31bとを有している。なお、セグメント31は複数枚の電磁鋼板シートを径方向に積層して形成されている(図1、図3参照)。
【0035】
複数のセグメント31は、脚31aが軸方向一端側に向くように並べられ、軸方向他端側に配されたリング状部材(図示せず)に各セグメント25が固定されることによって、複数のセグメント31同士が連結されている。なお、図1(a)では、複数のセグメント31の内の一部を省略して図示しているが、セグメント31はステータ2の外周を一周するリング状に配置されている。
【0036】
径方向突極24と同様に、セグメント31の一方の脚31aと、隣合うセグメント31の他方の脚31aとが周方向に隣合い、この隣り合う2本の脚31aで1つの軸方向突極30を形成している(図2参照)。
本実施例では、14個のセグメント31によって、14個の軸方向突極30が形成されている。
【0037】
また、セグメント31は、脚31aが、セグメント25で形成される径方向突極24をまたぐように配されている。すなわち、図2に示すように、1つのセグメント31の脚31a同士の間に、径方向突極24が入り、1つのセグメント25の脚25a同士の間に、軸方向突極30が入るように、セグメント25とセグメント31とが交互にクロスして組み合わされている。つまり、周方向からみると、セグメント25の脚25aとセグメント31の脚31aとは交差しており、このため、径方向突極24と軸方向突極30は交差して配されている(図1(b)、図3参照)。
そして、これにより、周方向において径方向突極24同士の間に、軸方向突極30が配置される。なお、周方向において、径方向突極24は、軸方向突極30同士の真ん中に配置され、径方向突極24と軸方向突極30とは周方向に電気角で180°ずれていることになる。
【0038】
ステータコイル7は、3相コイルであって、各相コイル(U相、V相、W相)を構成する導線は、それぞれ、ステータコア6に波状に巻かれている。
ここで、1つのU相コイル7Uを例にとって具体的に説明する。
【0039】
上述のとおり、軸方向スロット23と径方向スロット15とは、周方向において同じ位置に存在しており、軸方向スロット23と径方向スロット15とは径方向に連通している。すなわち、軸方向スロット23と径方向スロット15とで径方向において連続してステータコイル7が配される連通スロット35を形成している。
【0040】
U相コイル7Uをなす導線36は、連通スロット35に収容される収容部36aと、連通スロット35から突出するコイルエンド部36bとを交互に有するように周方向に波状に巻かれている(図1(a)、図3参照)。
【0041】
すなわち、図3に示すように、導線36は軸方向スロット23[N]に配された後、90°曲げられて軸方向を向いて径方向スロット15[N]に配される。そして、この径方向スロット15[N]から軸方向外側に引き出された導線36は、3つの径方向スロット15をまたいで、次のU相コイル7Uが入る径方向スロット15[N+3]に挿入される。そして、径方向スロット15[N+3]に挿入された導線は、90°曲げられて径方向を向いて周方向において軸方向スロット23[N+3]に挿入される。そして、この径方向スロット15[N+3]から径方向外側に引き出された導線36は、3つの軸方向スロット23をまたいで、次のU相コイル7Uが入る径方向スロット15に挿入される。
【0042】
以上の繰り返しによって、導線36がステータコア6を1周したら、周方向における巻き始め位置から1周目とは周方向において逆方向に波状に巻いていく。なお、図3において、1周目の導線36が二点鎖線、2周目の導線36が実線で示されている。
また、V相コイル、W相コイルも、U相コイル7Uと同様の要領でステータコア6に巻かれる。
【0043】
このため、径方向断面をみると(つまり周方向からみると)、導線36は連通スロット35内でL字状に屈曲して配されている。すなわち、導線36は、径方向スロット15内では軸方向に延び、軸方向スロット23内では径方向に延びている。
なお、本実施例では、図3に示すように、径方向スロット15では導線36が1列で径方向に積層され、軸方向スロット23では導線36が1列で軸方向に積層されている。導線36は、図3のように、平角線であってもよいし、断面円形の導線や導体セグメントであってもよい。
【0044】
〔実施例1の作用効果〕
実施例1の回転電機1は、径方向ティース13と軸方向ティース18とを有するステータコア6と、ステータコア6に巻装されるステータコイル7とを具備するステータを備える。
また、径方向ティース13と対向する径方向突極24を有する径方向ロータ3Aと、軸方向ティース18と対向する軸方向突極30を有する軸方向ロータ3Bを備える。
【0045】
これによれば、2重ロータ型において、2つのロータを径方向と軸方向とに分けて配置しているため、回転電機1の径方向への体格を小さくすることができる。すなわち、回転電機1を小型化することができる。
【0046】
また、本実施例では、径方向ロータ3Aがセグメント25によって形成され、軸方向ロータ3Bがセグメント31によって形成されている。
これによれば、ロータを容易に製造することができる。
【0047】
また、本実施例では、1つのセグメント31の脚31a同士の間に、径方向突極24が入り、1つのセグメント25の脚25a同士の間に、軸方向突極30が入るように、セグメント25とセグメント31とが交互にクロスして組み合わされることで、径方向ロータ3Aと軸方向ロータ3Bとが配されている。
すなわち、周方向からみると、セグメント25の脚25aとセグメント31の脚31aとは交差しており、このため、径方向突極24と軸方向突極30は交差して配されている。
これによれば、2つのロータ3A、3Bの突極24、30を交差させずに配置する場合よりも、省スペースにて2つのロータ3A、3Bを配置することができる。従って、回転電機1の小型化ができる。
【0048】
また、本実施例では、軸方向スロット23と径方向スロット15とは、周方向において同じ位置に存在しており、軸方向スロット23と径方向スロット15とは径方向に連通して連通スロット35を形成している。そして、各相コイルをなす導線36は、連通スロット35に収容される収容部36aと、連通スロット35から突出するコイルエンド部36bとを交互に有するように周方向に波状に巻かれている。
そして、径方向スロット15に配される導線部分が、径方向ロータ3Aに作用するステータコイル7をなし、軸方向スロット23に配される導線部分が、軸方向ロータ3Bに作用するステータコイル7をなしている。
【0049】
すなわち、1つの連続巻線によって、径方向ロータ3A及び軸方向ロータ3Bに作用するステータコイル7を形成することができる。
また、本実施例では、ステータコイル7が3相コイルであって、径方向突極24と軸方向突極30とが電気角で180°ずれるように周方向に交互に並んでいるため、本実施例のように波状の巻き方で各相コイルを形成するならば、径方向ロータ3Aと軸方向ロータ3Bとは同じタイミングで同じ方向に回転する3相交流モータが構成される。
【0050】
〔実施例2〕
〔実施例2の構成〕
実施例2の回転電機1の構成を、実施例1とは異なる点を中心に、1つのU相コイル7Uを例にとって、図を用いて説明する。
本実施例では、軸方向ティース18に巻回される導線36の部分は、軸方向スロット23で周方向に2列で軸方向に並ぶ2列配置で配置されており、径方向ティース13に巻回される導線36の部分は、径方向スロット15で周方向に2列で径方向に並ぶ2列配置で配置されている。
【0051】
すなわち、軸方向ティース18に導線36を巻く際には、1列で軸方向に積層するのではなく、2列で軸方向に積層するように巻く。例えば、波状巻回の1周目は1層目の1列目に導線36を配置し、2周目は1層目の2列目に導線36を配置する。なお、軸方向スロット23における導線36の層方向(1層目、2層目が並ぶ方向)は、軸方向である。
【0052】
〔実施例2の作用効果〕
径方向外側に配されるティース(本実施例では軸方向ティース18)と径方向内側に配されるティース(本実施例では径方向ティース13)との数が同じである場合、径方向外側に配されるティース間隔の方が周方向に大きくなる。すなわち、スロットの周方向幅が大きくなる。このため、本実施例では、径方向外側に配される側のティースに巻回される導線36は、スロット内で2列配置とし、径方向内側に配される側のティースに巻回される導線36は、スロット内で1列配置として配置としている。
【0053】
これによれば、径方向外側のスロットでは2列配置とするため、導線36の層方向への高さが小さくなる。すなわち、本実施例のように、径方向外側のティースが軸方向ティース18である場合には、軸方向の巻線高さが小さくなる。
具体的には、実施例1のような1列配置にする場合と比べて、軸方向の巻線高さhが半分になる(図1、4参照)。
【0054】
〔変形例〕
本発明の実施態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、回転電機は3相交流モータであったが、本発明は、様々な電動機、発電機、およびモータジェネレータとして適用可能である。
また、実施例1、2では、アウターロータ型の3相交流モータであったが、インナーロータ型でもよい。
【0055】
また、実施例1、2では、各ロータ3A、3Bの極がセグメント25、31の脚25a、31aによる突極24、30として形成されていたが、磁気抵抗の変化による突極性を形成してもよい。
また、各セグメント25、31内に永久磁石40を埋め込んでもよい(図5参照)。
【0056】
また、実施例1、2では、各ロータ3A、3Bが、それぞれセグメント25、31によって形成されていたが、各ロータ3A、3Bをそれぞれ円環状鋼板によって形成してもよい。その際、例えば、切削加工等によってステータ2に対向する凸部を設けることで、突極が形成される。
【0057】
また、実施例1、2に記載の2重ロータよりも容易に製造でき、且つ、本実施例のステータを利用した回転電機として、以下の回転電機が考えられる(図6参照)。
【0058】
すなわち、径方向に突出する複数の径方向ティース13と、軸方向に突出する複数の軸方向ティース18とを有するステータコア6と、ステータコア6に巻装されるステータコイル7とを具備するステータ2と、径方向ティース13と対向する複数の径方向極と、軸方向ティース18と対向する複数の軸方向極を有する1つのロータ3とを備える。
【0059】
ステータコア6は、軸方向に突出する軸方向突出部6aと、径方向に突出する径方向突出部6bとを有している。そして、軸方向突出部6aは、径方向突出部6bの突出方向に突出する径方向ティース13を有しており、径方向突出部6bは、軸方向突出部6aの突出方向に突出する軸方向ティース18を有している。すなわち、ステータ2は実施例1または実施例2に記載のステータ2と同様の構成を有している(なお、図6では、実施例2に記載のステータ2を用いている)。
【0060】
また、ロータ3は、軸方向に延びる軸方向突出片3jと径方向に延びる径方向突出片3kとを有する断面L字状の円環体であって、軸方向突出片3jのステータ2側と径方向突出片3kのステータ2側にそれぞれ永久磁石50が固定されることで、極(永久磁石による磁極)が形成されている。
なお、この永久磁石50は径方向突出片3k及び軸方向突出片3jのそれぞれに埋め込まれていてもよい。
【0061】
また、ロータ3が永久磁石50を有さないリラクタンス型であってもよい。すなわち、径方向突出片3k及び軸方向突出片3jのそれぞれにステータ2側に突出する凸部を設けることで極(突極)を設けてもよい。また、磁気抵抗の変化による突極性を形成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 回転電機
2 ステータ
3 ロータ
3A 径方向ロータ
3B 軸方向ロータ
6 ステータコア
6a 軸方向突出部
6b 径方向突出部
7 ステータコイル
13 径方向ティース
15 径方向スロット
18 軸方向ティース
23 軸方向スロット
24 径方向突極
25 セグメント
25a 脚
30 軸方向突極
31 セグメント
31a 脚
7U U相コイル
35 連通スロット
36 導線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に突出する径方向ティースと軸方向に突出する軸方向ティースとを有するステータコア、およびこのステータコアに巻装されるステータコイルを具備するステータと、
前記径方向ティースと対向する径方向極を有する第1のロータと、
前記軸方向ティースと対向する軸方向極を有する第2のロータとを備えたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記径方向極は径方向に突出する突極として形成されており、
前記軸方向極は軸方向に突出する突極として形成されており、
周方向からみて、前記径方向極を形成する突極と前記軸方向極を形成する突極とは交差して配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記第1のロータは、径方向に突出する2つの脚を有する略コの字型のセグメントを周方向に複数並べることにより形成され、
前記第2のロータは、軸方向に突出する2つの脚を有する略コの字型のセグメントを周方向に複数並べることにより形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の回転電機において、
周方向において、前記径方向極同士の間に、前記軸方向極が配置されることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の回転電機において、
前記ステータコアは、軸方向に突出する軸方向突出部と、径方向に突出する径方向突出部とを有しており、
前記軸方向突出部は、前記径方向突出部の突出方向に突出する前記径方向ティースを有しており、
前記径方向突出部は、前記軸方向突出部の突出方向に突出する前記軸方向ティースを有していることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の回転電機において、
前記径方向ティース間に形成されるスロットである径方向スロットと、前記軸方向ティース間に形成されるスロットである軸方向スロットとは、周方向において同じ位置にあり、
前記径方向スロットと前記軸方向スロットとは径方向に連通して、径方向において連続して前記ステータコイルが配される連通スロットを形成していることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機において、
前記ステータコイルは多相コイルであって、
各相コイルを構成する導線は、前記連通スロットに収容される収容部と、前記連通スロットから突出するコイルエンド部とを交互に有するように周方向に波状に巻かれており、
前記径方向スロットに配される導線部分が、前記第1のロータに作用する前記ステータコイルをなし、
前記軸方向スロットに配される導線部分が、前記第2のロータに作用する前記ステータコイルをなしていることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の回転電機において、
前記径方向ティース及び前記軸方向ティースのうち、
径方向外側に配される側のティースに巻回される導線は、スロット内において2列で積層される2列配置で配置され、
径方向内側に配される側のティースに巻回される導線は、スロット内において1列で積層される1列配置で配置されていることを特徴とする回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−210100(P2012−210100A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74720(P2011−74720)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】