説明

回転電機

【課題】簡便な構成で安定して冷却パイプを固定する。
【解決手段】ステータ12の格納されるケーシング11と、ステータ12を冷却する冷媒を供給する冷却パイプ20とを備えるモータ100であって、冷却パイプ20は、その外形から突出し、ケーシング11に固定される締結フランジ25を有し、冷却パイプ20の長手方向の中心線54と締結フランジ25のケーシング11への固定点Fとは、冷却パイプ20をケーシング11に取り付けた状態で略水平面上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両に用いられるモータやモータジェネレータ等の回転電機は、冷媒を吹き掛けてステータの冷却を行うことが多い。この場合、冷媒を導入する開放端と、開放端の反対側の閉止端と、冷媒を噴出させる複数の噴出孔を有する冷却パイプをケーシングの中に設置し、開放端から流入した冷媒を噴出孔からステータコイルに向けて噴射させる方法が用いられる。冷却パイプは、その開放端側がステータケーシングに嵌り込み、閉止端側は弾性部材を介してステータケーシングの蓋に嵌るように構成され、ステータケーシングの蓋をステータケーシングに取り付けると冷却パイプは蓋とケーシングとによって軸方向に挟みこまれ、ケーシングの内部に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の噴射孔を設けた複数の管路に冷媒を分配する分配流路構造をステータコアの軸方向の両端面に設け、各管路の各噴出孔からステータコイルに冷媒を噴射する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−209160号公報
【特許文献2】特開平8−130856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動車両に搭載されたモータやモータジェネレータは、走行中に大きな振動を受けるため冷却パイプはケーシングにしっかりと固定しておくことが必要となる。しかし、特許文献1に記載された従来技術のように、冷却パイプをケーシングと蓋との間に挟み込んで固定する構造の場合、モータの温度等により冷却パイプを安定して固定することが難しいという問題がある。また、冷媒はステータコイルの温度分布に応じた流量分布とすることが求められるが、特許文献1に記載された従来技術の冷却パイプは、一端から冷媒が流入するので、噴出孔からの吹き出し流量を最適流量にできない場合があった。特許文献2に記載れた様な冷媒分配構造は、ステータの円周方向に複数の冷媒管路が配置されるので、ステータの円周方向の冷媒の噴射量を調整することはできるが、ステータの軸方向の冷媒の流量を最適流量にできない場合がある。また、特許文献2に記載された冷媒分配構造は、構造が複雑で重量も大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、簡便な構成で安定して冷却パイプを固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転電機は、ステータの格納されるケーシングと、前記ステータを冷却する冷媒を供給する冷却パイプと、を備える回転電機であって、前記冷却パイプは、その外形から突出し、前記ケーシングに固定される締結フランジを有し、前記冷却パイプの軸と前記締結フランジの前記ケーシングへの固定点とは、前記冷却パイプを前記ケーシングに取り付けた状態で略水平面上となっていること、を特徴とする。
【0008】
本発明の回転電機において、前記締結フランジは、前記冷却パイプの軸から前記ケーシングへの固定点の方向に向かって突出し、前記冷却パイプの軸と前記ケーシングへの固定点を結ぶ線に対して対称であること、としても好適であるし、前記冷却パイプは、前記締結フランジの表面近傍で2本の管部材を接合して構成されていること、としても好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、簡便な構成で安定して冷却パイプを固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態におけるモータの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるモータの冷却パイプの正面図と側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態におけるモータの冷却パイプの周方向の接合強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、本発明をモータに適用した場合について説明するが、本発明は、モータに限らず、モータジェネレータ、発電機など他の型式の回転電機に適用することができる。図1(a)に示す様に、本実施形態のモータ100は、ロータ13と、ステータ12の格納されるケーシング11と、ステータ12の上側にステータ12を冷却する冷媒を噴出させる噴出孔23が設けられた冷却パイプ20とを備えている。冷却パイプ20は、その外形から突出した締結フランジ25を備えており、この締結フランジ25を図1(b)に示すボルト31によってケーシング11の内面に突出した取り付けラグ15に固定することにより、ケーシング11に固定されている。冷却パイプ20は、その長手方向の中心線54が、ロータ13あるステータ12の長手方向の中心線51と平行で、ロータ13の上下方向の中心線52の上となるように固定されている。この様に、冷却パイプ20は締結フランジ25を介してボルト31によってケーシング11に固定されているので、特許文献1に記載された従来技よりも安定して冷却パイプ20をケーシング11に固定することができる。
【0012】
図1(b)、図1(c)に示す様に、締結フランジ25は、冷却パイプ20の長手方向の中心線54からボルト31の長手方向の中心線56の方向に向かって伸びる楕円形状の板であり、冷却パイプ20の長円方向の反対側にボルト31が嵌まる貫通孔27が設けられている。図2(a)、図2(b)に示す様に、締結フランジ25の各中心線54,56と直交方向に伸びる締結フランジ25の板厚方向の中心線57との各交点C,Fは、それぞれ冷却パイプ20の固定中心点、締結フランジ25のラグ15への固定点である。従って、締結フランジ25は、冷却パイプ20の長手方向の軸から固定点Fの方向に向かって突出している。
【0013】
図1(c)に示す様に、冷却パイプ20と締結フランジ25の固定点F或いはボルト31の中心或いは貫通孔27の中心とを結ぶ線54は、締結フランジ25の長手方向の中心線である。締結フランジ25は、この長手方向の中心線54に対して上下方向に対象となっている。また、図1(b),図1(c)に示す様に、この中心線54は、ロータの水平方向の中心線51と平行となっており、水平方向に伸びている。従って、冷却パイプ20の中心線54と、締結フランジ25の固定点Fとは水平方向の面上に位置している。
【0014】
図2(a)、図2(b)に示す様に、冷却パイプ20は、第1パイプ21と第2パイプ22とを接合部26で接合した構成となっている。図2(b)に示す様に、本実施形態では、接合部26は、締結フランジ25のラグ15の面側から第2パイプ22に少し寄った位置となっており、締結フランジ25は第1パイプ21と一体となるように成形或いは接合されている。このように、接合部26が締結フランジ25の表面近傍となっているので、接合部26の曲げ等に対する強度は、図3に示す様に、冷却パイプ20の周方向位置によって変化する。図1(c)に示す、水平方向に伸びる締結フランジ25の長手方向の中心線54の上で、固定点Fの側にある冷却パイプ20の点pの強度は、締結フランジ25の強度によって補強されるため、一番大きな強度Tを持つ。締結フランジ25の長手方向の中心線54の上で、固定点Fと反対側にある点rは、締結フランジ25によって補強される強度が小さく,その強度は一番小さい強度Tとなる。一方、冷却パイプ20の長手方向の中心線54を通るロータ12の垂直方向の中心線52の上にある点qと点sは、締結フランジ25がその水平方向に伸びる長手方向中心線54に対して上下対象となっていることから、冷却パイプ20の外側に張り出している締結フランジ25の幅が等しく、冷却パイプ20を補強する度合いが点pと点rとの中間程度で同一の大きさとなる。このため、冷却パイプ20の点qと点sの強度はそれぞれ中間の強度Tとなる。
【0015】
以上のように構成されたモータ100が電動車両に搭載され、走行する場合について説明する。電動車両が走行すると、モータ100は、図1に示す上下方向に大きく振動し、その振動によって冷却パイプ20も上下方向に振動する。冷却パイプ20は、振動によって締結フランジ25の長手方向の中心線54の周りに曲げ変形する。この際、冷却パイプ20の上側の点qと下側の点sとは、冷却パイプ20の上下方向の振動に応じて略同様の圧縮、引っ張りの応力が加わる。この応力は、冷却パイプ20の周方向でそれぞれ最大となる。一方、締結フランジ25の長手方向の中心線54の上にある点p、点rには、大きな応力が加わらない。このように、冷却パイプ20の強度が一番低くなる点rが水平方向となるように配置することによって点rに加わる応力を低減することができ、冷却パイプ20の接合部26を小型化することができる。
【0016】
もし、本実施形態と異なり、例えば、冷却パイプ20を締結フランジ25の長手方向中心線54が垂直方向となるようにケーシング11のラグ15に取り付けた場合、冷却パイプ20の点rは真下に位置することとなり、車両の上下方向の振動により冷却パイプ20に最も大きな応力が加わることとなってしまう。このため、例えば、締結フランジ25を突出方向と反対側にも一部突出させて冷却パイプ20の点r近傍の強度を増加させたり、接合部26の接合強度を大きくしたりして接合部26が損傷しないようにすることが必要となる。
【0017】
しかし、本実施形態では、締結フランジ25と固定点Fとを結ぶ中心線54が水平方向となるように冷却パイプ20をケーシング11に固定している。このため、先に述べたように、上下方向の振動による応力が強度の低い点rにはほとんど発生せず、冷却パイプ20を締結フランジ25の長手方向中心線54が垂直方向となるように配置した場合のように、冷却パイプ20の点r近傍の強度を大きくすることが必要なく、冷却パイプ20の接合部26を小型化することができる。また、接合部26の構造を簡略化することができるので、全体として冷却パイプ20を軽量化することができる。更に、車両が上下方向に振動した際に、冷却パイプ20の上側の点qと下側の点sとは、冷却パイプ20の上下方向の振動に応じて略同様の圧縮、引っ張りの応力が加わるが、この点qと点sに加わる応力が冷却パイプ20に加わる応力の最大値となる。この最大値が上下で同一であることから上下いずれか一方の強度を大きくしたり、追加の補強を行ったりすることなく冷却パイプ20を構成することができる。
【0018】
更に、本実施形態のように一端が閉止端となった第1パイプ21と第2パイプ22の2本のパイプを接合して1本の冷却パイプ20を構成することにより、図1に示す様に、冷却パイプ20の中央近傍に冷媒入口ノズル24を配置し、冷媒入口ノズル24から冷却パイプ20の左右に向かって冷媒を分流し、各噴射孔23からステータ12に冷媒を吹き掛けることができるので、ステータ12への冷媒の吹きかけ量の分布を最適分布に近くすることができ、効果的にステータ12を冷却することができる。
【0019】
以上の説明では、冷却パイプ20の接合部26は第2パイプ22の側で締結フランジ25の表面近傍として説明したが、接合部26は第1パイプ21の側で締結フランジ25の表面近傍に設け、締結フランジ25を第2パイプ22と一体構造とするようにしてもよい。また、締結フランジ25は、楕円形状の板として説明したが、冷却パイプ20の中心線54と固定点Fとが水平方向に配置されるものであれば、外径形状はどのような形状であってもよく、例えば、長円板や、矩形板のような形状であっても良い。更に、締結フランジ25をケーシング11のラグ15に固定する方法は、ボルト31に限られず、例えば、圧入ピン等によって固定する様にしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
11 ケーシング、12 ステータ、13 ロータ、15 ラグ、20 冷却パイプ、21 第1パイプ、22 第2パイプ、23 噴出孔、24 冷媒入口ノズル、25 締結フランジ、26 接合部、27 貫通孔、31 ボルト、51,52,54,56,57 中心線、100 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの格納されるケーシングと、
前記ステータを冷却する冷媒を供給する冷却パイプと、を備える回転電機であって、
前記冷却パイプは、その外形から突出し、前記ケーシングに固定される締結フランジを有し、
前記冷却パイプの軸と前記締結フランジの前記ケーシングへの固定点とは、前記冷却パイプを前記ケーシングに取り付けた状態で略水平面上となっていること、
を特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記締結フランジは、前記冷却パイプの軸から前記ケーシングへの固定点の方向に向かって突出し、前記冷却パイプの軸と前記ケーシングへの固定点を結ぶ線に対して対称であること、
を特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記冷却パイプは、前記締結フランジの表面近傍で2本の管部材を接合して構成されていること、
を特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−90351(P2013−90351A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225549(P2011−225549)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】