固体偏光源による立体投射
立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、(a)(i)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、(ii)その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏向軸を固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる偏向回転器、並びに(iii)その偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、(b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、(c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体視用ディジタル画像プロジェクタ、特に固体レーザ光源等の偏光源で立体視用画像を発生させるディジタル映写機及び映写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D(三次元)画像即ち立体として知覚される画像を表示することができ、従って広い会場で観客に対し豊かな視覚的体験を提供することが可能な高画質投射システムに対する関心が、ますます強まってきている。映画館、テーマパーク等のスペースで3D画像投射を実施しているエンタテインメント企業も数多くあるが、それらの企業で3D投射媒体として用いられているのは主としてフィルムである。これは、左目用プロジェクタに左目用のフィルム、右目用プロジェクタに右目用のフィルムを装着し、左目用画像と右目用画像を直交偏光対で同時投射することで、3D画像を発生させる投射システムである。その直交偏光対のうち一方の偏光が左目への画像提示、それに直交する他方の偏光が右目への画像提示に使用される。観客がその直交偏光対による画像を見るには、左目用の偏光を左目には通すが右目には通さず、また右目用の偏光を右目には通すが左目には通さない、という仕組みの直交偏向眼鏡を装用する必要がある。
【0003】
映画産業がディジタル映画への傾斜を強めるなか、Imax社を含む幾つかの企業では、高画質3D画像を提供可能なダブルプロジェクタ型投射システムの開発が続けられている。しかしながら、より広く検討されているのは、従来型プロジェクタを改造して3D投射を実行できるようにする、という策である。
【0004】
従来型プロジェクタを改造してカラー映画のディジタル投射を実現しようという試みのなかで、最も見込みがありそうなのは、その画像発生デバイスとして空間光変調器(SLM)を用いるものである。SLMとして使用できるデバイスには大別して二種類がある。そのうち第1のものはディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であり、米国テキサス州ダラス所在の企業Texas Instruments,Inc.が開発したDLP(登録商標;ディジタル光プロセッサの意;以下注記省略)がその一例である。DLPは既に多くのディジタル投射システムで存分に使用されている。DLPに関する特許文献は、特許文献1〜3(発明者:いずれもHornbeck)を初めとして、数多く発行されている。
【0005】
図1に、そのSLMとしてDLPを用いたプロジェクタ10の概略ブロック構成を示す。光源12は無偏向多色光を輻射しプリズムアセンブリ14、例えばフィリップス(登録商標;以下注記省略)プリズムに入射させる。アセンブリ14は、その入射光を波長域に従いレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の各色成分に分解し、SLM20r、20g及び20bのうち対応するものへと出射させる。アセンブリ14は、個々のSLM20r、20g及び20bで変調され入射されてきた光を再結合させ、得られた無偏光を投射レンズ29へと送り込む。このレンズ29は、映写スクリーン等、適当な表示面上にその無偏光を投射する。
【0006】
こうしたDLP利用型プロジェクタは、潜在的に、デスクトップから大画面映画館に至る様々な投射用途にて要求される光学的スループット、コントラスト比及び色域を実現可能なものであるが、反面で固有の解像度限界があり、その解像度が2148×1080画素を上回るものはまだ現れていない。更に、DLPを使用すると部材コストやシステム構築コストが嵩むため、ディジタル映写機のなかでもハイエンドのものでしか、DLPを利用した構成を採ることができない。また、フィリップスプリズム等の結合用プリズムには価格、サイズ、重量且つ複雑さの問題もあり、そのことも厳しい足枷となっている。加えて、輝度条件を満足させるため長い作動距離を有する比較的高速な投射レンズが必要であることも、この種の装置の普及や利用に否定的な影響をもたらしている。
【0007】
ディジタルプロジェクタ向けのSLMとしては第2に液晶デバイス(LCD)がある。LCDによる画像発生の仕組みは、一群の画素からなる画像が発生するよう画素毎に入射光の偏向状態を変調する、というものである。ハイエンドディジタル映写機用SLMとしてのLCDには幾つかの長所がある。例えば、デバイスサイズが比較的大きい、デバイス製造歩留まりが比較的高い、高解像度のデバイスを製造しやすい等の点である。ソニー株式会社や日本ビクター株式会社からは4096×2160画素の解像度を有するデバイスも提供されている。LCDタイプのSLMを使用する電子式プロジェクタについては特許文献4(発明者:Shimomura et al.)等の記載も参照されたい。なかでもLCOS(商標;液晶オンシリコンの意;以下注記省略)型のデバイスは、大画面プロジェクタ向けのデバイスとして特に期待されている。しかしながら、LCDを使用し高輝度投射を行おうとすると、その形成素材に厳しい熱負荷がかかって偏向品質が損なわれることが多く、ディジタル映画で求められる高いクオリティ、とりわけ色やコントラストに関するものを継続的に充足させるのが難しい。
【0008】
更に、これら既存のマイクロディスプレイ(DLPやLCOS)利用型プロジェクタで3D画像を発生させる手法としては、従来から、次の二手法のうちいずれかで左目用画像と右目用画像を分ける手法が採用されている。それらのうち劣勢なのはDolby Laboratoriesで採用されている手法であり、この手法では特許文献5(発明者:Maximus et al.)等に記載の色空間分離法が使用されている。これは、白色照光システム内に配したフィルタを用い、フレーム期間内の対応する部分期間内で、個々の基本色成分の一部スペクトラムを遮断させる、という手法である。例えば、左目用部分期間ではR,G,B各波長域内スペクトラム対のうち短波長寄りスペクトラムを間引き、それに続く右目用部分期間では長波長寄りスペクトラムを間引く。次いで、こうして色調整を施した立体視用画像の左目用成分を左目用SLM、右目用成分を右目用SLMに供給する。観客がこれを見るには、それぞれRGBの三色を含む二種類のスペクトラム群のうち左目用(右目用)のものを左目側(右目側)に通す仕組みのフィルタ眼鏡を装用する必要がある。従って、この色空間分離法を利用することで、偏向利用法に比し幾つかの点で優れたプロジェクタを実現することができる。例えば、高価な偏向保持性スクリーンが要らないため、より多様なスクリーンに画像を投射することができる。その反面で短所もある。使用できるフィルタ眼鏡が高価であるし、その視認画質が向きの変化、首振り及び首傾げで損なわれうる。色空間の調整も難しく、フィルタリングによる光損失が大きいため、光源出射光が強くないと画像が暗くなってしまう。
【0009】
二種類目の立体視用画像発生手法は偏光を利用するものである。その一例は、特許文献6(発明者:Svardal et al.)に記載の通り、直交偏光対を形成する二種類の偏光を互いに別のSLMに送り、そのSLM経由で同時に投射させるものである。観客は偏向眼鏡、即ちある偏光透過軸を有する左目用フィルタとそれに直交する偏光透過軸を有する右目用フィルタを備えた眼鏡を装用する必要がある。この手法は光の利用効率が高い手法であるが、その反面で装置コストが嵩みがちな手法でもある。その色成分毎にSLMを分けることが必要な設計のプロジェクタでは特にそうである。
【0010】
他の例は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ビバリーヒルズ所在のReal−D社で商品化されているものである。この手法は、一方から他方へまたその逆へとその偏向状態が交番的に高速スイッチングされる偏光を変調するよう、従来型のプロジェクタを変形する、という手法である。例えば、DLP利用型プロジェクタの出射光路上(図1なら破線位置16)に偏向器及び無色偏向スイッチャを配置することで、この手法を実施することができる。偏向器を設けるのは、DLPのデバイスパッケージに設けられている入射用の窓で応力誘起複屈折による減偏向が生じ、入射された光の偏向状態が不可避的に乱されるからである。その下流に配する無色偏向スイッチャとしては、例えば特許文献7(発明者:Robinson et al.)に記載のスイッチャを使用することができる。この種のスイッチャは、相直交する二偏向状態間(例えば直線偏向状態)で偏光を交番的に回転させるので、偏向眼鏡を装用している観客の左目と右目に、それぞれ別々の画像を見せることができる。
【0011】
Real−D社では、以前、左旋及び右旋円偏光が用いられていた。それ用の偏向眼鏡としては、1/4波長リターダに偏向器を付加した構成のもの、即ち円偏光を直線偏光に戻してから一方の偏向状態に係る光を遮断するものが用いられていた。この構成なら首傾げの影響を受けにくく、使用する無色偏向スイッチャも安価に製造できそうである。ただ、そのための偏向眼鏡は、偏向器だけの偏向眼鏡に比べ高価になってしまう。また、これに限らず偏向を利用するシステムでは、表示スクリーンへの入射による画像搬送光の偏向状態変化を抑えるため、表示スクリーンとしてシルバースクリーンを使用しなければならないのが普通である。更に、偏光を使用しているため出射光が半分失われることから、こうした微細電気機械構造(MEMS)利用型システムでは大きな光損失が発生する。大きな偏向スイッチャを用いることによるコスト増や、それをプロジェクタ前部に整列実装するための部材を用いることによるコスト増も発生する。様々なプロジェクタの改造に対応可能とするため、このシステムには柔軟性乃至融通性も求められる。また、可視スペクトルのほぼ全域で波長によらずある同じ量の光遅延が生じるようにするため、偏向スイッチャの構成も複雑とならざるを得ない。仮に、こうした特性を好適に提供することができなかったとしたら、許容できないほどのクロストーク(届けたい方の目とは異なる側の目に偏光が届く現象)が発生してしまうこととなりかねない。そうしたクロストークが発生すると、立体視効果が薄れ、場合によっては観客にとって目障りな画像になってしまう。
【0012】
従って、比べてみた場合、LCOS利用型プロジェクタの方が、多くの構成で出射光が既に偏向されている点で長じているといえる。
【0013】
照光効率については、ラグランジュの不変量即ちエタンデュに関する未解決の問題がある。光学分野で周知の通り、エタンデュはその光学系で取り扱える光量に関わる量である。エタンデュは、定性的にはその値が大きいほど画像が明るくなりやすく、定量的には二種類の数値の積、即ち画像面積と数値開口(NA値)の積に比例する。例えば、図2に示す如く光源12、光学系18及びSLM20からなる簡素な照光装置では、光源エタンデュが光源面積A1とその見込み角θ1の積で与えられる。良好にマッチングしている光学系では、その光源エタンデュと、SLM面積A2とその見込み角θ2の積たるSLMエタンデュとが、等しい値になる。光源面積A1をできるだけ有効に活用しできるだけ多くの光をそこから得るようにすれば画像の明るさが増すので、一般則としては、光源エタンデュとSLMエタンデュを最大限にマッチングさせることが有益であるといえる。
【0014】
光源から光学系にもたらされる光の量を増すには、NA値を増して光源エタンデュを大きくすればよい。同様に、光源側画像面積を大きくとり発光面積を増しても、光源エタンデュは大きくなる。大きな光源エタンデュを使い切るにはSLMエタンデュをそれ以上の値にしなければならないが、そうすると画像サイズが大きくなるため更に高価な光学系になってしまう。LCOS、DLP等、シリコン基板を使用するデバイスでは、サイズが大きいほど欠陥が生じやすくなるためことにそうである。一般論としても、エタンデュが大きいほど光学系は複雑且つ高価になる。また、特許文献8(発明者:Sprotbery et al.)等で概述されている通り、既存手法では、大きなエタンデュに相応しく光学系内レンズ部材を設計する必要がある。これは、光学系内で集めねばならない光の光源側画像面積が、RGB各色光路間でSLM面積を合計した面積となり、その面積が最終的に形成されるカラー画像の面積の3倍に達するからである。即ち、特許文献8等に記載の手法による構成では、異なる光路を辿るRGB各色光を集めねばならないため、光学部品で扱われる画像面積ひいてはエタンデュがかなり大きくなる。更に、最終的に形成されるカラー画像のそれに比し3倍もの面積からの光を取り扱うにもかかわらず、特許文献8等に記載の構成では、個々の光路を通る光の量が各色合計での光量に比したった1/3であるため、輝度向上のメリットを何ら享受することができない。
【0015】
また、光源エタンデュとSLMエタンデュを整合させないと効率が低下する。これは、整合が不十分だと、光学系に達する光が少なくてSLMに十分な光量を送れないか、SLMに送ろうとして発生させた光が余ってしまい事実上捨てられてしまうか、いずれかになるためである。
【0016】
いずれにせよ、LCD又はDLPを利用する投射システムの開発者は、ディジタル映写に相応しい輝度を許容可能なシステムコストで実現する、という課題に長く悩まされてきた。これは、偏光が必要なLCD利用型投射システムでは、効率不足やエタンデュ過剰が生じがちで、偏向回復技術を用いてもそれによる効率低下を抑えるのが難しいからである。また、偏光無しでも実施でき幾分効率的であると判明しているDLP利用型投射システムでも、その光源がまだまだ高価且つ短命で、光学系がまだまだ高価であるため、従来型映写機と競えるほど安価にすることができないからである。
【0017】
ハイエンドな従来型フィルムプロジェクタに劣らないディジタルプロジェクタであり、電子映画乃至ディジタル映画の名に値するものであると認められるには、在来機器に比肩する明るさで映写する機能がなければならない。達成すべき明るさはスクリーンの大きさ次第であり、5000ルーメンから40000ルーメン超までの範囲内で様々な値を採りうる。例えば、普通の映画館で使用されている対角長=40フィートオーダのスクリーンなら、概ね10000ルーメンの明るさでの投射が必要になる(1フィート=約0.3m)。この重要な明るさ条件に加え、ディジタルプロジェクタには、高い解像度(2048×1080画素)、高いコントラスト比(約2000:1)及び広い色域の実現も求められる。
【0018】
既存のディジタル映写機のなかには既にこの性能水準に達しているものもある。しかし、装置コストや稼働コストの高さは耐え難いほどである。上掲の諸条件を満たす映写機であれば、1台の価格が一般に50000米ドル以上にもなる。その光源として高出力のキセノンアークランプを使用するので、500〜2000時間程度の間隔でランプ交換を行う必要があり、通常、その交換のたびに1000米ドル以上の費用がかかる。更に、キセノンランプのエタンデュは大きいので、そのランプから輻射光を集めて投射する光学系を相対的に高速にしなければならず、そのこともコストや複雑さ上の大きな問題となっている。
【0019】
また、DLP型やLCOS−LCD型のSLMに共通する問題点として、固体光源、特にレーザ光源との相性が悪いという問題がある。固体光源は、他種光源に比べスペクトル純度が高く、高い輝度レベルを実現可能な光源であるが、そうした長所を存分に活かすには利用形態を工夫する必要がある。有色光源の輻射光を、既存のディジタルプロジェクタで用いられている既存の手法及び装置で調光、方向転換及び結合するのでは、レーザ光源の長所をうまく活かすことができない。
【0020】
固体レーザ光源は、エタンデュ、寿命、並びにスペクトル及び輝度の全般的安定性に長じている。近年は、ディジタル映画で許容可能なコストで、十分な輝度の可視光を輻射しうるようにもなっている。更に最近では、光源として好適に使用できそうなレーザ光源アレイが市販され始めている。但し、その明るさがまだまだ不十分であるため、個々の色成分毎に、所要の輝度が得られるよう9個以上のアレイから光を集めて結合させる必要がある。
【0021】
レーザ光源アレイのうちプロジェクタで利用できそうなものとしては、各種のVCSEL(垂直共振面発光レーザ)アレイ、例えばVECSEL(垂直外部共振器面発光レーザ)アレイやその拡張版に当たるNECSEL(商標;ノバラックス版外部共振器面発光レーザの意;以下注記省略)アレイ等がある。NECSELアレイは、米国カリフォルニア州サニーベール所在のNovalux社から入手することができる。しかしながら、これらのデバイスを従来方法で使用すると、様々な問題が発生することが判っている。その一つはデバイス歩留まりに関する問題である。例えば、主として部品の繊細さ並びにその熱的及び外装的問題により幅広にするのが難しいため、市販のVECSELアレイは細長くなっている。通常、VECSELアレイにおける発光部品の列数は2列だけであり、3列以上に並べようとすると歩留まりが劇的に低下する。この問題に加え、既存のVECSELアレイには電力供給や放熱の問題もある。これは、使用されるレーザ光源が大出力なためである。例えば、NECSELアレイではレーザ光源を二列に並べるのであるが、レーザ光源を一列に並べただけのデバイスでも、3W超という実用的な量の光を得ることができる。ただ、そのためにはかなりの量の電流が必要であり、発光に寄与しなかった分の電流による熱負荷もかなりのものとなる。安定的に温度を保持できないと、その寿命やビーム品質が大きく損なわれてしまう。
【0022】
更に、レーザ光源から投射システムへの輻射光供給に関しても、従来技術では的確に対処できない問題が存在している。例えば、多くの映画館で必要とされる10000ルーメン程度の明るさをNovalux社のNECSELアレイで実現するには、レーザ光源が2列×24個並ぶ品を、各色成分毎に約9個ずつ用いることが必要になる。こうした光源は、その信号配線及び電源結線と共に、主要な光学系から離しておかねばならない。温度変化に敏感な光学系に熱が伝わりプロジェクタ基幹部の性能が損なわれることを、防ぐためである。無論、在来の端面発光レーザダイオード等、他種レーザ光源を使用することもできる。しかし、そうした光源はアレイ状に実装するのが更に難しく、高い輝度で輻射させると寿命が縮まるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4441791号明細書
【特許文献2】米国特許第5535047号明細書
【特許文献3】米国特許第5600383号明細書
【特許文献4】米国特許第5808795号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0127121号明細書(A1)
【特許文献6】米国特許第6793341号明細書(B2)
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0291053号明細書(A1)
【特許文献8】米国特許第5907437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このように、映画向け又はそれに近い性能があり映画向け又はそれに近い明るさで立体視用カラー画像を表示可能な投射システムは、既存の手法ではこれまでのところ実現されていない。そのため、立体視用変調用の偏光を提供可能で、しかもハイエンド投射システムに求められる水準の明るさを実現可能な照光技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願では、DLP等のMEMS利用型ディジタルSLMやそれに類するマイクロディスプレイ型SLMを用いた立体投射に当たり生じる問題への対策として、(a)(i)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、(ii)その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏向軸を固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる偏向回転器、並びに(iii)その偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式のSLMを、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、(b)SLM上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、(c)SLMにて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタを提案する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、照光用の光源と変調器との間で好適にエタンデュをマッチングさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】別々の光路を辿った各色光をプリズムで結合させる仕組みの従来型プロジェクタを示す概略ブロック図である。
【図2】光学系におけるエタンデュの概念を示す図である。
【図3A】光導波路開口面に対する固体光源アレイの面積占有率の例を示す端面図である。
【図3B】その別例を示す端面図である。
【図4】立体画像投射用輻射光結合器を用いたプロジェクタの全体構成を示す概略ブロック図である。
【図5】複数個の固体光源アレイから来る偏光を相互結合させて共通の照光軸上に送る仕組みの例を示す概略縦断面図である。
【図6】その仕組みの斜視図である。
【図7A】複数個の固体光源アレイを使用する構成に関し、それらのアレイの輻射光のうちある偏向状態のものを偏光ビームスプリッタ(PBS)で選び送り出す仕組みを示す概略縦断面図である。
【図7B】それと直交する偏向状態のものをPBSで選び送り出している状態を示す概略縦断面図である。
【図8】立体視用画像表示時偏向状態交番タイミングを示すタイミングチャートである。
【図9A】複数個の固体光源アレイを使用する構成に関し、それらのアレイの輻射光を光転向プリズムで結合させる仕組みを示す概略縦断面図である。
【図9B】図9Aに示した光転向プリズムの斜視図である。
【図10】別の構成に係る光転向プリズムを示す概略縦断面図である。
【図11】固体光源アレイ群毎に都合2個の光転向プリズムを設け、それらを介し互いに別々の偏向状態の偏光を出射する仕組みを示す概略縦断面図である。
【図12】その両側から光を入射可能な光転向プリズムを用いる構成を示す概略縦断面図である。
【図13】図12に示した光転向プリズムを偏向状態毎に備える照光装置を示す概略縦断面図である。
【図14】図12に示した光転向プリズムを用い偏光を投射するプロジェクタの例(光導波路無し)を示す概略図である。
【図15】図14に示したものに色帯域別電子偏向回転器群を付加した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【図16】図14に示したものに広帯域電子偏向回転器を付加した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【図17】ある単一の画素に係る変調部材の枢動軸を示す斜視図である。
【図18】直交偏光対を構成する偏光を交番的に選択して出射させるシャッタシステムを示す概略図である。
【図19A】片側からの光を反射させ他側からの光を透過させるシャッタの例を示す正面図である。
【図19B】その側面図である。
【図20】二種類の相直交する偏向状態へと光を交番的に変換する光回収システムの例を示す概略図である。
【図21】図20に示した光回収システムの別例を示す図である。
【図22】図21に示した光回収システムでもたらされる交番的な直交偏光対を利用した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、別紙図面を参照し本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば、本発明の実施形態に係る図面と併せ以下の説明を参照することによって、上記以外のものも含め本発明の諸目的、構成及び効果についてより好適に理解することができよう。以下の説明及び図示は、別紙特許請求の範囲と違い本発明の必須構成要素を特定的且つ一意的に表現したものではないが、本発明を理解する上では有益なものである。
【0029】
また、以下の説明では本発明に係る装置を構成し又はそれと密接に連携する部材を主としてとり上げており、いわゆる当業者にとり周知の諸形態を採りうる部材については具体的な説明や図示を省略してある。更に、別紙図面は本発明の基本的な仕組みを示すためのものであり、実物の寸法で又はそれを均等に縮尺して示したものではない。例えば、本発明で使用される固体レーザ光源アレイ等は小さな部材であるので、その構造、形状、動作機構等をいくらか強調して描いてある。
【0030】
本発明は、立体視用画像表示システムに適する優れた明るさを達成可能な形態で実施することができる。例えば、ある偏向状態に係るレーザ光源と、それに直交する別の偏向状態に係るレーザ光源とで、交番的に照光する構成である。レーザ光源は、その取り外しが容易でモジュール単位換装が可能なアセンブリにすることができる。熱負荷を軽減する手段を有する形態にすることもできるので、偏光利用型プロジェクタ内の光学部品で往々にして生じる熱誘起応力複屈折を抑えることができる。そして、VECSELアレイ等の固体光源アレイに発する偏光に特有な偏向状態を、有効に活用する形態にすることもできる。
【0031】
本発明で採用可能な熱負荷軽減手段の一つは、光源・SLM間を分離する光導波路である。複数個の固体光源アレイを偏向保持性の光導波路につなぎ、その光導波路を介し輻射光をSLMに供給する、といった仕組みであるので、光源対光導波路界面の形状をうまく設計することで、光導波路出射光をSLMのアスペクト比と好適にマッチングさせることができる。具体的には、SLMによる光導波路側開口の面積占有率を十分に高める(僅かな隙間しか生じないようにする)ことで、好適な値のエタンデュを確保することができ、ひいては照光用光学系に課される速度条件を緩和することができる。例えば図3Aに示す例では、光導波路52の端面上に存する入射開口が、その入射開口上にあるかのように適宜縮尺を調整して描いた固体光源アレイ44に対し余剰している(入射開口の面積占有率が低い)ため、導波路52のSLM側端部におけるエタンデュのマッチングが貧弱になりやすい。これに対し、図3Bに示す例では、導波路52の入射開口を従来の円形から変形させることで、アレイ44のアスペクト比と導波路52のそれとを好適にマッチングさせている。図3Aや図3Bには図示しないが、後により詳細に説明する要領でアレイ44を複数個組み合わせてより大規模なアレイを形成するようにしてもよい。
【0032】
その光導波路52としては光ファイバを使用することができる。特に方形コア光ファイバが望ましい。例えば、フィンランド共和国ロハヤ所在のLiekki社で製造されている方形コアファイバを使用すれば、光源のアスペクト比に対し導波路52のそれを好適にマッチングさせることができる。
【0033】
図4に、本発明の諸実施形態に係るプロジェクタ10の基本構成を模式的に示す。この図を参照することで、本発明に係る装置及び方法が稼働する大まかな仕組みを好適にご理解頂けるであろう。図中3個示されている光変調アセンブリ40r,40g,40bは、輻射光結合器42から輻射される基本色光(RGB各色光)のうち対応する色の光を変調するアセンブリであり、光をレンズ50越しに偏向保持性の光導波路52に送り、その導波路52の出射端からの出射光をレンズ54越しにインテグレータ51に送り、その光を更にSLM60に送る構成を有している。レンズ50を省略することや、導波路52を省略しレンズ50の出射光をレンズ54に入射させることも可能である。インテグレータ51としてはフライアイインテグレータやインテグレーティングバーを使用することができる。SLM60はMEMSデバイスであり、DLPその他のMEMS型反射式SLMを初め、反射又は屈折により光を変調する様々なMEMSデバイスをSLM60として使用することができる。この種のデバイスには“偏向状態ニュートラル”、即ち画素の偏向状態が変化しないためどの画素でも光変調が生じない、という特徴がある。とはいえ、MEMSデバイス表面での反射の際にいずれかの画素で偶発的な偏向状態変化が生じる可能性はあり、その可能性はその面への入射角に依存している。これは不要な偏向現象につながるものであるが、後述の如くそのMEMS型SLMへの光入射角を調整することで抑えることができる。また、本発明を実施する際には、このSLM60で、相直交する二種類の偏向状態に係る直交偏光対の入射を受け、相直交する二種類の偏向状態に係る直交偏光対を出射することができねばならない。入射時偏向状態に対し出射時偏向状態が回転していてもかまわないが、入射時偏向状態と出射時偏向状態との対応関係が定まっていなければならない。
【0034】
投射光学系70は変調された光を表示面80上に投射する。その周囲を括る破線で図示されていることからも判る通り、この光学系70は多様な形態で実施することができる。また、図示した全体構成自体、本発明の諸実施形態で使用されうるとはいえ、その輻射光結合器42等は実施形態毎に異なる構成となりうるものである。光変調アセンブリ40r,40g,40bからの出射光を光導波路52抜きでインテグレータ51、ひいては偏向状態ニュートラルなSLM60や投射光学系(例えばレンズ)70に送るよう、構成することもできる。
【0035】
図5に、複数個の固体光源アレイ44,44’を組み合わせてより大規模なアレイを形成する手法の例を示す。図6に示したのは図5に示したアレイの斜視外観である。図5に示す如く、この例では、付加的なアレイ44’の光軸がアレイ44の光軸に対し平行になるよう、ひいては図3Bの如き端面形状が生じるよう、1個又は複数個のミラー46が随所に配置されている。積層方向に沿った固体光源アレイの個数は、熱的な問題による制限や間隔上の制限に従っている。
【0036】
図7A及び図7Bに、図5及び図6に示した手法の変形例として、偏向状態が異なる複数種類の偏光を扱えるようにした例を示す。図8に示したのはその作動タイミングである。図8中のタイミングから読み取れるように、光変調アセンブリ40r,40g,40bのいずれでも、図4中の同じSLM60に送られる光を相直交する二偏向状態間で迅速に交番させ、左目用画像と右目用画像を然るべく発生させることができる。これは、二組の固体光源アレイ44a,44bを備えているからである。図示例では、アレイ44a,44bとして固体偏向レーザ光源アレイを使用している。それらのアレイ44a,44bによる直交偏光対の生成には半波長板64等の部材が使用されており、その部材は図7A及び図7Bに示す如くアレイ44a,44bの群のうち一方に設けられている。照光サイクル中の一方の半サイクルでは、図7Aに示す如く一方の群のアレイ44aが作動し、その輻射光がPBS62で反射される。その半サイクルに対し交番的に到来する他方の半サイクルでは、図7Bに示す如く他方の群のアレイ44bが作動し、その輻射光がPBS62を透過していく。更に、この構成で立体視用でない画像を表示させることも可能である。その際は、両群のアレイ44a,44bを併用してより明るい画像を発生させてもよいし、その寿命がバランスするようアレイ44a,44bを半分のパワーで作動させてもよい。
【0037】
この例によれば、どの偏向状態の光も同じ照光軸上に送られているのに、図5を参照して前述した単一チャネルでのエタンデュと同じ値に、そのエタンデュを保つことが可能である。従って、非立体視用画像を表示させる際に、その偏向状態が異なる二種類の光を併用し、ほぼ二倍の輝度とすることができる。しかし、立体視用画像を表示させる際の実質的な明るさは、個々の瞬間で見ると片側の光源しか使用されないため図5でのそれとほぼ同じ値に留まる。また、その構造が単純であり、交番的な直交偏光対をSLM60に対し供給できるという長所があるものの、この構成では、レーザ光源を所定周波数で乱れなくオンオフさせること、ひいては一方の偏向状態に係る固体光源アレイのターンオンタイミングと他方の偏向状態に係る固体光源アレイのターンオフタイミングとを揃えることが求められる。昨今のディジタル映画の場合、当該所要周波数は(設定によって異なるものの)120Hzか144Hz、即ち多くのレーザ光源が熱的な不安定性を呈する周波数であり、この周波数付近でレーザ光源をオンオフさせると不規則なパワーばらつきが発生しやすい。従って、SLMに向かっている光又はSLMを通過した光の偏向状態を直接的でない手段(即ち光源側での変調以外の手段)で操作し、交番的な直交偏光対を発生させることが、必要になる場合もあろう。
【0038】
図9A(縦断面図)及び図9B(斜視図)に、4個の固体光源アレイ44から輻射されるレーザ光を結合させて狭い面内に集めるようにした例を示す。この例では、光転向プリズム30が、アレイ44からD1方向に輻射される光を受け入れる入射面32や、その輻射方向D1に対しほぼ直交するD2方向へと光を方向変換させる転向面36を有しており、その転向面36には複数個の光転向ファセット38が形成されている。光転向ファセット38は、アレイ44からの輻射光を内部全反射(TIR)させうるよう、輻射方向D1に対しある傾斜角を以て形成されている。光転向ファセット38は、更に、出射光路が狭まりビーム径が細くなるよう、図9A及び図9Bに示す如く互いに段差を付けて形成されている。そして、アレイ44上には、図9Bに示す如く、その長手方向Lに沿って複数個のレーザ光源26が配列されており、光転向ファセット38を初め転向面36上に形成されている種々のファセットも、これと同じ方向L沿いに延びている。
【0039】
図10に、この例に対する様々な変形例のうち一つの縦断面を示す。この例では、1本の光転向ファセット38でレーザ光源26複数列分の光が同時に方向転換されるように、光転向プリズム30上のファセット38が寸法設定されている。入射面32を輻射方向D1に対し直交させる必要はないので、直交入射になる位置から固体光源アレイ44が若干ずれていてもかまわない。但し、プリズム30の屈折率nを考慮に入れる必要がある。
【0040】
図11に、偏向状態を交番させうるよう且つ明るさが高まるよう、光転向プリズム30を複数個設けた例の概略ブロック構成を示す。この例では、先に図7A及び図7Bを参照して説明した通り、固体光源アレイ44a,44b側からの輻射光をPBS62に送って交番的な直交偏光対を発生させ、それをSLM60に送って立体視用画像を発生させている。
【0041】
図12に、輻射光結合器42内の光転向プリズム30を工夫し、図9A〜図10に示した固体光源アレイ使用型の構成に比べコンパクトな結合器42にした例の縦断面を示す。この例では、プリズム30の両側に固体光源アレイ44が配置されており、片側のアレイ44からの輻射方向D1は他側のアレイ44からの輻射方向D1’に対して逆向きになっている。プリズム30にはそれらの輻射光を受け入れうるよう転向面36が2個形成されており、そのどちらにも、ファセットとして光転向ファセット38及び入射ファセット28の二種類が形成されている。入射ファセット28は、対応するアレイ44からの輻射方向に対し直交するよう形成されている。この例では、抗反射コーティング面による反射で僅かな残留光が個々のレーザ光源26内に戻るため(再帰反射)、多々あるアレイ44をプリズム30に対しより容易に位置決めすることができる。その再帰反射は、微弱な外部共振器を発生させて光源26にモード不安定性をもたらす手段としても有用である。そうしたモードホッピングは他の用途ならノイズと見なされるものだが投射の場合は役に立つ。光源26のコヒーレンシ(及び光源26間コヒーレンシ)を緩和し、目立ったスペックルが表示面上に現れることを防いでくれるからである。加えて、この両面型の結合器42では、その内部に存する光源26の個数が多く、しかもその光源26による輻射光同士の隙間が別のアレイ上の光源26による輻射光で補間されるため、光同士の空間的混合度が更に高まる。このことも、スペックルの発生確率を下げ光学系をより均質化するのに役立っている。図13に、直交偏光対がPBS62越しにレンズ50に送られるようこのプリズム30を対で使用した例を示す。
【0042】
また、プリズム30に対するレーザ光源アレイ44の向きをこうした向きにするのが望ましいとはいえ、プリズム30の入射面32や出射面34に対する光の入射方向がその面に直交してなくても、アレイ44の輻射光同士を結合させることは可能である。必要なのは、寧ろ、方向転換された光が面34を通りプリズム30を出て行くときに、それらの光が互いにほぼ平行なビームを形成していることである。これを実現するには幾つかの事項を注意深く考慮しなければならない。例えば、各側のアレイ44から各面の入射ファセット28への入射角(その大きさが同じであるとは限らない)と、そのプリズム30による屈折角(素材の屈折率で決まる)との組合せを考慮すべきである。同様に、各面の光転向ファセット38における反射角(同じく面間で同一であるとは限らない)や、それとそのプリズム30による屈折角との組合せを考慮しないと、面34から出て行く光のビームが互いに平行にならないことがあり得る。
【0043】
図14に、上掲の光転向プリズム30を色成分毎に設けたプロジェクタ10の例を模式的なブロック図で示す。この例では、どの光変調アセンブリ40r,40g,40bにも、図13に倣い一対のプリズム30及び偏向選択性光送出部材が設けられている。それらのアセンブリ40r,40g,40bからは、まずは一方のプリズム30を通った光、次いで他方のプリズム30を通った光という要領で光が出射されてくる。その光はPBS62(及び図示しない偏向保持性の光導波路52)を介し、レンズ50更にはインテグレータ51へと供給されている。SLM60はDMD等のMEMSデバイスであり、入射光における偏向状態の直交関係が出射光でも保たれるようにその入射光を変調する。その変調が施された光、例えば個々のマイクロミラーで角度変調された光は、この例では厚膜被覆面68に送られている。この面68は、変調された光がダイクロイック結合器82に送られるよう、その入射角に応じ光を反射し又は透過させる。その結合器82は、その波長に応じ光を反射し又は透過させるダイクロイック面84を複数個並べた構成である。この結合器82では、アセンブリ40r,40g,40bで変調された光を互いに結合させ、投射光学系70を通る共通の光軸上に送出する。また、光源・SLM60間に光導波路52を設けると伝搬中に光の偏向状態が劣化しうるので、導波路52無しの構成にした方がよい。その構成では、偏向状態が揃うため、レンズレットアレイを使用し光を好適にユニフォマイズすることができるが、導波路52無しの構成では、導波路52を設けることで得られるメリット、例えばレーザ光源・SLM出射部間熱分離性向上等のメリットを享受することができない。また、導波路52がある構成でもない構成でも、レーザ光を近接場条件や遠方場条件で使用することができる。即ち、光の予備混合でスペックルの発生を抑え、インテグレータ51に向かう光の一様性を更に高めることができる。レーザ光のスペックルは、互いに独立している複数個のレーザ光源を組み合わせて単一の照光用光源にすることでも、レンズレットアレイ又はそれに類するユニフォマイザ光学系を使用することでも抑えることができる。
【0044】
上掲の諸例には、更なる変形を施すこともできる。例えば、VECSEL等のレーザ光源アレイに限らず、様々な種類の偏向レーザ光源を使用可能である。光転向プリズム30の形成素材としては様々な高光透過性素材を使用可能である。小出力向けなら樹脂製を使用することができ、大出力向けならガラス製がより適している。
【0045】
また、レーザ光源におけるエタンデュの小ささは、効率が高く光学系が単純になるという大きな長所につながるものの、既述の通り、高エネルギ密度の光がディジタル映写機内部品に供給されるという短所にもつながっている。システム内のレーザ光源に対し直接変調を施して交番的な直交偏光対を発生させるのでなければ、それに代わる手段で、直交偏光対をなす偏光のうち一方の偏向状態を回転させ又はその偏光を阻止することが必要になる。これを実現可能な手段としては電子偏向回転器やシャッタ、例えば液晶リターダや液晶シャッタがある。
【0046】
図16に、本発明の一実施形態に係る立体投射システムを示す。本実施形態では、広帯域な電子偏向回転器75を偏向スイッチャとして用い、出射光の偏向状態を左目用と右目用の間で次々に切り替えている。回転器75は光路上の変調ビーム合流点、即ち変調されたビームを結合させる結合器82よりも下流に位置している。諸光源の協働でカバーされる可視スペクトル域全体に亘り偏向状態を均等に回転させる必要上、この回転器75は広帯域でなければならない。回転器75をこの位置に配したのはビーム径が比較的大きくなるから、即ちリターダ素子上でのエネルギ密度が結合済ビームにおけるそれのほぼ下限値に下がるからである。更に、望みの偏向特性に応じ、回転器75の直前又は直後に1/4波長板76を配することもできる。この場合、どの光源に発するどのレーザ光でも偏向軸を同じ向きにするのが望ましいので、半波長板リターダか色選択性リターダを光路上に設けて偏向軸の向きを正すとよい。加えて、回転器75の上流に偏向器を設け、スプリアスな偏向状態の光を阻止し又は反射させるようにしてもよい。
【0047】
電子偏向回転器75の例としては可変液晶リターダがある。この種のリターダは製造が比較的容易で、入射光の偏向状態が円偏光ならそのリターダンス対波長特性が比較的均一になる。この種のデバイスを回転器75として使用する場合は、ビーム結合器82の直後即ち回転器75の直前に1/4波長板76を配するのが望ましい。部品数が多くなってもかまわなければ、各基本色光路上にそれぞれ1/4波長板を配してもよい。いずれにせよ、右目用画像・左目用画像間の移り変わりタイミングに同期し、その液晶リターダ75を作動させることで、立体投射を行うことができる。観客は、偏向眼鏡を装用し偏向保持性の表示面を見ることで、左目用の偏向状態に係る光のみを左目、それと直交する右目用の偏向状態に係る光のみを右目で、それぞれ捉えることができる。
【0048】
図15に他の実施形態を示す。本実施形態では、光変調アセンブリ40r,40g,40b毎に、狭帯域な電子偏向回転器75r,75g,75bが設けられている。これは、図16に示した実施形態で電子偏向回転器75に入射されるエネルギ密度が(低まったとはいえ)回転器75の損傷を完全には避けえない水準であることや、狭い光帯域光用の電子偏向回転器なら大抵はより容易に作成可能であることを、踏まえたものである。回転器75r,75g,75bは、1nm幅オーダの単一色狭スペクトル域にて、偏向状態をほぼ半波長分回転させることができればよいので、その構造が単純で直線偏光にて好適に作動する電子制御型の液晶リターダをそれらとして使用することができ、ひいては回転器コストを抑え且つその構成を簡略化することができる。更に、直接的なレーザ照光だとエネルギ密度が高まり“ホットスポット”が発生することがあるが、回転器75r,75g,75bがインテグレータ51の下流にあるためそれを防ぐことができる。この光/熱負荷バランスは、回転器75r,75g,75bの安定性及び性能の向上につながる。加えて、個々の回転器75r,75g,75bで扱われるのが単一帯域の無変調光であるので、図16を参照して前述した実施形態に比べ、回転器75r,75g,75bからより均一且つ低レベルなエネルギ密度で光を送り出すことができる。なお、先の例に倣い1/4波長板リターダを設けることもできる。その場所は各色光路上でもよいし、図16と同じくシステム内の輻射光結合器の下流でもよい。また、最適な偏向状態が得られるよう偏向器を電子偏向回転器より上流に配してもよい。
【0049】
また、図14に倣い、ある偏向状態及び波長域の光を相互結合させるものと、それに対し直交する偏向状態及び隣接する波長域の光を相互結合させるものをあわせ、都合複数個のレーザ光結合手段を用いることもできる。例えば、ある波長域に属する直線p偏光同士を結合させる第1結合手段と、それとは異なる波長域に属する直線s偏光同士を結合させる第2結合手段とを、光変調アセンブリ40b等に設ける。更に、第1結合手段で結合されたレーザ光と第2結合手段で結合されたレーザ光とを結合させるPBS62を設け、そのPBS62より下流の光路上に色選択性偏向リターダを設ける。そして、波長域の主スペクトラムを、第1結合手段・第2結合手段間で例えば15〜25nmだけ異なる波長にしておく。このようにすると、色選択性偏向リターダにて一方の結合手段に係る波長域を選択し、その波長域内の光だけその偏向状態を90°回転させ、隣接する波長域(他方の結合手段に係る波長域)における偏向状態に揃えることができる。この実施形態では、システム内でのエタンデュ増大が生じない。また、一方の結合手段で結合された光の偏向状態を90°回転させ、個々の目に画像を届ける光を発生させる手段としては、図15中の電子偏向回転器75を用いることができる。
【0050】
図18に他の実施形態を示す。本実施形態では、互いに直交する偏向状態に係る二群の固体光源アレイ間に機械的なシャッタを配することで、交番的な直交偏光対を生成し画像立体視体験を提供するようにしている。図中の輻射光結合器43は、一方の直線偏光を発生させる一群の固体光源アレイ44b例えばレーザ光源アレイ群、半波長板64を用いそれに直交する偏向状態の直線偏光を発生させる別群の固体光源アレイ44b例えばレーザ光源アレイ群、並びにそれらの直線偏光の光軸同士が合流する付近に配された回転シャッタ65を備えている。このシャッタ65のポジションは、制御ロジックプロセッサ90によるモータ66の制御で制御される。このシャッタ65としては、図19A(正面図)及び図19B(側面図)に示すように、2個以上のセグメントを有するガラス製のディスクを使用するとよい。図中の第1セグメント65aはそこへの入射光ほぼ全てを透過させる透過セグメントであり、第2セグメント65bはそこへの入射光ほぼ全てを反射させる反射セグメントである。アレイ44bに発した照明光67の光軸が透過セグメント65a上にあるときには、その光67がシャッタ65を透過する一方、アレイ44aからの出射光は図18中のビームダンプ69によって吸収されることとなる。逆に、アレイ44aに発した照明光67の光軸が反射セグメント65b上にあるときには、その光67がシャッタ65で反射される一方、アレイ44bからの出射光はダンプ69に送られることとなる。従って、SLM上の立体視用画像に同期するようモータ66を作動させてシャッタ65を回転させることにより、交番的な直交偏光対をSLMに送り、立体視用画像を発生させることができる。また、図19Aに示すように偏向状態間の遷移域73、即ち照明光67が2個のセグメント65a,65bに跨る領域もあることにも注意すべきである。この領域では、その偏向状態が異なる二種類の偏光が共にSLMに供給されてしまうため、ゴーストと呼ばれる右目画像左目画像間クロストークが発生する可能性がある。このクロストークは若干なら許容することができる。度を過ぎるようなら、遷移域73に相当する期間にSLMをオフ状態に切り替えることでそのクロストークを除去することができる。これは、光量損失の発生と引替であるので、遷移域73は狭い方がよい。遷移域73を狭くする手段としては、照明光67のスポット径を小さくする、シャッタ65のホイール部分を大きくする、実用上問題のない程度に照明光67の位置を外縁寄りにする、その併用等の手段がある。
【0051】
図20に他の実施形態を示す。本実施形態では、回転シャッタ65の使用形態を工夫し、光がビームダンプ69に行かずに回収されるようにしている。即ち、図18に示した実施形態では、SLMに送られる光の偏向状態を交番させうる反面、50%以上の光がダンプ69に送られて損失となり、システム効率が原理的に従来技術水準まで低下する可能性があるのに対して、図中の輻射光結合器45では、直交偏光対が形成されるよう一方又は双方の固体光源アレイ44a,44bの出射光に偏向状態の回転調整を施すと共に、前掲の例でダンプ69が置かれていた光路上に半波長板64を配し、その半波長板64で光の偏向状態を変化させている。半波長板64を経た光(回収光)は複数個のミラー71で方向転換され、シャッタ65から直ちに出射されていく光(直接光)と隣り合わせになるよう出射されていく。半波長板64を経ているので、回収光は直接光と同じ偏向状態になっている。従って、この構成では、アレイ44a,44bに発した光が互いに同じ偏向状態になり、インテグレータ51やその先のSLMへと送られていく。前記同様、ディスク状のシャッタ65をモータ66で回転させることで、一方の偏向状態からそれに直交する偏向状態へと光の偏向状態を交番させることができる。
【0052】
図18に示した実施形態と比較すると、図20に示した実施形態ではその光源側エタンデュが二倍になっていることが判る。即ち、直接光と回収光が同じ角度空間内で隣り合わせになるので、ユニフォマイザ光学系における光の断面積が二倍になることが判る。輻射光結合器43より下流の光学系でこの大きなエタンデュをうまく扱えないと効率が低下するが、輻射元であるレーザ光源のエタンデュがそもそも小さいので、それは特に困難な事柄ではない。また、エタンデュが大きくならないよう、個々のレーザ光源から来る光をいくらか重複させることもできる。より望ましいのは角度的に重複させることである。それは、大抵の投射レンズがテレセントリックであるため、その角度空間内での混合により、どの画素についても均一な照光を容易に実現できるからである。
【0053】
図21に他の実施形態を示す。本実施形態では、上掲の偏光回収をより少数の部品で実現することができる。即ち、図20に示した実施形態における複数個のミラー71に代え、プリズム72(又は図示しない1個のミラー)が使用されており、そのプリズム72は、光路の畳み方が単純になり且つ光路間の間隔が小さくなるよう、ディスク状のシャッタ65のすぐそばに配されている。図22に、この図に示した構成を輻射光結合器45r,45g,45bとして用い交番的な直交偏光対を発生させる投射システムの例を示す。この例では、結合器45r,45g,45bからの出射光が対応する色チャネル内のSLM60に直に送られ、ダイクロイック面84にて互いに結合された後、投射レンズ70のアセンブリによって投射されている。
【0054】
この仕組みは、遷移域でも光損失増加が生じないという点で、非立体投射にも適している。従って、従前の例と違い、スループット効率を高めるため非立体投射時に回転シャッタ65のディスクや偏向スイッチャを外す必要はない。また、立体視用でない画像を投射する際にモータ66への通電を停止することで、寿命及びパワーの消費を抑えることができ、またシャッタ65の透過セグメントを光路上に置くことで、不要なコーティング損傷や熱ビルドアップを抑えることができる。
【0055】
図19A及び図19Bに示した回転シャッタ機構には、また、交番的な直交偏光対を発生させる機能に加え、スペックルを抑える機能も備わっている。スペックルは、前述の通りレーザ光投射に潜む問題であるが、レーザ光源の使用個数が複数だと発生しにくくなる。全体でのレーザ光源(間)コヒーレンシが下がるからである。とはいえ、小スクリーン投射向けレーザ光源の使用個数を少なくすると、コヒーレンシがいくらか残留する可能性がある。シャッタの片面又は両面をコヒーレンシ攪乱性のコーティングで被覆すれば、そうした残留コヒーレンシは発生しにくくなる。加えて、光を空間的乃至角度的に混合するユニフォマイザ光学系と共に、ディスク状のシャッタにおける波面偏角に応じ光路を変化させる手段を使用することで、残留コヒーレンシひいてはスペックルの発生を更に抑えることができる。
【0056】
残留コヒーレンシによるスペックルを抑圧乃至除去する手段としては、シャッタ65のディスク即ち空間的に回転する部分の表面粗さを、目に見えるスペックルがなくなる程度に高く(但し光源出射角が大きく増さない程度に低く)する、という手段もある。例えば、シャッタ65の片側の面65c(図19B参照)を機械加工して散光面とし、逆側の面を研磨面として一方のセグメントに抗反射コーティング、他方のセグメントに鏡面コーティングを施せばよい。或いは、前述の通り面65c,65d双方を研磨するものの、光学的に平坦といえる面にはせず、光路差のある複数通りの波が回転周波数と同期して光ビーム内に誘起されるようにしてもよい。照明光の角度が大きく拡がらず、従ってエタンデュが増大しないという点では、これは非研磨面に比べ望ましいものである。
【0057】
また、DLPデバイス等のMEMS型デバイスでは、金属製(通常はアルミニウム製)の反射器が使用されることが多い。金属製の反射器を使用するのは、光の入射方向が若干ずれても、反射光にほとんど位相シフトが生じないからである。その入射光の偏向軸は、DLPデバイスによる反射で変化しないよう、図17に示したDLPデバイス内マイクロミラー74の枢動軸Aに対し直交させ又は平行にするのが望ましい。但し、マイクロミラー74の表面に対し別の角度をなす偏向状態でも、残留偏向を抑え、それによって二種偏向状態間クロストークを減らすことは可能である。
【0058】
更に、DLPデバイスでは従来からカバープレート気密外装が採用されているが、これにも改良する余地がある。まず、従来型の外装では、周囲環境に対する封止と共に開口面の無欠陥化(散乱による画質劣化の防止)を目的として、窓枠付きカバーにレーザ熔接及び熱熔融で窓を装着するプロセスが使用されている。このプロセスでもたらされる複屈折性は無視できないレベルであり、品別のばらつきも呈するものとなる。幾つかの試料を調べたところ、3nm超のリターダンスばらつきが見られた。こうしたばらつきがあると、そのデバイスから出射される光の偏向状態を揃えることが難しくなる。この問題を解決するには、DLPデバイスから出射される偏光の偏向状態がよりよく揃うよう、その窓付き外装の仕組みを改める必要がある。例えば、SF57(商品名)のようにその応力誘起又は熱誘起複屈折係数が低いガラスで外装を形成すればよい。或いは、窓枠への窓の装着に応力非発生型の手法、例えば室温硬化素材(RTV)で窓を所定位置に接着する手法を使用してもよい。封止性を更に高めるには、その窓枠付きカバーが窓に対してはリジッド(不動的)だがチップ基板実装面に対してはフレキシブル(可撓的)になるよう、それらを相互装着するのもよい。その関係を逆転させた形態も採ることができる。更に、窓を窓枠に接着し窓枠付きカバーをチップ実装面に接着するプロセスは、そのときの温度がチップ作動温度から大きく外れないよう、注意深く制御しながら実行した方がよい。チップ作動温度と実装時温度との差による応力発生を防ぐためである。
【0059】
偏向レーザ光源の使用は、立体視用画像の投射に関わる多くのメリットを有している。例えば、前述した従来型イルミネーション光源に比べ高効率であるため、一部の従来型2Dプロジェクタで実現されていた画像輝度をより容易に達成することができる。
【0060】
また、本発明に関し詳細に説明するため、その好適な実施形態のうち特定のものを子細に参照したが、本発明の技術的範囲には様々な変形物や改良物も包含されるので、その点を了解頂きたい。例えば、レーザ光源アレイを使用する例で詳細な説明を行ったが、それに代えて別の固体発光部材を使用することもできる。個々の光路上に補助的なレンズ乃至光学部品を付加することもできる。本願記載の光学アセンブリにおける光のユニフォマイズ乃至インテグレーションと中継の順序は、結果に大きな差を発生させることなく反転させることができる。
【0061】
このように、本発明によれば、高輝度投射やディジタル3D映画の投射に使用可能な偏向利用型の装置及び方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 プロジェクタ、12 光源、14 プリズムアセンブリ、16 位置、18 光学系、20,20r,20g,20b,60 空間光変調器(SLM)、26 レーザ光源、28 入射ファセット、29,70 投射レンズ/光学系、30 光転向プリズム、32 入射面、34 出射面、36 転向面、38 光転向ファセット、40r,40g,40b 光変調アセンブリ、42,45,45r,45g,45b 輻射光結合器、43 シャッタアセンブリ付き輻射光結合器、44,44’,44a,44b 固体(レーザ)光源アレイ、46,71 ミラー、50,54 レンズ、51 インテグレータ、52 光導波路、62 偏光ビームスプリッタ、64 半波長板、65 回転シャッタ、65a 透過セグメント、65 反射セグメント、65c 散光(加工)面、65d 研磨(被覆)面、66 モータ、67 照明光、68 厚膜被覆面、69 ビームダンプ、72 プリズム、73 遷移域、74 マイクロミラー、75,75r,75g,75b 電子偏向回転器、76 1/4波長板、80 表示面、82 ダイクロイック結合器、84 ダイクロイック面、90 制御ロジックプロセッサ、A 軸、D1,D1’ 輻射方向、D2 出射方向、A1 光源面積、A2 SLM面積、θ1 光源見込み角、θ2 SLM見込み角、R レッド、G グリーン、B ブルー、L 長手方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は立体視用ディジタル画像プロジェクタ、特に固体レーザ光源等の偏光源で立体視用画像を発生させるディジタル映写機及び映写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D(三次元)画像即ち立体として知覚される画像を表示することができ、従って広い会場で観客に対し豊かな視覚的体験を提供することが可能な高画質投射システムに対する関心が、ますます強まってきている。映画館、テーマパーク等のスペースで3D画像投射を実施しているエンタテインメント企業も数多くあるが、それらの企業で3D投射媒体として用いられているのは主としてフィルムである。これは、左目用プロジェクタに左目用のフィルム、右目用プロジェクタに右目用のフィルムを装着し、左目用画像と右目用画像を直交偏光対で同時投射することで、3D画像を発生させる投射システムである。その直交偏光対のうち一方の偏光が左目への画像提示、それに直交する他方の偏光が右目への画像提示に使用される。観客がその直交偏光対による画像を見るには、左目用の偏光を左目には通すが右目には通さず、また右目用の偏光を右目には通すが左目には通さない、という仕組みの直交偏向眼鏡を装用する必要がある。
【0003】
映画産業がディジタル映画への傾斜を強めるなか、Imax社を含む幾つかの企業では、高画質3D画像を提供可能なダブルプロジェクタ型投射システムの開発が続けられている。しかしながら、より広く検討されているのは、従来型プロジェクタを改造して3D投射を実行できるようにする、という策である。
【0004】
従来型プロジェクタを改造してカラー映画のディジタル投射を実現しようという試みのなかで、最も見込みがありそうなのは、その画像発生デバイスとして空間光変調器(SLM)を用いるものである。SLMとして使用できるデバイスには大別して二種類がある。そのうち第1のものはディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であり、米国テキサス州ダラス所在の企業Texas Instruments,Inc.が開発したDLP(登録商標;ディジタル光プロセッサの意;以下注記省略)がその一例である。DLPは既に多くのディジタル投射システムで存分に使用されている。DLPに関する特許文献は、特許文献1〜3(発明者:いずれもHornbeck)を初めとして、数多く発行されている。
【0005】
図1に、そのSLMとしてDLPを用いたプロジェクタ10の概略ブロック構成を示す。光源12は無偏向多色光を輻射しプリズムアセンブリ14、例えばフィリップス(登録商標;以下注記省略)プリズムに入射させる。アセンブリ14は、その入射光を波長域に従いレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の各色成分に分解し、SLM20r、20g及び20bのうち対応するものへと出射させる。アセンブリ14は、個々のSLM20r、20g及び20bで変調され入射されてきた光を再結合させ、得られた無偏光を投射レンズ29へと送り込む。このレンズ29は、映写スクリーン等、適当な表示面上にその無偏光を投射する。
【0006】
こうしたDLP利用型プロジェクタは、潜在的に、デスクトップから大画面映画館に至る様々な投射用途にて要求される光学的スループット、コントラスト比及び色域を実現可能なものであるが、反面で固有の解像度限界があり、その解像度が2148×1080画素を上回るものはまだ現れていない。更に、DLPを使用すると部材コストやシステム構築コストが嵩むため、ディジタル映写機のなかでもハイエンドのものでしか、DLPを利用した構成を採ることができない。また、フィリップスプリズム等の結合用プリズムには価格、サイズ、重量且つ複雑さの問題もあり、そのことも厳しい足枷となっている。加えて、輝度条件を満足させるため長い作動距離を有する比較的高速な投射レンズが必要であることも、この種の装置の普及や利用に否定的な影響をもたらしている。
【0007】
ディジタルプロジェクタ向けのSLMとしては第2に液晶デバイス(LCD)がある。LCDによる画像発生の仕組みは、一群の画素からなる画像が発生するよう画素毎に入射光の偏向状態を変調する、というものである。ハイエンドディジタル映写機用SLMとしてのLCDには幾つかの長所がある。例えば、デバイスサイズが比較的大きい、デバイス製造歩留まりが比較的高い、高解像度のデバイスを製造しやすい等の点である。ソニー株式会社や日本ビクター株式会社からは4096×2160画素の解像度を有するデバイスも提供されている。LCDタイプのSLMを使用する電子式プロジェクタについては特許文献4(発明者:Shimomura et al.)等の記載も参照されたい。なかでもLCOS(商標;液晶オンシリコンの意;以下注記省略)型のデバイスは、大画面プロジェクタ向けのデバイスとして特に期待されている。しかしながら、LCDを使用し高輝度投射を行おうとすると、その形成素材に厳しい熱負荷がかかって偏向品質が損なわれることが多く、ディジタル映画で求められる高いクオリティ、とりわけ色やコントラストに関するものを継続的に充足させるのが難しい。
【0008】
更に、これら既存のマイクロディスプレイ(DLPやLCOS)利用型プロジェクタで3D画像を発生させる手法としては、従来から、次の二手法のうちいずれかで左目用画像と右目用画像を分ける手法が採用されている。それらのうち劣勢なのはDolby Laboratoriesで採用されている手法であり、この手法では特許文献5(発明者:Maximus et al.)等に記載の色空間分離法が使用されている。これは、白色照光システム内に配したフィルタを用い、フレーム期間内の対応する部分期間内で、個々の基本色成分の一部スペクトラムを遮断させる、という手法である。例えば、左目用部分期間ではR,G,B各波長域内スペクトラム対のうち短波長寄りスペクトラムを間引き、それに続く右目用部分期間では長波長寄りスペクトラムを間引く。次いで、こうして色調整を施した立体視用画像の左目用成分を左目用SLM、右目用成分を右目用SLMに供給する。観客がこれを見るには、それぞれRGBの三色を含む二種類のスペクトラム群のうち左目用(右目用)のものを左目側(右目側)に通す仕組みのフィルタ眼鏡を装用する必要がある。従って、この色空間分離法を利用することで、偏向利用法に比し幾つかの点で優れたプロジェクタを実現することができる。例えば、高価な偏向保持性スクリーンが要らないため、より多様なスクリーンに画像を投射することができる。その反面で短所もある。使用できるフィルタ眼鏡が高価であるし、その視認画質が向きの変化、首振り及び首傾げで損なわれうる。色空間の調整も難しく、フィルタリングによる光損失が大きいため、光源出射光が強くないと画像が暗くなってしまう。
【0009】
二種類目の立体視用画像発生手法は偏光を利用するものである。その一例は、特許文献6(発明者:Svardal et al.)に記載の通り、直交偏光対を形成する二種類の偏光を互いに別のSLMに送り、そのSLM経由で同時に投射させるものである。観客は偏向眼鏡、即ちある偏光透過軸を有する左目用フィルタとそれに直交する偏光透過軸を有する右目用フィルタを備えた眼鏡を装用する必要がある。この手法は光の利用効率が高い手法であるが、その反面で装置コストが嵩みがちな手法でもある。その色成分毎にSLMを分けることが必要な設計のプロジェクタでは特にそうである。
【0010】
他の例は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ビバリーヒルズ所在のReal−D社で商品化されているものである。この手法は、一方から他方へまたその逆へとその偏向状態が交番的に高速スイッチングされる偏光を変調するよう、従来型のプロジェクタを変形する、という手法である。例えば、DLP利用型プロジェクタの出射光路上(図1なら破線位置16)に偏向器及び無色偏向スイッチャを配置することで、この手法を実施することができる。偏向器を設けるのは、DLPのデバイスパッケージに設けられている入射用の窓で応力誘起複屈折による減偏向が生じ、入射された光の偏向状態が不可避的に乱されるからである。その下流に配する無色偏向スイッチャとしては、例えば特許文献7(発明者:Robinson et al.)に記載のスイッチャを使用することができる。この種のスイッチャは、相直交する二偏向状態間(例えば直線偏向状態)で偏光を交番的に回転させるので、偏向眼鏡を装用している観客の左目と右目に、それぞれ別々の画像を見せることができる。
【0011】
Real−D社では、以前、左旋及び右旋円偏光が用いられていた。それ用の偏向眼鏡としては、1/4波長リターダに偏向器を付加した構成のもの、即ち円偏光を直線偏光に戻してから一方の偏向状態に係る光を遮断するものが用いられていた。この構成なら首傾げの影響を受けにくく、使用する無色偏向スイッチャも安価に製造できそうである。ただ、そのための偏向眼鏡は、偏向器だけの偏向眼鏡に比べ高価になってしまう。また、これに限らず偏向を利用するシステムでは、表示スクリーンへの入射による画像搬送光の偏向状態変化を抑えるため、表示スクリーンとしてシルバースクリーンを使用しなければならないのが普通である。更に、偏光を使用しているため出射光が半分失われることから、こうした微細電気機械構造(MEMS)利用型システムでは大きな光損失が発生する。大きな偏向スイッチャを用いることによるコスト増や、それをプロジェクタ前部に整列実装するための部材を用いることによるコスト増も発生する。様々なプロジェクタの改造に対応可能とするため、このシステムには柔軟性乃至融通性も求められる。また、可視スペクトルのほぼ全域で波長によらずある同じ量の光遅延が生じるようにするため、偏向スイッチャの構成も複雑とならざるを得ない。仮に、こうした特性を好適に提供することができなかったとしたら、許容できないほどのクロストーク(届けたい方の目とは異なる側の目に偏光が届く現象)が発生してしまうこととなりかねない。そうしたクロストークが発生すると、立体視効果が薄れ、場合によっては観客にとって目障りな画像になってしまう。
【0012】
従って、比べてみた場合、LCOS利用型プロジェクタの方が、多くの構成で出射光が既に偏向されている点で長じているといえる。
【0013】
照光効率については、ラグランジュの不変量即ちエタンデュに関する未解決の問題がある。光学分野で周知の通り、エタンデュはその光学系で取り扱える光量に関わる量である。エタンデュは、定性的にはその値が大きいほど画像が明るくなりやすく、定量的には二種類の数値の積、即ち画像面積と数値開口(NA値)の積に比例する。例えば、図2に示す如く光源12、光学系18及びSLM20からなる簡素な照光装置では、光源エタンデュが光源面積A1とその見込み角θ1の積で与えられる。良好にマッチングしている光学系では、その光源エタンデュと、SLM面積A2とその見込み角θ2の積たるSLMエタンデュとが、等しい値になる。光源面積A1をできるだけ有効に活用しできるだけ多くの光をそこから得るようにすれば画像の明るさが増すので、一般則としては、光源エタンデュとSLMエタンデュを最大限にマッチングさせることが有益であるといえる。
【0014】
光源から光学系にもたらされる光の量を増すには、NA値を増して光源エタンデュを大きくすればよい。同様に、光源側画像面積を大きくとり発光面積を増しても、光源エタンデュは大きくなる。大きな光源エタンデュを使い切るにはSLMエタンデュをそれ以上の値にしなければならないが、そうすると画像サイズが大きくなるため更に高価な光学系になってしまう。LCOS、DLP等、シリコン基板を使用するデバイスでは、サイズが大きいほど欠陥が生じやすくなるためことにそうである。一般論としても、エタンデュが大きいほど光学系は複雑且つ高価になる。また、特許文献8(発明者:Sprotbery et al.)等で概述されている通り、既存手法では、大きなエタンデュに相応しく光学系内レンズ部材を設計する必要がある。これは、光学系内で集めねばならない光の光源側画像面積が、RGB各色光路間でSLM面積を合計した面積となり、その面積が最終的に形成されるカラー画像の面積の3倍に達するからである。即ち、特許文献8等に記載の手法による構成では、異なる光路を辿るRGB各色光を集めねばならないため、光学部品で扱われる画像面積ひいてはエタンデュがかなり大きくなる。更に、最終的に形成されるカラー画像のそれに比し3倍もの面積からの光を取り扱うにもかかわらず、特許文献8等に記載の構成では、個々の光路を通る光の量が各色合計での光量に比したった1/3であるため、輝度向上のメリットを何ら享受することができない。
【0015】
また、光源エタンデュとSLMエタンデュを整合させないと効率が低下する。これは、整合が不十分だと、光学系に達する光が少なくてSLMに十分な光量を送れないか、SLMに送ろうとして発生させた光が余ってしまい事実上捨てられてしまうか、いずれかになるためである。
【0016】
いずれにせよ、LCD又はDLPを利用する投射システムの開発者は、ディジタル映写に相応しい輝度を許容可能なシステムコストで実現する、という課題に長く悩まされてきた。これは、偏光が必要なLCD利用型投射システムでは、効率不足やエタンデュ過剰が生じがちで、偏向回復技術を用いてもそれによる効率低下を抑えるのが難しいからである。また、偏光無しでも実施でき幾分効率的であると判明しているDLP利用型投射システムでも、その光源がまだまだ高価且つ短命で、光学系がまだまだ高価であるため、従来型映写機と競えるほど安価にすることができないからである。
【0017】
ハイエンドな従来型フィルムプロジェクタに劣らないディジタルプロジェクタであり、電子映画乃至ディジタル映画の名に値するものであると認められるには、在来機器に比肩する明るさで映写する機能がなければならない。達成すべき明るさはスクリーンの大きさ次第であり、5000ルーメンから40000ルーメン超までの範囲内で様々な値を採りうる。例えば、普通の映画館で使用されている対角長=40フィートオーダのスクリーンなら、概ね10000ルーメンの明るさでの投射が必要になる(1フィート=約0.3m)。この重要な明るさ条件に加え、ディジタルプロジェクタには、高い解像度(2048×1080画素)、高いコントラスト比(約2000:1)及び広い色域の実現も求められる。
【0018】
既存のディジタル映写機のなかには既にこの性能水準に達しているものもある。しかし、装置コストや稼働コストの高さは耐え難いほどである。上掲の諸条件を満たす映写機であれば、1台の価格が一般に50000米ドル以上にもなる。その光源として高出力のキセノンアークランプを使用するので、500〜2000時間程度の間隔でランプ交換を行う必要があり、通常、その交換のたびに1000米ドル以上の費用がかかる。更に、キセノンランプのエタンデュは大きいので、そのランプから輻射光を集めて投射する光学系を相対的に高速にしなければならず、そのこともコストや複雑さ上の大きな問題となっている。
【0019】
また、DLP型やLCOS−LCD型のSLMに共通する問題点として、固体光源、特にレーザ光源との相性が悪いという問題がある。固体光源は、他種光源に比べスペクトル純度が高く、高い輝度レベルを実現可能な光源であるが、そうした長所を存分に活かすには利用形態を工夫する必要がある。有色光源の輻射光を、既存のディジタルプロジェクタで用いられている既存の手法及び装置で調光、方向転換及び結合するのでは、レーザ光源の長所をうまく活かすことができない。
【0020】
固体レーザ光源は、エタンデュ、寿命、並びにスペクトル及び輝度の全般的安定性に長じている。近年は、ディジタル映画で許容可能なコストで、十分な輝度の可視光を輻射しうるようにもなっている。更に最近では、光源として好適に使用できそうなレーザ光源アレイが市販され始めている。但し、その明るさがまだまだ不十分であるため、個々の色成分毎に、所要の輝度が得られるよう9個以上のアレイから光を集めて結合させる必要がある。
【0021】
レーザ光源アレイのうちプロジェクタで利用できそうなものとしては、各種のVCSEL(垂直共振面発光レーザ)アレイ、例えばVECSEL(垂直外部共振器面発光レーザ)アレイやその拡張版に当たるNECSEL(商標;ノバラックス版外部共振器面発光レーザの意;以下注記省略)アレイ等がある。NECSELアレイは、米国カリフォルニア州サニーベール所在のNovalux社から入手することができる。しかしながら、これらのデバイスを従来方法で使用すると、様々な問題が発生することが判っている。その一つはデバイス歩留まりに関する問題である。例えば、主として部品の繊細さ並びにその熱的及び外装的問題により幅広にするのが難しいため、市販のVECSELアレイは細長くなっている。通常、VECSELアレイにおける発光部品の列数は2列だけであり、3列以上に並べようとすると歩留まりが劇的に低下する。この問題に加え、既存のVECSELアレイには電力供給や放熱の問題もある。これは、使用されるレーザ光源が大出力なためである。例えば、NECSELアレイではレーザ光源を二列に並べるのであるが、レーザ光源を一列に並べただけのデバイスでも、3W超という実用的な量の光を得ることができる。ただ、そのためにはかなりの量の電流が必要であり、発光に寄与しなかった分の電流による熱負荷もかなりのものとなる。安定的に温度を保持できないと、その寿命やビーム品質が大きく損なわれてしまう。
【0022】
更に、レーザ光源から投射システムへの輻射光供給に関しても、従来技術では的確に対処できない問題が存在している。例えば、多くの映画館で必要とされる10000ルーメン程度の明るさをNovalux社のNECSELアレイで実現するには、レーザ光源が2列×24個並ぶ品を、各色成分毎に約9個ずつ用いることが必要になる。こうした光源は、その信号配線及び電源結線と共に、主要な光学系から離しておかねばならない。温度変化に敏感な光学系に熱が伝わりプロジェクタ基幹部の性能が損なわれることを、防ぐためである。無論、在来の端面発光レーザダイオード等、他種レーザ光源を使用することもできる。しかし、そうした光源はアレイ状に実装するのが更に難しく、高い輝度で輻射させると寿命が縮まるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4441791号明細書
【特許文献2】米国特許第5535047号明細書
【特許文献3】米国特許第5600383号明細書
【特許文献4】米国特許第5808795号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0127121号明細書(A1)
【特許文献6】米国特許第6793341号明細書(B2)
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0291053号明細書(A1)
【特許文献8】米国特許第5907437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このように、映画向け又はそれに近い性能があり映画向け又はそれに近い明るさで立体視用カラー画像を表示可能な投射システムは、既存の手法ではこれまでのところ実現されていない。そのため、立体視用変調用の偏光を提供可能で、しかもハイエンド投射システムに求められる水準の明るさを実現可能な照光技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願では、DLP等のMEMS利用型ディジタルSLMやそれに類するマイクロディスプレイ型SLMを用いた立体投射に当たり生じる問題への対策として、(a)(i)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、(ii)その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏向軸を固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる偏向回転器、並びに(iii)その偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式のSLMを、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、(b)SLM上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、(c)SLMにて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタを提案する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、照光用の光源と変調器との間で好適にエタンデュをマッチングさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】別々の光路を辿った各色光をプリズムで結合させる仕組みの従来型プロジェクタを示す概略ブロック図である。
【図2】光学系におけるエタンデュの概念を示す図である。
【図3A】光導波路開口面に対する固体光源アレイの面積占有率の例を示す端面図である。
【図3B】その別例を示す端面図である。
【図4】立体画像投射用輻射光結合器を用いたプロジェクタの全体構成を示す概略ブロック図である。
【図5】複数個の固体光源アレイから来る偏光を相互結合させて共通の照光軸上に送る仕組みの例を示す概略縦断面図である。
【図6】その仕組みの斜視図である。
【図7A】複数個の固体光源アレイを使用する構成に関し、それらのアレイの輻射光のうちある偏向状態のものを偏光ビームスプリッタ(PBS)で選び送り出す仕組みを示す概略縦断面図である。
【図7B】それと直交する偏向状態のものをPBSで選び送り出している状態を示す概略縦断面図である。
【図8】立体視用画像表示時偏向状態交番タイミングを示すタイミングチャートである。
【図9A】複数個の固体光源アレイを使用する構成に関し、それらのアレイの輻射光を光転向プリズムで結合させる仕組みを示す概略縦断面図である。
【図9B】図9Aに示した光転向プリズムの斜視図である。
【図10】別の構成に係る光転向プリズムを示す概略縦断面図である。
【図11】固体光源アレイ群毎に都合2個の光転向プリズムを設け、それらを介し互いに別々の偏向状態の偏光を出射する仕組みを示す概略縦断面図である。
【図12】その両側から光を入射可能な光転向プリズムを用いる構成を示す概略縦断面図である。
【図13】図12に示した光転向プリズムを偏向状態毎に備える照光装置を示す概略縦断面図である。
【図14】図12に示した光転向プリズムを用い偏光を投射するプロジェクタの例(光導波路無し)を示す概略図である。
【図15】図14に示したものに色帯域別電子偏向回転器群を付加した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【図16】図14に示したものに広帯域電子偏向回転器を付加した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【図17】ある単一の画素に係る変調部材の枢動軸を示す斜視図である。
【図18】直交偏光対を構成する偏光を交番的に選択して出射させるシャッタシステムを示す概略図である。
【図19A】片側からの光を反射させ他側からの光を透過させるシャッタの例を示す正面図である。
【図19B】その側面図である。
【図20】二種類の相直交する偏向状態へと光を交番的に変換する光回収システムの例を示す概略図である。
【図21】図20に示した光回収システムの別例を示す図である。
【図22】図21に示した光回収システムでもたらされる交番的な直交偏光対を利用した立体視用プロジェクタの例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、別紙図面を参照し本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば、本発明の実施形態に係る図面と併せ以下の説明を参照することによって、上記以外のものも含め本発明の諸目的、構成及び効果についてより好適に理解することができよう。以下の説明及び図示は、別紙特許請求の範囲と違い本発明の必須構成要素を特定的且つ一意的に表現したものではないが、本発明を理解する上では有益なものである。
【0029】
また、以下の説明では本発明に係る装置を構成し又はそれと密接に連携する部材を主としてとり上げており、いわゆる当業者にとり周知の諸形態を採りうる部材については具体的な説明や図示を省略してある。更に、別紙図面は本発明の基本的な仕組みを示すためのものであり、実物の寸法で又はそれを均等に縮尺して示したものではない。例えば、本発明で使用される固体レーザ光源アレイ等は小さな部材であるので、その構造、形状、動作機構等をいくらか強調して描いてある。
【0030】
本発明は、立体視用画像表示システムに適する優れた明るさを達成可能な形態で実施することができる。例えば、ある偏向状態に係るレーザ光源と、それに直交する別の偏向状態に係るレーザ光源とで、交番的に照光する構成である。レーザ光源は、その取り外しが容易でモジュール単位換装が可能なアセンブリにすることができる。熱負荷を軽減する手段を有する形態にすることもできるので、偏光利用型プロジェクタ内の光学部品で往々にして生じる熱誘起応力複屈折を抑えることができる。そして、VECSELアレイ等の固体光源アレイに発する偏光に特有な偏向状態を、有効に活用する形態にすることもできる。
【0031】
本発明で採用可能な熱負荷軽減手段の一つは、光源・SLM間を分離する光導波路である。複数個の固体光源アレイを偏向保持性の光導波路につなぎ、その光導波路を介し輻射光をSLMに供給する、といった仕組みであるので、光源対光導波路界面の形状をうまく設計することで、光導波路出射光をSLMのアスペクト比と好適にマッチングさせることができる。具体的には、SLMによる光導波路側開口の面積占有率を十分に高める(僅かな隙間しか生じないようにする)ことで、好適な値のエタンデュを確保することができ、ひいては照光用光学系に課される速度条件を緩和することができる。例えば図3Aに示す例では、光導波路52の端面上に存する入射開口が、その入射開口上にあるかのように適宜縮尺を調整して描いた固体光源アレイ44に対し余剰している(入射開口の面積占有率が低い)ため、導波路52のSLM側端部におけるエタンデュのマッチングが貧弱になりやすい。これに対し、図3Bに示す例では、導波路52の入射開口を従来の円形から変形させることで、アレイ44のアスペクト比と導波路52のそれとを好適にマッチングさせている。図3Aや図3Bには図示しないが、後により詳細に説明する要領でアレイ44を複数個組み合わせてより大規模なアレイを形成するようにしてもよい。
【0032】
その光導波路52としては光ファイバを使用することができる。特に方形コア光ファイバが望ましい。例えば、フィンランド共和国ロハヤ所在のLiekki社で製造されている方形コアファイバを使用すれば、光源のアスペクト比に対し導波路52のそれを好適にマッチングさせることができる。
【0033】
図4に、本発明の諸実施形態に係るプロジェクタ10の基本構成を模式的に示す。この図を参照することで、本発明に係る装置及び方法が稼働する大まかな仕組みを好適にご理解頂けるであろう。図中3個示されている光変調アセンブリ40r,40g,40bは、輻射光結合器42から輻射される基本色光(RGB各色光)のうち対応する色の光を変調するアセンブリであり、光をレンズ50越しに偏向保持性の光導波路52に送り、その導波路52の出射端からの出射光をレンズ54越しにインテグレータ51に送り、その光を更にSLM60に送る構成を有している。レンズ50を省略することや、導波路52を省略しレンズ50の出射光をレンズ54に入射させることも可能である。インテグレータ51としてはフライアイインテグレータやインテグレーティングバーを使用することができる。SLM60はMEMSデバイスであり、DLPその他のMEMS型反射式SLMを初め、反射又は屈折により光を変調する様々なMEMSデバイスをSLM60として使用することができる。この種のデバイスには“偏向状態ニュートラル”、即ち画素の偏向状態が変化しないためどの画素でも光変調が生じない、という特徴がある。とはいえ、MEMSデバイス表面での反射の際にいずれかの画素で偶発的な偏向状態変化が生じる可能性はあり、その可能性はその面への入射角に依存している。これは不要な偏向現象につながるものであるが、後述の如くそのMEMS型SLMへの光入射角を調整することで抑えることができる。また、本発明を実施する際には、このSLM60で、相直交する二種類の偏向状態に係る直交偏光対の入射を受け、相直交する二種類の偏向状態に係る直交偏光対を出射することができねばならない。入射時偏向状態に対し出射時偏向状態が回転していてもかまわないが、入射時偏向状態と出射時偏向状態との対応関係が定まっていなければならない。
【0034】
投射光学系70は変調された光を表示面80上に投射する。その周囲を括る破線で図示されていることからも判る通り、この光学系70は多様な形態で実施することができる。また、図示した全体構成自体、本発明の諸実施形態で使用されうるとはいえ、その輻射光結合器42等は実施形態毎に異なる構成となりうるものである。光変調アセンブリ40r,40g,40bからの出射光を光導波路52抜きでインテグレータ51、ひいては偏向状態ニュートラルなSLM60や投射光学系(例えばレンズ)70に送るよう、構成することもできる。
【0035】
図5に、複数個の固体光源アレイ44,44’を組み合わせてより大規模なアレイを形成する手法の例を示す。図6に示したのは図5に示したアレイの斜視外観である。図5に示す如く、この例では、付加的なアレイ44’の光軸がアレイ44の光軸に対し平行になるよう、ひいては図3Bの如き端面形状が生じるよう、1個又は複数個のミラー46が随所に配置されている。積層方向に沿った固体光源アレイの個数は、熱的な問題による制限や間隔上の制限に従っている。
【0036】
図7A及び図7Bに、図5及び図6に示した手法の変形例として、偏向状態が異なる複数種類の偏光を扱えるようにした例を示す。図8に示したのはその作動タイミングである。図8中のタイミングから読み取れるように、光変調アセンブリ40r,40g,40bのいずれでも、図4中の同じSLM60に送られる光を相直交する二偏向状態間で迅速に交番させ、左目用画像と右目用画像を然るべく発生させることができる。これは、二組の固体光源アレイ44a,44bを備えているからである。図示例では、アレイ44a,44bとして固体偏向レーザ光源アレイを使用している。それらのアレイ44a,44bによる直交偏光対の生成には半波長板64等の部材が使用されており、その部材は図7A及び図7Bに示す如くアレイ44a,44bの群のうち一方に設けられている。照光サイクル中の一方の半サイクルでは、図7Aに示す如く一方の群のアレイ44aが作動し、その輻射光がPBS62で反射される。その半サイクルに対し交番的に到来する他方の半サイクルでは、図7Bに示す如く他方の群のアレイ44bが作動し、その輻射光がPBS62を透過していく。更に、この構成で立体視用でない画像を表示させることも可能である。その際は、両群のアレイ44a,44bを併用してより明るい画像を発生させてもよいし、その寿命がバランスするようアレイ44a,44bを半分のパワーで作動させてもよい。
【0037】
この例によれば、どの偏向状態の光も同じ照光軸上に送られているのに、図5を参照して前述した単一チャネルでのエタンデュと同じ値に、そのエタンデュを保つことが可能である。従って、非立体視用画像を表示させる際に、その偏向状態が異なる二種類の光を併用し、ほぼ二倍の輝度とすることができる。しかし、立体視用画像を表示させる際の実質的な明るさは、個々の瞬間で見ると片側の光源しか使用されないため図5でのそれとほぼ同じ値に留まる。また、その構造が単純であり、交番的な直交偏光対をSLM60に対し供給できるという長所があるものの、この構成では、レーザ光源を所定周波数で乱れなくオンオフさせること、ひいては一方の偏向状態に係る固体光源アレイのターンオンタイミングと他方の偏向状態に係る固体光源アレイのターンオフタイミングとを揃えることが求められる。昨今のディジタル映画の場合、当該所要周波数は(設定によって異なるものの)120Hzか144Hz、即ち多くのレーザ光源が熱的な不安定性を呈する周波数であり、この周波数付近でレーザ光源をオンオフさせると不規則なパワーばらつきが発生しやすい。従って、SLMに向かっている光又はSLMを通過した光の偏向状態を直接的でない手段(即ち光源側での変調以外の手段)で操作し、交番的な直交偏光対を発生させることが、必要になる場合もあろう。
【0038】
図9A(縦断面図)及び図9B(斜視図)に、4個の固体光源アレイ44から輻射されるレーザ光を結合させて狭い面内に集めるようにした例を示す。この例では、光転向プリズム30が、アレイ44からD1方向に輻射される光を受け入れる入射面32や、その輻射方向D1に対しほぼ直交するD2方向へと光を方向変換させる転向面36を有しており、その転向面36には複数個の光転向ファセット38が形成されている。光転向ファセット38は、アレイ44からの輻射光を内部全反射(TIR)させうるよう、輻射方向D1に対しある傾斜角を以て形成されている。光転向ファセット38は、更に、出射光路が狭まりビーム径が細くなるよう、図9A及び図9Bに示す如く互いに段差を付けて形成されている。そして、アレイ44上には、図9Bに示す如く、その長手方向Lに沿って複数個のレーザ光源26が配列されており、光転向ファセット38を初め転向面36上に形成されている種々のファセットも、これと同じ方向L沿いに延びている。
【0039】
図10に、この例に対する様々な変形例のうち一つの縦断面を示す。この例では、1本の光転向ファセット38でレーザ光源26複数列分の光が同時に方向転換されるように、光転向プリズム30上のファセット38が寸法設定されている。入射面32を輻射方向D1に対し直交させる必要はないので、直交入射になる位置から固体光源アレイ44が若干ずれていてもかまわない。但し、プリズム30の屈折率nを考慮に入れる必要がある。
【0040】
図11に、偏向状態を交番させうるよう且つ明るさが高まるよう、光転向プリズム30を複数個設けた例の概略ブロック構成を示す。この例では、先に図7A及び図7Bを参照して説明した通り、固体光源アレイ44a,44b側からの輻射光をPBS62に送って交番的な直交偏光対を発生させ、それをSLM60に送って立体視用画像を発生させている。
【0041】
図12に、輻射光結合器42内の光転向プリズム30を工夫し、図9A〜図10に示した固体光源アレイ使用型の構成に比べコンパクトな結合器42にした例の縦断面を示す。この例では、プリズム30の両側に固体光源アレイ44が配置されており、片側のアレイ44からの輻射方向D1は他側のアレイ44からの輻射方向D1’に対して逆向きになっている。プリズム30にはそれらの輻射光を受け入れうるよう転向面36が2個形成されており、そのどちらにも、ファセットとして光転向ファセット38及び入射ファセット28の二種類が形成されている。入射ファセット28は、対応するアレイ44からの輻射方向に対し直交するよう形成されている。この例では、抗反射コーティング面による反射で僅かな残留光が個々のレーザ光源26内に戻るため(再帰反射)、多々あるアレイ44をプリズム30に対しより容易に位置決めすることができる。その再帰反射は、微弱な外部共振器を発生させて光源26にモード不安定性をもたらす手段としても有用である。そうしたモードホッピングは他の用途ならノイズと見なされるものだが投射の場合は役に立つ。光源26のコヒーレンシ(及び光源26間コヒーレンシ)を緩和し、目立ったスペックルが表示面上に現れることを防いでくれるからである。加えて、この両面型の結合器42では、その内部に存する光源26の個数が多く、しかもその光源26による輻射光同士の隙間が別のアレイ上の光源26による輻射光で補間されるため、光同士の空間的混合度が更に高まる。このことも、スペックルの発生確率を下げ光学系をより均質化するのに役立っている。図13に、直交偏光対がPBS62越しにレンズ50に送られるようこのプリズム30を対で使用した例を示す。
【0042】
また、プリズム30に対するレーザ光源アレイ44の向きをこうした向きにするのが望ましいとはいえ、プリズム30の入射面32や出射面34に対する光の入射方向がその面に直交してなくても、アレイ44の輻射光同士を結合させることは可能である。必要なのは、寧ろ、方向転換された光が面34を通りプリズム30を出て行くときに、それらの光が互いにほぼ平行なビームを形成していることである。これを実現するには幾つかの事項を注意深く考慮しなければならない。例えば、各側のアレイ44から各面の入射ファセット28への入射角(その大きさが同じであるとは限らない)と、そのプリズム30による屈折角(素材の屈折率で決まる)との組合せを考慮すべきである。同様に、各面の光転向ファセット38における反射角(同じく面間で同一であるとは限らない)や、それとそのプリズム30による屈折角との組合せを考慮しないと、面34から出て行く光のビームが互いに平行にならないことがあり得る。
【0043】
図14に、上掲の光転向プリズム30を色成分毎に設けたプロジェクタ10の例を模式的なブロック図で示す。この例では、どの光変調アセンブリ40r,40g,40bにも、図13に倣い一対のプリズム30及び偏向選択性光送出部材が設けられている。それらのアセンブリ40r,40g,40bからは、まずは一方のプリズム30を通った光、次いで他方のプリズム30を通った光という要領で光が出射されてくる。その光はPBS62(及び図示しない偏向保持性の光導波路52)を介し、レンズ50更にはインテグレータ51へと供給されている。SLM60はDMD等のMEMSデバイスであり、入射光における偏向状態の直交関係が出射光でも保たれるようにその入射光を変調する。その変調が施された光、例えば個々のマイクロミラーで角度変調された光は、この例では厚膜被覆面68に送られている。この面68は、変調された光がダイクロイック結合器82に送られるよう、その入射角に応じ光を反射し又は透過させる。その結合器82は、その波長に応じ光を反射し又は透過させるダイクロイック面84を複数個並べた構成である。この結合器82では、アセンブリ40r,40g,40bで変調された光を互いに結合させ、投射光学系70を通る共通の光軸上に送出する。また、光源・SLM60間に光導波路52を設けると伝搬中に光の偏向状態が劣化しうるので、導波路52無しの構成にした方がよい。その構成では、偏向状態が揃うため、レンズレットアレイを使用し光を好適にユニフォマイズすることができるが、導波路52無しの構成では、導波路52を設けることで得られるメリット、例えばレーザ光源・SLM出射部間熱分離性向上等のメリットを享受することができない。また、導波路52がある構成でもない構成でも、レーザ光を近接場条件や遠方場条件で使用することができる。即ち、光の予備混合でスペックルの発生を抑え、インテグレータ51に向かう光の一様性を更に高めることができる。レーザ光のスペックルは、互いに独立している複数個のレーザ光源を組み合わせて単一の照光用光源にすることでも、レンズレットアレイ又はそれに類するユニフォマイザ光学系を使用することでも抑えることができる。
【0044】
上掲の諸例には、更なる変形を施すこともできる。例えば、VECSEL等のレーザ光源アレイに限らず、様々な種類の偏向レーザ光源を使用可能である。光転向プリズム30の形成素材としては様々な高光透過性素材を使用可能である。小出力向けなら樹脂製を使用することができ、大出力向けならガラス製がより適している。
【0045】
また、レーザ光源におけるエタンデュの小ささは、効率が高く光学系が単純になるという大きな長所につながるものの、既述の通り、高エネルギ密度の光がディジタル映写機内部品に供給されるという短所にもつながっている。システム内のレーザ光源に対し直接変調を施して交番的な直交偏光対を発生させるのでなければ、それに代わる手段で、直交偏光対をなす偏光のうち一方の偏向状態を回転させ又はその偏光を阻止することが必要になる。これを実現可能な手段としては電子偏向回転器やシャッタ、例えば液晶リターダや液晶シャッタがある。
【0046】
図16に、本発明の一実施形態に係る立体投射システムを示す。本実施形態では、広帯域な電子偏向回転器75を偏向スイッチャとして用い、出射光の偏向状態を左目用と右目用の間で次々に切り替えている。回転器75は光路上の変調ビーム合流点、即ち変調されたビームを結合させる結合器82よりも下流に位置している。諸光源の協働でカバーされる可視スペクトル域全体に亘り偏向状態を均等に回転させる必要上、この回転器75は広帯域でなければならない。回転器75をこの位置に配したのはビーム径が比較的大きくなるから、即ちリターダ素子上でのエネルギ密度が結合済ビームにおけるそれのほぼ下限値に下がるからである。更に、望みの偏向特性に応じ、回転器75の直前又は直後に1/4波長板76を配することもできる。この場合、どの光源に発するどのレーザ光でも偏向軸を同じ向きにするのが望ましいので、半波長板リターダか色選択性リターダを光路上に設けて偏向軸の向きを正すとよい。加えて、回転器75の上流に偏向器を設け、スプリアスな偏向状態の光を阻止し又は反射させるようにしてもよい。
【0047】
電子偏向回転器75の例としては可変液晶リターダがある。この種のリターダは製造が比較的容易で、入射光の偏向状態が円偏光ならそのリターダンス対波長特性が比較的均一になる。この種のデバイスを回転器75として使用する場合は、ビーム結合器82の直後即ち回転器75の直前に1/4波長板76を配するのが望ましい。部品数が多くなってもかまわなければ、各基本色光路上にそれぞれ1/4波長板を配してもよい。いずれにせよ、右目用画像・左目用画像間の移り変わりタイミングに同期し、その液晶リターダ75を作動させることで、立体投射を行うことができる。観客は、偏向眼鏡を装用し偏向保持性の表示面を見ることで、左目用の偏向状態に係る光のみを左目、それと直交する右目用の偏向状態に係る光のみを右目で、それぞれ捉えることができる。
【0048】
図15に他の実施形態を示す。本実施形態では、光変調アセンブリ40r,40g,40b毎に、狭帯域な電子偏向回転器75r,75g,75bが設けられている。これは、図16に示した実施形態で電子偏向回転器75に入射されるエネルギ密度が(低まったとはいえ)回転器75の損傷を完全には避けえない水準であることや、狭い光帯域光用の電子偏向回転器なら大抵はより容易に作成可能であることを、踏まえたものである。回転器75r,75g,75bは、1nm幅オーダの単一色狭スペクトル域にて、偏向状態をほぼ半波長分回転させることができればよいので、その構造が単純で直線偏光にて好適に作動する電子制御型の液晶リターダをそれらとして使用することができ、ひいては回転器コストを抑え且つその構成を簡略化することができる。更に、直接的なレーザ照光だとエネルギ密度が高まり“ホットスポット”が発生することがあるが、回転器75r,75g,75bがインテグレータ51の下流にあるためそれを防ぐことができる。この光/熱負荷バランスは、回転器75r,75g,75bの安定性及び性能の向上につながる。加えて、個々の回転器75r,75g,75bで扱われるのが単一帯域の無変調光であるので、図16を参照して前述した実施形態に比べ、回転器75r,75g,75bからより均一且つ低レベルなエネルギ密度で光を送り出すことができる。なお、先の例に倣い1/4波長板リターダを設けることもできる。その場所は各色光路上でもよいし、図16と同じくシステム内の輻射光結合器の下流でもよい。また、最適な偏向状態が得られるよう偏向器を電子偏向回転器より上流に配してもよい。
【0049】
また、図14に倣い、ある偏向状態及び波長域の光を相互結合させるものと、それに対し直交する偏向状態及び隣接する波長域の光を相互結合させるものをあわせ、都合複数個のレーザ光結合手段を用いることもできる。例えば、ある波長域に属する直線p偏光同士を結合させる第1結合手段と、それとは異なる波長域に属する直線s偏光同士を結合させる第2結合手段とを、光変調アセンブリ40b等に設ける。更に、第1結合手段で結合されたレーザ光と第2結合手段で結合されたレーザ光とを結合させるPBS62を設け、そのPBS62より下流の光路上に色選択性偏向リターダを設ける。そして、波長域の主スペクトラムを、第1結合手段・第2結合手段間で例えば15〜25nmだけ異なる波長にしておく。このようにすると、色選択性偏向リターダにて一方の結合手段に係る波長域を選択し、その波長域内の光だけその偏向状態を90°回転させ、隣接する波長域(他方の結合手段に係る波長域)における偏向状態に揃えることができる。この実施形態では、システム内でのエタンデュ増大が生じない。また、一方の結合手段で結合された光の偏向状態を90°回転させ、個々の目に画像を届ける光を発生させる手段としては、図15中の電子偏向回転器75を用いることができる。
【0050】
図18に他の実施形態を示す。本実施形態では、互いに直交する偏向状態に係る二群の固体光源アレイ間に機械的なシャッタを配することで、交番的な直交偏光対を生成し画像立体視体験を提供するようにしている。図中の輻射光結合器43は、一方の直線偏光を発生させる一群の固体光源アレイ44b例えばレーザ光源アレイ群、半波長板64を用いそれに直交する偏向状態の直線偏光を発生させる別群の固体光源アレイ44b例えばレーザ光源アレイ群、並びにそれらの直線偏光の光軸同士が合流する付近に配された回転シャッタ65を備えている。このシャッタ65のポジションは、制御ロジックプロセッサ90によるモータ66の制御で制御される。このシャッタ65としては、図19A(正面図)及び図19B(側面図)に示すように、2個以上のセグメントを有するガラス製のディスクを使用するとよい。図中の第1セグメント65aはそこへの入射光ほぼ全てを透過させる透過セグメントであり、第2セグメント65bはそこへの入射光ほぼ全てを反射させる反射セグメントである。アレイ44bに発した照明光67の光軸が透過セグメント65a上にあるときには、その光67がシャッタ65を透過する一方、アレイ44aからの出射光は図18中のビームダンプ69によって吸収されることとなる。逆に、アレイ44aに発した照明光67の光軸が反射セグメント65b上にあるときには、その光67がシャッタ65で反射される一方、アレイ44bからの出射光はダンプ69に送られることとなる。従って、SLM上の立体視用画像に同期するようモータ66を作動させてシャッタ65を回転させることにより、交番的な直交偏光対をSLMに送り、立体視用画像を発生させることができる。また、図19Aに示すように偏向状態間の遷移域73、即ち照明光67が2個のセグメント65a,65bに跨る領域もあることにも注意すべきである。この領域では、その偏向状態が異なる二種類の偏光が共にSLMに供給されてしまうため、ゴーストと呼ばれる右目画像左目画像間クロストークが発生する可能性がある。このクロストークは若干なら許容することができる。度を過ぎるようなら、遷移域73に相当する期間にSLMをオフ状態に切り替えることでそのクロストークを除去することができる。これは、光量損失の発生と引替であるので、遷移域73は狭い方がよい。遷移域73を狭くする手段としては、照明光67のスポット径を小さくする、シャッタ65のホイール部分を大きくする、実用上問題のない程度に照明光67の位置を外縁寄りにする、その併用等の手段がある。
【0051】
図20に他の実施形態を示す。本実施形態では、回転シャッタ65の使用形態を工夫し、光がビームダンプ69に行かずに回収されるようにしている。即ち、図18に示した実施形態では、SLMに送られる光の偏向状態を交番させうる反面、50%以上の光がダンプ69に送られて損失となり、システム効率が原理的に従来技術水準まで低下する可能性があるのに対して、図中の輻射光結合器45では、直交偏光対が形成されるよう一方又は双方の固体光源アレイ44a,44bの出射光に偏向状態の回転調整を施すと共に、前掲の例でダンプ69が置かれていた光路上に半波長板64を配し、その半波長板64で光の偏向状態を変化させている。半波長板64を経た光(回収光)は複数個のミラー71で方向転換され、シャッタ65から直ちに出射されていく光(直接光)と隣り合わせになるよう出射されていく。半波長板64を経ているので、回収光は直接光と同じ偏向状態になっている。従って、この構成では、アレイ44a,44bに発した光が互いに同じ偏向状態になり、インテグレータ51やその先のSLMへと送られていく。前記同様、ディスク状のシャッタ65をモータ66で回転させることで、一方の偏向状態からそれに直交する偏向状態へと光の偏向状態を交番させることができる。
【0052】
図18に示した実施形態と比較すると、図20に示した実施形態ではその光源側エタンデュが二倍になっていることが判る。即ち、直接光と回収光が同じ角度空間内で隣り合わせになるので、ユニフォマイザ光学系における光の断面積が二倍になることが判る。輻射光結合器43より下流の光学系でこの大きなエタンデュをうまく扱えないと効率が低下するが、輻射元であるレーザ光源のエタンデュがそもそも小さいので、それは特に困難な事柄ではない。また、エタンデュが大きくならないよう、個々のレーザ光源から来る光をいくらか重複させることもできる。より望ましいのは角度的に重複させることである。それは、大抵の投射レンズがテレセントリックであるため、その角度空間内での混合により、どの画素についても均一な照光を容易に実現できるからである。
【0053】
図21に他の実施形態を示す。本実施形態では、上掲の偏光回収をより少数の部品で実現することができる。即ち、図20に示した実施形態における複数個のミラー71に代え、プリズム72(又は図示しない1個のミラー)が使用されており、そのプリズム72は、光路の畳み方が単純になり且つ光路間の間隔が小さくなるよう、ディスク状のシャッタ65のすぐそばに配されている。図22に、この図に示した構成を輻射光結合器45r,45g,45bとして用い交番的な直交偏光対を発生させる投射システムの例を示す。この例では、結合器45r,45g,45bからの出射光が対応する色チャネル内のSLM60に直に送られ、ダイクロイック面84にて互いに結合された後、投射レンズ70のアセンブリによって投射されている。
【0054】
この仕組みは、遷移域でも光損失増加が生じないという点で、非立体投射にも適している。従って、従前の例と違い、スループット効率を高めるため非立体投射時に回転シャッタ65のディスクや偏向スイッチャを外す必要はない。また、立体視用でない画像を投射する際にモータ66への通電を停止することで、寿命及びパワーの消費を抑えることができ、またシャッタ65の透過セグメントを光路上に置くことで、不要なコーティング損傷や熱ビルドアップを抑えることができる。
【0055】
図19A及び図19Bに示した回転シャッタ機構には、また、交番的な直交偏光対を発生させる機能に加え、スペックルを抑える機能も備わっている。スペックルは、前述の通りレーザ光投射に潜む問題であるが、レーザ光源の使用個数が複数だと発生しにくくなる。全体でのレーザ光源(間)コヒーレンシが下がるからである。とはいえ、小スクリーン投射向けレーザ光源の使用個数を少なくすると、コヒーレンシがいくらか残留する可能性がある。シャッタの片面又は両面をコヒーレンシ攪乱性のコーティングで被覆すれば、そうした残留コヒーレンシは発生しにくくなる。加えて、光を空間的乃至角度的に混合するユニフォマイザ光学系と共に、ディスク状のシャッタにおける波面偏角に応じ光路を変化させる手段を使用することで、残留コヒーレンシひいてはスペックルの発生を更に抑えることができる。
【0056】
残留コヒーレンシによるスペックルを抑圧乃至除去する手段としては、シャッタ65のディスク即ち空間的に回転する部分の表面粗さを、目に見えるスペックルがなくなる程度に高く(但し光源出射角が大きく増さない程度に低く)する、という手段もある。例えば、シャッタ65の片側の面65c(図19B参照)を機械加工して散光面とし、逆側の面を研磨面として一方のセグメントに抗反射コーティング、他方のセグメントに鏡面コーティングを施せばよい。或いは、前述の通り面65c,65d双方を研磨するものの、光学的に平坦といえる面にはせず、光路差のある複数通りの波が回転周波数と同期して光ビーム内に誘起されるようにしてもよい。照明光の角度が大きく拡がらず、従ってエタンデュが増大しないという点では、これは非研磨面に比べ望ましいものである。
【0057】
また、DLPデバイス等のMEMS型デバイスでは、金属製(通常はアルミニウム製)の反射器が使用されることが多い。金属製の反射器を使用するのは、光の入射方向が若干ずれても、反射光にほとんど位相シフトが生じないからである。その入射光の偏向軸は、DLPデバイスによる反射で変化しないよう、図17に示したDLPデバイス内マイクロミラー74の枢動軸Aに対し直交させ又は平行にするのが望ましい。但し、マイクロミラー74の表面に対し別の角度をなす偏向状態でも、残留偏向を抑え、それによって二種偏向状態間クロストークを減らすことは可能である。
【0058】
更に、DLPデバイスでは従来からカバープレート気密外装が採用されているが、これにも改良する余地がある。まず、従来型の外装では、周囲環境に対する封止と共に開口面の無欠陥化(散乱による画質劣化の防止)を目的として、窓枠付きカバーにレーザ熔接及び熱熔融で窓を装着するプロセスが使用されている。このプロセスでもたらされる複屈折性は無視できないレベルであり、品別のばらつきも呈するものとなる。幾つかの試料を調べたところ、3nm超のリターダンスばらつきが見られた。こうしたばらつきがあると、そのデバイスから出射される光の偏向状態を揃えることが難しくなる。この問題を解決するには、DLPデバイスから出射される偏光の偏向状態がよりよく揃うよう、その窓付き外装の仕組みを改める必要がある。例えば、SF57(商品名)のようにその応力誘起又は熱誘起複屈折係数が低いガラスで外装を形成すればよい。或いは、窓枠への窓の装着に応力非発生型の手法、例えば室温硬化素材(RTV)で窓を所定位置に接着する手法を使用してもよい。封止性を更に高めるには、その窓枠付きカバーが窓に対してはリジッド(不動的)だがチップ基板実装面に対してはフレキシブル(可撓的)になるよう、それらを相互装着するのもよい。その関係を逆転させた形態も採ることができる。更に、窓を窓枠に接着し窓枠付きカバーをチップ実装面に接着するプロセスは、そのときの温度がチップ作動温度から大きく外れないよう、注意深く制御しながら実行した方がよい。チップ作動温度と実装時温度との差による応力発生を防ぐためである。
【0059】
偏向レーザ光源の使用は、立体視用画像の投射に関わる多くのメリットを有している。例えば、前述した従来型イルミネーション光源に比べ高効率であるため、一部の従来型2Dプロジェクタで実現されていた画像輝度をより容易に達成することができる。
【0060】
また、本発明に関し詳細に説明するため、その好適な実施形態のうち特定のものを子細に参照したが、本発明の技術的範囲には様々な変形物や改良物も包含されるので、その点を了解頂きたい。例えば、レーザ光源アレイを使用する例で詳細な説明を行ったが、それに代えて別の固体発光部材を使用することもできる。個々の光路上に補助的なレンズ乃至光学部品を付加することもできる。本願記載の光学アセンブリにおける光のユニフォマイズ乃至インテグレーションと中継の順序は、結果に大きな差を発生させることなく反転させることができる。
【0061】
このように、本発明によれば、高輝度投射やディジタル3D映画の投射に使用可能な偏向利用型の装置及び方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 プロジェクタ、12 光源、14 プリズムアセンブリ、16 位置、18 光学系、20,20r,20g,20b,60 空間光変調器(SLM)、26 レーザ光源、28 入射ファセット、29,70 投射レンズ/光学系、30 光転向プリズム、32 入射面、34 出射面、36 転向面、38 光転向ファセット、40r,40g,40b 光変調アセンブリ、42,45,45r,45g,45b 輻射光結合器、43 シャッタアセンブリ付き輻射光結合器、44,44’,44a,44b 固体(レーザ)光源アレイ、46,71 ミラー、50,54 レンズ、51 インテグレータ、52 光導波路、62 偏光ビームスプリッタ、64 半波長板、65 回転シャッタ、65a 透過セグメント、65 反射セグメント、65c 散光(加工)面、65d 研磨(被覆)面、66 モータ、67 照明光、68 厚膜被覆面、69 ビームダンプ、72 プリズム、73 遷移域、74 マイクロミラー、75,75r,75g,75b 電子偏向回転器、76 1/4波長板、80 表示面、82 ダイクロイック結合器、84 ダイクロイック面、90 制御ロジックプロセッサ、A 軸、D1,D1’ 輻射方向、D2 出射方向、A1 光源面積、A2 SLM面積、θ1 光源見込み角、θ2 SLM見込み角、R レッド、G グリーン、B ブルー、L 長手方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏向軸を固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる偏向回転器、並びにその偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項2】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、
隣り合うスペクトル域にて相直交する方向に光を輻射する二種類の固体光源と、
それらを結合させる偏光ビームスプリッタと、
その偏向ビームスプリッタの下流にて一方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸を回転させ他方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸に揃える色選択性偏向リターダ手段と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項3】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項4】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記偏向回転器が液晶デバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項5】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項6】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、第1固体光源からの偏光及び第2固体光源からの偏光が辿る光路上にありそれら二種類の偏光を可制御的且つ交番的に光軸上に送ることで時間的に交番する直交偏光対を発生させる回転要素、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項7】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記第1固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項8】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項9】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有するディスクである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項10】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項11】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、第1固体光源からの偏光及び第2固体光源からの偏光が辿る光路上にありそれら二種類の偏光のうち一方を交番的に照光先に送る回転要素、それに直交する他方の偏光をその偏向軸が照光先に送られた偏光の偏向軸に揃うよう回転させるリターダ手段、偏向軸が揃うよう回転された方の偏光を照光先に送る方向転換手段、それら二種類の偏光を減偏向なく混合させる光インテグレータ手段、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項12】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有するディスクである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項13】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記光インテグレータ手段がレンズレットアレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項14】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項15】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記第1固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項16】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、両者の偏向状態が互いに一致するよう第1又は第2固体光源からの偏光を交番的に回転させる交番的偏光変更手段、空間光変調器上での偏向変動が小さくなるよう第1固体光源からの偏光と第2固体光源からの偏光を結合させ単一の照光用偏光として所望方向に送る供給手段、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項17】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記交番的偏光変更手段が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有する回転ディスクと、反射又は透過セグメントを通る光路上に配された半波長リターダと、を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項18】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記供給手段が、その光路上に配された少なくとも1個のレンズレットアレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項19】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項20】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記供給手段が、空間的な重複、角度的な重複又はその併用により偏光同士を結合させる立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項21】
a)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏光の偏向軸を変調器への画像データ供給に同期し固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる1個又は複数個の狭帯域な偏向回転器、並びにその偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項22】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、
隣り合うスペクトル域にて相直交する方向に光を輻射する二種類の固体光源と、
それらを結合させる偏光ビームスプリッタと、
その偏向ビームスプリッタの下流にて一方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸を回転させ他方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸に揃える色選択性偏向リターダ手段と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項23】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項24】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記偏向回転器が液晶デバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項25】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項1】
a)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏向軸を固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる偏向回転器、並びにその偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項2】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、
隣り合うスペクトル域にて相直交する方向に光を輻射する二種類の固体光源と、
それらを結合させる偏光ビームスプリッタと、
その偏向ビームスプリッタの下流にて一方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸を回転させ他方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸に揃える色選択性偏向リターダ手段と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項3】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項4】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記偏向回転器が液晶デバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項5】
請求項1記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項6】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、第1固体光源からの偏光及び第2固体光源からの偏光が辿る光路上にありそれら二種類の偏光を可制御的且つ交番的に光軸上に送ることで時間的に交番する直交偏光対を発生させる回転要素、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項7】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記第1固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項8】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項9】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有するディスクである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項10】
請求項6記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項11】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、第1固体光源からの偏光及び第2固体光源からの偏光が辿る光路上にありそれら二種類の偏光のうち一方を交番的に照光先に送る回転要素、それに直交する他方の偏光をその偏向軸が照光先に送られた偏光の偏向軸に揃うよう回転させるリターダ手段、偏向軸が揃うよう回転された方の偏光を照光先に送る方向転換手段、それら二種類の偏光を減偏向なく混合させる光インテグレータ手段、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項12】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有するディスクである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項13】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記光インテグレータ手段がレンズレットアレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項14】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項15】
請求項11記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記第1固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項16】
a)第1偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第1固体光源、第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する偏光を照光用に発生させる第2固体光源、両者の偏向状態が互いに一致するよう第1又は第2固体光源からの偏光を交番的に回転させる交番的偏光変更手段、空間光変調器上での偏向変動が小さくなるよう第1固体光源からの偏光と第2固体光源からの偏光を結合させ単一の照光用偏光として所望方向に送る供給手段、並びにその作動中に光路沿いに入射してきた偏光を変調する微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器上の相応な画像データにマッチするよう偏向軸の回転を経時的に制御する同期手段と、
c)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項17】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記交番的偏光変更手段が、反射セグメント及び透過セグメントを少なくとも1個有する回転ディスクと、反射又は透過セグメントを通る光路上に配された半波長リターダと、を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項18】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記供給手段が、その光路上に配された少なくとも1個のレンズレットアレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項19】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記回転要素がレーザ光のスペックルを抑える性質を有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項20】
請求項16記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記供給手段が、空間的な重複、角度的な重複又はその併用により偏光同士を結合させる立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項21】
a)照光用の偏光を発生させる1個又は複数個の固体光源、その固体光源で発生した偏光が辿る光路上にありその偏光の偏向軸を変調器への画像データ供給に同期し固体光源での第1偏向軸から第2偏向軸へと可制御的に回転させる1個又は複数個の狭帯域な偏向回転器、並びにその偏光が辿る光路上にありその偏光を変調するよう作動させうる微細電気機械式の空間光変調器を、銘々に有する複数個の光変調アセンブリと、
b)空間光変調器にて第1偏向軸を有する偏光から生じる第1変調光及び第2偏向軸を有する偏光から生じる第2変調光を表示面方向に送る投射光学系と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項22】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、
隣り合うスペクトル域にて相直交する方向に光を輻射する二種類の固体光源と、
それらを結合させる偏光ビームスプリッタと、
その偏向ビームスプリッタの下流にて一方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸を回転させ他方のスペクトル域に係る輻射光の偏向軸に揃える色選択性偏向リターダ手段と、
を備える立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項23】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記空間光変調器がマイクロミラーデバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項24】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記偏向回転器が液晶デバイスである立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【請求項25】
請求項21記載の立体視用ディジタル画像プロジェクタであって、上記固体光源がレーザ光源アレイを有する立体視用ディジタル画像プロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2011−517785(P2011−517785A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547616(P2010−547616)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/000797
【国際公開番号】WO2009/108269
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/000797
【国際公開番号】WO2009/108269
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】
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