説明

固体撮像素子の製造方法及び固体撮像素子

【課題】感度を低下させずに小型化を実現することが可能な固体撮像素子の製造方法を提供する。
【解決手段】W又はAl等の光を透過しない遮光材料からなる遮光材料膜71を、電荷転送電極3の形状を反映した形状となるように、CVD又はスパッタによって堆積する(図3(a))。次に、フォトダイオード30の一部の上方に形成された遮光材料膜71をエッチング除去して、パターニングされた遮光膜71を形成する(図3(b))。次に、図3(b)に示す状態からスパッタエッチングを行う。ここでは例えばアルゴンガスを用いたスパッタエッチングを行う。スパッタエッチングを行うと、エッジ部分に電界が集中するため、遮光材料膜71のシリコン基板1に平行な面とシリコン基板1に垂直な面との境界部分が集中的に削られてなだらかになる(図3(c))。以上の工程により、固体撮像素子の遮光膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板内に形成された光電変換部と、前記光電変換部で発生した電荷を転送する前記半導体基板上に形成された電荷転送電極を含む電荷転送部と、前記半導体基板内の前記光電変換部の一部以外に光が入らないようにするための遮光膜とを有する固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD型の固体撮像素子は、半導体基板上に設けた遮光膜に開口を設けることにより、光電変換素子に入射する光を制限している(例えば特許文献1参照)。近年の固体撮像素子は小型化が進んでいるため、光電変換素子からトップのマイクロレンズまでの距離も縮む傾向にある。例えば、図5(a)に示すように、光電変換素子102とマイクロレンズ100との距離が十分にある場合は、マイクロレンズ100で集光された光を全て遮光膜101の開口内に入射させることができるが、図5(b)に示すように、光電変換素子102とマイクロレンズ100との距離が図5(a)の場合よりも縮まると、マイクロレンズ100で集光された光の一部が遮光膜101によってけられてしまうため、遮光膜101の開口内に入射させることできる光量が図5(a)の場合よりも減少してしまい、感度が低下してしまう。開口を大きくすればこのような状況は回避できるが、開口の大きさは、遮光膜の遮光性能等の関係から、それを大きくすることには限度がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−228140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、感度を低下させずに小型化を実現することが可能な固体撮像素子の製造方法及び固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、半導体基板内に形成された光電変換部と、前記光電変換部で発生した電荷を転送する前記半導体基板上に形成された電荷転送電極を含む電荷転送部と、前記半導体基板内の前記光電変換部の一部以外に光が入らないようにするための遮光膜とを有する固体撮像素子の製造方法であって、
前記遮光膜の形成工程が、前記電荷転送電極の形成後、前記電荷転送電極上方に、前記電荷転送電極の形状を反映した形状の遮光材料膜を形成する遮光材料膜形成工程と、前記光電変換部の一部の上方に形成された前記遮光材料膜を除去して前記遮光膜を形成する遮光膜形成工程と、前記遮光材料膜の前記半導体基板に平行な表面と前記半導体基板に垂直な表面との境界部分を削る削り工程とを含む。
【0006】
この方法によれば、光電変換部とその上方に設けるマイクロレンズとの距離を縮めた小型の固体撮像素子を、感度を低下させることなく製造することができる。
【0007】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、前記削り工程を前記遮光膜形成工程の前に行う。
【0008】
この方法によれば、削り工程において、光電変換部へのダメージを少なくすることができる。
【0009】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、前記削り工程を前記遮光膜形成工程の後に行う。
【0010】
この方法によれば、遮光膜材料の除去によって境界部分が新たに形成された際、この境界部分も削ることができるため、光電変換部に集める光の量をより多くすることができ、感度をより向上させることができる。
【0011】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、前記遮光膜形成工程では、前記遮光膜が、前記半導体基板に平行で且つ高さの異なる複数の表面を含むように前記遮光材料膜を除去する。
【0012】
この方法によれば、遮光膜の遮光性能を上げることができる。
【0013】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、前記削り工程が、前記境界部分をスパッタエッチングによって削る。
【0014】
本発明の固体撮像素子は、半導体基板内に形成された光電変換部と、前記光電変換部で発生した電荷を転送する前記半導体基板上に形成された電荷転送電極を含む電荷転送部と、前記半導体基板内の前記光電変換部の一部以外に光が入らないようにするための遮光膜とを含み、前記遮光膜が前記半導体基板に平行で且つ高さの異なる複数の表面を含む固体撮像素子であって、前記遮光膜の前記半導体基板に平行な表面と前記半導体基板に垂直な表面との境界部分がなだらかになっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感度を低下させずに小型化を実現することが可能な固体撮像素子の製造方法及び固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態を説明するための固体撮像素子の平面模式図である。図2は、図1のA−A線断面模式図である。
図1,2に示す固体撮像素子は、n型のシリコン基板1表面部に光電変換部であるフォトダイオード30が多数形成され、各フォトダイオード30で発生した信号電荷を列方向(図2中のY方向)に転送するための電荷転送部40が、列方向に配設された複数のフォトダイオード30からなる複数のフォトダイオード列の間を蛇行して形成される。
【0018】
電荷転送部40は、複数のフォトダイオード列の各々に対応してシリコン基板1表面部の列方向に形成された複数本の電荷転送チャネル33と、電荷転送チャネル33の上層に形成された単層電極構造の電荷転送電極3(第1の電極3a、第2の電極3b)と、フォトダイオード30で発生した電荷を電荷転送チャネル33に読み出すための電荷読み出し領域34とを含む。電荷転送電極3は、行方向に配設された複数のフォトダイオード30からなる複数のフォトダイオード行の間を全体として行方向(図2中のX方向)に延在する蛇行形状となっている。電荷転送電極3は、第1の電極3aの上に第2の電極3bの一部が重なった二層電極構造であっても良い。
【0019】
図2に示すように、シリコン基板1の表面部にはpウェル層9が形成され、pウェル層9の表面部にはp領域30aが形成され、p領域30aの下にはn領域30bが形成され、p領域30aとn領域30bがフォトダイオード30を構成し、フォトダイオード30で発生した信号電荷は、n領域30bに蓄積される。
【0020】
p領域30aの右側には、少し離間してn領域からなる電荷転送チャネル33が形成される。n領域30bと電荷転送チャネル33の間のpウェル層9には電荷読み出し領域34が形成される。
【0021】
シリコン基板1表面にはゲート酸化膜2が形成され、電荷読み出し領域34と電荷転送チャネル33の上には、ゲート酸化膜2を介して、第1の電極3aと第2の電極3bが形成される。第1の電極3aと第2の電極3bの間は電極間絶縁膜5によって絶縁される。垂直転送チャネル33の右側にはp+領域からなるチャネルストップ32が設けられ、隣接するフォトダイオード30との分離が図られる。
【0022】
電荷転送電極3の上には酸化シリコン膜6が形成され、更にその上に中間層70が形成される。中間層70のうち、71は遮光膜、72はBPSG(borophospho silicate glass)からなる絶縁膜、73はP−SiNからなる絶縁膜(パッシベーション膜)、74は透明樹脂膜からなる平坦化層である。遮光膜71は、フォトダイオード30の開口部分を除いて設けられており、シリコン基板1内のフォトダイオード30の一部以外に光が入らないようにしている。中間層70上方には、カラーフィルタ50とマイクロレンズ60が設けられる。カラーフィルタ50とマイクロレンズ60との間は、絶縁性の透明樹脂等からなる平坦化層61が充填される。
【0023】
本実施形態の固体撮像素子は、フォトダイオード30で発生した信号電荷がn領域30bに蓄積され、ここに蓄積された信号電荷が、電荷転送チャネル33によって列方向に転送され、転送された信号電荷が図示しない電荷転送路(HCCD)によって行方向に転送され、転送された信号電荷に応じた色信号が図示しないアンプから出力される構成である。
【0024】
次に上述した固体撮像素子の製造工程のうち、遮光膜の形成工程について図3を参照して説明する。尚、図3では、図2に示した構成の一部を省略してある。又、図2と図3は固体撮像素子の断面を模式的に示したものであるため、その縮尺は正確なものではない。
【0025】
シリコン基板1上にゲート酸化膜2を介して電荷転送電極3(第1の電極3a及び第2の電極3b)を形成し、その周りに絶縁膜6を形成した後、酸化シリコン膜からなる絶縁膜72を形成する。そして、その上に、W又はAl等の光を透過しない遮光材料からなる遮光材料膜71を、電荷転送電極3の形状を反映した形状となるように、CVD(成膜条件例;ガス種,ガス流量:WF=50sccm、Ar=3000sccm、H=400sccm、N=300sccm、圧力:90Torr、基板温度:450℃)によって形成する(図3(a))。ここで形成する遮光材料膜71の厚みは、例えば2000〜3000Åとする。尚、ここで形成した遮光材料膜71表面には微小の凹凸が存在するため、完全な面とはなっていないが、この凹凸は無視するものとする。
【0026】
次に、レジストを塗布し、露光及び現像を行ってフォトダイオード30の一部(開口をあけたい部分)以外をマスクするレジストパターンを形成し、このレジストパターンを用いて、フォトダイオード30の一部の上方に形成された遮光材料膜71をエッチング除去して、パターニングされた遮光膜71を形成する(図3(b))。このとき、最終的に形成される遮光膜71が、シリコン基板1に平行で且つそれぞれ異なる高さの複数の表面を有するように遮光材料膜71をエッチング除去する。例えば、図3(b)に示した破線よりも開口側の部分を残すように遮光材料膜71を除去する。このようにすることで、遮光膜71の遮光性能を向上させることができる。
【0027】
尚、図3(b)において、最終的に形成される遮光膜71が、シリコン基板1に平行で且つそれぞれ異なる高さの複数の表面を有しないように遮光材料膜71をエッチング除去しても構わない。例えば、図3(b)の遮光膜71の破線よりも開口側の部分を除去してしまっても良い。尚、図3(b)までの製造工程は、従来の固体撮像素子の製造工程と同様である。
【0028】
次に、図3(b)に示す状態からスパッタエッチングを行う。ここでは例えばアルゴンガスを用いたスパッタエッチングを行う。この時のスパッタエッチングの条件は、例えば、パワー:100〜200W、圧力:10〜50mTorr、ガス流量:100sccmである。スパッタエッチングを行うと、エッジ部分に電界が集中するため、遮光材料膜71のシリコン基板1に平行な面とシリコン基板1に垂直な面との境界部分が集中的に削られてなだらかになる(図3(c))。以上の工程により、図2に示すような固体撮像素子の遮光膜を形成する。
【0029】
図3(b)に示す構成は、従来の固体撮像素子と同様の構成であり、この構成では、角度φ1で示される範囲から光を遮光膜71の開口に集めることができるのに対し、図3(c)に示す構成では、角度φ1よりも大きい角度φ2で示される範囲から光を遮光膜71の開口に集めることができる。このため、フォトダイオード30とマイクロレンズ63との距離が縮んでも、開口のサイズを変えることなく、開口に入射される光量の減少を抑えることができる。
【0030】
このように、本実施形態の製造方法によれば、フォトダイオード30とマイクロレンズ63との距離を縮めた場合、従来は遮光膜によってけられて開口に入射させることができなかった光を、遮光膜のエッジ部分をなだらかにする処理を行っておくことによって入射させることができるため、固体撮像素子の感度の低下を防ぎながら小型化を実現することができる。又、開口の大きさは変えずに上記効果を得ることができる。
【0031】
尚、以上の説明では、フォトダイオード30の一部の上方に形成された遮光材料膜71をエッチング除去した後に、スパッタエッチングを行うものとしたが、フォトダイオード30の一部の上方に形成された遮光材料膜71をエッチング除去する前に、スパッタエッチングを行うことでも、光量の減少を防ぐ効果を得ることができる。この場合は、図3(a)の状態からスパッタエッチングを行って、遮光材料膜71のシリコン基板1に平行な面とシリコン基板1に垂直な面との境界部分をなだらかにしておく。その後、フォトダイオード30の一部の上方に形成された遮光材料膜71をエッチング除去して、パターニングされた遮光膜71を形成するようにすれば良い。このように、遮光材料膜71をパターニングする前にスパッタエッチングを行っておくことで、スパッタエッチング時のシリコン基板1に与えるダメージを少なくすることができるため、固体撮像素子の性能劣化等を防ぐことができる。
【0032】
又、図3(b)の状態から、遮光膜71を保護するための酸化シリコン膜等の保護膜75を図4(a)に示すように形成し、この後、スパッタエッチングを行って、図4(b)に示すように、遮光材料膜71及び保護膜75それぞれのシリコン基板1に平行な面とシリコン基板1に垂直な面との境界部分をなだらかにするようにしても良い。
【0033】
尚、本実施形態において「なだらか」とは、スパッタエッチングによって電界が集中して削れてしまう程、角張っていない状態のことを言う。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態を説明するための固体撮像素子の平面模式図
【図2】図1のA−A線断面模式図
【図3】本発明の実施形態を説明するための固体撮像素子の遮光膜の製造工程を示す図
【図4】本発明の実施形態を説明するための固体撮像素子の遮光膜の製造工程を示す図
【図5】従来の固体撮像素子を小型化したときの問題を説明するための図
【符号の説明】
【0035】
1 シリコン基板
2 ゲート酸化膜
3a 第1の電極
3b 第2の電極
3 電荷転送電極
5 電極間絶縁膜
6 絶縁膜
71 遮光膜
72 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板内に形成された光電変換部と、前記光電変換部で発生した電荷を転送する前記半導体基板上に形成された電荷転送電極を含む電荷転送部と、前記半導体基板内の前記光電変換部の一部以外に光が入らないようにするための遮光膜とを有する固体撮像素子の製造方法であって、
前記遮光膜の形成工程が、
前記電荷転送電極の形成後、前記電荷転送電極上方に、前記電荷転送電極の形状を反映した形状の遮光材料膜を形成する遮光材料膜形成工程と、
前記光電変換部の一部の上方に形成された前記遮光材料膜を除去して前記遮光膜を形成する遮光膜形成工程と、
前記遮光材料膜の前記半導体基板に平行な表面と前記半導体基板に垂直な表面との境界部分を削る削り工程とを含む固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記削り工程は、前記遮光膜形成工程の前に行う固体撮像素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記削り工程は、前記遮光膜形成工程の後に行う固体撮像素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記遮光膜形成工程では、前記遮光膜が、前記半導体基板に平行で且つ高さの異なる複数の表面を含むように前記遮光材料膜を除去する固体撮像素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記削り工程は、前記境界部分をスパッタエッチングによって削る固体撮像素子の製造方法。
【請求項6】
半導体基板内に形成された光電変換部と、前記光電変換部で発生した電荷を転送する前記半導体基板上に形成された電荷転送電極を含む電荷転送部と、前記半導体基板内の前記光電変換部の一部以外に光が入らないようにするための遮光膜とを含み、前記遮光膜が前記半導体基板に平行で且つ高さの異なる複数の表面を含む固体撮像素子であって、
前記遮光膜の前記半導体基板に平行な表面と前記半導体基板に垂直な表面との境界部分がなだらかになっている固体撮像素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−278691(P2006−278691A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95252(P2005−95252)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】