説明

固体電解質型燃料電池

【課題】発電出力を変更して負荷追従するとき、燃料電池セルの固体差や外気環境の変化等があっても、燃料電池セルを好ましい状態に適応させることができる固体電解質型燃料電池(SOFC)を提供する
【解決手段】本発明のSOFCは、発電室(10)内に配置された燃料電池セル84と、燃料電池セルに燃料を供給する燃料流量供給ユニット38と、発電室温度(T1)を測定する発電室温度センサ142と、要求発電量に対応して燃料供給量を燃料供給制御特性に基づいて変更する制御部110と、を有し、制御部は、下限温度値(Ta)と上限温度値(Tb)の間に温度監視帯域を備え、制御部は更に、発電室温度が、温度監視帯域外となった場合に、発電室温度が温度監視帯域内に保持されるように、発電室温度センサからの信号に基づいて燃料供給量を補正する適応制御手段を備え、適応制御手段は、温度監視帯域を、予め決定された条件下で、温度監視帯域を変更する温度監視帯域変更手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、要求発電量に対応して発電出力値を変更することができる固体電解質型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で発電反応を生じさせて発電を行う燃料電池である。
【0003】
このSOFCにおいては、酸化物イオン導電性固体電解質を通過した酸素イオンと燃料との反応によって水蒸気又は二酸化炭素を生成し、電気エネルギー及び熱エネルギーが発生する。電気エネルギーは、SOFC外部に取り出されて、各種電気的用途に使用される。一方、熱エネルギーは、燃料、SOFC及び酸化剤等に伝達され、これらの温度上昇に使用される。
【0004】
従来のSOFCは発電出力が一定に保たれた状態で運転されるのが一般的であったが、夜間に電気需要が殆どない施設や昼夜の電気需要が大きく変化する施設などへ、SOFCを設置する場合には、要求発電量に応じて、発電出力値を変化させる必要がある。
この要求発電量に応じて発電出力値を変化させる際に、SOFCの反応温度が急激に変化することを防止するようにSOFCを制御することにより、SOFCの作動状況を短期間で安定化するようにしたSOFCが、特許文献1に提案されている。
【0005】
即ち、この特許文献1のSOFCにおいては、SOFCの反応温度Tを発電出力変更前のSOFCの反応温度T0 が、「T0−10≦T≦T0+10」を満足するように、酸化剤供給量及び酸化剤温度の一方又は双方を制御することにより、SOFCの反応温度が急激に変化することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−115315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1のように、SOFCの反応温度Tを発電出力変更前の反応温度T0を中心とした所定範囲(±10℃)に保持することは、単にSOFCの各種の運転パラメータを適宜制御してSOFC運転条件を最適化する場合に比べて、SOFCを短時間で安定化させることができるので、それ自体は有用な技術である。
【0008】
ところで、SOFCを製品化する場合、SOFCの燃料電池セルが異なる材料の複数層を備えたセラミック品であり、そのため、SOFC1台に数十個、数百個と設けられる燃料電池セルの1本づつを安定的に作ることは成型や焼成の面で極めて難しい。さらに、各燃料電池セルに、材料の組成ばらつきや形状にわずかなソリが発生する。この結果、燃料電池セルに固体差が生じ、これにより、このような多数の燃料電池セルを備えたSOFCという装置(システム)間においても大きな固体差が生じるという問題がある。しかしながら、このような不確定な固体差を考慮して、燃料電池セルに大きなダメージを与えないように、SOFCを運転制御することは極めて困難なものであった。
【0009】
具体的には、要求発電量に応じて発電出力値を変化させて負荷追従する場合、例えば、要求発電量が低下したときは、燃料の供給量を低下させて無駄なエネルギーの消費を抑える必要があるが、その際、開発段階で得た実験値から予め作成した燃料供給制御特性に基いて燃料の供給量を的確に低下制御させる必要がある。しかしながら、負荷追従する場合、上述した燃料電池セル自体が持つ不確定な固体差により、発電反応が狙ったようには行われず、燃料電池セルの温度が制御上狙っている発電反応に好適な温度帯域から外れてしまう場合がある。このような理想的ではない状態下(好適な温度帯域外)で、発電反応を行うと、燃料電池セルに大きな負担がかかり、燃料電池セルの耐久性が低下するという問題がある。製品化するためには、このようなSOFC特有の問題を解決しなければならない。
【0010】
さらに、SOFCが発電反応に最適な温度帯域から外れる要因として、外気が異常な低温や高温になった場合や、異常な高湿度や乾燥状態になった場合も、燃料の燃焼状態や改質状態が狙った安定状態からずれ、それにより、燃料電池セルの温度が好適な温度帯域から外れてしまい、燃料電池セルの耐久性が低下するという問題もある。
【0011】
特許文献1のSOFCでは、発電出力の変化前と変化後で燃料電池セルの温度の急変動を抑えることはできるが、上述した、新たな課題を全て完全に解決できるものではない。具体的には、特許文献1のSOFCは、あくまでも発電出力変更前の反応温度T0から反応変化後の温度Tが±10度以上は変化しないようにすることにより、反応温度の急変化を防止したものである。そのため、現在の反応温度Tが発電出力変更後にT0に変更されるため、燃料電池セルの温度帯域は、徐々にずれていく。このように、特許文献1のSOFCは、瞬間的な温度変化を防止することにより、温度の急変に伴う燃料電池セルへのダメージは防止できても、発電反応に最適な温度帯域を維持できるものではない。その結果、特許文献1のものでは、燃料供給制御特性に基づき的確に制御しようとしても、燃料電池セルの個体差に起因して、反応温度が発電反応に最適な温度帯域から除々にずれていき、ついには、燃料電池セルの耐久性を低下させることになるので、上述した問題を解決することはできない。即ち、特許文献1のSOFCは、本発明者らが見出した、上述した燃料電池セルの個体差により、燃料電池セルの温度が理想の温度帯域からずれてしまうという問題を解決することはできないものである。
【0012】
本発明は、上述した新たな課題を解決するためになされたものであり、要求発電量に応じて発電出力を変更して負荷追従するとき、燃料電池セルの固体差や大きな外気環境の変化等があっても、適応制御を行うことにより、燃料電池セルの個体差や外気環境の変化を吸収して、反応温度を発電反応に最適な温度帯域を維持して期待通りの性能を発揮させることができ、さらに、燃料電池セルの耐久性が低下することを防止した固体電解質型燃料電池(SOFC)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、要求発電量に対応して発電出力値を変更することができる固体電解質型燃料電池であって、発電室内に配置された固体電解質型燃料電池セルと、この固体電解質型燃料電池セルに燃料を供給する燃料供給手段と、発電室温度(T1)を測定する発電室温度測定手段と、要求発電量に対応して少なくとも燃料供給手段による燃料供給量を予め決定された燃料供給制御特性に基づいて変更する制御手段と、を有し、制御手段は、下限温度値(Ta)と上限温度値(Tb)を持つ温度監視帯域を備え、制御手段は、発電室温度が、下限温度値(Ta)又は上限温度値(Tb)を超えて温度監視帯域外となった場合に、発電室温度(T1)が温度監視帯域内に保持されるように、発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて燃料供給量を補正する適応制御手段を備え、適応制御手段は、温度監視帯域を、予め決定された条件下で、下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更して温度監視帯域を変更する温度監視帯域変更手段を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御手段が、下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域を備え、さらに、燃料供給制御特性に基づいて燃料を供給した場合であっても、燃料電池セルの固体差により、発電室温度が上限温度値又は下限温度値を超えて温度監視帯域外となる場合、即ち、燃料電池セルの発電反応に適した温度範囲(理想的な発電室の温度範囲)から外れる場合があるが、この場合には、適応制御手段が、発電室温度が温度監視帯域内に保持されるように、発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて燃料供給量を補正するようにしている。その結果、本発明によれば、燃料電池セルの固体差があって発電室温度が変化しても、発電室温度が常に温度監視帯域内に保持されるので、効果的に発電反応を行なうことができる。
さらに、本発明においては、外気温度や湿度が大きく変化することにより、燃焼状態や改質状態が変化して発電室温度が温度監視帯域外となることがあるが、燃料電池セルの個体差を吸収するために実行される適応制御により、このような外気環境の大きな変化も吸収して、理想的な発電室の温度範囲を維持することが可能となる。
また、本発明による適応制御は、発電室温度が下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域内に保持されるように燃料供給量が補正するという簡易な制御であるため、煩雑な制御を行うことなく、簡易に且つ極めて効果的に発電反応を行うことが可能となる。
さらに、本発明においては、温度監視帯域変更手段により、温度監視帯域を、予め決定された条件下で、下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更するので、燃料電池セルの劣化、外気の温度、要求発電量(負荷)等の様々な状態に対して、より一層正確に適応制御することが可能となる。
【0014】
本発明において、好ましくは、温度監視帯域変更手段は、外気の温度に対応して下限温度値及び下限温度値の両方又は何れか一方を変更する。
このように構成された本発明においては、外気の温度に適応した温度監視帯域を設定することができ、それにより、最適な適応制御が可能となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、温度監視帯域変更手段は、要求発電量の変動量に対応して下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更する。
このように構成された本発明においては、要求発電量(負荷)の変動量に適応した温度監視帯域を設定することができ、それにより、要求発電量が急変した場合であっても、燃料供給量の誤補正や、補正遅れ等を抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、温度監視帯域変更手段は、要求発電量が低い低負荷時では、温度監視帯域を低温側へ変更する。
このように構成された本発明においては、要求発電量が低い低負荷時では、燃料電池セルの温度上昇を早期に低減することができ、セルへのダメージを確実に防止することができる。
【0017】
本発明は、好ましくは、更に、燃料電池セルの劣化判定を行う劣化判定手段と、を有し、この劣化判定手段が燃料電池セルが劣化したと判定したとき、適応制御手段は、燃料供給量の補正量を増加又は減少させ、さらに、温度監視帯域変更手段は、温度監視帯域を変更する。
このように構成された本発明においては、燃料電池セルが劣化したときでも、劣化に伴う燃料供給量の誤補正を確実に防止することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、温度監視帯域変更手段は、劣化した後に測定された燃料電池セルの温度である基準温度を中心として温度監視帯域の下限温度値及び上限温度値を設定する。
このように構成された本発明においては、劣化した後に測定された燃料電池セルの温度を中心として温度開始帯域の下限温度値及び上限温度値を設定したので、劣化した燃料電池セルの固体差を考慮した適応制御が可能となり、燃料電池セルへのダメージを確実に抑制することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、温度監視帯域変更手段は、燃料電池セルが劣化したと判定された場合には、温度監視帯域の幅が小さくなるように変更する。
このように構成された本発明においては、劣化した燃料電池セルの温度変化を一層抑制することが出来るので、温度変化に伴う燃料電池セルへのダメージを軽減し、燃料電池セルの耐久性を維持することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、適応制御手段は、燃料電池セルが劣化したとき、所定期間内は適応制御を中止し、この所定期間経過後に、変更された温度監視端域で適応制御を実行する。
このように構成された本発明においては、燃料電池セルが劣化したとき、所定期間内は適応制御を中止したので、燃料供給量の補正量を増加又は減少させることによる補正量の変動分による誤判定を防止することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、適応制御手段は、発電室温度が上限温度値を超えた場合に発電室温度が減少するように燃料供給量を減少させる方向の減量補正の回数と、発電室温度が下限温度値を超えた場合に発電室温度が上昇するように燃料供給量を増加させる方向の増量補正の回数とが、それぞれ、これらの減量補正の回数と増量補正の回数を互いの相殺した後に所定の回数となったときには、それ以降は同じ方向の燃料供給量の補正を規制し、適用制御手段は、さらに、燃料電池セルが劣化して、温度監視帯域が変更されてとき、減量補正の回数と増量補正の回数をリセットする。
このように構成された本発明においては、温度監視帯域を基準温度を中心として再設定し、且つ、減量補正の回数と増量補正の回数をリセットしたので、燃料電池セルが劣化した後も、燃料供給量の補正量が適切なものとなり、最適な適応制御することが可能となる。
【0022】
本発明は、要求発電量に対応して発電出力値を変更することができる固体電解質型燃料電池であって、発電室内に配置された固体電解質型燃料電池セルと、この固体電解質型燃料電池セルに燃料を供給する燃料供給手段と、発電室温度を測定する発電室温度測定手段と、要求発電量に対応して少なくとも燃料供給手段による燃料供給量を予め決定された燃料供給制御特性に基づいて変更する制御手段と、を有し、制御手段は、下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域を備え、制御手段は、発電室温度が、下限温度値又は上限温度値を超えて温度監視帯域外となった場合に、発電室温度が温度監視帯域内に保持されるように、発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて上記燃料供給量を補正する適応制御手段を備え、適応制御手段は、燃料供給量の補正量を、予め決定された条件下で、変更する補正量変更手段を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御手段が、下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域を備え、さらに、燃料供給制御特性に基づいて燃料を供給した場合であっても、燃料電池セルの固体差により、発電室温度が上限温度値又は下限温度値を超えて温度監視帯域外となる場合、即ち、燃料電池セルの発電反応に適した温度範囲(理想的な発電室の温度範囲)から外れる場合があるが、この場合には、適応制御手段が、発電室温度が温度監視帯域内に保持されるように、発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて燃料供給量を補正するようにしている。その結果、本発明によれば、燃料電池セルの固体差があって発電室温度が変化しても、発電室温度が常に温度監視帯域内に保持されるので、効果的に発電反応を行なうことができる。
さらに、本発明においては、外気温度や湿度が大きく変化することにより、燃焼状態や改質状態が変化して発電室温度が温度監視帯域外となることがあるが、燃料電池セルの個体差を吸収するために実行される適応制御により、このような外気環境の大きな変化も吸収して、理想的な発電室の温度範囲を維持することが可能となる。
また、本発明による適応制御は、発電室温度が下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域内に保持されるように燃料供給量が補正するという簡易な制御であるため、煩雑な制御を行うことなく、簡易に且つ極めて効果的に発電反応を行うことが可能となる。
さらに、本発明においては、補正量変更手段により、燃料供給量の補正量を、予め決定された条件下で、変更するので、燃料供給量の補正量を最適に変更することができ、それにより、外気の温度への収束性や保持性能を高めることができ、さらに、燃料電池セルの劣化抑制や発電性能の向上を図ることができる。
【0023】
本発明は、好ましくは、更に、燃料電池セルの劣化判定を行う劣化判定手段と、を有し、この劣化判定手段が燃料電池セルが劣化したと判定したとき、補正量変更手段は、燃料供給量の補正量を増加させる。
このように構成された本発明においては、燃料電池セルが劣化したとき、燃料供給量の補正量を増加させたので、劣化した燃料電池セルに対して温度変化を一層抑制することができるため、温度変化に伴う燃料電池セルのダメージを軽減し、燃料電池の耐久性を維持できる。
【0024】
本発明において、好ましくは、補正量変更手段は、要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時に、発電室温度の変動量に応じて燃料供給量の補正量を変更する。
このように構成された本発明においては、負荷追従するために燃料供給量を変化させたとき燃料電池セルの固体差により温度変動量が異なるので、この固体差による温度変動量を燃料供給量の補正量を変更することにより、温度監視帯域内に発電室温度を保持し、外部環境へ早く適応させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、要求発電量に応じて発電出力を変更して負荷追従するとき、燃料電池セルの固体差や大きな外気環境の変化等があっても、適応制御を行うことにより、燃料電池セルの個体差や外気環境の変化を吸収して、反応温度を発電反応に最適な温度帯域を維持して期待通りの性能を発揮させることができ、さらに、燃料電池セルの耐久性が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿って断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の運転状態を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給制御特性(目標発電量と燃料ガス供給量との関係)を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給制御特性(目標発電量と発電用空気供給量との関係)を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の劣化判定のための運転状態を示すタイムチャートである。
【図13】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時で燃料電池セルの劣化時の運転状態を示すタイムチャートである。
【図14】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の適応制御基本フローを示すフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第1例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給量の補正回数をゼロリセットするための補正回数リセットフローを示すフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第2例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第3例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0028】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0029】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、上述した残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0030】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0031】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0032】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0033】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0034】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0035】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0036】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0037】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0038】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0039】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0040】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0041】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0042】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0043】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0044】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0045】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0046】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0047】
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0048】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0049】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0050】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0051】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0052】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0053】
次に図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0054】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0055】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0056】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0057】
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
【0058】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0059】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0060】
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
【0061】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0062】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0063】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0064】
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0065】
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0066】
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
【0067】
次に、図9乃至図11により、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更して負荷追従するときの運転状態を説明する。
図9は本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の運転状態を示すタイムチャートであり、図10は本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給制御特性(要求発電量と燃料ガス供給量との関係)を示す図であり、図11は本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給制御特性(要求発電量と発電用空気供給量との関係)を示す図である。
【0068】
先ず、図9において、縦軸は、発電室温度(T1)、燃料ガス供給量、発電用空気供給量を示し、横軸は、時間(t)を示している。
本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、要求発電量が100W〜700Wの燃料電池であり、この範囲で、要求発電量に対して発電出力値を変更して負荷追従することができるようになっている。
【0069】
次に、燃料電池セル84は、100W〜700Wの定格発電出力値を発電するとき発電反応が良好に行えるため温度帯域に保持する必要があり、この温度帯域は、固体差の無い設計時の標準の燃料電池セルを所定の基準運転状態において動作させるという条件の下で、100W〜700Wの定格発電出力値に対応したものとなっている。
【0070】
次に、下限定格発電量100Wに対応する燃料電池セル84の温度より所定温度だけ低い温度である下限温度値(Ta)を690℃に設定し、上限定格発電量700Wに対応する燃料電池セル84の温度より所定温度だけ高い温度である上限温度値(Tb)を710℃に設定し、この下限温度値(Ta)と上限温度値(Tb)の温度範囲を温度監視帯域Wとする。なお、下限定格発電量100Wに対応する燃料電池セル84の温度を下限温度値とし、上限定格発電量700Wに対応する燃料電池セル84の温度を上限温度値とし、これらの下限温度値と上限温度値の温度範囲を温度監視帯域Wとしても良い。
【0071】
このように、下限定格発電量及び上限定格発電量を考慮して下限温度値及び下限温度値を決定し、後述するように、発電室温度がこれらの下限温度値と上限温度値を持つ監視温度帯域W外となったとき燃料ガスや発電用空気の供給量を補正するようにしているので、要求発電量に対応して燃料供給量を変更して負荷追従する際、燃料供給制御特性を変更するような複雑な制御を行う必要がなく、簡易でかつ十分な制御が可能となる。
【0072】
また、本実施形態においては、固体電解質型燃料電池(SOFC)の設置時に、定格運転を行い、このときの燃料電池セルの発電室温度を定格基準温度(T0)とし、この定格基準温度を中心にして上下方向に10℃だけ離れた下限温度値と上限温度値を設定するようにしてもよい。これにより、燃料電池セル84の固体差を、運転の初期段階で、吸収することができる。
【0073】
次に、本実施形態においては、図10に示すように、燃料供給制御特性である「要求発電量と燃料ガス供給量の関係」が予め決定されており、また、図11に示すように、燃料供給制御特性である「要求発電量と発電用空気供給量との関係」が予め決定されている。
本実施形態においては、燃料電池モジュール2が定常運転に移行後、要求発電量に対応して発電出力値を変更して負荷追従するとき、燃料ガスの供給量及び発電用空気の供給量を、図10及び図11に示す燃料供給制御特性に基づき、増大又は減少させて、要求された負荷に追従することができるようになっている。
【0074】
この負荷追従するとき、燃料電池モジュール2の燃料電池セル84は、燃料電池セル84の持つ個々の固体差、及び、燃料電池モジュール2が設置された外気環境(温度、湿度等)により、燃料電池セル84の温度(T1)が、温度監視帯域W外となることがある。そのため、本実施形態においては、燃料電池セル84の発電室温度(T1)が、下限温度値(Ta)を下回った場合には、燃料ガス及び発電用空気の供給量を、それぞれ所定量(燃料供給制御特性における供給量の10%)だけ増大する増量補正をし、一方、燃料電池セル84の発電室温度(T1)が、上限温度値(Tb)を超えた場合には、燃料ガス及び発電用空気の供給量を、それそれ所定量(燃料供給制御特性における供給量の10%)だけ減少させる減量補正をして、燃料電池セル84の発電室温度(T1)が温度監視帯域W内となるような適応制御(adaptive control)を実行する。
【0075】
本実施形態においては、この適応制御により、負荷追従時に燃料ガスの供給量及び発電用空気の供給量を増大又は減少させて補正した後は、所定の禁止期間(例えば、5時間)が経過するまで次回の補正を実行しないようにしている。これにより、燃料供給量を減量補正又は増量補正した後、燃料電池セル84の温度が安定する程度の期間(SOFCでは一般的に数時間を要する)まで燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正を実行しないので、過剰補正による燃料電池セル84の悪影響を防止し、燃料電池セル84の固体差や外気環境変化により生じる燃料供給制御特性への影響に適応させることができる。
【0076】
本実施形態においては、この適応制御において、上述した増量補正を3回(補正回数+3)まで実行可能とし、また、減量補正の回数を5回(補正回数−5)まで実行可能とし、それ以上の回数の補正を制限している。このとき、増量補正の後、減量補正がなされたような場合には、それぞれの補正回数が相殺されるようになっている。従って、増量補正の回数(+側の回数)と、減量補正の回数(−側の回数)とが、それぞれ、これらの増量補正の回数と減量補正の回数を互いの相殺した後(加算した後)に所定の回数(増量補正は+3、減量補正は−5)となったときには、それ以降は同じ方向の燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正が制限(規制)されるようになっている。
【0077】
ここで、燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正による燃料電池セルの発電室温度(T1)の変化は、数時間後(例えば5時間)となるが、本実施形態による適応制御においては、増量補正の回数と減量補正の回数が互いに相殺した後に所定回数(増量補正は3回、減量補正は5回)となったとき、それ以降は同じ方向の補正を制限(規制)するので、適用制御により過大な燃料の補正が行われることを防止でき、例えば異常時等に燃料供給量が補正され過ぎて燃料電池セル84に過度の負担を与えてしまうようなことを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態の適応制御においては、減量補正の回数(5回)を増量補正の回数(3回)より多くしているので、燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正による増加量の上限を低く抑えることができ、外気環境の変化や一時的な不安定な制御状態等が生じても、燃料ガスと発電用空気の供給量が過大となって燃料電池セルが異常高温となることを確実に防止することができる。さらに、減量補正の回数が多いので、燃料電池セルの固体差によって少ない燃料供給量であっても発電室温度が温度監視帯域無いに保持されるような場合には、燃料の供給量が多く減量されるので、燃料電池セルの性能を維持した状態で無駄な燃料ガスの消費を確実に抑えることができる。
【0079】
次に、図9に示すように、本実施形態においては、温度監視帯域Wの上限温度値(Tb)よりも高い温度である720℃を冷却温度(Tc)とし、燃料電池セル84の発電室温度(T1)がこの冷却温度(Tc)を超えた場合には、空気流量調整ユニット44により、燃料電池モジュール2の発電室10に多量の発電用空気を導入し、この空気により、燃料電池セル集合体12を強制的に冷却するようにしている。これにより、本実施形態によれば、後述する燃料供給量の補正が禁止された期間(適応制御禁止期間)であっても、燃料電池セルが異常高温となるのを確実に防止し、さらに、運転停止しなくても良くなるので、運転停止による損失も確実に低減することができる。
【0080】
更に、図9に示すように、本実施形態においては、温度監視帯域Wの上限温度値(Tb)及び冷却温度(Tc)よりも高い温度(800℃以上)の帯域、及び、温度監視帯域Wの下限温度値(Ta)よりも低い温度(500℃以下)の帯域を異常温度帯域として設定し、燃料電池セル84の発電室温度(T1)がこの異常温度帯域になったとき、燃料電池の運転を規制するようにしている。具体的には、燃料電池の運転自体を停止する、燃料電池の発電運転を停止する、燃料ガスの供給量を低減させる、警報(ワーニング)を発する等である。これにより、本実施形態によれば、燃料供給制御特性が外気環境(温度、湿度等)の変化や燃料電池セル84の固体差に適応させることができない異状な状態の時であっても、燃料電池セル84が異常状態となることを確実に防止することができる。
【0081】
次に、図12により、本実施形態による、燃料電池セルの劣化判定を説明する。図12は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の劣化判定のための運転状態を示すタイムチャートである。縦軸は、要求発電量、出力電力量、発電室温度(T1)、燃料ガス供給量、発電用空気供給量、水供給量を示し、横軸は時間を示している。
燃料電池セル84は、長時間に亘る使用により、劣化していくことが知られている。燃料電池セル84が劣化した場合には、燃料電池セル84の特性が変化するので、種々の対策が必要となる。そのため、本実施形態においては、図12に示す、劣化判定モードにより、燃料電池セルにおける劣化を判定するようにしている。
【0082】
本実施形態においては、劣化判定は、SOFCが運転を開始したときt0から、所定期間(例えば、2週間)毎に、実行される。また、劣化判定を行うときには、外気温度及び外気湿度が所定の範囲(例えば、外気温度:5〜30℃,外気湿度:30〜70%)にあることが必要である。
【0083】
具体的には、図12に示す、時刻t1〜t2の時間(例えば5時間)に劣化判定モード運転が実行され、劣化判定が実施されるようになっている。この劣化判定モードにおいては、燃料ガス供給量、発電用空気供給量、水供給量は、それぞれ、上限定格発電出力である700ワット(=劣化判定用出力電力量)に対応する供給量(一定の固定値)に維持される。このような固定値による発電運転が所定時間(5時間)実行される。この所定時間が経過することにより、燃料電池セルの運転状態が安定する(即ち、発電室温度が安定する)。なお、この劣化判定モード運転中は、出力電力量をゼロにしている。
【0084】
次に、発電運転が所定時間経過後(時刻t2)に、発電室温度(T1)が、上述した基準温度T0より所定温度(例えば30℃)以上高いか否かを判定し、高い場合には、燃料電池セルが劣化していると判定する。この所定温度は、上述した温度監視帯域の上限温度値(Tb)より高い温度である。劣化時に温度が上昇するのは、燃料電池セル自体の劣化、及び、各燃料電池セルユニット16を電気的に接続する集電体102の劣化により、燃料電池セルスタック14の内部抵抗が増大することによりジュール熱等が発生するからである。このようにして、燃料電池セルが劣化していると判定された場合には、以下説明するように、SOFCの運転状態を変更する必要がある。
【0085】
次に、図13により、本実施形態による負荷追従時の燃料電池セルの劣化時の運転状態を説明する。図13は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時で燃料電池セルの劣化時の運転状態を示すタイムチャートである。
図13に示すように、燃料電池セル84が劣化していると判定された場合には、出力が安定した状態のとき測定された劣化した燃料電池セル84の温度を定格基準温度(T0=730℃)とし、この定格基準温度(T0)に対して、7℃だけ低い温度を下限温度値(Ta=723℃)とし、7℃だけ高い温度を上限温度値(Tb=737℃)とした新たな温度監視帯域Wを設定する。このように、本実施形態においては、燃料電池セル84が劣化した場合には、温度監視帯域Wをより高温側の帯域に変更すると共に温度監視帯域Wの幅を狭くしている。
【0086】
さらに、本実施形態においては、燃料電池セル84が劣化していると判定されたときには、温度監視帯域Wを変更すると共に、燃料電池セル集合体12を強制的に冷却する基準となる冷却温度(Tc)の温度も高温側の740℃へ変更している。これにより、燃料電池セル84が劣化した場合も、後述する燃料供給量の補正が禁止された期間(適応制御禁止期間)であっても、燃料電池セルが異常高温となるのを確実に防止し、さらに、運転停止しなくても良くなるので、運転停止による損失も確実に低減することができる。
【0087】
次に、図14により、本実施形態による適応制御基本フローを具体的に説明する。図14は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時の適応制御基本フローを示すフローチャートである。図14において、Sは各ステップを示している。
先ず、S1において、燃料電池モジュール2が発電運転中、即ち、起動時や停止時を除く安定して発電可能な運転状態か否かを判定する。
このS1において、発電運転中であれば、S2に進み、補正回数規定内で補正可能か否かを判定する。具体的には、上述したように、増量補正が3回まで、また、減量補正の回数が5回まで実行されているか否かを判定する。
【0088】
増量補正又は減量補正が可能であれば、S3に進み、適応制御禁止中か否かを判定する。適応制御は、以下の場合に禁止される。第1に、前回の補正から5時間以内の場合には、燃料電池セルが安定しないので、適応補正は禁止される。補正を禁止することにより、過剰補正による燃料電池セルの悪影響を防止し、外気環境変化や固体差による燃料供給制御特性への影響に適応させることができる。第2に、上述した燃料電池セルの劣化判定運転中は、適応補正は禁止される。第3に、劣化補正から5時間以内の場合には、燃料電池セルが安定しないので、適応制御は禁止される。
【0089】
S3において、適応制御禁止中でないと判定された場合には、S4に進み、燃料電池セル84の発電室温度(T1)を測定する。具体的には、燃料電池セル集合体12の近傍の温度が発電室温度センサ142により測定され、その温度が燃料電池セル84の発電室温度として使用される。
次に、S5に進み、発電室温度(T1)が、上述した温度監視帯域W内であるか否か、即ち、「下限温度値(Ta)≦発電室温度(T1)≦上限温度値(Tb)」であるか否かを判定する。
【0090】
S5において、発電室温度(T1)が温度監視帯域W内でなければ、S6に進み、発電室温度(T1)が下限温度値(Ta)よりも低いか否か、即ち、「下限温度値(Ta)>発電室温度(T1)」であるか否かを判定する。発電室温度(T1)が下限温度値(Ta)よりも低い場合には、S7に進み、燃料ガス及び発電用空気の増量補正の補正量を求めるために必要な加算補正投入量α及びβを演算する。ここで、αは燃料ガス供給量の加算補正投入量であり、βは発電用空気供給量の加算補正量であり、これらのα及びβは、燃料ガス投入後の発電室温度の変化量が基準値よりも大きいほど大きな値となり、また、燃料電池セル84の劣化の回数が増えるほど大きな値となる。
【0091】
次に、S8に進み、適応制御により燃料ガス及び発電用空気の供給量を増量補正して、発電室温度を上昇させる必要があるので、この適応制御における増量補正の補正量を演算する。燃料ガスは、固定値である10%にS7で求めたαを加えた量(10%+α)が増量する補正量となり、発電用空気は、固定値である10%にS7で求めたβを加えた量(10%+β)が増量する補正量となる。
【0092】
次に、S9に進み、補正投入ゲインを演算する。増量補正における燃料ガス及び発電用空気の補正量の投入は、後述する減量補正の補正量の投入よりも、ゆっくりと投入する。即ち、増量補正の時定数をB、減量補正の時定数をAとした場合には、B=3×Aとなる。また、燃料電池セル84の劣化回数が多いほど時定数A及びBの値を大きくして、燃料ガス及び発電用空気をゆっくりと投入する。また、このとき、電流値を上げる速度は0.5A/分とする。
【0093】
次に、S10に進み、適応制御を実行する。具体的には、燃料ガスを(10%+α)量だけ増量してゆっくりと投入し、また、発電用空気を(10%+β)量だけ増量してゆっくりと投入し、発電室温度を昇温させて温度監視帯域W内とする(図9参照)。
次に、S11に進み、増量補正の回数を「+1」として記憶する。
次に、S12に進み、この増量補正の補正量を記憶する。これにより、次に発電室温度T1が下限温度値(Ta)より低下するまで、燃料ガスと発電用空気の供給量としてこの補正量だけ増量した値が使用される。
【0094】
次に、S6において、発電室温度(T1)が下限温度値(Ta)より低くないと判定された場合には、「発電室温度(T1)>上限温度値(Tb)」であるので、S13に進む。
S13では、燃料ガス及び発電用空気の減量補正の補正量を求めるために必要な加算補正投入量α及びβを演算する。ここで、αは燃料ガス供給量の加算補正投入量であり、βは発電用空気供給量の加算補正量であり、これらのα及びβは、燃料ガス投入後の発電室温度の変化量が基準値よりも大きいほど大きな値となり、また、燃料電池セル84の劣化の回数が増えるほど大きな値となる。
【0095】
次に、S14に進み、適応制御により燃料ガス及び発電用空気の供給量を減量補正して、発電室温度を低下させる必要があるので、この適応制御における減量補正の補正量を演算する。燃料ガスは、固定値である10%にS13で求めたαを加えた量(10%+α)が減少する補正量となり、発電用空気は、固定値である10%にS13で求めたβを加えた量(10%+β)が減量する補正量となる。
【0096】
次に、S15に進み、補正投入ゲインを演算する。減量補正における燃料ガス及び発電用空気の補正量の投入は、増量補正の補正量の投入よりも、上述したように、はやく投入する。即ち、温度上昇補正の時定数をB、減量補正の時定数をAとした場合には、B=3×Aとなる。また、燃料電池セル84の劣化回数が多いほど時定数A及びBの値を大きくして、燃料ガス及び発電用空気をゆっくりと投入する。また、このとき、電流値を上げる速度は0.5A/分とする。
【0097】
次に、S16に進み、適応制御を実行する。具体的には、燃料ガスを(10%+α)量だけ減量してはやく投入し、また、発電用空気を(10%+β)量だけ減量してはやく投入し、発電室温度を低下させて温度監視帯域W内とする(図9参照)。
次に、S17に進み、減量補正の回数を「−1」として記憶する。
次に、S18に進み、この減量補正の補正量を記憶する。これにより、次に発電室温度T1が上限温度値(Tb)を越えるまで、燃料ガスと発電用空気の供給量としてこの補正量だけ減量した値が使用される。
【0098】
以上説明した本実施形態による適応制御によれば、先ず、燃料電池セル84が発電可能な状態となるまで、即ち、燃料電池セル84や改質器20等が不安定な状態である起動中等において、燃料ガスや発電用空気の供給量の補正は行わないようにしたので、燃料電池セルが発電可能な状態となったとき、不安定な状態でなされた燃料ガスや発電用空気の供給量の補正による悪影響を確実に防止することができる。
【0099】
次に、本実施形態による適応制御によれば、発電室温度が下限温度値又は上限温度値を超えて温度監視帯域W外となったとき、燃料供給制御特性から得られた燃料供給量に予め決定された固定量である補正量(10%)を加算又は減算して燃料供給量を補正するようにしたので、即ち、フィードバック制御ではなく、オープン制御により、燃料供給量を固定量(10%)により補正するようにしたので、発電室温度が温度監視帯域W外となったとき、発電室温度のずれを瞬時に且つ確実に抑え、燃料電池セル84を安定状態とすることができる。
【0100】
また、このときの、増量補正の補正量(固定量)と減量補正の補正量(固定量)は、同量(ともに10%)であるので、適応制御を一層簡素化できる。さらに、外気環境の変化等で発電室温度が温度監視帯域W外に変動した場合でも、その都度、燃料ガスや発電用空気の供給量が同じ量だけ補正されるので、発電室温度が確実に温度監視帯域W内に収束でき、安定した制御を行うことができる。
【0101】
また、本実施形態による適応制御によれば、補正された燃料ガスと発電用空気の供給量を記憶して保持し、発電室温度が次ぎに下限温度値又は上限温度値を超えるまで、この記憶保持された燃料供給量に基づいて要求発電量に対応して燃料供給量が変更されるので、燃料電池セルの固体差を考慮した状態で燃料供給制御特性に基づいた燃料供給量の制御を確実に実行することができる。
【0102】
また、本実施形態による適応制御によれば、燃料ガスと発電用空気の供給量の増量補正と減量補正の補正量を、発電室温度の変化量や燃料電池セルの劣化回数等により、変更するので、燃料供給量の補正量を最適に変更することができ、それにより、外気の温度への収束性や保持性能を高めることができ、さらに、燃料電池セルの劣化抑制や発電性能の向上を図ることができる。
【0103】
次に、図15により、本実施形態における温度監視帯域の変更フローの第1例を説明する。図15は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第1例を示すフローチャートである。図15において、Sは各ステップを示している。
この温度監視体域の変更の第1例は、燃料電池セルが劣化した場合に温度監視帯域を変更すると共に温度監視体域の幅を狭くする例である。
先ず、S21において、定格基準温度(T0)を読み込む。この定格基準温度は、燃料電池設置時、又は、上述した燃料電池セルの劣化を判定した後に、安定した運転状態で、発電室温度センサ142により検出された発電室温度である。
【0104】
次に、S22に進み、上述した劣化補正有りか否かを判定する。劣化補正していない場合には、燃料電池セル84は未だ劣化していない状態であるので、S23に進み、監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)を以下のように設定する。この場合、温度監視帯域(Ta,Tb)の幅は20℃である。
Tz=T0
Ta=T0−10℃
Tb=T0+10℃
【0105】
補正劣化有りの場合には、燃料電池セル84が何回か劣化と判断された場合であるので、S24に進み、監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)を以下のように設定する。この場合、温度監視帯域(Ta,Tb)の幅は、1回目の劣化判定の場合には14℃であり、2回目の劣化判定の場合には12℃であり、3回目の劣化判定の場合には10℃であり、劣化と判定された回数が増えるほど、温度監視帯域(Ta,Tb)の幅は狭くなっている。
Tz=T0
Ta=T0−(1回目7℃/2回目6℃/3回目5℃)
Tb=T0+(1回目7℃/2回目6℃/3回目5℃)
【0106】
次に、S25に進み、S23及びS24においてそれぞれ設定された値を、以下に示す監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)の基準値(T0,Ta0及びTb0)として更新して温度監視帯域を変更する(図13参照)。
Tz=T0
Ta=Ta0
Tb=Tb0
【0107】
次に、図16により、本実施形態による燃料供給量の補正回数のリセットするための補正回数リセットフローを説明する。図16は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における燃料供給量の補正回数をゼロリセットするための補正回数リセットフローを示すフローチャートである。図16において、Sは各ステップを説明する。
この補正回数リセットフローでは、上述した適応制御において、発電室温度が温度監視体域外となった場合に燃料ガス及び発電用空気の供給量を増量又は減少させる補正をおこないその補正回数を記憶しているが(図14のS11及びS17参照)、燃料電池セル84が劣化と判定された場合には、この記憶した補正回数をリセットするようにしたものである。これにより、燃料電池セルが劣化した後も、燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正量が適切なものとなり、最適な適応制御することが可能となる。
【0108】
先ず、S31において、劣化判定時期か否かを判定する。劣化判定時期であれば、S32に進み、上述した適応制御における燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正量をゼロにリセットする。具体的には、図10及び図11に示す基本となる燃料供給制御特性に戻す。次に、S33に進み、燃料電池セルが劣化したか否かを判定する。
【0109】
S33において、燃料電池セルが劣化したと判定された場合には、S34に進み、適応制御における燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正回数をゼロにリセットする。一方、S33において、燃料電池セルが劣化したと判定さない場合には、S35に進み、適応制御における燃料ガス及び発電用空気の供給量の補正量をS32においてゼロリセットした以前に復帰させる(戻す)。
【0110】
次に、図17により、本実施形態における温度監視帯域の変更フローの第2例を説明する。図17は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第2例を示すフローチャートである。図17において、Sは各ステップを示している。
この温度監視体域の変更の第2例は、負荷追従の際の発電量が大きく変化した場合に一時的に温度監視体域の幅を狭くする例である。
【0111】
先ず、S41において、負荷追従時の発電量の変更量(増大する場合と減少する場合の両者を含む)が150W以上であるかを判定し、150W以上の場合には、S42に進む。S32においては、監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)を以下のように設定する。この第2例においては、温度監視帯域(Ta,Tb)の幅を一時的に(後述する2時間だけ)4℃だけ狭くしている。
Tz=T0
Ta=Ta+2℃
Tb=Tb−2℃
【0112】
次に、S43に進み、2時間を経過したか否かを判定し、2時間経過していれば、S44に進み、監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)を、以下のように、S42で温度監視体域を狭めたときより以前の値に戻す。
Tz=T0
Ta=Ta0
Tb=Tb0
【0113】
次に、図18により、本実施形態における温度監視帯域の変更フローの第3例を説明する。図18は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)における温度監視帯域を変更するための第3例を示すフローチャートである。図18において、Sは各ステップを示している。
この温度監視体域の変更の第3例は、目標発電出力(目標発電量)の大きさ(大、中、小)により、温度監視帯域を変更すると共に温度監視帯域の幅を変更する例である。
先ず、S51において、定格基準温度(T0)を読み込む。この定格基準温度は、燃料電池設置時、又は、上述した燃料電池セルの劣化を判定した後に、安定した運転状態で、発電室温度センサ142により検出された発電室温度である。
【0114】
次に、S52に進み、目標発電出力(目標発電量)W1を読み込む。次に、S53に進み、目標発電出力W1が650Wより大きいか否かを判定し、大きい場合には、S54に進む。S54では、監視基準温度Tzの補正量A(A=+5℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量C(C=Tbを+2℃)を決定する。第3例では、目標発電出力W1が比較的大きな場合には、温度監視帯帯域を高温側に変更すると共に上限温度値(Tb)の値を高くして温度監視帯域の幅を高温側に広げている。
【0115】
次に、S53において、目標発電出力W1が650Wより大きくないと判定された場合には、S55に進み、目標発電出力W1が550Wより小さいか否かを判定する。ここで、目標発電出力W1が、550W≦W1≦650Wのときには、S56に進む。S56では、監視基準温度Tzの補正量A(A=0℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量C(C=0℃)を決定する。即ち、第3例では、目標発電出力W1が普通の大きさの場合には、温度監視帯帯域を変更せず、また、その幅も変更しない。
【0116】
次に、55において、目標発電出力W1が550Wより小さいと判定された場合には、S57に進む。S57では、監視基準温度Tzの補正量A(A=−5℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量C(C=Taを−2℃)を決定する。第3例では、目標発電出力W1が比較的小さな場合には、温度監視帯帯域を低温側に変更すると共に下限温度値(Ta)の値を低くして温度監視帯域の幅を低温側に広げている。
【0117】
次に、S58に進み、外気温度センサ150により検出された外気温度t1を読み込む。次に、S59に進み、外気温度t1が30℃より高いか否かを判定し、高い場合には、S60に進む。S60では、監視基準温度Tzの補正量B(B=+5℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量D(D=Tbを+2℃)を決定する。第3例では、外気温度t1が比較的高い場合には、温度監視帯帯域を高温側に変更すると共に上限温度値(Tb)の値を高くして温度監視帯域の幅を高温側に広げている。
【0118】
次に、S59において、外気温度t1が30℃より高くないと判定された場合には、S61に進み、外気温度t1が−20℃より低いか否かを判定する。ここで、外気温度t1が、−20℃≦t1≦30℃のときには、S62に進む。S62では、監視基準温度Tzの補正量B(B=0℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量D(D=0℃)を決定する。即ち、第3例では、外気温度t1が普通の温度の場合には、温度監視帯帯域を変更せず、また、その幅も変更しない。
【0119】
次に、S61において、外気温度t1が−20℃より低いと判定された場合には、S63に進む。S63では、監視基準温度Tzの補正量B(B=−5℃)を決定すると共に、温度監視帯域(Ta,Tb)の補正量D(D=Taを−2℃)を決定する。第3例では、外気温度t1が比較的低温の場合には、温度監視帯帯域を低温側に変更すると共に下限温度値(Ta)の値を低くして温度監視帯域の幅を低温側に広げている。
【0120】
次に、S64に進み、上述したS54、S56、S57、S60、S62及びS63において決定した監視基準温度の補正量A及びB、並びに、温度監視帯域の補正量C及びDを用いて、監視基準温度(Tz)と温度監視帯域(Ta,Tb)を以下のように演算して算出する。
Tz=T0+A+B
Ta=Tz+C+D
Tb=Tz+C+D
【0121】
次に、S66に進み、S64において算出された値を、以下に示す監視基準温度(Tz)及び温度監視帯域(Ta,Tb)の基準値(T0,Ta0及びTb0)として更新して温度監視帯域を変更する。
Tz=T0
Ta=Ta0
Tb=Tb0
【0122】
以上説明したように、本実施形態においては、燃料電池セルが劣化したと判定された場合には、温度監視帯域を、上限温度値及び下限温度値の両方又は何れか一方を変更するので、燃料電池セルの劣化、外気の温度、要求発電量(負荷)等の様々な状態に対して、より一層正確に適応制御することが可能となる。
また、外気の温度に適応した温度監視帯域を設定することができ、それにより、最適な適応制御が可能となる。
【0123】
また、要求発電量(負荷)の変動量に適応した温度監視帯域を設定することができ、それにより、要求発電量が急変した場合であっても、燃料供給量の誤補正や、補正遅れ等を抑制することができる。
また、要求発電量が低い低負荷時では、監視温度帯域を低温側へ変更しているので、燃料電池セルの温度上昇を早期に低減することができ、セルへのダメージを確実に防止することができる。
【0124】
また、燃料電池セルが劣化したと判定したとき、燃料ガスと発電用空気の供給量の補正量を増加又は減少させ、さらに、温度監視帯域を変更するので、燃料電池セルが劣化したときでも、劣化に伴う燃料ガスと発電用空気の供給量の誤補正を確実に防止することができる。
また、劣化した後に測定された燃料電池セルの温度である基準温度を中心として温度監視帯域の上限温度値及び下限温度値を設定するので、劣化した燃料電池セルの固体差を考慮して適応制御が可能となり、燃料電池セルへのダメージを確実に抑制することができる。
【0125】
また、燃料電池セルが劣化したと判定された場合には、温度監視帯域の幅が小さくなるように変更するので、劣化した燃料電池セルに対して燃料電池セルの温度変化を一層抑制することが出来るので、燃料電池セルの温度変化に伴う燃料電池セルへのダメージを軽減し、燃料電池セルの耐久性を維持することができる。
また、燃料電池セルが劣化したとき、所定期間内は適応制御を中止し、この所定期間経過後に、変更された温度監視帯域で適応制御を実行するようにしているので、燃料ガスと発電用空気の供給量の補正量を増加又は減少させることによる補正量の変動分による誤判定を防止することができる。
【0126】
また、燃料電池セルが劣化して、温度監視帯域が変更されたとき、減量補正の回数と増量補正の回数をリセットするようにしたので、燃料電池セルが劣化した後も、燃料ガスと発電用空気の供給量の補正量が適切なものとなり、最適な適応制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0127】
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
112 操作装置
114 表示装置
116 報知装置
126 電力状態検出センサ
142 発電室温度センサ
150 外気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求発電量に対応して発電出力値を変更することができる固体電解質型燃料電池であって、
発電室内に配置された固体電解質型燃料電池セルと、
この固体電解質型燃料電池セルに燃料を供給する燃料供給手段と、
上記発電室の温度(T1)を測定する発電室温度測定手段と、
要求発電量に対応して少なくとも上記燃料供給手段による燃料供給量を予め決定された燃料供給制御特性に基づいて変更する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、下限温度値(Ta)と上限温度値(Tb)を持つ温度監視帯域を備え、
上記制御手段は、発電室温度が、上記下限温度値(Ta)又は上限温度値(Tb)を超えて上記温度監視帯域外となった場合に、発電室温度(T1)が上記温度監視帯域内に保持されるように、上記発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて上記燃料供給量を補正する適応制御手段を備え、
上記適応制御手段は、上記温度監視帯域を、予め決定された条件下で、下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更して温度監視帯域を変更する温度監視帯域変更手段を有することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項2】
上記温度監視帯域変更手段は、外気の温度に対応して下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項3】
上記温度監視帯域変更手段は、要求発電量の変動量に対応して下限温度値及び上限温度値の両方又は何れか一方を変更する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項4】
上記温度監視帯域変更手段は、要求発電量が低い低負荷時では、温度監視帯域を低温側へ変更する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項5】
更に、燃料電池セルの劣化判定を行う劣化判定手段と、を有し、
この劣化判定手段が燃料電池セルが劣化したと判定したとき、上記適応制御手段は、上記燃料供給量の補正量を増加又は減少させ、さらに、上記温度監視帯域変更手段は、上記温度監視帯域を変更する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項6】
上記温度監視帯域変更手段は、劣化した後に測定された燃料電池セルの温度である基準温度を中心として温度監視帯域の下限温度値及び上限温度値を設定する請求項5記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項7】
上記温度監視帯域変更手段は、燃料電池セルが劣化したと判定された場合には、温度監視帯域の幅が小さくなるように変更する請求項5記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項8】
上記適応制御手段は、燃料電池セルが劣化したとき、所定期間内は適応制御を中止し、この所定期間経過後に、変更された温度監視端域で適応制御を実行する請求項5記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項9】
上記適応制御手段は、発電室温度が上限温度値を超えた場合に発電室温度が減少するように燃料供給量を減少させる方向の減量補正の回数と、発電室温度が下限温度値を超えた場合に発電室温度が上昇するように燃料供給量を増加させる方向の増量補正の回数とが、それぞれ、これらの減量補正の回数と増量補正の回数を互いの相殺した後に所定の回数となったときには、それ以降は同じ方向の燃料供給量の補正を規制し、
上記適用制御手段は、さらに、燃料電池セルが劣化して、温度監視帯域が変更されてとき、上記減量補正の回数と増量補正の回数をリセットする請求項6に記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項10】
要求発電量に対応して発電出力値を変更することができる固体電解質型燃料電池であって、
発電室内に配置された固体電解質型燃料電池セルと、
この固体電解質型燃料電池セルに燃料を供給する燃料供給手段と、
上記発電室の温度(T1)を測定する発電室温度測定手段と、
要求発電量に対応して少なくとも上記燃料供給手段による燃料供給量を予め決定された燃料供給制御特性に基づいて変更する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、下限温度値と上限温度値を持つ温度監視帯域を備え、
上記制御手段は、発電室温度が、上記下限温度値又は上記上限温度値を超えて上記温度監視帯域外となった場合に、発電室温度が上記温度監視帯域内に保持されるように、上記発電室温度測定手段からの発電室温度信号に基づいて上記燃料供給量を補正する適応制御手段を備え、
上記適応制御手段は、上記燃料供給量の補正量を、予め決定された条件下で、変更する補正量変更手段を有することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項11】
更に、燃料電池セルの劣化判定を行う劣化判定手段と、を有し、
この劣化判定手段が燃料電池セルが劣化したと判定したとき、上記補正量変更手段は、上記燃料供給量の補正量を増加させる請求項10記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項12】
上記補正量変更手段は、要求発電量に対応して発電出力値を変更する負荷追従時に、発電室温度の変動量に応じて燃料供給量の補正量を変更する請求項10記載の固体電解質型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−238601(P2010−238601A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86743(P2009−86743)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【特許番号】特許第4474688号(P4474688)
【特許公報発行日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】