説明

固定補助具及び固定具

【課題】部材同士を位置決めし、固定するための固定具において、該固定具を構成する固定補助具同士の焼き付きや齧り込みを防止することを目的とする。
【解決手段】テーパー状の挿入部41と、挿入部41の底面411から突出した支持部42と、挿入部41及び支持部42を貫通するボルト2を挿入するための貫通孔45を備えた第一の固定補助具40と、テーパー状の貫通孔55が穿孔された筒状の第二の固定補助具50と、第一の固定補助具40の貫通孔45及び第二の固定補助具50の貫通孔55を貫通するネジ部22と、第一の固定補助具40の支持部42と対向する頭部21とを供えたボルト2と、ボルト2と螺合するナット6を備えて構成された固定具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材同士を位置決めし、固定するための固定具及び該固定具を構成する固定補助具に関し、特にコンクリート製品の成型に使用する型枠を構成する複数の型枠部材同士を位置決めし、固定するための型枠固定具及び該型枠固定具を構成する型枠固定補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート製品の成型に型枠が用いられている。通常この型枠は2個の型枠部材で構成され、夫々の型枠部材から張出し、相互に対向する型枠部材片に穿孔したボルト孔にボルトを挿入し、ナットで締結して型枠部材同士を結合させて、型枠内部の製品形成用空間内に流し込んだコンクリートを固化させて製品を形成している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、ボルト孔の径はボルト径よりも大きく穿孔しているので、ボルトをボルト孔に挿入してナットで締結するのみでは、型枠部材同士の正確な位置決めをすることが出来ず、又、複数回の使用に於いて、再現性よく型枠部材同士の位置決めをすることが出来ず、コンクリート製品を所望形状に精度よく、且つ均一形状に形成することが出来なかった。そこで、型枠部材同士を正確に位置決めするために、ボルト及びナットの締結具の使用とは別途に、型枠部材片にボルト孔以外の孔を穿孔すると共に、該孔にノックピンを挿入して、ボルト及びナットの締結前に位置決めを行う必要があった。そのため、コンクリート製品の製造工程が多く複雑となり、製造作業が煩雑であった。
【0004】
そこで、図7及び図8に示すように、レンチと嵌合させる頭部91と、頭部91に連接する位置決め部92と、位置決め部92の頭部91と反対側に連接するネジ部93が一体成形された位置決め部付きボルト9が使用されることもあった。この位置決め部92は円錐台状でネジ部93方向に縮径して形成されている。
【0005】
この位置決め部付きボルト9で型枠部材11,12を締結する場合について説明すると、初めて使用する型枠部材11,12で構成される型枠10の場合、型枠部材片111、121に図示しないノックピン用孔を穿孔すると共に、当該ノックピン用孔に図示しないノックピンを挿入して、型枠部材11,12同士の位置決めを行う。そして、型枠部材11,12にボルト孔112,122を穿孔し、位置決め部付きボルト9を貫通孔951を有する円筒状の受け駒95、ボルト孔112,122に挿入し、ネジ部93をボルト孔112,122を貫通させてナット孔962に挿入し、ネジ部961に螺合してナット96で締結する。この位置決め部92は円錐台状でネジ部93方向に縮径し、受け駒95は筒状で、その貫通孔951は型枠部材片111側方向に縮径して、円錐台状の空間、貫通孔951が形成されているので、受け駒95内部に位置決め部92が収納される。型枠部材11,12はノックピンで位置決めされているので、位置決め部付きボルト9及びナット96の締結位置は、型枠部材11,12を所定の位置に固定可能な位置となっている。
【0006】
この状態で、受け駒95及びナット96を型枠部材片111、121に溶接して固定する。2度目にこの型枠10を使用する場合、ノックピンの使用は不要で、型枠部材11,12を合わせ、位置決め部付きボルト9を受け駒95及びボルト孔112,122に挿入し、ナット96で締結することにより、受け駒95の貫通孔951と位置決め部92が相互にガイドし合って、型枠部材12との相対的位置関係としては、型枠部材11が移動する。このようにして、再現性よく、精度高く型枠部材11,12同士の位置決め及び固定を行うことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−314429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術では、位置決め部付きボルト9の締結時に、位置決め部92と受け駒95の摩擦により焼き付きが発生するという問題点があった。このような焼き付きが発生した場合には位置決め部付きボルト9を外すことが出来ず、部材同士の固定を解除することが出来なかった。従って、製品を型枠から取り出すことが出来なくなってしまっていた。
【0009】
又、上記のような一体成形の位置決め部付きボルト9では、位置決め部と他の部分の材質を変えることが出来なかった。そのため、軽量化やコストダウンを図ることが困難であった。
【0010】
又、上記のような一体成形の位置決め部付きボルト9は、型枠用に特別に製造している特注品であり、他の汎用ボルト使用の型枠との互換性がないという問題点、コストが高いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するための手段としての本発明は、複数の部材同士の位置決め及び固定に用いられる固定補助具であって、一方の部材に設けられたテーパー状の貫通孔に挿入されるテーパー状の挿入部と、該挿入部の底面から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、前記挿入部及び前記支持部を貫通するボルトを挿入するための貫通孔を備えたことを特徴とする第一の固定補助具である。
【0012】
又、上記第一の固定補助具であって、前記挿入部の外側面を曲面形状としたことを特徴とする第一の固定補助具である。
【0013】
又、上記第一の固定補助具であって、前記第一の固定補助具の前記貫通孔は円柱状であり、該貫通孔の内側面は平滑面としたことを特徴とする第一の固定補助具である。
【0014】
又、上記第一の固定補助具であって、前記第一の固定補助具の前記貫通孔は円柱状であり、該貫通孔の内側面には、挿入されるボルトのネジ部に対応するネジを形成したことを特徴とする第一の固定補助具である。
【0015】
又、上記第一の固定補助具であって、前記支持部は、前記挿入部と反対方向に縮径する、テーパー状に形成されていることを特徴とする第一の固定補助具である。
【0016】
又、上記第一の固定補助具であって、前記第一の固定補助具は合成樹脂で成形されていることを特徴とする第一の固定補助具である。
【0017】
更に、複数の部材同士の位置決め及び固定に用いられる固定補助具であって、上記第一の固定補助具のうち何れかの第一の固定補助具と、一方の部材に固定される、テーパー状の貫通孔が穿孔された筒状の第二の固定補助具と、を備えて構成されることを特徴とする固定補助具である。
【0018】
又、上記固定補助具であって、前記第二の固定補助具の前記貫通孔の内側面を曲面形状としたことを特徴とする固定補助具である。
【0019】
更に、上記に記載の固定補助具と、前記第一の固定補助具の貫通孔及び前記第二の固定補助具の貫通孔を貫通するネジ部と、前記第一の固定補助具の前記支持部と対向する頭部とを供えたボルトと、前記ボルトと螺合するナットを備えたことを特徴とする固定具である。
【0020】
又、上記固定具であって、前記ナットのナット孔は、一端から中心方向へ縮径するテーパー部分が形成されると共に、該テーパー部分に連続して、他端まで雌ネジが形成されたネジ切り部が形成されていることを特徴とする固定具である。
【0021】
更に、複数の部材同士の固定構造であって、部材同士の対向箇所に夫々ボルト孔が穿孔され、一方の部材の外側には、テーパー状の貫通孔が穿孔された第二の固定補助具が、該貫通孔が前記ボルト孔に連通するように固定され、他方の部材の外側には、ナット孔が前記ボルト孔に連通するように、ナットが固定され、テーパー状の挿入部と、該挿入部から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、前記挿入部及び前記支持部を貫通する貫通孔を備えた第一の固定補助具の貫通孔、前記第二の固定補助具の貫通孔及び前記ボルト孔にボルトのネジ部を貫通させると共に、前記第一の固定補助具の挿入部を前記第二の固定補助具の貫通孔に挿入させ、前記ボルトを前記ナットと螺合させ、前記ボルトの頭部で前記支持部を押圧させ、部材同士の位置決め及び固定を行うことを特徴とする部材同士の固定構造である。
【0022】
更に、複数の部材同士の固定方法であって、部材同士の対向箇所に夫々ボルト孔を穿孔し、一方の部材の外側に、テーパー状の貫通孔が穿孔された第二の固定補助具を、該貫通孔が前記ボルト孔に連通するように固定し、他方の部材の外側に、ナット孔が前記ボルト孔に連通するように、ナットを固定し、テーパー状の挿入部と、該挿入部から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、前記挿入部及び前記支持部を貫通する貫通孔を備えた第一の固定補助具の貫通孔、前記第二の固定補助具の貫通孔及び前記ボルト孔にボルトのネジ部を貫通させると共に、前記第一の固定補助具の挿入部を前記第二の固定補助具の貫通孔に挿入させ、前記ボルトを前記ナットと螺合させ、前記ボルトの頭部で前記支持部を押圧し、前記挿入部と前記貫通孔を互いに案内させ合い、部材同士の位置決め及び固定を行うことを特徴とする部材同士の固定方法である。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明によれば、挿入駒と受け駒の摩擦により焼き付きが発生した場合であっても、ボルトを緩めて部材同士の固定を解除することが出来、型枠を分解することが出来た。
【0024】
又、挿入駒と受け駒を異なる材質で成形することが出来た。これにより、挿入駒を合成樹脂製等とすることが出来、挿入駒と受け駒の焼き付きや挿入駒とボルトとの齧り込みを防止することが出来、更に、型枠固定具の軽量化により固定作業が容易となった。又、材質の選定によりコストダウンを図ることが可能となった。
【0025】
又、汎用のボルト及びナットを使用することが出来、他の型枠との互換性が高くなった。又、コストが廉価な型枠固定具を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明固定具一実施例使用状態断面図
【図2】本発明固定具一実施例分解斜視図
【図3】挿入駒の実施例側面図
【図4】固定補助具の実施例側面図
【図5】挿入駒の実施例側面図
【図6】本発明固定具実施例使用状態断面図
【図7】従来技術の固定具分解斜視図
【図8】従来技術の固定具使用状態断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を図を参照して説明する。尚、以下の実施の形態において、本発明の固定具及び固定補助具を、その一具体例としての、コンクリート製品の成型に用いられる型枠を構成する型枠部材同士を位置決め及び固定するために用いられる型枠固定具及び型枠固定補助具を例として説明し、本発明の第一の固定補助具を、その一具体例としての、第一の型枠固定補助具を例として説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本発明の型枠固定具1は、コンクリート製品の成型に用いられる型枠10を構成する型枠部材11,12を位置決め及び固定するために用いられるものであり、ボルト2、本発明の型枠固定補助具3、及びナット6を備えて構成されている。又、型枠固定補助具3は本発明の第一の型枠固定補助具4と第二の固定補助具としての第二の型枠固定補助具5を備えて構成されている。
【0029】
尚、以下、型枠10として、全体は図示しないが、図2に示すように、2個の型枠部材11,12から夫々張出し、相互に対向する型枠部材片111,121を備え、型枠部材片111,121の対向位置にボルト孔112,122が形成されている型枠10を例にして説明するが、本発明を使用する型枠はこの形状に限定されることはなく、2個以上の複数の型枠部材で構成され、該型枠部材の対向位置に夫々ボルト孔を有し、ボルト及びナットで固定される型枠であればよい。
【0030】
第一の型枠固定補助具4としての挿入駒40は、後述する受け駒50に挿入して、型枠部材11,12同士の相対的な位置決めを行うための固定補助具である。このようにノックピンとして作用する挿入駒40は、鉄や鋼等の金属製で、挿入部41、支持部42及び貫通孔45を備えて構成されている。
【0031】
挿入部41は、後述する受け駒50に挿入される部分であり、テーパー状であり、先端部が直円錐の一部分の円錐台形状で先端方向に縮径して形成されている。支持部42は、ボルト2の頭部21に当接して押圧される部分であり、挿入部41の後端側の底面411から挿入部41と反対方向に突出して上端面が平坦な円柱状に形成されている。又、支持部42は、ボルト2を締め緩めするレンチ等の工具とボルト2の頭部21の嵌合や係合を確実とするため、挿入部41が受け駒50に挿入された際にも、受け駒50から突出する高さを有している。又、貫通孔45は、ボルト2のネジ部22が挿入される孔であり、挿入部41及び支持部42を貫通させて円柱状に穿孔されている。このように、支持部42は円筒状に形成され、ボルト2のネジ部22の貫通孔45への挿入時に支持部42の上端縁で頭部21を係止する。尚、貫通孔45の内側面はネジを切らず、平滑面としている。
【0032】
第二の型枠締結補助具5としての受け駒50は、型枠部材片111に固定され、ノックピンとして作用する挿入駒40の挿入を許して、挿入駒40と相互に作用して、互いにガイドし合い、型枠部材11,12を相対的に所定の位置に導くための補助具である。受け駒50は鉄や鋼等の金属製で、型枠部材片111との当接、固定のために下端面が平坦な円柱状であり、挿入駒40が挿入されると共にボルト2のネジ部22が貫通するための貫通孔55が穿孔されて構成されている。貫通孔55はテーパー状で、詳しくは直円錐の一部分の円錐台形状で、その内側面は一端方向、即ち下端面方向に縮径して形成されている。そして、受け駒50は、下端面を型枠部材片111と対向させると共に、貫通孔55を型枠部材片111のボルト孔112に連通させて、型枠部材片111に溶接にて固定させて使用される。
【0033】
尚、挿入駒40の挿入部41の円錐台形状及び受け駒50の貫通孔55の円錐台形状は、夫々頂角が等しい直円錐の一部分の円錐台である。
【0034】
ボルト2は雄ネジが形成されたネジ部22の一端に頭部21が形成され、ナット6は六角柱にネジ部22の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されたナット孔66が形成されている。そして、ナット6は、型枠部材片121との当接、固定のために平坦な一端面を型枠部材片121と対向させると共に、ナット孔66を型枠部材片121のボルト孔122に連通させて、型枠部材片121に溶接にて固定させて使用される。尚、ボルト2及びナット6は、型枠10の固定用に限定されない汎用品を使用することが出来る。このように汎用品を使用することが出来るので、他の型枠との互換性が高くなると共に、コストダウンを図ることが出来る。
【0035】
次に、本発明の使用について説明する。
先ず、初めて使用する型枠部材11,12で構成される型枠10の場合、型枠部材片111、121同士を対向接触させて、図示しないノックピン用孔を穿孔すると共に、当該ノックピン用孔に図示しないノックピンを挿入して、型枠部材11,12同士の位置決めを行う。そして、型枠部材11,12にボルト孔112,122を穿孔し、或いはボルト孔112,122を予め穿孔しておき、ボルト2を、挿入駒40の支持部42から挿入部41方向へ、貫通孔45に挿入すると共に、型枠部材11の外側に対向させた受け駒50、ボルト孔112,122に挿入し、図示しないレンチに係合させて、型枠部材12の外側に対向させたナット6に挿入して締結する。
【0036】
ボルト2がナット6に挿入されていくに従って、挿入駒40の支持部42はボルト2の頭部21に押圧される。そして、挿入駒40の挿入部41は円錐台状で受け駒50方向に縮径し、受け駒50は型枠部材片111方向に縮径する円錐台状の貫通孔55が形成されているので、挿入部41と貫通孔55は互いに案内し合い、受け駒50の貫通孔55内部に挿入駒40の挿入部41が挿入され、最終的には挿入部41の外側面と貫通孔55の内側面が全周に亘って接触して、嵌合する。
【0037】
この際、型枠部材11,12はノックピンで位置決めされているので、型枠固定具1の締結位置は、型枠部材11,12を所定の位置に固定する位置となっている。
【0038】
そして、この位置を維持して、受け駒50を型枠部材11の、詳しくは枠部材片111の外側に、ナット6を型枠部材12の、詳しくは型枠部材片121の外側に溶接して固定する。
【0039】
2度目以降にこの型枠10を使用する場合、ノックピンの使用は不要で、型枠部材11,12を合わせ、ボルト2を挿入駒40に挿入すると共に、受け駒50及びボルト孔112,122に挿入し、ナット6で締結する。ボルト2とナット6の締結が進むにつれ、ボルトの頭部21が支持部42を押圧し、挿入駒40の挿入部41を受け駒50の貫通孔55内に挿入させていく。この際ボルト2のネジ部22の先端は既にナット6に螺入しているので、挿入部41はナット6方向(図1では下方)に移動する。この移動に伴い、挿入部41の一部と接触している受け駒50の貫通孔55の内側面が挿入部41により押圧され、受け駒50の貫通孔55と挿入駒4の挿入部41が相互にガイドし合って、型枠部材12との相対的位置関係としては、受け駒50は挿入部41の移動方向と垂直方向(図1では横方向)に移動する。そして、型枠部材12との相対的位置関係としては、受け駒50と固定された型枠部材11も同様に挿入部41の移動方向と垂直方向(図1では横方向)に移動する。
【0040】
挿入駒40と受け駒50が嵌合すると、型枠部材11,12同士の移動が停止する。そして、この位置がノックピンを用いて最初に位置決めをした型枠部材11,12同士の位置となり、再現性よく、精度高く型枠部材11,12同士の位置決めを行うことが出来ると共に、型枠部材11,12同士を固定し、型枠を固定することが出来る。
【0041】
尚、型枠10内でコンクリートが固化し、型枠10によるコンクリート製品の成形が完了して脱型する場合には、ボルト2の頭部21に図示しないレンチを係合させて、ボルト2とナット6との螺合を解除し、ボルト2及び挿入駒40を取外す。そして、型枠部材11,12同士の固定を解除し、型枠10からコンクリート製品を取り出す。尚、2度目以降の型枠10の使用では、ノックピンを使用しないので、型枠部材11,12同士の固定の解除の際にノックピンを取外す作業を行う必要がない。
【0042】
本発明の型枠固定補助具及び型枠固定具は、上記の実施の形態に限定されることなく、以下のように適宜に変更を加えた構成とすることも出来、又、これらの実施の形態の構成を取捨選択して、適宜組み合わせた構成とすることも出来る。
【0043】
例えば、挿入駒40は、図3に示すように、貫通孔45の内側面はネジを切らず、平滑面としてもよいが(図3(a))、貫通孔45の内側面には、挿入するボルト2のネジ部22に対応する雌ネジを形成することとしてもよい(図3(b))。
【0044】
貫通孔45の内側面にネジを形成しない場合には、挿入駒40とボルト2の齧り込みの発生を防止することが出来る。一方、ネジを切る場合には、ボルト2と挿入駒40を一体化することが出来るので、型枠10の締結作業時に、挿入駒40にボルト2を挿入する作業が不要となり、又、ボルト2の貫通孔45への挿入時に挿入駒40を押さえておく必要が無く、型枠10の固定作業が容易となる。
【0045】
上述のように、挿入駒40の挿入部41の外側面412及び受け駒50の貫通孔55は、円錐台状として、縦断面視において直線状としてもよい。しかし、挿入駒40と受け駒50の焼き付き防止のために、図4に示すように、挿入部41の外側面412又は受け駒50の貫通孔55の内側面のいずれか一方を曲面形状とし、詳しくは、縦断面視において凹状又は凸状の湾曲状とすることが好ましい。言い換えれば、円錐台を構成する母線を凹状又は凸状の曲線状として挿入部41を形成することが好ましい。
【0046】
具体的には、挿入部41の外側面412を凹状とし、貫通孔55の内側面を直線状とする構成(図4(a))、挿入部41の外側面412を凸状とし、貫通孔55の内側面を直線状とする構成(図4(b))、挿入部41の外側面412を直線状とし、貫通孔55の内側面を凹状とする構成(図4(c))、挿入部41の外側面412を直線状とし、貫通孔55の内側面を凸状とする構成(図4(d))を採用することが出来る。このような構成とすることで、挿入駒40の挿入部41の外側面412及び受け駒50の貫通孔55の内側面が面ではなく、線、即ち外側面412と内側面の夫々の円周上の線で接触するので、焼き付きを防止することが出来る。
【0047】
又、同様の理由から、テーパー状の挿入部41の外側面412又は/及び受け駒50の貫通孔55の内側面に点状や線状の凹部又は凸部を形成することとしてもよい。
【0048】
受け駒50は、通常鉄や鋼等の金属製の型枠10、即ち型枠部材11に溶接して固定するので、鉄や鋼等の金属製とするが、型枠10、即ち型枠部材11に接着剤等で固着させてもよいので、金属以外の材質で形成してもよい。
【0049】
又、挿入駒40は、鉄や鋼等の金属製でもよいが、受け駒50が上述のように通常金属製なので、受け駒50との焼き付き防止及びボルト2との齧り込み防止のために、金属以外、例えば合成樹脂等を用いて成形することが好ましい。合成樹脂としては、一定の硬度を備えたものであれば特に限定されず、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂の何れでもよく、具体的にはポリアミド系樹脂等を使用することが出来る。更に、挿入駒40を合成樹脂製とすることにより、挿入駒40、型枠固定補助具3及び型枠固定具1の軽量化を図ることが出来、型枠10の固定作業が容易となる。
【0050】
このように、挿入駒40の材質をボルト2や受け駒50の材質と異なる材質で作成できるのは、挿入駒40とボルト2を別個に形成し、使用時に組み合わせて使用する構成としたからである。
【0051】
挿入駒40の支持部42は、円筒状に形成するが、ボルト2の頭部21の押圧による支持部及び挿入駒の変形、破損を防止するため、特に挿入駒を合成樹脂製とする場合には、図5に示すように、ボルト2の頭部21に当接して押圧される支持部420の形状を、挿入部41から、挿入部41と反対方向に縮径した円錐台状等のテーパー状とし、挿入駒401の形状をそろばんの珠の形状とすることが好ましい。このように支持部420をテーパー状とした場合、その側面を凹状又は凸状の曲面としてもよい。
【0052】
又、図示はしないが、円柱状の支持部42の底面は挿入部41の底面411と同形状としてもよい。又、図示はしないが、挿入駒40の支持部の形状は、挿入部41が受け駒50の貫通孔55に挿入された際にも、受け駒50の貫通孔55から突出する高さを有していれば特に限定されず、四角柱等の角柱や角錐台等に形成してもよい。更に、支持部は、挿入部41の側面412を延長して、挿入部41の底面411を上面とする円錐台状等のテーパー状に形成してもよい。
【0053】
又、図示はしないが、受け駒50は、テーパー状の貫通孔55を備えれば、円柱状や下端面の平坦形状に限定されず、四角柱等の角柱や角錐台等に形成してもよい。
【0054】
ナットは、図1及び図2に示すような汎用品を使用することが出来るが、図6に示すように、長ナット7を用いることも出来る。長ナット7のナット孔70は、一端、具体的には、型枠部材片121側から中心方向(図6では下方向)へ縮径するテーパー部分71が形成されると共に、テーパー部分71に連続して、他端まで雌ネジが形成されたネジ切り部72が形成されている。更に、長ナット7と対向する型枠部材片121のボルト孔129は、ボルト2のネジ部22の径より大きく且つ長ナット7のテーパー部分71の最も長い直径の長さと同じ長さの径に形成することが好ましい。このように形成することで、ボルト2の挿入が容易となり、型枠10の位置決め及び固定の作業が容易となる。
【0055】
以上の説明では、本発明の固定具及び固定補助具を、型枠を構成する型枠部材同士を位置決め及び固定するために用いられる型枠固定具及び型枠固定補助具として説明したが、本発明の固定具及び固定補助具は、型枠を構成する型枠部材同士の位置決め及び固定に限定して用いられるものではなく、様々な部材同士の位置決め及び固定に用いられるものである。そして、ここでいう「部材」とは、壁、床、天井等の固定構造物及びその部分をも含む意味である。
【0056】
又、型枠をコンクリート製品の成型に用いられる型枠を例として説明したが、型枠はこれに限定されるものではなく、他の材料、例えば合成樹脂や金属等を用いた製品の製造に用いられる金型等の型枠も含まれる。
【0057】
尚、本発明の実施形態及び作用等が本明細書で詳細に開示されたが、上記の開示は本発明の例示的な形態であって、本発明を限定するものと解釈されるべきものではない。従って、当業者であれば、上記の実施形態のさまざまな変更を、開示された本発明の範囲及び精神から逸脱せずに行うことができることは明らかである。そのため、かかる変更はすべて本発明の範囲の中に含められるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のような本発明の固定補助具及び固定具によれば、部材同士を再現性よく正確に位置決めし、固定することが容易に出来、しかも、部材の焼き付きや齧り込みを防止することが出来るので、物の成形、建築等特に分野を限定することなく、部材同士の固定を必要とする様々な分野において好適に使用することが出来る。特に、コンクリート製品の成型に使用する型枠を構成する複数の型枠部材同士を再現性よく正確に位置決めし、固定することが容易に出来、しかも、部材の焼き付きや齧り込みを防止することが出来るので、型枠部材同士の固定による型枠の形成及びコンクリート製品の製造に好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0059】
1 型枠固定具
10 型枠
11 型枠部材
111 型枠部材片
112 ボルト孔
12 型枠部材
121 型枠部材片
122 ボルト孔
2 ボルト
21 頭部
22 ネジ部
3 型枠固定補助具
4 第一の型枠固定補助具
40 挿入駒
401 挿入駒
41 挿入部
42 支持部
420 支持部
45 貫通孔
5 第二の型枠固定補助具
50 受け駒
55 貫通孔
6 ナット
66 ナット孔
7 長ナット
70 ナット孔
71 テーパー部分
72 ネジ切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材同士の位置決め及び固定に用いられる固定補助具であって、
一方の部材に設けられたテーパー状の貫通孔に挿入されるテーパー状の挿入部と、
該挿入部の底面から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、
前記挿入部及び前記支持部を貫通するボルトを挿入するための貫通孔を備えたことを特徴とする第一の固定補助具。
【請求項2】
前記挿入部の外側面を曲面形状としたことを特徴とする請求項1に記載の第一の固定補助具。
【請求項3】
前記第一の固定補助具の前記貫通孔は円柱状であり、該貫通孔の内側面は平滑面としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の第一の固定補助具。
【請求項4】
前記第一の固定補助具の前記貫通孔は円柱状であり、該貫通孔の内側面には、挿入されるボルトのネジ部に対応するネジを形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の第一の固定補助具。
【請求項5】
前記支持部は、前記挿入部と反対方向に縮径する、テーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の第一の固定補助具。
【請求項6】
前記第一の固定補助具は合成樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1から5のうち何れか1項に記載の第一の固定補助具。
【請求項7】
複数の部材同士の位置決め及び固定に用いられる固定補助具であって、
上記請求項1から6のうち何れか1項に記載の第一の固定補助具と、
一方の部材に固定される、テーパー状の貫通孔が穿孔された筒状の第二の固定補助具と、
を備えて構成されることを特徴とする固定補助具。
【請求項8】
前記第二の固定補助具の前記貫通孔の内側面を曲面形状としたことを特徴とする請求項7に記載の固定補助具。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の固定補助具と、
前記第一の固定補助具の貫通孔及び前記第二の固定補助具の貫通孔を貫通するネジ部と、前記第一の固定補助具の前記支持部と対向する頭部とを供えたボルトと、
前記ボルトと螺合するナットと、
を備えたことを特徴とする固定具。
【請求項10】
前記ナットのナット孔は、一端から中心方向へ縮径するテーパー部分が形成されると共に、該テーパー部分に連続して、他端まで雌ネジが形成されたネジ切り部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の固定具。
【請求項11】
複数の部材同士の固定構造であって、
部材同士の対向箇所に夫々ボルト孔が穿孔され、
一方の部材の外側には、テーパー状の貫通孔が穿孔された第二の固定補助具が、該貫通孔が前記ボルト孔に連通するように固定され、
他方の部材の外側には、ナット孔が前記ボルト孔に連通するように、ナットが固定され、
テーパー状の挿入部と、該挿入部から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、前記挿入部及び前記支持部を貫通する貫通孔を備えた第一の固定補助具の貫通孔、前記第二の固定補助具の貫通孔及び前記ボルト孔にボルトのネジ部を貫通させると共に、
前記第一の固定補助具の挿入部を前記第二の固定補助具の貫通孔に挿入させ、
前記ボルトを前記ナットと螺合させ、
前記ボルトの頭部で前記支持部を押圧させ、
部材同士の位置決め及び固定を行うことを特徴とする部材同士の固定構造。
【請求項12】
複数の部材同士の固定方法であって、
部材同士の対向箇所に夫々ボルト孔を穿孔し、
一方の部材の外側に、テーパー状の貫通孔が穿孔された第二の固定補助具を、該貫通孔が前記ボルト孔に連通するように固定し、
他方の部材の外側に、ナット孔が前記ボルト孔に連通するように、ナットを固定し、
テーパー状の挿入部と、該挿入部から該挿入部と反対方向に突出した支持部と、前記挿入部及び前記支持部を貫通する貫通孔を備えた第一の固定補助具の貫通孔、前記第二の固定補助具の貫通孔及び前記ボルト孔にボルトのネジ部を貫通させると共に、
前記第一の固定補助具の挿入部を前記第二の固定補助具の貫通孔に挿入させ、
前記ボルトを前記ナットと螺合させ、
前記ボルトの頭部で前記支持部を押圧し、
前記挿入部と前記貫通孔を互いに案内させ合い、
部材同士の位置決め及び固定を行うことを特徴とする部材同士の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96537(P2013−96537A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241878(P2011−241878)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000230825)日本軌道工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】