説明

圧着用紙

【課題】 印刷・筆記適性に優れ、圧着性と易剥離性とを兼備する他、高耐水性で、水に濡れた場合でも設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離でき、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる圧着用紙を提供すること。
【解決手段】 基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、該基紙が、JIS P 8120の試験片及び離解に準拠したカナディアンフリーネスが350〜600mLの範囲に叩解された原料パルプからなり、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4〜1/3(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))の割合で含有したものであることを特徴とする圧着用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧着用紙に関する。さらに詳しくは、印刷・筆記適性に優れ、圧着性と易剥離性とを兼備するだけでなく、高耐水性であり、水に濡れた場合であっても、設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる圧着用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
圧着用紙とは基紙の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された用紙であって、この接着剤層は、常温では接着・粘着性はないが所定の加圧によって接着性を発揮する性能(以下、「圧着性」という)と、接着後に容易に剥離できる性能(以下、「易剥離性」という)とを兼ね備える。圧着用紙には、基紙上に印刷を施した後、この印刷面上に接着剤層を形成する後糊方式と呼ばれるものと、基紙上に形成された接着剤層に直接印刷や情報記録を施す先糊方式と呼ばれるものとがあるが、印刷加工先で接着剤層の形成加工を必要としないことから、一般に先糊方式の圧着用紙が広く用いられている。
【0003】
前記のごとき圧着用紙は、通常接着剤層同士が向かい合うように折りたたみ、互いに接する面を再剥離可能に圧着させて使用するものである。この接着剤層は、前記したように、圧着性と易剥離性とを兼ね備えていることから、圧着処理という簡単な加工で印刷面の情報を容易に隠蔽することができ、しかも必要時には圧着された用紙を接着剤層の界面で容易に剥離し、印刷された情報を再び読み取ることができる。そのため、圧着用紙の多くは、隠蔽を必要とする情報(以下、「隠蔽情報」という)を連絡するための葉書、いわゆる圧着葉書として用いられている。
【0004】
圧着葉書は圧着される面に隠蔽情報を印刷することで、隠蔽情報を外部に漏らすことなく郵送することができ、かつ受取人の側で容易に開封して隠蔽情報を読み取ることができるものである。隠蔽部位は、所定の圧力で剥離可能に接着されているため、剥離後に人為的に隠蔽部位を再度接着する事が不可能であり、情報の隠蔽を容易に確認することができる。
【0005】
また、一般に使用されている葉書と同じ料金で郵送できるという利点も有する。そのため、封筒を用いた隠蔽情報の伝達手段や封書式のダイレクトメールに代わるものとして、近年、その利用が急速に広まってきている。
【0006】
ところで圧着葉書には、隠蔽情報を隠蔽できること(隠蔽性)と、受け取った後に情報を読み取れること(易剥離性)とに加えて、郵送中における雨などによる不慮の濡れに対しても考慮し、さらに耐水性が要求されている。具体的には、水に濡れた場合による接着力の向上(水和結合力の向上)が生じたとしても、圧着された葉書を容易に開封することができ、しかも印刷された情報を毀損することなくはっきりと読み取ることができるだけの耐水性が要求されている。
【0007】
そこで従来、接着剤の接着力が向上したり、濡れによる基紙の強度低下が生じる問題に対し、圧着用紙に耐水性を付与する試みとして、基紙に耐水性を有する基体シートを用いた隠蔽情報所持体用シート(特許文献1参照)や、基体シートにさらに耐水処理層を設けた耐水性再生隠蔽情報担持用シート(特許文献1及び2参照)が提案されている。
【0008】
ここで前記基体シートとして上質紙を用いようとする場合には、その表面を合成樹脂によりコーティングすることで耐水性を付与したラミネート紙や、一般に合成紙と呼ばれる合成樹脂製の紙を使用しなければならない。しかしながらかかるラミネート紙は、再利用が困難で環境保護の点で問題があるとともに、合成樹脂表面への印刷、印字方法が限定され、合成紙と同様にコスト高であるため、安価に隠蔽情報を伝達できるという圧着葉書の利点が損なわれてしまう。したがって圧着用紙の基紙には、従来より、安価なフォーム紙やコーティングをしない上質紙の利用が求められている。
【0009】
しかしながら、フォーム紙やコーティングをしない上質紙を基紙とした圧着葉書は、水に濡れると基紙の強度が低下するという欠点を有する。さらに先糊方式の圧着用紙の接着剤層に通常使用される(変性)天然ゴムは、水に濡れるとその接着性が向上するため、受取人が圧着葉書を開封しようとした際に、基紙が破れたり、不用意な箇所で剥離が生じて印刷された情報を読み取れないという問題が起こる。そこで、前記のごとき基体シートに耐水処理層を設けた圧着用紙が提案されているのであるが、このような圧着用紙は、その製造工程が煩雑になるうえ、印刷面に耐水処理層が形成されるため、耐水処理層とインクとのなじみなどを考慮しなければならない。また、接着剤層の上に耐水処理層が形成されることで、接着剤層の圧着性や易剥離性が損なわれるという問題もある。
【0010】
また、先糊方式の圧着用紙の接着剤層は、前記したように、通常(変性)天然ゴムと微細粒子とを主な原料としている。かかる(変性)天然ゴムは非常に劣化しやすく、特に湿度条件によってその接着力が変化してしまう。そのため、このような原料で接着剤層が形成された圧着用紙は、水に濡れると易剥離性が低下するという問題がある。特に、水に濡れて乾燥した後の接着剤層の接着強度は、恒湿状態のときの約2倍になることが知られている。したがって、このような圧着用紙から作成された圧着葉書は、接着強度が高まって易剥離性が損なわれており、受取人が開封しようとした際に、容易に開封することができないという大きな問題がある。
【特許文献1】特開平7−309086号公報
【特許文献2】特開2003−103968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、印刷・筆記適性に優れ、圧着性と易剥離性とを兼備するだけでなく、高耐水性であり、水に濡れた場合であっても、設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる圧着用紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、該基紙が、JIS P 8120の試験片及び離解に準拠したカナディアンフリーネス(以下、「CSF」という)が350〜600mLの範囲に叩解された原料パルプからなり、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4〜1/3(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))の割合で含有したものであることを特徴とする圧着用紙に関する。このように本発明の圧着用紙は、2種の紙力剤を特定割合で含み、特定の原料パルプからなる基紙が用いられているので、印刷・筆記適性に優れ、圧着性と易剥離性とを兼備するだけでなく、高耐水性であり、水に濡れた場合であっても、設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる。
【0013】
前記接着剤層が、天然ゴムを含むバインダー成分、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)及び微細粒子を少なくとも含有した接着剤組成物から形成されたものであり、該PVAが、重合度が300〜1000の範囲であり、かつケン化度が86〜89mol%の範囲の部分ケン化PVAである場合には、圧着性及び耐水性をさらに向上させることができ、水に濡れた場合であっても接着剤層の強度低下及び破壊がより充分に阻止される。
【0014】
また前記基紙が、水に24時間浸漬後の、JIS P 8135に準拠したMD方向の湿潤引張強度が1.5kN/m以上のものである場合には、圧着用紙の耐水性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧着用紙は、印刷・筆記適性に優れ、圧着性と易剥離性とを兼備するだけでなく、高耐水性であり、水に濡れた場合であっても、設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の圧着用紙は、前記したように、基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、該基紙が、JIS P 8120の試験片及び離解に準拠したCSFが350〜600mLの範囲に叩解された原料パルプからなり、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4〜1/3(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))の割合で含有したものである。このように、特定原料の基紙が用いられていることが本発明の大きな特徴の1つであり、かかる基紙を用いることにより、前記のごとき優れた効果が同時に発現されるのである。
【0017】
以下に、本発明の一実施形態にかかわる圧着用紙について説明する。本発明の圧着用紙は、例えば図1の概略断面図に示される構造を有し、かかる図1において、1は圧着用紙、2は基紙、3は接着剤層である。かかる接着剤層3は、基紙2の表裏面の少なくとも一方の面に形成されるが、図1では基紙2の表面に接着剤層3が形成された状態を示している。
【0018】
まず、本発明に用いられる基紙2について以下に説明する。
【0019】
基紙2としては、バージンパルプを原料パルプとする非再生紙及び古紙パルプを原料パルプとする再生紙のいずれを用いることもできる。
【0020】
前記バージンパルプの種類には特に限定がなく、例えば上質紙などの製造に用いられている既知のパルプを用いることができる。かかるバージンパルプの具体例としては、例えば亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)などのクラフトパルプ(KP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、加圧下で砕木した漂白パルプ(BPGW)などがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。かかるバージンパルプは、必要に応じて漂白して使用するが、この場合には塩素を用いない漂白方法を採用することが好ましい。すなわち、漂白パルプを用いる場合には、Total Chlorine Free(TCF)やElemental Chlorine Free(ECF)などの無塩素漂白にて漂白されたパルプを用いることが望ましい。かかる無塩素漂白パルプは、オゾン漂白や酸素漂白が施されたパルプであり、明確ではないが、パルプを構成する繊維(セルロース)の末端基が酸素により活性化されているので、後述するカチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより好適に発揮される。
【0021】
前記古紙パルプとしては、漂白処理された、特に二酸化チオ尿素(FAS)にて還元漂白された古紙パルプを好適に使用することができる。FAS漂白された古紙パルプは、従来の塩素漂白パルプと比較すると、理由は明確ではないが、後述するカチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより好適に発揮される。
【0022】
なお古紙パルプを用いる場合、原料パルプ中の古紙パルプの含有量は70質量%以上であることが好ましい。このように古紙パルプを70質量%以上使用することにより、環境保護や低コスト化を実現することができるとともに、同一坪量のバージンパルプのみの基紙と比較して不透明度が高くなるので、圧着用紙1を例えば圧着葉書などにより好適に使用することができる。なお基紙2の表面強度を充分に維持させることを考慮すると、原料パルプ中の古紙パルプの含有量は95質量%以下であることが好ましい。
【0023】
基紙2の原料パルプは、圧着用紙1の耐水性向上、具体的には基紙の湿潤引張強度向上の点から、JIS P 8120の「7.試験片及び離解」に記載の方法に準拠したCSFが350mL以上、好ましくは400mL以上、かつ600mL以下、好ましくは550mL以下の範囲に叩解されたものである。かかる原料パルプのCSFが350mL未満の場合には、紙力向上効果が低く、基紙自体の剛度、強度が低下し、例えば電子写真の印刷時などにカールが生じ易く、印刷適性に劣ったものとなる。また原料パルプのCSFが600mLを超える場合には、地合が悪化し、例えばインクジェット印刷時の印刷適性に劣ったものとなるだけでなく、地合ムラによる基紙の表面強度ムラが生じ、易剥離性や接着強度にも劣ったものとなる。なお原料パルプの叩解には、リファオナーやニーダーなどの既知の叩解機が用いられるが、分級機により短繊維分、長繊維分を分級することでも原料パルプのCSFの調整が可能である。処理濃度、処理時間を適宜調整することで、CSFが前記範囲内の原料パルプを得ることができる。
【0024】
原料パルプから基紙2を製造する際には、かかる原料パルプにカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を添加する。該カチオン系湿潤紙力剤は、基紙2の湿潤引張強度を向上させる作用を有し、またアニオン系乾燥紙力剤は、カチオン系湿潤紙力剤の基紙2への定着性を向上させる作用を有する。
【0025】
前記カチオン系湿潤紙力剤としては、例えばポリアミド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミンなどの樹脂にカチオン性を付与したものがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。これらの樹脂は、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、パルプ繊維への定着を促進するために、エチレンジアミンやジエチレントリアミンなどの多価アミンで変性し、カチオン性を付与する。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、塩酸存在下で加熱縮合させ、カチオン性を帯びた、いわゆる酸コロイドの形状とする。これらカチオン系湿潤紙力剤の中でも、近年の遊離ホルマリンの規制などから、環境面を考慮すると、ポリアミド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂やポリエチレンイミンを好適に使用することができる。
【0026】
また前記アニオン系乾燥紙力剤としては、例えばポリアクリルアミド(以下、「PMA」という)、PVA、カルボキシメチルセルロースなどがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。かかるアニオン系乾燥紙力剤としてPVAを用いた場合には、後述するように、接着剤層3を形成する接着剤組成物にPVAが含まれていることから、基紙2と接着剤層3とのなじみがより良くなり、両者の接着性をさらに高めることができる。
【0027】
原料パルプに対するカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤の添加量は、特に限定されるものではないが、基紙2の充分な耐水性向上効果を得るには、原料パルプ103 kg(絶乾)に対して両者併せて20kg程度以上、さらには30kg程度以上であることが好ましく、また必要以上の使用による高コスト化を避けるには、原料パルプ103 kg(絶乾)に対して両者併せて100kg程度以下、さらには90kg程度以下であることが好ましい。
【0028】
またこれらカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤は、両者のイオンバランスをとって、カチオン系湿潤紙力剤が基紙2に定着しやすくなるように両者の配合割合を調整する。具体的には、カチオン系湿潤紙力剤とアニオン系乾燥紙力剤との割合(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))が1/4以上、さらには1/3.9以上、また1/3以下、さらには1/3.1以下となるように調整することが好ましい。かかる両者の割合が1/4未満の場合には、湿潤引張強度の向上効果が小さくなり、また1/3を超える場合には、アニオン系乾燥紙力剤の配合割合が少なくなるため、カチオン系湿潤紙力剤の定着性が低下する。
【0029】
基紙2の製造方法には特に限定がなく、洋紙の一般的な抄紙技術により抄紙して製造することができる。すなわち、原料パルプをスラリー化したのち、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤータイプ抄紙機、多層抄抄紙機などを使用して抄紙すればよい。
【0030】
かくして得られる本発明に用いる基紙2は、その湿潤引張強度が大きいものであり、水に濡れても極めて破れにくく、剥離後に印刷された情報を確実に読み取ることが充分に可能な圧着用紙1を提供することができる。具体的には、例えば従来用いられている基紙のMD方向の湿潤引張強度は0.2kN/m程度であるが、本発明においては、基紙2のMD方向の湿潤引張強度を1.5kN/m以上、さらには1.7kN/m以上まで高めることができる。
【0031】
ここで、湿潤引張強度について説明する。本発明にかかわる湿潤引張強度とは、JISP 8135に記載の方法に準拠し、圧着用紙1を水に24時間浸漬後に測定した値である。水への浸漬時間を24時間と設定したのは、圧着用紙1は水に浸漬して使用することを前提とするものではなく、例えば圧着葉書などとして使用する際に、配送中の雨や事故などにより水に濡れた場合であっても耐え得る耐水性を有するものであればよいためである。なお、かかる湿潤引張強度は水に濡れた状態で測定したものであるが、前記したように、MD方向の湿潤引張強度が1.5kN/m以上、さらには1.7kN/m以上であれば、水に濡れた後に乾燥させた圧着用紙1であっても、剥離時に破れが生じることがない充分な強度を有することが確認されている。
【0032】
なお前記湿潤引張強度があまりにも大きい場合には、古紙としての再利用が困難になる問題と、剛度が高くなるため貼り合わせ時の加工適性、剥離時のカール問題が生じ易くなる恐れがあるので、通常5kN/m程度以下であることが好ましい。
【0033】
基紙2には、必要に応じて、例えばクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの填料が添加されていてもよい。またその表面に、必要に応じて、無機顔料、澱粉などを含むサイズプレス液を塗布することにより、表面強度をさらに高めることができる。
【0034】
また本発明に用いられる基紙2の坪量には特に限定がなく、例えば100〜150g/m2 程度であればよい。
【0035】
次に、基紙2の表裏面の少なくとも一方の面に形成される接着剤層3について以下に説明する。
【0036】
前記接着剤層3は、特に限定がないが、圧着性及び耐水性をさらに向上させることができ、水に濡れた場合であっても接着剤層の強度低下及び破壊がより充分に阻止されるという点から、例えば天然ゴムを含むバインダー成分、PVA及び微細粒子を少なくとも含有した接着剤組成物から形成されることが好ましい。
【0037】
前記バインダー成分には、例えば天然ゴムが含まれるが、本発明においてはかかる天然ゴムの他にも、通常接着剤のバインダー成分として用いられるラテックス、合成ゴム、合成樹脂などを併用することができる。そのなかでも、例えば天然ゴムを無硫黄加硫し、メタクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックス、アクリル変性ゴムラテックス、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとの混合物などを単独で又は2種以上を同時に、耐ブロッキング性、耐経時劣化、インク着肉性などの点から特に好適に使用することができる。
【0038】
バインダー成分中の天然ゴムの量には特に限定がなく、通常50質量%以上、さらには55〜95質量%程度であればよい。
【0039】
また前記バインダー成分として、その特性を損なわない限り、澱粉、分散剤、保湿剤、耐水化剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。かかる分散剤としては、例えばポリエチレンオキサイド、ステアリン酸カルシウムなどがあげられる。また保湿剤としては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロースなどがあげられる。耐水化剤としては、例えば尿素ホルマリン樹脂、ポリアミドポリ尿素系樹脂などがあげられ、界面活性剤としては、例えばシリコーンワックスGZ−650(商品名、星光PMC(株)製)などがあげられる。
【0040】
PVAは天然ゴムを含むバインダー成分の助剤として作用するものである。天然ゴムを含む接着剤組成物は、前記したように、湿度条件によって劣化しやすいものであり、また前記カチオン系湿潤紙力剤を含む基紙2に塗布すると、水に濡れた際に基紙2の破れはないものの、易剥離性が低下する傾向がある。また例えば古紙パルプを用いた基紙は、古紙中のインクや例えば塗工紙に使用されている固化バインダーの影響により、特に水に濡れた際に、接着剤層同士の易剥離性が低下したり、接着剤層の強度が低下して層破壊が生じる傾向がある。しかしながら、天然ゴムを含むバインダー成分にPVAを助剤として配合することで、これらの問題をより容易に解決することができる。
【0041】
PVAは、酢酸ビニルモノマーを原料として重合反応とケン化反応とを行うことで得られ、その重合度は粘度などに影響を与える。PVAの重合度が低い方が、基紙2と接着剤層3との層間剥離量が少なくなり、両者の密着性が高まるので好ましいが、あまりにも低い場合には、粘度が低くなりすぎて、天然ゴムを含むバインダー成分の助剤としての効果が充分に発揮されず、圧着性に劣るものとなる。したがって、かかるPVAの重合度は300以上、さらには350以上であることが好ましい。またPVAの重合度があまりにも高い場合には、粘度が高く圧着性には優れるものの、基紙2と接着剤層3との層間剥離量が大きくなり、両者の密着性に劣るものとなる。したがって、かかるPVAの重合度は1000以下、さらには950以下であることが好ましい。このような重合度を有するPVAを用いることで、基紙2と接着剤層3との接着力がより高まり、水に濡れても易剥離性がさらに低下しにくくなる。
【0042】
またPVAとして、完全ケン化PVAや中間ケン化PVAではなく、部分ケン化PVAを用いることが好ましい。かかる部分ケン化PVAのケン化度は、接着剤層の圧着性のほか、特に水に濡れた場合の接着剤層の強度や易剥離性に影響を与える。かかるケン化度があまりにも小さい場合には、特に水に濡れた場合の接着剤層の強度や易剥離性が低下する傾向があるので、86mol%以上、さらには87mol%以上であることが好ましい。またかかるケン化度があまりにも大きい場合には、接着剤組成物に増粘が生じて調製が困難となったり、圧着性が低下する恐れがあるので、89mol%以下、さらには88mol%以下であることが好ましい。
【0043】
本発明において、特に前記範囲内の重合度かつケン化度を有する部分ケン化PVA、すなわち、重合度が300〜1000の範囲であり、かつケン化度が86〜89mol%の範囲の部分ケン化PVAを用いた場合には、水に濡れた際の、接着剤層の易剥離性の低下及び強度低下による層破壊といった問題がより充分に解決され得る。
【0044】
PVAの配合量は、水に濡れた際に、接着剤層の易剥離性の低下及び強度低下による層破壊が充分に阻止されるようにするには、バインダー成分100質量部に対して5質量部以上、さらには8質量部以上であることが好ましい。また耐水性や操業安定性、粘度安定性を考慮すると、PVAの配合量は、バインダー成分100質量部に対して20質量部以下、さらには15質量部以下であることが好ましい。なお本発明においては、重合度やケン化度が異なる2種以上のPVAを同時に用いてもよい。
【0045】
微細粒子は加圧接着された接着剤層3同士の擬似接着性をコントロールし、必要時における圧着面の剥離を容易にする成分である。
【0046】
前記微細粒子としては、例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの顔料の他、平均粒子径の異なる非晶質合成シリカ粉末、焼成カオリン、酸性白土、活性白土、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ポリエチレン微粒子、ポリスチレン微粒子などがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。
【0047】
微細粒子の粒子径があまりにも小さい場合には、接着剤層のブロッキングや再剥離不良を引き起こし、隠蔽情報の毀損を来たす問題が生じ、印刷や加工工程で搬送不良や重送の原因となる傾向があるので、平均粒子径は1μm以上、さらには3μm以上であることが好ましい。また微細粒子の粒子径があまりにも大きい場合には、不用意な剥離が生じて隠蔽性を損なう恐れがあり、微細粒子が接着剤層より突出した特異な凸部を形成するため、印刷不良や加工、印刷工程における作業性不良が起こったり、印刷見栄えが低下する傾向があるので、平均粒子径は25μm以下、さらには20μm以下であることが好ましい。
【0048】
微細粒子の配合量は、接着剤層同士の擬似接着性が所望の程度に充分にコントロールされるようにするには、バインダー成分100質量部に対して1質量部以上、さらには3質量部以上であることが好ましい。また微細粒子があまりにも多い場合には、接着剤層表面における微細粒子の固定が不充分になり、加工や印刷・記録工程において微細粒子の脱落が生じ、擬似接着性の低下や印刷・記録適正、品質の低下を招く恐れがあるので、微細粒子の配合量は、バインダー成分100質量部に対して10質量部以下、さらには8質量部以下であることが好ましい。なお本発明においては、粒子径が異なる2種以上の微細粒子を同時に用いてもよい。
【0049】
接着剤組成物の調製方法には特に限定がなく、例えば天然ゴムや必要に応じてその他の成分を含むバインダー成分の分散液に、適宜配合割合を調整したPVA及び微細粒子を添加し、均一組成となるように適温にて混合すればよい。
【0050】
得られた接着剤組成物の粘度や固形分濃度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定がなく、圧着用紙における接着剤層としての作用を充分に発揮し得る範囲であればよい。例えば25℃での粘度(B型粘度計にて測定)が13×10-3〜35×10-3Pa・s程度であり、固形分濃度が5〜50%程度であることが好ましい。
【0051】
例えば前記組成の接着剤組成物を前記基紙2に塗工することにより、接着剤層3が形成される。
【0052】
接着剤組成物の塗工方法には特に限定がなく、通常の塗工機を用いた方法を採用することができる。かかる塗工機としては、例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター、ロールコーターなどがあげられるが、特に着色した接着剤組成物を塗工する場合には、より均一に塗工することができるカーテンコーターを用いることが好ましい。またこれら塗工機を用いる方法の他にも、例えばグラビアオフセット、凸版、平板などの印刷方式で印刷する方法も採用することができる。
【0053】
接着剤組成物の塗工量は、あまりにも少ない場合には、所望の接着力が得られず意図しない剥離が生じやすくなり、またあまりにも多い場合には、接着力が強くなりすぎて易剥離性が低下しやすくなるとともに、塗工時に塗工ロールなどに接着剤組成物が付着し、操業上及び品質上のトラブルを招きやすくなるので、通常3〜15g/m2 程度とすることが好ましい。
【0054】
基紙2上に接着剤組成物を塗工した後には、塗工面を平滑化処理することが好ましく、かかる平滑化処理を行う際には、通常のカレンダー処理を採用することができる。カレンダー処理は、塗工機と一連のカレンダー(オンマシンカレンダー)により行うことも可能であるし、塗工機と一連ではなく完全に別体のカレンダー(オフマシンカレンダー)により行うことも可能である。カレンダーの種類は特に限定されず、金属ロールと弾性ロールとを備えるカレンダー、金属ロール同士を組み合わせたカレンダーなどの既知のカレンダーを使用することができる。
【0055】
かくして基紙2上に形成された接着剤層3の厚さは、あまりにも小さい場合には、圧着性が低く、例えば圧着葉書の郵送中に剥離が生じてしまう恐れがあり、またあまりにも大きい場合には、圧着時に接着剤組成物のはみだしなどが生じる恐れがあるので、通常5〜20μm程度であることが好ましい。
【0056】
前記のごとく構成された圧着用紙1は、情報が印刷される前に基紙2に接着剤層3が形成される、いわゆる先糊方式と呼ばれるものである。先糊方式の圧着用紙から、例えば圧着葉書を作成する場合には、不変情報である共有データを圧着用紙1に印刷した後、個人情報などの隠蔽を必要とする可変データの印刷を接着剤層3に印刷し、少なくともかかる隠蔽を必要とする可変データを隠蔽するように圧着用紙1を2つ折りもしくは3つ折りなどに折り曲げ、圧着シーラなどにより加圧接着すればよい。このように構成された圧着葉書は、高耐水性であるので、水に濡れた場合であっても、接着剤層の破壊がなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる。なお、本発明にかかわる圧着用紙1は、このような先糊方式で形成されたものに限定されるものではなく、後糊方式にも適用することができる。
【0057】
次に、本発明の圧着用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(製造例1〜8)基紙の作製
表1に示すパルプ種、漂白手段及び配合割合の原料パルプをリファイナーで叩解し、表1に示すCSFに調整したパルプスラリーに、カチオン系湿潤紙力剤(カチオン性ポリアミド樹脂、商品名:WS4002、星光PMC(株)製)及びアニオン系乾燥紙力剤(PMA、商品名:ハーマイドEX、ハリマ化成(株)製)を表1に示す配合量(原料パルプ103 kg(絶乾)に対する量)にて添加し、この抄紙原料を長網抄紙機にて抄紙した。抄紙時にヘッドボックス原料吐出口(リップ)の開度抄紙速度に対する抄紙原料吐出量の調整、ワイヤーパートにおけるワイヤーのシェーキング(横揺れ)を行い、図2の概略斜視図に示された圧着葉書に用いる、No.1〜8の基紙を得た。各基紙の表裏面には、無機顔料及び澱粉を含むサイズプレス液を片面あたり1.5g/m2 塗布した。坪量はすべて130g/m2 に調整した。
【0059】
なお表1中の略語は以下に示すとおりである。
パルプ種
D:DIP(上質紙の古紙パルプ)
L:LBKP
N:NBKP
漂白手段
F:FAS漂白
E:ECF漂白
【0060】
【表1】

【0061】
(調製例1〜8)接着剤組成物の調製
天然ゴムラテックス(NR)100質量部とメタクリル酸メチル(MMA)10質量部とをグラフト共重合させたグラフト共重合天然ゴムエマルジョン70質量%、合成ゴムラテックスとしてスチレン−MMA共重合体エマルジョン(商品名:ポリゾールAP6730、昭和高分子(株)製)20質量%及び変性澱粉(商品名:HSSコート100、王子コーンスターチ(株)製)10質量%を含むバインダー成分の分散液100質量部に、表2に示すPVAと、微細粒子としてシリカ(商品名:W500、グレースデビソン社製、平均粒子径:8μm)5質量部とを配合し、これらを室温にて充分に混合してNo.1〜8の接着剤組成物を得た。
【0062】
各接着剤組成物の25℃での粘度をB型粘度計にて測定した。その結果を固形分濃度と併せて表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
(実施例1〜16及び比較例1〜10)圧着葉書の作製
エアーナイフコーター及びオンマシンカレンダーを用い、表3及び表4に示す組み合わせで、No.1〜8の接着剤組成物をNo.1〜8の基紙の表裏面上に10g/m2 の塗工量で塗工後、塗工面を平滑化処理し、厚さ約5〜20μmの接着剤層を形成して図2(a)に示す圧着葉書4を作製した。なお、接着剤層は基紙の全表裏面に形成されているのではなく、基紙の表面側では面5bと面5cに、基紙の裏面側では面5dと面5eにそれぞれ接着剤層が形成されている。基紙の表面側にある面5a及び裏面側にある面5fには接着剤層は形成されていない。したがってこの圧着葉書4では、面5a、5fに宛名などの不変情報(非隠蔽情報)を印刷し、面5b、5c、5d、5eに隠蔽情報を印刷することができる。
【0065】
以下の「(試験例2)印刷適性(1)インクジェット印刷」の欄に記載の方法にて圧着葉書4の面5a〜5fにカラー印刷を施した。この圧着葉書4を、面5bと面5cとが向かい合い、面5dと面5eとが向かい合うように3つ折りにして、圧着シーラ(型番:MS−9100、大日本印刷(株)製)を用い、シーラーギャップ17の条件で圧着処理をしてそれぞれ向かい合った面を加圧接着させ、図2(b)に示す圧着葉書6を得た。この圧着葉書6は、6面6インチ仕様のものである。
【0066】
得られた圧着後の圧着葉書6及び圧着前の圧着葉書4について以下の試験を行い、その特性を調べた。その結果を表3及び表4に示す。
【0067】
(試験例1)基紙の湿潤引張強度
圧着葉書6を水に24時間浸漬させた後、JIS P 8135に記載の方法に準拠してMD方向の湿潤引張強度を測定した。
【0068】
(試験例2)印刷適性
(1)インクジェット印刷
インクジェットプリンター(型番:PIXUS860i、キャノン(株)製)を用い、圧着葉書4の面5a〜5fに、黒、赤、青及び黄の4色のベタ印字を行った(大きさ:5cm×5cm)。印字開始から30分間経過後、インクの乾燥状態及び隣り合う印字境界の滲みの有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0069】
[評価基準]
○:インクが完全に乾燥しており、かつ滲みがない。
△:インクが完全に乾燥していないか、又は滲みが認められる。
×:インクが完全に乾燥しておらず、滲みも認められる。
【0070】
(2)電子写真複写
電子写真複写機(型番:NP6550、キャノン(株)製)を用い、圧着葉書4の面5a〜5fに、13ポイントの文字を印刷領域全面にわたって複写した。複写の際に重送が発生するか否かを確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0071】
[評価基準]
○:重送が全く発生しなかった。
△:一部重送が発生した。
×:重送の発生が著しかった。
【0072】
(試験例3)易剥離性
圧着葉書6を通常の方法で端から剥離し、その状態を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:特に力を要さず、非常に剥離が容易である。
B:剥離が容易である。
C:どちらともいえない。
D:少し剥離し難く、力を要する。
E:剥離に力を要して非常に使い難い。
【0073】
(試験例4)耐水性
圧着葉書6を常温の水に24時間浸漬させた。こののち水中から取り出した圧着葉書6を剥離し、易剥離性、基紙の破れ、接着剤層の破壊及び印刷情報の読み取りについて調べた。
【0074】
(1)易剥離性
剥離したときの状態を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:特に力を要さず、非常に剥離が容易である。
B:剥離が容易である。
C:どちらともいえない。
D:少し剥離し難く、力を要する。
E:剥離に力を要して非常に使い難い。
【0075】
(2)基紙の破れ
剥離後の基紙の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:破れが全くない。
B:目視でほとんどわからない程度の小さな破れが数箇所しかない。
C:破れが数箇所ある。
D:破れが目立つ。
E:破れが著しく、基紙がほとんど原型を留めない。
【0076】
(3)接着剤層の破壊
剥離後の接着剤層表面の凹凸状態を光学顕微鏡にて観察し、また層表面を手で擦った際の汚れの付着状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:凹凸がなく平滑で、手に汚れが全く付着しない。
B:凹凸がほとんどなく、手の汚れも僅かである。
C:小さな凹凸が数箇所確認され、汚れも少しある。
D:凹凸の箇所が多く、手に汚れがかなり付着する。
E:全体的に凹凸が著しく、汚れもひどい。
【0077】
(4)印刷情報の読み取り
剥離後、面5b、5c、5d、5eに印刷された情報を読み取ることができるか否かを確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:全ての面において、全ての印刷情報を容易に正確に読み取ることができる。
B:全ての面において、ほとんどの印刷情報を正確に読み取ることができる。
C:一部の面において、印刷情報を正確に読み取ることができない箇所がある。
D:全ての面において、印刷情報を正確に読み取ることができない箇所が多い。
E:全ての面において、印刷情報をほとんど読み取ることができない。
【0078】
【表3】

【表4】

【0079】
表3に示された結果から、実施例1〜16のように、CSFが420〜520mLの原料パルプからなり、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4〜1/3の範囲内で配合して得られた基紙に接着剤層を形成させた圧着葉書は、いずれも、印刷適性に優れるのは勿論のこと、易剥離性にも優れるだけでなく、基紙の原料パルプとして古紙パルプを70質量%以上用いているにもかかわらず、水に24時間浸漬後のMD方向の湿潤引張強度が1.5kN/m以上と大きく、高耐水性であるので、易剥離性に優れ、基紙の破れ及び接着剤層の破壊がほとんどなく、確実な印刷情報の読み取りが可能なものであることがわかる。またこのように古紙パルプを原料パルプとしているので、充分に低コスト化を図ることもできる。
【0080】
特に実施例1〜12からわかるように、単に繊維強度の高いNBKPや印刷適性向上効果を有するLBKPだけでなく、古紙を相当量含有し、CSFが特定範囲で、特定割合のカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤が配合された基紙を用い、なおかつ重合度が300〜1000で、ケン化度が86〜89mol%の部分ケン化PVAを含んだ接着剤組成物を組み合わせて用いた場合には、印刷適性と共に耐水性もきわめて向上することがわかる。
【0081】
これに対して、表4の比較例1〜10のように、CSFが350mL未満又は600mLを超える原料パルプから得られた基紙か、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4未満又は1/3を超える割合で配合して得られた基紙を用いた圧着葉書は、印刷適性に劣るだけでなく、易剥離性が低く、確実な印刷情報の読み取りが困難であるか、又は水に24時間浸漬後のMD方向の湿潤引張強度が不充分となり、易剥離性が低いか基紙の破れが生じて耐水性に劣り、やはり確実な印刷情報の読み取りが困難なものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の圧着用紙は、圧着葉書だけでなく、例えば隠蔽を必要とする情報隠蔽用紙、隠蔽性封筒などにも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の圧着用紙の一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施例にかかわる圧着葉書の概略斜視図であり、(a)は圧着前の概略斜視図、(b)は圧着後の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1 圧着用紙
2 基紙
3 接着剤層
4 圧着葉書
5a〜5f 面
6 圧着葉書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、
前記基紙が、JIS P 8120の試験片及び離解に準拠したカナディアンフリーネスが350〜600mLの範囲に叩解された原料パルプからなり、カチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を1/4〜1/3(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))の割合で含有したものであることを特徴とする圧着用紙。
【請求項2】
接着剤層が、天然ゴムを含むバインダー成分、ポリビニルアルコール及び微細粒子を少なくとも含有した接着剤組成物から形成されたものであり、該ポリビニルアルコールが、重合度が300〜1000の範囲であり、かつケン化度が86〜89mol%の範囲の部分ケン化ポリビニルアルコールである、請求項1に記載の圧着用紙。
【請求項3】
基紙が、水に24時間浸漬後の、JIS P 8135に準拠したMD方向の湿潤引張強度が1.5kN/m以上のものである、請求項1又は2に記載の圧着用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−63473(P2007−63473A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253608(P2005−253608)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】