説明

圧電ウエハのエッチング加工方法および圧電デバイス

【課題】圧電ウエハの表面に対して垂直なエッチング面を短時間で形成する圧電ウエハのエッチング加工方法を提供する。
【解決手段】圧電ウエハのエッチング加工方法は、圧電ウエハの一方の面12および他方の面14に開口部16を有するマスク18を形成し、前記開口部16をエッチングして貫通溝を形成するものである。そして前記一方の面12に形成され前記開口部16に隣接する前記マスク18におけるZ’軸方向の端部を、前記他方の面14に形成され前記開口部16に隣接する前記マスク18におけるZ’軸方向の端部に対して、前記圧電ウエハの+Z’方向に前記圧電ウエハの板厚の50±10%ずらしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電ウエハのエッチング加工方法および圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動片の外形は、この振動片の振動等の特性や機械的強度を確保するために、振動片の表面に対して垂直な側面を有するのが好ましい。この圧電振動片は、圧電ウエハをエッチングして複数の圧電基板を形成し、この圧電基板の表面に電極パターンを形成することにより製造される。そして圧電ウエハをエッチングするときは、圧電基板(圧電振動片)の形状に対応したマスクを圧電ウエハの表面に形成し、マスクの開口部をエッチングしている。
【0003】
ところで水晶を初めとする圧電材料の多くは結晶に異方性を持っているので、この結晶の異方性に起因して結晶の軸方向によって異なるエッチングレートを持つことが知られている。そして圧電ウエハとしてATカットされた水晶ウエハを用いると、エッチングによって生じる溝の断面形状は台形となる。すなわち溝は、水晶ウエハの表面に直角な側面と、結晶軸を表すZ軸に沿う側面を有する。
【0004】
このようなことから特許文献1には、ATカットされた水晶ウエハの表面に一定の条件に基づいて耐食膜を形成することにより、エッチング加工面を水晶ウエハの表面に対してほぼ直角に形成できることが開示されている。また特許文献2には、回転Y板の上下面に形成される保護膜の一方の上面端部と他方の下面端部を結ぶ延長線をZ軸方向にするとともに、これらの間隔をt/tanθだけずらすことにより、エッチング時間を短縮し、水晶振動子の特性を良好にしたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−11404号公報
【特許文献2】特開平1−179513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示された発明について実験してみると、圧電ウエハがマスクで覆われている部分も横方向のエッチング(オーバーエッチング)によって除去されてしまい、エッチングされる部分がマスクの開口部よりも大きくなってしまうこともあった。このため圧電振動片を製造する場合には、予めオーバーエッチングされる量を見込んで、所望の圧電基板の形状よりも大きなマスクを圧電ウエハ上に形成する必要があるので、1枚の圧電ウエハから得られる圧電基板(圧電振動片)の数を少なくしなければならなかった。
【0007】
また特許文献2に開示された発明では、エッチングによって得られる圧電基板の側面が斜めになっている。すなわち圧電基板の表面に対して垂直な側面は得られない。このため特許文献2に開示された発明から得られる圧電振動片は、安定した周波数を発振できないので安定した特性を得ることができず、また側面が尖っているのでワレやカケが発生しやすくなる等の欠点を有することになる。
【0008】
また従来から、圧電基板の側面を表面に対して垂直に形成するように努力されている。特にATカット水晶振動片では、Z(Z’)方向の水晶基板(水晶振動片)の形状、すなわちX軸に沿う水晶基板の側面が表面に対して垂直になるように努力されている。これは、X軸に沿う水晶基板の側面が水晶振動片の振動特性により影響を与えるからである。ところが近年は、圧電振動片が小型化されているので、圧電振動片の振動特性を確保するためには、Z(Z’)方向の圧電基板の形状のみばかりでなく、X方向の圧電基板の形状、すなわちZ’軸に沿う圧電基板の側面の形状も圧電基板表面に対して垂直にした方が好ましい。
【0009】
本発明は、圧電ウエハの表面に対して垂直なエッチング面を短時間で形成する圧電ウエハのエッチング加工方法を提供することを目的とする。
また本発明は、このエッチング加工方法によって得られた圧電基板を利用する圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧電ウエハのエッチング加工方法は、圧電ウエハの一方の面および他方の面に開口部を有するマスクを形成し、前記開口部をエッチングして貫通溝を形成する圧電ウエハのエッチング加工方法において、前記一方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するZ’軸方向の端部を、前記他方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するZ’軸方向の端部に対して、前記圧電ウエハの+Z’方向に前記圧電ウエハの板厚の50±10%ずらした、ことを特徴としている。
【0011】
マスクの開口部に露出した圧電ウエハをエッチングすると、このエッチングによって得られるX軸に沿う側面を圧電ウエハの表面に対して垂直にすることができる。そしてこの方法を用いて圧電基板を形成すると、圧電基板の表面に対して垂直な側面(X軸に沿う側面)を得ることができる。よって側面にワレやカケが発生し難くなり、機械的強度を向上させることができる。
【0012】
また圧電ウエハ上にマスクをずらして設けることにより、圧電ウエハの表面に対して貫通溝の側面を垂直にするまでのエッチング時間が短くなるので、エッチングによって形成される貫通溝の幅が広くなるのを防止できる。したがって圧電ウエハから圧電基板を得る場合、圧電基板の外形形状が小さくなるのを防止できるので、1枚の圧電ウエハから得られる圧電基板の数を多くすることができる。
【0013】
また本発明に係る圧電ウエハのエッチング加工方法は、前記一方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するX軸方向の前記端部を、前記他方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するX軸方向の前記端部に対して、前記圧電ウエハの+X方向に前記圧電ウエハの前記板厚の10±5%ずらしたことを特徴としている。
【0014】
マスクの開口部に露出した圧電ウエハをエッチングすると、このエッチングによって得られるZ’軸に沿う側面を圧電ウエハの表面に対して垂直にすることができる。そしてこの方法を用いて圧電基板を形成すると、圧電基板の表面に対して垂直な側面(Z’軸に沿う側面)を得ることができる。よって側面にワレやカケが発生し難くなり、機械的強度を向上させることができる。
【0015】
また圧電ウエハ上にマスクをずらして設けることにより、圧電ウエハの表面に対して貫通溝の側面を垂直にするまでのエッチング時間が短くなるので、エッチングによって形成される貫通溝の幅が広くなるのを防止できる。したがって圧電ウエハから圧電基板を得る場合、圧電基板の外形形状が小さくなるのを防止できるので、1枚の圧電ウエハから得られる圧電基板の数を多くすることができる。
【0016】
また圧電ウエハの一方の面に設けられるマスクと他方の面に設けられるマスクを、+Z’方向に圧電ウエハの板厚の50±10%ずらすとともに、+X方向に圧電ウエハの板厚の10±5%ずらせば、同じエッチング時間でX軸に沿う垂直な側面とZ’軸に沿う垂直な側面を有する圧電基板を得ることができる。
【0017】
そして本発明に係る圧電ウエハのエッチング加工方法における前記マスクの前記開口部は、前記圧電ウエハの前記板厚に対して1.5倍以上の幅を有することを特徴としている。この場合、Z’軸方向に対しても、X軸方向に対しても、前記圧電ウエハの板厚に対して1.5倍以上の前記開口部の幅を有している。これにより開口部に露出している圧電ウエハを確実にエッチングすることができる。
【0018】
また本発明に係る圧電ウエハのエッチング加工方法における前記圧電ウエハは、ATカット水晶であることを特徴としている。これにより表面に対して垂直な側面を有するATカット水晶基板を得ることができる。
【0019】
本発明に係る圧電デバイスは、前述した特徴を有する圧電ウエハのエッチング加工方法を用いて前記圧電ウエハをチップ化し、このチップ化した圧電基板に電極パターンを設けたことを特徴としている。これにより圧電デバイスは、圧電振動片を構成することができる。この圧電振動子に用いられる圧電基板は、表面に対して垂直な側面を有することができる。よって圧電デバイスは、安定した周波数を発振することができ、またワレやカケが発生し難くなるので機械的強度を向上させることができる。
【0020】
また本発明に係る圧電デバイスは、前記電極パターンが形成された前記圧電基板をパッケージに搭載したことを特徴としている。これにより圧電デバイスは、圧電振動子を構成することができる。よって圧電デバイスからは、周波数が安定した信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ATカットされた水晶ウエハの説明図である。
【図2】マスクを設けた水晶ウエハを示し、Z’軸に沿った断面図である。
【図3】マスクを設けた水晶ウエハを示し、X軸に沿った断面図である。
【図4】一方の面に形成されるマスクと他方の面に形成されるマスクの位置関係を説明する平面図である。
【図5】エッチングによって得られた水晶基板を示し、Z’軸に沿った断面図である。
【図6】圧電デバイスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、発明に係る圧電ウエハのエッチング加工方法および圧電デバイスの最良の実施形態について説明する。なお本実施形態では、圧電ウエハとしてATカットされた水晶を用いた形態を説明する。
【0023】
まず第1の実施形態について説明する。図1はATカットされた水晶ウエハの説明図である。水晶の結晶軸は、X軸、Y軸およびZ軸によって定義される。ATカットされた水晶ウエハ10は、Y軸に垂直に切り出されるXY平面をY板とし、このY板をX軸回りにθ回転させて得られる回転Y板であり、θが35°近傍のものをいう。そしてZ’軸およびY’軸は、Z軸およびY軸をθ回転させたことにより新たに設定した軸である。
【0024】
このようなATカットされた水晶ウエハの一方の面および他方の面に開口部を有するマスクを形成し、この開口部をエッチングして貫通溝を形成する加工方法を以下に説明する。Z’軸に沿う方向に形成され、開口部16に隣接するマスク18の端部は、次のように形成される。図2はマスクを設けた水晶ウエハを示し、Z’軸に沿った断面図である。なお図2では、図面の左側が+Z’方向となり、上側が+Y’方向となり、図面の奥から手前に向かって+X方向となっている。
【0025】
水晶ウエハ10の一方の面12および他方の面14にマスク18を形成し、貫通溝を形成したい部分の水晶ウエハ10の表面を露出しておく。すなわち水晶ウエハ10の一方の面12において、エッチングしたくない部分にマスク18を形成し、貫通溝を形成したい部分をマスク18の開口部16としておく。また水晶ウエハ10の他方の面14において、エッチングしたくない部分にマスク18を形成し、貫通溝を形成したい部分をマスク18の開口部16としておく。なお水晶ウエハ10の一方の面12は、他方の面14よりも+Y’方向に位置している。
【0026】
そして水晶ウエハ10の一方の面12に形成され、開口部16に隣接するマスク18の+Z’方向の端部Aは、他方の面14に形成され、開口部16に隣接するマスク18の+Z’方向の端部Bに対して、水晶ウエハ10の+Z’方向に長さL1ずらされている。また水晶ウエハ10の一方の面12に形成され、開口部16に隣接するマスク18の−Z’方向の端部A’は、他方の面14に形成され、開口部16に隣接するマスク18の−Z’方向の端部B’に対して、水晶ウエハ10の+Z’方向に長さL1ずらされている。この長さL1は、水晶ウエハ10の板厚tの50±10%である。一例としては、板厚tを100μmとすると、マスク18の端部A(A’)と端部B(B’)とのずらし量(長さ)L1は40〜60μmとなる。
【0027】
また水晶ウエハ10の一方の面12に形成されるマスク18の開口部16のZ’軸に沿う方向の幅と、他方の面14に形成されるマスク18の開口部16のZ’軸に沿う方向の幅は同じ長さL3となっている。この長さL3は、水晶ウエハ10の板厚tの1.5倍以上である。一例としては、板厚tを100μmとすると、マスク18の開口部16の長さL3は150μm以上となる。
【0028】
またX軸に沿う方向に形成されるマスク18の端部は、次のように形成される。図3はマスクを設けた水晶ウエハを示し、X軸に沿った断面図である。なお図3では、図面の左側が+X方向となり、上側が+Y’方向となり、手前から図面の奥に向かって+Z’方向となっている。なお図3においても、水晶ウエハ10の一方の面12は、他方の面14よりも+Y’方向に位置している。
【0029】
そして水晶ウエハ10の一方の面12に形成され、開口部16に隣接するマスク18の+X方向の端部Cは、他方の面14に形成され、開口部16に隣接するマスク18の+X方向の端部Dに対して、水晶ウエハ10の+X方向に長さL2ずらされている。また水晶ウエハ10の一方の面12に形成され、開口部16に隣接するマスク18の−X方向の端部C’は、他方の面14に形成され、開口部16に隣接するマスク18の−X方向の端部D’に対して、水晶ウエハ10の+X方向に長さL2ずらされている。この長さL2は、水晶ウエハ10の板厚tの10±5%である。一例としては、板厚tを100μmとすると、マスク18の端部C(C’)と端部D(D’)とのずらし量(長さ)L2は5〜15μmとなる。また水晶ウエハ10の一方の面12に形成されるマスク18の開口部16のX軸に沿う方向の幅と、他方の面14に形成されるマスク18の開口部16のX軸に沿う方向の幅は同じ長さL3となっている。この長さL3は、水晶ウエハ10の板厚tの1.5倍以上である。一例としては、板厚tを100μmとすると、マスク18の開口部16の長さL3は150μm以上となる。
【0030】
そして1枚の水晶ウエハ10から複数の水晶基板(圧電基板)を形成する場合は、水晶ウエハ10の一方の面12および他方の面14に上述した関係を備えたマスク18を複数形成すればよい。図4は一方の面に形成されるマスクと他方の面に形成されるマスクの位置関係を説明する平面図である。この図4は1枚の水晶ウエハから水晶基板を得るときの一例であり、水晶基板1枚分のマスク18(18a,18b)の位置関係を示している。そして図4において、図面の左側が+X方向となり、上側が+Z’方向となり、図面の奥から手前に向かって+Y’方向となっている。なお図4では、水晶ウエハの記載は省略している。そして一方の面12に形成されるマスク18aが実線で示され、他方の面14に形成されるマスク18bが破線で示されている。
【0031】
図4に示されるように、一方の面12に形成されるマスク18aは、他方の面14に形成されるマスク18bに対して+X方向に長さL1ずらされるとともに、+Z’方向に長さL2ずらされている。この長さL1およびL2は、前述したように、それぞれ水晶ウエハ10の板厚tの50±10%および板厚tの10±5%となっている。
【0032】
このようにしてマスク18が形成された水晶ウエハ10をエッチングすると、マスク18の開口部16がエッチングされて貫通溝が形成される。図5はエッチングによって得られた水晶基板を示し、Z’軸に沿った断面図である。なお図5では、図面の右側が+Z’方向となり、手前から図面の奥に向かって+X方向となっている。エッチング加工されて得られた貫通溝の側面は水晶基板20の側面となる。このため図5に示される場合では、水晶基板20の左側および右側の側面が貫通溝の側面となっている。
【0033】
そして前述したように、長さL1を水晶ウエハ10の板厚tの50±10%としてマスク18を形成した場合におけるZ’方向の水晶基板20の側面22(X軸に沿っている水晶基板20の側面22)は、図5(B)に示されるように表面24に対して垂直になる。なおここで垂直な面には、表面24に対して略垂直な面も含み、僅かの残さや僅かの入り込みがあっても、垂直とみなすことができる。なお図示はしていないが、長さL2を板厚tの10±5%としてマスク18を形成した場合におけるX方向の水晶基板20の側面(Z’軸に沿っている水晶基板20の側面)は、Z’方向の水晶基板20の側面22と同様に表面24に対して垂直になる。
【0034】
これに対し長さL1が、前述した長さよりも短い場合、例えば長さL1が零の場合におけるZ’方向の水晶基板20の側面22は、図5(A)に示されるように大きな残さ26が残る。なお図示はしていないが、長さL2を前述した長さよりも短くした場合におけるX方向の水晶基板20の側面も、Z’方向の水晶基板20の側面22と同様に残さが残る。そして、この残さ26を除去するためにはさらにエッチングを行えばよいが、横方向のエッチングによって水晶基板20の幅が小さくなってしまう。
【0035】
また長さL1が、前述した長さよりも長い場合、例えば水晶の板厚tと同じ長さの場合におけるZ’方向の水晶基板20の側面22は、図5(C)に示されるように大きな入り込み28が発生する。なお図示はしていないが、長さL2を前述した長さよりも長くした場合におけるX方向の水晶基板20の側面も、Z’方向の水晶基板20の側面22と同様に大きな入り込みが発生する。
【0036】
このような水晶ウエハ10のエッチング加工方法によれば、一方の面12に形成されるマスク18を他方の面14に形成されるマスク18に対してZ’軸方向に水晶ウエハ10の板厚tの50±10%ずらすことにより、マスク18の開口部16をエッチングして得られるX軸に沿う側面22を表面に対して垂直にすることができる。また一方の面12に形成されるマスク18を他方の面14に形成されるマスク18に対してX軸方向に水晶ウエハ10の板厚tの10±5%ずらすことにより、マスク18の開口部16をエッチングして得られるZ’軸に沿う側面を表面に対して垂直にすることができる。そして長さL1、L2を前述したように設定すれば、同一のエッチング時間で表面に対して垂直なX軸に沿う側面22とZ’軸に沿う側面を有する水晶基板20を得ることができる。したがって水晶基板20は、側面が表面に対して垂直に形成されているのでワレやカケが発生し難くなり、機械的強度を向上させることができる。
【0037】
また前述したように水晶ウエハ10上にマスク18をずらして設ければ、マスク18をずらさないで設ける場合に比べて、約3倍早く垂直な側面の水晶基板20を形成することができる。そして水晶基板20上にマスク18をずらして設ければ、マスク18をずらさないで設ける場合に比べて、貫通溝を形成するためのエッチング時間が短くなるので、外形形状の大きい水晶基板20を得ることができるとともに、生産スピードも向上することができる。したがって、1枚の水晶ウエハ10から得られる水晶基板20の個数を多くすることができる。
【0038】
また開口部16の長さL3を水晶ウエハ10の厚さtの1.5倍以上としているので、水晶ウエハ10の表面とエッチング液を確実に接触することができる。したがって水晶ウエハ10に貫通溝を形成することができる。
【0039】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した水晶ウエハのエッチング加工方法を用いて1枚の水晶ウエハから複数の水晶基板を形成し、この水晶基板を用いて圧電デバイスを形成する構成について説明する。図6は圧電デバイスの説明図である。ここで図6(A)は水晶振動片の平面図、図6(B)は水晶振動子の断面図である。
【0040】
図6(A)に示される水晶振動片30(圧電振動片、圧電デバイス)は、水晶基板20の表面に電極パターン32を設けた構成である。この電極パターン32は、励振電極34、接続電極36および引き出し電極38を有している。励振電極34は、水晶基板20の一方の面12および他方の面14における中央部に設けられている。また接続電極36は、水晶基板20のある1つの辺における両端部に設けられている。この接続電極36は、各端部において一方の面12と他方の面14のそれぞれに形成されており、側面を介して接続されている。そして励振電極34と接続電極36は、引き出し電極38によって1対1に接続されている。このようにして、図6(A)に示される厚みすべり振動を生じるATカットの水晶振動片30が得られる。
【0041】
この水晶振動片30の側面は表面に対して垂直に形成されているので、水晶振動片30の振動特性が向上し、安定した周波数を発振することができる。そして水晶振動片30を小型化した場合であっても、水晶振動片30は安定した周波数を発振することができる。また水晶振動片30の側面は垂直なので、ワレやカケが発生し難くなり、機械的強度を向上させることができる。
【0042】
そして、このような水晶振動片30はパッケージ42に搭載されて、図6(B)に示されるような水晶振動子40(圧電振動子、圧電デバイス)を構成することができる。パッケージ42は、パッケージベース44と蓋体46を有している。このパッケージベース44の裏面に外部端子48が設けられている。またパッケージベース44は、上側に向けて開口した凹部50を有している。この凹部50の底面にマウント電極52が設けられており、このマウント電極52は外部端子48と導通している。そしてマウント電極52の上に導電性接合材54を介して水晶振動片30が設けられている。具体的には、マウント電極52の上に導電性接合材54が設けられた後、この導電性接合材54と水晶振動片30の接続電極36が接合するように、水晶振動片30がパッケージベース44に搭載される。そして水晶振動片30が搭載されたパッケージベース44の上面に蓋体46が接合されて、凹部50を気密封止している。この気密封止は、凹部50を真空に封止するもの、または窒素等の不活性ガスにより封止するものであればよい。これにより水晶振動子40からは、周波数が安定した信号を出力することができる。
【0043】
なお前述したパッケージ42に、水晶振動片30を発振させる回路を搭載して水晶発振器とすることもできる。また水晶振動片30を発振させる回路とともに、水晶振動片30の温度に対する周波数の安定度を高める温度補償回路や水晶振動片30の出力周波数を設定電圧に応じて制御する回路をパッケージ42に搭載して、温度補償型水晶発振器や電圧制御型水晶発振器とすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
10………水晶ウエハ、12………一方の面、14………他方の面、16………開口部、18………マスク、20………水晶基板、30………水晶振動片、32………電極パターン、40………水晶振動子、42………パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電ウエハの一方の面および他方の面に開口部を有するマスクを形成し、前記開口部をエッチングして貫通溝を形成する圧電ウエハのエッチング加工方法において、
前記一方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するZ’軸方向の端部を、前記他方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するZ’軸方向の端部に対して、前記圧電ウエハの+Z’方向に前記圧電ウエハの板厚の50±10%ずらした、
ことを特徴とする圧電ウエハのエッチング加工方法。
【請求項2】
前記一方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するX軸方向の前記端部を、前記他方の面に形成された前記マスクにおける前記開口部に隣接するX軸方向の前記端部に対して、前記圧電ウエハの+X方向に前記圧電ウエハの前記板厚の10±5%ずらしたことを特徴とする請求項1に記載の圧電ウエハのエッチング加工方法。
【請求項3】
前記一方の面は、前記他方の面よりも+Y’方向にあることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電ウエハのエッチング加工方法。
【請求項4】
前記マスクの前記開口部は、前記圧電ウエハの前記板厚に対して1.5倍以上の幅を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電ウエハのエッチング加工方法。
【請求項5】
前記圧電ウエハは、ATカット水晶であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電ウエハのエッチング加工方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電ウエハのエッチング加工方法を用いて前記圧電ウエハをチップ化し、このチップ化した圧電基板に電極パターンを設けたことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項7】
前記電極パターンが形成された前記圧電基板をパッケージに搭載したことを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−135614(P2011−135614A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55149(P2011−55149)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2005−320454(P2005−320454)の分割
【原出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】