圧電デバイス及びその製造方法。
【課題】 2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ塗布された導電性接着剤が短絡することを低減する圧電デバイスを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の圧電デバイスは、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、凹部空間内に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、基部と、基部の側面より同一の方向に延出する2本の振動腕部と、2本の振動腕部の間に位置する基部の側面より同一の方向に延出するバランス用腕部と、を備えた音叉型屈曲水晶振動素子と、凹部空間を気密封止する蓋体と、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とするものである。
【解決手段】 本発明の圧電デバイスは、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、凹部空間内に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、基部と、基部の側面より同一の方向に延出する2本の振動腕部と、2本の振動腕部の間に位置する基部の側面より同一の方向に延出するバランス用腕部と、を備えた音叉型屈曲水晶振動素子と、凹部空間を気密封止する蓋体と、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイス及びその製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、音叉型屈曲水晶振動素子、蓋体とから主に構成されている(特許文献1参照)。
素子搭載部材は、基板部と第1の枠部と第2の枠部とで構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部が積層する状態で設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する第1の枠部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられ、音叉型水晶振動素子が搭載される。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
また、第2の枠部の主面には、封止用導体パターンが設けられている。
この音叉型屈曲水晶振動素子を囲繞する素子搭載部材の第2の枠部の封止用導体パターンには金属製の蓋体が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
【0003】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子は、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる2本の平板形状の振動腕部とによって構成されている。
これらの基部、振動腕部の表面には、素子搭載部材の圧電振動素子搭載パッドと電気的に接続を取る接続用電極、励振用電極、周波数調整用金属膜が形成されている。
この音叉型屈曲水晶振動素子は、接続用電極を圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤で固着することで片持ち固定されている。このときの振動腕部において、基部と反対側を向く端部が先端部となる。
【0004】
また、圧電デバイス用シート基板は、複数の素子搭載部材がマトリクス状に配置された状態で設けられている。この素子搭載部材を個片化することで、複数の圧電デバイスを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−301297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電デバイスでは、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触し、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間が短絡してしまうといった課題があった。これにより、従来の圧電デバイスの製造方法では、生産性が低下してしまうといった課題があった。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ塗布された導電性接着剤が短絡することを低減する圧電デバイスおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電デバイスは、本発明の圧電デバイスは、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、凹部空間内に露出する第1の枠部の主面に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載されている圧電振動素子と、凹部空間を気密封止する蓋体と、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL2との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成され、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部を形成する溝部形成工程と、前記素子搭載部材の凹部空間に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、圧電振動素子を気密封止するように前記素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電デバイスによれば、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、導電性接着剤が第1の枠部の主面及び溝部の壁面に沿って流れ出るため、溝部の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減することができる。
【0012】
また、本発明の圧電デバイスによれば、前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、溝部が導電性接着剤で溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減することができる。
【0013】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工を用いることで溝部を形成するので、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、溝部の縁部が盛り上がるようにして形成されているため、その縁部にて導電性接着剤がせき止められる。よって、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減するので、圧電デバイスの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA−A断面図であり、(b)は、図1のB−B断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイスの蓋部材を外した状態を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイスの素子搭載部材の状態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で圧電デバイス用シート基板準備工程を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で素子搭載部材個片化工程を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で圧電振動素子搭載工程を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で蓋部材接合工程を示す平面図である。
【図8】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の深さ方向の長さと第1の枠部の厚みとの関係と短絡の伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の深さ方向の長さと第1の枠部の厚みとの関係と発振周波数の変動に伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の短辺方向の長さと圧電振動素子搭載パッド間の長さとの関係と短絡の伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の短辺方向の長さL1と2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さとの関係と圧電振動素子の剥がれに伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた音叉型屈曲水晶振動素子の場合について説明する。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0016】
本発明の実施形態は、圧電デバイスの例の1つである圧電振動子300について説明する。
図1及び図2に示すように、圧電振動子300は、素子搭載部材210と圧電振動素子100と蓋体230で主に構成されている。この圧電振動子300は、前記素子搭載部材210に形成されている凹部空間K1内に圧電振動素子100が搭載されている。この凹部空間K1が蓋体230により気密封止された構造となっている。
【0017】
(音叉型屈曲水晶振動素子)
圧電振動素子の例の1つである音叉型屈曲水晶振動素子100について説明する。
図1及び図2に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110と、その水晶片110の表面に設けられた励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a及び123bと、周波数調整用金属膜124a及び124bと、導配線パターン125、126とにより概略構成される。
【0018】
図1及び図2に示すように、水晶片110は、基部111と振動腕部112とからなり、振動腕部112が第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとから成る。
基部111は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸回りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。
第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。
このような水晶片110は、基部111と振動腕部112a、112bとが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィー技術と化学エッチング技術により製造される。
【0019】
また、図1に示すように、励振用電極122aは、第一の振動腕部112aの表裏主面に設けられている。また、励振用電極122bは、第一の振動腕部112aの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124aは、第一の振動腕部112aの表主面及び側面の先端部に設けられている。
また、接続用電極123aは、基部111の第一の振動腕部112a側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0020】
図1に示すように、励振用電極121aは、第二の振動腕部112bの表裏主面に設けられている。また、励振用電極121bは、第二の振動腕部112bの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124bは、第二の振動腕部112bの表主面及び両側面の先端部に設けられている。
接続用電極123bは、基部111の第二の振動腕部112b側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0021】
なお、音叉型屈曲水晶振動素子100は、周波数調整用金属膜124a及び124bを構成する金属の量を増減させることにより、その振動周波数値を所望する値に調整することができる。
【0022】
図2に示すように、励振用電極121a及び122bと、周波数調整用金属膜124aと接続用電極123aとは、水晶素板110表面に設けられた、例えば導配線パターン125により電気的に接続している。
接続用電極123aは、基部111に設けられている導配線パターン125により励振用電極121aと電気的に接続している。また、接続用電極123aは、励振用電極122bと電気的に接続している。
【0023】
また、図2に示すように、励振用電極121b及び122aと、周波数調整用金属膜124bと接続用電極123bとは、水晶片110表面に設けられた、例えば導配線パターン126により電気的に接続している。
接続用電極123bは、励振用電極121b及び周波数調整用金属膜124bと電気的に接続している。また、基部111の表主面に設けられた導配線パターン126は、励振用電極122a及び励振用電極121bと電気的に接続している。
【0024】
なお、各励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a、123bと、周波数調整用金属膜124a、124bと、導配線パターン125、126とは、例えば下地金属としてのCr層と、その下地金属の上に重ねて設けられたAu層とから構成されている。
【0025】
この音叉型屈曲水晶振動素子100を振動させる場合、接続用電極123a及び123bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第二の振動腕部112bの励振用電極121bは+(プラス)電位となり、励振用電極121aは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第一の振動腕部112aの励振用電極は、第二の振動腕部112bの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに伸縮現象が生じ、各振動腕部112に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0026】
(素子搭載部材)
また、図1〜図2に示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、第1の枠部210bと、第2の枠部210cとで主に構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
前記素子搭載部材210の凹部空間K1を囲繞する第2の枠部210cの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン212が形成されている。
凹部空間K1内で露出した第1の枠部210bの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
素子搭載部材210の基板部210aの他方の主面の両端には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
基板部210aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられており、所定の圧電振動素子搭載パッド211と外部接続用電極端子G(図2参照)を接続している。
【0027】
図2(b)に示すように、凹部空間K1内で露出した第1の枠部210bの一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッド211の間には、溝部214が設けられている。
尚、例えば、この圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合には、図3(b)に示す溝部214の短辺方向の長さL1は、例えば、30〜160μmであり、溝部214の長辺方向の長さL2は、例えば、200〜300μmである。また、図2(b)に示す溝部214の深さW1は、例えば、40〜90μmである。
また、図2(b)に示す素子搭載部材210の第1の枠部210bの厚みW2は、例えば、100〜200μmである。
図3(b)に示す2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3は、例えば、100〜200μmである。
また、前記溝部214を形成する際には、前記溝部214の縁部が盛り上がるように形成されることになる。
前記溝部214の縁部とは、第1の枠部210bの主面に設けられた箇所のことである。
【0028】
前記溝部214の深さ方向の長さW1と前記第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9となるように設けられている。
図8に示すように、W1/W2の値が0.4より小さい場合は、圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSが隣接する圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSと接触して、圧電振動素子搭載パッド211が短絡してしまう結果が得られた。
また、図8に示すように、W1/W2の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド211間の短絡に伴う歩留りが28%になる結果が得られた。つまり、W1/W2の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド211間の短絡に伴う不良率が72%になる結果が得られた。
図9に示すように、W1/W2の値が0.9より大きい場合には、レーザ加工またはサンドブラスト加工にて溝部214を形成するため、熱が加わり、第1の枠部210bと基板部210aとの間に亀裂が生じて、凹部空間K1内の気密封止性が維持できず、発振周波数が変動してしまう結果が得られた。また、W1/W2の値が0.95の場合には、発振周波数変動に伴う歩留りが90%になる結果が得られた。つまり、W1/W2の値が0.95の場合には、発振周波数変動に伴う不良率が10%になる結果が得られた。
このように、第1の枠部210bの主面の圧電振動素子搭載パッド211間に設けられている溝部214の深さ方向の長さW1と第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、音叉型屈曲水晶振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、導電性接着剤DSが第1の枠部210bの主面及び溝部214の壁面に沿って流れ出るため、溝部214の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
また、前記溝部214の壁面とは、溝部214内に形成された第1の枠部210bの厚み方向にできた面のことである。
【0029】
また、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8となるように設けられている。
図10に示すように、L1/L3の値が0.3より小さい場合は、圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSが隣接する圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSと接触して、圧電振動素子搭載パッド211間が短絡してしまう結果が得られた。また、図10に示すように、L1/L3の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド間の短絡に伴う歩留りが36%になる結果が得られた。つまり、L1/L3の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド間の短絡に伴う不良率が64%になる結果が得られた。
また、図11に示すように、L1/L3の値が0.8より大きい場合は、レーザ加工及びサンドブラスト加工にて溝部214を形成するため、レーザ加工またはサンドブラスト加工にて圧電振動素子搭載パッド211を除去してしまい、圧電振動素子搭載パッド211の面積が縮小されることになった。よって、導電性接着剤DSの接合強度が低下し、音叉型屈曲水晶振動素子100が圧電振動素子搭載パッド211から剥がれてしまう結果が得られた。また、図11に示すように、L1/L3の値が0.9の場合には、音叉型屈曲水晶振動素子100の剥がれに伴う歩留りが80%になる結果が得られた。つまり、L1/L3の値が0.9の場合には、音叉型屈曲水晶振動素子100の剥がれに伴う不良率が20%になる結果が得られた。
このように、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214が導電性接着剤DSで溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0030】
蓋体230は、図2及び図3に示すように、素子搭載部材210の封止用導体パターン212上に第一の凹部空間K1の開口部を覆うように配置接合される。この蓋体230には、前記封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231が設けられている。
また、このような封止部材231は、前記封止用導体パターン212表面の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。
【0031】
また、前記素子搭載部材210上に配置される蓋体230は、従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に整形することによって製作される。蓋体230の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面に少なくとも封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231である銀ロウ層が形成される。銀ロウ層の厚みは、10μm〜40μmである。
【0032】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0033】
尚、前記素子搭載部材210は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、圧電振動素子搭載パッド211、封止用導体パターン212、外部接続用電極端子G等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔(図示せず)内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0034】
本発明の圧電デバイス300によれば、第1の枠部210bの主面の圧電振動素子搭載パッド211間に設けられている溝部214の深さ方向の長さW1と第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、導電性接着剤DSが第1の枠部210bの主面及び溝部214の壁面に沿って流れ出るため、溝部214の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0035】
また、本発明の圧電デバイス200によれば、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214が導電性接着剤DSで溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0036】
次に本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法について、図5〜図8を用いて説明する。
【0037】
(溝部形成工程)
図5に示すように、溝部形成工程は、基板部210aと、この基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cとが設けられて、凹部空間K1が形成され、前記凹部空間K1内に露出する前記第1の枠部210aの主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている素子搭載部材210の前記第1の枠部210aの主面の前記圧電振動素子搭載パッド211間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部214を形成する工程である。
【0038】
素子搭載部材210は、凹部空間内K1に露出する第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。この2つの圧電振動素子搭載パッド211の間を、レーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部214を形成する。
尚、例えば、この圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合には、図3(b)に示す溝部214の短辺方向の長さL1は、例えば、30〜160μmであり、溝部214の長辺方向の長さL2は、例えば、200〜300μmである。また、図2(b)に示す溝部214の深さW1は、例えば、40〜90μmである。
また、図2(b)に示す素子搭載部材210の第1の枠部210bの厚みW2は、例えば、100〜200μmである。
図3(b)に示す2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3は、例えば、100〜200μmである。
【0039】
レーザ加工としては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ、エキシマレーザ等を用いる。
例えば、YVO4レーザの場合には、そのレーザの3倍波で、波長が例えば、300〜400nmのものを用いる。
サンドブラスト加工としては、例えば、10〜15μmの砥粒を噴射することで加工するものである。
このレーザ加工及びサンドブラスト加工を用いて、前記溝部214を形成する際には、前記溝部214の縁部が盛り上がるように形成されることになる。
前記溝部214の縁部とは、第1の枠部210bの主面に設けられた箇所のことである。
【0040】
また、例えば、図4に示すように、基板部210aと第1の枠部210bと第2の枠部210cにより第凹部空間K1が形成されている素子搭載部材210と余剰部220とが交互に複数有することで構成されている圧電デバイス用シート基板200を用いる。
【0041】
図4に示すように、余剰部220は、後述する素子搭載部材210と隣り合うようにして複数設けられている。
余剰部220の幅の長さは、例えば、50〜150μmであり、ダイシング法を用いた際のダイサー(図示せず)の厚みと同じ長さとなっている。つまり、余剰部220は、素子搭載部材210が個片化する際に削除されることになる。
【0042】
前記圧電デバイス用シート基板200の切断は、ダイサーを用いたダイシングやレーザによる切断によって行なわれ、前記圧電デバイス用シート基板200が個々の素子搭載部材210毎に分割される。これにより、複数個の素子搭載部材210が同時に得られる。
ダイサーとしては、例えば、ダイヤモンド砥粒等を電鋳により固定した円盤状の電鋳ブレードやダイヤモンド砥粒等を、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂を結合材として使用したレジンブレードがある。
レーザとしては、YAGレーザの3倍波で、波長が例えば、300〜400nmのものを用いる。
【0043】
(圧電振動素子搭載工程)
図6に示すように、圧電振動素子搭載工程は、前記素子搭載部材210の凹部空間K1内に設けられた圧電振動素子搭載パッド211に圧電振動素子100を搭載する工程である。
素子搭載部材210の凹部空間K1内の基板部110aには2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられており、前記圧電振動素子搭載パッド211上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSに音叉型屈曲水晶振動素子100の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極124(図3参照)を付着させる形態で圧電振動素子100を搭載する。
大気雰囲気中または窒素雰囲気中の硬化アニール炉の内部空間に前記素子搭載部材210を収容した状態で、前記導電性接着剤DSを加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッド211と前記音叉型屈曲水晶振動素子100とを導通固着する。
加熱硬化とは、導電性接着剤DSを加熱することにより、硬化させることをいう。
【0044】
炉本体は、内部空間を有し、前記素子搭載部材210を格納する役割を果たす。
加熱部は、前記内部空間を所定の温度に加熱する役割を果たす。加熱部は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられている。
供給部は、前記内部空間にガスを供給する役割を果たす。ガスは、例えば窒素等が用いられている。
制御部は、炉本体の内部空間の温度や酸素濃度、加熱部の昇温速度、供給部のガス供給量の制御を行うものである。
【0045】
(蓋部材接合工程)
図7に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子100を気密封止するように素子搭載部材210に蓋部材230を接合する工程である。
蓋部材230は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、音叉型屈曲水晶振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材230は、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中で、前記素子搭載部材210の第2の枠部210c上に載置され、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212と蓋部材230に設けられた封止部材231が溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極(図示せず)を蓋部材230に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材230の外側縁部に沿って動かすことで、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212に接合される。
【0046】
本発明の圧電デバイス300の製造方法によれば、前記凹部空間K1内に露出する前記第1の枠部210aの主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている素子搭載部材210の前記第1の枠部210aの主面の前記圧電振動素子搭載パッド211間にレーザを照射することで、溝部214を形成するので、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214の縁部が盛り上がるようにして形成されているため、その盛り上がった縁部にて導電性接着剤DSがせき止められる。よって、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減するので、圧電デバイス300の生産性を向上することができる。
【0047】
また、本発明の圧電デバイス300の製造方法によれば、レーザまたはサンドブラストで溝部214を形成するため、溝部214の短辺方向の長さL1を調整することができるため、圧電振動素子搭載パッド211の面積を従来よりも大きい面積を確保することができ、積層ずれで圧電振動素子搭載パッド211が第2の枠部210bの直下に入り込んでも、圧電振動素子搭載パッド211の面積を維持することができる。よって、導電性接着剤DSと圧電振動素子搭載パッド211との接合強度を維持することができるので、圧電振動素子100が圧電振動素子搭載パッド211から剥がれてしまうことを低減することができる。
【0048】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0049】
また、前記した本実施形態では、圧電振動素子を音叉型屈曲水晶振動素子を用いた場合を説明したが、ATカットの水晶振動素子として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0050】
また、前記した本実施形態では、圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合を説明したが、長辺方向の長さが2.0mm以下であり、短辺方向の長さが1.6mm以下の場合でも適応可能である。
【0051】
また、前記本実施形態では、素子搭載部材を複数設けたシート基板を用いて説明したが、個片の素子搭載部材を搬送治具等に収容した後、レーザを用いて溝を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0052】
210・・・素子搭載部材
210a・・・基板部
210b・・・第1の枠部
210b・・・第2の枠部
211・・・圧電振動素子搭載パッド
212・・・封止用導体パターン
214・・・溝部
100・・・圧電振動素子(音叉型屈曲水晶振動素子)
110・・・水晶素板
230・・・蓋部材
231・・・封止部材
200・・・圧電デバイス用シート基板
300・・・圧電デバイス(圧電振動子)
G・・・外部接続用電極端子
K1・・・凹部空間
DS・・・導電性接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイス及びその製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、音叉型屈曲水晶振動素子、蓋体とから主に構成されている(特許文献1参照)。
素子搭載部材は、基板部と第1の枠部と第2の枠部とで構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部が積層する状態で設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する第1の枠部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられ、音叉型水晶振動素子が搭載される。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
また、第2の枠部の主面には、封止用導体パターンが設けられている。
この音叉型屈曲水晶振動素子を囲繞する素子搭載部材の第2の枠部の封止用導体パターンには金属製の蓋体が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
【0003】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子は、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる2本の平板形状の振動腕部とによって構成されている。
これらの基部、振動腕部の表面には、素子搭載部材の圧電振動素子搭載パッドと電気的に接続を取る接続用電極、励振用電極、周波数調整用金属膜が形成されている。
この音叉型屈曲水晶振動素子は、接続用電極を圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤で固着することで片持ち固定されている。このときの振動腕部において、基部と反対側を向く端部が先端部となる。
【0004】
また、圧電デバイス用シート基板は、複数の素子搭載部材がマトリクス状に配置された状態で設けられている。この素子搭載部材を個片化することで、複数の圧電デバイスを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−301297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電デバイスでは、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触し、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間が短絡してしまうといった課題があった。これにより、従来の圧電デバイスの製造方法では、生産性が低下してしまうといった課題があった。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ塗布された導電性接着剤が短絡することを低減する圧電デバイスおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電デバイスは、本発明の圧電デバイスは、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、凹部空間内に露出する第1の枠部の主面に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載されている圧電振動素子と、凹部空間を気密封止する蓋体と、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL2との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成され、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部を形成する溝部形成工程と、前記素子搭載部材の凹部空間に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、圧電振動素子を気密封止するように前記素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電デバイスによれば、第1の枠部の主面の圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部の深さ方向の長さW1と第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、導電性接着剤が第1の枠部の主面及び溝部の壁面に沿って流れ出るため、溝部の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減することができる。
【0012】
また、本発明の圧電デバイスによれば、前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッドにそれぞれ導電性接着剤を塗布し、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、溝部が導電性接着剤で溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減することができる。
【0013】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工を用いることで溝部を形成するので、圧電振動素子を搭載する際に導電性接着剤が流れ出ても、溝部の縁部が盛り上がるようにして形成されているため、その縁部にて導電性接着剤がせき止められる。よって、それぞれの圧電振動素子搭載パッドに塗布した導電性接着剤同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の短絡を低減するので、圧電デバイスの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、図1のA−A断面図であり、(b)は、図1のB−B断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイスの蓋部材を外した状態を示す平面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る圧電デバイスの素子搭載部材の状態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で圧電デバイス用シート基板準備工程を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で素子搭載部材個片化工程を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で圧電振動素子搭載工程を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で蓋部材接合工程を示す平面図である。
【図8】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の深さ方向の長さと第1の枠部の厚みとの関係と短絡の伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の深さ方向の長さと第1の枠部の厚みとの関係と発振周波数の変動に伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の短辺方向の長さと圧電振動素子搭載パッド間の長さとの関係と短絡の伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の圧電デバイスを構成する素子搭載部材の溝部の短辺方向の長さL1と2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さとの関係と圧電振動素子の剥がれに伴う歩留りとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた音叉型屈曲水晶振動素子の場合について説明する。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0016】
本発明の実施形態は、圧電デバイスの例の1つである圧電振動子300について説明する。
図1及び図2に示すように、圧電振動子300は、素子搭載部材210と圧電振動素子100と蓋体230で主に構成されている。この圧電振動子300は、前記素子搭載部材210に形成されている凹部空間K1内に圧電振動素子100が搭載されている。この凹部空間K1が蓋体230により気密封止された構造となっている。
【0017】
(音叉型屈曲水晶振動素子)
圧電振動素子の例の1つである音叉型屈曲水晶振動素子100について説明する。
図1及び図2に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110と、その水晶片110の表面に設けられた励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a及び123bと、周波数調整用金属膜124a及び124bと、導配線パターン125、126とにより概略構成される。
【0018】
図1及び図2に示すように、水晶片110は、基部111と振動腕部112とからなり、振動腕部112が第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとから成る。
基部111は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸回りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。
第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。
このような水晶片110は、基部111と振動腕部112a、112bとが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィー技術と化学エッチング技術により製造される。
【0019】
また、図1に示すように、励振用電極122aは、第一の振動腕部112aの表裏主面に設けられている。また、励振用電極122bは、第一の振動腕部112aの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124aは、第一の振動腕部112aの表主面及び側面の先端部に設けられている。
また、接続用電極123aは、基部111の第一の振動腕部112a側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0020】
図1に示すように、励振用電極121aは、第二の振動腕部112bの表裏主面に設けられている。また、励振用電極121bは、第二の振動腕部112bの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124bは、第二の振動腕部112bの表主面及び両側面の先端部に設けられている。
接続用電極123bは、基部111の第二の振動腕部112b側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0021】
なお、音叉型屈曲水晶振動素子100は、周波数調整用金属膜124a及び124bを構成する金属の量を増減させることにより、その振動周波数値を所望する値に調整することができる。
【0022】
図2に示すように、励振用電極121a及び122bと、周波数調整用金属膜124aと接続用電極123aとは、水晶素板110表面に設けられた、例えば導配線パターン125により電気的に接続している。
接続用電極123aは、基部111に設けられている導配線パターン125により励振用電極121aと電気的に接続している。また、接続用電極123aは、励振用電極122bと電気的に接続している。
【0023】
また、図2に示すように、励振用電極121b及び122aと、周波数調整用金属膜124bと接続用電極123bとは、水晶片110表面に設けられた、例えば導配線パターン126により電気的に接続している。
接続用電極123bは、励振用電極121b及び周波数調整用金属膜124bと電気的に接続している。また、基部111の表主面に設けられた導配線パターン126は、励振用電極122a及び励振用電極121bと電気的に接続している。
【0024】
なお、各励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a、123bと、周波数調整用金属膜124a、124bと、導配線パターン125、126とは、例えば下地金属としてのCr層と、その下地金属の上に重ねて設けられたAu層とから構成されている。
【0025】
この音叉型屈曲水晶振動素子100を振動させる場合、接続用電極123a及び123bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第二の振動腕部112bの励振用電極121bは+(プラス)電位となり、励振用電極121aは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第一の振動腕部112aの励振用電極は、第二の振動腕部112bの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに伸縮現象が生じ、各振動腕部112に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0026】
(素子搭載部材)
また、図1〜図2に示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、第1の枠部210bと、第2の枠部210cとで主に構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
前記素子搭載部材210の凹部空間K1を囲繞する第2の枠部210cの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン212が形成されている。
凹部空間K1内で露出した第1の枠部210bの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
素子搭載部材210の基板部210aの他方の主面の両端には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
基板部210aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられており、所定の圧電振動素子搭載パッド211と外部接続用電極端子G(図2参照)を接続している。
【0027】
図2(b)に示すように、凹部空間K1内で露出した第1の枠部210bの一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッド211の間には、溝部214が設けられている。
尚、例えば、この圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合には、図3(b)に示す溝部214の短辺方向の長さL1は、例えば、30〜160μmであり、溝部214の長辺方向の長さL2は、例えば、200〜300μmである。また、図2(b)に示す溝部214の深さW1は、例えば、40〜90μmである。
また、図2(b)に示す素子搭載部材210の第1の枠部210bの厚みW2は、例えば、100〜200μmである。
図3(b)に示す2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3は、例えば、100〜200μmである。
また、前記溝部214を形成する際には、前記溝部214の縁部が盛り上がるように形成されることになる。
前記溝部214の縁部とは、第1の枠部210bの主面に設けられた箇所のことである。
【0028】
前記溝部214の深さ方向の長さW1と前記第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9となるように設けられている。
図8に示すように、W1/W2の値が0.4より小さい場合は、圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSが隣接する圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSと接触して、圧電振動素子搭載パッド211が短絡してしまう結果が得られた。
また、図8に示すように、W1/W2の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド211間の短絡に伴う歩留りが28%になる結果が得られた。つまり、W1/W2の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド211間の短絡に伴う不良率が72%になる結果が得られた。
図9に示すように、W1/W2の値が0.9より大きい場合には、レーザ加工またはサンドブラスト加工にて溝部214を形成するため、熱が加わり、第1の枠部210bと基板部210aとの間に亀裂が生じて、凹部空間K1内の気密封止性が維持できず、発振周波数が変動してしまう結果が得られた。また、W1/W2の値が0.95の場合には、発振周波数変動に伴う歩留りが90%になる結果が得られた。つまり、W1/W2の値が0.95の場合には、発振周波数変動に伴う不良率が10%になる結果が得られた。
このように、第1の枠部210bの主面の圧電振動素子搭載パッド211間に設けられている溝部214の深さ方向の長さW1と第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、音叉型屈曲水晶振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、導電性接着剤DSが第1の枠部210bの主面及び溝部214の壁面に沿って流れ出るため、溝部214の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
また、前記溝部214の壁面とは、溝部214内に形成された第1の枠部210bの厚み方向にできた面のことである。
【0029】
また、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8となるように設けられている。
図10に示すように、L1/L3の値が0.3より小さい場合は、圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSが隣接する圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSと接触して、圧電振動素子搭載パッド211間が短絡してしまう結果が得られた。また、図10に示すように、L1/L3の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド間の短絡に伴う歩留りが36%になる結果が得られた。つまり、L1/L3の値が0.1の場合は、圧電振動素子搭載パッド間の短絡に伴う不良率が64%になる結果が得られた。
また、図11に示すように、L1/L3の値が0.8より大きい場合は、レーザ加工及びサンドブラスト加工にて溝部214を形成するため、レーザ加工またはサンドブラスト加工にて圧電振動素子搭載パッド211を除去してしまい、圧電振動素子搭載パッド211の面積が縮小されることになった。よって、導電性接着剤DSの接合強度が低下し、音叉型屈曲水晶振動素子100が圧電振動素子搭載パッド211から剥がれてしまう結果が得られた。また、図11に示すように、L1/L3の値が0.9の場合には、音叉型屈曲水晶振動素子100の剥がれに伴う歩留りが80%になる結果が得られた。つまり、L1/L3の値が0.9の場合には、音叉型屈曲水晶振動素子100の剥がれに伴う不良率が20%になる結果が得られた。
このように、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214が導電性接着剤DSで溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0030】
蓋体230は、図2及び図3に示すように、素子搭載部材210の封止用導体パターン212上に第一の凹部空間K1の開口部を覆うように配置接合される。この蓋体230には、前記封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231が設けられている。
また、このような封止部材231は、前記封止用導体パターン212表面の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。
【0031】
また、前記素子搭載部材210上に配置される蓋体230は、従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に整形することによって製作される。蓋体230の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面に少なくとも封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231である銀ロウ層が形成される。銀ロウ層の厚みは、10μm〜40μmである。
【0032】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0033】
尚、前記素子搭載部材210は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、圧電振動素子搭載パッド211、封止用導体パターン212、外部接続用電極端子G等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔(図示せず)内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0034】
本発明の圧電デバイス300によれば、第1の枠部210bの主面の圧電振動素子搭載パッド211間に設けられている溝部214の深さ方向の長さW1と第1の枠部210bの厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、導電性接着剤DSが第1の枠部210bの主面及び溝部214の壁面に沿って流れ出るため、溝部214の深さ方向の長さ分だけ距離が長くなったので、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0035】
また、本発明の圧電デバイス200によれば、前記溝部214の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることによって、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211にそれぞれ導電性接着剤DSを塗布し、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214が導電性接着剤DSで溢れることがないため、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減することができる。
【0036】
次に本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法について、図5〜図8を用いて説明する。
【0037】
(溝部形成工程)
図5に示すように、溝部形成工程は、基板部210aと、この基板部210aの一方の主面に第1の枠部210bと第2の枠部210cとが設けられて、凹部空間K1が形成され、前記凹部空間K1内に露出する前記第1の枠部210aの主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている素子搭載部材210の前記第1の枠部210aの主面の前記圧電振動素子搭載パッド211間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部214を形成する工程である。
【0038】
素子搭載部材210は、凹部空間内K1に露出する第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。この2つの圧電振動素子搭載パッド211の間を、レーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部214を形成する。
尚、例えば、この圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合には、図3(b)に示す溝部214の短辺方向の長さL1は、例えば、30〜160μmであり、溝部214の長辺方向の長さL2は、例えば、200〜300μmである。また、図2(b)に示す溝部214の深さW1は、例えば、40〜90μmである。
また、図2(b)に示す素子搭載部材210の第1の枠部210bの厚みW2は、例えば、100〜200μmである。
図3(b)に示す2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の長さL3は、例えば、100〜200μmである。
【0039】
レーザ加工としては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ、エキシマレーザ等を用いる。
例えば、YVO4レーザの場合には、そのレーザの3倍波で、波長が例えば、300〜400nmのものを用いる。
サンドブラスト加工としては、例えば、10〜15μmの砥粒を噴射することで加工するものである。
このレーザ加工及びサンドブラスト加工を用いて、前記溝部214を形成する際には、前記溝部214の縁部が盛り上がるように形成されることになる。
前記溝部214の縁部とは、第1の枠部210bの主面に設けられた箇所のことである。
【0040】
また、例えば、図4に示すように、基板部210aと第1の枠部210bと第2の枠部210cにより第凹部空間K1が形成されている素子搭載部材210と余剰部220とが交互に複数有することで構成されている圧電デバイス用シート基板200を用いる。
【0041】
図4に示すように、余剰部220は、後述する素子搭載部材210と隣り合うようにして複数設けられている。
余剰部220の幅の長さは、例えば、50〜150μmであり、ダイシング法を用いた際のダイサー(図示せず)の厚みと同じ長さとなっている。つまり、余剰部220は、素子搭載部材210が個片化する際に削除されることになる。
【0042】
前記圧電デバイス用シート基板200の切断は、ダイサーを用いたダイシングやレーザによる切断によって行なわれ、前記圧電デバイス用シート基板200が個々の素子搭載部材210毎に分割される。これにより、複数個の素子搭載部材210が同時に得られる。
ダイサーとしては、例えば、ダイヤモンド砥粒等を電鋳により固定した円盤状の電鋳ブレードやダイヤモンド砥粒等を、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂を結合材として使用したレジンブレードがある。
レーザとしては、YAGレーザの3倍波で、波長が例えば、300〜400nmのものを用いる。
【0043】
(圧電振動素子搭載工程)
図6に示すように、圧電振動素子搭載工程は、前記素子搭載部材210の凹部空間K1内に設けられた圧電振動素子搭載パッド211に圧電振動素子100を搭載する工程である。
素子搭載部材210の凹部空間K1内の基板部110aには2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられており、前記圧電振動素子搭載パッド211上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッド211に塗布された導電性接着剤DSに音叉型屈曲水晶振動素子100の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極124(図3参照)を付着させる形態で圧電振動素子100を搭載する。
大気雰囲気中または窒素雰囲気中の硬化アニール炉の内部空間に前記素子搭載部材210を収容した状態で、前記導電性接着剤DSを加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッド211と前記音叉型屈曲水晶振動素子100とを導通固着する。
加熱硬化とは、導電性接着剤DSを加熱することにより、硬化させることをいう。
【0044】
炉本体は、内部空間を有し、前記素子搭載部材210を格納する役割を果たす。
加熱部は、前記内部空間を所定の温度に加熱する役割を果たす。加熱部は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられている。
供給部は、前記内部空間にガスを供給する役割を果たす。ガスは、例えば窒素等が用いられている。
制御部は、炉本体の内部空間の温度や酸素濃度、加熱部の昇温速度、供給部のガス供給量の制御を行うものである。
【0045】
(蓋部材接合工程)
図7に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子100を気密封止するように素子搭載部材210に蓋部材230を接合する工程である。
蓋部材230は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、音叉型屈曲水晶振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材230は、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中で、前記素子搭載部材210の第2の枠部210c上に載置され、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212と蓋部材230に設けられた封止部材231が溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極(図示せず)を蓋部材230に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材230の外側縁部に沿って動かすことで、第2の枠部210cの主面に設けられた封止用導体パターン212に接合される。
【0046】
本発明の圧電デバイス300の製造方法によれば、前記凹部空間K1内に露出する前記第1の枠部210aの主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている素子搭載部材210の前記第1の枠部210aの主面の前記圧電振動素子搭載パッド211間にレーザを照射することで、溝部214を形成するので、圧電振動素子100を搭載する際に導電性接着剤DSが流れ出ても、溝部214の縁部が盛り上がるようにして形成されているため、その盛り上がった縁部にて導電性接着剤DSがせき止められる。よって、それぞれの圧電振動素子搭載パッド211に塗布した導電性接着剤DS同士が接触することがなく、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211間の短絡を低減するので、圧電デバイス300の生産性を向上することができる。
【0047】
また、本発明の圧電デバイス300の製造方法によれば、レーザまたはサンドブラストで溝部214を形成するため、溝部214の短辺方向の長さL1を調整することができるため、圧電振動素子搭載パッド211の面積を従来よりも大きい面積を確保することができ、積層ずれで圧電振動素子搭載パッド211が第2の枠部210bの直下に入り込んでも、圧電振動素子搭載パッド211の面積を維持することができる。よって、導電性接着剤DSと圧電振動素子搭載パッド211との接合強度を維持することができるので、圧電振動素子100が圧電振動素子搭載パッド211から剥がれてしまうことを低減することができる。
【0048】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0049】
また、前記した本実施形態では、圧電振動素子を音叉型屈曲水晶振動素子を用いた場合を説明したが、ATカットの水晶振動素子として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0050】
また、前記した本実施形態では、圧電デバイス300を構成する素子搭載部材210の長辺方向の長さが2.0mmであり、短辺方向の長さが0.8mmの場合を説明したが、長辺方向の長さが2.0mm以下であり、短辺方向の長さが1.6mm以下の場合でも適応可能である。
【0051】
また、前記本実施形態では、素子搭載部材を複数設けたシート基板を用いて説明したが、個片の素子搭載部材を搬送治具等に収容した後、レーザを用いて溝を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0052】
210・・・素子搭載部材
210a・・・基板部
210b・・・第1の枠部
210b・・・第2の枠部
211・・・圧電振動素子搭載パッド
212・・・封止用導体パターン
214・・・溝部
100・・・圧電振動素子(音叉型屈曲水晶振動素子)
110・・・水晶素板
230・・・蓋部材
231・・・封止部材
200・・・圧電デバイス用シート基板
300・・・圧電デバイス(圧電振動子)
G・・・外部接続用電極端子
K1・・・凹部空間
DS・・・導電性接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、
前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、
前記2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載されている圧電振動素子と、
前記凹部空間を気密封止する蓋体と、
前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、
前記溝部の深さ方向の長さW1と前記第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成され、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部を形成する溝部形成工程と、
前記素子搭載部材の凹部空間に設けられた圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、
前記圧電振動素子を気密封止するように前記素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項1】
基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、
前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に設けられている2個一対の圧電振動素子搭載パッドと、
前記2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載されている圧電振動素子と、
前記凹部空間を気密封止する蓋体と、
前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間に設けられている溝部と、を備え、
前記溝部の深さ方向の長さW1と前記第1の枠部の厚みW2との関係が、0.4≦W1/W2≦0.9であることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記溝部の短辺方向の長さL1と前記2個一対の圧電振動素子搭載パッド間の長さL3との関係が、0.3≦L1/L3≦0.8であることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
基板部と、この基板部の一方の主面に第1の枠部と第2の枠部とが設けられて、凹部空間が形成され、前記凹部空間内に露出する前記第1の枠部の主面に2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている素子搭載部材の前記第1の枠部の主面の前記圧電振動素子搭載パッド間にレーザ加工またはサンドブラスト加工で溝部を形成する溝部形成工程と、
前記素子搭載部材の凹部空間に設けられた圧電振動素子搭載パッドに圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、
前記圧電振動素子を気密封止するように前記素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−160872(P2012−160872A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18571(P2011−18571)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
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