圧電振動子の製造方法及び圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計
【課題】圧電振動片に対して高速かつ低温で絶縁膜を形成することが可能であり、また圧電振動片の側面に絶縁膜を形成することが可能な、圧電振動子の製造方法を提供する。
【解決手段】圧電振動片2を実装領域Pにおいてマウントする工程の前に、圧電振動片2における実装領域Pおよび振動領域Rの表面に、クロムからなる下地金属層18a及び金からなる仕上金属層18bを積層状態で形成する工程(A)と、仕上金属層18bを振動領域Rで剥離する工程(E)と、仕上金属層18bを剥離した後の下地金属層18aの上層に絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した溶液を乾燥させて振動領域Rに絶縁膜34を形成する工程(F)と、を有することを特徴とする。
【解決手段】圧電振動片2を実装領域Pにおいてマウントする工程の前に、圧電振動片2における実装領域Pおよび振動領域Rの表面に、クロムからなる下地金属層18a及び金からなる仕上金属層18bを積層状態で形成する工程(A)と、仕上金属層18bを振動領域Rで剥離する工程(E)と、仕上金属層18bを剥離した後の下地金属層18aの上層に絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した溶液を乾燥させて振動領域Rに絶縁膜34を形成する工程(F)と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の製造方法及び圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
【0003】
具体的に、圧電振動子は、音叉型の圧電振動片と、プラグと、プラグとともに圧電振動片を気密封止するケースとを備えている。プラグは、圧電振動片が実装される一対のインナーリードと、インナーリードを保持するプラグ本体とを備えている。また、圧電振動片は、圧電材料からなる圧電板と、圧電板上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に形成され一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極と、を備えている。
なお、マウント電極は、クロム等からなる下地金属層と金等からなる仕上金属層とが積層されることで形成された積層体である。また、一対の励振電極は、クロム等からなる下地金属層で形成されている。その下地金属層はシリコン酸化膜等の絶縁膜で覆われ、励振電極間の短絡が防止されている。
【0004】
上述した圧電振動片を製造するにあたっては、まず水晶からなるウエハを音叉形状にエッチングした後、その表面に励振電極やマウント電極となる下地金属層(クロム)と、仕上金属層(金)とを連続して成膜する。さらに、振動領域の仕上金属層を除去し、下地金属層の上層に絶縁膜を形成した後、インナーリードとマウント電極とを金や高融点ハンダ等の接合材料を介して接合するようになっている。
【0005】
一般に、絶縁膜を低温で形成するため、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1では、スパッタリング法を用いてSiO2からなる絶縁膜を形成する際に、プラズマ生成用ガスとして炭酸ガス又はアルゴンガスと炭酸ガスとの混合ガスを用いてSiターゲットをスパッタする技術が開示されている。この方法によれば、基板温度が200℃程度になり、高温プロセスの必要がないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−269706号公報
【特許文献2】特開平9−306906号公報
【特許文献3】特開平9−102491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各特許文献に記載された技術では、絶縁膜を厚膜化するため成膜速度を上げると、基板温度が上昇する。これらの技術を用いて圧電振動片に絶縁膜を形成すると、圧電振動片の温度が上昇するという問題がある。これにより、マウント電極における下地金属層のクロム(又はクロム酸化物)が仕上金属層の表面に析出し、マウント電極と上述した接合材料(金や高融点ハンダ等)との濡れ性が低下する。この状態で、マウント電極とインナーリードとを接合材料により接合すると、両者を良好な状態で接合できないことがある。
【0008】
また図17に示すように、絶縁膜34は、圧電振動片2の振動腕部8の主面に加えて側面にも形成する必要がある。ところが、スパッタリング法で絶縁膜34を形成する場合には、ターゲットTGの表面と振動腕部8の主面とを対向配置した状態でスパッタリングを行うので、振動腕部8の側面に絶縁膜3を形成しにくく形成された膜にボイド欠陥が発生し易いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、圧電振動片に対して厚膜かつ低温でボイド欠陥の無い絶縁膜を形成することが可能であり、また圧電振動片の側面に絶縁膜を形成することが可能な、圧電振動子の製造方法並びにこの製造方法により製造された圧電振動子、前記圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動子の製造方法は、圧電振動片における実装領域および振動領域の表面に、下地金属層及び仕上金属層を積層状態で形成する工程と、前記振動領域に、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した前記溶液を転化させて前記振動領域に絶縁膜を形成する工程と、接合材料を介して前記圧電振動片を前記実装領域においてパッケージに実装する工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
このような圧電振動子の製造方法によれば、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した溶液を転化させて絶縁膜を形成する工程とが分離していることで、厚膜化(10000nm以下)のため塗布量を増加させても圧電振動片の温度が上昇しない。したがって、圧電振動片に対して厚膜かつ低温で絶縁膜を形成することができる。またスプレー塗布では広角度範囲に溶液が噴射され、しかも圧電振動片に対してあらゆる角度から溶液を噴射することができるので、圧電振動片の側面にもボイド欠陥の無い絶縁膜を形成することができる。
【0012】
これにより、パッケージが実装される仕上金属層を、下地金属層の析出を抑制した良好な状態に保つことができる。したがって、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0013】
また、前記溶液をスプレー塗布する工程の前に、前記振動領域の前記仕上金属層を除去する工程を有することを特徴としている。
【0014】
このような圧電振動子の製造方法によれば、仕上金属層を除去した後に下地金属層上に絶縁膜を形成することで、絶縁膜の密着性を向上させることができ、振動領域における電極間の短絡をより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であり、前記溶液は、前記絶縁膜材料としてシリカ材料、例えばポリシラザンやシロキサンを含み、溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルを含み、触媒としてアミン系触媒を含むことを特徴としている。
【0016】
このような圧電振動子の製造方法によれば、例えば150℃×60分の焼成によりシリカ材料が酸化シリコンに転化するほか、常温での1日間放置によってもシリカ材料が酸化シリコンに転化する。これにより、絶縁膜であるシリコン酸化膜を、常温〜150℃の低温で形成することができる。
【0017】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子の製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているので、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができ、パッケージと圧電振動片との導通を確保できる。その結果、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る圧電振動子の製造方法及び圧電振動子によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0024】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る一実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動片を上面から見た平面図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を下面から見た平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動片の斜視図である。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際のメイン工程のフローチャートである。
【図9】図8に示すメイン工程のうち電極層形成工程から切離工程に至る具体的な工程のフローチャートである。
【図10】図8に示すフローチャートのうち仕上工程の具体的な工程のフローチャートである。
【図11】圧電振動子の製造方法における主要な工程の要部を時系列で示し、(A)は下地・仕上層形成工程、(B)はパターニング1工程、(C)はエッチング工程1、(D)はパターニング2工程、(F)は絶縁膜形成工程、(G)は第1エッチング工程、(H)は第2エッチング工程、の図2のC−C線に相当する断面図である。
【図12】本発明に係る一実施形態の絶縁膜形成工程を示し、(A)は材料塗布状態の説明図、(B)は被膜形成状態の説明図である。
【図13】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図16】本発明に係る表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。
【図17】従来のスパッタリングによる絶縁膜形成時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(圧電振動子)
図1は、本実施形態に係る圧電振動子の斜視図である。図1に示すように、圧電振動子1は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子であって、音叉型の圧電振動片2と、圧電振動片2がマウント(機械的に接合及び電気的に接続)されたプラグ3と、プラグ3とともに圧電振動片2を気密封止するケース4と、を備えている。
【0028】
図2は圧電振動片の上面から見た平面図であり、図3は下面から見た平面図である。また、図4は圧電振動片の斜視図であり、図5は図2のA−A線に沿う断面図である。
【0029】
図2,3に示すように、圧電振動片2は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0030】
この圧電振動片2は、平行に配置されて先端側を自由端とする一対の振動腕部(振動領域)8,9と、これら一対の振動腕部8,9の基端側を一体的に固定する基部(実装領域)10と、を有する圧電板11を備えている。また、圧電振動片2は、一対の振動腕部8,9の外表面上に形成されて一対の振動腕部8,9を振動させる第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14と、第1の励振電極12及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15,16と、一対の振動腕部8,9の両主面上に、振動腕部8,9の基端部から先端部に向かう軸線方向に沿って一定の溝長さLで形成された溝部17と、を備えている。この溝部17は、図4に示すように、振動腕部8,9の基端部から略中間付近まで形成されている。なお、一対の振動腕部8,9の腕幅は同一であり、それぞれWとする。また、基部10において一対の振動腕部8,9の基端部と連結されている部分を股部10aとする。
【0031】
図2,3,5に示すように、第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14は、一対の振動腕部8,9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8,9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8の溝部17上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9の溝部17上とに主に形成されている。
【0032】
また、図2,3に示すように、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において連続的に形成されており、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極15,16に電気的に接続されている。このマウント電極15,16は、圧電板11の基端側に形成されている。すなわち、励振電極14、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20は、所定の電圧が印加されたときに一対の振動腕部8,9を振動させる電極層18として機能している。
【0033】
図6は図1のB−B線に沿う断面図であり、図7は図2のC−C線に沿う断面図である。図6,7に示すように、電極層18は、基部10の両主面上に形成されたクロム(Cr)からなる下地金属層18aと、金(Au)からなる仕上金属層18bとが順次積層されて構成されている。
【0034】
下地金属層18aは、仕上金属層18bと圧電振動片2との密着性を向上させるためのものであり、マウント電極15,16から引き出し電極19,20、励振電極14に亘って連続的に形成されている。
【0035】
また、仕上金属層18bは、図4,5,7に示すように、少なくとも振動腕部8,9の基端部から先端部に至る領域で、仕上金属層18bの一部或いは全部が除去されている。
より詳しくは、振動腕部8,9の基端部より先端部側では、基端部から溝長さL以上離間した位置まで(図4に示す領域RA)、仕上金属層18bの全部が除去されている。さらに、振動腕部8,9の基端部より基部10側には、基端部から基部10に向かって振動腕部8,9の腕幅Wの2倍離間した位置に至るまで(図4に示す領域RB)、仕上金属層18bの全部が除去されている。
【0036】
すなわち、電極層18は、振動腕部8,9の溝部17が形成されている領域を含む領域RA及び領域RBで、溝部17内を含めて全面的に下地金属層18aだけが形成されている。そして、領域RA及び領域RBには、下地金属層18aを覆うように酸化珪素(SiO2)等からなる絶縁膜34(図7参照)が被覆されている。これにより、振動腕部8,9の励振電極12,13間に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。そして、本実施形態のように励振電極12,13の形成領域である領域RA,RBにおいて、仕上金属層18bを除去した状態で下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させて励振電極12,13の短絡をより防ぐことができる。なお、以下の説明では、領域RA及び領域RBを合わせた領域を単層領域Rとして説明する。
【0037】
一方、圧電板11における単層領域Rよりも基端側に形成された引き出し電極19,20及びマウント電極15,16は、上述したように下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された状態となっている。そして、これら下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層されている領域を積層領域Pとして説明する。
【0038】
また、一対の振動腕部8,9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8,9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0039】
重り金属膜21のうち、振動腕部8,9の先端側に形成された粗調膜21aは、電極層18と同様に下地金属層18a及び仕上金属層18bが順次積層され、仕上金属層18b上にさらに金(Au)又は銀(Ag)等からなる上層金属層(不図示)が積層されて構成されている。これに対して、粗調膜21aよりも基端側に形成された微調膜21bは、電極層18と同様に下地金属層18a、仕上金属層18bが順次積層されて構成されている。すなわち、重り金属膜21を構成する下地金属層18a及び仕上金属層18bは、上述した電極層18と同時に積層される。
【0040】
ケース4は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片2を内部に収納した状態でプラグ3の後述するステム30の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース4の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース4内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0041】
プラグ3は、ケース4を密閉させるステム30と、このステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
【0042】
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスである。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の後述するめっき層35が施されている。
【0043】
2本のリード端子31は、ケース4内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース4外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。リード端子31は、その直径が例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、図6に示すように、リード端子31の外表面及びステム30の外周には、めっき層35が被覆されている。被膜させるめっきの材質としては、下地膜35aに銅(Cu)めっき等が用いられ、仕上膜35bに融点が例えば300度程度の高融点ハンダめっき(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)が用いられる。
【0044】
また、ステム30の外周に被膜されためっき層35を介在させながらケース4の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース4の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0045】
そして、インナーリード31aは、仕上膜(高融点ハンダめっき)35bを溶解させて形成された接合部Eを介して、マウント電極15,16の仕上金属層18b上にマウントされている。すなわち、接合部Eを介してインナーリード31aとマウント電極15,16とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0046】
なお、上述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。
【0047】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、接合部E、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20を介して、第1の励振電極12及び第2の励振電極13からなる励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8,9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8,9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0048】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図8は、圧電振動子の製造方法を示すメインルーチンのフロー図である。
【0049】
(ステップS10)
ステップS10では、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、このウエハS(図11(A)参照)をラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハSを形成するウエハ準備工程を行う。
【0050】
(ステップS20)
ステップS20では、研磨後のウエハSにおいて複数の圧電振動片2の外形形状を形成する外形形成工程を行う。具体的には、先ず、圧電振動片2の外形形状にパターニングされたウエハ用マスク(不図示)をマスクとしてエッチング加工を行なう。これにより、ウエハ用マスクでマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片2の外形形状を形作ることができる。後述する電極層形成工程を行う前に一対の振動腕部8,9に溝部17を形成する溝部形成工程を行う。ここでは、圧電振動片2は、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態であるため、これにより、ウエハS上に上述した圧電振動片2が複数連結された状態となる。
【0051】
(ステップS30)
ステップS30では、複数の圧電板11の外表面上に下地金属層18a及び仕上金属層18bを積層して、電極層18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15、16)及び重り金属膜21を形成する電極層形成工程を行う。
【0052】
(ステップS40)
ステップS40では、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を形成した後、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の重り金属膜21のうち、粗調膜21aの形成領域における仕上金属層18b上に上層金属層を被膜させる被膜形成工程を行う。
【0053】
(ステップS50)
ステップS50では、被膜形成工程(ステップS40)で仕上金属層18bの表面に析出したクロムおよび仕上金属層18bの表面に付着した付着物を除去するための除去処理工程を行う。
【0054】
(ステップS60)
ステップS60では、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して小片化した後に、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う切離工程を行う。
【0055】
(ステップS70)
ステップS70では、プラグ3を作製する気密端子作製工程を行った後、プラグ3のリード端子31の外表面及びステム30の外周に、同一材料のめっき層を湿式めっき法で被膜させるめっき工程を行う。
【0056】
このように、ステップS70のプラグ処理工程では、下地膜35a及び仕上膜35bからなるめっき層35をリード端子31に被膜することで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜されためっき層35が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース4との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0057】
(ステップS80)
ステップS80では、圧電振動片2の接合から圧電振動子1の外観検査までを行って、寸法や品質等を最終的にチェックする仕上工程を行う。
【0058】
次に、図9乃至図11に基づいて上述したメイン工程の詳細な工程を説明する。図9は図8に示すメイン工程のうち電極層形成工程から切離工程に至る具体的な工程のフローチャート、図10は図8に示すフローチャートのうち仕上工程の具体的な工程のフローチャート、図11は圧電振動子の製造方法における主要な工程の要部を時系列で示す図2のC−C線に相当する断面図である。
【0059】
<電極層形成工程(ステップS30)の具体例>
(ステップS31)
始めに、図11(A)に示すように、圧電板11上に下地金属層18a及び仕上金属層18bを、蒸着やスパッタリング等により順次成膜する。
【0060】
(ステップS32)
次に、図11(B)に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜41を成膜した後、フォトリソ技術でパターニングする。この際、電極層18を残しておきたい部分、すなわちマウント電極15,16、励振電極12,13、引き出し電極19,20及び重り金属膜21の形成領域が、フォトレジスト膜41によって被膜されるようにパターニングする。
【0061】
(ステップS33)
そして、残ったフォトレジスト膜41をマスクとして、図11(C)に示すように、電極層18をエッチング加工するエッチング工程を行う。これにより、下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された電極層18が形成される。その後フォトレジスト膜41を除去する。
【0062】
(ステップS34)
続いて、単層領域R(図4参照)に存在する電極層18の仕上金属層18bの除去を行う。具体的には、仕上金属層18bを除去するために、図11(D)に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜42を成膜した後、フォトリソ技術を用いて、フォトレジスト膜42をパターニングする。この際、少なくとも仕上金属層18bを残しておきたい部分、すなわち積層領域P及び重り金属膜21の形成領域を覆うようにパターニングする。つまり、単層領域Rに形成されたフォトレジスト膜42を除去する。
【0063】
(ステップS35)
そして、そのフォトレジスト膜42をマスクとしてエッチングする。これにより、単層領域Rに存在する電極層18において、仕上金属層18bを除去することができる。その後、図11(E)に示すように、フォトレジスト膜42を除去する。
以上の工程を実施することで、電極層形成工程が終了する。
【0064】
<被膜形成工程(ステップS40)の具体例>
(ステップS41)
ステップS41では、その後、図11(F)に示すように、仕上金属層18bが除去された単層領域Rにおいて、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を形成する。すると、単層領域Rの下地金属層18aを覆うように絶縁膜34が形成される。このように、仕上金属層18bを除去した後に下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させることができ、単層領域Rにおける励振電極12,13間の短絡を確実に防ぐことができる。
【0065】
図12は、本発明に係る一実施形態の絶縁膜形成工程を示し、(A)は材料塗布状態の説明図、(B)は絶縁膜形成状態の説明図である。図12(A)に示すように、このステップS41におけるSiO2からなる絶縁膜34は、下地金属層18aの上層にスプレー塗布装置60を用いてSiO2の形成材料を含む溶液71を塗布した後、熱分解(ベーキング)することで形成する。溶液のスプレー塗布は、積層領域Pをメタルマスク等によりマスクした状態で、単層領域Rに対して行う。
【0066】
溶液71に含まれるSiO2の形成材料(シリカ材料)として、パーハイドロポリシラザン等の無機系の材料や、シロキサン等の有機系の材料が挙げられる。また溶液71には、SiO2の形成材料のほか、有機溶媒および微量の触媒が含まれている。具体的には、有機溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルが含まれ、触媒としてアミン系の触媒が含まれている。
【0067】
シリカ材料であるパーハイドロポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)との化合物であるシラザンが重合したものであり、結合手が全て水素(H)である。塗布されたパーハイドロポリシラザンは、自己架橋(脱水素)により速やかに硬化するほか、以下の反応式により大気中の水分と反応してSiO2に転化する。
(−SiH2NH−) + 2H2O → SiO2 + NH3 + 2H2
【0068】
例えば、150℃×60分の焼成によりほとんどのパーハイドロポリシラザンがSiO2に転化するほか、常温での1日間放置によってもほとんどのパーハイドロポリシラザンがSiO2に転化する。これにより、パッシベーション膜としての絶縁膜34を、常温〜150℃の低温で形成することができる。また、絶縁膜34を形成する際、加熱を伴う塗布処理を同時に行わないため、クロムが表面に拡散析出して半田濡れ性を阻害する虞を抑制することができる。
【0069】
溶液の濃度は、0.5〜20%の範囲で任意に調整が可能である。これにより、塗布後に溶媒が揮発すると、厚さ0.01〜2.0μm程度のSiO2からなる絶縁膜34を形成することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、スプレー塗布装置60は、例えば、伸縮可能なアーム61と、アーム61の先端に回動可能に設けられたノズル62と、を備え、アーム61の伸縮とノズル62の回動とによって一対の振動腕部8,9の縦横の壁面に満遍なく溶液を塗布することができ、SiO2分子による絶縁膜34の膜厚にムラができることを抑制することができる。この際、アーム61とノズル62とに変えて圧電振動片2を保持する基台(図示せず)等を移動・回動・回転させることによってムラの発生を抑制しても良い。
【0071】
このように、成膜と加熱とを同時に行うスパッタ等を行うことなく、スプレー塗装と乾燥(熱分解)とを別々の工程で行って絶縁膜34を形成することにより、厚膜化のため成膜速度を上げても圧電振動片の温度が上昇しないので、厚膜の絶縁膜34を形成することができる。また、真空プロセスを実施するための複雑で高価な装置・機構等を必要とせず、安価な装置にて絶縁膜34の形成を可能とすることができる。しかも、低温での被膜形成により温度(加熱)による悪影響を気にせずに厚膜形成を容易に行うことができる。
【0072】
この際、スプレー塗装後の溶液71の乾燥には、使用する溶液71によってことなるものの、溶媒にキシレンやシブチルエーテルを用いることにより、常温から100℃以下の範囲での乾燥が可能となる。また、溶液71に含まれる不純物は熱分解時の温度が高いほど純度が高くなるため、適用箇所によっては温度を低く設定することが可能となる。さらに、スプレー塗布装置60を伸縮可能なアーム61や回動可能なノズル62を用いることにより、ピンポイントの塗布も可能となる。
【0073】
(ステップS42)
ステップS42では、上述した電極層形成工程(ステップS30)が終了した後、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の重り金属膜21のうち、粗調膜21aの形成領域における仕上金属層18b上に例えば、銀や金等からなる上層金属層を、蒸着やスパッタリング等を用いて被膜させる。そして、水晶ウエハに形成された全ての振動腕部8,9に対して、共振周波数を粗く調整する粗調工程を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザー光を照射して、一対の振動腕部8,9の先端にかかる重量を軽減させることで、周波数を粗く調整する工程である。
【0074】
<除去処理工程(ステップS50)の具体例>
ところで、図11(F),(G)に示すように、圧電振動片2の製造工程においては、電極層18を形成した後に、上述した重り金属膜21の上層金属層を形成したり、フォトレジスト膜41,42を形成したりするが、この際に圧電振動片2が加熱される。圧電振動片2が加熱されることで、マウント電極15,16(積層領域P)の下地金属層18aのクロム(またはクロム酸化物)が仕上金属層18bの表面に析出するという問題がある。なお、以下の説明では、仕上金属層18b上に析出したクロムを析出クロム50とする。
【0075】
また、絶縁膜34を形成する際に、スプレー塗布された溶液の飛沫が、マスク等で保護している領域(積層領域P)にまで回り込んで、積層領域P上に付着するという問題がある。この飛沫は、絶縁膜34の粒子となって積層領域Pに付着したまま残存する。この場合、圧電板11上に付着する絶縁膜34の粒子は何ら問題にならないが、マウント電極15,16の仕上金属層18bの表面に絶縁膜34の粒子が付着すると、後述するマウント工程(S81)において仕上膜35b(高融点ハンダ)の濡れ性が低下するという問題がある。なお、以下の説明では、積層領域P上に付着した絶縁膜34の粒子を付着粒子51とする。なお、図11(F),(G)では、説明を分かり易くするために析出クロム50と付着粒子51とを層状に図示している。
【0076】
そこで、本実施形態では、上述した析出クロム50や付着粒子51を除去するための処理工程(S50)を行う。
【0077】
(ステップS51)
ステップS51では、積層領域Pにおける付着粒子51をウェットエッチングにより除去する第1エッチング工程を行う。この第1エッチング工程で使用する第1エッチャント(第1処理液)としては、水酸化カリウム(KOH)水溶液や弗化水素(HF)水溶液等を用いることが可能であり、本実施形態ではKOH水溶液が好適に用いられている。そして、第1エッチャントが収容された第1エッチング槽内にウエハS全体を浸漬させる。
【0078】
なお、第1エッチング工程における具体的な条件(KOH水溶液の濃度、温度、エッチング時間)は、例えば以下の通りである。
濃度:約10重量%
温度:約60℃
エッチング時間:約3分
【0079】
この条件でエッチングを行うことで、図11(G)に示すように、積層領域Pに付着した付着粒子51を除去することができる。
【0080】
(ステップS52)
ステップS52では、その後、第1エッチング槽からウエハSを取り出し、純水でウエハSを洗浄する純水洗浄工程を行う。
【0081】
(ステップS53)
ステップS53では、主としてマウント電極15,16の仕上金属層18b上に析出した析出クロム50を、ウェットエッチングにより除去する第2エッチング工程を行う。この第2エッチング工程で使用する第2エッチャント(第2処理液)としては、フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])及びKOHの水溶液が好適に用いられている。そして、第2エッチャントが収容された第2エッチング槽内にウエハS全体を浸漬させる。
【0082】
なお、第2エッチング工程における具体的な条件K3[Fe(CN)6]及びKOHの濃度、温度、エッチング時間)は、例えば以下の通りである。
K3[Fe(CN)6]の濃度:1重量%以上10重量%以下(好ましくは2%程度)
KOHの濃度:1重量%以上10重量%以下(好ましくは2重量%程度)
温度:常温(例えば、25〜30℃程度)
エッチング時間:約30秒
【0083】
この条件でエッチングを行うことで、図11(H)に示すように、積層領域P(特に、マウント電極15,16)の仕上金属層18b上に析出した析出クロム50を除去することができる。なお、K3[Fe(CN)6]またはKOHの濃度が10重量%より高いと、所望の電極層18として形成されたクロム(下地金属層18a)まで除去してしまい、圧電振動片2の特性が変動する虞があるため好ましくない。一方、濃度が1重量%よりも低いと、マウント電極15,16の表面(仕上金属層18b)に析出した析出クロム50を効果的に除去することができない虞があるため好ましくない。
【0084】
これに対して、本実施形態の構成によれば、K3[Fe(CN)6]及びKOHの濃度を、それぞれ1重量%以上10重量%以下の範囲に設定することで、圧電振動片2の特性に影響を与えずに、マウント電極15,16の表面に析出した析出クロム50を効果的に除去することができる。
【0085】
なお、上述した電極層形成工程において、単層領域Rの仕上金属層18bを除去する際、例えば、振動腕部8,9の側面に付着した仕上金属層18bはエッチングされずに僅かながら残存する場合がある。仕上金属層18bが残存した箇所に絶縁膜34を形成しようとすると、絶縁膜34との密着性を確保することができず、圧電振動片2の完成後に剥離等が生じる虞がある。しかしながら、本実施形態では、第2エッチング工程において、仕上金属層18bが残存している箇所が存在している場合に、第2エッチャントが絶縁膜34と仕上金属層18bとの間に入り込んだりして、振動腕部8,9の側面等、仕上金属層18bが残存している箇所に形成された絶縁膜34を、製品となる前に予め除去しておくことができる。
【0086】
<切離工程(ステップS60)の具体例>
(ステップS61)
ステップS61では、ウエハSと圧電振動片2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、ウエハSから、電極層18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15,16)及び重り金属膜21が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。
【0087】
(ステップS62)
ステップS62では、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う周波数調整(粗調)工程を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては仕上工程(ステップS80)にて行う。
【0088】
<仕上工程(ステップS80)の具体例)
(ステップS81)
ステップS81では、圧電振動片2のマウント電極15,16をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う。具体的には、インナーリード31aを300度を超える温度で加熱しながら、インナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、インナーリード31aの仕上膜35bである高融点ハンダめっきが溶解し、仕上金属層18b上に速やかに濡れ広がる。これにより、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。すなわち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
【0089】
なお、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用して接続を行っても構わない。
【0090】
(ステップS82)
ステップS82では、封止工程を行う前に、上述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う。
【0091】
(ステップS83)
ステップS83では、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う。具体的には、圧電振動子1全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザーにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。
【0092】
なお、上述した微調及び先に行った粗調の際に、レーザーの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザーではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0093】
(ステップS84)
ステップS84では、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース4をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止するケース圧入を行う。具体的には、真空中で所定の荷重を加えながらケース4をプラグ3のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース4内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
【0094】
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース4及びプラグ3を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0095】
(ステップS85)
ステップS85では、ケース4の固定が終了した後、スクリーニングを行う。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース4を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
【0096】
(ステップS86)
ステップS86では、スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0097】
以上に述べたように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布して圧電振動片に絶縁膜を形成するので、厚膜化のため塗布量を増加させても圧電振動片の温度が上昇しない。したがって、圧電振動片に対して厚膜かつ低温で絶縁膜を形成することができる。また、スプレー塗布では広角度範囲に溶液が噴射され、しかも圧電振動片に対してあらゆる角度から溶液を噴射することができるので、圧電振動片の側面にも絶縁膜を形成することができる。
【0098】
これにより、パッケージが実装される仕上金属層を、下地金属層の析出を抑制した良好な状態に保つことができる。したがって、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0099】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図14を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0100】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
【0101】
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0102】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらに、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0103】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図15を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0104】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図15に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0105】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0106】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0107】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
【0108】
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0109】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
【0110】
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0111】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0112】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
【0113】
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0114】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0115】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
【0116】
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0117】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
【0118】
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0119】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
【0120】
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0121】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0122】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0123】
(表面実装型圧電振動子)
なお、本発明は、上述したシリンダータイプの圧電振動子1に限られず、表面実装型の圧電振動子に本発明を適用することもできる。図16は、表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0124】
図16に示すように、本実施形態の圧電振動子201は、ベース基板202とリッド基板203とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に上述した圧電振動片2が収納されている。
【0125】
リッド基板203は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、板状に形成されている。そして、ベース基板202が接合される接合面側には、圧電振動片2が収まる矩形状の凹部203aが形成されている。この凹部203aは、両基板202,203が重ね合わされたときに、圧電振動片2を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板203は、この凹部203aをベース基板202側に対向させた状態でベース基板202に対して陽極接合されている。
【0126】
一方、ベース基板202は、リッド基板203と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、リッド基板203に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
【0127】
このベース基板202には、ベース基板202を貫通する一対のスルーホール230,231が形成されている。これらスルーホール230,231は、マウントされた圧電振動片2の基部10側に対応した位置に一方のスルーホール230が形成され、振動腕部8,9の先端側に対応した位置に他方のスルーホール231が形成されている。
【0128】
そして、これら一対のスルーホール230,231には、これらスルーホール230,231を埋めるように形成された一対の貫通電極232,233が形成されている。これら貫通電極232,233は、焼成によってスルーホール230,231に対して一体的に固定された筒体206及び芯材部207によって形成されたものであり、スルーホール230,231を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極238,239と引き回し電極236,237とを導通させる役割を担っている。
【0129】
筒体206は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものであり、その中心には芯材部207が筒体206を貫通するように配されている。
【0130】
芯材部207は、導電性を有する金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、この芯材部207を通して貫通電極232,233の電気導通性が確保されている。
【0131】
ベース基板202の上面側(リッド基板203が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜235と、一対の引き回し電極236,237とがパターニングされている。このうち接合膜235は、リッド基板203に形成された凹部203aの周囲を囲むようにベース基板202の周縁に沿って形成されている。
【0132】
また、一対の引き回し電極236,237は、一対の貫通電極232,233のうち、一方の貫通電極232と圧電振動片2の一方のマウント電極15とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極233と圧電振動片2の他方のマウント電極16とを電気的に接続するようにパターニングされている。また、ベース基板202の下面には、一対の貫通電極232,233に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極238,239が形成されている。
【0133】
ここで、一対の引き回し電極236,237上には、それぞれ金からなるバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片2がマウントされている。より具体的には、ベース基板202の上面にパターニングされた後述する引き回し電極236,237上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極15,16がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片2は、ベース基板202の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極15,16と引き回し電極236,237とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。この場合においても、圧電振動片2が各エッチング工程を経て形成されているため、仕上金属層18bは析出クロム50や付着粒子51のない良好な層に維持される。そのため、マウント工程において、仕上金属層18b上におけるバンプBの濡れ性を向上させることができる。すなわち、仕上金属層18b上にバンプBが良好に濡れ広がるので、引き回し電極236,237と電極層18との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0134】
したがって、引き回し電極236,237と圧電振動片2との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子201を提供することができる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0136】
例えば、上述した実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプや表面実装型の圧電振動子1,201を例に挙げて説明したが、これら圧電振動子1,201に限定されるものではない。例えば、セラミックパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部で固めて表面実装型振動子としても構わない。
【0137】
また、音叉型の圧電振動片2に限られず、AT型の圧電振動片に本発明を適用することも可能である。
【0138】
また、上述した実施形態では、絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiO2)を形成したが、これ以外の絶縁膜を形成してもよい。また、スプレー塗布する溶液には、SiO2の形成材料(シリカ材料)としてパーハイドロポリシラザンやシロキサン等が含まれ、有機溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルが含まれ、触媒としてアミン系の触媒が含まれている場合を例にして説明したが、これら以外の物質が含まれていてもよい。
【0139】
また、上述した実施形態では第1エッチング工程と第2エッチング工程とを連続して行う場合について説明したが、インナーリード31aをマウントする前であれば、これに限られない。例えば、絶縁膜34の形成直後に第1エッチング工程を行い、重り金属膜21の形成直後に第2エッチング工程を行うような構成にしてもよい。また、第1エッチャントに弗化水素水溶液を用いても構わない。さらに、上述した各エッチング工程では、ウエハS全体をエッチング槽に浸漬させる場合について説明したが、エッチングする領域のみをエッチング槽に浸漬させてもよい。
【0140】
また、上述した実施形態では、インナーリード31aの外周面に形成された高融点ハンダめっきを溶解させ、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接合する場合について説明したが、インナーリード31aとマウント電極15,16との間に両者を接合するための高融点ハンダや金等からなるバンプを介在させて両者を接合してもよい。この場合においても、バンプの濡れ性が良好になり、インナーリード31aとマウント電極15,16とを確実に接合することができる。
【符号の説明】
【0141】
P…積層領域(実装領域) R…単層領域(振動領域) 1,201…圧電振動子 2…圧電振動片 3…プラグ 8,9…振動腕部 11…圧電板 12…第1の励振電極(振動領域) 13…第2の励振電極(振動領域) 14…励振電極(振動領域) 15,16…マウント電極(実装領域) 18…電極層(積層体) 18a…下地金属層 18b…仕上金属層 31a…インナーリード 34…絶縁膜 35b…仕上膜(接合材料) B…バンプ(接合材料) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の製造方法及び圧電振動子、発振器、電子機器並びに電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
【0003】
具体的に、圧電振動子は、音叉型の圧電振動片と、プラグと、プラグとともに圧電振動片を気密封止するケースとを備えている。プラグは、圧電振動片が実装される一対のインナーリードと、インナーリードを保持するプラグ本体とを備えている。また、圧電振動片は、圧電材料からなる圧電板と、圧電板上に形成され、所定の駆動電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、圧電板の基端側に形成され一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極と、を備えている。
なお、マウント電極は、クロム等からなる下地金属層と金等からなる仕上金属層とが積層されることで形成された積層体である。また、一対の励振電極は、クロム等からなる下地金属層で形成されている。その下地金属層はシリコン酸化膜等の絶縁膜で覆われ、励振電極間の短絡が防止されている。
【0004】
上述した圧電振動片を製造するにあたっては、まず水晶からなるウエハを音叉形状にエッチングした後、その表面に励振電極やマウント電極となる下地金属層(クロム)と、仕上金属層(金)とを連続して成膜する。さらに、振動領域の仕上金属層を除去し、下地金属層の上層に絶縁膜を形成した後、インナーリードとマウント電極とを金や高融点ハンダ等の接合材料を介して接合するようになっている。
【0005】
一般に、絶縁膜を低温で形成するため、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1では、スパッタリング法を用いてSiO2からなる絶縁膜を形成する際に、プラズマ生成用ガスとして炭酸ガス又はアルゴンガスと炭酸ガスとの混合ガスを用いてSiターゲットをスパッタする技術が開示されている。この方法によれば、基板温度が200℃程度になり、高温プロセスの必要がないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−269706号公報
【特許文献2】特開平9−306906号公報
【特許文献3】特開平9−102491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各特許文献に記載された技術では、絶縁膜を厚膜化するため成膜速度を上げると、基板温度が上昇する。これらの技術を用いて圧電振動片に絶縁膜を形成すると、圧電振動片の温度が上昇するという問題がある。これにより、マウント電極における下地金属層のクロム(又はクロム酸化物)が仕上金属層の表面に析出し、マウント電極と上述した接合材料(金や高融点ハンダ等)との濡れ性が低下する。この状態で、マウント電極とインナーリードとを接合材料により接合すると、両者を良好な状態で接合できないことがある。
【0008】
また図17に示すように、絶縁膜34は、圧電振動片2の振動腕部8の主面に加えて側面にも形成する必要がある。ところが、スパッタリング法で絶縁膜34を形成する場合には、ターゲットTGの表面と振動腕部8の主面とを対向配置した状態でスパッタリングを行うので、振動腕部8の側面に絶縁膜3を形成しにくく形成された膜にボイド欠陥が発生し易いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、圧電振動片に対して厚膜かつ低温でボイド欠陥の無い絶縁膜を形成することが可能であり、また圧電振動片の側面に絶縁膜を形成することが可能な、圧電振動子の製造方法並びにこの製造方法により製造された圧電振動子、前記圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動子の製造方法は、圧電振動片における実装領域および振動領域の表面に、下地金属層及び仕上金属層を積層状態で形成する工程と、前記振動領域に、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した前記溶液を転化させて前記振動領域に絶縁膜を形成する工程と、接合材料を介して前記圧電振動片を前記実装領域においてパッケージに実装する工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
このような圧電振動子の製造方法によれば、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、塗布した溶液を転化させて絶縁膜を形成する工程とが分離していることで、厚膜化(10000nm以下)のため塗布量を増加させても圧電振動片の温度が上昇しない。したがって、圧電振動片に対して厚膜かつ低温で絶縁膜を形成することができる。またスプレー塗布では広角度範囲に溶液が噴射され、しかも圧電振動片に対してあらゆる角度から溶液を噴射することができるので、圧電振動片の側面にもボイド欠陥の無い絶縁膜を形成することができる。
【0012】
これにより、パッケージが実装される仕上金属層を、下地金属層の析出を抑制した良好な状態に保つことができる。したがって、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0013】
また、前記溶液をスプレー塗布する工程の前に、前記振動領域の前記仕上金属層を除去する工程を有することを特徴としている。
【0014】
このような圧電振動子の製造方法によれば、仕上金属層を除去した後に下地金属層上に絶縁膜を形成することで、絶縁膜の密着性を向上させることができ、振動領域における電極間の短絡をより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であり、前記溶液は、前記絶縁膜材料としてシリカ材料、例えばポリシラザンやシロキサンを含み、溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルを含み、触媒としてアミン系触媒を含むことを特徴としている。
【0016】
このような圧電振動子の製造方法によれば、例えば150℃×60分の焼成によりシリカ材料が酸化シリコンに転化するほか、常温での1日間放置によってもシリカ材料が酸化シリコンに転化する。これにより、絶縁膜であるシリコン酸化膜を、常温〜150℃の低温で形成することができる。
【0017】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子の製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片を備えているので、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片とを確実に接合させることができ、パッケージと圧電振動片との導通を確保できる。その結果、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る圧電振動子の製造方法及び圧電振動子によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0024】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る一実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動片を上面から見た平面図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を下面から見た平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動片の斜視図である。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際のメイン工程のフローチャートである。
【図9】図8に示すメイン工程のうち電極層形成工程から切離工程に至る具体的な工程のフローチャートである。
【図10】図8に示すフローチャートのうち仕上工程の具体的な工程のフローチャートである。
【図11】圧電振動子の製造方法における主要な工程の要部を時系列で示し、(A)は下地・仕上層形成工程、(B)はパターニング1工程、(C)はエッチング工程1、(D)はパターニング2工程、(F)は絶縁膜形成工程、(G)は第1エッチング工程、(H)は第2エッチング工程、の図2のC−C線に相当する断面図である。
【図12】本発明に係る一実施形態の絶縁膜形成工程を示し、(A)は材料塗布状態の説明図、(B)は被膜形成状態の説明図である。
【図13】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図16】本発明に係る表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。
【図17】従来のスパッタリングによる絶縁膜形成時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(圧電振動子)
図1は、本実施形態に係る圧電振動子の斜視図である。図1に示すように、圧電振動子1は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子であって、音叉型の圧電振動片2と、圧電振動片2がマウント(機械的に接合及び電気的に接続)されたプラグ3と、プラグ3とともに圧電振動片2を気密封止するケース4と、を備えている。
【0028】
図2は圧電振動片の上面から見た平面図であり、図3は下面から見た平面図である。また、図4は圧電振動片の斜視図であり、図5は図2のA−A線に沿う断面図である。
【0029】
図2,3に示すように、圧電振動片2は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0030】
この圧電振動片2は、平行に配置されて先端側を自由端とする一対の振動腕部(振動領域)8,9と、これら一対の振動腕部8,9の基端側を一体的に固定する基部(実装領域)10と、を有する圧電板11を備えている。また、圧電振動片2は、一対の振動腕部8,9の外表面上に形成されて一対の振動腕部8,9を振動させる第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14と、第1の励振電極12及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15,16と、一対の振動腕部8,9の両主面上に、振動腕部8,9の基端部から先端部に向かう軸線方向に沿って一定の溝長さLで形成された溝部17と、を備えている。この溝部17は、図4に示すように、振動腕部8,9の基端部から略中間付近まで形成されている。なお、一対の振動腕部8,9の腕幅は同一であり、それぞれWとする。また、基部10において一対の振動腕部8,9の基端部と連結されている部分を股部10aとする。
【0031】
図2,3,5に示すように、第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14は、一対の振動腕部8,9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8,9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8の溝部17上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9の溝部17上とに主に形成されている。
【0032】
また、図2,3に示すように、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において連続的に形成されており、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極15,16に電気的に接続されている。このマウント電極15,16は、圧電板11の基端側に形成されている。すなわち、励振電極14、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20は、所定の電圧が印加されたときに一対の振動腕部8,9を振動させる電極層18として機能している。
【0033】
図6は図1のB−B線に沿う断面図であり、図7は図2のC−C線に沿う断面図である。図6,7に示すように、電極層18は、基部10の両主面上に形成されたクロム(Cr)からなる下地金属層18aと、金(Au)からなる仕上金属層18bとが順次積層されて構成されている。
【0034】
下地金属層18aは、仕上金属層18bと圧電振動片2との密着性を向上させるためのものであり、マウント電極15,16から引き出し電極19,20、励振電極14に亘って連続的に形成されている。
【0035】
また、仕上金属層18bは、図4,5,7に示すように、少なくとも振動腕部8,9の基端部から先端部に至る領域で、仕上金属層18bの一部或いは全部が除去されている。
より詳しくは、振動腕部8,9の基端部より先端部側では、基端部から溝長さL以上離間した位置まで(図4に示す領域RA)、仕上金属層18bの全部が除去されている。さらに、振動腕部8,9の基端部より基部10側には、基端部から基部10に向かって振動腕部8,9の腕幅Wの2倍離間した位置に至るまで(図4に示す領域RB)、仕上金属層18bの全部が除去されている。
【0036】
すなわち、電極層18は、振動腕部8,9の溝部17が形成されている領域を含む領域RA及び領域RBで、溝部17内を含めて全面的に下地金属層18aだけが形成されている。そして、領域RA及び領域RBには、下地金属層18aを覆うように酸化珪素(SiO2)等からなる絶縁膜34(図7参照)が被覆されている。これにより、振動腕部8,9の励振電極12,13間に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。そして、本実施形態のように励振電極12,13の形成領域である領域RA,RBにおいて、仕上金属層18bを除去した状態で下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させて励振電極12,13の短絡をより防ぐことができる。なお、以下の説明では、領域RA及び領域RBを合わせた領域を単層領域Rとして説明する。
【0037】
一方、圧電板11における単層領域Rよりも基端側に形成された引き出し電極19,20及びマウント電極15,16は、上述したように下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された状態となっている。そして、これら下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層されている領域を積層領域Pとして説明する。
【0038】
また、一対の振動腕部8,9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8,9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0039】
重り金属膜21のうち、振動腕部8,9の先端側に形成された粗調膜21aは、電極層18と同様に下地金属層18a及び仕上金属層18bが順次積層され、仕上金属層18b上にさらに金(Au)又は銀(Ag)等からなる上層金属層(不図示)が積層されて構成されている。これに対して、粗調膜21aよりも基端側に形成された微調膜21bは、電極層18と同様に下地金属層18a、仕上金属層18bが順次積層されて構成されている。すなわち、重り金属膜21を構成する下地金属層18a及び仕上金属層18bは、上述した電極層18と同時に積層される。
【0040】
ケース4は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片2を内部に収納した状態でプラグ3の後述するステム30の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース4の圧入は、真空雰囲気下で行われており、ケース4内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0041】
プラグ3は、ケース4を密閉させるステム30と、このステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
【0042】
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスである。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の後述するめっき層35が施されている。
【0043】
2本のリード端子31は、ケース4内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース4外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。リード端子31は、その直径が例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、図6に示すように、リード端子31の外表面及びステム30の外周には、めっき層35が被覆されている。被膜させるめっきの材質としては、下地膜35aに銅(Cu)めっき等が用いられ、仕上膜35bに融点が例えば300度程度の高融点ハンダめっき(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)が用いられる。
【0044】
また、ステム30の外周に被膜されためっき層35を介在させながらケース4の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース4の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0045】
そして、インナーリード31aは、仕上膜(高融点ハンダめっき)35bを溶解させて形成された接合部Eを介して、マウント電極15,16の仕上金属層18b上にマウントされている。すなわち、接合部Eを介してインナーリード31aとマウント電極15,16とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0046】
なお、上述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。
【0047】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、接合部E、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20を介して、第1の励振電極12及び第2の励振電極13からなる励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8,9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8,9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0048】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図8は、圧電振動子の製造方法を示すメインルーチンのフロー図である。
【0049】
(ステップS10)
ステップS10では、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、このウエハS(図11(A)参照)をラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハSを形成するウエハ準備工程を行う。
【0050】
(ステップS20)
ステップS20では、研磨後のウエハSにおいて複数の圧電振動片2の外形形状を形成する外形形成工程を行う。具体的には、先ず、圧電振動片2の外形形状にパターニングされたウエハ用マスク(不図示)をマスクとしてエッチング加工を行なう。これにより、ウエハ用マスクでマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片2の外形形状を形作ることができる。後述する電極層形成工程を行う前に一対の振動腕部8,9に溝部17を形成する溝部形成工程を行う。ここでは、圧電振動片2は、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態であるため、これにより、ウエハS上に上述した圧電振動片2が複数連結された状態となる。
【0051】
(ステップS30)
ステップS30では、複数の圧電板11の外表面上に下地金属層18a及び仕上金属層18bを積層して、電極層18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15、16)及び重り金属膜21を形成する電極層形成工程を行う。
【0052】
(ステップS40)
ステップS40では、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を形成した後、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の重り金属膜21のうち、粗調膜21aの形成領域における仕上金属層18b上に上層金属層を被膜させる被膜形成工程を行う。
【0053】
(ステップS50)
ステップS50では、被膜形成工程(ステップS40)で仕上金属層18bの表面に析出したクロムおよび仕上金属層18bの表面に付着した付着物を除去するための除去処理工程を行う。
【0054】
(ステップS60)
ステップS60では、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して小片化した後に、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う切離工程を行う。
【0055】
(ステップS70)
ステップS70では、プラグ3を作製する気密端子作製工程を行った後、プラグ3のリード端子31の外表面及びステム30の外周に、同一材料のめっき層を湿式めっき法で被膜させるめっき工程を行う。
【0056】
このように、ステップS70のプラグ処理工程では、下地膜35a及び仕上膜35bからなるめっき層35をリード端子31に被膜することで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜されためっき層35が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース4との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0057】
(ステップS80)
ステップS80では、圧電振動片2の接合から圧電振動子1の外観検査までを行って、寸法や品質等を最終的にチェックする仕上工程を行う。
【0058】
次に、図9乃至図11に基づいて上述したメイン工程の詳細な工程を説明する。図9は図8に示すメイン工程のうち電極層形成工程から切離工程に至る具体的な工程のフローチャート、図10は図8に示すフローチャートのうち仕上工程の具体的な工程のフローチャート、図11は圧電振動子の製造方法における主要な工程の要部を時系列で示す図2のC−C線に相当する断面図である。
【0059】
<電極層形成工程(ステップS30)の具体例>
(ステップS31)
始めに、図11(A)に示すように、圧電板11上に下地金属層18a及び仕上金属層18bを、蒸着やスパッタリング等により順次成膜する。
【0060】
(ステップS32)
次に、図11(B)に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜41を成膜した後、フォトリソ技術でパターニングする。この際、電極層18を残しておきたい部分、すなわちマウント電極15,16、励振電極12,13、引き出し電極19,20及び重り金属膜21の形成領域が、フォトレジスト膜41によって被膜されるようにパターニングする。
【0061】
(ステップS33)
そして、残ったフォトレジスト膜41をマスクとして、図11(C)に示すように、電極層18をエッチング加工するエッチング工程を行う。これにより、下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された電極層18が形成される。その後フォトレジスト膜41を除去する。
【0062】
(ステップS34)
続いて、単層領域R(図4参照)に存在する電極層18の仕上金属層18bの除去を行う。具体的には、仕上金属層18bを除去するために、図11(D)に示すように、スプレーコート等によりフォトレジスト膜42を成膜した後、フォトリソ技術を用いて、フォトレジスト膜42をパターニングする。この際、少なくとも仕上金属層18bを残しておきたい部分、すなわち積層領域P及び重り金属膜21の形成領域を覆うようにパターニングする。つまり、単層領域Rに形成されたフォトレジスト膜42を除去する。
【0063】
(ステップS35)
そして、そのフォトレジスト膜42をマスクとしてエッチングする。これにより、単層領域Rに存在する電極層18において、仕上金属層18bを除去することができる。その後、図11(E)に示すように、フォトレジスト膜42を除去する。
以上の工程を実施することで、電極層形成工程が終了する。
【0064】
<被膜形成工程(ステップS40)の具体例>
(ステップS41)
ステップS41では、その後、図11(F)に示すように、仕上金属層18bが除去された単層領域Rにおいて、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を形成する。すると、単層領域Rの下地金属層18aを覆うように絶縁膜34が形成される。このように、仕上金属層18bを除去した後に下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させることができ、単層領域Rにおける励振電極12,13間の短絡を確実に防ぐことができる。
【0065】
図12は、本発明に係る一実施形態の絶縁膜形成工程を示し、(A)は材料塗布状態の説明図、(B)は絶縁膜形成状態の説明図である。図12(A)に示すように、このステップS41におけるSiO2からなる絶縁膜34は、下地金属層18aの上層にスプレー塗布装置60を用いてSiO2の形成材料を含む溶液71を塗布した後、熱分解(ベーキング)することで形成する。溶液のスプレー塗布は、積層領域Pをメタルマスク等によりマスクした状態で、単層領域Rに対して行う。
【0066】
溶液71に含まれるSiO2の形成材料(シリカ材料)として、パーハイドロポリシラザン等の無機系の材料や、シロキサン等の有機系の材料が挙げられる。また溶液71には、SiO2の形成材料のほか、有機溶媒および微量の触媒が含まれている。具体的には、有機溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルが含まれ、触媒としてアミン系の触媒が含まれている。
【0067】
シリカ材料であるパーハイドロポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)との化合物であるシラザンが重合したものであり、結合手が全て水素(H)である。塗布されたパーハイドロポリシラザンは、自己架橋(脱水素)により速やかに硬化するほか、以下の反応式により大気中の水分と反応してSiO2に転化する。
(−SiH2NH−) + 2H2O → SiO2 + NH3 + 2H2
【0068】
例えば、150℃×60分の焼成によりほとんどのパーハイドロポリシラザンがSiO2に転化するほか、常温での1日間放置によってもほとんどのパーハイドロポリシラザンがSiO2に転化する。これにより、パッシベーション膜としての絶縁膜34を、常温〜150℃の低温で形成することができる。また、絶縁膜34を形成する際、加熱を伴う塗布処理を同時に行わないため、クロムが表面に拡散析出して半田濡れ性を阻害する虞を抑制することができる。
【0069】
溶液の濃度は、0.5〜20%の範囲で任意に調整が可能である。これにより、塗布後に溶媒が揮発すると、厚さ0.01〜2.0μm程度のSiO2からなる絶縁膜34を形成することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、スプレー塗布装置60は、例えば、伸縮可能なアーム61と、アーム61の先端に回動可能に設けられたノズル62と、を備え、アーム61の伸縮とノズル62の回動とによって一対の振動腕部8,9の縦横の壁面に満遍なく溶液を塗布することができ、SiO2分子による絶縁膜34の膜厚にムラができることを抑制することができる。この際、アーム61とノズル62とに変えて圧電振動片2を保持する基台(図示せず)等を移動・回動・回転させることによってムラの発生を抑制しても良い。
【0071】
このように、成膜と加熱とを同時に行うスパッタ等を行うことなく、スプレー塗装と乾燥(熱分解)とを別々の工程で行って絶縁膜34を形成することにより、厚膜化のため成膜速度を上げても圧電振動片の温度が上昇しないので、厚膜の絶縁膜34を形成することができる。また、真空プロセスを実施するための複雑で高価な装置・機構等を必要とせず、安価な装置にて絶縁膜34の形成を可能とすることができる。しかも、低温での被膜形成により温度(加熱)による悪影響を気にせずに厚膜形成を容易に行うことができる。
【0072】
この際、スプレー塗装後の溶液71の乾燥には、使用する溶液71によってことなるものの、溶媒にキシレンやシブチルエーテルを用いることにより、常温から100℃以下の範囲での乾燥が可能となる。また、溶液71に含まれる不純物は熱分解時の温度が高いほど純度が高くなるため、適用箇所によっては温度を低く設定することが可能となる。さらに、スプレー塗布装置60を伸縮可能なアーム61や回動可能なノズル62を用いることにより、ピンポイントの塗布も可能となる。
【0073】
(ステップS42)
ステップS42では、上述した電極層形成工程(ステップS30)が終了した後、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の重り金属膜21のうち、粗調膜21aの形成領域における仕上金属層18b上に例えば、銀や金等からなる上層金属層を、蒸着やスパッタリング等を用いて被膜させる。そして、水晶ウエハに形成された全ての振動腕部8,9に対して、共振周波数を粗く調整する粗調工程を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザー光を照射して、一対の振動腕部8,9の先端にかかる重量を軽減させることで、周波数を粗く調整する工程である。
【0074】
<除去処理工程(ステップS50)の具体例>
ところで、図11(F),(G)に示すように、圧電振動片2の製造工程においては、電極層18を形成した後に、上述した重り金属膜21の上層金属層を形成したり、フォトレジスト膜41,42を形成したりするが、この際に圧電振動片2が加熱される。圧電振動片2が加熱されることで、マウント電極15,16(積層領域P)の下地金属層18aのクロム(またはクロム酸化物)が仕上金属層18bの表面に析出するという問題がある。なお、以下の説明では、仕上金属層18b上に析出したクロムを析出クロム50とする。
【0075】
また、絶縁膜34を形成する際に、スプレー塗布された溶液の飛沫が、マスク等で保護している領域(積層領域P)にまで回り込んで、積層領域P上に付着するという問題がある。この飛沫は、絶縁膜34の粒子となって積層領域Pに付着したまま残存する。この場合、圧電板11上に付着する絶縁膜34の粒子は何ら問題にならないが、マウント電極15,16の仕上金属層18bの表面に絶縁膜34の粒子が付着すると、後述するマウント工程(S81)において仕上膜35b(高融点ハンダ)の濡れ性が低下するという問題がある。なお、以下の説明では、積層領域P上に付着した絶縁膜34の粒子を付着粒子51とする。なお、図11(F),(G)では、説明を分かり易くするために析出クロム50と付着粒子51とを層状に図示している。
【0076】
そこで、本実施形態では、上述した析出クロム50や付着粒子51を除去するための処理工程(S50)を行う。
【0077】
(ステップS51)
ステップS51では、積層領域Pにおける付着粒子51をウェットエッチングにより除去する第1エッチング工程を行う。この第1エッチング工程で使用する第1エッチャント(第1処理液)としては、水酸化カリウム(KOH)水溶液や弗化水素(HF)水溶液等を用いることが可能であり、本実施形態ではKOH水溶液が好適に用いられている。そして、第1エッチャントが収容された第1エッチング槽内にウエハS全体を浸漬させる。
【0078】
なお、第1エッチング工程における具体的な条件(KOH水溶液の濃度、温度、エッチング時間)は、例えば以下の通りである。
濃度:約10重量%
温度:約60℃
エッチング時間:約3分
【0079】
この条件でエッチングを行うことで、図11(G)に示すように、積層領域Pに付着した付着粒子51を除去することができる。
【0080】
(ステップS52)
ステップS52では、その後、第1エッチング槽からウエハSを取り出し、純水でウエハSを洗浄する純水洗浄工程を行う。
【0081】
(ステップS53)
ステップS53では、主としてマウント電極15,16の仕上金属層18b上に析出した析出クロム50を、ウェットエッチングにより除去する第2エッチング工程を行う。この第2エッチング工程で使用する第2エッチャント(第2処理液)としては、フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])及びKOHの水溶液が好適に用いられている。そして、第2エッチャントが収容された第2エッチング槽内にウエハS全体を浸漬させる。
【0082】
なお、第2エッチング工程における具体的な条件K3[Fe(CN)6]及びKOHの濃度、温度、エッチング時間)は、例えば以下の通りである。
K3[Fe(CN)6]の濃度:1重量%以上10重量%以下(好ましくは2%程度)
KOHの濃度:1重量%以上10重量%以下(好ましくは2重量%程度)
温度:常温(例えば、25〜30℃程度)
エッチング時間:約30秒
【0083】
この条件でエッチングを行うことで、図11(H)に示すように、積層領域P(特に、マウント電極15,16)の仕上金属層18b上に析出した析出クロム50を除去することができる。なお、K3[Fe(CN)6]またはKOHの濃度が10重量%より高いと、所望の電極層18として形成されたクロム(下地金属層18a)まで除去してしまい、圧電振動片2の特性が変動する虞があるため好ましくない。一方、濃度が1重量%よりも低いと、マウント電極15,16の表面(仕上金属層18b)に析出した析出クロム50を効果的に除去することができない虞があるため好ましくない。
【0084】
これに対して、本実施形態の構成によれば、K3[Fe(CN)6]及びKOHの濃度を、それぞれ1重量%以上10重量%以下の範囲に設定することで、圧電振動片2の特性に影響を与えずに、マウント電極15,16の表面に析出した析出クロム50を効果的に除去することができる。
【0085】
なお、上述した電極層形成工程において、単層領域Rの仕上金属層18bを除去する際、例えば、振動腕部8,9の側面に付着した仕上金属層18bはエッチングされずに僅かながら残存する場合がある。仕上金属層18bが残存した箇所に絶縁膜34を形成しようとすると、絶縁膜34との密着性を確保することができず、圧電振動片2の完成後に剥離等が生じる虞がある。しかしながら、本実施形態では、第2エッチング工程において、仕上金属層18bが残存している箇所が存在している場合に、第2エッチャントが絶縁膜34と仕上金属層18bとの間に入り込んだりして、振動腕部8,9の側面等、仕上金属層18bが残存している箇所に形成された絶縁膜34を、製品となる前に予め除去しておくことができる。
【0086】
<切離工程(ステップS60)の具体例>
(ステップS61)
ステップS61では、ウエハSと圧電振動片2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、ウエハSから、電極層18(励振電極14、引き出し電極19,20及びマウント電極15,16)及び重り金属膜21が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。
【0087】
(ステップS62)
ステップS62では、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う周波数調整(粗調)工程を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては仕上工程(ステップS80)にて行う。
【0088】
<仕上工程(ステップS80)の具体例)
(ステップS81)
ステップS81では、圧電振動片2のマウント電極15,16をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う。具体的には、インナーリード31aを300度を超える温度で加熱しながら、インナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、インナーリード31aの仕上膜35bである高融点ハンダめっきが溶解し、仕上金属層18b上に速やかに濡れ広がる。これにより、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。すなわち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
【0089】
なお、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用して接続を行っても構わない。
【0090】
(ステップS82)
ステップS82では、封止工程を行う前に、上述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う。
【0091】
(ステップS83)
ステップS83では、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う。具体的には、圧電振動子1全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザーにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。
【0092】
なお、上述した微調及び先に行った粗調の際に、レーザーの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザーではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0093】
(ステップS84)
ステップS84では、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース4をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止するケース圧入を行う。具体的には、真空中で所定の荷重を加えながらケース4をプラグ3のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース4内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
【0094】
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース4及びプラグ3を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0095】
(ステップS85)
ステップS85では、ケース4の固定が終了した後、スクリーニングを行う。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース4を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
【0096】
(ステップS86)
ステップS86では、スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0097】
以上に述べたように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布して圧電振動片に絶縁膜を形成するので、厚膜化のため塗布量を増加させても圧電振動片の温度が上昇しない。したがって、圧電振動片に対して厚膜かつ低温で絶縁膜を形成することができる。また、スプレー塗布では広角度範囲に溶液が噴射され、しかも圧電振動片に対してあらゆる角度から溶液を噴射することができるので、圧電振動片の側面にも絶縁膜を形成することができる。
【0098】
これにより、パッケージが実装される仕上金属層を、下地金属層の析出を抑制した良好な状態に保つことができる。したがって、パッケージと圧電振動片との接合に高融点ハンダや金からなる接合材料を用いた場合であっても、接合材料が良好に濡れ広がるので、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0099】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図14を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0100】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
【0101】
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0102】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらに、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0103】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図15を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0104】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図15に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0105】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0106】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0107】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
【0108】
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0109】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
【0110】
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0111】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0112】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
【0113】
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0114】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0115】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
【0116】
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0117】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
【0118】
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0119】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
【0120】
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0121】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0122】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、クロムの析出を抑制した良好な状態に圧電振動片を保つことができ、パッケージと圧電振動片との接合性を向上させた圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に信頼性を向上させることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0123】
(表面実装型圧電振動子)
なお、本発明は、上述したシリンダータイプの圧電振動子1に限られず、表面実装型の圧電振動子に本発明を適用することもできる。図16は、表面実装型の圧電振動子を示す断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0124】
図16に示すように、本実施形態の圧電振動子201は、ベース基板202とリッド基板203とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に上述した圧電振動片2が収納されている。
【0125】
リッド基板203は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、板状に形成されている。そして、ベース基板202が接合される接合面側には、圧電振動片2が収まる矩形状の凹部203aが形成されている。この凹部203aは、両基板202,203が重ね合わされたときに、圧電振動片2を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板203は、この凹部203aをベース基板202側に対向させた状態でベース基板202に対して陽極接合されている。
【0126】
一方、ベース基板202は、リッド基板203と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、リッド基板203に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
【0127】
このベース基板202には、ベース基板202を貫通する一対のスルーホール230,231が形成されている。これらスルーホール230,231は、マウントされた圧電振動片2の基部10側に対応した位置に一方のスルーホール230が形成され、振動腕部8,9の先端側に対応した位置に他方のスルーホール231が形成されている。
【0128】
そして、これら一対のスルーホール230,231には、これらスルーホール230,231を埋めるように形成された一対の貫通電極232,233が形成されている。これら貫通電極232,233は、焼成によってスルーホール230,231に対して一体的に固定された筒体206及び芯材部207によって形成されたものであり、スルーホール230,231を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極238,239と引き回し電極236,237とを導通させる役割を担っている。
【0129】
筒体206は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものであり、その中心には芯材部207が筒体206を貫通するように配されている。
【0130】
芯材部207は、導電性を有する金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、この芯材部207を通して貫通電極232,233の電気導通性が確保されている。
【0131】
ベース基板202の上面側(リッド基板203が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜235と、一対の引き回し電極236,237とがパターニングされている。このうち接合膜235は、リッド基板203に形成された凹部203aの周囲を囲むようにベース基板202の周縁に沿って形成されている。
【0132】
また、一対の引き回し電極236,237は、一対の貫通電極232,233のうち、一方の貫通電極232と圧電振動片2の一方のマウント電極15とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極233と圧電振動片2の他方のマウント電極16とを電気的に接続するようにパターニングされている。また、ベース基板202の下面には、一対の貫通電極232,233に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極238,239が形成されている。
【0133】
ここで、一対の引き回し電極236,237上には、それぞれ金からなるバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片2がマウントされている。より具体的には、ベース基板202の上面にパターニングされた後述する引き回し電極236,237上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極15,16がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片2は、ベース基板202の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極15,16と引き回し電極236,237とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。この場合においても、圧電振動片2が各エッチング工程を経て形成されているため、仕上金属層18bは析出クロム50や付着粒子51のない良好な層に維持される。そのため、マウント工程において、仕上金属層18b上におけるバンプBの濡れ性を向上させることができる。すなわち、仕上金属層18b上にバンプBが良好に濡れ広がるので、引き回し電極236,237と電極層18との接合性を向上させ、両者を確実に接合させることができる。
【0134】
したがって、引き回し電極236,237と圧電振動片2との導通を確保でき、信頼性の高い圧電振動子201を提供することができる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0136】
例えば、上述した実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプや表面実装型の圧電振動子1,201を例に挙げて説明したが、これら圧電振動子1,201に限定されるものではない。例えば、セラミックパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部で固めて表面実装型振動子としても構わない。
【0137】
また、音叉型の圧電振動片2に限られず、AT型の圧電振動片に本発明を適用することも可能である。
【0138】
また、上述した実施形態では、絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiO2)を形成したが、これ以外の絶縁膜を形成してもよい。また、スプレー塗布する溶液には、SiO2の形成材料(シリカ材料)としてパーハイドロポリシラザンやシロキサン等が含まれ、有機溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルが含まれ、触媒としてアミン系の触媒が含まれている場合を例にして説明したが、これら以外の物質が含まれていてもよい。
【0139】
また、上述した実施形態では第1エッチング工程と第2エッチング工程とを連続して行う場合について説明したが、インナーリード31aをマウントする前であれば、これに限られない。例えば、絶縁膜34の形成直後に第1エッチング工程を行い、重り金属膜21の形成直後に第2エッチング工程を行うような構成にしてもよい。また、第1エッチャントに弗化水素水溶液を用いても構わない。さらに、上述した各エッチング工程では、ウエハS全体をエッチング槽に浸漬させる場合について説明したが、エッチングする領域のみをエッチング槽に浸漬させてもよい。
【0140】
また、上述した実施形態では、インナーリード31aの外周面に形成された高融点ハンダめっきを溶解させ、インナーリード31aとマウント電極15,16とを接合する場合について説明したが、インナーリード31aとマウント電極15,16との間に両者を接合するための高融点ハンダや金等からなるバンプを介在させて両者を接合してもよい。この場合においても、バンプの濡れ性が良好になり、インナーリード31aとマウント電極15,16とを確実に接合することができる。
【符号の説明】
【0141】
P…積層領域(実装領域) R…単層領域(振動領域) 1,201…圧電振動子 2…圧電振動片 3…プラグ 8,9…振動腕部 11…圧電板 12…第1の励振電極(振動領域) 13…第2の励振電極(振動領域) 14…励振電極(振動領域) 15,16…マウント電極(実装領域) 18…電極層(積層体) 18a…下地金属層 18b…仕上金属層 31a…インナーリード 34…絶縁膜 35b…仕上膜(接合材料) B…バンプ(接合材料) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片における実装領域および振動領域の表面に、下地金属層及び仕上金属層を積層状態で形成する工程と、
前記振動領域に、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、
塗布した前記溶液を転化させて、前記振動領域に絶縁膜を形成する工程と、
接合材料を介して前記圧電振動片を前記実装領域においてパッケージに実装する工程と、
を有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
前記溶液をスプレー塗布する工程の前に、前記振動領域の前記仕上金属層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であり、
前記溶液は、前記絶縁膜材料としてパーハイドロポリシラザン又はシロキサンを含み、溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルを含み、触媒としてアミン系触媒を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の圧電振動子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
圧電振動片における実装領域および振動領域の表面に、下地金属層及び仕上金属層を積層状態で形成する工程と、
前記振動領域に、絶縁膜材料を含有した溶液をスプレー塗布する工程と、
塗布した前記溶液を転化させて、前記振動領域に絶縁膜を形成する工程と、
接合材料を介して前記圧電振動片を前記実装領域においてパッケージに実装する工程と、
を有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
前記溶液をスプレー塗布する工程の前に、前記振動領域の前記仕上金属層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であり、
前記溶液は、前記絶縁膜材料としてパーハイドロポリシラザン又はシロキサンを含み、溶媒としてキシレン又はジブチルエーテルを含み、触媒としてアミン系触媒を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の圧電振動子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−77911(P2013−77911A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215465(P2011−215465)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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