説明

圧電発振器

【課題】低電圧動作が可能な圧電発振器を提供する。
【解決手段】圧電振動子19と、前記圧電振動子19に並列接続された増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17とPMOSトランジスタ15と、前記圧電振動子19に並列接続された負荷容量20、21により構成される発振回路において、前記増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17のゲート端子32とPMOSトランジスタ15のゲート端子30はDCカット容量22により接続され、NMOSトランジスタ17のゲート端子32と増幅器41の出力端子31は帰還抵抗16によって接続され、PMOSトランジスタ15のゲート端子30は、高周波除去抵抗23を介して任意のバイアス電圧が印加され、前記バイアス電圧は第2のPMOSトランジスタ25をダイオード接続することにより構成した回路によって発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子を発振させる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度補償型水晶発振器は、携帯電話などの基準周波数として使用されており水晶振動子(圧電振動子)が持つ温度特性を相殺し、温度に対して周波数の変化が少ない特性を有する水晶発振器である。近年、携帯電話、GPSなどのシステムにおいて低い電源電圧での動作が温度補償型水晶発振器にも望まれている。
【0003】
図6は、従来の水晶発振回路(従来例1)を示す。温度補償型水晶発振器に用いられる水晶発振回路はCMOSインバータ増幅器40を備えて構成される。CMOSインバータ増幅器40は、PMOSトランジスタ2およびNMOSトランジスタ3で構成される。図6に示す水晶発振回路は、CMOSインバータ増幅器40、制限抵抗4、負荷容量6,7、および帰還抵抗1で発振ループを構成し、水晶振動子5を接続する端子間で負性抵抗を持つ(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図7は、従来の水晶発振回路(従来例2)を示す。図7に示す水晶発振回路は、NMOSトランジスタ10、定電流源8を備えて構成される。この水晶発振回路は、NMOSトランジスタ10、制限抵抗11、負荷容量13,14、および帰還抵抗9で発振ループを構成し、水晶振動子12を接続する端子間で負性抵抗を持つ。
【0005】
【特許文献1】特開2003−318417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す従来例1の水晶発振回路において、温度補償型水晶発振器の動作電源電圧が低下すると、水晶発振回路に用いられるCMOSインバータ増幅器40を駆動する内部レギュレータ電圧が低くなる。そのため、低電圧動作が可能な温度補償型発振器を提供するためには、CMOSインバータ増幅器40を用いた水晶発振器の低電圧動作が必要となる。
【0007】
従来例1の水晶発振回路において、十分な負性抵抗を確保するためには、CMOSインバータ増幅器40を駆動する内部レギュレータ電圧は通常MOSトランジスタの閾値電圧の3倍程度が必要である。
【0008】
内部レギュレータ電圧が低下した場合、十分なゲート‐ソース間電圧VGSを確保することができなくなり、CMOSインバータ増幅器40のゲインが低下する。その結果、負性抵抗の悪化や、それによる発振起動時間の遅延などの問題が発生する。
【0009】
また、負性抵抗の改善を行うためにMOSトランジスタのサイズを大きくすることによりCMOSインバータ増幅器40のゲインを大きくすることが考えられるが、消費電流が増大してしまうという問題もある。
【0010】
また、図7に示す従来例2の水晶発振器においては、負性抵抗を確保するためには、NMOSトランジスタ10へ供給する消費電流を増大させる必要がある。
【0011】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、低電圧動作が可能な圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る圧電発振器は、圧電振動子に並列接続される増幅器と、前記圧電振動子に並列接続された負荷容量とを有する圧電発振器であって、前記増幅器が、直列接続される第1のPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子と前記NMOSトランジスタのゲート端子間に接続されるDCカット容量と、前記NMOSトランジスタのゲート端子と前記増幅器の出力端子間に接続される帰還抵抗とを備え、前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアス電圧が印加されるものである。
【0013】
上記構成によれば、増幅器を構成する第1のPMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアスを印加することにより、第1のPMOSトランジスタのゲート‐ソース間電圧VGSを大きくし増幅器のゲインを大きくすることが可能となるため、低電圧動作時でも十分な負性抵抗を確保することが可能となる。また、第1のPMOSトランジスタのゲート端子とNMOSトランジスタのゲート端子の発振振幅は同相であり、NMOSトランジスタがONしているときにPMOSトランジスタがOFFとなる。そのため、NMOSトランジスタに定電流を印加した場合よりも、消費電流を低く抑えることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る圧電発振器は、前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に接続される高周波除去抵抗を備え、前記高周波除去抵抗を介して前記バイアス電圧が印加されるものである。
【0015】
また、本発明に係る圧電発振器は、前記バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路を備え、前記バイアス電圧生成回路が、ダイオード接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第2のPMOSトランジスタと直列接続される電流源とを含むものである。また、本発明に係る圧電発振器は、前記バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路を備え、前記バイアス電圧生成回路が、ダイオード接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第2のPMOSトランジスタと直列接続される抵抗負荷とを含むものである。
【0016】
上記構成によれば、バイアス電圧生成回路によって、第1のPMOSトランジスタの閾値電圧のバラツキおよび温度特性を相殺するバイアス電圧を生成し、第1のPMOSトランジスタのゲート端子に印加することにより、消費電流、負性抵抗のバラツキ、および温度特性による変化を低減することが可能となる。また、増幅器の電源のノイズを相殺することも可能な構成となるため、位相ノイズの改善を図ることも可能となる。
【0017】
また、本発明に係る圧電発振器は、圧電振動子に並列接続される増幅器と、前記圧電振動子に並列接続された負荷容量とを有する圧電発振器であって、前記増幅器が、直列接続されるPMOSトランジスタおよびNPNトランジスタと、前記PMOSトランジスタのゲート端子と前記NPNトランジスタのベース端子間に接続されるDCカット容量と、前記NMOSトランジスタのゲート端子と前記増幅器の出力端子間に接続される帰還抵抗とを備え、前記PMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアス電圧が印加されるものである。
【0018】
上記構成によれば、増幅器を構成するPMOSトランジスタのゲートに任意のバイアス電圧を印加することにより、PMOSトランジスタのゲート‐ソース間電圧を大きくし増幅器のゲインを大きくするとともに、NPNトランジスタを用いることにより低電圧動作時でも更なる負性抵抗の改善を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧電発振器によれば、増幅器を構成する第1のPMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアスを印加することにより、第1のPMOSトランジスタのゲート‐ソース間電圧VGSを大きくし増幅器のゲインを大きくすることが可能となるため、低電圧動作時でも十分な負性抵抗を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における圧電発振器の概略構成を示す。本発明の実施の形態1に係る圧電発振器は、水晶振動子等の圧電振動子19と、前記圧電振動子に並列接続された増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17とPMOSトランジスタ15と、前記圧電振動子19に並列接続された負荷容量20、21により構成される発振回路において、前記増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17のゲート端子32とPMOSトランジスタ15のゲート端子30はDCカット容量22により接続され、NMOSトランジスタ17のゲート端子32と増幅器41の出力端子31は帰還抵抗16によって接続され、PMOSトランジスタ15のゲート端子30は、高周波除去抵抗23を介して任意のバイアス電圧24が印加される構成とした。
【0022】
図3および図4を用いて本発明の実施の形態に係る圧電発振器の動作を説明する。図3は、図6に示した従来例1の発振回路の端子波形を示す。CMOSインバータ増幅器40を構成しているPMOSトランジスタ2とNMOSトランジスタ3のゲート端子はショートしており、CMOSインバータ増幅器40の出力波形31(図6に示す端子31における信号波形)は、入力波形30(図6に示す端子30における信号波形)より位相が180°遅れている。
【0023】
また、CMOSインバータ増幅器40の入力端子30と出力端子31は、帰還抵抗1により接続されており、バイアスは同一となる。例えばCMOSインバータ増幅器40の電源VDDが1.5Vであった場合、上記ゲート電圧(PMOSトランジスタ2とNMOSトランジスタ3のゲート端子における電圧)は中間電位の0.75Vとなり、CMOSインバータ増幅器40を構成しているMOSトランジスタのゲート‐ソース間で電圧VGS1は0.75Vとなる。一般的なMOSトランジスタの閾値電圧は0.7V程度であるためCMOSインバータ増幅器40は十分なゲインを確保することができない。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態1に係る圧電発振器の端子波形を示す。図1に示す圧電発振器は、PMOSトランジスタ15のゲート端子30とNMOSトランジスタ17のゲート端子32の間にDCカット容量22を挿入し、PMOSトランジスタ15のゲート端子30に任意のバイアスを印加する構成としている。例えば、前記バイアスは内部レギュレータ電圧VDDの抵抗分圧で生成する。
【0025】
上記図1に示す圧電発振器によれば、図4に示すように、PMOSトランジスタ15のゲート端子30における信号とNMOSトランジスタ17のゲート端子32における信号は同相となる。
【0026】
図4に示すように、PMOSトランジスタ15のゲート‐ソース間電圧を従来例1のVGS1からVGS2と大きくすることにより、PMOSトランジスタ15のゲインを十分大きくとることが可能となり、増幅器41のゲインを大きくすることができる。
【0027】
このように本実施形態の圧電発振器によれば、増幅器41を構成するPMOSトランジスタ15のゲートに任意のバイアスを印加することにより、PMOSトランジスタ15のゲート‐ソース間電圧VGSを大きくし増幅器41のゲインを大きくすることが可能となり、低電圧動作時でも十分な負性抵抗を確保することが可能となる。また、内部レギュレータ電圧がMOSトランジスタの閾値電圧の3倍以上である場合でも、周波数が高い帯域での負性抵抗を増大させる効果もある。
【0028】
さらに、PMOSトランジスタ15のゲート端子とNMOSトランジスタ17のゲート端子の発振信号は同相であり、NMOSトランジスタ17がONしているときにPMOSトランジスタ15がOFFとなる。そのため、図7に示した従来例2のようにNMOSトランジスタ10に定電流を印加した場合よりも、消費電流を低く抑えることが可能となる。
【0029】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における圧電発振器の概略構成を示す。本発明の実施の形態2に係る圧電発振器は、水晶振動子等の圧電振動子19と、前記圧電振動子19に並列接続された増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17とPMOSトランジスタ15と、前記圧電振動子19に並列接続された負荷容量20、21により構成される発振回路において、前記増幅器41を構成するNMOSトランジスタ17のゲート端子32とPMOSトランジスタ15のゲート端子30はDCカット容量22により接続され、NMOSトランジスタ17のゲート端子32と増幅器41の出力端子31は帰還抵抗16によって接続され、PMOSトランジスタ15のゲート端子30は、高周波除去抵抗23を介して任意のバイアス電圧が印加されるものであり、ダイオード接続した第2のPMOSトランジスタ25と電流源26とから構成される回路(バイアス電圧生成回路)によって、前記バイアス電圧を発生する構成とした。
【0030】
図2に示すように、実施の形態2の圧電発振器においては、PMOSトランジスタ25のゲート端子とドレイン端子をショートしたダイオード接続と電流源26とを内部レギュレータ電源VDDとGND間に構成した回路により、前記バイアス電圧を生成する。電流源26に流れる電流量を切り替えることにより最適な発振器電流に設定が可能である。なお、前記電流源26の代わりに抵抗負荷を用いても構わない。
【0031】
これにより、PMOSトランジスタ15のゲート端子30には、PMOSトランジスタ15の閾値電圧、温度特性を相殺するバイアス電圧が印加される。
【0032】
このように本実施形態の圧電発振器によれば、PMOSトランジスタ15の閾値電圧VTのバラツキおよび、温度特性を相殺するバイアス電圧をPMOSトランジスタ15のゲート端子に印加することにより、消費電流、負性抵抗のバラツキ、および温度特性による変化を低減することが可能となる。また、増幅器41の電源のノイズを相殺することも可能な構成となるため、位相ノイズの改善を図ることも可能となる。
【0033】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における圧電発振器の概略構成を示す。本発明の実施の形態3に係る圧電発振器は、図1に示した実施の形態1における圧電発振器のNMOSトランジスタ17をNPNトランジスタ50に置き換えたものである。なお、図2に示した実施の形態2における圧電発振器のNMOSトランジスタ17をNPNトランジスタ50に置き換えてもよい。
【0034】
実施の形態1、2において、負性抵抗はNMOSトランジスタ17のゲインに依存するため、NMOSトランジスタ17の代わりに図5に示すようにNPNトランジスタ50を用いることにより、更なる負性抵抗の改善を図ることが可能である。
【0035】
このように本実施形態の圧電発振器によれば、増幅器41を構成するPMOSトランジスタ15のゲートに任意のバイアス電圧を印加することにより、PMOSトランジスタ15のゲート‐ソース間電圧VGSを大きくし増幅器41のゲインを大きくするとともに、低電圧動作時でも更なる負性抵抗の改善を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、低電圧動作時でも十分な負性抵抗を確保することが可能となる効果を有し、携帯電話、GPSなどのシステムにおいて低い電源電圧での動作が必要とされる温度補償型水晶発振器等として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における圧電発振器の概略構成を示す回路図
【図2】本発明の実施の形態2における圧電発振器の概略構成を示す回路図
【図3】従来例1の端子波形を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における端子波形を示す図
【図5】本発明の実施の形態3における圧電発振器の概略構成を示す回路図
【図6】従来の圧電発振器の概略構成を示す回路図1
【図7】従来の圧電発振器の概略構成を示す回路図2
【符号の説明】
【0038】
1,9,16 帰還抵抗
2,15,25 PMOSトランジスタ
3,10,17 NMOSトランジスタ
4,11,18 制限抵抗
5,12,19 水晶振動子
6,7,13,14,20,21 負荷容量
8,26 電流源
23 高周波除去抵抗
30 PMOSトランジスタゲート端子
32 NMOSトランジスタゲート端子
31 CMOSインバータ出力端子
40 CMOSインバータ
41 増幅器
50 NPNトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子に並列接続される増幅器と、前記圧電振動子に並列接続された負荷容量とを有する圧電発振器であって、
前記増幅器は、
直列接続される第1のPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタと、
前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子と前記NMOSトランジスタのゲート端子間に接続されるDCカット容量と、
前記NMOSトランジスタのゲート端子と前記増幅器の出力端子間に接続される帰還抵抗とを備え、
前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアス電圧が印加されるものである圧電発振器。
【請求項2】
請求項1記載の圧電発振器であって、
前記第1のPMOSトランジスタのゲート端子に接続される高周波除去抵抗を備え、
前記高周波除去抵抗を介して前記バイアス電圧が印加されるものである圧電発振器。
【請求項3】
請求項1記載の圧電発振器であって、
前記バイアス電圧は、前記第1のPMOSトランジスタの閾値電圧より大きいものである圧電発振器。
【請求項4】
請求項1記載の圧電発振器であって、
前記バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路を備え、
前記バイアス電圧生成回路は、ダイオード接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第2のPMOSトランジスタと直列接続される電流源とを含むものである圧電発振器。
【請求項5】
請求項1記載の圧電発振器であって、
前記バイアス電圧を生成するバイアス電圧生成回路を備え、
前記バイアス電圧生成回路は、ダイオード接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第2のPMOSトランジスタと直列接続される抵抗負荷とを含むものである圧電発振器。
【請求項6】
圧電振動子に並列接続される増幅器と、前記圧電振動子に並列接続された負荷容量とを有する圧電発振器であって、
前記増幅器は、
直列接続されるPMOSトランジスタおよびNPNトランジスタと、
前記PMOSトランジスタのゲート端子と前記NPNトランジスタのベース端子間に接続されるDCカット容量と、
前記NMOSトランジスタのゲート端子と前記増幅器の出力端子間に接続される帰還抵抗とを備え、
前記PMOSトランジスタのゲート端子に所定のバイアス電圧が印加されるものである圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−252783(P2008−252783A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94573(P2007−94573)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】