説明

地盤改良装置及び方法

【課題】特に掘削作用及び攪拌混合作用として、地盤の硬さや性状等に応じより最適な掘削攪拌条件を容易に実現する。
【解決手段】内外軸の二重軸構造の駆動軸4と、駆動軸用昇降手段3と、外軸6に設けられた外軸側掘削攪拌手段20と、内軸5に設けられた内軸側掘削攪拌手段10と、安定材用供給通路15と、吐出部17とを備え、外軸側掘削攪拌手段20と内軸側掘削攪拌手段10とを反転させながら地盤を掘削し、該掘削土壌中に安定材を吐出部17より吐出し攪拌混合する地盤改良装置において、内軸側掘削攪拌手段10は内軸下端側に固定された径小翼部11及び掘削ビット12を有し、外軸側掘削攪拌手段20は外軸下端側に固定されたアーム形径大翼部20及び掘削ビット23を有し、外軸側掘削攪拌手段20及び内軸側掘削攪拌手段10は高さ調整手段38により互いの上下間隔が調整されて径大翼部21と径小翼11とを離接可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削し、その掘削土壌中に各種の安定材を注入し攪拌混合して地盤強度などを改良する場合に用いられる地盤改良装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良装置としては、図9や図10に例示されるように、内軸と外軸との二重軸構造の駆動軸と、駆動軸を昇降させる昇降手段と、外軸の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段と、内軸の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段と、安定材用供給通路及び吐出部とを備え、外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を吐出部より吐出し攪拌混合するものが知られている。このうち、
【0003】
図9(特許文献1)の装置構造において、符号10は互いに反転する外軸11と内軸12からなる駆動軸、符号14と15は安定材用吐出部、符号16は掘削刃、符号17は内軸12の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段(17aは掘削攪拌翼体、17bは攪拌翼体、17cは掘削刃)で、符号18は外軸11の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段(18aは掘削攪拌翼体、18bは攪拌翼体、18cは掘削刃)である。
【0004】
図10(特許文献2)の装置構造において、符号1は互いに反転する内軸8と外軸9からなる駆動軸(掘削軸)、符号6は内軸8の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段(15は掘削ビット、19は立翼、25は攪拌翼)、符号7は外軸9の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段(11は立翼、12はリング、16は攪拌翼、15は掘削ビット)、符号17と23は安定材用吐出部、符号10は継手、符号29はスクリューである。
【0005】
以上の各装置構造において、掘削作用としては下段の内軸側掘削攪拌手段が先行して掘削し、次に上段の外軸側掘削攪拌手段が最終的な掘削を行うため掘削効率などに優れ、また、攪拌混合作用としては下段の内軸側掘削攪拌手段と上段の外軸側掘削攪拌手段とが互いに反転されるため掘削土壌の共廻りをそれなりに防いで攪拌効率などが向上される。
【特許文献1】特開平11−81297号公報
【特許文献2】特開2004−316287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した各装置構造では、実施工において、下段の内軸側掘削攪拌手段及び上段の外軸側掘削攪拌手段が互いの上下間隔が固定されているため、地盤の状況などに応じて両掘削攪拌手段の間隔を変更してより最適な掘削や攪拌条件を満たすことができない。これは、例えば、攪拌混合において土壌の共廻りを防ぐ上で両掘削攪拌手段をより接近させる方が好ましいからである。また、各装置構造では、両掘削攪拌手段の間隔が固定であるため、貫入工程において上段の外軸側掘削攪拌手段が設計深さに達するまで貫入、つまり下段の内軸側掘削攪拌手段の高さ寸法に相当する分だけ設計深さより深く掘削しなければならない。しかも、攪拌混合作用としては、安定材の均一混合を図る上で安定材用吐出部を内軸側掘削攪拌手段とともに外軸側掘削攪拌手段の方にも付設することが好ましいが、図10のように安定材を内軸側から導出する構造だと、外軸側掘削攪拌手段を構成する攪拌翼形状が同図のような形状に制約されたり、内軸側掘削攪拌手段との間の間隔を任意に設定できない。
【0007】
本発明の目的は、以上のような課題を全て解消するとともに、特に掘削作用及び攪拌混合作用として、地盤の硬さや性状などに応じてより最適な掘削攪拌条件を容易に実現できる地盤改良装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1の本発明は、互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造の駆動軸と、前記駆動軸を昇降させる昇降手段と、前記外軸の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段と、前記内軸の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段と、前記駆動軸に沿って設けられた安定材用の供給通路と、前記供給通路に接続されて安定材を吐出する吐出部とを備え、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に前記安定材を前記吐出部より吐出し攪拌混合する地盤改良装置において、前記内軸側掘削攪拌手段は前記内軸の下端側に固定された径小翼部及び該径小翼部に突設された掘削ビットを有し、前記外軸側掘削攪拌手段は前記外軸の下端側に固定されたアーム形の径大翼部及び該径大翼部に突設された掘削ビットを有し、前記外軸側掘削攪拌手段及び内軸側掘削攪拌手段は高さ調整手段により互いの上下間隔が調整されて前記径大翼部と前記径小翼とを離接可能となっていることを特徴としている。ここで、アーム形の径大翼部とは、図10のようなリング又は円筒形の径大翼部を除く意味である。径大翼部や径小翼部は、径大翼部が径小翼部に比べて相対的に長くなっている程度の意味である。
【0009】
以上の本発明においては次のように具体化されることが好ましい。
(ア)、前記内軸側掘削攪拌手段の径小翼部は略螺旋状であり、前記外軸側掘削攪拌手段の径大翼部は前記径小翼部の少なくとも上側部分を内側に収容可能な空間を持つ形状(例えば、水平板部及び縦板部の構成)であり、前記高さ調整手段は前記内軸上端側と前記外軸上端側との間に介在されたピストン式シリンダーを有している(請求項2)。
(イ)、前記供給通路は、前記内軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた前記吐出部に安定材を送る第1供給通路、及び前記外軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた前記吐出部に安定材を送る第2供給通路を少なくとも備えているとともに、前記第2供給通路は、前記内軸の外周に通じている内軸径方向通路部と、前記内軸と前記外軸との間に設けられて前記内軸径方向通路部を挟んだ上下のシール部材で区画されている周囲導出溜め部と、前記周囲導出溜め部から前記外軸の外周に通じている外軸径方向通路部と、前記外軸径方向通路部と対応する前記吐出部とを接続している接続部とを有している(請求項3)。
【0010】
請求項4の本発明は、以上の発明を方法から捉えたもので、互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造の駆動軸と、前記駆動軸を昇降させる昇降手段と、前記外軸の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段と、前記内軸の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段と、前記駆動軸に沿って設けられた安定材用供給通路と、前記供給通路に接続されて安定材を吐出する吐出部とを備え、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に前記安定材を前記吐出部より吐出し攪拌混合する地盤改良方法において、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を調整する高さ調整手段を有しており、前記駆動軸を前記昇降手段を介して地盤中に下降する貫入工程と上昇する引き抜き工程とで、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を前記高さ調整手段により変えることを特徴としている。なお、この構成は、例えば、貫入工程では外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段とが高さ調整手段を介して離間状態とされ、引き抜き工程では外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段とが高さ調整手段を介して接近状態とされることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、図9や図10の従来構造に比べ、外軸側掘削攪拌手段及び内軸側掘削攪拌手段が高さ調整手段により互いの上下間隔を調整可能であるため、地盤の硬さや地盤性状に応じてより最適な掘削や攪拌を実現できるようにする。これは、例えば、外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を地盤の硬さにより変更して掘削力を適正に分散したり、外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を貫入工程に比べて引き抜き工程において小さくして土壌の共廻り防止作用をより確実に得られるようにして、より均一な攪拌混合を実現可能なことからも明らかである。
【0012】
請求項2の発明では、例えば、径小翼部が螺旋状であるため掘削性にも優れ内軸側掘削攪拌手段の掘削に必要な駆動力を小さくし易く、大径翼部が径小翼部の少なくとも上部分を内側に収容可能なため外軸側掘削攪拌手段及び内軸側掘削攪拌手段を高さ調整手段により上下間隔を小さくすべく接近したときに両掘削攪拌手段を一体的なものとして作用し易く、高さ調整手段が公知のピストン式シリンダーであるため経費を抑えて実施できる。
【0013】
請求項3の発明では、安定材用の供給通路として、内軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた吐出部に安定材を送る第1供給通路、及び外軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた吐出部に安定材を送る第2供給通路を備えている点で図10の装置構造と同じであるが、第2供給通路が周囲導出溜め部及び外軸径方向通路部を有しているため外軸側掘削攪拌手段の径大翼部形状や吐出部の設置高さや位置に規制されず、設計自由度が得られる。
【0014】
請求項4の発明では、貫入工程と引き抜き工程とで外軸側掘削攪拌手段と内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を高さ調整手段を介して変更することにより、掘削に伴う問題(例えば、外軸及び内軸の各駆動モーターなどに加わる負荷を小さくしたり変動を抑えたり、垂直掘削を如何に維持するか)と、攪拌混合に伴う問題(例えば、土壌の共廻りを防いで土壌と安定材との均一な攪拌度合いを如何に実現するか)に的確に対処して、地盤の硬さや性状に応じてより最適な掘削及び攪拌混合を実現できようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は地盤改良装置の全体を示し、図2及び図3は駆動軸の下側を示し、図4は駆動軸の上側を示し、図5は径大翼部と径小翼部の他の例を示す変形例1、図6及び図7は外軸側掘削攪拌手段の吐出部に通じる安定材用の供給通路を示す変形例2、図8は地盤改良方法の手順を示している。以下の説明では、装置構造、図5の変形例1と2、図6及び図7の変形例3、図8の地盤改良方法の順に詳述する。
【0016】
(装置構造)図1と図2において、この地盤改良装置は、走行式ベースマシン1と、ベースマシン1で移動可能に起立された支持リーダ2と、支持リーダ2の一側に沿って上下動される昇降装置3と、互いに反転される内軸5と外軸6との二重構造からなるとともに昇降装置3により昇降される駆動軸4と、外軸6の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段20と、外軸6の下端より突出して内軸5の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段10と、駆動軸4の内軸5に沿って設けられた安定材用の供給通路15と、供給通路15の下端に接続管16を介して接続されて安定材を吐出する吐出部17とを備え、駆動軸4を昇降装置3により下降して地盤に貫入したり上昇して引き抜く過程で、外軸側掘削攪拌手段20と内軸側掘削攪拌手段10とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を吐出部17より吐出し攪拌混合するものである。なお、符号8は昇降装置3の昇降を補足するロープ等の吊り部材、符号9は支持リーダ2の下部に設けられて駆動軸4を揺れないようにする振れ止め部である。
【0017】
ここで、支持リーダ2は、ベースマシン1側の複数のバックステー7により起立保持されている。昇降装置3は、図4に示されるごとく前記した支持リーダ2に沿って移動可能に配設されている移動基体30と、移動基体30の上側部に設けられて内軸5を正逆回転する上駆動装置31と、上駆動装置31の下側に配設されて外軸6の上端側を保持して正逆回転する下駆動装置35と、上駆動装置31と下駆動装置35との間に介在されているピストン式の油圧シリンダー38と、上駆動装置31の上部に設置されているスイベル装置39などから構成されている。
【0018】
このうち、移動基体30は、支持リーダ4の一側上下に配設されたラック状レールに沿って昇降される。上駆動装置31は、そのケーシング32が移動基体30に連結されており、ケーシング32上に保持されているモーター33と、ケーシング32内に設けられてモーター33の出力軸側と内軸5の上端側とを作動連結している不図示のギア機構などを有している。下駆動装置35は、そのケーシング36が移動基体30に対し摺動自在にガイドされる関係となっており、ケーシング36上に保持されているモーター37と、ケーシング36内に設けられてモーター37の出力軸側と外軸6の上端側とを作動連結している不図示のギア機構などを有している。油圧シリンダー38は、複数が用いられ、各本体を上駆動装置側のケーシング32の対応部に係止し、各ロッド38aの先端を下駆動装置側のケーシング36の対応部に係止している。スイベル装置39は、地上側に用意される材料溜め部からポンプにより圧送される安定材を上駆動装置31に保持・回転されている内軸5の内側上下方向に配置されている供給通路15(図2を参照)の上側入口に供給可能にするものである。
【0019】
すなわち、この構造では、外軸6が下駆動装置35に吊り下げ支持された状態で、油圧シリンダー38のロッド38aを伸縮することによって、内軸5に対する高さ方向の位置が調整可能となっている。そして、この例では、図3に示したように、外軸6の掘削攪拌手段20と内軸5の掘削攪拌手段10との上下間隔Lが油圧シリンダー38のロッド伸縮量に対応して50cm〜100cmの範囲で調整されるよう設定されている。なお、本発明の高さ調整手段としては、この構造に限定されず、例えば外軸6又は下駆動装置側のケーシング36に対し内軸5を油圧シリンダー等で上下動する構成であってよい。
【0020】
一方、内軸側掘削攪拌手段10は、図2や図3に示されるように、内軸5の下端側に固定された径小翼部11と、該径小翼部11の下端側に突設された複数の掘削ビット12と、径小翼部11の下面側に設けられた吐出部17などを有している。なお、図2の下側円内には径小翼部を下から見上げた状態を模式的に示している。ここで、内軸5は、円筒形で、供給通路15が内側上下方向に必要数だけ配置されるとともに、下端が閉じられている。径小翼部11は、概略螺旋状の翼体からなり、内軸5の下部周囲に接合されている。各掘削ビット12は、その螺旋状翼体の下側縁部にあって、内軸中心側から外側に向けて並置した状態で接合され、先端が径小翼部11より下向きに突出されている。吐出部17は、径小翼部11の下面に取り付けられるとともに、接続管16を介して供給通路15に連結されており、安定材が供給通路15から接続管16を介して導入された後、所定角度で掘削土中に噴射可能にする。なお、この例では、吐出部17として、安定材を圧縮気体に同伴して強力に噴射可能にする混合エジェクター(特許第3416774号や特許第3622903号等を参照)を想定している。このため、供給通路15も安定材用及び圧縮気体用として複数設けられている。但し、安定材の種類や供給及び吐出構造については、地盤改良条件などにより適宜変更可能なものである。
【0021】
外軸側掘削攪拌手段20は、図2や図3に示されるように、外軸6の下端側に固定された下段の径大翼部21と、該径大翼部21の下端側に突設された複数の掘削ビット23と、長さが径大翼部21とほぼ同じくしている上段の径大翼部22などを有し、また径大翼部21と径大翼部22との間に設けられた共廻り防止板25を有している。なお、図3の下側円内には径大翼部21を側面側から見た状態(内軸5の下端側を省略した)を模式的に示している。また、本発明の外軸側掘削攪拌手段としては、図8の例のごとく上段の大径翼部22や共廻り防止板25を省略してもよい。
【0022】
ここで、外軸6は、内軸5を回転自在に挿通し、かつ内軸5に挿通した状態で相対的に軸方向へ摺動可能な円筒形からなり、下端が内軸5との間から土などが不用意に入り込まないよう処理されている。下段の大径翼部21は、水平板部21a及び斜め下側へ延びている縦板部21bからなり、外軸6の周囲に対し略180度変位した箇所に対応する大径翼部21の水平板部21aがそれぞれ接合されており、全体として概略コ形状となっている。各掘削ビット23は、その縦板部21bの下側縁部に接合され、先端が縦板部21bより下向きに突出されている。また、上段の径大翼部22は、矩形板状であり、外軸6の周囲に対し略180度変位した箇所に対応端がそれぞれ接合されている。付言すると、以上の大径翼部21,21と大径翼部22,22は外軸6に対し異なる向き、水平板部同士を近づけたときXの関係に配置されている。また、下段の大径翼部21,21は、図3の下図から推察されるように、縦板部21bが水平板部21aの突出端から外軸6と所定距離を保ち、かつ斜め下方向に突出されている。この形状は、縦板部21bの下向き傾斜角に応じて地盤に対する掘削ビット23(及び縦板部の下端)の貫入と掘削性を良好にし、かつ、掘削土を縦板部21bの斜め上向面に沿ってかき揚げるようにし、それにより良好な掘削効果を得られるようにする。また、そのことで掘削(切り込み)部のみの抵抗で掘削性を向上し掘削抵抗も小さくできる。
【0023】
これに対し、共廻り防止板25は、外軸6の外周に回転自在に嵌合され、かつ上下ストッパー26a,26bで上下動が規制されている筒体24に突設されている。そして、この共廻り防止板25は、径大翼部21,22の最大径より少し長くなっていて、土壌中に貫入された後は土等の抵抗を受けるため外軸6の回転によっても静止しており、それによって土壌が径大翼部21,22の回転に伴って共廻りする動きを制止する。
【0024】
( 変形例1)図5(a)は外軸側掘削攪拌手段20を構成している径大翼部21の変形例を示している。この径大翼部21は、水平板部21aに突設したリブ27a,27b,27cと、縦板部21bに突設したリブ27dとを有している。各リブ27a〜27bは水平板部21aや縦板部21bの表面側に設けられている。このうち、リブ27aとリブ27bは略コ形からなり、それぞれ複数個が水平板部21aの上縁と下縁を挟み込んだ状態に接合されている。リブ27cは水平板部21aの上下略中間部に縦配置で接合されている。リブ27dは縦板部21bに対し上下方向の向きで接合されている。以上のようなリブ27a〜27bは、例えば、径大翼部21の回転状態において、土壌などが縦板部21b及び水平板部21aの傾きに沿って斜め上へ送られてきたとき、各リブでその送られてきた土の塊を分断したり攪拌混合作用を促進することができる。
【0025】
( 変形例2)図5(b)は内軸側掘削攪拌手段10を構成している径小翼部11の変形例を示している。この径小翼部11は、各螺旋状の翼体に対し上記したリブと同じ目的で複数のリブ14a,14bを接合し、同時に傾斜途中に開口13を追加している。このうち、リブ14aは、各螺旋状の翼体の上縁部に複数接合されており、例えば、土壌が螺旋状に沿って上へ移送されてきたとき分断して落下し易くする。リブ14bは、開口13の上側に接合されており、例えば、土壌が螺旋状に沿って移送されてきて開口13を通り過ぎる直前で分断したり開口13など落下し易くする。開口13は、例えば、土壌が螺旋状に沿って移送されてきたときこの開口から落下し易くする。以上の変形例1と2は、比較的簡単な構成により攪拌混合作用を大きく促進できることが確認されている。
【0026】
(変形例3)図6及び図7は外軸側掘削攪拌手段20側に専用の吐出部17aを設ける場合で、外軸6から突出している内軸5側から安定材を供給できないようなときに有効な構造例である。すなわち、図6及び図7の構造は、図2や図3に対し外軸側掘削攪拌手段20を構成している上段の径大翼部22にも吐出部17aが設けられているとともに、内軸15の内側に配置されている供給通路15と吐出部17aとを接続している点で異なっている。すなわち、この供給通路15は、内軸5の内側に合計4つ(15a〜15c)が設けられており、そのうち、供給通路15a,15bが前述した内軸側掘削攪拌手段10に対応して設けられた吐出部(図2の吐出部17に類似する吐出部又は一般的な吐出部)に接続管16などを介して接続され、供給通路15cが吐出部17aに後述する構成にて接続される。供給通路15dは予備用に設定されている。つまり、この変形例では、供給通路15a,15bが請求項3の第1供給通路に相当し、供給通路15cが請求項3の第2供給通路に相当している。なお、図面上は、内軸5が柱状となっているが、実際は下側対応部だけを柱状にしそこに供給通路15a〜15cを形成したり、筒形内に供給通路15a〜15c用の管を保持材などを介して装着することになる。
【0027】
また、第2供給通路15cは、図7(a)に示されるように、内軸径方向通路部5aと、周囲導出溜め部18と、外軸径方向通路部6aと、吐出部17aとを接続している接続管16aとを有している。このうち、内軸径方向通路部5aは第2供給通路15cの下端側から内軸5の外周に貫通されている。周囲導出溜め部18は、内軸5と外軸6との間に設けられて、内軸径方向通路部5aを挟んだ上下のシール部材19,19で区画されている。周囲導出溜め部18の全寸Mは、上記した外軸6の掘削攪拌手段20と内軸5の掘削攪拌手段10との上下間隔Lを調整するため、例えば油圧シリンダー38を介して内軸5に対し外軸6を最大まで上又は下動したとき、内軸径方向通路部5aが周囲導出溜め部18から外れることがないよう設定される。外軸径方向通路部6aは周囲導出溜め部18から外軸の外周に貫通されている。接続管16aは外軸径方向通路部6aと対応する吐出部17aとを接続している。
【0028】
以上のような構造では、外軸側掘削攪拌手段20の任意の位置に専用の吐出部17aを設けることができ、特に、第2供給通路15cが周囲導出溜め部18及び外軸径方向通路部6aを有しているため吐出部17aの設置高さや位置に規制されないようにし、径大翼部22の高さや形状的にも規制されない点で優れている。そして、この構造は、例えば、図9の構造に適用すると、外軸側掘削攪拌手段18側にも吐出部を設けそこから安定材を同図の掘削攪拌手段18の攪拌混合軌跡内に噴射できることから、より均一な攪拌混合が実現されることになる。
【0029】
(地盤改良方法)図8は以上のような地盤改良装置を用いて地盤改良するときの一例を模式的に示している。なお、図8に示した地盤改良装置は、図1〜図4の装置を基本としているが、外軸側掘削攪拌手段20が上段の大径翼部22及び共廻り防止板25を省いて簡略化されている。また、この種の地盤改良方法では、手順として駆動軸4を下降する貫入工程と上昇する引き抜き工程とに大別される。また、安定材の吐出時期は、地盤性状などに応じて、貫入工程又は引き抜き工程、貫入工程及び引き抜き工程と言うように色々なパターンが採用される。この例では安定材を引き抜き工程だけで吐出する。図8中、2本の線の箇所が安定材を吐出し原位置土と攪拌混合したことを示している。
【0030】
まず、貫入工程に際しては、外軸側掘削攪拌手段20と内軸側掘削攪拌手段10とが上記した油圧シリンダー38を介して設計値まで離間された状態に調整される。その状態から、外軸6と内軸5は、対応する上下駆動装置31,35により反転駆動されて、所定の深さまで貫入操作される。この貫入工程では、内軸側掘削攪拌手段10の径小翼部11及び掘削ビット12で先行掘削し、次に外軸側掘削攪拌手段20の径大翼部20及び掘削ビット23でその掘削された箇所の外側を掘削することになる。この掘削態様では、例えば、地盤が通常より硬い場合でも、外軸側掘削攪拌手段20と内軸側掘削攪拌手段10との上下間隔を油圧シリンダー38を介して離間することで、最適な掘削状態、例えば、全体の掘削力やモーター33,37に加わる負荷を適正に分散できる。
【0031】
引き抜き工程に際しては、外軸側掘削攪拌手段20と内軸側掘削攪拌手段10とが油圧シリンダー38を介して設計値まで接近された状態に調整される。この例では、外軸側掘削攪拌手段20の大径翼部21の内側に内軸側掘削攪拌手段10の径小翼部11がほぼ収容されるまで接近される。また、外軸6と内軸5は貫入とは逆向きに反転駆動される。同時に、上記したように安定材が吐出部17等から吐出される。すると、安定材は、径小翼部11と径大翼部20との反転作用と、それによる共廻り防止作用等により原位置の掘削土と効率よく攪拌混合される。このため、この地盤改良方法では、効率的な掘削と効率的な攪拌混合が実現されることになる。
【0032】
なお、本発明は、以上の形態に限られるものではなく、請求項1や4で特定する要件を除いて種々変形したり展開可能なものである。例えば、径小翼部については図10や図10のような形状にしたり、外軸及び内軸の外周には必要に応じて図10に示されるようなスクリューを付設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明形態の地盤改良装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の装置として駆動軸下側の構成を示す要部模式図である。
【図3】図2の外・内軸側掘削攪拌手段同士の上下間隔を小さくした模式図である。
【図4】(a)と(b)は図1の駆動軸上側の高さ調整手段等を示す模式図である。
【図5】(a)と(b)は図2の径大翼部と径小翼部の変形例を示す模式図である。
【図6】安定材用の吐出部を径大翼部側に追加した構成例を示す模式図である。
【図7】(a)は図6のA−A線に沿った模式拡大断面図、(b)は(a)のB−B線に沿った模式拡大断面図である。
【図8】上記地盤改良装置を簡略化した状態で地盤改良を行う手順例を示す図である。
【図9】特許文献1に開示の地盤改良装置を示す説明図である。
【図10】特許文献2に開示の地盤改良装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
3…支持リーダー
3…昇降装置(30は移動基体、31は上駆動装置、35は下駆動装置)
4…駆動軸
5…内軸
6…外軸
10…内軸側掘削攪拌手段(11は径小翼部、12は掘削ビット)
15,15a〜15b…供給通路
16,16a…接続管(接続部)
17,17a…吐出部
20…外軸側掘削攪拌手段(21は大径翼部、23は掘削ビット)
22…上段の大径翼部
25…共廻り防止板
38…油圧シリンダー(高さ調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造の駆動軸と、前記駆動軸を昇降させる昇降手段と、前記外軸の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段と、前記内軸の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段と、前記駆動軸に沿って設けられた安定材用の供給通路と、前記供給通路に接続されて安定材を吐出する吐出部とを備え、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に前記安定材を前記吐出部より吐出し攪拌混合する地盤改良装置において、
前記内軸側掘削攪拌手段は前記内軸の下端側に固定された径小翼部及び該径小翼部に突設された掘削ビットを有し、
前記外軸側掘削攪拌手段は前記外軸の下端側に固定されたアーム形の径大翼部及び該径大翼部に突設された掘削ビットを有し、
前記外軸側掘削攪拌手段及び内軸側掘削攪拌手段は高さ調整手段により互いの上下間隔が調整されて前記径大翼部と前記径小翼とを離接可能となっていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記内軸側掘削攪拌手段の径小翼部は略螺旋状であり、前記外軸側掘削攪拌手段の径大翼部は前記径小翼部の少なくとも上側部分を内側に収容可能な空間を持つ形状であり、前記高さ調整手段は前記内軸上端側と前記外軸上端側との間に介在されたピストン式シリンダーを有している請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記供給通路は、前記内軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた前記吐出部に安定材を送る第1供給通路、及び前記外軸側掘削攪拌手段に対応して設けられた前記吐出部に安定材を送る第2供給通路を少なくとも備えているとともに、
前記第2供給通路は、前記内軸の外周に通じている内軸径方向通路部と、前記内軸と前記外軸との間に設けられて前記内軸径方向通路部を挟んだ上下のシール部材で区画されている周囲導出溜め部と、前記周囲導出溜め部から前記外軸の外周に通じている外軸径方向通路部と、前記外軸径方向通路部と対応する前記吐出部とを接続している接続部とを有している請求項1又は2に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造の駆動軸と、前記駆動軸を昇降させる昇降手段と、前記外軸の下端側に設けられた外軸側掘削攪拌手段と、前記内軸の下端側に設けられた内軸側掘削攪拌手段と、前記駆動軸に沿って設けられた安定材用供給通路と、前記供給通路に接続されて安定材を吐出する吐出部とを備え、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段とを反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に前記安定材を前記吐出部より吐出し攪拌混合する地盤改良方法において、
前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を調整する高さ調整手段を有しており、前記駆動軸を前記昇降手段を介して地盤中に下降する貫入工程と上昇する引き抜き工程とで、前記外軸側掘削攪拌手段と前記内軸側掘削攪拌手段との上下間隔を前記高さ調整手段により変えることを特徴とする地盤改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−75255(P2008−75255A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252339(P2006−252339)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】