説明

埋立地仕切り護岸

【課題】 廃棄物埋立地の仕切り護岸において、列設したケーソンに対して所定の間隔をおいて遮水壁を構築するに際して、その遮水壁での遮水処理を良好に行い得て、不透水層としての処理を確実なものとする。
【解決手段】 ケーソン11を設置した列の内面側に遮水壁を構築して、海洋構造物1を構築するに際して、矢板部材等を用いた遮水壁15での遮水処理部で、ジョイント部の空間内部に対して観察用窓部や熱電対20を配置し、遮水材の充填を検知するとともに、観察用窓部25の開口26から内部の水等を排除させながら、充填物を施工することで、内部に隙間等が生じない遮水層を構築できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物や一般廃棄物を埋め立て処分するために、外海と区画する遮水性の堤体として構築し、区画の内部に投棄する廃棄物から滲出する汚水を封じ込めるための仕切り護岸に関し、矢板を列状に立設して構築した矢板壁のジョイント部に遮水処理を施して、遮水壁としての性質を良好に発揮可能な埋立地仕切り護岸に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物を海面埋め立て処分するために、予定された海面埋立地を区画する護岸を立設・構築して、外海と遮断した埋め立て処分場を構築し、その処分場として区画された範囲内に廃棄物を投棄している。前記仕切り護岸としては、鋼(管)矢板式護岸、ケーソン式護岸、捨石式護岸等が知られている。前記廃棄物の埋め立て処分場を区画する仕切り護岸から、処分場内で廃棄物に接触して汚染された保有水が、外海に浸出しないようにするために、仕切り護岸の本体に対して、もしくは、別に独立させて構築する壁部分に対して、遮水処理を施すことが行われている。さらに、処分場を構築する区域の周辺の海底地盤に対して、または、埋立地側の地盤に対しても、必要に応じて遮水処理を行うことにより、海底地盤の隙間等を通って、汚れた水が流出することを防止することが要求されている。
【0003】
前述したような遮水処理を施した護岸を構築するために、従来より、遮水シート工法の他に、主に鋼管矢板や他の任意の断面形状の矢板等の、鋼材を用いた鋼製矢板を列状に打設もしくは埋設する等の手段を用いて、区画することが行われている。いる。なお、以下に説明する本発明においては、前記矢板類の打設または埋設を総称して「立設」と呼んで説明するが、前記立設という表現には、大型のアースオーガー等の掘削機により掘削し、その孔を利用して鋼製矢板を構築すること、または鋼製矢板を振動や衝撃を加える手段等を用いて、打ち込み・打設する方式等の、従来より鋼製矢板を打設する工法を含むものである。前述したような従来例においては、隣接させて鋼製矢板を立設することにより、壁状に構築する矢板等の間で、その継手部材が係合もしくは嵌合する部分に空間部を設けて、その空間部にアスファルト混合物やモルタル、その他の充填材を充填して、遮水壁を構成している。そのように構成したことで、鋼管矢板の継手の部分で、遮水性能を発揮可能な遮水材を充填して、漏水を防止できるものとされる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−151630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例においては、鋼管パイルを列状に立設して遮水壁を構築するに際して、そのパイル等の両側部に雌雄形状の継手部材を設けて、前記継手部材を組み合わせて遮水部を構成している。ところが、前記遮水部の空間部に対して、アスファルト混合物やモルタル、粘土、その他の遮水材を充満させる方法では、継手部に十分に大きな断面積を有する空間部を形成しておかないと、遮水材を完全に充填することが困難である。それに対して、従来より、大きな断面積を継手部に形成する空間部の断面積を、特別に設計して大きなものとして構成したものを用いることのほかに、継手部に充填する遮水材として、特に流動性を向上させたアスファルト混合物を用いる等の手段を講じて、遮水層に隙間が生じたりすることがないようにしている。
【0005】
前記矢板自体の構造の問題の他に、矢板のジョイント部に対して上から遮水材を投下して充填するに際して、充填される遮水材が塊状のものとなり、その塊が断面全体を塞ぐような状態で、ジョイント部内部を落下することがある。そのように、遮水材が塊のままでジョイント部内を落下するときに、そのジョイント部の空間の下部に溜まっている滞留水は、遮水材の塊によって押えられた状態となり、水とともに泥等がジョイント部の底部にそのまま残留して、遮水材が充填されない空間が残り、遮水性能が良好に発揮されないという不都合な状態が残る。前述したように、遮水材が隙間なく充填されることを検知することと、ジョイント部内部に滞留水が残される等の問題が解決されなければ、遮水壁の性能を良好なものとすることができないのである。
【0006】
本発明は、廃棄物海洋処分場を区画するために、埋立地仕切り護岸に設ける遮水壁を、矢板のジョイント部に遮水材を隙間なく充填して、埋立地を外洋と遮断する性能を、長期間に亘って維持可能にする工法に関する。そして、前記仕切り護岸に対して、その遮水構造を容易でしかも安価に施工し、遮水性を良好に発揮できる工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、予定された廃棄物埋立て処分場を区画するために、海岸に沿ってまたは任意の海域に構築する埋立地仕切り護岸に関する。
請求項1の発明は、予定された廃棄物埋立て処分場を区画するために、海岸に沿ってまたは任意の海域に構築する埋立地仕切り護岸であって、前記埋立地仕切り護岸は、外海と前記処分場を区画する護岸本体と、前記護岸本体に対して所定の間隔をおいて処分場側に立設する遮水壁と、を組み合わせて構築し、前記遮水壁は、前記護岸本体の処分場側に所定の間隔を持たせて、海底地盤の不透水性地層にまで矢板の先端部を根入れ・立設して列状に構築する矢板壁と、前記矢板壁を構成する矢板のジョイント部に遮水材を充填して、遮水性を向上させるよう構築することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認する手段を、観察用窓部を用いた目視による確認手段で構成することを特徴とする。
請求項3の発明は、前記矢板壁により構築する遮水壁において、前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認するために、温度を検知する手段を、前記空間部の所定の位置に設置して構成することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認する手段として、観察用窓部を用いた目視による確認手段と、温度を検知する手段としての熱電対を用いた検知手段を組み合わせて設けて、複数の検知手段により検知する機構を構成することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、前記矢板壁により構築する遮水壁において、前記矢板のジョイント部に観察用窓部を設けるに際しては、前記矢板壁の一方の側の壁に、任意の位置に1つ、または高さを変えて複数の観察用窓部を設け、前記ジョイント部の空間部に充填する遮水材を、前記観察用窓部を用いて目視確認しながら構築することを特徴とする。
請求項6の発明は、前記矢板壁のジョイント部の壁に設ける1つまたは複数の観察用窓部には、その各々にキャップを着脱可能に設けて、観察用窓部を開閉可能なものとして構成し、前記観察用窓部をジョイント部に充填する遮水材の確認に使用するとともに、前記ジョイント部に充満している滞留水を排水する孔として用いて、遮水構造を構築することを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、前記ジョイント部の内部空間に温度を検知する手段を設けて、遮水材の充填を確認するために用いる検知手段は、ジョイント部内部を満たしている滞留水と充填される遮水材との温度差を検知して、遮水材が充填されたことを検知するものであって、前記熱電対をジョイント部の空間の任意の高さの位置に保持して、充填される遮水材によるジョイント部内部の温度の変化を検知して、遮水材が充填されたことの情報を得ながら構築することを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、前記観察用窓部を用いた検知手段と、温度を検知する手段とを併用して設けて、前記矢板のジョイント部内部に遮水材が充填される状態を検知しながら、遮水壁を構築することを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、前記矢板壁のジョイント部に充填する遮水材として、アスファルト混合物を用い、前記アスファルト混合物をジョイント部の開口部の上部から投入して、ジョイント部の内部空間に堆積・充満させるようにして、遮水壁を施工することを特徴とする。
請求項10の発明は、前記矢板壁のジョイント部に充填する遮水材として、
コンクリート系の材料のように、従来より遮水材として使用されている材料、または、海成粘土にベントナイトおよび流動性を確保する添加物を混合して作成した材料、を用いて構築することを特徴とする。
【0014】
前述したように、埋立地仕切り護岸の処分場側の遮水壁を、遮水性能を良好に発揮可能な直立遮水壁として構成することにより、処分場側で廃棄物と接して汚染された水が、外海に流出することを防止できる。前記護岸本体においては、ケーソンを列状に並べて堤体として用いることの他に、矢板を列設した矢板壁として構築することも可能である。例えば、鋼製矢板を1列または2列に立設して、前記鋼製矢板のジョイント部の内部空間もしくは、側面に設ける空間に対して遮水処理を施して構築することで、強固な埋立地仕切り護岸の遮水壁を構成することが可能となる。また、前記遮水壁を矢板壁と遮水材を組み合わせて構築することにより、従来工法での弱点であった鋼製矢板のジョイント部での遮水処理が施され、埋立地仕切り護岸の信頼性を向上させることができる。
【0015】
前述したように、矢板のジョイント部での遮水材の充填状態を確認する手段を、複数組み合わせて用いて、鋼製矢板による遮水壁の状態を良好に構築できるようにしている。また、遮水材の充填状態の検知のために、温度の検知手段を用いる場合には、熱電対を用いることが容易ではあるが、その他に、任意の温度検出手段を用いることが可能である。前記温度検出手段を用いることは、特に、遮水材としてアスファルト混合物を用いる場合には、有効な手段である。さらに、熱電対や観察用窓部を併用して用いることで、遮水材が充填される状態を、より正確に確認することもできて、遮水壁をより良いものとして構築することができることにもなる。
【0016】
その他に、遮水壁を鋼製矢板または鋼管矢板、もしくはコンクリート製のような自立可能な矢板類、樹脂製もしくは木製のような仕切り部材としての性質を発揮する材料を、単独でもしくは鋼製矢板と任意に組み合わせて用いることも可能となる。さらに、前記矢板を立設して連続する矢板壁を構築した後で、2列に構築する前記矢板壁の間の空間、もしくは、前記矢板のくはジョイント部の空間部の各々に遮水材を充填できる。前記充填する遮水材として、アスファルト混合物または土質系の遮水材、コンクリート系の遮水材もしくは遮水性を発揮可能な他の物質のいずれか1つ、または、前記任意の遮水材を用いることができる。そして、前記複数種類の遮水材を用いる場合には、遮水壁の高さ方向に、または縦方向に層状になるように複合させるように打設して、充填することが可能である。したがって、前記矢板類と遮水材とを任意に組み合わせて用いることによって、遮水層の構築を施工現場の条件に合わせて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図示する例にしたがって、本発明の埋立地仕切り護岸を説明する。図1に示す埋立地仕切り護岸1の構造は、従来より一般に用いられている護岸の構造を基本として説明するもので、前記埋立地仕切り護岸1は、廃棄物埋め立て地を区画するための堤体として構築される。前記埋立地仕切り護岸1を構築する海底地盤2に対しては、例えば、その地盤の上部が砂地等の透水性地層であったとすると、その海底面2a上に粘土等の水を通さない性質を有する土を、盛上げ土層4として所定の厚さで堆積させる。その後に、その盛上げ土層4から地盤2の土とに対して、地盤改良処理を施工するが、そのために、任意の遮水性を発揮させるような材料を掘削した土と混合して、海底地盤中に所定の深さまで不透水層となるようにする処理を行う。
【0018】
なお、前記盛上げ土層を設けるか否かにかかわらず、護岸を構築する海底地盤の性質を不透水性を発揮できるものとするために、改良層5として地盤改良する工事を施工することもある。その場合には、従来より海底地盤に対する遮水処理を施す場合と同様に、アースオーガー等の大型の機器類を搭載する工事用の船舶を用い、1列または複数列状に縦孔を隣接させるようにして、列状に掘削しながら、地盤改良材を掘削した土に混合し、壁状の遮水層を構築する。前記遮水壁は1列もしくは複数列構築して、各遮水壁の列での遮水性を各々確保させるようにする。そして、前記アースオーガーを用いて掘削した土を、遮水性を持たせるような処理を連続して行う等の、従来より一般に採用されている改良層の構築工法を使用して、遮水性を発揮可能な壁を施工することが可能である。
【0019】
前記海底地盤を改良層として構築する範囲は、ケーソン等を立設するための基礎捨石層の構築範囲から、埋立地側にも所定の範囲で追加して施工し、改良層5として構築する。前記改良層5の上側に設ける基礎捨石層7は、所定の範囲と高さを有するものとして構築され、その上面にはケーソン11を列状に立設して、護岸本体10を構築している。さらに、前記基礎捨石層7の海側の表面には、大きな石を並べた被覆石層8を構築して、基礎捨石層7を構築する小さい捨石等が、波浪や海流等の影響を受けて流されないように、保護することも、従来の護岸一般の例と同様にして行われる。
【0020】
前記埋立地仕切り護岸1において、前記護岸本体10の内海側もしくは処分場側(廃棄物埋立地側をいう)に、裏込石層12を構築するが、前記裏込石層12としては、砂利等の良質な材料を積み重ねて形成し、その上面に防砂シート13を敷設してから、上部に汚れていない砂等を堆積させた保護層12aを構築して表面を保護する。なお、前記護岸本体10として立設するケーソン11は、コンクリートケーソン、鋼製のケーソン本体の表面にコンクリートを被覆した、いわゆるハイブリッドケーソンの他に、大型のコンクリートブロック等を用いて構成できる。そして、前記ケーソンの継ぎ目の部分に遮水処理を施して、外洋と埋立地とを区画する遮水壁としての性質を、良好に発揮させるようにした造物本体を構築する。
【0021】
前記裏込石層の構築と平行して、前記護岸本体10から所定の距離をおいて、自立式の矢板壁15を立設または構築する。前記矢板壁15としては、任意の断面を有する矢板類を列状に打設して構築するものであり、裏込石層12から地盤改良層6を貫通させて、海底地盤中に所定の深さまで貫入させるように構築する。前記遮水壁15を構築するに際して用いる工法は、後述するように、鋼製矢板等の任意の矢板類を打設する等の手段を用いて立設し、1列の壁状の遮水壁としてに構築することと、前記鋼製矢板の継ぎ目の部分の内部空間に対して、遮水材を充填することによって、遮水性を良好に発揮できる壁として構築する。
【0022】
さらに、前記矢板壁15の内側に沿わせて、遮水シート16等を配置すると、矢板壁15と組み合わせた遮水シート16により、遮水性を発揮可能な二重の遮水壁として構築することができる。なお、前記矢板壁15の下部の海底面2aに位置する部分には、アスファルト混合物のブロック17を構築して、前記遮水シート16の下端部を押さえて保持させるともに、海底地盤との境界部での遮水性を、より良好に発揮させるような処理を行うこともできる。さらに、前記ブロック17の側部には、任意の大きさのアンカーブロック17aを構築し、地盤と遮水材との境界部での遮水作用を、安定させるように維持させるが、これらのブロックや遮水手段に用いる材料と、ブロックの断面形状は特に限定されるものではない。
【0023】
前記図1に示す埋立地仕切り護岸において、矢板壁15を図2に示すように、ボックス状鋼矢板31、31a……を列状に隣接させて打設し、各ボックス状鋼矢板31……の端部に設けた34……を、順次接続するように構築する。前記ボックス状鋼矢板31……としては、両側に所定の間隔をおいて平行に位置させた側板32…の間に、2枚の中板33を直角に配置した断面形状を有するものとされている。つまり、このボックス状鋼矢板31……では、中央部に形成したボックス形状の空間部に対して、その両側の側板を延長して設け、その延長部の端部にジョイント用の接続部を形成したものである。
【0024】
前記ボックス状鋼矢板を用いて遮水壁30として構築するに際しては、オーガーで掘削した孔に立設するか、またはハンマーで打設する等の手段を用いて列設する。そして、前記矢板の両側の接続部材34……で接続される部分には、ジョイント部35……がそれぞれ形成される。そこで、前記ジョイント部35に形成される内部空間に対して、アスファルト混合物やその他の遮水材36を充満させる処理を行い、ジョイント部分での遮水性を良好に発揮できるようにしている。
【0025】
前記図2に説明したような遮水壁において、ジョイント部35に対してアスファルト混合物や、その他の遮水性質を有する材料を遮水材36として用いるが、それを充填するに際して、その遮水材36の内部に空気が混入したり、水が残って空間部が内部に形成されたりすることがある。それは、ジョイント部35の断面形状が狭いものであったり、遮水材の流動性が不足する等の理由によると考えられる。いずれにしても、前述したような問題が起きることは、ジョイント部35の内部空間に、前記遮水材36が十分詰められていない状態が発生することとなり、そのような空間が遮水材の内部に形成されていると、ジョイント部での遮水作用を良好に発揮できずに、欠陥を有する遮水層となる。
【0026】
前述したような遮水壁での欠陥を防止するために、次のような対処方法が考えられるもので、それを列挙すると、
(a):数量検収を厳密に管理する方法。 これは、遮水材を充填するジョイント部の容積に対して、実際に打設した遮水材の量を確認して、計算した数字上で充填状況を把握し確認する。
(b):熱電対を用いた確認方法。 この方法では、遮水材が充填されることで、空間内部での温度が変化することを検知するものであり、特に、遮水壁を構築する現場の水温と、遮水材の温度との差が大きいほど、検知が容易に行われる。
(c):ジョイント部の上下方向に一定の間隔をおいて、インスペクションアイ(監視用窓部)を設けておき、前記監視用窓部としての開口から、水や泥等が排出される状況を観察するとともに、その後に遮水材が出てくる状態となることを確認して、ジョイント部に遮水材が充満されたと判断する。
【0027】
以上の(a)〜(c)の方法のうち、1つまたは複数の観察方法を組み合わせて、ジョイント部に遮水材が充満されたことを観察する。
前記3つの観測方法のうち、(a)の遮水材の充填された数量の検収を厳格に行う方法は、特に面倒なことではないから、(b)、(c)に関して次に説明する。
なお、前記ジョイント部に充填する遮水材としては、従来より遮水壁での遮水材として用いられている材料を使用することができる。そして、その遮水材の流動性を調整して、ジョイント部に充填する遮水材として、アスファルト混合物の他に、モルタル、粘土の流動性を調整した混合物のように、従来より遮水壁での遮水材として用いられている材料を使用し、その遮水材の流動性を調整して使用することができる。
【0028】
図3に説明する遮水壁の例は、前記図2に説明したようなボックス状鋼矢板を、列状に打設して遮水壁15を構築し、そのジョイントのジョイント部35に対して、遮水材を充填したことを検知する方法を説明している。なお、この検知方法は、任意の矢板壁での充填材の充填されたことを検知するために用い得るもので、前記ジョイント部35に対して遮水材24を注入する工程で、遮水材24が十分に入り込んだか否かを、容易に検知できる方法を説明している。まず、前記(b)の熱電対を用いる方法では、ジョイント部35に対して上から熱電対20を吊り下げるようにして、所定の高さの位置に保持させて、ジョイント部内部の温度の変化を検知する。前記熱電対20としては、市販のものを利用することができるもので、熱電対20をケーブル21により保持し、ケーブルの上端部に接続したメーターにより、熱電対20をおいた位置での温度を検知できるようにする。
【0029】
前記熱電対を用いた測定方法では、例えば、遮水壁を構築する場所での、海水温度と遮水材の温度の差ができるだけ大きい場合には、有効に利用できるものとされる。そこで、アスファルト混合物を遮水材として用いて、ジョイント部に充填しようとする場合には、海水温が10℃程度の場合でも、アスファルト混合物との温度は100℃以上の差があることから、熱電対20を設置している高さの位置まで、遮水材24が充満されたことを容易に検知できるものとなる。前述したような理由から、このために使用する熱電対は、その感度が比較的ラフなものでも、十分にセンサとしての働きを発揮できることが期待できる。これに対して、モルタルやコンクリート等を遮水材として用いる場合には、打設する矢板壁の海水温度と遮水材との温度の差が小さいことがあるので、使用する熱電対としては、温度差を敏感に検知可能なものを用いる必要がある。
【0030】
前記熱電対を用いる方法とは別に、前記観測方法のうちの(c)の覗き監視用の窓部を用いる方法においては、遮水壁15の矢板の接続部に対して、その埋立地側の側面に窓を設けて、ジョイント部35の内部空間に、遮水材が充満されたことを確認する方法が用いられる。前記インスペクションアイ(監視用窓部)25においては、矢板の側部の任意の高さの部分に、適当な大きさの開口26を設けておき、その開口を使用しないときには、キャップ27を装着して閉じるようにする。
【0031】
そして、前記監視用窓部25を用いる場合には、遮水材をジョイント部35の上から投入する際には、その検知のために使用する高さの開口26に対して、キャップ27を外しておき、充填する遮水材24が開口26から溢れ出ることを確認してから、前記キャップ27を閉じるようにする。なお、前記開口を閉じるためのキャップとしては、ネジ込み方式や、その他の固定手段を用いることができるものであり、海中での作業に容易に対応可能な任意の固着方式を選択できる。
【0032】
前記遮水材をジョイント部に充填する方法を用いる場合には、ジョイント部の上部から投入する遮水材によって、ジョイント部35の下部に入っている水が、前記観察用窓部の開かれた開口から順次押し出されるようにして排出されるので、内部に水が残ったりすることはない。また、前記遮水材に気泡や水が塊状に入っている場合でも、縦に長いジョイント部に対して、その高さ方向に所定の間隔を介して、複数の開口を設けておくことで、ジョイント部の下部から十分に遮水材を充満させることが可能である。前記監視用窓部用の窓(開口)26から、遮水材が溢れ出る状態を観察するためには、その開口部分に対して監視用の水中カメラを配置することや、潜水作業員が直接目視する等の手段を用い、遮水材が充満されていることを確認してから、キャップを閉じるようにすれば良い。
【0033】
前述したように、遮水材がジョイント部内部に充填されることを、前記観察用窓部としての監視用窓部を利用して観測する場合には、遮水材がジョイント部の内部に充填された状態を、直接目視で監視することができるものとなる。その他に、最も大事なことであるが、前記ジョイント部が比較的狭い開口面積(断面積)を有するものであるときに、アスファルト混合物のように粘性の大きい(流動性の低い)ものを注入すると、その遮水材が塊状(ブロック)となって、ジョイント部の断面を塞いでしまう状態で流下してしまい、遮水材のブロックが下部の水を上に逃がさないように密封してしまうことがある。
【0034】
前述したような不都合が発生したときでも、実施例に示されるように、ジョイント部の下方部分にも、観察用窓部の開口が形成されていることで、遮水材に押し潰されるように加圧される時でも、その空間内部の空気や水が、前記観察用窓部5の開口26から押し出されるようにして排出される。したがって、従来の遮水材の打設方法を用いる場合のように、塊状になって落下する遮水材により下部の空気や水等が、ジョイント部の壁と遮水材との隙間から上に逃げ出すことができない状態となっても、ジョイント部の下部に設けている開口(窓部)から押し出されて、容易に排出されることになる。
【0035】
前述したようにして、観察用窓部を利用して、遮水材の充填の補助手段として用いる場合には、できるだけ遮水壁の下部の部分で、または矢板の根入れ部の近傍(海底面に近い位置)に開口を設けておくと、ジョイント部の下部に溜まっている滞留水と土砂とを、容易に排出することができる。さらに、最下部の開口に対して、その上部に一定の間隔で開口26……を複数設けておくと、狭い断面積のジョイント部分であったとしても、遮水材を隙間なく詰め込むことができる。
【0036】
また、従来の遮水壁を構築する工法においては、矢板の接続部で、アスファルト混合物を充填する前に、充填する空間内部に入り込んでいる土砂を含んだ水とともに、エアーリフト等の技術を用いて排除しておく等の前処理を、十分に行っておく必要があった。これに対して、本実施例で説明したように、ジョイント部の下部に、観察用窓部を設けて用いる場合には、遮水材を充填する空間内部を無理して清掃する必要がなくなる。つまり、上部から投入される遮水材により、ジョイント部の内部の水が押し下げられて、下部の開口から水と泥等が排出されることになるので、前記開口の上部の土砂等も容易に排出されることになる。
【0037】
前記図2に説明したように、ボックス状鋼矢板を用いて構築する埋立地仕切り護岸の他に、埋立地仕切り護岸としては、図4以降に説明するような、各種の断面形状を有する矢板類を用いて、遮水壁を構築することができて、その矢板壁の間のジョイント部に対して遮水材を充填した遮水処理を行うことができる。そして、前記ジョイント部の断面積が小さいものほど、前記図3に説明したような、ジョイント部の内部の水等を遮水材により押し出すようにして排出させることで、内部空間に対して遮水材を隙間なく詰め込むことができるものとされる。
【0038】
図4に示す例において、遮水壁40は略U字状の断面を有する矢板を用い、2つの矢板間の接続部を、1つのジョイント部としてでカバーするように、中継ぎ板で囲って構築している。この例では、ジョイント部の内部空間に、遮水材を充填することによって、遮水性を良好に発揮可能な壁として構築されるものである。前記図4に説明する遮水壁40において、壁の凹凸が交互に形成されるように、U字型の溝の向きを変えて打設される矢板部材41、41a……では、矢板部材41の両側の2つの接続部42、42aを、凹部の内側からカバーするように中継ぎ板45を配置して、その矢板部材と中継ぎ板により囲まれる大きな断面のジョイント部44を形成する。そして、前記ジョイント部44に対して遮水材を充満させることによって、接続部材を含む部分に対する遮水性を、良好に発揮できるような処理を施すことができる。
【0039】
前記矢板部材41、41aを用いた遮水壁の実施例において、中継ぎ板45は任意の厚さを有する平板状の板を用いて構成し、その中継ぎ板45の両端部に細長い板を取り付ける等の処理をした挿入部46、46aとする。そして、溝を露出した矢板部材41に対して、その両側の矢板部材の外面部に設けた被挿入部47、47aの各々に、前記挿入部を挿入して固定することで、矢板部材と中継ぎ板により囲まれたジョイント部44を形成することができる。前記被挿入部47、47aとしては、スリットを対向させて設けた形状等に構成する受部に対して、細長い形状の板の両側を挿入させることで、矢板部材に対する中継ぎ板を固定・保持する作用を良好に発揮させることができる。
【0040】
前記図4に説明した遮水壁の他に、図5に示すように、L字状の断面を有する矢板部材51、51a……を連接させて打設し、遮水壁50を構築することができる。前記図5の実施例において、矢板部材51……の各接続部分に対して、その壁の一方の側に、遮水材を充填する空間を設けたジョイント部を形成して、前記空間部に遮水材を充填して、遮水性を良好に発揮できるようにする。前記接続部材52、52a、52b……の各々に対して、その両側部分に円弧状に形成された中継ぎ板55、55a……を各々配置するが、前記各中継ぎ板55……の両側端部には、縦の細長い形状の挿入部56……を固定して取り付け、前記接続部の両側部分には、被挿入部57……をそれぞれ配置している。そして、前記中継ぎ板55の両側で挿入部を被挿入部に挿入して固定することによりジョイント部54を形成し、そのジョイント部54……の各々に対して遮水材を充填することにより、遮水性能を良好に発揮させることが可能となる。
【0041】
前記図4、5に説明した遮水壁40、50のそれぞれにおいても、遮水材を充填する作業の効率を向上させるとともに、隙間なく遮水材を充満させるために、前記実施例で説明したように観察用窓部を設けると良い。つまり、前記中継ぎ板を囲む板部材としての中継ぎ板45、55に対して、任意の高さの位置に、1つまたは複数の監視用の窓部としての開口を設けておき、その開口部から内部の水や泥等を排出させるとともに、ジョイント部の上部から遮水材を投入して内部空間を隙間なく塞ぐようにして、隙間が生じないように遮水層を形成するような作業を行う。したがって、前記矢板部材の接続部に形成されるジョイント部が、比較的断面積の小さいものであったとしても、または、遮水材の流動性が良くないものであったとしても、ジョイント部に対する遮水材の充填作業を良好に行わせることが可能となる。
【0042】
なお、前記遮水材を充填するに際しては、観察用窓部を用いて監視するとともに、熱電対を併用すること、および、中継ぎ板の容積に対する遮水材の充填量を計算する手法を同時に併用することができる。そして、前述したようにして、遮水材を隙間なく充填したことを容易に確認できて、遮水層を形成する作業の信頼性を、より向上させることが可能となる。前記図5に説明した例においては、略クランク形状またはL字状等の断面を有する矢板部材51、51a……を、接続部52……を介して各々接続させるように、海底地盤に打ち込んで遮水壁50を構築しているものを説明している。
【0043】
前記矢板類を用いて遮水壁を構築することの他に、近年は大径の鋼管パイルを用いた遮水壁を構築することも行われている。図6に説明する遮水壁60の例においては、大径の鋼管パイルを列状に立設して、遮水壁を構築する例を説明しているもので、前記鋼管パイル61、61a……を、順次立設するようにして遮水壁60を構築する。前記鋼管パイルは、数mの直径を有するパイプを用いるものであるが、本実施例に示す例では、大径の鋼管パイル61、61a……に対しては、その接続部材として、小径パイプ63、63aのような接続手段をパイルの側部に固定して取り付けている。また、遮水材を充填して遮水層を構築するために、前記小径パイプによる接続部に対して、その側部には中継ぎ板を取り付けることによる接続手段をも設けている。
【0044】
前記大径の鋼管パイルを用いた遮水壁60の例においては、鋼管パイルの両側部分に、小径パイプ63、64をそれぞれ溶接する等の手段を用いて固着しておき、各小径パイプの所定の位置には、スリット63a、64a……をそれぞれ設けている。そして、前記小径パイプを組み合わせて接続部62を形成する際には、図示するように、一方の小径パイプのスリットに対して、対向する小径パイプを挿入するような状態で、組み合わせることができる。さらに、前記接続部62の側部では、各鋼管パイル61、61aに対して中継ぎ板65、65aを取り付けておき、その端部に設けた接続手段を組み合わせて、接続部材66を形成する。前記中継ぎ板に設ける接続材としては、矢板の接続手段のような、従来公知の接続手段を設けることができるもので、小径パイプを組み合わせた接続部62を形成すると同時に、前記中継ぎ板を組み合わせて接続する。
【0045】
そして、前記小径パイプと板部材との、2つの接続部材62、66を用いて区画される空間68の内部には、遮水材67を充填し、両者を一体化させた遮水処理部として構築する。前記ジョイント部68では、その断面積が非常に大きいものであるから、遮水材を充填した遮水層を構築することは非常に容易に行うことができる。これに対して、小径パイプを組み合わせた接続部62においては、図示されるように、3つの区画のそれぞれに遮水材を注入する必要があり、断面積の小さな空間に対して遮水材を隙間を生じさせずに、注入することが要求される。ところで、前記小径パイプを組み合わせた接続部62においては、小径パイプを組み合わせるためにスリットを設けているものであるから、例えば、流動性の良好な遮水材を用いると、内部の水をスリットから排出しながら遮水材が流下するので、前記観察用窓部を用いた方法と同様に、比較的容易に隙間なく遮水材を充填させることも可能である。
【0046】
図7に説明する例は、前記鋼管パイルを用いた遮水壁60と同様に、小径パイプを組み合わせた接続部62に対して、その側方に、円弧状の板部材65Aを用いた仕切り手段を設けている。前記中継ぎ板65Aの両端部を、鋼管パイル61、61aに設けた接続手段を介して取り付けているものであり、前記接続手段66A、66Bにより中継ぎ板65Aを保持することで、接続部材62との間に大きな断面積のジョイント部68を形成する。そして、前記ジョイント部68に対して遮水材を注入するとともに、小径パイプを組み合わせた接続部材62に対しても、遮水材を充填して、接続部での遮水性を良好に発揮できるようにしている。
【0047】
図8に示す例は、前記図2の例と同様に、矢板を列設して構築する遮水壁に対して、矢板間のジョイント部に遮水材を充填して、遮水壁として構築する例の応用例を説明している。この例では、図9にも説明されているように、矢板31、31a……を列状に隣接させて打設し、各ボックス状鋼矢板31……の端部に設けた接続部材34……を、順次接続するように構築している。前述したようにして構築する遮水壁30において、接続部材34……で接続される空間部35には、遮水材36を充満させて、接続部分での遮水性を良好に発揮できるようにする処理を行っていることは、前述の通りである。なお、前記図8および図9に示す例は、ジョイント部に遮水材を充満させて、より信頼性を発揮可能な遮水壁を構築するに際して、必要に応じて、以下に説明する方法を採用し得ることを説明している。
【0048】
前記図8、9に説明したようにして構成する遮水壁において、ジョイント部35に対してアスファルト混合物等の遮水材36を充填するに際して、その遮水材36を内部空間に充満させるために、空間部の下部にまで達するように、補助パイプ70を立設して設けている。前記補助パイプ70としては、できるだけ大径のパイプを用いると良いと考えられるものであるが、その接続部の空間の大きさに合わせて、適当な径のパイプを選択して用いるようにする。そして、ジョイント部35の断面形状が狭いものであったり、遮水材の流動性が不足する等……の理由により、前記遮水材36がジョイント部35の内部に十分詰められていない状態が発生することを防止できるようにする。前述したような問題を解決できない場合には、ジョイント部に残っている泥水等が、遮水材の中に取り込まれて残ることがあり、遮水材が充填されるべき空間の内部に異物が存在すると、ジョイント部での遮水作用を良好に発揮できずに、欠陥を有する遮水層となる。
【0049】
前記図8、9に示すように、ジョイント部に遮水材を充填する際に用いる補助パイプ70としては、任意の径を有するパイプ状のものを用いることができるもので、例えば、プラスチック性のパイプ、または金属製のもの等を用いても良い。前記補助パイプ70は、矢板のジョイント部の空間に立設して、その上端部分を下方に折り曲げるようにして、ジョイント部の空間の下部から押し出される泥水等を排除する役目を負担する。前記ジョイント部にアスファルト混合物のような遮水材を充填するに際して、空間部の上からアスファルト混合物を投入した時に、その混合物がブロック状になって、空隙部を塞ぐ状態で落下することが考えられる。そのような事態が発生したとしても、アスファルト混合物のブロックの下部に残っている泥水等の滞留水は、補助パイプ70を通って上部に押し出されて排出される。したがって、その排出された泥水を観察すると、矢板のジョイント部に滞留している泥水の状態が、排水に含まれる固形物や水の色、その他の状態を目視することでから容易に観察できるものとなる。
【0050】
前述したように、任意の径のパイプをジョイント部の内部に立設して設け、前記ジョイント部の内部空間に滞留している滞留水を、ジョイント部の上部から排出させる手段を設けることで、遮水材の充填効率を向上させることができる。つまり、前記ジョイント部の上から遮水材を充填する際に、ジョイント部内部で落下する遮水材が塊状となり、水が上昇する隙間がない状態でも、ジョイント部内部の滞留水を前記パイプを通して排出させることで、下部の水等がパイプを通して容易に排出される。
【0051】
また、前記パイプを用いた排水手段を用いる場合には、前記ジョイント部の内部空間に滞留している滞留水を、ジョイント部の上部から排出させるに際して、その排水を観察することで、遮水材が充填される状態を容易に観察することが可能となる。さらに、前記排水パイプと、前記ジョイント部の側部の所定の位置に設ける観察用窓部や、温度の観察手段等を組み合わせて、複数の遮水材の充填を確認する手段を用いる場合には、より正確に遮水材の充満される状態の観察ができる。
【0052】
前記ジョイント部内部に立設して設けるパイプは、前記ジョイント部の内部に遮水材が充填された後で引き抜いて除去し、ジョイント部の空間内を遮水材で満たして遮水壁を構築することが可能である。また、前記パイプを引き抜かずに、そのまま遮水材の中に残しておくと、その後の遮水層の状態の観察にも供することができるもので、前記パイプの中を中空状態のまま維持できるようにしても良い。そして、前記遮水層の中に残しておいたパイプに汚れた水等が侵出されて、遮水層の信頼性が損なわれたと判断される場合には、容易に対処策を講じることができる。
【0053】
なお、前述したように、観察用窓部を設けて遮水材の充填される状態を、窓部から観察する場合と同様に、図9に説明したように補助パイプ70を立設し、ジョイント部の上部から投入される遮水材が溢れて、補助パイプ70を通して排出されることを、上から確認することも可能となる場合が考えられる。そのような観察手段を用い得るとすれば、遮水材の流動性を良好なものとすることが要求されるが、例えば、粘土質の遮水材等を用いる場合には、不可能なことではない。さらに、ジョイント部の上部から投入する遮水材に対して、その投入位置よりも低い位置に、パイプの曲げ部71が位置されていて、開口部分がその下の部分に位置されると、内部の土砂等を排出する作用を良好に行わせることが可能となる。
【0054】
前述したように、図8、9に説明した例では、矢板や鋼管パイルを立設して遮水壁を構築するに際して、前記立設する矢板等のジョイントの部分で、遮水材による遮水処理を容易に行い得て、遮水材を隙間なく注入・充填できるような補助手段を用いるようにしている。前記遮水材を充填する際の補助手段としては、前述したように、充填した数量(ボリューム)を正確に検知することの他に、熱電対による検知手段を遮水材を充填する内部空間に配置して、中継ぎ板の内部での温度の変化を検知し、遮水材が充填されたことを確認させるようにする。さらに、前記各確認方法と併用して、または、独立させた検知手段としての観察用窓部を用いて、遮水材の充填状態を確認することで、遮水材を狭い空間に対しても隙間が生じないようにして充填できて、信頼性の良好な遮水層を形成することができるのである。
【0055】
なお、前記矢板や鋼管パイルを立設して遮水壁を構築するに際して、矢板類の接続部の中継ぎ板の断面積が大きくて、遮水材の量が非常に多くなる場合には、その遮水材の一部を、他の固形物で形成した補助充填物で代用することも可能である。前記補助充填物としては、コンクリートの塊や、適当な大きさの石、その他に、金属の塊等のように、遮水材による遮水作用に支障を与えることがないようなものを選んで、遮水材の中に挿入すると良い。そして、前記補助充填物を遮水材に組み合わせて使用する場合には、遮水処理部での性質に影響を与えることなしに、遮水材の使用量を減少させて、埋立地仕切り護岸の構築コストを低減させることを可能にする。
【0056】
その他に、遮水壁を構成するために、鋼製矢板または鋼管矢板、もしくはコンクリート製のような自立可能な矢板類、樹脂製もしくは木製のような仕切り部材としての性質を発揮する材料を、単独でもしくは鋼製矢板と任意に組み合わせて用い、その埋立地に適した護岸として構築することが可能である。さらに、前記矢板を立設して連続する矢板壁を構築した後で、前記矢板壁の間の空間と、前記矢板本体もしくはジョイント部の間の空間部の各々に充填する遮水材として、アスファルト混合物または土質系の遮水材、コンクリート系の遮水材もしくは遮水性を発揮可能な他の物質のいずれか1つ、または、前記任意の遮水材を層状に複合させて充填することも、前述したように可能である。そして、前記矢板類と遮水材とを任意に組み合わせて用い、遮水壁を構築することによって、遮水層の構築を施工現場の条件に合わせて行うことができる。
【0057】
なお、前記図1に示した護岸の例において、ケーソンを立設して構築する護岸の裏面側には、裏込め土を施工してから、その埋立て土の側の斜面部にも、遮水マット13やシートを敷設して、遮水性をより強固に発揮させるようにしている。このような遮水工は任意の構成を有する仕切り護岸に対しても適用が可能であり、そのように、斜面部に対しても遮水用のマットやシート等を敷設した場合にも、そのシートやマットの下端部にブロックのような押さえ部材を構築して、端部を固定すれば良い。そして、前記ケーソンの側面に沿わせて遮水シートを敷設する処理や、土の斜面部に対する遮水処理を組み合わせて施工することによって、遮水壁での遮水性をより良好に発揮させ、構造物を安定化させるようにすることができる。
【0058】
前述したようにして、ケーソンのような構造物を列状に設置して、仕切り護岸を構築するに際して、支持基礎となる海底地盤の透水係数を小さな値とするように、不透水性地盤改良工事を施工する。前記処理作業とともに、ケーソンの下部と前記支持基礎となる不透水性地盤改良部等の間には、アスファルト混合物を所定の厚さで構築することにより、遮水性を良好に発揮させることができる。そして、ケーソン下部と不透水性地盤改良部との間に、アスファルトマットを介在させて、隙間を生じない遮水層を構築することにより、遮水処理を容易に行い得て、仕切り護岸の信頼性を向上させることができる。また、前記護岸を構築する海底地盤が、透水係数の小さな岩盤である場合にも、据え付けるケーソンの基部と前記海底地盤の間に、アスファルト混合物を所定の厚さで構築する等の処理を施すことにより、遮水性を良好に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】海洋構造物の構成を示す説明図である。
【図2】遮水壁の構造の説明図である。
【図3】図1の遮水壁に設ける遮水材の検知手段の説明図である。
【図4】矢板を用いて構築する遮水壁の構成の説明図である。
【図5】図4とは異なる構成の遮水壁の説明図である。
【図6】鋼管パイルを用いて構築する遮水壁の説明図である。
【図7】図6とは異なる鋼管パイルを用いた遮水壁の説明図である。
【図8】ジョイント部で滞留水を排除する手段を用いる応用例の説明図である。
【図9】図8に示す例の側面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 埋立地仕切り護岸、 2 海底地盤、 5、6 地盤改良部、
7 基礎捨石層、 10 護岸本体、 11 ケーソン、 15 矢板壁、
16 遮水シート、 20 熱電対、
25 観察用窓部、 26 開口、 27 キャップ、
30、40、50、60 遮水壁、 31 ボックス状鋼矢板、
34 接続部材、 35 ジョイント部、 36 遮水材、
41、51 矢板部材、 43 接続部材、 45 中継ぎ板、
61 鋼管パイル、 62 接続部材、 63、64 小径パイプ、
65 中継ぎ板、 66 接続部材、 70 補助パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予定された廃棄物埋立て処分場を区画するために、海岸に沿ってまたは任意の海域に構築する埋立地仕切り護岸であって、
前記埋立地仕切り護岸は、外海と前記処分場を区画する護岸本体と、前記護岸本体に対して所定の間隔をおいて処分場側に立設する遮水壁と、を組み合わせて構築し、
前記遮水壁は、前記護岸本体の処分場側に所定の間隔を持たせて、海底地盤の不透水性地層にまで矢板の先端部を根入れ・立設して列状に構築する矢板壁と、
前記矢板壁を構成する矢板のジョイント部に遮水材を充填して、遮水性を向上させるよう構築することを特徴とする埋立地仕切り護岸。
【請求項2】
前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認する手段を、
観察用窓部を用いた目視による確認手段で構成することを特徴とする請求項1に記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項3】
前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認するために、
温度を検知する手段を、前記空間部の所定の位置に設置して構成することを特徴とする請求項1または2に記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項4】
前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に形成される空間部に対して、遮水材が充填されたことを確認する手段として、
観察用窓部を用いた目視による確認手段と、温度を検知する手段としての熱電対を用いた検知手段を組み合わせて設けて、複数の検知手段により検知する機構を構成することを特徴とする請求項3に記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項5】
前記矢板壁により構築する遮水壁において、
前記矢板のジョイント部に観察用窓部を設けるに際しては、
前記矢板壁の一方の側の壁に、任意の位置に1つ、または高さを変えて複数の観察用窓部を設け、
前記ジョイント部の空間部に充填する遮水材を、前記観察用窓部を用いて目視確認しながら構築することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項6】
前記矢板壁のジョイント部の壁に設ける1つまたは複数の観察用窓部には、その各々にキャップを着脱可能に設けて、観察用窓部を開閉可能なものとして構成し、
前記観察用窓部をジョイント部に充填する遮水材の確認に使用するとともに、
前記ジョイント部に充満している滞留水を排水する孔として用いて、遮水構造を構築することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項7】
前記ジョイント部の内部空間に温度を検知する手段を設けて、遮水材の充填を確認するために用いる検知手段は、
ジョイント部内部を満たしている滞留水と充填される遮水材との温度差を検知して、遮水材が充填されたことを検知するものであって、
前記熱電対をジョイント部の空間の任意の高さの位置に保持して、充填される遮水材によるジョイント部内部の温度の変化を検知して、遮水材が充填されたことの情報を得ながら構築することを特徴とする請求項4に記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項8】
前記観察用窓部を用いた検知手段と、温度を検知する手段とを併用して設けて、前記矢板のジョイント部内部に遮水材が充填される状態を検知しながら、遮水壁を構築することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項9】
前記矢板壁のジョイント部に充填する遮水材として、アスファルト混合物を用い、前記アスファルト混合物をジョイント部の開口部の上部から投入して、ジョイント部の内部空間に堆積・充満させるようにして、遮水壁を施工することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の埋立地仕切り護岸。
【請求項10】
前記矢板壁のジョイント部に充填する遮水材として、
コンクリート系の材料のように、従来より遮水材として使用されている材料、または、海成粘土にベントナイトおよび流動性を確保する添加物を混合して作成した材料、を用いて構築することを特徴とする請求項9に記載の埋立地仕切り護岸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−2554(P2007−2554A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184508(P2005−184508)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(594067368)ワールドエンジニアリング株式会社 (21)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【出願人】(000230711)日本海上工事株式会社 (25)
【Fターム(参考)】