説明

基地局装置、無線通信システムおよび周波数補正方法

【課題】周波数の絶対精度の高い発振器を備える必要がなく、かつ移動端末から送信される信号を用いずに、高い送信周波数精度を実現することができる基地局装置を得ること。
【解決手段】基準周波数信号を生成する発振器を備え、基準周波数信号に基づいて送信信号を生成する基地局装置であって、周辺の基地局装置から受信した受信信号に基づいて周波数偏差を求める周波数偏差計算部21−1〜21−Nと、周波数偏差に基づいて基準周波数信号を補正するための周波数補正量を求める周波数偏差推定部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車電話、携帯電話などのような移動端末を含む無線通信システムにおける基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基地局装置は、高い送信周波数精度を達成するために、周波数の絶対精度の高い発振器を使用して、送信信号を生成している。周波数の絶対精度の高い発振器は、価格が高い上に、部品として大きく、基地局装置のコスト増加と大きさの増大の要因となる。
【0003】
一方、周波数の絶対精度の低い発振器を使用して送信信号を生成すると、周波数の隣接する他のチャネルに信号が漏れてしまい、隣接するチャネルを妨害するという問題が発生する。
【0004】
また、下記特許文献1では、基地局装置が周波数の絶対精度の高い発振器を有しない場合に、送信周波数精度を向上させるために、予め定められた移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出して、自局の送信周波数を調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−295263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によれば、上述のように、周波数の絶対精度の高い発振器を使用すると、基地局装置のコストおよび大きさが増大する、という問題があった。また、周波数の絶対精度の低い発振器を使用すると、隣接するチャネルを妨害する、という問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の方法では、基地局装置が周波数の絶対精度の高い発振器を有しない場合に、移動端末の上り信号から抽出したクロック信号に基づいて送信周波数の精度を向上させている。そのため、基地局装置と無線通信を行なう移動端末のうちの少なくとも1つの移動端末を絶対精度の高い周波数信号を送信する移動端末とする必要がある、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周波数の絶対精度の高い発振器を備える必要がなく、かつ移動端末から送信される信号を用いずに、高い送信周波数精度を実現することができる基地局装置、無線通信システムおよび周波数補正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、基準周波数信号を生成する発振器を備え、前記基準周波数信号に基づいて送信信号を生成する基地局装置であって、自局以外の基地局装置である他基地局装置から受信した受信信号に基づいて、前記基準周波数信号と前記他基地局装置の基準周波数信号との周波数偏差を求める周波数偏差算出手段と、前記周波数偏差に基づいて前記基準周波数信号を補正するための周波数補正量を求める周波数偏差推定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基地局装置が、周辺の基地局装置が送信する共通の既知信号を用いて自局の発振器の周波数を補正するようにしたので、周波数の絶対精度の高い発振器を備える必要がなく、かつ移動端末から送信される信号を用いずに、高い送信周波数精度を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の基地局装置の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1のディジタル受信部の機能構成例を示す図である。
【図4】図4は、受信シンボル列とパスサーチ部が検出したタイミングの変更位置の一例を示す図である。
【図5】図5は、周波数偏差計算部が求めた周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k)の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2の基地局装置のディジタル受信部の機能構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態3の基地局装置のディジタル受信部の機能構成例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態4の無線通信システムの周波数帯の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる基地局装置、無線通信システムおよび周波数補正方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる無線通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように本実施の形態の無線通信システムは、基地局装置2−1〜2−6で構成される。基地局装置1は、基地局装置2−1〜2−6からそれぞれ端末向けに送信された信号を受信可能とする。なお、図1では、基地局装置1を含む合計の基地局装置の数が7台の場合を示しているが、基地局装置の台数は、これに限らず、何台で構成してもよい。
【0014】
図2は、本実施の形態の基地局装置1の機能構成例を示す図である。基地局装置2−1〜2−6については、基地局装置1と同様の構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。図2に示すように、基地局装置1は、アンテナ11,サーキュレータ12,アナログ受信部13,発振器14,ディジタル受信部15,ディジタル受信部16,ディジタル送信部17,アナログ送信部18で構成される。
【0015】
つぎに、基地局装置1の全体動作について説明する。発振器14は、所定の周波数の周波数信号(基準周波数信号)を出力する。アンテナ11が受信した高周波の受信信号は、サーキュレータ12を介してアナログ受信部13に入力される。アナログ受信部13は、発振器14から出力される周波数信号に基づいて受信信号をベースバンド信号へダウンコンバートし、さらに、ダウンコンバート後のベースバンド信号を利得調整し、利得調整後のベースバンド信号をアナログ/ディジタル変換によりディジタル受信信号に変換し、ディジタル受信信号を出力する。また、アナログ受信部13は、発振器14の出力する周波数信号に基づいてアナログ/ディジタル変換処理で用いるサンプリングクロックを生成する。
【0016】
ディジタル受信部15は、アナログ受信部13が変換したディジタル受信信号に対して復調処理、チャネルディコーディング、誤り訂正等のディジタル処理を行う。ディジタル受信部16は、アナログ受信部13が変換したディジタル受信信号に基づいて発振器14の周波数調整を行う。
【0017】
ディジタル送信部17は、基地局装置1が接続するネットワークから入力される送信データに対して符号化、チャネルコーディング、変調処理等を行い、ディジタル送信信号として出力する。アナログ送信部18は、ディジタル送信部17から出力されるディジタル送信信号を、ディジタル/アナログ変換によりアナログ送信信号に変換する。アナログ送信部18は、さらに、発振器14の出力する周波数信号に基づいて、アナログ送信信号をアップコンバートして高周波の送信信号としてサーキュレータ12経由でアンテナ11から送信する。また、ディジタル送信部17は、発振器14から出力される周波数信号に基づいてディジタル/アナログ変換処理のサンプリングクロックを生成する。
【0018】
本実施の形態の基地局装置1は、基準となる発振器14が出力する周波数信号の周波数を、周囲の基地局装置2−1〜2−6から送信される信号に基づいて調整する。そのため、周波数ずれの発生による周波数の隣接する他のチャネルへの信号の漏洩を防ぎ、隣接するチャネルを妨害してしまうという問題が発生しない。
【0019】
つぎに、本実施の形態の周波数調整方法について説明する。図3は、本実施の形態のディジタル受信部16の機能構成例を示す図である。なお、図3では、ディジタル受信部16の周辺の構成要素も図示しているが、説明を簡単にするため、サーキュレータ12を省略している。
【0020】
図3に示すように、ディジタル受信部16は、周波数偏差計算部(周波数偏差算出部)21−1〜21−N(Nは正の整数)と、周波数偏差推定部22と、で構成される。周波数偏差計算部21−1〜21−Nは、それぞれ同一の構成とする。また、周波数偏差計算部21−1〜21−Nは、それぞれが周辺の基地局装置2−1〜2−6ごとの処理を実施するため、Nは周辺の基地局装置の数以上とする。たとえば、図1の構成では、周辺の基地局装置の数は6台であるため、Nは6以上とする。周波数偏差計算部21−k(k=1,2,…,N)は、パスサーチ部(図中では、パスサーチ)31,逆拡散部32,周波数推定部33,レベル測定部34で構成される。
【0021】
受信した高周波の受信信号は、アンテナ11およびサーキュレータ12を経由してアナログ受信部13に入力される。アナログ受信部13は、受信信号を上述の処理によりベースバンドのディジタル受信信号に変換し、ディジタル受信部16へ出力する。
【0022】
ディジタル受信部16では、周波数偏差計算部21−kが、周辺の基地局装置2−kから受信した共通の既知信号(既知シンボルを含む信号)に基づいて、自装置との周波数偏差を計算する。なお、周辺の基地局装置2−1〜2−6は、共通の既知信号を送信していることとする。また、基地局装置2−1〜2−6から送信される信号には送信元の基地局装置2−1〜2−6を識別するため各基地局に割当てられた拡散コードにより拡散されており、その拡散コードに基づいて周波数偏差計算部21−kは、各々が処理を担当する基地局装置から送信された受信信号を処理する。
【0023】
つぎに、周波数偏差計算部21−kの動作について説明する。パスサーチ部31は、基地局装置2−kから送信された受信信号に含まれる既知シンボルを用いて、伝搬路で発生したマルチパスの各パスに対応した受信信号のタイミング(受信タイミング)を検出する。このタイミングの検出方法としては、たとえば、「石岡他著、“W−CDMA方式対応パスサーチLSI”(1999年電子情報通信学会総合大会B−5−12)」に記載されている方法等を用いることができる。
【0024】
なお、ここでは、説明を簡単にするため、パスサーチ部31が1つのパスを検出した場合について説明するが、複数のパスを検出した場合についても後述する処理を行うことにより対応することができる。
【0025】
逆拡散部32は、パスサーチ部31が検出したタイミングに基づいて、共通の既知シンボルに割り当てられた拡散コードを用いて受信信号に対して逆拡散処理を行い、受信シンボルを生成する。具体的には、たとえば、拡散率が256の場合、以下の式(1)に従って受信シンボルを生成する。
r(k,m)= Σ x(256×m+i)×CONJG(C(k,256×m+i))
…(1)
【0026】
なお、上記の総和Σは、i=1,2,…,256についての総和とする。CONJG( )はカッコ内の値の複素共役を表す。また、x(n)は、パスサーチ部31が検出したタイミングを基準としたチップレートでサンプリングした受信信号であり、nはサンプル番号を表す。C(k,i)は、共通の既知シンボルに割り当てられた基地局装置2−kの拡散コードであり、r(k,m)は、基地局装置2−kから送信されたm番目の受信シンボルである。
【0027】
周波数推定部33は、逆拡散部32が生成した受信シンボルを用いて、以下式(2)および式(3)に従って自局との周波数偏差の平均値を計算する。
Θ(k)= Σ arctan(r(k,m)×CONJG(r(k,m−1)))
…(2)
θ(k)= Θ(k)/M´ …(3)
【0028】
なお、上記の総和Σは、m=2,3,…,Mについての総和とする。また、後述のような位相偏差の不連続な変化がない場合にはM´=M−1である。Mは、平均化処理のために用いる位相偏差の数(受信シンボルの数)を示し、平均化処理のために適した十分大きな正の整数とする。arctan( )は複素数を極座標変換した際の角度を−π≦から<πで表す関数とする。また、Θ(k)は、基地局装置2−kに対応する位相偏差(基地局装置2−kから送信された信号に基づいて求めた自局との位相偏差)の総和を示し、θ(k)は、基地局装置2−kに対応する位相偏差の平均値を表す。
【0029】
ただし、上記式(2)および式(3)の計算の際に、パスサーチ部31が検出したタイミングの変更が発生した場合等には受信シンボルの位相偏差が不連続となるため、位相偏差が不連続に変化した受信シンボルについては処置対象から除く。図4は、受信シンボル列とパスサーチ部31が検出したタイミングの変更位置の一例を示す図である。受信シンボルr1〜rMで構成される受信シンボル列41を用いて位相偏差の平均値を求めるとする。この際、受信シンボルr10と受信シンボルr11の間でタイミング変更42が生じ、また、受信シンボルr29と受信シンボルr30の間でタイミング変更43が生じたとする。
【0030】
この場合、Θ(k)は、受信シンボルr10とr11の間の位相偏差および受信シンボル29と受信シンボル30の間の位相偏差を用いずに計算する。具体的には、以下の式(4)に従って求める。また、この場合は、上記式(3)の計算では、M´=M−3とする。
Θ(k) = arctan(r2×CONJG(r1))
+arctan(r3×CONJG(r2))

+arctan(r10×CONJG(r9))
+arctan(r12×CONJG(r11))

+arctan(r29×CONJG(r28))
+arctan(r31×CONJG(r30))

+arctan(rM×CONJG(rM−1)) …(4)
【0031】
なお、位相偏差に不連続な変化が生じたか否かは、総和を行なう前の各位相偏差を比較し、他の位相偏差との差が所定の値以上となるか否かにより判断してもよいし、パスサーチ部31が検出したタイミングの変更を検出して判断してもよい。
【0032】
レベル測定部34は、受信シンボルの電力を計算する。例えば、以下の式(5)に従って計算する。なお、P(k)は、電力(受信電力)を示し、下記の総和は、m=1,2,…,Mについての総和とする。また、| |2は複素数の絶対値の自乗を表す。
P(k)= Σ |r(k,m)|2 /M …(5)
【0033】
周波数偏差推定部22は、周波数偏差計算部21−1〜21−Nが求めた平均化された周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k)に基づいて、自局の発振器14の周波数補正量を計算する。周波数補正量の計算は、具体的には、たとえば、所定のしきい値以上となる電力P(k)に対応する周波数偏差θ(k)の平均値を求め、求めた値を推定周波数偏差とし、発振器14の補正量とする。この補正量は自局が、周辺の基地局装置とどれだけ周波数がずれていたかを表しており、この補正量に比例した値の分だけ発振器14の周波数を高くまたは低くする必要があり、補正量が0になるように調整する。発振器14の周波数の調整の方法はどのような方法を用いてもよいが、たとえば、補正量が0となるまで所定の値ずつ発振器14の周波数が高くなるよう補正していく(または低く)方法等がある。
【0034】
図5は、周波数偏差計算部21−1〜21−Nが求めた周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k)の一例を示す図である。図5では、周波数偏差計算部21−1〜21−Nごとに、各々が求めた周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k)とを示している。この場合は、周辺の基地局装置の数を7台とし、計算結果51〜57が、それぞれの基地局装置に対応する周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k)の組み合わせを示している。図5の場合、計算結果51〜57の電力P(k)がしきい値50以上となるのは、計算結果53,54,55の3つである。したがって、計算結果53,54,55の周波数偏差θ(k)の平均値を補正量とする。
【0035】
なお、ここでは、電力P(k)がしきい値50以上となる基地局装置2−1〜2−6の周波数偏差の平均値を補正量としたが、これに限らず、電力の大きい順に所定の個数の基地局装置2−1〜2−6を選択し、選択した基地局装置2−1〜2−6の周波数偏差θ(k)に基づいて補正量を求めるようにしてもよい。
【0036】
また、受信シンボルの電力P(k)がしきい値50より大きく、かつ受信シンボルの電力P(k)が最大となる基地局装置に対応する周波数偏差θ(k)を補正量としてもよい。また、受信シンボルの電力P(k)がしきい値50より大きい計算結果が存在しない場合は、発振器14の周波数偏差を補正しないようにしてもよい。
【0037】
また、受信シンボルの電力P(k)がしきい値50より大きい計算結果(図5の場合は計算結果53,54,55)の周波数偏差θ(k)を、以下の式(6)に示すようにP(k)を用いて重み付け加算して補正量を計算してもよい。
(P(1)×θ(1)+P(2)×θ(2)+P(3)×θ(3))
/(P(1)+P(2)+P(3)) …(6)
【0038】
また、本実施の形態では、周波数偏差計算部21−kが電力P(k)を求める機能、すなわち電力算出機能も備えるようにしたが、周辺の基地局装置ごとに電力P(k)を求める電力算出手段を別途設け、周波数偏差推定部22は、電力算出手段が求めた電力P(k)と周波数偏差計算部21−kが求めた周波数偏差θ(k)とを一組の計算結果として、上記と同様に補正量を求めるようにしてもよい。
【0039】
なお、以上の説明では、パスサーチ部31が検出するタイミングが1つの場合に限定したが、複数のパスが存在する場合は、パスごとに周波数偏差計算部を備えるようにし、パスサーチ部31が検出した各パスのタイミングごとに周波数偏差計算部がそれぞれ上記と同様の処理を行い、パスごとの計算結果(受信シンボルの電力P(k)および周波数偏差θ(k))を得るようにしてもよい。
【0040】
なお、以上述べた周波数偏差計算部21−1〜21−Nが周波数偏差を求める方法は一例であり、これに限らず、周波数偏差を求める方法としてどのような方法を用いてもよい。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、基地局装置1が、周辺の基地局装置2−1〜2−6が送信する共通の既知信号を用いて自局の発振器の周波数を補正するようにした。そのため、基地局装置1は、発振器14の周波数精度が低い場合にも、発振器14の周波数を補正することにより、周波数の絶対精度の高い送信信号を生成することができる。また、周辺の基地局装置2−1〜2−6からの送信信号を用いているため、移動端末から送信された信号を用いる必要が無く、周波数精度の高い移動端末を無線通信システム内に備える必要がない。
【0042】
実施の形態2.
図6は、本発明にかかる実施の形態2の基地局装置のディジタル受信部の機能構成例を示す図である。本実施の形態の基地局装置(基地局装置1aとする)の構成は、実施の形態1の基地局装置1のディジタル受信部16の代わりに本実施の形態のディジタル受信部16aを備える以外は、実施の形態1の基地局装置1と同様である。また、本実施の形態の無線通信システムの構成は、実施の形態1の基地局装置1を本実施の形態の基地局装置1aに代える以外は、実施の形態1の無線通信システムと同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0043】
ディジタル受信部16aは、周波数偏差計算部21a−1〜21a−Nと、周波数偏差推定部22aと、で構成される。周波数偏差計算部21a−1〜21a−Nは、それぞれ異なる基地局装置2−1〜2−6から受信した信号を処理する。周波数偏差計算部21a−kの構成は、実施の形態1の周波数偏差計算部21−kに逆拡散部35およびレベル(電力)比較部36を追加し、レベル測定部34を削除する以外は、実施の形態1の周波数偏差計算部21−kと同様である。パスサーチ部31、逆拡散部32および周波数推定部33の処理は、実施の形態1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0044】
周辺の基地局装置2−1〜2−6は、マクロ基地局装置のようにカバーする半径が大きい基地局装置である場合もあり、またフェムトセルなどカバーする半径が小さい基地局装置(小型基地局装置)である可能性もある。一般に、マクロ基地局装置では、発振器の絶対精度が高く、小型基地局装置では、発振器の絶対精度が低い。したがって、周辺の基地局装置2−1〜2−6のうち、発振器の絶対精度が高いと予想できる基地局装置を選択して、選択した基地局装置から送信された信号を用いて周波数偏差を求めると、精度よく自局の周波数の補正ができる。
【0045】
一方、カバーする半径が異なる基地局装置間では、同じ基地局装置から送信される異なるチャネル間(異なる周波数間)の電力比が異なることが考えられる。たとえば、マクロ基地局装置のようにカバーする半径を大きくする必要がある基地局装置は、報知チャネルなどの特定のチャネルの電力を大きめに設定する可能性がある。これに対し、小型基地局では、報知チャネルなど特定のチャネルの電力を小さめに設定される可能性がある。このような場合、実施の形態1で述べた既知シンボルが送信された信号の電力と、特定のチャネルの電力と、を比較すると、マクロ基地局装置では、報知チャネルなど特定のチャネルの電力に対する既知シンボルが送信された信号の電力比が小さくなる。したがって、このような電力比を用いることで、発振器の絶対精度が高い基地局装置を選択することができる。
【0046】
つぎに、本実施の形態の動作を説明する。逆拡散部35は、パスサーチ部31が検出したタイミングに基づいて、逆拡散部32の逆拡散処理に用いる拡散コードとは別のコードで多重されている特定のチャネルの逆拡散処理を行う。具体的な処理については、逆拡散部32と同様であり、逆拡散処理に用いるコードが異なるだけである。なお、逆拡散部35が逆拡散する特定のコードとしては、報知情報などの伝送に使用される特定のチャネルの送信処理で用いられるコードを使用する。
【0047】
レベル比較部36は、逆拡散部32と逆拡散部35がそれぞれ求めた受信シンボルの電力比を計算する。たとえば、以下式(7)に従って電力比H(k)を計算する。
H(k)= (Σ |r(k,m)|2)/(Σ |r´(k,m)|2) …(7)
【0048】
なお、上記の総和Σは、m=1,2,…,Mについての総和とする。また、r(k,m)は逆拡散部32の出力する受信シンボルとし、r´(k,m)は逆拡散部35の出力する受信シンボルとする。
【0049】
周波数偏差推定部22aは、周波数偏差計算部21a−1〜21a−Nからそれぞれ出力される、計算結果(周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力比H(k))に基づいて自局の発振器14の周波数補正量を計算する。たとえば、周波数偏差推定部22aは、上記のようにマクロ基地局装置で報知チャネルなどの特定のチャネルの電力が大きく設定されるシステムでは、電力比H(k)が最も小さい基地局装置をマクロ基地局装置として識別し、電力比H(k)が最も小さい計算結果に対応する周波数偏差θ(k)を用いて周波数補正量を求める。
【0050】
また、逆にシステム運用上、マクロ基地局装置の特定のチャネルの電力が既知信号の電力より小さく設定される場合は、電力比H(k)が最も大きい基地局装置をマクロ基地局装置と識別するようにすればよい。
【0051】
また、電力比に対する電力比しきい値を設けて、電力比しきい値より電力比が大きい基地局装置をマクロ基地局装置として判断する、または電力比しきい値より電力比が小さい基地局装置をマクロ基地局装置として判断してもよい。そして、マクロ基地局装置を判断した基地局装置が複数ある場合には、これらの基地局装置に対応する周波数偏差θ(k)の平均値を発振器14の補正量としてもよい。さらに、これらの基地局装置に対応する周波数偏差θ(k)を用いて実施の形態1の上記式(6)のように重み付けの平均により補正量を求めてもよい。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、特定のチャネルと既知シンボルとの電力比を用いて、マクロ基地局装置を識別して、識別した基地局装置の送信する信号に基づいて、自局の発振器の周波数を補正するようにした。そのため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、実施の形態1に比べさらに高い精度で自局の周波数補正を実施することができる。
【0053】
実施の形態3.
図7は、本発明にかかる実施の形態3の基地局装置のディジタル受信部の機能構成例を示す図である。本実施の形態の基地局装置(基地局装置1bとする)の構成は、実施の形態1の基地局装置1のディジタル受信部16の代わりに本実施の形態のディジタル受信部16bを備える以外は、実施の形態1の基地局装置1と同様である。また、本実施の形態の無線通信システムの構成は、実施の形態1の基地局装置1を本実施の形態の基地局装置1bに代える以外は、実施の形態1の無線通信システムと同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0054】
ディジタル受信部16bは、周波数偏差計算部21b−1〜21b−Nと、周波数偏差推定部22bと、で構成される。周波数偏差計算部21b−1〜21b−Nは、それぞれ異なる基地局装置2−1〜2−6から受信した信号を処理する。周波数偏差計算部21b−kの構成は、実施の形態1の周波数偏差計算部21−kに逆拡散部37および報知情報取得部38を追加する以外は、実施の形態1の周波数偏差計算部21−kと同様である。パスサーチ部31、逆拡散部32、周波数推定部33およびレベル測定部34の処理は、実施の形態1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0055】
実施の形態2では、電力比に基づいて、マクロ基地局装置を識別したが、本実施の形態では、周辺の基地局装置2−1〜2−6から送信される報知チャネルの信号に含まれる報知情報に基づいてマクロ基地局と小型基地局とを識別する。
【0056】
つぎに、本実施の形態の動作を説明する。逆拡散部37は、パスサーチ部31が検出したタイミングに基づいて、逆拡散部32の逆拡散処理に用いる拡散コードとは別のコードで多重されている報知チャネルに対する逆拡散処理を行う。具体的な処理については、逆拡散部32と同様であり、逆拡散処理に用いるコードが異なるだけである。
【0057】
報知情報取得部38は、逆拡散部37が求めた報知チャネルの受信シンボルから送信元の基地局装置の基地局識別情報を抽出し、その基地局識別情報に基づいて、たとえばマクロ基地局装置であるか小型基地局装置であるか識別を行い、識別結果を周波数偏差推定部22bへ出力する。なお、基地局識別情報とその基地局装置がマクロ基地局装置であるかの対応情報は、周波数偏差推定部22があらかじめ保持しておくこととする。なお、ここでは、マクロ基地局装置では周波数精度が高い発振器を備えると仮定しているが、これに限らず、周波数精度が高い発振器を備える基地局装置を識別するための対応情報をあらかじめ保持しておき、基地局識別情報とその対応情報に基づいて周波数精度が高い発振器を備える基地局装置であるか否かを判定し、周波数精度が高い発振器を備える基地局装置の位相偏差に基づいて補正量を求めるようにすればよい。
【0058】
また、送信元の基地局装置の基地局識別情報が報知情報のなかに存在しない場合等には、基地局装置の識別情報の代わりに、送信電力情報を受信シンボルから抽出してマクロ基地局装置であるか小型基地局装置であるかを識別するようにしてもよい。
【0059】
周波数偏差推定部22bは、周波数偏差計算部21b−1〜21b−Nが求めた計算結果(周波数偏差θ(k)と受信シンボルの電力P(k))と、報知情報取得部38から出力される識別結果と、に基づいて自局の発振器14の周波数補正量を求める。たとえば、マクロ基地局装置と識別した基地局装置に対応する周波数偏差θ(k)の平均値を周波数補正量として求めてもよい。また、マクロ基地局装置と識別した基地局装置の周波数偏差θ(k)のうち、最大の周波数偏差θ(k)を周波数補正量として求めるようにしてもよい。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、報知情報に含まれる基地局識別情報を用いて、マクロ基地局装置を識別して、識別した基地局装置の送信する信号に基づいて、自局の発振器の周波数を補正するようにした。そのため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、実施の形態1に比べさらに高い精度で自局の周波数補正を実施することができる。
【0061】
実施の形態4.
図8は、本発明にかかる実施の形態4の無線通信システムの周波数帯の一例を示す図である。送信周波数帯61は送信周波数帯を示し、補正用周波数帯62は発振器の周波数補正用の周波数帯を示している。本実施の形態の基地局装置の構成は、実施の形態1の基地局装置1の構成と同様である。また、本実施の形態の無線通信システムの構成は、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0062】
自局の送信信号と、周辺の基地局装置の送信信号が同じ周波数帯の場合、自局の送信信号を停止して他の基地局装置の送信信号を受信する必要がある。これに対し、本実施の形態では、送信周波数帯と異なる周波数帯の基地局装置の送信信号を用いて自局の発振器14の補正を行うことにより、自局の送信信号を停止することなく自局の発振器14の補正を行うことができる。この場合、たとえば、周辺の基地局装置2−1〜2−6が送信信号と異なる補正用周波数帯62で共通の既知シンボルを含む信号を送信するようにする。
【0063】
発振器14の周波数の補正方法は、実施の形態1〜3のいずれの方法を用いてもよい。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0064】
なお、図8の例では、発振器の周波数補正用の周波数帯が1つの場合を示しているが、発振器の周波数補正用の周波数帯として複数の周波数帯を利用して、実施の形態1〜3と同様の処理を行ってもよい。たとえば、周辺の基地局装置2−1〜2−6ごとに異なる周波数帯で送信される既知シンボルに基づいて、それぞれ実施の形態1〜3と同様の処理を行う。
【0065】
また、自局が通信を行う通信方式と、異なる通信方式の信号を用いて発振器14の補正を行うこともできる。この場合、アナログ受信部13は、アンテナ11およびサーキュレータ12経由で受信した通信用の通信方式で送信された信号をディジタル受信部15に出力すると同時に、通信用の通信方式とは異なる通信方式で送信された信号(補正用信号という)をディジタル受信部16に出力するようにする。たとえば、自局の通信方式として、LTE(Long Term Evolution)などの通信方式を用いる場合に、自局の発振器14の周波数の補正を行う通信方式としてW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)を用いることとし、W−CDMA方式で信号を送信する基地局装置からの送信信号を利用して周波数を補正するようにしてもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態では、自局が送信信号を送信している周波数とは異なる周波数を利用して、自局の発振器14の周波数の補正を行うようにした。そのため、自局の送信信号を停止させることなく、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、複数の周波数帯の基地局装置からの信号を利用することにより、自局の発振器補正に使用する基地局装置の信号の候補が増え、より精度の高い補正を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる基地局装置および通信方法は、移動端末を含む無線通信システムにおける基地局装置に有用であり、特に、周波数精度の低い発振器を備える基地局装置に適している。
【符号の説明】
【0068】
1,2−1〜2−6 基地局装置
11 アンテナ
12 サーキュレータ
13 アナログ受信部
14 発振器
15,16,16a,16b ディジタル受信部
17 ディジタル送信部
18 アナログ送信部
21−1〜21−N,21a−1〜21a−N,21b−1〜21b−N 周波数偏差計算部
22,22a,22b 周波数偏差推定部
31 パスサーチ部
32,35,37 逆拡散部
33 周波数推定部
34 レベル測定部
36 レベル比較部
38 報知情報取得部
61 送信周波数帯
62 補正用周波数帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準周波数信号を生成する発振器を備え、前記基準周波数信号に基づいて送信信号を生成する基地局装置であって、
自局以外の基地局装置である他基地局装置から受信した受信信号に基づいて、前記基準周波数信号と前記他基地局装置の基準周波数信号との周波数偏差を求める周波数偏差算出手段と、
前記周波数偏差に基づいて前記基準周波数信号を補正するための周波数補正量を求める周波数偏差推定手段と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記基準信号に基づいて生成した周波数に基づいて受信信号をダウンコンバートすることとし、
前記周波数偏差算出手段は、前記周波数偏差として、前記他基地局装置から受信したダウンコンバート後の受信信号の位相偏差を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記他基地局装置から受信した受信信号の電力を求める電力算出手段、
をさらに備え、
前記周波数偏差推定手段は、前記電力に基づいて前記他基地局装置から補正対象基地局装置を選択し、前記補正対象基地局装置に対応する前記周波数偏差に基づいて前記周波数補正量を求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記周波数偏差推定手段は、前記電力が所定のしきい値より大きい前記他基地局装置を前記補正対象基地局装置として選択する、
ことを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記周波数偏差推定手段は、前記電力が大きい順に所定の個数の前記他基地局装置を前記補正対象基地局装置として選択する、
ことを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記周波数偏差推定手段は、前記補正対象基地局装置に対応する前記周波数補正量の平均値を前記周波数補正量として求める、
ことを特徴とする請求項3、4または5に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記周波数偏差推定手段は、前記電力が所定のしきい値より大きく、かつ前記電力が最大となる前記他基地局装置を前記補正対象基地局装置として選択する、
ことを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記他基地局装置から受信した、報知情報を送信する特定信号と、前記特定信号と異なる拡散コードで拡散された前記他基地局装置から受信した送信号と、の電力比を算出する電力比較手段、
をさらに備え、
前記電力比に基づいて前記他基地局装置から補正対象基地局装置を選択し、前記補正対象基地局装置に対応する前記周波数偏差に基づいて前記周波数補正量を求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記周波数偏差推定手段は、前記電力比が最小または最大となる前記他基地局装置を前記補正対象基地局装置として選択する、
ことを特徴とする請求項8に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記周波数偏差推定手段は、前記電力比が所定のしきい値より大きい前記他基地局装置を前記補正対象基地局装置として選択する、
ことを特徴とする請求項8に記載の基地局装置。
【請求項11】
前記他基地局装置から受信した報知情報に基づいて所定の情報を取得する報知情報取得手段と、
前記周波数偏差推定手段は、前記所定の情報に基づいて前記他基地局装置から補正対象基地局装置を選択し、前記補正対象基地局装置に対応する前記周波数偏差に基づいて前記周波数補正量を求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項12】
前記周波数偏差推定手段は、基地局装置を識別するための基地局識別情報とその基地局装置が送信する信号の周波数精度が高いか否かを識別するための情報との対応を保持することとし、
前記所定の情報を、基地局装置を識別するための基地局識別情報とする、
ことを特徴とする請求項11に記載の基地局装置。
【請求項13】
前記所定の情報を、送信電力を示す送信電力情報とする、
ことを特徴とする請求項11に記載の基地局装置。
【請求項14】
前記周波数偏差算出手段は、自装置が送信に使用する周波数帯と異なる周波数帯で前記他基地局装置から受信した受信信号に基づいて前記周波数偏差を求める、
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項15】
前記周波数偏差算出手段は、自装置が通信に使用する通信方式と異なる通信方式で前記他基地局装置から受信した受信信号に基づいて前記周波数偏差を求める、
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の基地局装置である第1の基地局装置と、
自装置が送信した信号を前記第1の基地局装置が受信可能な第2の基地局装置と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項17】
基準周波数信号を生成する発振器を備え、前記基準周波数信号に基づいて送信信号を生成する基地局装置における周波数補正方法であって、
自局以外の基地局装置である他基地局装置から受信した受信信号に基づいて、前記基準周波数信号と前記他基地局装置の基準周波数信号との周波数偏差を求める周波数偏差算出ステップと、
前記周波数偏差に基づいて前記基準周波数信号を補正するための周波数補正量を求める周波数偏差推定ステップと、
を含むことを特徴とする周波数補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−114386(P2011−114386A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266443(P2009−266443)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】