説明

基地局装置

【課題】 アレイアンテナを用いた送信処理において送信指向性生成の処理量を効果的に削減すること。
【解決手段】 送信指向性生成部106は、到来方向推定部103が推定した到来方向に送信指向性を生成する。このとき、送信指向性生成頻度制御部105が距離推定部104にて推定された通信端末装置との距離に応じて送信指向性生成部106での送信指向性生成の頻度を変化させる。これによって、遠くに存在する通信端末装置に対しては低い頻度で送信指向性を生成すればよいので、その分、送信指向性生成の処理量を減らすことができ、回路の共用化によって用意する回路を削減できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル無線通信システムにおける基地局装置に関し、特にアレイアンテナを用いて送受信処理を行う基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局装置が送信し通信端末装置が受信する信号は、様々な信号による干渉を受けて受信品質の劣化が生ずる。この干渉を抑制し、通信端末装置において所望の信号のみを強く受信可能する方法として、アダプティブアレイアンテナを用いて送信する方法が知られている。アダプティブアレイアンテナを用いる送信方法では、基地局装置が送信信号に乗算する重み付け係数(以下、この重み付け係数を「ウェイト」という。)を調整して所望の方向に向かう指向性を形成し、所望の方向への送信信号を強くすることができる(例えば特許文献1)。
【0003】
図5は、アレイアンテナを用いて送受信処理を行う従来の基地局装置の構成例を示すブロック図である。図5に示す基地局装置500は、受信用のアレイアンテナを構成するN個のアンテナ素子501−1〜501−Nと、無線受信部502−1〜502−Nと、到来方向推定部503と、送信指向性生成部504と、送信ベースバンド部505と、無線送信部506−1〜506−Mと、送信用のアレイアンテナを構成するM個のアンテナ素子507−1〜507−Mとを備えている。
【0004】
次に、動作について説明する。図5において、N個のアンテナ素子501−1〜501−Nのそれぞれで受信された無線信号は、1対1の関係で設けられる無線受信部502−1〜502−Nに送られる。無線受信部502−1〜502−Nでは、それぞれ、受信された無線信号を自動利得増幅器にて増幅し、それをダウンコンバータにて中間周波数帯の信号に周波数変換し、直交検波器にて直交検波してI/Qチャネルのアナログベースバンド信号を取り出した後、A/D変換器にてディジタル変換したディジタルベースバンド信号を到来方向推定部503に出力する。
【0005】
到来方向推定部503は、各アンテナ素子のベースバンド信号を基に到来方向推定を行い、その推定結果を送信指向性生成部504に与える。送信指向性生成部504は、受け取った到来方向推定値に基づき送信指向性を演算して送信ウェイトを送信アンテナ素子数M分生成し、送信ベースバンド部505に出力する。
【0006】
送信ベースバンド部505は、受信した送信アンテナ素子数M分の送信ウェイトを送信データに乗算してM個の送信ベースバンド信号を生成し、それぞれをM個の無線送信部506−1〜506−Mの対応するものに与える。
【0007】
M個の無線送信部506−1〜506−Mは、M個の送信アンテナ素子507−1〜507−Mと1対1の関係で設けられている。このM個の無線送信部506−1〜506−Mでは、それぞれ、入力された送信ベースバンド信号をD/A変換して直交変調し、直交変調した送信信号を無線周波の信号にアップコンバートして対応するアンテナ素子に出力する。これによって、送信アンテナ素子507−1〜507−Mから所望の方向に向けた無線信号が送出される。
【0008】
以上のように、到来方向推定値を基に指向性送信を行うことで、方向が異なる複数のユーザが他ユーザに送信される送信信号によって受ける干渉を減らすことが可能になる。なお、図5では、アレイアンテナは送信用と受信用と別々に示してあるが、共用器を用いて一つのアレイアンテナを送受共用とする場合もある。
【特許文献1】特開2000−196328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記構成を採る従来の基地局装置は、各通信端末装置の位置や距離によらず、指向性送信を行うための処理を行っているので、無線送信部の構成が増大するという問題がある。また、移動通信システムにおいては、通信端末装置がセル内を移動するので、移動局装置を追尾する必要があるが、一定時間毎に各移動局装置の位置情報や距離情報を更新する必要がある。そのため、送信指向性生成の処理量が増大するという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、アレイアンテナを用いた送信処理において送信指向性生成の処理量を効果的に削減することのできる基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本発明に係る基地局装置は、アレイアンテナを用いて受信処理を行う際に通信端末装置からの信号の到来方向を推定する到来方向推定手段と、前記到来方向推定手段が推定した到来方向に送信指向性を生成する送信指向性生成手段と、通信中の通信端末装置との距離を推定する距離推定手段と、前記距離推定手段にて推定された通信端末装置との距離に応じて前記送信指向性生成手段での送信指向性生成の頻度を変化させる送信指向性生成頻度制御手段とを具備する構成を採る。
【0012】
この構成によれば、基地局装置と通信端末装置間の距離が大きい場合は、送信指向性生成の頻度を低くできるので、その距離が大きい所に居る通信中の通信端末装置に対する送信指向性生成の処理量を軽減することができる。
【0013】
本発明に係る基地局装置は、アレイアンテナを用いて受信処理を行う際に通信端末装置からの信号の到来方向を推定する到来方向推定手段と、前記到来方向推定手段が推定した到来方向に互いに異なる生成方法で送信指向性を生成する複数の送信指向性生成手段と、通信中の通信端末装置との距離を推定する距離推定手段と、前記距離推定手段にて推定された通信端末装置との距離に応じて前記複数の送信指向性生成手段のうちの1つが生成した送信指向性生成を実際に使用する送信指向性として選択する選択手段とを具備する構成を採る。
【0014】
この構成によれば、基地局装置と通信端末装置間の距離に応じて送信指向性の精度を切り替えることができる。この場合、基地局装置と通信端末装置間の距離が大きい場合は、上記の発明のように送信指向性生成の頻度を低くできるので、処理時間のかかる高精度な送信指向性生成方法を用いることができる。これによって、遠距離に存する通信端末装置に対する到来方位推定精度の劣化を少なくすることができるようになる。
【0015】
本発明に係る基地局装置は、上記の発明において、前記到来方向推定手段は、受信入力するディジタルベースバンド信号をスクランブル符号と拡散符号とを用いて逆拡散処理を行う手段と、逆拡散処理した受信信号とその受信信号に予め埋め込まれた既知信号であるパイロット信号との相関演算を行う手段と、相関演算結果に基づき生成される遅延プロファイルを用いて到来パスの受信タイミングを検出するパス検出手段とを備え、前記距離推定手段は、前記パス検出手段にて検出されたパスの遅延時間を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定するという構成を採る。
【0016】
この構成によれば、遅延プロファイルから距離の算出することが可能となる。
【0017】
本発明に係る基地局装置は、上記の発明において、前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置の送信電力と基地局装置での受信電力との差を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定するという構成を採る。
【0018】
この構成によれば、電力の減衰特性から距離を算出することが可能となる。
【0019】
本発明に係る基地局装置は、上記の発明において、前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置が算出して送信してくる基地局装置との距離情報を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定するという構成を採る。
【0020】
この構成によれば、通信中の通信端末装置が算出した基地局との距離を用いることができるので、距離推定手段の構成を簡素化することができる。
【0021】
本発明に係る基地局装置は、上記の発明において、前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置が送信してくる距離を算出できる元情報を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定するという構成を採る。
【0022】
この構成によれば、通信中の通信端末装置から距離を算出できる元情報を用いることができるので、距離推定手段の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アレイアンテナを用いた送信処理において送信指向性生成の処理量を効果的に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の骨子は、アレイアンテナを用いて送受信処理を行う基地局装置において、通信端末装置との距離情報を用いて送信指向性の生成処理負荷を軽減することである。また、通信端末装置との距離に応じて用いる送信指向性を切り替えることである。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。図1に示す基地局装置100は、受信用のアレイアンテナを構成するN個のアンテナ素子101−1〜101−Nと、無線受信部102−1〜102−Nと、到来方向推定部103と、距離推定部104と、送信指向性生成頻度制御部105と、送信指向性生成部106と、送信ベースバンド部107と、無線送信部108−1〜108−Mと、送信用のアレイアンテナを構成するM個のアンテナ素子109−1〜109−Mとを備えている。
【0027】
図1において、N個のアンテナ素子101−1〜101−Nのそれぞれで受信された無線信号は、1対1の関係で設けられる無線受信部102−1〜102−Nに送られる。無線受信部102−1〜102−Nでは、それぞれ、受信された無線信号を自動利得増幅器にて増幅し、それをダウンコンバータにて中間周波数帯の信号に周波数変換し、直交検波器にて直交検波してI/Qチャネルのアナログベースバンド信号を取り出した後、A/D変換器にてディジタル変換したディジタルベースバンド信号を到来方向推定部103と距離推定部104とに出力する。
【0028】
到来方向推定部103は、各アンテナ素子のベースバンド信号に基づき到来方向推定を行いその推定結果を送信指向性生成部106に与える。例えば、CDMA方式であれば、到来方向推定部103は、受信入力するディジタルベースバンド信号をスクランブル符号と拡散符号とを用いて逆拡散処理を行う逆拡散処理手段と、逆拡散処理した受信信号とその受信信号に予め埋め込まれた既知信号であるパイロット信号との相関演算を行う相関演算手段と、相関演算手段の出力に基づき生成される遅延プロファイルを用いて到来パスの受信タイミングを検出するパス検出手段とを備えることで、到来パスの方向を推定することができる。
【0029】
距離推定部104は、例えば無線受信部102−1〜102−Nが出力する各アンテナ素子のベースバンド信号に基づき基地局装置と通信端末装置との距離を推定し、その推定距離を送信指向性生成頻度制御部105に与える。
【0030】
送信指向性生成頻度制御部105は、距離推定部104が推定した基地局装置と通信端末装置との距離に応じて、送信指向性生成部106が生成する送信指向性の生成頻度を制御する。
【0031】
送信指向性生成部106は、到来方向推定部103から受け取った到来方向推定値に基づき送信指向性を演算して送信ウェイトを送信アンテナ素子数M分生成し、送信ベースバンド部107に出力する動作を、送信指向性生成頻度制御部105が指定する頻度で実行する。
【0032】
送信ベースバンド部107は、受信した送信アンテナ素子数M分の送信ウェイトを送信データに乗算してM個の送信ベースバンド信号を生成し、それぞれをM個の無線送信部108−1〜108−Mの対応するものに与える。
【0033】
M個の無線送信部108−1〜108−Mは、M個の送信アンテナ素子109−1〜109−Mと1対1の関係で設けられている。このM個の無線送信部108−1〜108−Mでは、それぞれ、入力された送信ベースバンド信号をD/A変換して直交変調し、直交変調した送信信号を無線周波の信号にアップコンバートして対応するアンテナ素子に出力する。これによって、送信アンテナ素子109−1〜109−Mから所望の方向に向けた無線信号が送出される。
【0034】
次に、図1〜図3を参照して、実施の形態1に係る基地局装置100で行われる送信指向性生成頻度の制御動作について説明する。まず、距離推定部104における基地局装置と通信端末装置間の距離推定方法について説明する。これには、各種考えられるが、ここでは、次の3つの方法を示す。
【0035】
(1)第1の距離推定方法は、CDMA方式の場合、到来方向推定部103が備えるパス検出手段にて検出されたパスの遅延時間を利用する方法である(図2)。図2は、距離推定部104での距離推定方法の一例を説明する図である。図2では、通信端末装置MS202は基地局装置BS201から近い距離に存在し、通信端末装置MS203は基地局装置BS201から遠い距離に存在するとしている。図2に示すように、フレームタイミングと基地局装置の受信電力遅延プロファイルのピークと間の時間間隔は基地局装置と通信端末装置との間の往復時間とみなせるので、この往復時間に基づいて距離を推定することができる。
【0036】
(2)第2の距離推定方法は、下り受信信号の受信電力を利用する方法である。電波の受信電力は、距離に応じて減衰するので、基地局装置と通信端末装置の送信電力が共に既知であれば、空間における減衰特性から距離を推定することができる。
【0037】
(3)第3の距離推定方法は、通信端末装置に、GPSなど基地局装置との距離を算出できる元データを生成して送信する機能を装備し、通信端末装置がその緯度、経度の情報を基地局装置に通知する方法である。基地局装置は移動局装置との距離を算出できる。なお、通信端末装置に、基地局装置との距離を算出して送信する機能を装備する方法でもよい。この第3の距離推定方法を用いる場合は、距離推定部104の構成を簡素化することができる。
【0038】
次に、送信指向性生成頻度制御部105での送信指向性生成頻度の判断方法について説明する(図3)。図3は、送信指向性生成頻度制御部105での判断要素である通信端末装置までの距離と通信端末装置の方位方向への移動距離との関係を説明する図である。図3では、セル内において基地局装置(BS)と無線通信を行っている2つの通信端末装置(MS)1、2との位置関係が示されている。MS1はBSから近い距離にあり、MS2はBSから遠い距離にあるものとしている。
【0039】
図3において、MS1、2が共に同じ速度で方位方向に同じ距離だけ動いたとすると、BSから遠く離れているMS2のBSからの方位角度はそれほど変わらないのに対し、BSに近いMS1のBSからの方位角度は大きく変化する。したがって、通信端末装置を追尾することを考えると、通信端末装置の移動方向だけでなく通信端末装置までの距離も、基地局装置にとって重要なパラメータであるということができる。
【0040】
つまり、送信指向性生成頻度制御部105は、距離推定部104が推定した距離に対して方位角度が大きく変わるか大して変わらないかを判断する閾値を有し、次のようにして送信指向性生成の頻度を制御する。
【0041】
即ち、基地局装置と通信端末装置との距離が小さい場合には、通信端末装置が遅い速度で移動していても基地局装置から見た通信端末装置の方向が大きく変化してしまう。この場合には、送信指向性生成頻度制御部105は、送信指向性生成の更新頻度を早くする制御を行う。
【0042】
一方、基地局装置と通信端末装置の距離が大きい場合は、通信端末装置が移動しても、基地局装置から見た通信端末装置の方向はさほど変わらない。この場合には、送信指向性生成頻度制御部105は、送信指向性生成の更新頻度を遅くする制御を行う。このように通信端末装置毎に行う送信指向性生成の更新頻度を距離に応じて遅くする制御を行うことができる。
【0043】
この実施の形態1によれば、送信指向性生成の更新頻度を遅くすることができるので、更新頻度を遅くした通信端末装置に対する送信指向性生成の処理量を削減することができる。したがって、スケジュールを制御して空いている時間に他の通信端末装置の送信指向性生成を行うことができるなど、回路の共用化によって用意する回路数の削減が期待できる。
【0044】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、図4では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、本実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0045】
図4に示すように、本実施の形態2に係る基地局装置400では、図1(実施の形態1)に示した構成において、送信指向性生成頻度制御部105及び送信指向性生成部106に代えて、2つの送信指向性生成部401,402と、送信指向性生成方法選択部403とが設けられている。
【0046】
2つの送信指向性生成部401,402は、それぞれ、到来方向推定部103から受け取る到来方向推定値に基づき、互いに異なる方法で送信指向性を演算して送信ウェイトを送信アンテナ素子数M分生成し、送信指向性生成方法選択部403に出力する。
【0047】
送信指向性生成方法選択部403は、距離推定部104が推定した距離に応じて送信指向性生成部401,402の一方の出力を選択し、送信ベースバンド部107に与える。
【0048】
次に、以上のように構成される実施の形態2に係る基地局装置400で行われる送信指向性を切り替える動作について説明する。アレイアンテナでの送信指向性は、ウェイトによって決定されるが、そのビームの形状は、広い角度範囲では低利得となり、狭い角度範囲で高利得となるように変化させることが可能である。しかし、指向性生成における処理量は単純なフーリエビ−ムに比較して大きい。
【0049】
また、基地局から遠くに位置する通信端末装置の到来方向推定は、受信電力の減衰に伴い推定精度の劣化を起こすが、移動速度に対して到来方向の変化は少ない。したがって、遠くに位置する通信端末装置に対しては、処理時間はかかるが推定精度の誤差分の範囲に利得を持つ送信指向性生成方法の選択が可能となる。
【0050】
また、指向性送信方法としては、ビーム法、ヌル法、ビームとヌルを同時に制御するビームヌル法、さらにはビームとしてフーリェビーム、等間隔位相ビーム、ビーム数も1から複数と様々な方法がある。それらの内どの方法が最良かは伝播環境によって左右されるので、伝播環境を判断するうえで通信距離は大きな要因である。
【0051】
そこで、2つの送信指向性生成部401,402は、それぞれ、生成する指向性が送信する距離によって異なるようになっている。即ち、一方は、遠くに位置する通信端末装置向けに処理時間のかかる高精度の送信指向性を生成する。他方は、近くに位置する通信端末装置向けに処理時間の短い低精度の送信指向性を生成する。
【0052】
そして、送信指向性生成方法選択部403は、距離推定部104が推定した通信端末装置が基地局から遠くに存在するときは2つの送信指向性生成部401,402の一方が生成した送信指向性データを送信ベースバンド部107に与え、距離推定部104が推定した通信端末装置が基地局の近くに存在するときは2つの送信指向性生成部401,402の他方が生成した送信指向性データを送信ベースバンド部107に与える。
【0053】
なお、図4では、送信指向性生成部が2つとなっているが、それ以上でも問題なく適用することができる。
【0054】
このように、実施の形態2によれば、通信端末装置との通信距離に応じて送信指向性の生成方法を切り替えることができる。この場合、遠くに存在する通信端末装置向けの送信指向性は、その生成頻度は、実施の形態1にて説明したように、低くすることができるので、処理時間のかかる高精度の生成方法を用いることができる。これによって遠くに存在する通信端末装置に対する到来方向推定の精度劣化を少なくすることができる。
【0055】
なお、図1、図4では、アレイアンテナは送信用と受信用と別々に示してあるが、共用器を用いて一つのアレイアンテナを送受共用とした場合も同様に適用することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、アレイアンテナを用いた送信処理において送信指向性生成の処理量を効果的に削減するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る基地局装置の構成を示すブロック図
【図2】図1に示す距離推定部での距離推定方法の一例を説明する図
【図3】図1に示す送信指向性生成頻度制御部での判断要素である通信端末装置までの距離と通信端末装置の方位方向への移動距離との関係を説明する図
【図4】本発明の実施の形態2に係る基地局装置の構成を示すブロック図
【図5】アレイアンテナを用いて送受信処理を行う従来の基地局装置の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
【0058】
100,400 基地局装置
101−1〜101−N アンテナ素子(受信用のアレイアンテナ)
102−1〜102−N 無線受信部
103 到来方向推定部
104 距離推定部
105 送信指向性生成頻度制御部
106 送信指向性生成部
107 送信ベースバンド部
108−1〜108−M 無線送信部
109−1〜109−M アンテナ素子(送信用のアレイアンテナ)
401,402 送信指向性生成部
403 送信指向性生成方法選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイアンテナを用いて受信処理を行う際に通信端末装置からの信号の到来方向を推定する到来方向推定手段と、前記到来方向推定手段が推定した到来方向に送信指向性を生成する送信指向性生成手段と、通信中の通信端末装置との距離を推定する距離推定手段と、前記距離推定手段にて推定された通信端末装置との距離に応じて前記送信指向性生成手段での送信指向性生成の頻度を変化させる送信指向性生成頻度制御手段と、を具備することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
アレイアンテナを用いて受信処理を行う際に通信端末装置からの信号の到来方向を推定する到来方向推定手段と、前記到来方向推定手段が推定した到来方向に互いに異なる生成方法で送信指向性を生成する複数の送信指向性生成手段と、通信中の通信端末装置との距離を推定する距離推定手段と、前記距離推定手段にて推定された通信端末装置との距離に応じて前記複数の送信指向性生成手段のうちの1つが生成した送信指向性生成を実際に使用する送信指向性として選択する選択手段と、を具備することを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
前記到来方向推定手段は、受信入力するディジタルベースバンド信号をスクランブル符号と拡散符号とを用いて逆拡散処理を行う手段と、逆拡散処理した受信信号とその受信信号に予め埋め込まれた既知信号であるパイロット信号との相関演算を行う手段と、相関演算結果に基づき生成される遅延プロファイルを用いて到来パスの受信タイミングを検出するパス検出手段とを備え、前記距離推定手段は、前記パス検出手段にて検出されたパスの遅延時間を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置の送信電力と基地局装置での受信電力との差を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置が算出して送信してくる基地局装置との距離情報を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記距離推定手段は、通信中の通信端末装置が送信してくる距離を算出できる元情報を用いて通信中の通信端末装置との距離を推定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−203674(P2006−203674A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14458(P2005−14458)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】