説明

基板と当該基板の検査方法

【課題】 TFTやCFは透明膜と不透明膜で積層された多層膜構造からなる。このような多層構造で異物等の不具合が生じた場合、異物がどの層にあるのかを早期に特定することが重要だが、集積イオンビーム(FIB)で加工した断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する方法では異物のある箇所は電子顕微鏡観察においては不透明であるうえ、作業効率が低い。
【解決手段】本発明にかかる液晶パネルの検査方法は、液晶パネル内に異物等の不具合が生じた場合、光学式顕微鏡により当該異物にピントを合せた後に、顕微鏡の視野範囲内、具体的には当該異物と同じ画素または隣接画素に形成された複数の不透明なダミーパターンに逐次ピントを合せることにより、当該異物がある層を特定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス基板上に形成された薄膜トランジスタで駆動するアクティブマトリクス型の液晶パネルに含まれる基板の検査方法、特にTFTアレイ基板やカラーフィルタ基板とそれらの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネル等のFPDはその軽量、薄型、低消費電力等の影響でテレビ、カーナビ、コンピュータを始めとして多くの分野で利用されている。その用途の多様さに対応すべく、その工程内においての不具合の早期発見が、製造工場内の生産性を向上するためには必要不可欠である。
【0003】
液晶パネルは互いに対向する一対の基板を有し、基板間がスペーサーによって一定に保持されており、その基板間は液晶が満たされている。1つの基板は薄膜ドランジスタを形成したアクティブマトリクス型の基板(以下TFTと表記)であり、対向基板はカラーフィルター(以下CFと表記)である。それぞれの基板上には導電膜が形成されており、互いの導電膜間において蓄えられた電荷により、液晶の駆動を制御している。TFTのトランジスタ形成部や配線部の液晶の駆動は、表示部のそれと比較して制御することが困難であり、対向CF側に遮蔽領域(以下BMと表記)を形成し、光の透過を抑制することで、コントラストが高くより美しい画像の表示が可能となる。
【0004】
TFT、およびCFは、透明膜と不透明膜で積層された多層膜構造からなり、各層を写真製版の技術でパターン形成し積層させていく。各層間に不純物が入らないように形成する必要があり、そのため各層の形成後にはクリーニング工程が入る。そのようにケアをしていても、異物等が混入し、クリーニングで除去しきれずに不具合品となる場合が発生する。
【0005】
こうした不具合の発生に対しては、解析による早期発見が重要であり、発見が遅れると不良製品が大量に発生し多大な被害を蒙る。解析において重要な要素の一つは、異物が多層構造のTFTやCFのどの層間で発生したかを特定することである。これを行うことで、不具合が発生した原因工程をしぼりこむことができ、問題の早期解決につながるからである。
【0006】
多層構造の解析方法として、集積イオンビーム(FIB)で加工した断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する方法がある。各層の断面構造をピンポイントに観察するのに適した方法である反面、断面の切削作業に時間がかかるデメリットがある。しかも異物のある箇所は電子顕微鏡観察においては不透明であるため、見たいポイントがずれることが多々あり、その都度何度も切削作業をやり直さなければならない。さらに、FIB装置やSEM装置の設備投資には大きなコストがかかるというデメリットもある。
【0007】
一方、より安価な観察装置である光学顕微鏡を用いた場合、透明膜を透過して不具合箇所を観察できるため、切削加工を行う必要がない。また、光学顕微鏡のピントを上下することで、異物がどの層内にあるかのおおよその検討がつく。こうしたメリットがある一方で、透明膜と透明膜とが積み重なった積層構造の場合は、ピントの上下だけでは不具合がどの層内にあるかの特定が難しいというデメリットもある。その場合、所望の一層を薬品等で剥離することにより異物のある層の特定を行う方法があるが、不具合箇所も同時に剥離することがある。さらにこの剥離作業自体に、作業性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−134160号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景技術のいずれの場合においても、不具合の早期発見という目標にはつながりにくく、解決まで時間を要する結果となってしまい、そうしている間も生産は続いており、大量に不具合製品が生み出されてしまう。本発明は、解析の精度を損なうことなく、より短時間で異物がある層を特定できるよう、解析しやすいように工夫した液晶パネルを作成し、不具合の早期発見につなげることで、生産性の向上につなげることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる液晶パネルの基板は、透明絶縁性基板上に形成された透明な膜と不透明な膜との多層構造を含む基板において、前記透明な膜と重畳するように形成されており、前記透明な膜よりも可視光の透過率が低く、かつ、電位が印加される電極や配線同士を接続しないように配置されるダミーパターンを複数の層において備えたことを特徴とする基板である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望の一層を薬品等で剥離することなく簡単に、異物がある層を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかるTFTアレイ基板の平面図である。
【図2】実施の形態1にかかるTFTアレイ基板の断面図である。
【図3】実施の形態2にかかるCF基板の平面図である。
【図4】実施の形態2にかかるCF基板の断面図である。
【図5】他の形態にかかるTFTアレイ基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶パネルを構成するTFTアレイ基板におけるTFTと観察用ダミーパターンの平面図を示す。図2は、図1中のA−A線における断面図を示す。
【0014】
図1、図2より、絶縁性基板1上には、アルミや高融点金属等の第1導電膜からなるゲート電極2、第1ダミーパターン11が形成されている。それらを覆うようにして、窒化珪素や酸化珪素からなるゲート絶縁膜3が形成されている。ゲート絶縁膜上に、珪素等からなる半導体膜パターン4が形成されている。半導体膜パターン4は、TFT部においてはチャネルを形成する。
【0015】
さらに、半導体膜パターン4の上層には、アルミや高融点金属等の第2導電膜が形成される。第2導電膜はパターニングされて、ドレイン電極5やソース電極6を構成し、TFT以外の箇所で、ゲート絶縁膜3上においては第2ダミーパターン12を形成する。
【0016】
さらに、第2導電膜上には、窒化珪素や酸化珪素や樹脂膜からなる保護膜7が形成されている。保護膜7上には、ダミーパターン13が形成されている。保護膜7やダミーパターン13上には、アルミや透明導電膜等を含む第3導電膜が形成されている。第3導電膜はパターニングされて画素電極9を構成する。画素電極9において透明な領域上には第4ダミーパターン14が形成されている。
【0017】
以上、第1〜4ダミーパターンとも、液晶パネルの表示特性を改善する直接的な機能を有してはいない。そのため、ダミーパターンを介して、電位が印加される他の電極や配線同士を電気的に接続するような構成はとらない。また、ダミーパターンは、TFTアレイ基板の透明な膜と重畳するようにして、可視光で不透明な膜を少なくとも一層含むように形成している。また、ダミーパターンは必ずしも不透明である必要は無く、ゲート絶縁膜3や保護膜7や画素電極9よりも可視光の透過率が低くてもよい。たとえば、第2ダミーパターン12を半導体膜パターン4と同じ材料で形成してもよい。
【0018】
各ダミーパターンの配置は、図1のように、光学顕微鏡で観察しやすいように、画素内に形成する必要がある。図1では画素内の角部に偏って配置しているが、画素内であればどこでも良い。また、ダミーパターンを全ての画素内に配置すると、異物が画素内のどこにあってもその付近にダミーパターンがあるので、異物の層を特定しやすい。
【0019】
次に、第1〜4ダミーパターンを用いて、異物がどこの層に存在するのかを検出する検査方法についての説明を行う。図1、図2においては、異物101、102、103、104が各層に存在する状況を示している。
【0020】
図1において、異物102は、ゲート絶縁膜3よりも上で、かつ、保護膜7よりも下に存在している。光学顕微鏡のピントを上下させて、異物102にピントを合せた場合、ゲート絶縁膜3の上層にある第2ダミーパターン12にもピントが合う一方で、他のダミーパターンには焦点が合わない。複数存在するダミーパターンのうちピントの合っているダミーパターンを特定することにより、この異物102がゲート絶縁膜3と保護膜7との間に存在すると容易に判別できる。
【0021】
他の異物については説明を省略するが、異物101、103、104は各々、ダミーパターン11、13、14とピントが合うことになるので同様にして、異物のある層を容易に特定することができる。
【0022】
また、異物102の厚みが各層の厚みよりも大きい場合には、異物の最下部に光学顕微鏡のピントを合わせれば、異物102のある層を特定することができる。
【0023】
さらに、異物と同じ画素内のダミーパターンよりも、隣接画素内のダミーパターンの方が異物に近い場合には、異物とピントを合せるのは隣接画素内のダミーパターンにしてもよい。
【0024】
実施の形態2
図3、4を用いて、実施の形態2にかかる液晶パネルを構成するカラーフィルタ基板の説明を行う。なお、図3、4においては、本発明にかかるカラーフィルタ基板におけるダミーパターンの形成位置も示している。
【0025】
CF基板において、ガラス基板21上には、各画素を区切るためのブラックマトリクス22と、画素に対応する箇所に配置される色材層23とが形成されている。ガラス基板21と色材層23間にダミーパターン29が形成されている。色材層23上にはアクリルやポリイミド等からなる有機膜24が形成されているが、色材層23と有機膜24間にはダミーパターン30が形成されている。
【0026】
有機膜24上には、ITO膜25が形成されているが、有機膜24とITO膜25との間にダミーパターン31が形成されている。さらに、ITO膜25上には配向膜26が形成されているが、ITO膜25上と配向膜26との間にダミーパターン31が形成されている。
【0027】
さらに、配向膜26上にはダミーパターン32が形成されている。また、ITO膜25と柱スペーサー27間には、ダミーパターン28が形成されている。
【0028】
本発明においては、各ダミーパターンは非透明な材料を用いることが必要である。また、各ダミーパターンの配置であるが、図3のように、光学顕微鏡で観察しやすいように、画素内に形成する必要がある。図3では画素内の角部に偏って配置しているが、画素内であればどこでも良い。
【0029】
異物がある層の特定については、実施の形態1と同様に行えばよい。本実施の形態2においては、ダミーパターン29、30、31、32と異物105、106、107、108とが各々ピントが合うため、各異物の存在する層を容易に特定することが可能である。
【0030】
本発明においては、各ダミーパターンは可視光領域で不透明である必要がある。もしくは、可視光領域で不透明な層を少なくとも一層有する必要がある。または、ゲート絶縁膜3や保護膜7や有機膜24等よりも可視光での透過率が低い膜を有する必要がある。このため、ダミーパターンの材料としては、金属膜や色材、非透明樹脂を用いるのが望ましい。例えば、図1におけるダミーパターン11は、ゲート電極2と同じ層の材料を用いることができる。この場合、製造工程数を削減することができる。
【0031】
同様にダミーパターン12は、ソース電極6と同じ層の材料を用いることができる。また、図4におけるダミーパターン29は、ブラックマトリクス22と同じ層の材料を用いることができる。
【0032】
さらに、実施の形態1や2では、各ダミーパターンは所定の距離を隔てて配置されていたが、各ダミーパターン間で一部重複する領域を設けてもよい。
【0033】
たとえば、異物がゲート配線上に確認できる場合、異物の存在する層として想定できるのは、ゲート配線2上、ゲート絶縁膜3上、保護膜7上、のいずれかである。この場合、異物は、第1導電膜であるゲート配線2、ゲート絶縁膜3、保護膜7のそれぞれの厚みを適宜足し合わせた高さの上に存在しうる。
【0034】
実施の形態1においては、各ダミーパターンが独立に配置されていたので、かかる異物の存在するレイヤを光学顕微鏡のピントを合せることにより検出することは困難である。むしろ、偶然、同じ高さである他のダミーパターンと取り違えてしまうこともありえる。
【0035】
しかし、TFTアレイ基板の断面図である図5に示すような構造であれば、上記のような場合にも異物の層を特定することが可能である。図5においては、絶縁性基板1上に第5ダミーパターン15上が形成されており、第5ダミーパターン15は上層であるゲート絶縁膜3を介して形成された第6ダミーパターン16と重畳する領域を含んでいる。さらに、第5ダミーパターン15上には上層であるゲート絶縁膜3と保護膜7とを介して形成された第7ダミーパターン17と重畳する領域を含んでいる。なお、ここで重畳するというのは、図1のように基板全体を見下ろすように垂直方向から見た場合に重畳する、ということを意味する。
【0036】
図5に示す構造において、ゲート配線2上に見える異物と第6ダミーパターン16とが同時にピントが合えば、その異物はゲート絶縁膜3上にあることが判断できる。また、同様に、ゲート配線2上に見える異物と第7ダミーパターン17とが同時にピントが合えば、その異物は保護膜7上にあることが判断できる。
【符号の説明】
【0037】
1 透明絶縁性基板、2 ゲート電極、3 ゲート絶縁膜、4 半導体膜、
5 ドレイン電極、6 ソース電極、7 保護膜、8 コンタクトホール、
9 画素電極
11、12、13、14、15、16、17 ダミーパターン
101、102、103、104 異物
105、106、107、108、109 異物
21 透明絶縁性基板、22 ブラックマトリクス、23 色材層
24 有機膜、25 ITO膜、26 配向膜、27 柱スペーサ
28、29、30、31、32 ダミーパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁性基板上に形成された透明な膜と不透明な膜との多層構造を含む基板において、
前記透明な膜と重畳するように形成されており、
前記透明な膜よりも可視光の透過率が低く、かつ、
電位が印加される電極や配線同士を接続しないように配置されるダミーパターンを複数の層において備えたことを特徴とする基板。
【請求項2】
一のダミーパターン上の透明な膜を介して他のダミーパターンが配置されており、
一のダミーパターンと他のダミーパターンとは垂直方向から見て重畳する領域を有することを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
請求項1記載の基板において、
光学顕微鏡を用いて異物にピントを合せる工程と
前記複数の層に配置された前記ダミーパターンのうちピントの合っているダミーパターンを特定する工程と
を備えたことを特徴とする基板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137633(P2012−137633A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290232(P2010−290232)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】