説明

基板の搬送装置

【課題】合成樹脂製の駆動ローラが熱影響を受けて膨張しても、その形状が歪んで基板の搬送が確実に行なえなくなるのを防止した基板の搬送装置を提供する。
【解決手段】基板を搬送するローラユニット66は、駆動軸19の端部に外面が連結された第1の取付け盤57と、合成樹脂によってリング状に形成され周辺部に複数の通孔61が周方向に所定間隔で形成されていて、外周面で基板を支持する駆動ローラ17と、駆動ローラを第1の取付け盤とで保持する第2の取付け盤62と、外径寸法が駆動ローラの通孔の内径寸法よりも小さく設定されていて、第1の取付け盤と第2の取付け盤とで駆動ローラを保持したときに通孔に挿通される複数の円筒軸64と、駆動ローラを保持した第1の取付け盤と第2の取付け盤を連結固定するねじ軸65とを具備し、駆動ローラが径方向に熱膨張したときに、通孔の内径寸法と円筒軸の外形寸法との差によって駆動ローラの変形が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を搬送しながら処理液などによって処理するときに用いられる、基板を搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるガラス製の基板には回路パターンが形成される。基板に回路パターンを形成するにはリソグラフィープロセスが採用される。リソグラフィープロセスは周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パターンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
つぎに、レジストの光が照射されない部分或いは光が照射された部分を除去し、基板のレジストが除去された部分をエッチングする。そして、エッチング後にレジストを除去するという一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パターンを形成する。
【0004】
このようなリソグラフィープロセスにおいては、上記基板に現像液、エッチング液或いはエッチング後にレジストを除去する剥離液などの処理液よって基板を処理する工程、さらに洗浄液によって洗浄する工程、洗浄後に基板に付着残留した洗浄液を除去する乾燥工程が必要となる。
【0005】
従来、基板に対して上述した一連の処理を行う場合、上記基板は軸線を水平にして配置された搬送ローラによってほぼ水平な状態で、複数の処理チャンバに搬送し、各処理チャンバで処理液による処理、洗浄液による洗浄、洗浄後に気体を噴射する乾燥を順次行なうようにしている。
【0006】
ところで、最近では液晶表示装置に用いられるガラス製の基板が大型化及び薄型化する傾向にある。そのため、基板を水平搬送すると、搬送ローラ間における基板の撓みが大きくなるため、各処理チャンバでの処理が基板の板面全体にわたって均一に行えなくなるということが生じる。
【0007】
そこで、基板を処理する際、上記基板が処理液や洗浄液の重量によって撓むのを防止するため、基板を所定の起立角度、たとえば垂直状態から15度傾斜させた75度の角度で搬送し、傾斜方向の上側に位置する前面に処理液を噴射して処理するということが行なわれている。
【0008】
基板を所定の角度で傾斜させて搬送しながら処理する処理装置の場合、特許文献1に示されるように、チャンバ内に基板の傾斜方向下側となる背面を支持する支持ローラと、下端を支持する駆動ローラが設けられる。駆動ローラは駆動軸に取付けられ、その駆動軸は駆動源によって回転駆動される。
【0009】
上記処理装置には、チャンバ内に複数の上記支持ローラと上記駆動ローラが上記基板の搬送方向に対して所定間隔で配置される。上記基板は上記支持ローラによって背面が支持され、下端が上記駆動ローラによって支持される。それによって、駆動ローラが回転駆動されることで、上記基板が所定方向に搬送されることになる。
【0010】
基板の下端を駆動ローラで支持する場合、上記駆動ローラを合成樹脂で形成する。それによって、駆動ローラの外周面によって支持されて搬送される上記基板の下端に欠が生じるのを防止するようにしている。
【0011】
合成樹脂は、弾力性を有する反面、金属に比べて剛性が低い。しかも、基板を処理する場合にはたとえば80℃程度に加熱された剥離液が用いられたり、洗浄処理後に温風や赤外線によって加熱しながら乾燥処理するなどのことが行なわれる。
【0012】
そこで、上記駆動ローラを合成樹脂で形成した場合、この駆動ローラを補強するために、駆動軸の先端に金属製の取付け盤を取付け固定し、この取付け盤に上記駆動ローラを複数、たとえば周方向に120度間隔で3本の取付けねじによって取付け固定するということが行なわれている。
【特許文献1】特開2004−210511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、基板は剥離液によって剥離処理されたり、赤外線や温風によって加熱乾燥処理されるから、そのときに上記駆動ローラと取付け盤が熱影響を受けることが避けられない。合成樹脂製の上記駆動ローラは金属製の取付け盤に比べて熱膨張率が格段に大きい。
【0014】
一方、取付け盤と駆動ローラは複数の取付けねじによって上記取付け盤に取付け固定されている。そのため、上記駆動ローラが高温度下で使用されて温度上昇すると、駆動ローラと取付け盤との熱膨張率の違いによって、熱膨張率の大きな上記駆動ローラは、取付けねじによって取付け盤に連結固定された部分が径方向外方へ円滑に膨張せず、それ以外の部分が径方向外方へ膨張してしまう。
【0015】
したがって、駆動ローラは室温状態では円形状であっても、温度上昇するといびつな円形状に変形し、外周面が波打った状態になるから、駆動ローラの外周面によって下端が支持された基板は駆動ローラの回転によって円滑に搬送されなくなるばかりか、上下方向にがたついて下端に欠けが生じるということがある。
【0016】
この発明は、合成樹脂製の駆動ローラが温度の高い状態で使用されても、取付け盤との熱膨張率の違いによっていびつな円形状に変形することがないようにした基板の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、基板を搬送する搬送装置であって、
回転駆動される駆動軸と、
この駆動軸に設けられ上記基板を支持して駆動軸とともに回転し、その回転によって上記基板を搬送するローラユニットを備え、
上記ローラユニットは、上記駆動軸の端部に外面が連結された第1の取付け盤と、
合成樹脂によってリング状に形成され周辺部に複数の通孔が周方向に所定間隔で形成されていて、外周面で上記基板を支持する駆動ローラと、
この駆動ローラを上記第1の取付け盤とで保持する第2の取付け盤と、
外径寸法が上記駆動ローラの通孔の内径寸法よりも小さく設定されていて、上記第1の取付け盤と第2の取付け盤とで上記駆動ローラを保持したときに上記通孔に挿通される複数の円筒軸と、
上記駆動ローラを保持した上記第1の取付け盤と第2の取付け盤を連結固定する固定手段とを具備し、
上記駆動ローラが径方向に熱膨張したときに、上記通孔の内径寸法と上記円筒軸の外形寸法との差によって上記駆動ローラの変形が防止されることを特徴とする基板の搬送装置にある。
【0018】
上記第1の取付け盤と第2の取付け盤のいずれか一方の内面には、上記駆動ローラの内径寸法よりもわずかに大きな円盤状の保持部が設けられ、この保持部に上記駆動ローラが外嵌保持されることが好ましい。
【0019】
上記駆動ローラの外径寸法は、上記第1、第2の取付け盤の外径寸法よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0020】
上記第1、第2の取付け盤は、合成樹脂によって形成された上記駆動ローラよりも熱膨張係数の小さな金属材料によって形成されていることが好ましい。
【0021】
上記基板は所定の角度で起立して搬送され、この基板の下端が上記駆動ローラの外周面によって支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、第1、第2の取付け盤によって合成樹脂製の駆動ローラを保持するとともに、そのときに上記駆動ローラに形成された通孔に挿通される円筒軸の外径寸法を上記通孔の内径寸法よりも小さくし、駆動ローラが熱膨張したととき、上記通孔の内径寸法と、上記円筒軸の外径寸法との差によって駆動ローラが変形するのを防止した。
【0023】
そのため、駆動ローラによる基板の搬送を円滑に行なうことができるから、搬送時に基板に欠けが生じるということもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はこの発明の処理装置の概略的構成を示す斜視図であって、この処理装置は装置本体1を有する。この装置本体1は分割された複数の処理ユニット、この実施の形態では第1乃至第5の処理ユニット1A〜1Eを分解可能に一列に連結してなる。
【0025】
各処理ユニット1A〜1Eは架台2を有する。この架台2の前面には箱型状の処理部3が所定の角度で傾斜して保持されている。上記架台2と処理部3の上面には上部搬送部4が設けられている。上記架台2の下端の幅方向両端には板状の一対の脚体5(一方のみ図示)が分解可能に設けられる。この脚体5によって上記架台2の下面側に空間部6が形成される。
【0026】
上記空間部6には、上記処理部3で後述するように基板Wの処理に用いられる薬液やリンス液などの処理液を供給するタンクやポンプ或いは処理液の供給を制御するための制御装置などの機器7をフレーム8に載置した機器部9が収納されるようになっている。つまり、各処理ユニット1A〜1Eは架台2を脚体5で支持して処理部3の下方に空間部6を形成することで、上下方向に位置する処理部3、上部搬送部4及び機器部9の3つの部分に分割されている。
【0027】
上記処理部3はチャンバ12を有する。このチャンバ12は上記架台2に所定の角度である、たとえば垂直線に対して75度の角度で傾斜して保持されていて、幅方向の両側面には75度の角度で傾斜して搬送される基板Wが通過するスリット13(図1に一箇所のだけ図示)が形成されている。
【0028】
上記チャンバ12の内部には、図2に示すように傾斜搬送手段を構成する複数の搬送軸15(1つのみ図示)がチャンバ12の幅方向に所定間隔で設けられている。この搬送軸15には複数の支持ローラ14が軸方向に所定間隔で回転可能に設けられている。上記搬送軸15は、軸線が上記スリット13と同じ角度で傾斜するよう、上下端及び中途部がそれぞれブラケット15a(上下端のブラケットのみ図示)によって支持されている。
【0029】
上記チャンバ12内には、上記スリット13から基板Wが図1に鎖線で示す第1の姿勢変換部16によって水平状態から75度の角度に変換されて搬入される。すなわち、未処理の基板Wは上記上部搬送部4によって第5の処理ユニット1E側から第1の処理ユニット1A側に搬送されて上記第1の姿勢変換部16で水平状態から75度の角度に傾斜されて上記第1の処理ユニット1Aに搬入される。
【0030】
第1の処理ユニット1Aのチャンバ12内に搬入された基板Wは上記搬送軸15に設けられた支持ローラ14によって非デバイス面である背面が支持される。この基板Wの下端は駆動ローラ17(図2に示す)によって支持される。この駆動ローラ17は基板Wを搬送するための駆動ユニット18の駆動軸19に後述するごとく設けられていて、この駆動軸19が回転駆動さることで、駆動ローラ17に下端が支持され背面が上記支持ローラ14に支持された上記基板Wが上記駆動ローラ17の回転方向に搬送されるようになっている。
【0031】
基板Wは搬送方向上流側の第1の処理ユニット1Aで剥離液によってレジストの除去が行なわれ、ついで第2、第3の処理ユニット1B,1Cで処理液による洗浄処理が順次行なわれる。第4の処理ユニット1Dではリンス液によるリンス処理が行なわれ、第5の処理ユニット1Eで熱風や赤外線による乾燥処理が行なわれる。
【0032】
図2は基板Wに剥離液を供給してレジストの除去を行なう第1の処理ユニット1Aを示す断面図である。この第1の処理ユニット1Aの処理部3内には、傾斜して搬送される基板Wの傾斜方向の上側の面、つまり回路パターンが形成される面と平行に離間対向して剥離液を基板の前面に向けて噴射する複数のノズル孔(図示せず)が軸方向に所定間隔で形成されたノズルパイプ21が配設されている。基板Wに剥離液が噴射されることで、この基板Wの前面に付着残留したレジストが除去される。
【0033】
各処理ユニット1A〜1Eを順次通過して処理された基板Wは75度の角度で傾斜した状態で上記第5の処理ユニット1Eから搬出される。第5の処理ユニット1Eから搬出された基板Wは、図1に鎖線で示す第2の姿勢変換部23で傾斜状態から水平状態に姿勢が変換されて次工程に受け渡される。
【0034】
図2に示すように、上記駆動ユニット18はチャンバ12の幅方向(基板Wの搬送方向)に沿って長い板状の下部ベース部材24を有する。この下部ベース部材24の上面には下部ベース部材24と同じ長さのチャンネル状の上部ベース部材25が両側下端を固着して設けられている。
【0035】
上記上部ベース部材25には、上記下部ベース部材24とほぼ同じ大きさの平板状の取付け部材26の幅方向の一端部と他端部とが上部ベース部材25に対して傾きの角度の調整可能に連結して設けられている。つまり、上記取付け部材26はチャンバ12の前後方向に傾き角度の調整ができるようになっている。
【0036】
上記取付け部材26の幅方向の一端と他端とには、それぞれ複数のブラケット31が上記取付け部材26の長手方向に対して所定間隔で、しかも幅方向に対応する位置に設けられている。幅方向において対応する一対のブラケットには図示しない軸受を介して上記駆動軸19の軸方向の中途部が回転可能に支持されている。この駆動軸19の先端には上記駆動ローラ17が取付けられ、後端には第1の歯車33が嵌着される。
【0037】
そして、上記架台2にチャンバ12を設置したならば、この架台2に設けられた支持部41の上面にロッド状の4本の基準部材35の下端面がねじ42によって取付け固定される。上記駆動ユニット18は、下部ベース部材24の四隅部下面が上記基準部材35の上端面にねじ42によって取付け固定される。4本の基準部材35の上端面は同一平面に位置している。そのため、駆動ユニット18はその下部ベース部材24の幅方向及び長手方向に歪が生じることなく取付け固定される。
【0038】
上記駆動ユニット18を基準部材35の上端面を基準にしてチャンバ12内に組み込む際、駆動ユニット18に支持された複数の回転軸19の後端部はチャンバ12の前板12bに開口された導出孔44から駆動室45に突出する。そして、駆動ユニット18をチャンバ12内に組み込んだ後で、上記回転軸19の後端に上記第1の歯車33が嵌着される。
【0039】
上記駆動室45には駆動源51が設けられている。この駆動源51の出力軸には駆動プーリ53が嵌着されている。この駆動プーリ53と従動プーリ54とにはベルト55が張設されている。上記従動プーリ54は図示しない第2の歯車が同軸に設けられている。この第2の歯車は上記第1の歯車33に噛合している。
【0040】
それによって、駆動源51が作動すれば、上記駆動軸19が回転駆動されることになるから、この駆動軸19の先端に設けられた上記駆動ローラ17も回転駆動される。駆動ローラ17が回転駆動されれば、これら駆動ローラ17によって下端が支持された基板Wは上記駆動ローラ17の回転方向に搬送されることになる。
【0041】
図3は駆動ローラ17と駆動軸19の分解斜視図であって、図4は同じく分解側面図である。上記駆動軸19の先端には円盤状の第1の取付け盤57の外面が連結固定されている。この第1の取付け盤57には、内面に円盤状の保持部58が所定の厚さで突出して設けられ、周辺部には周方向に120度間隔で3つの第1の通孔59が穿設されている。
【0042】
上記駆動ローラ17は耐摩耗性と耐熱性を備えた合成樹脂、たとえばUHMW(超高分子量ポリエチレン)などによってリング状に形成されている。この駆動ローラ17は内径寸法が上記保持部58の外径寸法とほぼ同等に形成され、外径寸法が上記第1の取付け盤57の外径寸法よりも大きく設定されている。さらに、駆動ローラ17の厚さ寸法は上記保持部58の高さ寸法と同等に設定されている。
【0043】
そして、上記駆動ローラ17はその内周面を上記保持部58の外周面に外嵌させて保持される。その状態で、上記駆動ローラ17は保持部58に対して径方向にガタつくことない状態となっている。
【0044】
上記駆動ローラ17の周囲には周方向に120度間隔で3つの第2の通孔61が形成されている。第2の通孔61は上記第1の通孔59よりも大径に設定されている。上記保持部58に保持された駆動ローラ17は第2の取付け盤62と上記第1の取付け盤57とで保持される。上記第2の取付け盤62の外径寸法は上記第1の取付け盤57と同じに設定されている。
【0045】
上記第1の取付け盤57には周方向に120度間隔で3つのねじ孔63が形成されている。さらに、第1の取付け盤57の内面には上記ねじ孔63と軸心を一致させた円筒軸64の一端が固着されている。この円筒軸64は、外径寸法が上記駆動ローラ17の第2の通孔61の内径寸法とほぼ同等で、内径寸法が上記第1の通孔59及び上記ねじ孔63とほぼ同じであって、長さ寸法は上記駆動ローラ17の厚さ寸法よりもわずかに大きく設定されている。
【0046】
上記第1の取付け盤57の保持部58に駆動ローラ17を保持し、その第2の通孔61を第1の取付け盤57の第1の通孔59に対向させた状態で、駆動ローラ17の第2の通孔61に第2の取付け盤62の内面に設けられた円筒軸64を挿入する。駆動ローラ17を保持部58に外嵌保持することで、駆動ローラ17と第1の取付け盤57(駆動軸19)との中心が一致する。
【0047】
ついで、上記円筒軸64に第1の通孔59側から固定手段としての図4に示すねじ軸65を挿通し、そのねじ軸65の先端部を上記第2の取付け盤62に形成されたねじ孔63に螺合する。ねじ軸65の外径寸法は上記円筒軸64の内径寸法とほぼ同等に形成されている。それによって、円筒軸64にねじ軸65を挿通することで、第2の取付け盤62は第1の取付け盤57に対して径方向にがた付くことなく連結固定されるとともに、これら第1、第2の取付け盤57,62によって上記駆動ローラ17が保持される。
【0048】
上記円筒軸64の長さ寸法は上記駆動ローラ17の厚さ寸法よりもわずかに大きく設定されている。そのため、駆動ローラ17を保持した上記第1、第2の取付け盤57,62は上記駆動ローラ17の両側面に圧接しない状態となっている。
【0049】
上記駆動ローラ17の第2の通孔61には上記第2の取付け盤62に一端が固定された円筒軸64が挿通されている。そのため、上記第1の取付け盤57、上記駆動ローラ17及び上記第2の取付け盤62は上記駆動軸19と一体的に回転するようになっている。
【0050】
上記第1の取付け盤57と第2の取付け盤62は薬液に対する耐蝕性や耐熱性、さらに駆動ローラ17を保護する剛性を備えた金属材料、たとえばステンレス鋼などによって形成されている。
【0051】
上記駆動ローラ17、第1の取付け盤57及び第2の取付け盤62はローラユニット66を構成し、このローラユニット66、上記駆動軸19、この駆動軸19を回転駆動する駆動源51などの駆動ユニット18によって基板Wを駆動ローラ17の回転によって搬送する搬送装置を構成している。
【0052】
上記構成の搬送装置によれば、基板Wが第1の処理ユニット1Aで80℃程度に加熱された剥離液によって処理されたり、第5の処理ユニット1Eで温風によって乾燥処理される際、これら処理ユニット1A,1Eに設けられた基板Wを搬送するための搬送装置を構成するローラユニット66は熱影響を受けることになる。
【0053】
ローラユニット66が熱影響を受けると、第1、第2の取付け盤57,62と駆動ローラ17が熱膨張する。駆動ローラ17は合成樹脂製であり、第1、第2の取付け盤57,62は金属製であって、駆動ローラ17の熱膨張係数が第1、第2の取付け盤57,62に比べて格段に大きい。
【0054】
そのため、駆動ローラ17は熱膨張するが、第1、第2の取付け盤57,62はほとんど熱膨張しないから、それらの熱膨張率の差によって第1、第2の取付け盤57,62に保持されて円筒軸64によって保持固定された駆動ローラ17はいびつな円形状に変形する虞がある。
【0055】
図5(a)は室温下での駆動ローラ17を示し、図5(b)は熱影響を受けた駆動ローラ17を示している。室温下では駆動ローラ17の内径寸法と第1の取付け盤57の保持部58の外径寸法がほぼ同じであるために、3つの円筒軸64が第1の取付け盤57の保持部58に保持された駆動ローラ17の第2の通孔61と軸心を一致させた状態にあり、その状態で駆動ローラ17は上記保持部58によって径方向にがた付くことなく保持されている。
【0056】
上記ローラユニット66が熱影響を受けると、図5(b)に示すようにリング状の駆動ローラ17は外径寸法及び内径寸法が径方向に膨張する。膨張した状態で、駆動ローラ17が図5(b)にLで示す基板Wの荷重を受けると、駆動ローラ17は第1、第2の取付け盤57,61間で膨張した分だけ径方向下方へ変位する。
【0057】
つまり、リング状の駆動ローラ17は熱膨張によって内径寸法と外径寸法が大きくなる。一方、駆動ローラ17の第2の通孔61の内径寸法は円筒軸64の外径寸法よりも大きい。
【0058】
そのため、基板Wの荷重Lを受けた駆動ローラ17は、その荷重によって内周面の径方向の上端が保持部58の外周面の径方向上端に当たり、内周面の径方向の下端と保持部58の外周面との間に隙間δが形成された状態で第1、第2の取付け盤57,62とともに回転する。つまり、駆動ローラ17は熱膨張しても、いびつな円形状に変形することがない。
【0059】
しかも、駆動軸19の回転中心Oから基板Wの下端を支持する駆動ローラ17の外周面の点Pまでの距離Rは、図5(b)に示すように駆動ローラ熱膨張した後であっても、図5(a)に示す熱膨張する前と同じに維持される。
【0060】
それによって、駆動ローラ17は上記基板Wを上下方向にがた付かせることなく、しかも距離Rが一定に維持されることで、基板Wの搬送高さを変化させることなく安定した状態で円滑に搬送することができる。
【0061】
上記一実施の形態では円筒軸を第2の取付け盤に固定したが、第1の取付け盤に固定してもよく、また円筒軸はねじ軸によってこのねじ軸と軸心を一致させて保持されるから、ねじ軸が第1の取付け盤の第1の通孔に対して同軸に位置決めされれば、上記円筒軸を第1、第2の取付け盤のいずれにも固定しなくてもよい。
【0062】
第1の取付け盤に駆動ローラを保持する保持部を設けたが、駆動ローラが基板の重量によって径方向内方へ変形することのない硬さを備えていれば、第1の基板に保持部を設けなくてもよい。
【0063】
上記一実施の形態では基板を所定の角度で起立させて搬送する場合を例に挙げたが、基板を水平に搬送する場合であっても、この発明の搬送装置を適用することで、駆動ローラが熱影響を受けても、基板をがた付かせることなく、円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の一実施の形態の基板の処理装置の概略的構成を示す斜視図。
【図2】処理ユニットの縦断面図。
【図3】ローラユニットの分解斜視図。
【図4】ローラユニットの分解側面図。
【図5】(a)は駆動ローラが熱影響を受ける前の状態の説明図、(b)は熱影響を受けた状態の説明図。
【符号の説明】
【0065】
19…駆動軸、57…第1の取付け盤、58…保持部、59…第1の通孔、61…第2の通孔、62…第2の取付け盤、64…円筒軸、66…ローラユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送装置であって、
回転駆動される駆動軸と、
この駆動軸に設けられ上記基板を支持して駆動軸とともに回転し、その回転によって上記基板を搬送するローラユニットを備え、
上記ローラユニットは、上記駆動軸の端部に外面が連結された第1の取付け盤と、
合成樹脂によってリング状に形成され周辺部に複数の通孔が周方向に所定間隔で形成されていて、外周面で上記基板を支持する駆動ローラと、
この駆動ローラを上記第1の取付け盤とで保持する第2の取付け盤と、
外径寸法が上記駆動ローラの通孔の内径寸法よりも小さく設定されていて、上記第1の取付け盤と第2の取付け盤とで上記駆動ローラを保持したときに上記通孔に挿通される複数の円筒軸と、
上記駆動ローラを保持した上記第1の取付け盤と第2の取付け盤を連結固定する固定手段とを具備し、
上記駆動ローラが径方向に熱膨張したときに、上記通孔の内径寸法と上記円筒軸の外形寸法との差によって上記駆動ローラの変形が防止されることを特徴とする基板の搬送装置。
【請求項2】
上記第1の取付け盤と第2の取付け盤のいずれか一方の内面には、上記駆動ローラの内径寸法よりもわずかに大きな円盤状の保持部が設けられ、この保持部に上記駆動ローラが外嵌保持されることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項3】
上記駆動ローラの外径寸法は、上記第1、第2の取付け盤の外径寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項4】
上記第1、第2の取付け盤は、合成樹脂によって形成された上記駆動ローラよりも熱膨張係数の小さな金属材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項5】
上記基板は所定の角度で起立して搬送され、この基板の下端が上記駆動ローラの外周面によって支持されることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27099(P2009−27099A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191298(P2007−191298)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】