説明

基板の洗浄方法及び半導体製造装置

【課題】パターンの形状を保持した状態でパターンの底部まで洗浄可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】真空状態に保持された処理容器内にてウエハ上の膜に所定のパターンを形成するウエハの洗浄方法は、エッチング処理により所定のパターンが形成されたウエハ上の膜を所望のクリーニングガスにより洗浄する工程と(前工程)、前工程後、酸化性ガスによりパターン表面の残渣を酸化させる工程と(酸化工程)、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる工程と(還元工程)を含む。酸化工程と還元工程は連続して実行する(連続工程)。前工程及び連続工程に用いられるガスは、内部圧力が処理容器の内部圧力より高圧に保持されたガスノズルから処理容器内に放出されることによりクラスタ化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング処理により所望のパターンが形成された基板の洗浄方法及び該基板の洗浄方法を利用して半導体を製造する半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置にて、Cu配線時に基板上にデュアルダマシン構造を形成する場合や、リソグラフィー技術を用いて転写、露光、現像により基板上に所望のパターンを形成する場合、膜のドライエッチングやレジストのアッシングにより、形成されたトレンチやビア等のパターンの側壁、底壁にエッチング残渣やアッシング残渣が付着する。付着したドライエッチングやアッシング後の洗浄工程は、従来、薬液を使って液相で洗浄するウエット洗浄が主に行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、パターンをさらに微細化してほしいという要求と層間絶縁膜にLow−k膜を利用したいという要求により、いくつかの問題が顕在化してきている。その一つは、薬液による基板洗浄後の乾燥工程中に、クリーニング用の薬液の表面張力によりパターンが倒れるという問題が生じていた。もう一つは、薬液が浸透してLow−k膜へのダメージが大きくなるという問題があった。具体的には、ダメージによりLow−k膜の比誘電率が高くなったり、パターン幅(CD:Critical Dimension)が大きくなったりするという問題が生じていた。
【0004】
また、パターンの微細化に伴い、ビアはより細く、かつその底部は深くなったため、ビア底のエッチング残渣を洗浄することが難しくなっていた。よって、細いビアホールのビア底まで均一に洗浄しようとすると、直進性及び指向性の高い分子をビア底に衝突させ、ビア底にて化学的反応又は物理的反応を促進させる必要があった。
【0005】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、基板上に形成されたパターンの形状を保持した状態でパターンの底部まで洗浄可能な、新規かつ改良された基板の洗浄方法及び半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、真空状態に保持された処理容器内にて、基板上の膜に所定のパターンが形成された基板を洗浄する方法であって、エッチング処理により所定のパターンが形成された基板上の膜を所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、前工程後、酸化性ガスにより前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を連続して実行する連続工程とを有し、前記前工程及び前記連続工程に用いられるガスは、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルから前記処理容器内に放出されることによりクラスタ化することを特徴とする基板の洗浄方法が提供される。
【0007】
かかる構成によれば、前記前工程及び前記連続工程に用いられるガスは、ガスノズルから処理容器内に放出され、クラスタ化される。クラスタ化されたガスは、数百万〜数千万個の分子の集合体である。よって、クラスタ化されたガス分子は、寄り固まって形成された塊のため、分子がそれぞれ一つずつ持っている運動エネルギーよりも高い運動エネルギーを持っている。よって、クラスタ化されたガス分子を基板に衝突させることにより化学反応を促進させ、より効果的に基板を洗浄することができる。
【0008】
また、クラスタ化されたガスは直進性及び指向性が高いため、クリーニングガスを細く深いビア底まで運ぶことができ、ビア底まで確実にクリーニングすることができる。また、次工程でも、クラスタ化された酸化性ガスによりビア底までパターン表面の残渣を酸化させることができるとともに、クラスタ化された還元性ガスによりビア底まで残渣を還元し、除去することができる。この結果、近年の微細加工に対応してパターンのすみずみまで洗浄することができる。
【0009】
また、クラスタ化されたガス分子は、基板の膜に衝突した瞬間に各分子がバラバラになって広がりながら飛び散るため、衝突と同時に一つ一つの分子の運動エネルギーは分散し、膜に大きなダメージを与えない。特にLow−k膜の場合には、ダメージにより比誘電率が高くなったり、パターン幅CDが大きくなったりするが、クラスタ化されたガスを用いれば洗浄によるLow−k膜の劣化を防ぐことができる。
【0010】
また、洗浄に薬液の液相を用いず、気相のクリーニングガスを用いるため、薬液の表面張力によりパターンが倒れるという問題も生じない。
【0011】
さらに、かかる構成によれば、連続工程では、クリーニングガスによる洗浄工程(前工程)後、酸化性ガスによる残渣の酸化工程と該残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程とを連続して実行する。これによれば、ガスノズルを用いた非プラズマ方式を用いて、簡単に酸化工程と還元工程とを同一処理容器内で連続処理でき、洗浄時間を短縮し、スループットを高めることができる。
【0012】
前記クリーニングガスは、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0013】
前記ガスノズルと前記基板との距離dは、式1にて定義される前記ガスノズルの出口から衝撃波が発生する位置までの距離Xmより長く設定され、前記各工程に用いられるガスは、前記ガスノズルと前記基板との間でクラスタ化し、前記発生した衝撃波を用いて基板に衝突させてもよい。
【数1】

ただし、Dはガスノズルの出口の内径、Pはガスノズルの内部圧力、Pは処理容器の内部圧力である。
【0014】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.4MPa以上であり、前記処理容器の内部圧力Pは、1.5Pa以下であってもよい。
【0015】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.9MPa以下であってもよい。
【0016】
前記基板の洗浄方法は、基板に配線を形成する際のパターンの洗浄、又は露光後のレジストの洗浄に用いられてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、前記ガスノズルから所望のクリーニングガスを前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによって基板上の膜を洗浄する前工程と、前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を連続して実行する連続工程と、を含む工程を実行することを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせからなるクリーニングガスを、前記ガスノズルから前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによって基板上の膜を洗浄する前工程と、前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を含む複数工程を実行することを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、基板上に形成されたパターンの形状を保持した状態でパターンの底部まで洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラスタ装置の概略構成を示した縦断面図である。
【図2】図2(a)は一分子が衝突する際の基板へのダメージを説明するための図であり、図2(b)はクラスタ化された分子が衝突する際の基板へのダメージを説明するための図である。
【図3】デュアルダマシン構造を形成するプロセスを示した図である。
【図4】同実施形態に係る基板の洗浄方法を示した図である。
【図5】同実施形態の変形例に係るノズル出口から衝撃波までの距離を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
[クラスタ装置の構成]
まず、本発明の一実施形態に係るクラスタ装置の概略構成について、図1を参照しながら説明する。クラスタ装置10は、ウエハWを収容し内部を密閉することができる真空の処理容器100を有している。処理容器100は、遮断器120により仕切られ、ガス供給室100a、処理室100bの2つに分かれている。ガス供給室100a、処理室100bの底部には、各室内を排気する排気口105a、105bがそれぞれ形成され、各室内の雰囲気を真空引きする排気ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0023】
ガス供給室100aの側壁には、ガスノズル110が設けられている。ガスノズル110は、ターゲットに向けて開口するように位置づけられていて、これによりガスノズル110から放出されるガスは指向性を有するようになっている。ガスノズル110の上流側には、ガス供給管115を介してガス供給源125が設けられている。ガス供給源125は、処理容器100の外部に設けられ、その内部には例えばクリーニングガス、酸化性ガス、還元性ガスがそれぞれ貯留されている。ガス供給管115には、弁体(図示しない)が設けられていて、その開閉を制御することによりガス供給管115からガスノズル110内に供給されるガス種を切り替えるようになっている。
【0024】
供給されたガスは、ガスノズル110から放出され、クラスタ化される。このメカニズムについて説明する。ガスノズル110の内部圧力Pは、0.4MPa以上0.9MPa以下になるように真空引きされている。一方、処理容器100の内部圧力Pは、1.5Pa以下に保持されるように真空引きされている。このように、ガスは、内部圧力Pが処理容器100の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズル110から処理容器100内に放出される。
【0025】
このように、高圧のガスノズル110から低圧の処理容器100内に、反応性の高いガスgを放出すると、圧力差によってガスgの温度が急速に冷え、分子が寄り固まって形成される。このようにしてガスノズル110から処理容器100内に放出されたガスgは、クラスタ化される。クラスタ化されたガス(以下、ガスクラスタCgとも称する)は、数百万〜数千万個の分子が比較的弱く結びついた集合体である。
【0026】
前述のように、ガスクラスタCgは指向性を有しているが、中にはまっすぐに飛ばないものがある。これがウエハWまで飛来してウエハWに衝突すると、期待していない方向にもエッチング処理やクリーニング処理が進んでしまう。そこで、ガスノズル110とウエハWとの間に遮断器120を設け、まっすぐに飛ばないガスクラスタCgがウエハWに衝突しないようにしている。遮断器120には穴120aが設けられていて、ガスクラスタCgは、その穴120aから処理室100bに入る。
【0027】
処理室100cの内部には、ウエハWを保持する保持部材155が設けられている。保持部材155は、ガスクラスタCgがウエハWの表面に垂直に衝突するようにウエハWを保持する。保持部材155には、保持部材155を移動させる図示しない移動部材が設けられている。移動部材の移動により、ガスクラスタCgはウエハWの表面に対して垂直方向から、ウエハWの表面全面に均一に供給される。
【0028】
かかる構成によれば、エッチング形状やクリーニング精度を良好にすることができる。形状を良好にできるのは、エッチングやクリーニング反応が、ガスクラスタCgの衝突で熱エネルギーを生じた部分でのみ進行するためである。ガスクラスタCgは、熱エネルギーのない部分ではエッチングやクリーニング反応を進行させない。図1のウエハW上にはマスクMの下に所定の層F及び層Fに形成されたホールHが描かれているが、指向性を有するガスクラスタCgは、深く掘り進んだホールHの側壁Haに衝突しないため、ホールHの側壁Haで熱エネルギーが発生しない。このため、ホールHの側壁Haは基本的にエッチングまたはクリーニングされない。一方、掘り進んだホールHの底部HbにはガスクラスタCgが衝突してエッチングまたはクリーニングが進行する。このようにして、本実施形態によれば、細く深い、良好な形状のホールを形成するとともにクリーニング精度を高めることができる。
【0029】
また、かかる構成によれば、ウエハWへの電気的なダメージを与えないプロセスを実現できる。既存のプロセスでは、反応性ガスをプラズマによってイオン化していた。イオン化したガスは電気的エネルギーを持つため、ウエハWに電気的なダメージを与えるおそれがあった。しかし、本実施形態にかかるクラスタ装置10によれば、ガスクラスタCgをイオン化しない。このため、エッチングの際、ウエハWに電気的なダメージを与えずにプロセスを進行することができる。
【0030】
また、かかる構成によれば、このようにガスクラスタCgをイオン化しないため、装置にプラズマ源を必要としない。これにより、装置がシンプルになるためメンテナンスしやすく、製造コストを低減することができ、量産に向いた構造とすることができる。
【0031】
[クラスタ化された分子の衝突]
次に、クラスタ化されたガスの衝突状態について、図1を参照しながら説明する。前述したように、図1に示したガスは、ガスノズル110から処理容器100の内部に放出され、クラスタ化される。クラスタ化されたガス(ガスクラスタCg)は、数百万〜数千万個の分子の集合体である。このようにクラスタ化されたガス分子は、寄り固まって形成された塊のため、分子がそれぞれ一つずつ持っている運動エネルギーよりも高い運動エネルギーを持っている。ガスクラスタの持つ高い運動エネルギーは、熱エネルギーに変換される。この熱エネルギーが化学反応を促進させる。よって、クラスタ化されたガス分子をウエハWに衝突させることにより高いエネルギーを用いて化学反応を促進させ、より効果的にウエハWを洗浄することができる。
【0032】
これに加えて、クラスタ化されたガスは、直進性及び指向性が高い。このため、ウエハW上の膜Fに形成された、5μm程度の細く深いビアの側面だけでなく、ビア底までガスを到達させることができる。これにより、ビア底まで確実にクリーニングすることができる。また、洗浄に薬液を用いず、気相のガスを用いるため、薬液の表面張力によりパターンが倒れるという問題も生じない。
【0033】
また、クラスタ化されたガス分子は、ウエハWの膜に衝突した瞬間に各分子がバラバラになって広がりながら飛び散るため、衝突と同時に一つ一つの分子の運動エネルギーは分散し、膜Fに大きなダメージを与えない。これについて、図2を用いて説明する。図2(a)は一分子が衝突する際のウエハWへのダメージを示し、図2(b)はクラスタ化された分子が衝突する際のウエハWへのダメージを示す。
【0034】
図2(a)に示したように、プラズマ源135では、反応性イオンを含むプラズマが生成される。反応性イオンはクラスタ化されていないため、分子の集合体ではないので一分子の衝突時のエネルギーは低いが、ウエハWの深部まで衝突のダメージが及んでいることがわかる。一方、図2(b)に示したように、ガスノズル110からはプラズマ化されていないガスを放出し、クラスタCgを生成する。生成されたクラスタCgは、ウエハWの衝突のエネルギーは高いが、ウエハWの膜に衝突した瞬間に各分子がバラバラになって飛び散るため、ウエハWに対するダメージが少ないことがわかる。これにより、特にLow−k膜の場合には、衝突によるダメージを低減できることがわかる。これにより、ダメージによりLow−k膜の比誘電率が高くなったり、パターン幅CDが大きくなったりすることを回避することができる。
【0035】
[ガスクラスタCgを用いた洗浄方法]
次に、本実施形態に係るガスクラスタCgを用いた洗浄方法について説明する。図3(a)〜図3(f)は、デュアルダマシン法による多層配線の形成工程の一例を示す。図4は、本実施形態に係るウエハWの洗浄方法を示す。
【0036】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、フォトリソグラフィー技術を利用したシングルダマシン法やデュアルダマシン法を用いて、ウエハWに多層配線回路を形成する。図3(a)では、ウエハW上に形成された上層の層間絶縁膜であるLow−k膜24上に反射防止膜(BARC;Bottom Anti−Reflective Corting)25を形成した後、反射防止膜25上にレジスト膜26を形成し、次いでレジスト膜26を所定のパターンで露光し、これを現像することによって、レジスト膜26に回路パターンを形成する。なお、Low−k膜24の下には、下層の層間絶縁膜であるLow−k膜20、バリアメタル層21、Cu配線層22、ストッパー膜23が形成されている。
【0037】
図3(b)では、こうして得られたウエハの表面を、Low−k膜24にビアホール24aが形成されるようにエッチング処理する。図3(c)では、反射防止膜25とレジスト膜26を、薬液処理やアッシング処理等によって除去する。その後、ビアホール24aを有するLow−k膜24の表面に犠牲膜27を形成する。このときビアホール24aも犠牲膜27によって埋められる。
【0038】
図3(d)では、犠牲膜27の表面にレジスト膜28を形成して、レジスト膜28を所定のパターンで露光し、これを現像することによって、レジスト膜28に回路パターンを形成する。こうして得られたウエハの表面を、所定時間、エッチング処理することによって、図3(e)に示した、ビアホール24aの上部がより幅の広いトレンチ24bが形成される。最後に、図3(f)に示したように、レジスト膜28と犠牲膜27をアッシングにより除去することによって、ビアホール24aとトレンチ24bを備えた溝配線要素がLow−k膜24に形成される。
【0039】
かかる工程では、図4(a)に示したように、ビアホール24a及びトレンチ24bのエッチング処理により、トレンチ24bおよびビア24aの側壁、底壁にエッチング残渣50aが付着し、残存する。また、レジスト膜27のアッシング処理によっても、トレンチ24bおよびビア207aの側壁、および底壁にアッシング残渣50bが付着し、残存する。さらに、パターン形成中にCu配線層22から飛び散った銅Cu50cがビア底に付着する。エッチング残渣、アッシング残渣及びCu配線層22から飛び散った銅Cu50cはすべて、パターン表面の残渣である。
【0040】
本実施形態に係る洗浄方法によれば、これらの残渣をきれいに取り除くことができる。以下、本実施形態に係る洗浄方法について図4(a)〜図4(c)を参照しながら説明する。
【0041】
(前工程)
図4(a)に示したように、前工程では、エッチング処理により所定のパターンが形成されたウエハWを所望のクリーニングガスにより洗浄する。クリーニングガスとしては、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせ又はこれらの組合せを使用することができる。このように反応性の高いNHOH等の洗浄薬液(NH4OH・・・)等を気相状にしてパターンを洗浄する。
【0042】
ガスノズル110は、パターンに形成されたホール(24a,24b)に向けられている。この状態で、ガスノズル110からクリーニングガスを放出すると、ガスは、処理容器内でクラスタ化する。ガスクラスタは、直進性、指向性を有するため、トレンチ24b及びビア24aの側壁だけでなくビア底Bまで侵入し、エッチング残渣、アッシング残渣、ビア底Bの銅と化学的に反応する。
【0043】
本工程においては、反応性の高いクリーニングガスをクラスタ化しているため、パターンの底Bまでガスを到達させることができ、化学反応も促進される一方、Low−k膜20、24のダメージが少ない処理を実現できる。
【0044】
(連続工程:酸化工程)
前工程後、酸化工程と還元工程とを含む連続工程が実施される。すなわち、酸化工程と還元工程との間にウエハWの搬送工程は存在せず、同一処理室内で両工程が実行される。
【0045】
酸化工程では、図4(b)に示したように、酸化性ガスであるOガスによりパターン表面のエッチング残渣、アッシング残渣及びビア底Bの銅を酸化させる。
【0046】
本工程においても酸化性ガスがクラスタ化しているため、パターンの底Bまでガスを到達させることができ、酸化反応も促進される一方、Low−k膜20、24のダメージが少ない処理を実現できる。
【0047】
(連続工程:還元工程)
還元工程は、図4(c)に示したように、酸化工程にて酸化された残渣24a,24b、50cを還元性ガスであるHCOOHにより還元させる。本工程では、還元性ガスにより酸化銅を還元反応させることによりぎ酸銅を生成する。ぎ酸銅は揮発性であるから、処理容器100から排気される。これにより、Cu配線層22から飛び散った銅Cu50cを除去することができる。同様に、エッチング残渣、アッシング残渣の酸化物も還元反応により揮発性物質にして除去する。
【0048】
本工程においても還元性ガスをクラスタ化しているため、パターンの底Bまでガスを到達させることができ、還元反応も促進される一方、Low−k膜のダメージが少ない処理を実現できる。
【0049】
さらに、かかる構成によれば、連続工程では、クラスタ化されたクリーニングガスによる洗浄工程(前工程)後、酸化工程と還元工程とを連続して実行する。これによれば、ガスノズル110を用いた非プラズマ方式により、酸化工程と還元工程とを同一処理室内で簡単に連続処理でき、洗浄時間を短縮し、スループットを高めることができる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態に係る洗浄方法によれば、洗浄薬液の液相を使用する替わりに気相のガスクラスタCgを用いる。これにより、液相の薬液を用いる際に生じていたパターン倒れを回避することができる。また、運動エネルギーが高く、かつ直進性及び指向性の高いガスクラスタを用いることにより、細く深いパターン底Bを的確かつ迅速に洗浄することができる。さらに、ガスクラスタCgの結合は弱いため、衝突時、Low−k膜20、24のダメージを少なくすることができる。
【0051】
(変形例)
最後に、変形例に係る洗浄方法について説明する。図5は、ガスノズル110の出口110aから衝撃波までの距離を示した図である。ISSN0452−2982航空宇宙技術研究所資料(TM−741)“LIF法による自由噴流の可視化と構造解析”(津田尚一 1997年7月航空宇宙研究所)によれば、ガスノズル110の出口110aから衝撃波MD(Mach Disc)が現れる位置までの距離X、ガスノズル110の喉部である出口110aの内径D、ガスノズルの内部圧力Ps、ガスが導入される処理容器100の内部圧力Pには下記式1の関係がある。
【数1】

【0052】
このとき、ガスノズル110の出口110aからウエハWまでの距離dは、式1にて定義されるガスノズル110の出口110aからのガス流により衝撃波MDが発生する位置までの距離Xmより長く設定されることが好ましい。
【0053】
本変形例の場合にも、上記各工程に用いられるガスは、ガスノズル110とウエハWとの間でクラスタ化し、発生した衝撃波MDのエネルギーを用いてさらに強くウエハWに衝突する。これにより、より化学反応を促進し、膜にダメージを与えることなくホールを洗浄することができる。特に、ビア底Bに付着した酸化銅までもきれいに洗浄することができる。
【0054】
上記実施形態に係る基板の洗浄方法において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、基板の洗浄方法の実施形態を、基板を洗浄する半導体製造装置の実施形態とすることができる。
【0055】
これにより、真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板を洗浄する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、前記ガスノズルから所望のクリーニングガスを前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによってエッチング処理後の所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する前工程と、前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を連続して実行する連続工程と、を含む複数工程を実行することを特徴とする半導体製造装置の実施形態が実現可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る酸化工程と還元工程とは連続工程でなくてもよい。この場合には、真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する半導体製造装置であって、前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせからなるクリーニングガスを、前記ガスノズルから前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによって基板上の膜を洗浄する前工程と、前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を含む複数工程を実行することを特徴とする半導体製造装置の実施形態が実現可能となる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、上記実施形態では、基板の洗浄方法は、デュアルダマシン構造のビア底などのパターンの洗浄に用いたが、これに限定されず、基板上に形成されたパターンの洗浄に用いることができる。たとえば、リソグラフィー技術を用いて転写、露光、現像により基板上に所望のパターンを形成する場合の露光後のレジスト等の洗浄に用いることも可能である。
【0059】
本発明に係る基板は、半導体ウエハであってもよく、FPD(Flat Panel Display)であってもよい。
【0060】
本発明に係るクラスタ装置は、イオン化器及び加速器を内蔵していてもよい。この場合、クラスタ化されたガスは、ガスノズルから供給され、イオン化器によりイオン化された後、加速器により加速され、保持部材155に保持されたウエハWの表面に対して垂直に供給される。この機構は、GCIB(Gas Cluster Ion Beam)と呼ばれている。
【符号の説明】
【0061】
10 クラスタ装置
20、24 Low−k膜
21 バリアメタル
22 Cu配線層
24a ビアホール
24b トレンチ
100 処理容器
100a ガス供給室
100b 処理室
110 ガスノズル
110a ガスノズルの出口
120 遮断器
125 ガス供給源
155 保持部材
Cg ガスクラスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態に保持された処理容器内にて、基板上の膜に所定のパターンが形成された基板を洗浄する方法であって、
エッチング処理により所定のパターンが形成された基板上の膜を所望のクリーニングガスにより洗浄する前工程と、
前工程後、酸化性ガスにより前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を連続して実行する連続工程とを含み、
前記前工程及び前記連続工程に用いられるガスは、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルから前記処理容器内に放出されることによりクラスタ化することを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記クリーニングガスは、NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法。
【請求項3】
前記ガスノズルと前記基板との距離dは、式1にて定義される前記ガスノズルの出口から衝撃波が発生する位置までの距離Xmより長く設定され、
前記各工程に用いられるガスは、前記ガスノズルと前記基板との間でクラスタ化し、前記発生した衝撃波を用いて基板に衝突させることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の洗浄方法。
【数1】

ただし、Dはガスノズルの出口の内径、Pはガスノズルの内部圧力、Pは処理容器の内部圧力である。
【請求項4】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.4MPa以上であり、
前記処理容器の内部圧力Pは、1.5Pa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項5】
前記ガスノズルの内部圧力Pは、0.9MPa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項6】
前記基板の洗浄方法は、基板に配線を形成する際のパターンの洗浄、又は露光後のレジストの洗浄に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項7】
真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する半導体製造装置であって、
前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、
前記ガスノズルから所望のクリーニングガスを前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによって基板上の膜を洗浄する前工程と、
前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を連続して実行する工程と、を含む複数工程を実行することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項8】
真空状態に保持された処理容器内にて所定のパターンが形成された基板上の膜を洗浄する半導体製造装置であって、
前記半導体製造装置は、内部圧力Pが前記処理容器の内部圧力Pより高圧に保持されたガスノズルを備え、
NHOH,H,HCL,HSO、HF,NH4Fの少なくともいずれか、又はこれらの組み合わせからなるクリーニングガスを、前記ガスノズルから前記処理容器内に放出することにより該クリーニングガスをクラスタ化し、クラスタ化されたクリーニングガスによって基板上の膜を洗浄する前工程と、
前工程後、前記ガスノズルから所望の酸化性ガスを前記処理容器内に放出することにより該酸化性ガスをクラスタ化し、クラスタ化された酸化性ガスによって前記パターン表面の残渣を酸化させる酸化工程と、
前記酸化された残渣を還元性ガスにより還元させる還元工程と、を含む複数工程を実行することを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187703(P2011−187703A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51735(P2010−51735)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】