説明

基板処理方法

【課題】エッチングにおける加工制御性を向上することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、内部が減圧されるチャンバ11と、該チャンバ11内に配置されてウエハWを載置するサセプタ12と、プラズマ生成用高周波電圧をサセプタ12に印加するHF高周波電源18と、バイアス電圧発生用高周波電圧をサセプタ12に印加するLF高周波電源20と、矩形波状の直流電圧をサセプタ12に印加する直流電圧印加ユニット23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基板に所定の処理を施す基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)に所定のプラズマ処理を施す基板処理装置は、減圧された処理室と、該処理室内に配置された載置台と、該載置台に接続されて比較的高い周波数の高周波電圧(以下、「HF(High Frequency)高周波電圧」という。)を載置台としてのサセプタへ印加するHF高周波電源と、サセプタに接続されて比較的低い周波数の高周波電圧(以下、「LF(Low Frequency)高周波電圧」という。)をサセプタへ印加するLF高周波電源とを備える。
【0003】
HF高周波電圧は処理室内に導入された処理ガスを励起してプラズマを生じさせる。また、LF高周波電圧はサセプタにおいてバイアス電圧を生じさせる。このときサセプタにはセルフバイアスが発生し、該サセプタの電位は時間平均すると負の電位になるためイオンは該電位差によってサセプタに引き込まれる。
【0004】
ところで、LF高周波電圧を印加してバイアス電圧をサセプタに生じさせた場合、サセプタへ引き込まれるイオンのエネルギーの分布は、LF高周波電圧が正弦波であるため、図9に示すように、比較的低いエネルギーのピークと、比較的高いエネルギーのピークとを有し、且つある程度の範囲に広がることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−187975号公報(図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、比較的低いエネルギーのイオンによるエッチングは等方性が強く、比較的高いエネルギーのイオンによるエッチングは異方性が強いため、LF高周波電圧を印加してバイアス電圧をサセプタに生じさせると、エッチングにおいて等方性を優先したい場合であっても、エッチングの異方性も強くなり、エッチングにおいて異方性を優先したい場合であっても、エッチングの等方性が強くなる。その結果、エッチングによって所望の形状のホールやトレンチを形成できない。すなわち、LF高周波電圧を用いてサセプタにバイアス電圧を生じさせると、エッチングにおける加工制御性が余り良くないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、エッチングにおける加工制御性を向上することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置は、内部が減圧される処理室と、該処理室内に配置されて基板を載置する載置台と、比較的高い周波数の高周波電圧を印加する第1の高周波電源と、比較的低い周波数の高周波電圧を前記載置台に印加する第2の高周波電源と、矩形波状の直流電圧を前記載置台に印加する直流電圧印加ユニットとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記第2の高周波電源及び前記載置台から前記直流電圧印加ユニットを接続/分離可能な接続切替スイッチをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項1又は2記載の基板処理装置において、前記第1の高周波電源からの前記比較的高い周波数の高周波電圧を遮断するローパスフィルタをさらに備え、前記第1の高周波電源は前記載置台に接続され、前記ローパスフィルタは、前記第1の高周波電源及び前記第2の高周波電源の間、並びに前記第1の高周波電源及び前記直流電圧印加ユニットの間に介在することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1又は2記載の基板処理装置において、前記処理室内に配置されて前記載置台と対向する対向電極をさらに備え、前記第1の高周波電源は前記対向電極に接続されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の基板処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記比較的高い周波数は40MHz〜300MHzであり、前記比較的低い周波数は380KHz〜20MHzであり、前記直流電圧の矩形波状の周波数は3MHz以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第2の高周波電源が載置台に比較的低い周波数の高周波電圧を印加し、直流電圧印加ユニットが矩形波状の直流電圧を載置台に印加する。載置台に比較的低い周波数の高周波電圧を印加してバイアス電圧を載置台に生じさせた場合、ある程度の範囲に広がって分布し且つ比較的低いエネルギーのピーク及び比較的高いエネルギーのピークを有するイオンのエネルギーの分布が得られ、載置台に矩形波状の直流電圧を印加してバイアス電圧を載置台に生じさせた場合、局所的に存在し且つ1つのピークのみを有するイオンのエネルギーの分布が得られる。また、イオンのエネルギーの分布におけるピークの位置や数によってエッチングにおける異方性の強さや等方性の強さは変わる。したがって、第2の高周波電源からの出力値及び直流電圧印加ユニットからの出力値の比率を調整することにより、エッチングにおける異方性の強さや等方性の強さを制御することができ、もって、エッチングにおける加工制御性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1における直流電圧印加ユニットの回路構成を概略的に示す図である。
【図3】図1における直流電圧印加ユニットが印加する矩形波状の直流電圧を説明するための図である。
【図4】図1におけるサセプタへ引き込まれるイオンのエネルギーの分布を示すグラフである。
【図5】図1の基板処理装置の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図6における接続切替スイッチの変形例を示す図であり、図7(A)は第1の変形例を示し、図7(B)は第2の変形例を示す。
【図8】図6の基板処理装置の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】従来の基板処理装置におけるサセプタへ引き込まれるイオンのエネルギーの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。本基板処理装置は、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマエッチング処理を施す。
【0017】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内にはウエハWを上面に載置する円柱状のサセプタ12(載置台)が配置されている。基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成される。この側方排気路13の途中には排気プレート14が配置される。
【0018】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部材であり、チャンバ11内部を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11内部の上部(以下、「処理室」という。)15の内部空間には後述するようにプラズマが発生する。また、チャンバ11内部の下部(以下、「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続される。排気プレート14は処理室15に発生するプラズマを捕捉又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0019】
排気管17にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0020】
チャンバ11内のサセプタ12にはHF高周波電源18(第1の高周波電源)がHF整合器19を介して接続され、HF高周波電源18は比較的高い周波数、例えば、40MHz〜300MHzの高周波電圧(以下、「プラズマ生成用高周波電圧」という。)をサセプタ12に印加する。また、サセプタ12にはLF高周波電源20(第2の高周波電源)がLF整合器21及びローパスフィルタ22を介して接続され、LF高周波電源20は比較的低い周波数、例えば、380KHz〜20MHzの高周波電圧(以下、「バイアス電圧発生用高周波電圧」という。)をサセプタ12に印加する。さらに、サセプタ12には直流電圧印加ユニット23がローパスフィルタ22を介して接続され、直流電圧印加ユニット23は後述する矩形波状の直流電圧をサセプタ12に印加する。高周波電圧や直流電圧が印加されるサセプタ12は下部電極として機能する。基板処理装置10では、HF高周波電源18からサセプタ12までの配線と、ローパスフィルタ22からサセプタ12までの配線とが交わることがないため、ローパスフィルタ22は、電気回路的に、HF高周波電源18及びLF高周波電源20の間、並びにHF高周波電源18及び直流電圧印加ユニット23の間に介在する。
【0021】
HF整合器19は、プラズマ及びHF高周波電源18の間のインピーダンスを整合してプラズマ生成用高周波電圧のサセプタ12への印加効率を向上させ、LF整合器21は、プラズマ及びLF高周波電源20の間のインピーダンスを整合してバイアス電圧発生用高周波電圧のサセプタ12への印加効率を向上させる。ローパスフィルタ22はプラズマ生成用高周波電圧を遮断して当該プラズマ生成用高周波電圧がLF高周波電源20や直流電圧印加ユニット23へ流れ込むのを防止する。
【0022】
サセプタ12へ印加されたプラズマ生成用高周波電圧は、後述する処理ガスを励起して処理室15においてプラズマを生じさせ、サセプタ12へ印加されたバイアス電圧発生用高周波電圧や矩形波状の直流電圧は、サセプタ12においてバイアス電圧を生じさせる。上述したように、サセプタ12においてバイアス電圧は負の領域において変動するため、プラズマ中のイオンは電位差によってサセプタ12に引き込まれる。
【0023】
サセプタ12の上部周縁部には、該サセプタ12の中央部分が図中上方へ向けて突出するように段差が形成される。該サセプタ12の中央部分の先端には静電電極板24を内部に有する誘電体、例えば、セラミックスからなる円板状の静電チャック25が配置されている。静電電極板24には直流電源(図示しない)が接続されており、静電電極板24に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック25側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板24及びウエハWの裏面の間に電位差が生じる。静電電極板24及びウエハWの裏面の間の電位差は静電気力であるクーロン力又はジョンソン・ラーベック力を生じさせ、静電気力によってウエハWは静電チャック25に吸着保持される。
【0024】
また、サセプタ12は内部に冷媒流路からなる冷却機構(図示しない)を有し、該冷却機構はプラズマと接触して温度が上昇するウエハWの熱を吸収することによってウエハWの温度が所望の温度を上回るのを防止する。
【0025】
サセプタ12は伝熱効率や電極機能を考慮して導電体、例えば、アルミニウムから構成されるが、導電体をプラズマが発生する処理室15内へ晒すのを防止するために、該サセプタ12は側面を誘電体、例えば、石英(SiO)からなる側面保護部材26によって覆われる。
【0026】
さらに、サセプタ12の上部には、静電チャック25に吸着保持されたウエハWを囲むように環状のフォーカスリング27がサセプタ12の段差や側面保護部材26へ載置され、さらに、フォーカスリング27を囲むようにシールドリング28が側面保護部材26へ載置されている。フォーカスリング27はシリコン(Si)又は炭化珪素(SiC)からなり、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング27上まで拡大する。
【0027】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド29が配置される。シャワーヘッド29は、表面が絶縁膜で覆われた導電体、又は単体の半導体、例えば、シリコンからなる円板状の上部電極板30(対向電極)と、該上部電極板30を着脱可能に釣支するクーリングプレート31と、該クーリングプレート31を覆う蓋体32とを有する。上部電極板30は厚み方向に貫通する多数のガス孔33を有する円板状部材からなり、電気的に接地されているため、上部電極板30の電位は接地電位である。クーリングプレート31の内部にはバッファ室34が設けられ、このバッファ室34には処理ガス導入管35が接続されている。
【0028】
基板処理装置10はさらに制御部36を備え、該制御部36は内蔵するメモリ等に記憶されたプログラムに従って各構成要素の動作を制御し、プラズマエッチング処理を実行する。具体的に、制御部36は、各構成要素の動作を制御して処理ガス導入管35からバッファ室34へ供給された処理ガスを処理室15の内部空間へ導入し、該導入した処理ガスを、HF高周波電源18へ印加されたプラズマ生成用の高周波電圧によって励起してプラズマを生成し、プラズマ中のイオンをLF高周波電源20や直流電圧印加ユニット23がサセプタ12に生じさせるバイアス電圧によってウエハWに向けて引き込み、又はプラズマ中のラジカルをウエハWに到達させて該ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0029】
図2は、図1における直流電圧印加ユニットの回路構成を概略的に示す図である。
【0030】
図2において、直流電圧印加ユニット23はローパスフィルタ22へ接続される配線37から分岐する2つの接地配線38,39を有する。接地配線38は、配線37との分岐点37aから接地40までの間に順に、例えば、FET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子41及び直流電源42を有し、接地配線39は、分岐点37aから接地43までの間に、例えば、FETからなるスイッチング素子44を有する。
【0031】
直流電圧印加ユニット23では、スイッチング素子41,44が同期してオン/オフを繰り返す、具体的には、スイッチング素子41がオンである間はスイッチング素子44がオフとなり、スイッチング素子44がオンである間はスイッチング素子41がオフとなる。その結果、直流電圧印加ユニット23から印加される直流電圧は、図3に示すように、矩形波を呈する。ここで、直流電源42は陰極が分岐点37a側の接地配線38に接続されているため、直流電圧印加ユニット23から印加される直流電圧の矩形波は、所定の負の電位、例えば、−500V及び接地電位を繰り返す矩形波を呈する。基板処理装置10では、直流電圧印加ユニット23は、スイッチング素子41,44のオン/オフのタイミングを制御して周波数が3MHz以下の矩形波状の直流電圧をサセプタ12へ印加する。
【0032】
ところで、LF高周波電源20からバイアス電圧発生用高周波電圧をサセプタ12へ印加した場合、サセプタ12においてバイアス電圧が生じるが、上述したように、サセプタ12が負に帯電するため、バイアス電圧は負の領域において変動し、プラズマ中のイオンは負のバイアス電圧との電位差によってサセプタ12へ引き込まれる。このとき、イオンの加速度は電位差に応じて変化するため、サセプタ12へ引き込まれるイオンのエネルギーもバイアス電圧との電位差に応じて変化する。
【0033】
ここで、LF高周波電源20から印加されるバイアス電圧発生用高周波電圧は正弦波を呈するため、バイアス電圧も正弦波を呈する。正弦波を呈する電圧変動では、電圧が最小電圧近傍及び最大電圧近傍に留まる時間が長いため、イオン及びバイアス電圧の電位差が最大となる時間及び該電位差が最小となる時間が長くなる。その結果、サセプタ12へ引き込まれるイオンのエネルギーが最大となる時間、及び最小となる時間が長くなり、図4のグラフにおいて破線で示すように、当該イオンのエネルギーの分布において最大値近傍のピークと最小値近傍のピークが発生する。また、バイアス電圧は正弦波の最大値及び最小値の間において徐変するため、イオン及びバイアス電圧の電位差も徐変する。その結果、イオンのエネルギーも最大値及び最小値の間で徐変するため、イオンのエネルギーは、図4のグラフにおいて破線で示すように、最大値及び最小値で規定される範囲に亘って分布する。
【0034】
一方、直流電圧印加ユニット23から直流電圧をサセプタ12へ印加した場合も、サセプタ12において負の領域において変動するバイアス電圧が生じるが、当該直流電圧が矩形波を呈するため、当該バイアス電圧も矩形波を呈する。このとき、バイアス電圧は矩形波を呈するため、バイアス電圧には最大値と最小値のみしか存在しないが、ここで、バイアス電圧における最大値の電位をイオンの電位と同じにすると、イオンにはバイアス電圧の最小値との電位差のみが作用することになる。その結果、サセプタ12へ引き込まれるイオンのエネルギーの分布では、図4のグラフにおいて実線で示すように、バイアス電圧の最小値との電位差に対応するピークのみが存在する。すなわち、直流電圧印加ユニット23から直流電圧をサセプタ12へ印加すれば、サセプタ12へ引き込まれるイオンのエネルギーの分布は1つのピークのみを有し、且つ広がらずに局所的に存在する。
【0035】
本実施の形態では、プラズマエッチング処理の内容に応じてLF高周波電源20からのバイアス電圧発生用高周波電圧の印加と、直流電圧印加ユニット23からの直流電圧の印加とを使い分ける。具体的には、プラズマエッチング処理の内容に応じてLF高周波電源20からの出力値及び直流電圧印加ユニット23からの出力値の比率を調整する。例えば、高周波電圧は直流電圧に比べて高い電圧値を容易に実現することができ、もって、バイアス電圧及びイオンの電位差を大きくして高いエネルギーのイオンによるエッチングを行うことができるので、LF高周波電源20からの出力値の割合を大きくした場合、高いエネルギーのイオンによるエッチングによって難エッチング材をエッチングすることができる。
【0036】
一方、直流電圧印加ユニット23からの出力値の割合を大きくした場合、イオンのエネルギーの分布は1つのピークのみを有し、且つ広がらないようになるので、当方性のエッチング及び異方性のエッチングが混在するのを防止することができ、さらに、バイアス電圧の最小値を変更することによってイオンのエネルギーの分布におけるピークの位置を変更することができるので、プラズマエッチング処理における異方性又は当方性のいずれか一方のみを強くすることができる。
【0037】
本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、LF高周波電源20がサセプタ12に正弦波状のバイアス電圧発生用高周波電圧を印加し、直流電圧印加ユニット23が矩形波状の直流電圧をサセプタ12に印加する。サセプタ12にバイアス電圧発生用高周波電圧を印加してバイアス電圧をサセプタ12に生じさせた場合、図4のグラフにおいて破線で示すように、最大値及び最小値で規定される範囲に亘って分布し且つ最小値近傍のピーク及び最大値近傍のピークを有するイオンのエネルギーの分布が得られ、サセプタ12に矩形波状の直流電圧を印加してバイアス電圧をサセプタ12に生じさせた場合、局所的に存在し且つ1つのピークのみを有するイオンのエネルギーの分布が得られる。また、イオンのエネルギーの分布におけるピークの位置や数によってエッチングにおける異方性の強さや等方性の強さは変わる。したがって、LF高周波電源20からの出力値及び直流電圧印加ユニット23からの出力値の比率を調整することにより、エッチングにおける異方性の強さや等方性の強さを制御することができ、もって、エッチングにおける加工制御性を向上することができる。
【0038】
また、上述した基板処理装置10では、ローパスフィルタ22は、HF高周波電源18及びLF高周波電源20の間、並びにHF高周波電源18及び直流電圧印加ユニット23の間に介在するので、HF高周波電源18からプラズマ生成用高周波電圧がLF高周波電源20や直流電圧印加ユニット23へ流れ込むのを防止してLF高周波電源20や直流電圧印加ユニット23がプラズマ生成用高周波電圧によって破壊されるのを防止することができる。さらに、LF高周波電源20及び直流電圧印加ユニット23がローパスフィルタ22を共用することができ、もって、基板処理装置10における回路構成を簡素化することができる。
【0039】
図5は、図1の基板処理装置の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【0040】
図5の基板処理装置45では、HF高周波電源18がHF整合器19を介してサセプタ12ではなく、上部電極板30へ接続される。また、サセプタ12にはLF高周波電源20がLF整合器21のみを介して接続され、さらに、直流電圧印加ユニット23が直接接続される。その他の構成は基板処理装置10と同じであり、図5において、基板処理装置10と対応する要素及び部分には同一符号を付している。
【0041】
基板処理装置45では、HF高周波電源18がサセプタ12へ接続されないので、HF高周波電源18からのプラズマ生成用高周波電圧がサセプタ12を介してLF高周波電源20や直流電圧印加ユニット23へ流れ込むことがない。したがって、基板処理装置45では、サセプタ12及びLF高周波電源20の間、並びにサセプタ12及び直流電圧印加ユニット23の間にローパスフィルタ22を設ける必要がなく、もって、基板処理装置45における回路構成を簡素化することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0044】
本実施の形態に係る基板処理装置46は、下記に説明する接続切替スイッチ47以外の構成が図1の基板処理装置10と同じであり、図6において、基板処理装置10と対応する要素及び部分には同一符号を付している。
【0045】
上述した図1の基板処理装置10では、直流電圧印加ユニット23がサセプタ12へ接続されているが、直流電圧印加ユニット23では、ローパスフィルタ22へ接続される配線37が2つの接地配線38,39によって接地されるため、直流電圧印加ユニット23がサセプタ12へ常時接続されている場合、サセプタ12の電位が接地電位へ近付き、電気的に浮遊しているウエハW及びサセプタ12の電位差が大きくなってウエハW及びサセプタ12の間で異常放電が生じる虞がある。
【0046】
また、基板処理装置10では、直流電圧印加ユニット23がLF整合器21を介してLF高周波電源20へ接続されているため、LF高周波電源20からのバイアス電圧発生用高周波電圧が直流電圧印加ユニット23へ流れ込み、直流電圧印加ユニット23内のスイッチング素子41,44がバイアス電圧発生用高周波電圧による高負荷によって破壊される虞がある。
【0047】
これに対応して、図6の基板処理装置46は、ローパスフィルタ22及びLF整合器21を接続する配線48と、直流電圧印加ユニット23との間に介在する接続切替スイッチ47とを備える。接続切替スイッチ47は開閉自在なスイッチング素子を有するスイッチであり、LF高周波電源20やサセプタ12から直流電圧印加ユニット23を接続/分離可能であり、直流電圧印加ユニット23からの直流電圧の印加が不要なプラズマエッチング処理、例えば、高いエネルギーのイオンによるエッチング処理の間、LF高周波電源20やサセプタ12から直流電圧印加ユニット23を分離する。また、異方性又は当方性のいずれか一方のみを強くするプラズマエッチング処理の間、LF高周波電源20やサセプタ12を直流電圧印加ユニット23へ接続する。
【0048】
すなわち、基板処理装置46では、必要に応じてサセプタ12から直流電圧印加ユニット23を分離することにより、サセプタ12が直流電圧印加ユニット23を介して接地電位へ近付くのを防止してサセプタ12及びウエハWの電位差の拡大による異常放電の発生を防止することができるとともに、必要に応じてLF高周波電源20から直流電圧印加ユニット23を分離することにより、LF高周波電源20からバイアス電圧発生用高周波電圧が直流電圧印加ユニット23へ流れ込むのを防止して該直流電圧印加ユニット23内のスイッチング素子41,44が破壊されるのを防止することができる。
【0049】
図6の基板処理装置46では、接続切替スイッチ47が配線48及び直流電圧印加ユニット23の間に介在したが、接続切替スイッチの形態はこれに限られない。例えば、基板処理装置46は、図7(A)に示すように、ローパスフィルタ22と、LF整合器21及び直流電圧印加ユニット23との間に配されてローパスフィルタ22とLF整合器21を介したLF高周波電源20との接続、及びローパスフィルタ22と直流電圧印加ユニット23との接続のいずれか一方のみを選択可能な接続切替スイッチ49を備えてもよく、若しくは、図7(B)に示すように、ローパスフィルタ22及びLF整合器21の間に配されてローパスフィルタ22とLF整合器21を介したLF高周波電源20との接続/分離を制御可能な接続切替スイッチ50a、並びに、ローパスフィルタ22及び直流電圧印加ユニット23の間に配されてローパスフィルタ22と直流電圧印加ユニット23との接続/分離を制御可能な接続切替スイッチ50bを備えてもよい。
【0050】
また、図8に示すように、HF高周波電源18がHF整合器19を介してサセプタ12ではなく、上部電極板30へ接続され、サセプタ12にはLF高周波電源20がLF整合器21のみを介して接続され、さらに、直流電圧印加ユニット23が接続切替スイッチ47のみを介して接続されてもよい。これにより、図5の基板処理装置45と同様に、ローパスフィルタ22を設ける必要を無くすことができ、もって、基板処理装置46における回路構成を簡素化することができる。
【0051】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0052】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出して実行することによっても達成される。
【0053】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0054】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0055】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0056】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0057】
上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0058】
W ウエハ
10,45,46 基板処理装置
11 チャンバ
12 サセプタ
18 HF高周波電源
20 LF高周波電源
22 ローパスフィルタ
23 直流電圧印加ユニット
30 上部電極板
47,49,50a,50b 接続切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が減圧される処理室と、
該処理室内に配置されて基板を載置する載置台と、
比較的高い周波数の高周波電圧を印加する第1の高周波電源と、
比較的低い周波数の高周波電圧を前記載置台に印加する第2の高周波電源と、
矩形波状の直流電圧を前記載置台に印加する直流電圧印加ユニットとを備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2の高周波電源及び前記載置台から前記直流電圧印加ユニットを接続/分離可能な接続切替スイッチをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の高周波電源からの前記比較的高い周波数の高周波電圧を遮断するローパスフィルタをさらに備え、
前記第1の高周波電源は前記載置台に接続され、
前記ローパスフィルタは、前記第1の高周波電源及び前記第2の高周波電源の間、並びに前記第1の高周波電源及び前記直流電圧印加ユニットの間に介在することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理室内に配置されて前記載置台と対向する対向電極をさらに備え、
前記第1の高周波電源は前記対向電極に接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記比較的高い周波数は40MHz〜300MHzであり、前記比較的低い周波数は380KHz〜20MHzであり、前記直流電圧の矩形波状の周波数は3MHz以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−216608(P2012−216608A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79733(P2011−79733)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】