説明

基板処理装置、プログラム、コンピュータ記憶媒体、警報表示方法及び基板処理装置の点検方法

【課題】基板処理装置に異常が発生した場合の点検作業を、迅速に誤りなく行う。
【解決手段】複数の処理ユニットと、各処理ユニットでの異常発生を表示する表示手段とを備えた基板処理装置は、異常発生の警報の内容と当該異常発生により点検が必要になる部位とを関連付けた情報と、点検対象部位を、異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作される機器の情報と、点検対象部位の配置及びアイソレートの際の操作対象機器の配置と、アイソレートの際の操作対象機器の操作手順と、を記憶する記憶手段と、記憶手段の情報に基づいて、異常発生により点検が必要となる部位をアイソレートするために操作される機器を特定し、さらに特定された機器の配置を特定して表示手段に出力する異常特定手段と、記憶手段の情報に基づいて、異常特定手段で特定された機器の操作手順を特定して表示手段に出力する操作手順特定手段と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の処理を行う基板処理装置、プログラム、コンピュータ記憶媒体、基板処理装置における警報表示方法及び基板処理装置の点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程におけるフォトリソグラフィー工程では、ウェハ上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などの一連の処理が順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。これらの一連の処理は、ウェハを処理する各種処理ユニットやウェハを搬送する搬送ユニットなどを搭載した基板処理装置である塗布現像処理装置で行われている。
【0003】
ところで、塗布現像処理装置に異常が発生した場合、通常はウェハ処理が停止してしまう。したがって、異常発生部位を速やかに特定し、復旧作業を行うことが望ましい。しかしながら、一般に異常発生時に発報するアラームは、異常が発生したユニット名や異常の内容が表示されるのみである。そのため、ユニットが異常に至った原因の特定は、作業員の経験に左右されるところが大きい。
【0004】
また、どの処理ユニットに異常が発生したかについては、アラームの内容から特定できるものの、各処理ユニットの外部にもウェハ処理に必要な、例えば冷却水や動力電源、あるいは処理液といったユーティリティ関係の供給設備が配置されており、これらに異常が発生した場合も処理ユニットの異常となるため、異常発生の原因となった部位が必ずしも異常が発生した処理ユニット内に配置されているとは限らない。したがって、異常発生の原因となった部位が、塗布現像処理装置のどこに配置されているかについても、速やかに特定するためには、経験が必要となる。
【0005】
そのため、例えば特許文献1には、作業員の経験に依存することなく、異常が発生した位置を特定する方法として、アラーム情報に基づき異常が発生した位置を特定するための識別情報を取得し、この識別情報に関連付けられている位置情報を画像に表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−14658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、塗布現像処理装置に異常が発生した場合であってもウェハ処理を継続できるように、塗布現像処理装置に並列に配置された複数の処理ユニットにより並行してウェハ処理を行い、異常が発生した場合には、異常と判断された処理ユニットを迂回して他の健全な処理ユニットでウェハ処理を継続する処理方法が採用されている。
【0008】
しかしながら、このような塗布現像処理装置であっても、処理ユニットの一部が停止することによる生産性の低下は依然として避けられない。そのため、異常発生の原因を速やかに特定し、点検作業、復旧作業を行うことが好ましい。ただし、運転を継続している他の処理ユニットに影響を与えないように作業を行うには、運転継続している他の処理ユニットと共有している、電源供給システムや冷却水システムといったユーティリティ関連の機器から当該異常部位を遮断する必要がある。
【0009】
この点検作業、復旧作業を行うには多岐にわたる機器の操作が必要となるが、上述の特許文献1の方法では、異常部位の特定はできるものの、点検作業や復旧作業に関連して遮断のために操作が必要となる機器までは特定できない。
【0010】
また、遮断のために操作が必要な機器が特定できても、作業手順を誤れば、運転継続中の処理ユニットに影響を与えてしまい、塗布現像処理装置全体が停止するようなトラブルを招く恐れもある。そのため、このような作業については、依然として熟練作業員の経験が必要とされ、また、作業にも長時間を要するのが現状である。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板処理装置に異常が発生した場合の点検作業を、迅速に誤りなく行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、複数の基板を並行して処理する複数の処理部と、前記各処理部での異常発生を警報表示する表示手段と、を備えた基板処理装置であって、異常発生の警報の内容と当該異常発生により点検が必要になる部位とを関連付けた情報と、前記点検が必要になる部位を、異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作される機器の情報と、前記点検が必要になる部位の位置情報及び前記アイソレートのために操作される機器の位置情報と、前記アイソレートのために操作される機器の操作手順の情報と、を記憶する記憶手段と、前記各処理部で発生した異常を検出し、且つ前記記憶手段の情報に基づいて、当該異常発生により点検が必要となる部位及び前記アイソレートのために操作される機器を特定し、さらにこれらの部位及び機器の位置を特定して前記表示手段に出力する異常特定手段と、前記記憶手段の情報に基づいて、前記異常特定手段で特定された機器の操作手順を特定して前記表示手段に出力する操作手順特定手段と、を有していることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、処理部で発生した異常を検出し、当該異常発生により点検が必要となる部位及び前記アイソレートのために操作される機器を特定し、これら特定された部位及び機器の位置情報及びこれら特定された機器の操作手順を特定して表示手段に出力する。したがって、表示手段に表示された各機器の位置や操作手順を確認することで、迅速に誤りなく点検作業を行うことができる。
【0014】
なお、「アイソレート」とは、例えば異常が発生した部位の点検作業の際、異常が発生していない部位に影響を与えることがないように、異常が発生した部位と異常が発生していない部位との間の電気的、物理的な繋がりを断つことをいう。
【0015】
また、アイソレートのために操作される機器は、少なくとも以下の(1)〜(6)のいずれかである。
(1)点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間の電気的な接続を遮断する遮断器
(2)点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間に流れる流体の流れを遮断する流体遮断機構
(3)前記表示手段に出力される異常発生の警報信号を遮断するためのスイッチ
(4)点検が必要になる部位と当該部位を駆動させていた駆動機構との間に設けられた駆動力伝達部材
(5)点検が必要となる部位を外部の環境から遮断する環境遮断機構
(6)点検が必要となる部位に対してアクセス可能な他の駆動機構への電源供給を遮断する他の遮断器、又は前記他の駆動機構の動作を停止させる操作機構
【0016】
前記表示手段は、タッチパネル、モニタ又は液晶ディスプレイのいずれかを備えたユーザインターフェイスであり、前記アイソレートのために操作される機器は、前記ユーザインターフェイスから遠隔操作可能であってもよい。
【0017】
前記基板を搬送する基板搬送機構と、前記基板搬送機構による基板の搬送を制御する搬送制御手段と、をさらに有し、前記搬送制御手段は、異常が発生した処理部を迂回して基板を搬送するように前記基板搬送機構を制御してもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、前記の基板処理装置における警報の表示方法であって、前記異常特定手段により、処理部で発生した異常を検出し、その後前記記憶手段の情報に基づいて、当該異常発生により点検が必要となる部位及び前記アイソレートのために操作される機器、並びにこれらの部位及び機器の位置を特定して前記表示手段に出力し、さらに、操作手順特定手段により、前記記憶手段の情報に基づいて前記アイソレートのために操作される機器の操作手順を特定し、前記表示手段に出力することを特徴としている。
【0019】
また別な観点による本発明は、複数の基板を並行して処理する複数の処理部と、前記各処理部での異常発生を警報表示する表示手段と、を備えた基板処理装置の点検方法であって、前記処理部の少なくともいずれか一つで異常が発生した際に警報を発報し、その後、異常発生の警報の内容に基づいて当該異常発生により点検が必要になる部位を特定し、前記点検が必要になる部位を異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作される機器の特定と、当該特定された機器の操作手順の特定とを行い、さらに、前記点検が必要になる部位の位置及び前記特定された機器の位置を特定し、前記点検が必要になる部位の位置及び前記特定された機器の位置、並びに前記特定された機器の操作手順を前記表示手段に表示し、前記表示手段に表示された、前記点検が必要になる部位及び前記特定された機器の位置、並びに前記特定された機器の操作手順に従って、当該特定された機器の操作と前記点検が必要になる部位の点検を行うことを特徴としている。
【0020】
さらに別な観点による本発明によれば、前記警報表示方法を基板処理装置によって実行させるために、当該基板処理装置を制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0021】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板処理装置に異常が発生した場合の点検作業を、迅速に誤りなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態にかかる塗布現像処理装置の内部構成の概略を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかる塗布現像処理装置の内部構成の概略を示す側面図である。
【図3】本実施の形態にかかる塗布現像処理装置の内部構成の概略を示す側面図である。
【図4】本実施の形態にかかる制御装置の構成の概略を示す説明図である。
【図5】本実施の形態にかかる警報テーブルの一例を示す説明図である。
【図6】動力電源システムの構成の概略を示す単線結線図である。
【図7】冷却水システムの構成の概略を示す系統図である。
【図8】インターロック回路の構成の概略を示すブロック図である。
【図9】警報テーブルに記憶されている位置情報の内容を示す説明図である。
【図10】表示手段に操作対象機器の位置情報が表示された状態を示す説明図である。
【図11】基板処理装置における点検作業のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる基板処理装置1の内部構成の概略を示す説明図である。図2及び図3は、基板処理装置1の内部構成の概略を示す側面図である。なお、本実施の形態では、基板処理装置1が、例えば基板のフォトリソグラフィー処理を行う塗布現像処理装置である場合を例にして説明する。
【0025】
基板処理装置1は、図1に示すように例えば外部との間で、1ロットの複数枚のウェハWが収容されたカセットCが搬入出されるカセットステーション2と、フォトリソグラフィー処理の中で所定の処理を施す処理部としての各種の処理ユニットを複数備えた処理ステーション3と、処理ステーション3に隣接する露光装置4との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。また、基板処理装置1は、各種処理ユニットなどの制御を行う制御装置6を有している。
【0026】
カセットステーション2は、例えばカセット搬入出部10とウェハ搬送部11に分かれている。例えばカセット搬入出部10は、基板処理装置1のY方向負方向(図1の左方向)側の端部に設けられている。カセット搬入出部10には、カセット載置台12が設けられている。カセット載置台12上には、複数、例えば4つの載置板13が設けられている。載置板13は、水平方向のX方向(図1の上下方向)に一列に並べて設けられている。これらの載置板13には、基板処理装置1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置することができる。
【0027】
ウェハ搬送部11には、図1に示すようにX方向に延びる搬送路20上を移動自在なウェハ搬送機構21が設けられている。ウェハ搬送機構21は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各載置板13上のカセットCと、後述する処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0028】
カセットステーション2に隣接する処理ステーション3には、各種ユニットを備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。処理ステーション3の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3のカセットステーション2側(図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション3のインターフェイスステーション5側(図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0029】
例えば第1のブロックG1には、図2に示すように複数の液処理ユニット、例えばウェハWを現像処理する現像処理ユニット30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成ユニット31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布ユニット32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成ユニット33が下から順に4段に重ねられている。
【0030】
例えば第1のブロックG1の各ユニット30〜33は、図2に示すように処理時にウェハWを収容するカップFを水平方向に複数有し、複数のウェハWを並行して処理することができる。
【0031】
例えば第2のブロックG2には、図3に示すようにウェハWの加熱及び冷却といった熱処理を行う熱処理板を備えた、複数の熱処理ユニット40〜46が設けられている。各熱処理ユニット40〜46は、下から熱処理ユニット40〜46の順に積層して設けられている。
【0032】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡しユニット50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。
【0033】
例えば第4のブロックG4には、複数の受け渡しユニット60、61、62及び欠陥検査ユニット100が下から順に設けられている。
【0034】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えば図3に示すようにウェハ搬送機構70、71、72、73が下から順に設けられている。ウェハ搬送機構70、71、72、73は、例えば各ブロックG1〜G4の同程度の高さの所定のユニットにウェハWを搬送できる。
【0035】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0036】
シャトル搬送装置80は、例えば図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡しユニット52と第4のブロックG4の受け渡しユニット62との間でウェハWを搬送できる。
【0037】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側には、ウェハ搬送機構90が設けられている。ウェハ搬送機構90は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送機構90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡しユニットにウェハWを搬送できる。
【0038】
インターフェイスステーション5には、ウェハ搬送機構91が設けられている。ウェハ搬送機構91は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送機構91は、例えば搬送アームにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡しユニット、露光装置4にウェハWを搬送できる。
【0039】
制御装置6は、図4に示すように、ウェハ搬送機構の動作を制御する搬送制御手段200と、各種処理ユニットの動作を制御するウェハ処理制御手段201と、異常発生の警報の内容と当該異常発生により点検が必要になる部位とを関連付けた情報を記憶する記憶手段202と、各種処理ユニットで発生した異常を検出し、記憶手段202の情報に基づいて点検が必要となる部位を特定する異常特定手段203と、異常特定手段203で特定された部位の操作手順を特定する操作手順特定手段204と、基板処理装置1における処理状況や警報出力といった各種情報を表示する表示手段205とを有している。表示手段205は、例えばタッチパネル、モニタ又は液晶ディスプレイなどを備えた、いわゆるグラフィカルユーザインターフェイスであり、制御装置6で検出された異常の内容を知らせる警報の発報や、異常特定手段203、操作手順特定手段204で特定された各種の情報の出力表示と共に、制御装置6への入力操作が可能なように構成されている。
【0040】
なお、制御装置6は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、基板処理装置1における塗布処理や、基板処理装置1に設けられた各種センサから入力された信号に基づいて異常を検出し、表示手段205へ警報出力を行うことができる。なお、基板処理装置1における塗布処理や異常検出を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御装置6にインストールされたものが用いられている。
【0041】
記憶手段202では、各処理ユニットの異常により発生する警報の内容と当該異常を解消するために点検が必要となる部位とを関連付けた情報が、例えば図5に示すような警報テーブル210として記憶されている。図5に示す警報テーブル210の横の列には、例えば左側から右側に向かって、異常発生によりウェハWの処理が停止した処理ユニット(「異常ユニット」)、異常発生により発報した警報の内容(「警報項目」)、警報の原因となった異常を解消するために点検が必要となる部位(「点検部位」)がこの順に記憶されている。また、警報テーブル210には、図5に示すように、点検が必要になる部位を、異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作が必要となる機器の情報(図5の「アイソレート機器」)、アイソレートのために操作される機器の操作手順の情報(図5の「操作手順」)、点検が必要になる部位及び前記アイソレートのために操作される機器の位置情報(図5の「位置情報」)も記憶されている。
【0042】
ここでいうアイソレートとは、例えば異常が発生した部位の点検作業を行う際、異常が発生していない他の部位に影響を与えることがないように、異常が発生した部位と異常が発生していない部位との間の電気的、物理的な繋がりを断つことをいう。なお、アイソレートのために操作される機器の具体的な例としては、例えば点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間の電気的な接続を遮断する遮断器、点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間に流れる流体の流れを遮断するバルブやダンパーといった流体遮断機構、点検が必要になる部位と当該部位を駆動させていた駆動機構との間に設けられていた、駆動力を伝達するための駆動力伝達部材、点検が必要となる部位を外部の環境から遮断する環境遮断機構などがある。駆動力伝達部材としては、例えばウェハ搬送機構を動作させるために、ウェハ搬送機構とモータとの間に設けられたカップリングなどがある。環境遮断機構としては、例えば筐体に設けられたシャッターなどがある。また、例えば、上記の遮断器などを操作した場合に、表示手段205で警報が発報しないように、制御回路上で警報出力を遮断するためのスイッチなども、アイソレートのために操作される機器に含まれる。具体的な例としては、後述する「漏水センサインターロック無効化スイッチ」がこれに該当する。次に、警報テーブル210について具体的に説明する。
【0043】
図5に示されるように、警報テーブル210の「警報項目」の欄には、例えば「オーブンA異常」、「ヒータA断線」、「ヒータA電源漏電」、「ヒータA冷却異常」といった警報の内容が記憶されている。そして、「点検部位」の欄には、「警報項目」の欄に記録されている警報が発生した場合、異常発生の原因となる部位、即ち点検が必要となる部位の名称が記憶されている。なお、図5に示されるように、「オーブンA異常」、「ヒータA断線」、「ヒータA電源漏電」の警報が発生した場合、「点検部位」は熱処理ユニット40内に設けられた熱処理板のみであるが、警報が「ヒータA冷却異常」の場合は、熱処理ユニット40の外部に設けられた、後述する冷却水システム230に異常が発生している可能性があるため、熱処理板の他に冷却水システム230も「点検部位」に含まれる。また、図5の「警報項目」の欄に記載された各警報名称の末尾に記載される「A」は、例えば熱処理ユニット40に対応する部位を示すための識別記号であり、例えば熱処理ユニット41で発生した異常、換言すれば、点検の対象が熱処理ユニット41となる警報であれば、例えば記号「B」を用いて「ヒータB断線」のように記憶される。このような識別の手法は、当然に本実施の形態の内容に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0044】
次に、「アイソレート機器」の欄には、点検対象となる部位である熱処理板Aを、基板処理装置1からアイソレートする際に操作される機器として、「動力電源遮断器A」、「制御電源遮断器A」、「冷却水バルブA」、「排気ダクトA」、「シャッターA」、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」が記憶されている。「動力電源遮断器A」とは、例えば図6に示されるように、各熱処理ユニット40〜46に動力電源を供給するための動力電源システム220に設けられた複数の遮断器221a〜221gのうち、熱処理ユニット40に対応する遮断器221aを意味している。また、「制御電源遮断器A」、とは、各熱処理ユニット40〜46の制御に用いる制御電源を供給するための制御電源システム(図示せず)に設けられた遮断器(図示せず)のうち、熱処理ユニット40に対応する遮断器をいう。また、「冷却水バルブA」は、例えば図7に示されるように、各熱処理ユニット40〜46に冷却水を供給する冷却水システム230に設けられた複数のバルブ231a〜231gのうち、熱処理ユニット40と冷却水システム230とのアイソレートを行うバルブ231aを意味している。また、「排気ダクトA」は、各熱処理ユニット40〜46に個別に設けられた排気ダクト(図示せず)のうち、熱処理ユニット40に対応して排気ダクトを意味している。「シャッターA」は、熱処理ユニット40の筐体に設けられた、基板処理装置1の例えばウェハ搬送領域Dと熱処理ユニット40との環境を遮断するシャッター(図示せず)である。また、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」とは、例えば図7に示す冷却水システム230に設けられた漏水センサ233が漏水を検知した際、冷却水システム230のチラー232を保護するために、当該チラー232を停止させる保護インターロックを無効化するためのスイッチである。具体的には、制御装置6内のプログラムにより構成された、図8に示されるようなインターロック回路において、熱処理ユニット40に対応する漏水センサ233が漏水を検知した場合であっても、保護インターロック動作が働かないようにするための制御信号250であり、例えば制御装置6に設けられた無効化スイッチ(図示せず)により操作される。なお、インターロックを無効化するのは、例えばバルブ231aを操作することにより、漏水センサ233が動作し、チラー232を停止させる保護インターロックが動作することを防止するためである。
【0045】
なお、以上では点検の対象となる機器が熱処理ユニットである場合について説明したが、図5の警報テーブル210には、基板処理装置1内の、例えばレジスト塗布ユニット32や、周縁露光装置(図示せず)といった他の処理ユニットについての情報も、同様に記憶されている。レジスト塗布ユニット32にかかる警報としては、例えば「スピンモータ電源漏電」、「レジスト液供給断」などが記憶されており、「スピンモータ電源漏電」の場合はスピンモータが、「レジスト液供給断」の場合はレジスト液供給装置がそれぞれ「点検部位」となる。
【0046】
なお、点検部位がスピンモータである場合に、「アイソレート機器」としてスピンモータの動作に関わる「モータ動力遮断器」、「モータ制御電源遮断器」の他に、スピンモータの動作と関連のない「ノズルアーム動力電源遮断器」が含まれているのは、例えばスピンモータの点検中にレジストノズルを移動させるアームが動作することを防止して作業員の安全を確保するためである。つまり「アイソレート機器」には、単に点検部位をアイソレートするために操作が必要となる機器のみでなく、作業員の安全を確保するために、点検部位に対してアクセス可能な他の駆動機構としてのアームへの電源供給を遮断する他の遮断器も含まれる。なお、点検部位に対してアクセス可能な他の駆動機構の動作を防止する手段として、他の遮断器に代えて、例えば他の駆動機構の動作を強制的に停止させるためのスイッチといった操作機構を用いてもよい。また、周縁露光装置にかかる警報としては、例えば「ランプ異常」、「スピンモータ電源漏電」などが記憶されている。「ランプ異常」の場合はランプ本体とランプ電源が点検部位となり、「スピンモータ電源漏電」の場合は、レジスト塗布ユニット32の場合と同様に、スピンモータが点検部位となる。
【0047】
警報テーブル210の「操作手順」の欄には、「アイソレート機器」に記載された各機器を操作すべき順序が記憶されている。図5においては、上から順に、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」、「1」となっており、これは、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」、「動力電源遮断器A」、「制御電源遮断器A」、「冷却水バルブA」、「排気ダクトA」、「シャッターA」の順序で操作が必要であることを意味している。
【0048】
この順序は、例えば「漏水センサインターロック無効化スイッチA」と「冷却水バルブA」のように、操作順序を誤ると基板処理装置1全体が停止に至るようなトラブルを避けるためであったり、「動力電源遮断器A」、「制御電源遮断器A」のように、アイソレート作業の際の、作業員の安全を確保するためであったり、それぞれの観点に基づいて任意に決定されるものであり、当然ながら本実施の形態の内容に限定されるものではない。したがって、例えば図5においては、「動力電源遮断器A」を2番目、「制御電源遮断器A」を3番目の操作機器として記載しているが、例えばこの電源遮断の順序が逆であってもよい。また、例えば「動力電源遮断器A」と「制御電源遮断器A」の「操作手順」を、それぞれ共に「2」として、これらの操作については、順序を問わないように設定してもよい。なお、位置情報の具体的な内容については、後述する。
【0049】
異常特定手段203では、制御装置6に入力された各種センサからの信号に基づいて基板処理装置1で発生した異常を検出し、さらに、当該異常の内容と記憶手段202に記憶された警報テーブル210を参照して、点検が必要となる部位を特定する。例えば、熱処理ユニット40に設けられたヒータAが断線した場合、熱処理ユニット40が点検を必要とする部位として特定される。また、異常特定手段203では、点検対象として特定された熱処理ユニット40を、異常が発生していない他の処理ユニット、換言すれば、ウェハ処理を継続している他の処理ユニットからアイソレートするために操作が必要となる機器を特定する。具体的には、「動力電源遮断器A」、「制御電源遮断器A」、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」、「冷却水バルブA」、「排気ダクトA」、「シャッターA」が操作対象機器として特定される。そして、これら特定された部位や機器の情報と警報テーブル210の情報に基づいて、点検が必要と特定された部位の基板処理装置1における配置、及びアイソレートのために操作が必要となる機器の配置が特定され、さらに、特定されたこれらの位置情報を表示手段205へ出力する。なお、異常の判定そのものは必ずしも異常特定手段203で行う必要はなく、例えば制御装置6で各種センサからの信号に基づいて異常の有無を判定し、異常と判定された場合のみ、警報信号を異常特定手段230に対して入力することで、異常特定手段230での異常検出を行うようにしてもよい。
【0050】
次に、警報テーブルに記憶されている位置情報及び表示手段205での位置情報の表示方法について説明する。
【0051】
警報テーブル210の「位置情報」には、例えば熱処理ユニット40の位置情報として、例えば図3に示すような熱処理ユニット40を含めた各処理ユニットの配置を示した図面が記憶されている。また、例えば「冷却水バルブA」の位置情報として、例えば図9に示されるように、「冷却水バルブA」、即ちバルブ231aを含めた冷却水システム230全体の基板処理装置1における配置を示した図面が記憶されている。そして、異常特定手段203により、「冷却水バルブA」の位置が特定されると、表示手段205にこの位置情報が出力される。
【0052】
表示手段205では、異常特定手段203からの位置情報に基づいて、作業員が表示手段205上で「冷却水バルブA」の位置を特定するための情報として、例えば図10に示すような図面が表示される。なお、図10においては、該当部位を斜線で表示しているが、実際のユーザインターフェイスにおいては、例えば該当部位を点滅表示したり、あるいは他の部位と異なる色で表示したり、表示の方法は任意に設定が可能である。これにより、作業員が表示手段205の表示に基づき、基板処理装置1における「冷却水バルブA」の具体的な位置を確認することができる。なお、動力電源システム220の「動力電源遮断器」、「制御電源遮断器A」及び「排気ダクトA」などの他の機器についても、「冷却水バルブA」と同様に表示手段に表示される。また、「熱処理板A」についても、点検部位として位置情報が表示される。なお、図10においては図示の都合上、熱処理ユニット40を点検部位として表示した状態を描図しているが、表示手段205に「異常ユニット」ではなく「点検部位」を特定して表示するのは、既述の通り、「異常ユニット」の異常の原因となる部位が必ずしも当該「異常ユニット」内に位置しているとは限らないためである。また、表示手段205には、異常特定手段203で特定された異常の内容が表示されていてもよいし、「異常ユニット」そのものの位置情報が表示されていてもよい。
【0053】
操作手順特定手段204では、記憶手段202の警報テーブル210の情報に基づいて、「動力電源遮断器A」、「制御電源遮断器A」、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」、「冷却水バルブA」、「排気ダクトA」、「シャッターA」を操作する順序を特定し、表示手段205に出力する。例えば図9では、表示手段205に「NEXT」、「BACK」の表示を設け、例えば「NEXT」を選択することで、操作対象機器を表示する画面が、「操作手順」に記憶された順序に従って順次表示される場合の画面構成を例示している。なお、操作順序を誤ることを防止するために、例えばバルブ231にリミットスイッチを設け、当該リミットスイッチのフィードバック信号の状態により「NEXT」や「BACK」の操作を無効化するようにしてもよい。また、フィードバック信号を受けて、「NEXT」や「BACK」の操作なしに、次に操作される機器の位置情報を表示するようにしてもよい。このような構成とすることで、次に操作すべき機器以外の情報が表示されることを防止できるので、誤って例えば次の次に操作されるべき機器を操作してしまうといった、ヒューマンエラーを防止できる。
【0054】
搬送制御手段201では、異常が発生した処理ユニットを迂回してウェハWの処理を行うように各ウェハ搬送手段の制御を行う。また、異常が発生した場合は、予め搬送制御手段201に記憶された回収ルートに従って、処理が完了していないウェハWをカセットCへ回収する。なお、異常が発生した部位が特定された場合、搬送制御手段201により自動的に当該特定された熱処理ユニット40を迂回する制御を行うのではなく、例えば異常発生の警報を発報して異常発生の通知のみ行うようにしてもよい。
【0055】
次に、以上のように構成された基板処理装置1における警報表示方法及び点検方法について、基板処理装置1全体で行われるウェハ処理のプロセスと共に説明する。
【0056】
ウェハWの処理にあたっては、先ず、複数枚のウェハWを収容したカセットCがカセットステーション10の所定のカセット載置板13に載置される。その後、基板搬送装置21によりカセットC内の各ウェハWが順次取り出され、処理ステーション11の第3の処理装置群G3の例えば受け渡し装置53に搬送される。
【0057】
次にウェハWは、ウェハ搬送機構70によって第2のブロックG2の熱処理ユニット40に搬送され温度調節処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送機構71によって例えば第1のブロックG1の下部反射防止膜形成ユニット31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理ユニット41に搬送され、加熱処理が行われる。その後、ウェハWは、第3のブロックG3の受け渡しユニット53に戻される。
【0058】
次にウェハWは、ウェハ搬送機構90によって同じ第3のブロックG3の受け渡しユニット54に搬送される。その後ウェハWは、ウェハ搬送機構72によって第2のブロックG2の熱処理ユニット42に搬送され、温度調節処理される。その後、ウェハWはウェハ搬送機構72によって第1のブロックG1のレジスト塗布ユニット32に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。その後ウェハWは、ウェハ搬送機構72によって熱処理ユニット43に搬送され、プリベーク処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送機構72によって第3のブロックG3の受け渡しユニット55に戻される。
【0059】
次にウェハWは、ウェハ搬送機構90によって同じ第3のブロックG3の受け渡しユニット54に搬送される。その後ウェハWはウェハ搬送機構73によって第2のブロックG2の熱処理ユニット44に搬送され、温度調節処理される。その後、ウェハWはウェハ搬送機構73によって第1のブロックG1の上部反射防止膜形成装置33に搬送され、ウェハW上に上部反射防止膜が形成される。その後、ウェハWは第2のブロックG2の熱処理ユニット45に搬送され、加熱処理が行われる。その後、ウェハWは、ウェハ搬送機構73によって第3のブロックG3の受け渡しユニット56に搬送される。
【0060】
次にウェハWは、ウェハ搬送機構90によって受け渡しユニット52に搬送され、シャトル搬送装置80によって第4のブロックG4の受け渡しユニット62に搬送される。その後、ウェハWは、インターフェイスステーション7のウェハ搬送機構91によって露光装置4に搬送され、露光処理される。
【0061】
次に、ウェハWは、ウェハ搬送機構91によって第4のブロックG4の受け渡しユニット60に搬送される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送機構70によって熱処理ユニット46に搬送され、露光後ベーク処理される。次いで、ウェハWは熱処理ユニット45に搬送されて温度調節処理され、その後、ウェハ搬送機構70によって現像処理ユニット30に搬送され、現像される。現像終了後、ウェハWは、ウェハ搬送機構70によって熱処理ユニット44に搬送され、ポストベーク処理される。その後、ウェハWは、熱処理ユニット43に搬送され温度調整される。これにより、一連のフォトリソグラフィー工程が完了する。
【0062】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送機構70によって第4のブロックG4の受け渡しユニット62に搬送される。そして、ウェハWはウェハ搬送機構91によって欠陥検査ユニット100に搬送され、ウェハWの検査が行われる。その後、ウェハWはウェハ搬送機構91により受け渡しユニット62に搬送され、ウェハ搬送機構70、ウェハ搬送機構21を介して所定のカセット載置板13のカセットCに搬送される。そして、この一連のフォトリソグラフィー工程が他の熱処理ユニット41〜46においても繰り返し行われる。
【0063】
次に、上述のフォトリソグラフィー工程の過程で、例えば熱処理ユニット40において異常が発生し、表示手段205に異常を知らせる警報が発報された場合の、基板処理装置1の動作及び一連の点検作業について図11に示すフロー図と共に説明する。
【0064】
例えば、ウェハWが熱処理ユニット40で熱処理されている間に、熱処理ユニット40のヒータが断線した場合、先ず、「ヒータA断線」の警報が表示手段205に表示され(図11の工程S1)、熱処理ユニット40での処理が停止する(図11の工程S2)。次いで、搬送制御手段201からの指令により、熱処理ユニット40内の未処理ウェハWが搬送機構70によって熱処理ユニット40から搬出され、回収ルートに沿ってカセットCに回収される(図11の工程S3)。なお、他の熱処理ユニット41〜46においては引き続きウェハWの処理が継続される。
【0065】
表示手段205への警報表示と並行して、異常特定手段203においても異常の検出が行われ、異常の内容(「ヒータA断線」)と警報テーブル210の情報に基づいて、熱処理ユニット40が点検対称部位と特定される。そして、例えば図10に示すように、表示手段205に熱処理ユニット40の配置が表示される(図11の工程S4)。
【0066】
次に、異常特定手段203により、熱処理ユニット40を基板処理装置1からアイソレートする際に操作の対象となる機器が特定され、特定された機器の位置情報が表示手段205へ入力される(図11の工程S5)。また、操作手順特定手段204において、異常特定手段203により操作対象として特定された各機器の操作手順を特定し、この操作手順の情報が表示手段205へ出力される(図11の工程S6)。
【0067】
表示手段205では、異常特定手段203及び操作手順特定手段204から出力された情報に基づいて、最初に操作される「動力電源遮断器A」の位置情報が、表示される(図11の工程S7)。
【0068】
その後、作業員は表示手段205に表示された熱処理ユニット40の位置情報及び「動力電源遮断器A」の位置情報を確認し、基板処理装置1の「動力電源遮断器A」を操作して電源を遮断する(図11の工程S8)。
【0069】
その後、作業員が表示手段205の画面上で「NEXT」を選択し、次の操作対称機器である「制御電源遮断器A」の位置情報を表示させる(図11の工程S9)。そして、作業員は表示手段205に表示された「制御電源遮断器A」の位置情報を確認し、「制御電源遮断器A」を操作して電源を遮断する(図11の工程S10)。
【0070】
その後、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」の位置情報表示(図11の工程S11)、「漏水センサインターロック無効化スイッチA」の無効化操作(図11の工程S12)、「冷却水バルブA」の位置情報表示(図11の工程S13)、「冷却水バルブA」の閉止操作(図11の工程S14)、「排気ダクトA」の位置情報表示(図11の工程S15)、「排気ダクトA」の取り外し(図11の工程S16)を順次行う。そして、「排気ダクトA」を取り外した後に、「シャッターA」の閉止操作(図11の工程17)が完了すると、熱処理ユニット40の点検が可能な状態となるので、例えば熱処理板を取り外してヒータの状態を確認したり、必要に応じてヒータ交換をしたりといった点検作業が適宜行われる(図11の工程S18)。点検作業が終了すると、次いで、熱処理ユニット40を使用可能な状態に戻すための復旧作業が行われる(図11の工程S19)。
【0071】
熱処理ユニット40が復旧すると、表示手段205に表示されていた警報が解除され、その後、検査用ウェハが基板処理装置1に搬入される。検査用ウェハは、熱処理ユニット40に搬送され、その後当該熱処理ユニット40で所定の熱処理が行われる。そして、検査用ウェハでの熱処理において異常が発生しないことが確認されると、カセットC内のウェハWが順次熱処理ユニット40に搬送され、再びウェハWの処理が行われる。
【0072】
以上の実施の形態によれば、異常特定手段203により基板処理装置1内で発生した異常を検出し、当該異常発生により点検が必要となる部位及びアイソレートのために操作される機器を特定する。そして、これら特定された部位及び機器の位置情報や、これら特定された機器の操作手順を特定して表示手段205に出力するので、表示手段205に表示された各機器の位置や操作手順を確認することで、作業員の経験に左右されることなく、迅速に誤りなく点検作業を実施することができる。
【0073】
また、異常特定手段203において異常と特定された、例えば熱処理ユニット40を、搬送制御手段201により迂回してウェハWを搬送するので、異常が発生していない他の処理ユニットでウェハWの処理を継続することができる。
【0074】
なお、以上の実施の形態においては、異常が発生した熱処理ユニット40を基板処理装置1からアイソレートするまでの手順等を表示手段205に出力表示していたが、例えば、熱処理ユニット40の点検作業が完了した後の復旧作業の手順、換言すれば、当該熱処理ユニット40のアイソレートを解除するための手順ついても、表示手段205に表示するようにしてもよい。かかる場合、記憶手段202の「操作手順」の欄には、アイソレートのための手順に加えて、アイソレートを解除する手順も記憶される。アイソレートを解除する場合においても、例えば「冷却水バルブA」と「漏水センサインターロック無効化スイッチA」との操作手順を誤った場合などは、制御装置6により異常発生と認識されて基板処理装置1が停止に至る恐れがあるので、アイソレートを解除する手順についても表示手段205に出力表示することで、このようなトラブルを避けることができる。
【0075】
以上の実施の形態では、例えばアイソレートの際の機器操作を、例えば作業員が手動で対応する場合について説明したが、例えばアイソレートの際に操作対象となる機器を遠隔操作可能な仕様とし、表示手段205から個別に遠隔操作するようにしてもよい。かかる場合、遠隔操作される機器には、リミットスイッチ等を設けて機器の状態をフィードバック信号により確認できるようにしておくことが好ましい。そうすることで、表示手段205から操作した場合に、実際に機器が動作したか否かを機側で確認する必要がなくなるため、点検作業をさらに迅速に行うことができる。
【0076】
なお、以上の実施の形態では、警報テーブル210の「点検部位」の内容が同一であれば、「警報項目」の内容にかかわらず、「アイソレート機器」及び「操作手順」の内容も同一としていたが、発生した異常の内容によっては、必ずしも全ての「アイソレート機器」を操作する必要はない。したがって、「警報項目」の内容により、「アイソレート機器」及び「操作手順」を個別に設定するようにしてもよい。
【0077】
なお、以上の実施の形態では、例えば熱処理ユニット40を構成する機器に故障が発生した場合に、当該熱処理ユニット40を点検した場合について説明したが、レジスト塗布ユニット32や周縁露光ユニットといった他の処理ユニットにかかる警報が発報した場合においても、熱処理ユニット40の場合と同様に表示手段205への各種情報の出力が行われ、当該表示手段205に表示された情報に従って点検作業が行われる。また、異常の内容は、機器の故障に限られず、例えば欠陥検査ユニット100においてウェハWを検査した結果、特定の処理ユニットで処理されたウェハWで集中的に欠陥が発生した場合も、当該特定の処理ユニットで異常が発生しているものと判断して、警報を発生するようにしてもよい。かかる場合、欠陥が集中することによる警報と点検が必要となる部位との関連を警報テーブル210に記憶させておき、警報発生により、点検に必要な情報を表示手段205に出力するように制御装置6が構成される。
【0078】
また、異常の有無にかかわらず、基板処理装置1の運転を継続した状態で各処理ユニットの点検が要望される場合もある。かかる場合に対応するために、例えば表示手段に、例えば「メンテナンスモード」スイッチを設け、「メンテナンスモード」を選択した状態で点検を所望する処理ユニットを選択することで、警報発生により異常特定手段203で点検対象部位が特定された場合と同様の制御、即ち図11に示される工程S4又は工程S5以降の制御が行われるように制御装置6を構成してもよい。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板に対して処理を行う際に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 基板処理装置
2 カセットステーション
3 処理ステーション
4 露光装置
5 インターフェイスステーション
6 制御装置
10 カセット搬入部
11 ウェハ搬送部
12 カセット載置台
13 カセット載置板
20 搬送路
21 ウェハ搬送機構
30 現像処理ユニット
31 下部反射防止膜形成ユニット
32 レジスト塗布ユニット
33 上部反射防止膜形成ユニット
40〜46 熱処理ユニット
50〜56 受け渡しユニット
60〜62 受け渡しユニット
70〜73 ウェハ搬送機構
80 シャトル搬送機構
90 ウェハ搬送機構
91 ウェハ搬送機構
100 欠陥検査ユニット
200 搬送制御手段
201 ウェハ処理制御手段
202 記憶手段
203 異常特定手段
204 操作手順特定手段
205 表示手段
210 警報テーブル
220 動力電源システム
221a〜g 遮断器
230 冷却水システム
231a〜g バルブ
232 チラー
W ウェハ
F1〜F3 カップ
D ウェハ搬送領域
C カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を並行して処理する複数の処理部と、前記各処理部での異常発生を警報表示する表示手段と、を備えた基板処理装置であって、
異常発生の警報の内容と当該異常発生により点検が必要になる部位とを関連付けた情報と、
前記点検が必要になる部位を、異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作される機器の情報と、
前記点検が必要になる部位の位置情報及び前記アイソレートのために操作される機器の位置情報と、
前記アイソレートのために操作される機器の操作手順の情報と、
を記憶する記憶手段と、
前記各処理部で発生した異常を検出し、且つ前記記憶手段の情報に基づいて、当該異常発生により点検が必要となる部位及び前記アイソレートのために操作される機器を特定し、さらにこれらの部位及び機器の位置を特定して前記表示手段に出力する異常特定手段と、
前記記憶手段の情報に基づいて、前記異常特定手段で特定された機器の操作手順を特定して前記表示手段に出力する操作手順特定手段と、を有していることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記表示手段は、タッチパネル、モニタ又は液晶ディスプレイのいずれかを備えたユーザインターフェイスであり、
前記アイソレートのために操作される機器は、前記ユーザインターフェイスから遠隔操作可能であることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記アイソレートのために操作される機器は、少なくとも以下の(1)〜(6)のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の基板処理装置。
(1)点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間の電気的な接続を遮断する遮断器
(2)点検が必要になる部位と異常が発生していない他の部位との間に流れる流体の流れを遮断する流体遮断機構
(3)前記表示手段に出力される異常発生の警報信号を遮断するためのスイッチ
(4)点検が必要になる部位と当該部位を駆動させていた駆動機構との間に設けられた駆動力伝達部材
(5)点検が必要となる部位を外部の環境から遮断する環境遮断機構
(6)点検が必要となる部位に対してアクセス可能な他の駆動機構への電源供給を遮断する他の遮断器、又は前記他の駆動機構の動作を停止させる操作機構
【請求項4】
前記基板を搬送する基板搬送機構と、
前記基板搬送機構による基板の搬送を制御する搬送制御手段と、をさらに有し、
前記搬送制御手段は、異常が発生した処理部を迂回して基板を搬送するように前記基板搬送機構を制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置における警報の表示方法であって、
前記異常特定手段により、処理部で発生した異常を検出し、その後前記記憶手段の情報に基づいて、当該異常発生により点検が必要となる部位及び前記アイソレートのために操作される機器、並びにこれらの部位及び機器の位置を特定して前記表示手段に出力し、
さらに、操作手順特定手段により、前記記憶手段の情報に基づいて前記アイソレートのために操作される機器の操作手順を特定し、前記表示手段に出力することを特徴とする、警報表示方法。
【請求項6】
複数の基板を並行して処理する複数の処理部と、前記各処理部での異常発生を警報表示する表示手段と、を備えた基板処理装置の点検方法であって、
前記処理部の少なくともいずれか一つで異常が発生した際に警報を発報し、
その後、異常発生の警報の内容に基づいて当該異常発生により点検が必要になる部位を特定し、
前記点検が必要になる部位を異常が発生していない他の部位からアイソレートするために操作される機器の特定と、当該特定された機器の操作手順の特定とを行い、
さらに、前記点検が必要になる部位の位置及び前記特定された機器の位置を特定し、
前記点検が必要になる部位の位置及び前記特定された機器の位置、並びに前記特定された機器の操作手順を前記表示手段に表示し、
前記表示手段に表示された、前記点検が必要になる部位及び前記特定された機器の位置、並びに前記特定された機器の操作手順に従って、当該特定された機器の操作と前記点検が必要になる部位の点検を行うことを特徴とする、基板処理装置の点検方法。
【請求項7】
請求項5の警報表示方法を基板処理装置によって実行させるために、当該基板処理装置を制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項8】
請求項6に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30708(P2013−30708A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167610(P2011−167610)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】