説明

基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体

【課題】基板の表面にパーティクルが形成されることを防止することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明による基板処理装置1は、処理液を貯留して、複数の基板Wを処理する処理槽11と、処理槽11に対して昇降自在に設けられ、基板Wを保持して処理液に浸漬させる基板保持部12とを有する処理部10と、処理部10の上方に設けられ、処理槽11に気体を供給する気体供給部40と、基板の空き状態を検出する検出部70とを備えている。処理槽11を収容する収容ケース30の下部に、気体供給部40から供給された気体を排気する排気部31が設けられている。制御部60は、検出部70により検出された基板Wの空き状態に基づいて、気体供給部40から排気部31に流れる気体の流量調整するように、気体供給部40および排気部31を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ等の基板(以下、単にウエハと記す)を、薬液槽に貯留されたSPM液(硫酸と過酸化水素水の混合溶液)に浸漬して洗浄処理する基板処理装置が知られている。このような基板処理装置においては、複数(例えば、50枚)のウエハが、ウエハボードにより略垂直状態に保持されて、薬液槽に貯留された高温(例えば、約130℃)のSPM液に浸漬されて、ウエハに付着された有機性の汚れや金属不純物が除去されるようになっている。ウエハが洗浄処理されている間、薬液槽の上方に設けられたファンフィルターユニット(FFU)から薬液槽に向かって清浄な空気が吐出され(ダウンフロー)、薬液から気化したガスが上昇して拡散されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−164550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような基板処理装置において、SPM液により洗浄処理されたウエハを引き上げる際、ウエハ間にファンフィルターユニットから吐出された空気が流れ込むことがある。この場合、ウエハの上端部(具体的には、ウエハを搬送する搬送機構との接触点)に付着し、高温のSPM液によって溶解された有機物が、ダウンフローの影響を受け、ウエハの表面上に垂れて、筋状のパーティクルが形成されるという問題がある。
【0005】
本発明は、このようなことを考慮してなされたものであり、基板の表面にパーティクルが形成されることを防止することができる基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、処理液を貯留して、複数の基板を処理する処理槽と、当該処理槽に対して昇降自在に設けられ、前記基板を保持して処理液に浸漬させる基板保持部とを有する処理部と、前記処理部の上方に設けられ、前記処理槽に気体を供給する気体供給部と、前記基板の空き状態を検出する検出部と、前記処理槽を収容する収容ケースと、前記収容ケースの下部に設けられ、前記気体供給部から供給された気体を排気する排気部と、前記気体供給部および前記排気部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部により検出された前記基板の空き状態に基づいて、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を調整するように、当該気体供給部および当該排気部を制御することを特徴とする基板処理装置である。
【0007】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を、前記基板を処理する際に、第1の流量とすると共に、前記検出部により検出された前記基板の空き状態に基づいて前記基板間のギャップを算出し、少なくとも一組の当該基板間のギャップが所定の範囲にある場合、処理された当該基板を前記基板保持部により上昇させる際に、当該第1の流量より小さい第2の流量とするように、当該気体供給部および当該排気部を制御するようにしてもよい。
【0008】
本発明による基板処理装置において、前記処理部により処理された前記基板を更に処理する第2の処理部と、前記処理部から前記第2の処理部に、前記基板保持部により上昇した前記基板を搬送する搬送機構と、を更に備え、前記制御部は、前記基板保持部により前記基板を上昇させる際に前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記搬送機構により前記処理部から前記第2の処理部に当該基板を搬送する際に、当該気体供給部から当該排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするように、当該気体供給部および当該排気部を制御するようにしてもよい。
【0009】
本発明による基板処理装置において、前記第2の処理部は、前記ケースに収容され、第2の処理液を貯留して、前記基板を処理する第2の処理槽と、当該第2の処理槽に対して昇降自在に設けられ、当該基板を受けて保持し、第2の処理液に浸漬させる基板保持部とを有し、前記制御部は、前記搬送機構により前記基板を搬送する際に前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合に、前記第2の処理部の前記気体保持部により当該基板を下降させる際に、当該気体供給部から当該排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするように、当該気体供給部から当該排気部を制御するようにしてもよい。
【0010】
本発明による基板処理装置において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量が前記第2の流量である場合、前記基板間における気体の流速が、0.5m/秒以下であるようにしてもよい。
【0011】
本発明による基板処理装置において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量が前記第2の流量である場合、前記基板間における気体の流速が、0.3m/秒以下であるようにしてもよい。
【0012】
本発明は、複数の基板を処理部の基板保持部により保持する工程と、前記基板の空き状態を検出する工程と、処理液が貯留された前記処理部の処理槽において、前記基板保持部により保持された前記基板を処理液に浸漬させ、処理する工程と、前記基板保持部により、処理された前記基板を上昇させる工程と、を備え、前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板の空き状態に基づいて、前記処理槽の上方に設けられ、当該処理槽に気体を供給する気体供給部から、当該処理槽を収容する収容ケースの下部に設けられ、当該気体供給部から供給された気体を排気する排気部に流れる気体の流量が調整されることを特徴とする基板処理方法である。
【0013】
本発明による基板処理方法において、前記基板を処理する工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を第1の流量とし、前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板の空き状態に基づいて当該基板間のギャップを算出し、少なくとも一組の前記基板間のギャップが所定の範囲にある場合に、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を、前記第1の流量より小さい第2の流量とするようにしてもよい。
【0014】
本発明による基板処理方法において、第2の処理部において、前記処理部により処理された前記基板を更に処理する工程と、前記処理部から前記第2の処理部に、前記基板保持部により上昇した前記基板を搬送する工程と、を更に備え、前記基板を上昇させる工程において前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記基板を搬送する工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするようにしてもよい。
【0015】
本発明による基板処理方法において、前記第2の処理部の基板保持部により、前記処理部から搬送された前記基板を下降させる工程であって、前記第2の処理部の第2の処理槽に貯留された第2の処理液に当該基板を浸漬させる工程を更に備え、前記基板を搬送する工程において前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記基板を下降させる工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするようにしてもよい。
【0016】
本発明による基板処理方法において、前記気体供給部から前記排気部に前記第2の流量で気体が流れる際、前記基板間を流れる気体の流速が、0.5m/秒以下であるようにしてもよい。
【0017】
本発明による基板処理方法において、前記気体供給部から前記排気部に前記第2の流量で気体が流れる際、前記基板間を流れる気体の流速が、0.3m/秒以下であるようにしてもよい。
【0018】
本発明は、基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、この基板処理方法は、複数の基板を処理部の基板保持部により保持する工程と、前記基板の空き状態を検出する工程と、処理液が貯留された前記処理部の処理槽において、前記基板保持部により保持された前記基板を処理液に浸漬させ、処理する工程と、前記基板保持部により、処理された前記基板を上昇させる工程と、を備え、前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板間の空き状態に基づいて、前記処理槽の上方に設けられ、当該処理槽に気体を供給する気体供給部から、当該処理槽を収容する収容ケースの下部に設けられ、当該気体供給部から供給された気体を排気する排気部に流れる気体の流量が調整されることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の表面にパーティクルが形成されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の洗浄処理ユニットを示す断面構成図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態において、図2とは異なる方向から見た基板処理装置の洗浄処理ユニットを示す断面構成図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における基板処理方法のフローチャートを示す図である。
【図5】図5(a)、(b)、(c)は、本発明の第2の実施の形態において、ウエハ間における気体の流れを説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態の変形例として、基板処理装置の洗浄処理ユニットを示す断面構成図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態の変形例として、基板処理方法のフローチャートを示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施例において、ウエハ間の空気の流速の測定ポイントを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
第1の実施の形態
まず、図1乃至図4を用いて、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図4は、第1の実施の形態における基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体の一実施の形態を説明するための図である。
【0023】
まず、基板処理装置1の全体構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、基板処理装置1は、ウエハWが収納された収納容器100を搬入出すると共に、保管する収納容器搬入出部2と、ウエハWに所定の薬液を用いて洗浄処理を行う洗浄処理ユニット3と、洗浄処理後のウエハWの乾燥処理を行う乾燥処理ユニット4と、収納容器搬入出部2と洗浄処理ユニット3および乾燥処理ユニット4との間でウエハWを搬送するインターフェース部5とを備えている。このうち、乾燥処理ユニット4は、インターフェース部5と洗浄処理ユニット3との間に配置されている。ここで、上述した収納容器100は、各々が1枚のウエハWを略水平方向に収納するような複数の収納部分(図示せず)を有し、これらの収納部分が、上下方向に並ぶように、所定間隔を空けて設けられている。また、収納容器100は、その一側面がウエハWの搬入出口となっている。
【0025】
収納容器搬入出部2は、収納容器100を上下方向に並ぶように載置するための収納容器搬入出ステージ2aと、収納容器100に対するウエハWの授受を行うウエハ出し入れステージ2bと、収納容器搬入出ステージ2aと出し入れステージとのの間で収納容器100を搬送する収納容器搬送装置2cとを有している。また、収納容器搬入出部2には、収納容器100を保管する収納容器ストック部2dが設けられている。
【0026】
収納容器搬入出部2とインターフェース部5との間は壁部6により仕切られており、この壁部6のウエハ出し入れステージ2bに対応する位置に、開口6aが上下2段に形成されている。このうち下側の開口6aは、収納容器100から洗浄処理前のウエハWを搬出するためのウエハ搬出用になっており、上側の開口6aは、収納容器100に洗浄処理後のウエハWを搬入するためのウエハ搬入用になっている。
【0027】
インターフェース部5の下側の開口6aの近傍には、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100内の洗浄処理前のウエハWの空き状態を検出する第1の検出部7が設けられている。この第1の検出部7は、少なくとも一対の発光素子と受光素子とからなるセンサ部分を有し、このセンサ部分が収納容器100の各収納部分に収納されたウエハWのスキャンを行い、収納容器100のウエハWの空き状態、すなわち各収納部分にウエハWが収納されているか否かを検出すると共に、各収納部分に収納された各ウエハWの収納状態、例えば、ウエハWが斜めに収納されていないか否か等、を検出するようになっている。
【0028】
また、インターフェース部5の上側の開口6aの近傍には、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100内の洗浄処理後のウエハWの検出を行う第2の検出部8が設けられている。この第2の検出部8は、少なくとも一対の発光素子と受光素子とからなるセンサ部分を有し、このセンサ部分が収納容器100の各収納部分に収納されたウエハWのスキャンを行い、収納容器100のウエハWの空き状態、すなわち、各収納部分にウエハWが収納されているか否かを検出するようになっている。
【0029】
インターフェース部5には、ウエハWを搬送するウエハ搬送装置9が設けられ、このウエハ搬送装置9は、インターフェース部5から乾燥処理ユニット4を通って洗浄処理ユニット3へ延びるガイドレール9aに沿って移動可能に構成されている。また、インターフェース部5には、ウエハ出し入れステージ2bとウエハ搬送装置9との間でウエハWの移載を行うためのウエハ移載装置5aが設けられている。このウエハ移載装置5aは、収納容器100に対して略水平状態でウエハWを授受すると共に、ウエハ搬送装置9に対して略垂直状態でウエハWを授受するようになっている。
【0030】
次に、基板処理装置の洗浄処理ユニット3について詳述する。
【0031】
すなわち、図2および図3に示すように、基板処理装置1の洗浄処理ユニット3は、複数の基板(例えば、半導体ウエハ、以下単にウエハWと記す)を薬液処理する薬液処理部(処理部)10と、薬液処理されたウエハWをリンス処理するリンス処理部(第2の処理部)20と、薬液処理部10からリンス処理部20に、ウエハWを搬送するユニット内搬送機構(搬送機構)50とを備えている。
【0032】
このうち、薬液処理部10は、高温(約130℃)の薬液(処理液、SPM液)を貯留して、ウエハWを薬液処理する薬液槽(処理槽)11と、この薬液槽11に対して昇降自在に設けられ、ウエハWを略垂直状態に保持して薬液に浸漬させるウエハボード(基板保持部)12とを有している。このうちウエハボード12は、複数の溝(図示せず)を有し、各溝にウエハWが係合して、ウエハWが略垂直状態に保持されるようになっている。なお、SPM液は、硫酸(HSO)と過酸化水素水(H)が各々所定濃度で混合された溶液をいう。
【0033】
薬液槽11は、薬液を貯留する内槽11aと、この内槽11aの周囲に設けられ、内槽11aからオーバーフローする薬液を受ける外槽11bとを含んでいる。このうち、内槽11aには、図示しない硫酸供給部および過酸化水素水供給部が連結され、外槽11bと内槽11aとの間に、外槽11bにオーバーフローした薬液を内槽11aに戻す循環ライン(図示せず)が連結されている。また、内槽11aには、貯留された薬液を加熱するヒータ(図示せず)が設けられ、このヒータは、制御部60に接続されている。
【0034】
薬液処理部10のウエハボード12に、ボード駆動部13が連結され、ウエハボード12が昇降するようになっている。なお、このボード駆動部13は、後述する制御部60に接続され、制御部60からの制御信号に基づいて、駆動されるようになっている。
【0035】
リンス処理部20は、図2に示すように、リンス液(第2の処理液、例えば、純水)を貯留して、ウエハWをリンス処理するリンス槽(第2の処理槽)21と、このリンス槽21に対して昇降自在に設けられ、ウエハWを略垂直状態に保持してリンス液に浸漬させるウエハボード22とを有している。
【0036】
リンス槽21は、リンス液を貯留する内槽21aと、この内槽21aの周囲に設けられ、内槽21aからオーバーフローするリンス液を受ける外槽21bとを含んでいる。このうち、内槽21aには、図示しないリンス液供給部が連結され、外槽21bと内槽21aとの間に、外槽21bにオーバーフローしたリンス液を内槽21aに戻す循環ライン(図示せず)が連結されている。
【0037】
リンス処理部20のウエハボード22に、ボード駆動部23が連結され、ウエハボード22が昇降するようになっている。なお、このボード駆動部23は、制御部60に接続され、制御部60からの制御信号に基づいて、駆動されるようになっている。
【0038】
薬液槽11およびリンス槽21は、収容ケース30に収容されている。この収容ケース30の下部には、後述するファンフィルターユニット40から供給された空気を排気する第1排気部(排気部)31が設けられている。この第1排気部31は、収容ケース30の下部に連結された第1排気ライン32と、この第1排気ライン32に設けられ、第1排気ライン32を通る空気の流量を調整する第1排気開閉弁33とを有している。このうち第1排気開閉弁33は、制御部60に接続され、制御部60によりその開度が調整されるようになっている。
【0039】
薬液処理部10およびリンス処理部20の上方に、薬液槽11に清浄な空気をダウンフローとして供給するファンフィルターユニット(気体供給部、FFU)40が設けられている。このファンフィルターユニット40から供給された清浄な空気(気体)は、薬液槽11に貯留された薬液の上方に向かって吐出され、収容ケース30内を流れて、第1排気部31に排気されるようになっている。このようにして、薬液から蒸発して気化したガスを、ファンフィルターユニット40から供給された清浄な空気と共に第1排気部31に案内し、薬液から気化したガスが上昇して拡散することを防止している。また、ファンフィルターユニット40から吐出された清浄な空気は、リンス槽21に貯留されたリンス液の上方にも向かって吐出されており、リンス処理部20に搬送されてリンス処理前のウエハWに残存している薬液から気化したガスを、ファンフィルターユニット40から供給された清浄な空気と共に収容ケース30内を流れて、第1排気部31に排気し、薬液から気化したガスが上昇して拡散することを防止している。なお、ファンフィルターユニット40は、制御部60に接続され、制御部60により、吐出される清浄な空気の流量が制御されるようになっている。
【0040】
ユニット内搬送機構50は、搬送アーム51と、この搬送アーム51を駆動する搬送駆動部52とを有している。このうち搬送駆動部52は、収容ケース30の外方に配置されたボックス53に覆われ、搬送アーム51は、ボックス53から薬液槽11またはリンス槽21の上方に延びている。また、ファンフィルターユニット40から吐出された空気の一部が、ボックス53内にも流れ込むようになっている。このボックス53内に流れ込んだ空気は、ボックス53の下部に設けられた第2排気部54により排気されるようになっている。この第2排気部54は、ボックス53の下部に連結された第2排気ライン55と、この第2排気ライン55に設けられ、第2排気ライン55を通る空気の流量を調整する第2排気開閉弁56とを有している。なお、搬送駆動部52および第2排気開閉弁56は、制御部60に接続され、制御部60により制御されるようになっている。
【0041】
上述したように、ファンフィルターユニット40および第1排気開閉弁33に、これらを制御する制御部60が接続されている。この制御部60は、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、ウエハWを薬液処理する際に、第1の流量とすると共に、薬液処理されたウエハWを薬液処理部10のウエハボード12により上昇させる際に、第1の流量より小さい第2の流量とするように、ファンフィルターユニット40および第1排気開閉弁33を制御する。
【0042】
また、洗浄処理ユニット3には、図1に示すように、他の薬液を用いてウエハWを洗浄するための薬液処理部3a、3dと、リンス処理部3b、3eと、ユニット内搬送機構3c、3fとが設けられている。
【0043】
乾燥処理ユニット4は、ウエハ搬送装置9のチャックを洗浄するチャック洗浄機構と、洗浄処理されたウエハWを水洗する水洗槽と、水洗槽の上部に設けられ、例えばイソプロピルアルコール(IPA)の蒸気が供給されて、水洗されたウエハWを乾燥する乾燥室(図示せず)と、水洗槽と乾燥室との間でウエハWを搬送するユニット内搬送機構とを有している。
【0044】
制御部60は、図2に示すように、ユニット内搬送機構50により薬液処理部10からリンス処理部20にウエハWを搬送する際に、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、上述した第2の流量とするように、ファンフィルターユニット40および第1排気開閉弁33を制御する。
【0045】
さらに、制御部60は、ユニット内搬送機構50により搬送されたウエハWを、リンス処理部20のウエハボード22により保持して下降する際においても、ファンフィルターユニット40から薬液処理部10の第1排気部31に流れる空気の流量を、上述した第2の流量に維持するように、ファンフィルターユニット40および第1排気開閉弁33を制御する。
【0046】
具体的には、制御部60は、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量、および薬液処理部10の第1排気開閉弁33の開度の両方(あるいは一方)を調整して、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を制御する。
【0047】
また、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が第2の流量となっている場合、薬液処理部10により保持されたウエハW間における空気の流速は、0.5m/秒以下、とりわけ0.3m/秒以下であることが好ましい。
【0048】
ところで、図2に示すように、制御部60には、工程管理者等が基板処理装置1を管理するために、コマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置1の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等からなる入出力装置61が接続されている。また、制御部60は、基板処理装置1で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体62にアクセス可能となっている。記録媒体62は、ROMおよびRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、およびフレキシブルディスク等のディスク状記録媒体等、既知の記録媒体62から構成され得る。このようにして、制御部60が、記録媒体62に予め記録されたプログラム等を実行することによって、基板処理装置1においてウエハWの処理が行われるようになっている。
【0049】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち、本実施の形態による基板処理方法について説明する。なお、以下に説明する基板処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予め記録媒体62に記録されたプログラムに基づいた制御部60からの制御信号によって制御される。
【0050】
まず、図1に示すように、収納部分によって複数のウエハWが略水平状態で収納された収納容器100が、収納容器搬入出ステージ2aに載置される。収納容器搬入出ステージ2aに載置された収納容器100が、収納容器搬送装置2cにより搬入用のウエハ出し入れステージ2bに搬送される。次に、ウエハ出し入れステージ2bに載置された収納容器100について、第1の検出部7により、壁部6の下側の開口6aを介して収納容器100内のウエハWの検出が行われる。
【0051】
その後、ウエハ移載装置5aにより、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100からウエハ搬送装置9にウエハWが受け渡される。
【0052】
ウエハWを受け取ったウエハ搬送装置9は、ガイドレール9aに沿って洗浄処理ユニット3の薬液槽11の位置に移動し、ウエハWが洗浄処理ユニット3のユニット内搬送機構50に渡され、ウエハWが、後述するように、洗浄処理される。その後、各薬液処理部3a、3d、各リンス処理部3b、3eにより、ウエハWは順次洗浄処理される。
【0053】
洗浄処理が終了したウエハWは、ウエハ搬送装置9により乾燥処理ユニット4に搬送され、乾燥処理される。その後、ウエハ搬送装置9によって、インターフェース部5に戻される。
【0054】
インターフェース部5において、ウエハ移載装置5aにより、ウエハ搬送装置9からウエハ出し入れステージ2bに載置された搬出用の空の収納容器100に引き渡され、第2の検出部8によりウエハWの検出が行われる。
【0055】
その後、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100が、収納容器搬送装置2cにより、収納容器搬入出ステージ2aに搬送される。
【0056】
次に、洗浄処理ユニット3の薬液処理部10およびリンス処理部20におけるウエハWの処理方法について説明する。
【0057】
この場合、まず、図4に示すように、ファンフィルターユニット40から、薬液槽11およびリンス槽21に向かって、清浄な空気が吐出される(ステップS1)。この際、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が第1の流量(通常時の流量)となるように、ファンフィルターユニット40が駆動されると共に、第1排気部31の第1排気開閉弁33の開度が調整される。なお、ファンフィルターユニット40から吐出された空気の一部は、収容ケース30の外方に設けられたボックス53内に流れ込むが、制御部60により第2排気開閉弁56の開度が調整され、第2排気ライン55を通って排気される。
【0058】
ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が第1の流量で安定した後、薬液処理部10の薬液槽11に薬液が貯留されると共に、リンス処理部20のリンス槽21にリンス液が貯留される(ステップS2)。この場合、図示しない硫酸供給部および過酸化水素水供給部から薬液槽11の内槽11aに、硫酸および過酸化水素水が、所定濃度で混合されるように、供給される。この際、硫酸および過酸化水素水は、薬液槽11の内槽11aから外槽11bにオーバーフローするまで供給され、薬液槽11に設けられた図示しないヒータにより加熱される。その後、以下の工程を行っている間、薬液槽11の内槽11aに貯留された硫酸および過酸化水素水は、所定濃度に維持される。また、リンス槽21の内槽21aには、図示しないリンス液供給部から、リンス液が、リンス槽21の内槽21aから外槽21bにオーバーフローするまで供給される。
【0059】
次に、ユニット内搬送機構50により搬送された複数のウエハWが、薬液処理部10のウエハボード12に引き渡されて保持される(ステップS3)。
【0060】
ウエハWが薬液処理部10のウエハボード12に保持された後、薬液処理部10のボード駆動部13が駆動されて、ウエハWを保持したウエハボード12が下降する(ステップS4)。
【0061】
このウエハボード12の下降により、薬液が貯留された薬液処理部10の薬液槽11において、ウエハボード12により保持されたウエハWが、薬液に浸漬して、所定時間、薬液処理される(ステップS5)。なお、上述したステップS2〜S5においては、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量は第1の流量に維持される。
【0062】
次に、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が、第1の流量より小さい第2の流量となるように、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量および第1排気部31の第1排気開閉弁33の開度が調整される。このことにより、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が低減される(ステップS6)。なお、このステップS6は、上述したステップS5におけるウエハWの薬液処理が終了する直前、例えば、終了の1分前に行うことが好ましい。このことにより、後述するステップS7におけるウエハWを上昇させる前に、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を安定させることができる。
【0063】
その後、薬液処理部10のボード駆動部13が駆動されて、薬液処理されたウエハWが上昇する(ステップS7)。
【0064】
次に、薬液処理部10のウエハボード12により上昇したウエハWが、ユニット内搬送機構50に引き渡され、薬液処理部10からリンス処理部20に搬送される(ステップS8)。
【0065】
ユニット内搬送機構50によりリンス処理部20に搬送されたウエハWは、リンス処理部20のウエハボード22に引き渡されて保持される(ステップS9)。
【0066】
ウエハWがリンス処理部20のウエハボード22に保持された後、リンス処理部20のボード駆動部23が駆動されて、ウエハWを保持したウエハボード22が下降する(ステップS10)。
【0067】
このウエハボード22の下降により、リンス液が貯留されたリンス処理部20のリンス槽21において、ウエハボード22により保持されたウエハWが、リンス液に浸漬して、所定時間、リンス処理される(ステップS11)。なお、上述したステップS7〜S11において、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量は、第2の流量に維持される。
【0068】
ここで、ウエハW全体が、リンス液に浸漬した後、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が第1の流量となるように、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量および第1排気部31の第1排気開閉弁33の開度が調整される。このことにより、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が、通常時の第1の流量に戻る(ステップS12)。
【0069】
ウエハWのリンス処理が終了した後、リンス処理部20のボード駆動部23が駆動されて、リンス処理されたウエハWが上昇する(ステップS13)。なお、この間、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量は、第1の流量に維持される。
【0070】
その後、リンス処理部20のウエハボード22により上昇したウエハWが、ユニット内搬送機構50に引き渡され、下流の工程へ搬送される。
【0071】
上述した工程を繰り返すことにより、複数のウエハWを、順次、薬液処理してリンス処理し、洗浄することができる。
【0072】
このように本実施の形態によれば、薬液処理されたウエハWを薬液から引き上げる際のファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、ウエハWを薬液処理する際の流量より小さくすることができる。このことにより、ウエハW間に流れ込む空気の流速を低減することができ、ウエハWの上端部から、溶解した有機物が、ダウンフローの影響を受けて、ウエハ表面上を垂れてパーティクルが形成されることを防止することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、薬液処理されたウエハWを、薬液処理部10からリンス処理部20に搬送する際、およびリンス処理部20のウエハボード22によりリンス槽21に向けて下降させる際においても、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、ウエハWを薬液処理する際の流量より小さくすることができる。このことにより、薬液処理されたウエハWがリンス処理されるまでの間、ウエハW間に流れ込む空気の流速を低減することができ、ウエハWの表面上にパーティクルが形成されることを防止することができる。
【0074】
第2の実施の形態
次に、図5により、本発明の第2の実施の形態における基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体について説明する。ここで図5は、第2の実施の形態における基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体の一実施の形態を説明するための図である。
【0075】
図5に示す第2の実施の形態において、検出部により検出されたウエハの空き状態に基づいて、ファンフィルターユニットから第1排気部に流れる空気の流量を調整する点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0076】
本実施の形態においては、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100に収納された洗浄処理前のウエハWの空き状態が第1の検出部(検出部)7により検出され、この検出されたウエハWの空き状態に基づいて、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が調整されるようになっている。
【0077】
すなわち、制御部60は、第1の検出部7により検出されたウエハWの空き状態に基づいて、ウエハボード12に保持されるウエハW間のギャップ(図5中の寸法x)を算出し、少なくとも一組のウエハW間のギャップが所定の範囲にある場合に、薬液処理されたウエハWをウエハボード12により上昇させる際のファンフィルターユニット40から第1排気部32に流れる空気の流量を、ウエハWを薬液処理する際の流量(第1の流量)より小さい第2の流量とするように、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量および第1排気部31の第1排気開閉弁33を制御する。
【0078】
ここで、図5(a)に示すように、例えば、50枚のウエハWを保持可能なウエハボード12に50枚のウエハWが保持されている場合、各ウエハW間のギャップ(この場合、x=3mm)は、比較的小さい。このため、各ウエハW間に、ファンフィルターユニット40から吐出された空気が流れにくくなり、各ウエハW間の空気の流速は小さくなる。このため、ダウンフローの影響が少なくなり、ウエハWの表面上に、パーティクルが形成され難くなる。一方、図5(b)に示すように、例えば、上述のウエハボード12に25枚のウエハWが、略等間隔に保持されている場合、各ウエハW間のギャップ(この場合、x=6mm)は、比較的大きくなる。このため、各ウエハW間に、ファンフィルターユニット40から吐出された空気が流れやすくなり、ウエハWの上端部に残存している溶解した有機物が、ダウンフローの影響を受け、ウエハWの表面上にパーティクルが形成され易くなっている。しかしながら、図5(c)に示すように、例えば、上述のウエハボード12にウエハWが1枚だけ保持されている場合には、ウエハWの周囲に大きな空間が形成されるため、ファンフィルターユニット40から吐出された空気は、ウエハWから離れて流れる。このため、ダウンフローの影響が少なくなり、ウエハWの表面上にパーティクルが形成され難くなっている。
【0079】
このことにより、制御部60が、少なくとも一組のウエハW間のギャップが所定値の範囲(例えば、6mm以上)にある場合に、薬液処理されたウエハWを上昇させる際、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を上述の第1の流量より小さい第2の流量とすることが効果的である。一方、ウエハW間のギャップが所定の範囲に含まれない場合には、薬液処理されたウエハWを上昇させる際であっても、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を第1の流量に維持することができ、薬液から気化したガスが上昇して拡散することを防止することができる。
【0080】
このように本実施の形態によれば、ウエハW間のギャップが上述した所定の範囲にある場合に、薬液処理されたウエハWを上昇させる際に、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、ウエハWを薬液処理する際の流量より小さくすることができる。このことにより、ウエハW間にファンフィルターユニット40からの空気がダウンフローとして流れ込む場合に限り、その流量を低減して、ウエハWの表面上にパーティクルが形成されることを防止することができる。一方、ウエハW間のギャップが上述した所定の範囲に含まれない場合には、薬液処理されたウエハWを上昇させる際であっても、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を通常の流量(第1の流量)に維持することができ、薬液から気化したガスが上昇して拡散されることを防止することができる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、ウエハ出し入れステージ2b上の収納容器100に収納された洗浄処理前のウエハWの空き状態を第1の検出部7により検出して、この検出されたウエハWの空き状態に基づいて、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が調整される例について説明した。しかしながら、このことに限られることなく、ウエハWの空き状態を検出する検出部として、第3の検出部70を、図6に示すように、薬液槽11の上方に設けるようにしても良い。すなわち、薬液槽11の上方に、薬液処理部10のウエハボード12に保持されたウエハWの空き状態を検出する第3の検出部70が設けられ、制御部60は、この第3の検出部70により検出されたウエハWの空き状態に基づいて、各ウエハW間のギャップを算出し、少なくとも一組のウエハW間のギャップが所定の範囲にある場合に、薬液処理されたウエハWをウエハボード12により上昇させる際のファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を、第2の流量とするように、ファンフィルターユニット40および第1排気部31を制御する。なお、この第3の検出部70は、上述した第1の検出部7と同様に、少なくとも一対の発光素子と受光素子とからなるセンサ部分を有し、このセンサ部分が、ウエハボード12に保持されたウエハWのスキャンを行い、ウエハWの空き状態、すなわち、ウエハボード12の各溝(図示せず)にウエハWが係合しているか否かを検出するように構成されている。
【0082】
この場合、図7に示すように、ステップS3において、ウエハWを薬液処理部10のウエハボード12に保持した後、この保持されたウエハWの空き状態が、第3の検出部70により検出される(ステップ21)。その後、このウエハボード12を下降させて薬液処理させる(ステップS4、S5)。
【0083】
次に、ステップS21において検出されたウエハWの空き状態に基づいて、各ウエハW間のギャップが算出され、この算出されたウエハW間のギャップが所定の範囲にある場合には、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が、第1の流量より小さい第2の流量となるように、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量および第1排気部31の第1排気開閉弁33の開度が調整される。このことにより、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が低減される(ステップS22)。なお、このステップS22は、上述したステップS5におけるウエハWの薬液処理が終了する直前、例えば、終了の1分前に行うことが好ましい。このことにより、ステップS7におけるウエハWを上昇させる前に、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を安定させることができる。その後、このウエハボード12が上昇する(ステップS7)。
【0084】
なお、上述のステップS22においてファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を第2の流量とした場合、ステップS11において、ウエハW全体がリンス液に浸漬した後、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が第1の流量となるように、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量および第1排気部31の第1排気開閉弁33の開度が調整される。このことにより、ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量が、通常時の第1の流量に戻る(ステップS23)。
【0085】
以上、本発明による実施の形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形も可能である。以下、代表的な変形例について説明する。
【0086】
本実施の形態においては、薬液槽11およびリンス槽21が、一つの収容ケース30に収容されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、薬液槽11およびリンス槽21が、別々の収容ケース30に収容されるようにしても良い。すなわち、薬液槽11が、薬液槽用収容ケースに収容され、この薬液槽用収容ケースの下部に、空気を排気する薬液槽用排気部が設けられ、この薬液槽用排気部が、薬液槽用排気ラインと薬液槽用排気開閉弁とを有するようにすると共に、リンス槽21が、リンス槽用収容ケースに収容され、このリンス槽用収容ケースの下部に、空気を排気するリンス槽用排気部が設けられ、このリンス槽用排気部が、リンス槽用排気ラインとリンス槽用排気開閉弁とを有するようにしても良い(いずれも図示せず)。この場合、制御部60は、ファンフィルターユニット40から薬液槽用排気部およびリンス槽用排気部に流れる空気の流量を制御するために、ファンフィルターユニット40から吐出される空気の流量、薬液槽用排気開閉弁の開度、およびリンス槽用排気開閉弁の開度を調整すれば良い。
【0087】
また、本実施の形態においては、薬液としてのSPM液により薬液処理されたウエハWが、第2の処理部としてのリンス処理部20においてリンス処理される例について説明した。しかしながら、この第2の処理部は、リンス処理部20からなる場合に限られることはなく、SPM液とは異なる他の薬液によりウエハWを更に薬液処理する処理部であっても良い。
【0088】
また、本実施の形態においては、薬液槽11に貯留された高温のSPM液によりウエハWを薬液処理する例について述べた。しかしながら、このことに限られることはなく、薬液槽11に他の薬液を貯留してウエハWを薬液処理する場合にも、本発明を適用することができる。
【0089】
なお、以上の説明においては、本発明による基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体62、および基板処理装置1を、半導体ウエハWの薬液処理に適用した例を示している。しかしながらこのことに限られることはなく、LCD基板またはCD基板等、種々の基板等の薬液処理に本発明を適用することも可能である。
【実施例】
【0090】
ウエハW間の空気の流速と、ウエハWの表面上のパーティクルの形成の有無との関係について調べた。
【0091】
すなわち、ウエハボード12に保持されたウエハWのうち中央付近のウエハW間の空気の流速を測定するために、図8に示すように、3箇所の流速の測定ポイントP1、P2、P3を設けた。なお、この場合のウエハW間のギャップx(図5参照)は、6mmとしており、最大で50枚のウエハWを保持可能なウエハボード12に、25枚のウエハWを、略等間隔に配置した場合に相当している。
【0092】
ファンフィルターユニット40から第1排気部31に流れる空気の流量を第1の流量と第2の流量とした場合において、各測定ポイントP1、P2、P3における空気の流速を測定すると共に、各ポイントP1、P2、P3の付近においてウエハWの表面上にパーティクルが形成されているか否かを調べた。その結果を、表1に示す。なお、ここでは、図示しないが、薬液処理部10と、測定ポイントP1の側で隣接するリンス処理部20に、排気部がそれぞれ設けられ、リンス処理部20の排気開閉弁の開度が小さくなっており、このことにより、ファンフィルターユニット40のリンス処理部20の側の部分から吐出された空気が、薬液槽11に流れ、その影響で、P1における空気の流速が、P2、P3における空気の流速より大きくなっている。また、測定は、ウエハWの略下半分を、図8に示すように、を薬液に浸漬させた状態で行った。
【0093】
【表1】

【0094】
この表1に示されているように、測定ポイントP1において、ウエハW間の空気の流速が、0.61m/秒である場合に、ダウンフローの影響を受けて、ウエハWの上端部から、溶解した有機物がウエハWの表面上を垂れてパーティクルが形成されることが確認できた。このことにより、ウエハW間の空気の流速を、少なくとも0.5m/秒以下、好ましくは、0.3m/秒以下とすることにより、ウエハWの表面上にパーティクルが形成されることを防止することができるといえる。なお、本実施例においては、図8に示すように、ウエハWの略下半分を薬液に浸漬させた状態でウエハW間の空気の流速を測定しているが、ウエハWの薬液への浸漬状態および浸漬の有無に関わらず、ウエハW間の全領域にわたって、空気の流速が、0.5m/秒以下、とりわけ、0.3m/秒以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0095】
1 基板処理装置
2 収納容器搬入出部
2a 収納容器搬入出ステージ
2b ウエハ出し入れステージ
2c 収納容器搬送装置
2d 収納容器ストック部
3 洗浄処理ユニット
3a、3d 薬液処理部
3b、3e リンス処理部
3c、3f ユニット内搬送機構
4 乾燥処理ユニット
4a チャック洗浄機構
4b 水洗槽
4c ユニット内搬送機構
5 インターフェース部
5a ウエハ移載装置
6 壁部
6a 開口
7 第1の検出部
8 第2の検出部
9 ウエハ搬送装置
9a ガイドレール
10 薬液処理部
11 薬液槽
11a 内槽
11b 外槽
12 ウエハボード
13 ボード駆動部
20 リンス処理部
21 リンス槽
21a 内槽
21b 外槽
22 ウエハボード
23 ボード駆動部
30 収容ケース
31 第1排気部
32 第1排気ライン
33 第1排気開閉弁
40 ファンフィルターユニット
50 ユニット内搬送機構
51 搬送アーム
52 搬送駆動部
53 ボックス
54 第2排気部
55 第2排気ライン
56 第2排気開閉弁
60 制御部
61 入出力装置
62 記録媒体
70 第3の検出部
100 収納容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留して、複数の基板を処理する処理槽と、当該処理槽に対して昇降自在に設けられ、前記基板を保持して処理液に浸漬させる基板保持部とを有する処理部と、
前記処理部の上方に設けられ、前記処理槽に気体を供給する気体供給部と、
前記基板の空き状態を検出する検出部と、
前記処理槽を収容する収容ケースと、
前記収容ケースの下部に設けられ、前記気体供給部から供給された気体を排気する排気部と、
前記気体供給部および前記排気部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記基板の空き状態に基づいて、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を調整するように、当該気体供給部および当該排気部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を、前記基板を処理する際に、第1の流量とすると共に、前記検出部により検出された前記基板の空き状態に基づいて前記基板間のギャップを算出し、少なくとも一組の当該基板間のギャップが所定の範囲にある場合、処理された当該基板を前記基板保持部により上昇させる際に、当該第1の流量より小さい第2の流量とするように、当該気体供給部および当該排気部を制御することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理部により処理された前記基板を更に処理する第2の処理部と、
前記処理部から前記第2の処理部に、前記基板保持部により上昇した前記基板を搬送する搬送機構と、を更に備え、
前記制御部は、前記基板保持部により前記基板を上昇させる際に前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記搬送機構により前記処理部から前記第2の処理部に当該基板を搬送する際に、当該気体供給部から当該排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするように、当該気体供給部および当該排気部を制御することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2の処理部は、前記ケースに収容され、第2の処理液を貯留して、前記基板を処理する第2の処理槽と、当該第2の処理槽に対して昇降自在に設けられ、当該基板を受けて保持し、第2の処理液に浸漬させる基板保持部とを有し、
前記制御部は、前記搬送機構により前記基板を搬送する際に前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合に、前記第2の処理部の前記気体保持部により当該基板を下降させる際に、当該気体供給部から当該排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とするように、当該気体供給部から当該排気部を制御することを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量が前記第2の流量である場合、前記基板間における気体の流速が、0.5m/秒以下であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量が前記第2の流量である場合、前記基板間における気体の流速が、0.3m/秒以下であることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
複数の基板を処理部の基板保持部により保持する工程と、
前記基板の空き状態を検出する工程と、
処理液が貯留された前記処理部の処理槽において、前記基板保持部により保持された前記基板を処理液に浸漬させ、処理する工程と、
前記基板保持部により、処理された前記基板を上昇させる工程と、を備え、
前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板の空き状態に基づいて、前記処理槽の上方に設けられ、当該処理槽に気体を供給する気体供給部から、当該処理槽を収容する収容ケースの下部に設けられ、当該気体供給部から供給された気体を排気する排気部に流れる気体の流量が調整されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
前記基板を処理する工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を第1の流量とし、
前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板の空き状態に基づいて当該基板間のギャップを算出し、少なくとも一組の前記基板間のギャップが所定の範囲にある場合に、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を、前記第1の流量より小さい第2の流量とすることを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
第2の処理部において、前記処理部により処理された前記基板を更に処理する工程と、
前記処理部から前記第2の処理部に、前記基板保持部により上昇した前記基板を搬送する工程と、を更に備え、
前記基板を上昇させる工程において前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記基板を搬送する工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とすることを特徴とする請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第2の処理部の基板保持部により、前記処理部から搬送された前記基板を下降させる工程であって、前記第2の処理部の第2の処理槽に貯留された第2の処理液に当該基板を浸漬させる工程を更に備え、
前記基板を搬送する工程において前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を前記第2の流量とした場合、前記基板を下降させる工程において、前記気体供給部から前記排気部に流れる気体の流量を当該第2の流量とすることを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記気体供給部から前記排気部に前記第2の流量で気体が流れる際、前記基板間を流れる気体の流速が、0.5m/秒以下であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記気体供給部から前記排気部に前記第2の流量で気体が流れる際、前記基板間を流れる気体の流速が、0.3m/秒以下であることを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、
この基板処理方法は、
複数の基板を処理部の基板保持部により保持する工程と、
前記基板の空き状態を検出する工程と、
処理液が貯留された前記処理部の処理槽において、前記基板保持部により保持された前記基板を処理液に浸漬させ、処理する工程と、
前記基板保持部により、処理された前記基板を上昇させる工程と、を備え、
前記基板を上昇させる工程において、検出された前記基板間の空き状態に基づいて、前記処理槽の上方に設けられ、当該処理槽に気体を供給する気体供給部から、当該処理槽を収容する収容ケースの下部に設けられ、当該気体供給部から供給された気体を排気する排気部に流れる気体の流量が調整されることを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−4379(P2012−4379A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138502(P2010−138502)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】