説明

基板処理装置

【課題】温度計用保護管を処理室にシールを確保しつつ着脱可能に設置する。
【解決手段】熱電対61が挿入される石英製の保護管62をエルボ管形状に形成する。石英製のプロセスチューブ31の炉口33付近の側壁に開設された取付孔63に石英製のスペーサ64とパイプ65を溶着し、パイプ65に保護管62の屈曲下端部をプロセスチューブ31の内側から挿入する。パイプ65にスペーサ66とシールリング67が収納されたキャップ68を嵌合し、パイプ65の外側端部に異径ウルトラトール69を嵌合し、異径ウルトラトール69の外側端部にスペーサ70とシールリング71が収納されたキャップ72を嵌合する。一対の保護管62、62を連結棒73で連結し、両保護管のプロセスチューブ31の内周面との間に当てブロック74、74を挟み込む。保護管を石英製のプロセスチューブに着脱可能に取り付けることで、メンテナンス作業を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、特に、温度測定技術に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造方法において、半導体素子を含む半導体集積回路を作り込む半導体ウエハ(以下、ウエハという。)に絶縁膜や金属膜を堆積(デポジション)するのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memorry )のキャパシタ(Capacitor )の静電容量部(絶縁膜)を形成するための五酸化タンタル(Ta25 )膜の表面近傍に付着したカーボン(C)を除去する基板処理装置として、バッチ式リモートプラズマ処理装置が提案されている。
その一例として、複数枚の被処理基板が搬入される処理室を形成するプロセスチューブが石英によって一体的に形成されており、このプロセスチューブの処理室には互いに近接した一対の電極が配置されているとともに、両電極間には高周波電力を印加する電源が接続されており、前記処理室には前記両電極間を含み前記処理室と独立した放電室が形成されており、この放電室には処理ガスを前記処理室に供給するガス吹出口が開設されているバッチ式リモートプラズマ処理装置、がある。例えば、特許文献1参照。
【0003】
【特許文献1】特開2002−280378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記したバッチ式リモートプラズマ処理装置においては、プロセスチューブが石英によって一体的に形成されているために、処理室にカスケード温度計を取り付けるのが困難であるという問題点があることが、本発明者によって明らかにされた。
【0005】
本発明の目的は、温度計を確実に保護しつつ、その取り付けを簡単化することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板処理装置は、基板を多段に保持する基板保持具を収容して前記基板を処理する処理室を形成したプロセスチューブと、前記基板を加熱するヒータユニットと、前記プロセスチューブの側壁を貫通して前記処理室に挿入された保護管と、前記保護管に挿入された温度計とを備えており、
前記保護管は前記プロセスチューブの側壁の一部に固定された接続部材の中空部に挿通されており、前記接続部材の外周面と前記保護管の外周面との間にはシールリングが介設されていることを特徴とする。
また、本発明に係る基板処理装置は、基板を収容する空間を形成するプロセスチューブと、前記基板を加熱するヒータユニットと、前記基板の近傍の温度を測定するために前記プロセスチューブ内に延在して設けられる保護管に収容された温度測定手段と、前記プロセスチューブの外壁に設けられた中空の接続部とを有し、
前記保護管が前記接続部の中空部を通って前記プロセスチューブの外部に導出され、前記接続部の外壁と前記接続部から導出した前記保護管の外壁とに掛け渡って設けられるシール手段を備えており、
前記接続部の外壁と前記シール手段との間、および、前記保護管の外壁と前記シール手段との間のそれぞれにシール部材を介して前記シール手段を気密に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、接続部材の外周面とシールリングとの間、および保護管の外周面とシールリングとの間によって保護管の内外の気密を維持することができるので、温度計を保護することができる。また、前記した手段によれば保護管は接続部材に挿通することにより、プロセスチューブに簡単に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、ウエハ等の基板へのプロセス処理例としてのCVD法の一つであるALD(Atomic Layer Deposition )法を実施するALD装置として構成されている。
ALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料となるガスを1種類ずつ順次に基板上に供給し、1原子層単位で吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う方法である。
例えば、シリコン窒化(SiNx)膜を形成する場合のALD法においては、DCS(SiH2 Cl2 、ジクロロシラン)とNH3 (アンモニア)を用いて、300〜600℃の低温で、高品質の成膜が可能である。そして、複数種類の反応性ガスは1種類ずつ順次に供給する。また、膜厚の制御は反応性ガス供給のサイクル数によって実行することができる。例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合には、複数種類のガスの供給は20サイクル行う。
【0010】
図1に示されているように、ALD装置10は筐体11を備えており、筐体11の前面にはカセット授受ユニット12が設備されている。カセット授受ユニット12はウエハ1のキャリアであるカセット2を二台載置することができるカセットステージ13を備えており、カセットステージ13の下方にはウエハ姿勢整合装置14が二組設備されている。外部搬送装置(図示せず)によって搬送されて来たカセット2がカセットステージ13に垂直姿勢(カセット2に収納されたウエハ1が垂直になる状態)で載置されると、ウエハ姿勢整合装置14がカセット2に収納されたウエハ1のノッチやオリエンテーションフラットが同一になるようにウエハ1の姿勢を整合する。カセットステージ13は90度回転することにより、カセット2を水平姿勢にさせるようになっている。
【0011】
筐体11の内部にはカセット授受ユニット12に対向してカセット棚15が設備されており、カセット授受ユニット12の上方には予備カセット棚16が設備されている。カセット授受ユニット12とカセット棚15との間には、カセット移載装置17が設備されている。カセット移載装置17は前後方向に進退可能なロボットアーム18を備えており、ロボットアーム18は横行および昇降可能に構成されている。ロボットアーム18は進退、昇降および横行の協働により、カセットステージ13の上の水平姿勢となったカセット2をカセット棚15または予備カセット棚16へ搬送して移載するようになっている。
【0012】
カセット棚15の後方にはウエハ1を複数枚一括して、または、一枚宛移載することができるウエハ移載装置19が回転および昇降可能に設備されている。ウエハ移載装置19は進退可能なウエハ保持部20を備えており、ウエハ保持部20には複数枚のウエハ保持プレート21が水平に取り付けられている。ウエハ移載装置19の後方にはボートエレベータ22が設備されており、ボートエレベータ22のアーム23には基板保持具としてのシールキャップ24が水平に設置されている。
【0013】
図2に示されているように、シールキャップ24はプロセスチューブ31の炉口33の内径よりも大径の外径を有する円盤形状に形成されており、シールキャップ24はプロセスチューブ31の下端面にシールリング24aを挟んで当接することにより、プロセスチューブ31の炉口33を閉塞するようになっている。シールキャップ24の中心線上にはボート25が断熱キャップ部26を介して垂直に立脚されて支持されるようになっている。シールキャップ24の中心線上には回転軸27が挿通されており、回転軸27はシールキャップ24と共に昇降し、かつ、回転駆動装置28によって回転されるようになっている。回転軸27の上端には支持板29が水平に固定されており、支持板29の上にはボート25が断熱キャップ部26を介して垂直に立脚されて支持されている。
【0014】
ボート25は上下で一対の端板25a、25bと、両端板25aと25bとの間に架設されて垂直に配設された複数本(本実施の形態では三本)の保持部材25cとを備えており、各保持部材25cには多数条の保持溝25dが長手方向に等間隔に配されて、同一平面内で互いに対向して開口するように没設されている。そして、ウエハ1の外周縁辺が各保持部材25cの多数条の保持溝25d間にそれぞれ挿入されることにより、複数枚のウエハ1がボート25に水平にかつ互いに中心を揃えられた状態で整列されて保持されるようになっている。
【0015】
図2〜図4に示されているように、ALD装置10は石英(SiO2 )が用いられて一体的に形成されたプロセスチューブ31を備えており、プロセスチューブ31は一端が開口で他端が閉塞の円筒形状に形成されている。プロセスチューブ31は中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。プロセスチューブ31の筒中空部は複数枚のウエハ1を収容して処理する処理室32を形成しており、プロセスチューブ31の下端開口はウエハ1を出し入れするための炉口33を形成している。プロセスチューブ31の内径は取り扱うウエハ1の最大外径よりも大きくなるように設定されている。プロセスチューブ31の外部にはプロセスチューブ31の周囲を包囲するヒータユニット34が同心円に設備されており、ヒータユニット34は処理室32を全体にわたって均一または所定の温度分布に加熱するように構成されている。ヒータユニット34はALD装置10の筐体11に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっている。
【0016】
図3に示されているように、プロセスチューブ31の炉口33の付近における側壁の一部には、処理室32を真空引きする排気管35の一端が接続されており、排気管35の他端は可変流量制御弁37を介して真空ポンプ36に接続されている。なお、可変流量制御弁37は弁体の開度を調節して排気量を調整することにより、処理室32の圧力を制御するようになっている。
【0017】
プロセスチューブ31の炉口33の付近の側壁における排気管35と略180度反対側の位置には、ガス供給管38の一端が接続されており、ガス供給管38の他端はALD法における所定のガス種を供給するガス供給源39に接続されている。ガス供給管38の途中には可変流量制御弁40と上流側開閉弁41とガス溜め42と下流側開閉弁43とがガス供給源39の側から順に介設されている。
プロセスチューブ31におけるガス供給管38と対向する部分には、樋形状の隔壁44がプロセスチューブ31の内周面と平行で上下方向に延在するように敷設されており、隔壁44はガス供給室45を形成するように構成されている。隔壁44には複数個の吹出口46がボート25の上下で隣り合うウエハ1、1間に対向するように配列されて開設されており、各吹出口46はガス供給室45に供給されたガスを均等に吹き出させるように設定されている。
吹出口46の開口面積はガス供給室45と処理室32との差圧が小さい場合には、上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチに設定することが好ましい。しかし、ガス供給室45と処理室32との差圧が大きい場合には、上流側から下流側に向かって吹出口46の開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくすることが好ましい。
【0018】
プロセスチューブ31の炉口33の付近の側壁における排気管35と略90度離れた位置には、プラズマ室48を形成した樋形状の隔壁(以下、プラズマ室壁という。)47がプロセスチューブ31の内周面と平行で上下方向に延在するように敷設されている。プラズマ室壁47の内向きの側壁の断面形状は円弧形に形成されており、その周方向の幅は略60度に設定されている。プラズマ室壁47の内向きの側壁における排気管35側の端部には、複数個の吹出口49がボート25の上下で隣り合うウエハ1、1間に対向するように配列されて開設されており、各吹出口49はプラズマ室48に供給されたガスを均等に吹き出させるように設定されている。プラズマ室壁47の吹出口49とガス供給室45を形成した隔壁(以下、ガス供給室壁という。)44の吹出口46との位相差は、約120度に設定されている。
プラズマ室壁47の吹出口49の開口面積はプラズマ室48と処理室32との差圧が小さい場合には、上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチに設定することが好ましい。しかし、プラズマ室48と処理室32との差圧が大きい場合には、上流側から下流側に向かって吹出口49の開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくすることが好ましい。
【0019】
プロセスチューブ31の炉口33の付近の側壁におけるプラズマ室壁47の吹出口49と反対側の位置には、ガス供給管50の一端が接続されており、ガス供給管50の他端はALD法における所定のガス種を供給するガス供給源51に接続されている。ガス供給管50の途中には可変流量制御弁52と開閉弁53とが、ガス供給源51の側から順に介設されている。また、ガス供給管50のプラズマ室壁47の内部側端にはノズル54の一端が接続されており、ノズル54は垂直に立脚されている。ノズル54には複数個のガス供給口55が垂直方向に等間隔に配置されて、それぞれ周方向内向きに開設されている。
【0020】
プラズマ室48の内部には一対の保護管56、56がプラズマ室48の中心線を挟んで互いに反対側に対称形にそれぞれ配置されて、上下方向に延在するように敷設されている。各保護管56は誘電体が使用されて上端が閉塞した細長い円形のパイプ形状に形成されており、各保護管56の下端部は適度に屈曲されて、プロセスチューブ31の側壁を貫通して外部に突き出されている。各保護管56の中空部内は処理室32の外部(大気圧)に連通されている。両保護管56、56の中空部には導電材料が使用されて細長い棒状に形成された一対の棒状電極57、57がそれぞれ同心的に敷設されており、両棒状電極57、57間には高周波電力を印加する高周波電源58が整合器59を介して電気的に接続されている。
高周波電源58および整合器59はコントローラ60によって制御されるようになっている。また、コントローラ60は可変流量制御弁37、40、52や開閉弁41、43、53およびヒータユニット34等を制御するようになっている。
【0021】
プロセスチューブ31の炉口33の付近の側壁におけるプラズマ室壁47と180度反対側の位置には、カスケード温度計としての熱電対61を敷設するための保護管62が二本、周方向に隣り合わせに並べられてそれぞれ垂直に立設されている。各熱電対61はコントローラ60に温度測定結果を送信するようになっており、コントローラ60は温度測定結果に基づいてヒータユニット34等を制御するようになっている。
【0022】
本実施の形態においては、保護管62は石英が使用されて細長い円筒形状で下端部が直角に屈曲されたエルボ管(L字管)形状に形成されており、その屈曲下端部がプロセスチューブ31の側壁に図5に示されているように取り付けられている。
すなわち、プロセスチューブ31の炉口33の付近の側壁における所定の位置には、保護管62の外径よりも大口径の取付孔63が開設されており、保護管62の屈曲下端部が取付孔63にプロセスチューブ31の内側から挿入されている。プロセスチューブ31の外周面における取付孔63の部位には、接続部材としてのスペーサ64が同心円に配されて溶着されており、スペーサ64の外側端部には接続部材としてのパイプ65が同心円に配されて溶着されている。スペーサ64は石英が使用されて内径が取付孔63と略等しい円形リング形状に形成されている。パイプ65は石英が使用されて内径が保護管62の外径と等しい円筒形状に形成されている。
保護管62の屈曲下端部はパイプ65の内周に嵌入されることにより、水平に支承された状態になっている。パイプ65の外周にはスペーサ66およびシールリング67が収納されたキャップ68が嵌合されており、パイプ65のスペーサ64と反対側の端部には異径ウルトラトール69が嵌合されている。シールリング67は異径ウルトラトール69とキャップ68との結合によって圧縮されることにより、保護管62の外周面とパイプ65の内周面との間すなわち取付孔63を気密シールした状態になっている。
異径ウルトラトール69のパイプ65と反対側の端部には、スペーサ70およびシールリング71が収納されたキャップ72が嵌合されている。シールリング71は異径ウルトラトール69とキャップ72との結合によって圧縮されることにより、保護管62の外周面と異径ウルトラトール69の内周面との間すなわち取付孔63を気密シールした状態になっている。
【0023】
以上のようにして屈曲下端部がプロセスチューブ31の側壁に取り付けられた一対の保護管62、62は、いずれも垂直に立脚された状態で、L字形状の縦部分の対向面間における上中下段に水平に架設された三本の連結棒73によって互いに連結されることにより、図3〜図5に示されているように、垂直姿勢を維持した状態で固定されている。すなわち、円筒形状の保護管62はパイプ65の内周面に沿って回転することができるために、単独の保護管62は垂直姿勢を維持することができないが、隣り合う保護管62、62同士が連結棒73によって連結されると、互いに回転を阻止した状態になるために、双方の保護管62、62は垂直姿勢を維持することができる状態になる。
【0024】
また、プロセスチューブ31の側壁に屈曲下端部が取り付けられ垂直に敷設された状態の両保護管62、62におけるプロセスチューブ31の内周面との間には、当てブロック74、74がそれぞれ挟み込まれている。この当てブロック74、74により、両保護管62、62のプロセスチューブ31の径方向の位置決めが確保されている。
【0025】
次に、以上の構成に係るALD装置10を使用したICの製造方法における成膜工程を説明する。
【0026】
まず、基板処理装置としての全体の流れを説明する。
図2に示されているように、ALD装置10の被処理基板としてのウエハ1は複数枚がボート25にウエハ移載装置19によって装填(チャージング)される。複数枚のウエハ1が装填されたボート25はシールキャップ24および回転軸27と共にボートエレベータ22によって上昇されて、プロセスチューブ31の処理室32に搬入(ボートローディング)される。
【0027】
図7に示されているように、ウエハ1群を保持したボート25が処理室32に搬入されて、処理室32がシールキャップ24によってシールされると、処理室32は排気管35に接続された真空ポンプ36によって所定の圧力以下に排気され、ヒータユニット34への供給電力が上昇されることにより、処理室32の温度が所定の温度に上昇される。ヒータユニット34がホットウオール形構造であることにより、処理室32の温度は全体にわたって均一に維持された状態になり、その結果、ボート25に保持されたウエハ1群の温度分布は全長にわたって均一になるとともに、各ウエハ1の面内の温度分布も均一かつ同一になる。
【0028】
処理室32の温度が予め設定された値に達して安定した後に、後述するALD法による成膜作業が実施される。
【0029】
所定の成膜作業が完了すると、シールキャップ24がボートエレベータ22によって下降されることにより炉口33が開口されるとともに、ボート25に保持された状態でウエハ1群が炉口33から処理室32の外部に搬出(ボートアンローディング)される。
処理室32の外部に搬出されたウエハ1群はボート25からウエハ移載装置19によってディスチャージングされる(降ろされる)。
以降、前記した作動が繰り返されることにより、複数枚のウエハ1が一括してバッチ処理される。
【0030】
次に、ALD法による成膜作業を、DCSガスとNH3 ガスとを用いてシリコン窒化膜を形成する場合について説明する。
DCSガスとNH3 ガスとを用いてシリコン窒化膜を形成する場合には、次の第一ステップ、第二ステップおよび第三ステップが順に実施される。
【0031】
第一ステップにおいては、図6に示されているように、プラズマ励起の必要なNH3 ガスと、プラズマ励起の必要のないDCSガスとが併行して流される。
ガス供給管50に設けた開閉弁53および排気管35に設けた可変流量制御弁37が共に開けられる。ガス供給管50から可変流量制御弁52により流量調整されたNH3 ガスがノズル54のガス供給口55からプラズマ室48へ噴出し、一対の棒状電極57、57間に高周波電源58から整合器59を介して高周波電力を印加してNH3 ガスをプラズマ励起し、活性種として処理室32に供給しつつ排気管35から排気する。
NH3 ガスをプラズマ励起することによって活性種として流すときは、可変流量制御弁37を適正に調整することにより、処理室32の圧力を10〜100Paとする。可変流量制御弁52によって制御するNH3 ガスの供給流量は、1000〜10000sccm(スタンダード・立方センチメートル)である。NH3 ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ1を晒す時間は、2〜120秒間である。このときのヒータユニット34の制御温度は、ウエハの温度が300〜600℃になるように設定されている。NH3 ガスは反応温度が高いために、このウエハ温度(300〜600℃)では反応しないので、プラズマ励起することによって活性種としてから流すことにより、ウエハ1の温度が低い温度範囲のままであっても、NH3 ガスをウエハに堆積することができる。
【0032】
このNH3 ガスをプラズマ励起することによって活性種として供給しているときに、ガス供給管38の上流側開閉弁41を開いて、下流側開閉弁43を閉めて、DCSガスも流すようにする。これにより、上流側開閉弁41と下流側開閉弁43との間に設けたガス溜め42にDCSガスを溜める。このとき、処理室32に流しているガスはNH3 ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、DCSガスは存在しない。したがって、NH3 ガスは気相反応を起こすことはなく、プラズマによって励起されて活性種となったNH3 ガスはウエハ1上の下地膜と表面反応する。
【0033】
第二ステップにおいては、ガス供給管50の開閉弁53が閉められて、NH3 ガスの供給は停止される。しかし、DCSガスのガス溜め42への供給は継続する。ガス溜め42に所定圧、所定量のDCSガスが溜まったら、上流側開閉弁41も閉めることにより、ガス溜め42にDCSガスを閉じ込めておく。
ガス溜め42内にはDCSガスを、圧力が20000Pa以上になるように溜める。また、ガス溜め42と処理室32との間のコンダクタンスが1.5×10-33 /s以上になるように、コントローラ60を制御する。さらに、処理室32の容積と、これに対する必要なガス溜め42の容積との比として考えると、処理室32の容積が100l(リットル)の場合においては、100〜300ccであることが好ましく、容積比としてはガス溜め42は処理室32の容積の1/1000〜3/1000倍とすることが好ましい。
また、排気管35の可変流量制御弁37は開いたままにして、処理室32を真空ポンプ36によって20Pa以下に排気することにより、処理室32に残留したNH3 ガスを処理室32から排除する。この際に、窒素ガス等の不活性ガスを処理室32に供給すると、残留したNH3 ガスを排除する効果をより一層高めることができる。
【0034】
第三ステップにおいては、処理室32の排気が終わったら、排気管35の可変流量制御弁37を閉じて排気を止める。ガス供給管38の下流側開閉弁43を開く。これにより、ガス溜め42に溜められたDCSガスが処理室32に一気に供給される。このとき、排気管35の可変流量制御弁37が閉じられているので、処理室32内の圧力は急激に上昇して約931Pa(7Torr)まで昇圧される。
DCSガスを供給するための時間は2〜4秒に設定し、その後、上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とする。このときのウエハの温度はNH3 ガスの供給時と同じく、300〜600℃である。DCSガスの供給により、ウエハ1の下地膜の上のNH3 ガスとDCSガスとが表面反応して、ウエハ1の上にシリコン窒化膜が形成される。成膜後、下流側開閉弁43を閉じ、可変流量制御弁37を開けて処理室32を真空排気し、残留するDCSガスの成膜に寄与した後のガスを排除する。また、この時には窒素ガス等の不活性ガスを処理室32に供給すると、残留するDCSガスの成膜に寄与した後のガスを処理室32から排除する効果をより一層高めることができる。また、上流側開閉弁41を開いてガス溜め42へのDCSガスの供給を開始する。
【0035】
以上の第一ステップ〜第三ステップを1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハの上に所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する。
【0036】
ALD法においては、ガスは下地膜表面に吸着する。このガスの吸着量は、ガスの圧力およびガスの暴露時間に比例する。よって、所望する一定量のガスを短時間で吸着させるためには、ガスの圧力を短時間で大きくする必要がある。
本実施の形態においては、可変流量制御弁37を閉めたうえで、ガス溜め42に溜めたDCSガスを瞬間的に供給しているので、処理室32のDCSガスの圧力を急激に上げることができ、所望する一定量のガスを瞬間的に吸着させることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、ガス溜め42にDCSガスを溜めている間に、ALD法で必要なステップであるNH3 ガスをプラズマ励起することによって活性種として供給および処理室32を排気しているので、DCSガスを溜めるための特別なステップを必要としない。
また、処理室32を排気してNH3 ガスを除去してからDCSガスを流すので、両者はウエハ1に向かう途中で反応しない。供給されたDCSガスはウエハ1に吸着している
NH3 ガスのみ有効に反応させることができる。
【0038】
ところで、ALD装置を含む一般的なCVD装置においては、カスケード温度計として複数本(対)の熱電対が処理室に設置されており、最近では、四本または五本の熱電対を設置することが主流になって来ている。
通例、複数本の熱電対は石英から成る一本の保護管に挿入されてプロセスチューブに設置されており、保護管はステンレス製のインレットフランジ(マニホールド)に締結されている。この場合には、保護管をインレットフランジに締結する時や時間経過によって保護管が傾いたりする可能性があるので、保護管をインレットフランジにサポート金具によって強固に固定することが実施される。
本実施の形態に係るALD装置のように、インレットフランジが一体的に形成された石英製のプロセスチューブに石英製の保護管を設置する場合には、保護管をプロセスチューブに溶接によって固定することが、考えられる。この場合には、保護管の取付時の傾き等は防止することができる。
しかしながら、この場合には、次のような問題点がある。
プロセスチューブの洗浄時に保護管を取り外す必要があるために、プロセスチューブのメンテナンスが困難になる。熱電対の挿入作業が困難になる。熱電対の挿入作業の困難性により、一本の熱電対毎に保護管が一本ずつ必要になるために、プロセスチューブの構造が複雑になり、コストアップを招来してしまう。
【0039】
前述した実施の形態によれば、以上の問題点を解決することができ、次の効果が得られる。
【0040】
1) 熱電対が挿入される石英製の保護管をエルボ管形状に形成し、その屈曲下端部をプロセスチューブの側壁に開設された取付孔に内側から挿入するとともに、石英製のスペーサや石英製のパイプ、異径ウルトラトールおよびキャップ等によって締結することにより、石英製の保護管を石英製のプロセスチューブに溶着せずに済むために、プロセスチューブのメンテナンスを容易に実施することができる。
【0041】
2) 保護管の外周面と異径ウルトラトールの内周面との間をシールリングによってシールするとともに、保護管の外周面と異径ウルトラトールの内周面との間をシールリングによってシールすることにより、取付孔を気密シールすることができるので、プロセスチューブの気密性を維持することができ、また、保護管に挿入された熱電対を確実に保護することができる。
【0042】
3) 屈曲下端部がプロセスチューブの側壁に取り付けられた一対の保護管をいずれも垂直に立脚された状態で、L字形状の縦部分の対向面間における上中下段に水平に架設された連結棒によって互いに連結することにより、隣り合う保護管同士が連結棒によって回転を阻止した状態になるので、双方の保護管の垂直姿勢を維持することができる。
【0043】
4) 複数本の保護管をプロセスチューブに簡単かつ着脱可能に取り付けることができるので、各保護管毎に熱電対を一本ずつ挿入することができ、複数本の熱電対をプロセスチューブに敷設する場合におけるコストアップを抑制することができる。
【0044】
5) 複数本の保護管をプロセスチューブに着脱可能に取り付けることができるので、プロセスチューブの洗浄に際して、保護管を取り外すことができ、その結果、プロセスチューブのメンテナンスの作業性をより一層高めることができる。
【0045】
6) プロセスチューブの側壁に屈曲下端部が取り付けられ垂直に敷設された状態の保護管におけるプロセスチューブの内周面との間に当てブロックを挟み込むことにより、当てブロックによって保護管のプロセスチューブの径方向の位置決めを確保することができるので、保護管の取り付け作業性をより一層高めることができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0047】
例えば、保護管は二本に限らず、一本または三本以上であってもよい。
【0048】
カスケード温度計としては、熱電対を使用するに限らない。
【0049】
前記実施の形態では、低温での窒素膜の形成において、DCSとアンモニアとを交互に供給してシリコン窒化膜を形成する場合について説明したが、ALD装置は、キャパシタの静電容量部のTa25 膜に介在したカーボンを除去する場合、その他の膜種に介在した異物(その膜種以外の分子や原子等)を除去する場合、ウエハにALD膜を形成する場合、拡散する場合、熱処理する場合等に適用することができる。
例えば、DRAMのゲート電極用の酸化膜を窒化する処理において、ガス供給管に窒素(N2 )ガスまたはアンモニア(NH3 )または一酸化窒素(N2 O)を供給し、処理室を室温〜750℃に加熱することにより、酸化膜の表面を窒化することができた。
また、シリコンゲルマニウム(SiGe)膜が形成される前のシリコンウエハの表面を水素(H2 )ガスの活性粒子によってプラズマ処理したところ、自然酸化膜を除去することができ、所望のSiGe膜を形成することができた。
【0050】
また、前記実施の形態ではALD装置について説明したが、本発明はこれに限らず、他のCVD装置、酸化膜形成装置、拡散装置およびアニール装置等の基板処理装置全般に適用することができる。
【0051】
前記実施の形態ではウエハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態であるALD装置を示す斜視図である。
【図2】その主要部を示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III 線に沿う一部省略平面断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う側面断面図である。
【図5】保護管の取付部を示しており、(a)は平面断面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図6】ガスの流れを示す主要部の一部省略平面断面図である。
【図7】同じく一部省略側面断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…ウエハ(被処理基板)、2…カセット、10…ALD装置(バッチ式縦形ホットウオール形リモートプラズマCVD装置)、11…筐体、12…カセット授受ユニット、13…カセットステージ、14…ウエハ姿勢整合装置、15…カセット棚、16…予備カセット棚、17…カセット移載装置、18…ロボットアーム、19…ウエハ移載装置、20…ウエハ保持部、21…ウエハ保持プレート、22…ボートエレベータ、23…アーム、24…シールキャップ、24a…シールリング、25…ボート、25a、25b…端板、25c…保持部材、25d…保持溝、26…断熱キャップ部、27…回転軸、28…回転駆動装置、29…支持板、31…プロセスチューブ、32…処理室、33…炉口、34…ヒータユニット、35…排気管、36…真空ポンプ、37…可変流量制御弁、38…ガス供給管、39…ガス供給源、40…可変流量制御弁、41…上流側開閉弁、42…ガス溜め、43…下流側開閉弁、44…隔壁、45…ガス供給室、46…吹出口、47…隔壁、48…プラズマ室、49…吹出口、50…ガス供給管、51…ガス供給源、52…可変流量制御弁、53…開閉弁、54…ノズル、55…ガス供給口、56…保護管、57…棒状電極、58…高周波電源、59…整合器、60…コントローラ、61…熱電対(カスケード温度計)、62…保護管、63…取付孔、64…スペーサ(接続部材)、65…パイプ(接続部材)、66…スペーサ、67…シールリング、68…キャップ、69…異径ウルトラトール、70…スペーサ、71…シールリング、72…キャップ、73…連結棒、74…ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を多段に保持する基板保持具を収容して前記基板を処理する処理室を形成したプロセスチューブと、前記基板を加熱するヒータユニットと、前記プロセスチューブの側壁を貫通して前記処理室に挿入された保護管と、前記保護管に挿入された温度計とを備えており、
前記保護管は前記プロセスチューブの側壁の一部に固定された接続部材の中空部に挿通されており、前記接続部材の外周面と前記保護管の外周面との間にはシールリングが介設されていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−13105(P2006−13105A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187554(P2004−187554)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】