説明

基板処理装置

【課題】スペース効率が良好でコンパクトな基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハにスパッタリングを施すスパッタリング室12と、スパッタリング室12内に収納されウエハ1を保持するウエハチャック20と、ウエハ1を保持したウエハチャック20を回転させる回転機構21と、ウエハ1に向けてイオンビーム36を照射するミリング用イオン源30とを備えており、ミリング用イオン源30のミリング用電極32を短辺側がウエハの外径より小さく長辺側が同外径より大きい矩形形状に形成し、このミリング用電極32の開口部33の開口率をウエハの中心側より周辺側が大きくなるように設定する。ミリング加工時にウエハを回転させつつイオンビームをウエハに照射すると、ミリング加工量をウエハ全面で均一化できる。ミリング用イオン源のサイズを小さくできるので、スペース効率を向上させてスパッタリング装置を小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造方法においてICが作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという。)の一主面の上に金属をスパッタリングによって成膜するのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において、ウエハの一主面の上に金属膜を形成する薄膜形成方法として、スパッタリング装置を使用した薄膜形成方法が、広く使用されている。
一般に、スパッタリング装置はスパッタリング室に配設された一対の電極を備えており、一方の電極はウエハに被着させるべき金属膜と同質の材料が用いられて形成されたターゲットが装着されるように構成され、もう一方の電極はウエハが保持されるように構成されている。例えば、特許文献1参照。
【0003】
【特許文献1】特開2005−93789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、スパッリングする前にウエハにイオンビームを照射してプレクリーニングする場合において、ウエハに均一なイオンビームを照射するためには、イオンビームはウエハよりも広い範囲に照射する必要があるために、ウエハが大きくなると、イオン供給部が大きくなり、装置全体が大きくなるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、スペース効率が良好でコンパクトな基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内にイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
前記イオン供給部は、前記基板保持具に保持された前記基板が該イオン供給部と対向するように配置された際に、該イオン供給部の短辺側が前記基板の外径より小さく、該イオン供給部の長辺側が前記基板の外径より大きい矩形形状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
(2)基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内にイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
前記イオン供給部には、前記処理室内にイオンビームを引き出す開口部を有する電極を備えており、
前記電極は前記基板保持具に保持された前記基板が該電極と対向するように配置された際に、該電極の短辺側が前記基板の外径より小さい矩形形状であって、前記開口部の開口率が前記基板の中心側より前記基板端側が大きくなるように設定されていることを特徴とする基板処理装置。
(3)基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内に電極に設けられた開口部からイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
前記電極は、前記基板保持具に保持された前記基板が該電極と対向するように配置された際に、該電極の短辺側が前記基板の外径より小さく、該電極の長辺側が前記基板の外径より大きい矩形形状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
(4)基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内にイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
該イオン供給部は、前記基板保持具に保持された前記基板が該イオン供給部と対向するように配置されつつ前記基板が1回転する間に、前記イオン供給部から照射されたイオンビームが該イオン供給部の前記基板面の中心と前記基板端とで略同量の照射量となるように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、イオン供給部をコンパクトに設定することにより、スペース効率を向上させることができるので、装置全体をコンパクトに設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、図1および図2に示されたスパッタリング装置10を備えている。
【0010】
スパッタリング装置10は直方体の筐体形状に形成された真空容器11を備えている。真空容器11は処理室としてのスパッタリング室12を構成しており、スパッタリング室12は真空ポンプ(図示せず)によって真空排気されるようになっている。
スパッタリング室12には基板としてのウエハ1を出し入れするための搬入搬出口13が開設されており、搬入搬出口13はゲートバルブ14によって開閉されるように構成されている。
また、スパッタリング室12にはイオンを生成するための不活性で質量の大きい放電ガスとしてのアルゴンガスを供給するガス供給管(図示せず)が設けられている。
【0011】
スパッタリング室12の上部にはターゲット15が、例えば45度の傾斜角をもって配置されており、ターゲット15は姿勢制御装置(図示せず)によって姿勢を制御されるように構成されている。なお、ターゲット15の材質に応じ、傾斜角を異ならせるように制御されるようになっている。
ターゲット15は後述するようにアルゴンイオンによってスパッタリングされてその組成物を飛び出させ、ウエハ1の上にスパッタリング膜を形成させるものであり、所望の金属によって円板形状に形成されている。なお、ターゲット15は円板形状であるのみならず、角型形状であってもよい。
【0012】
ターゲット15の中心を通る水平線が交差する真空容器11の一対の側壁のうち一方の側壁(以下、左側壁とする。)には、スパッタリング用イオン源16が水平に設置されている。スパッタリング用イオン源16はバケット型イオン源と呼ばれるもので、アルゴンイオンを生成するイオン生成部と、イオン生成部によって生成されたアルゴンイオンをイオンビームとしてターゲット15に向けて照射する引出電極とを備えている。
【0013】
スパッタリング室12におけるターゲット15の中心を通る垂直線上には、基板保持具としてのウエハチャック20が配置されており、ウエハチャック20は回転機構21によって回転されるように構成されているとともに、チルト機構(図示せず)によって水平姿勢(保持面が水平の姿勢)と垂直姿勢(保持面が垂直の姿勢)との間で姿勢を変更(チルト)されるように構成されている。
【0014】
垂直姿勢(図3参照)の時のウエハチャック20の中心を通る水平線が交差する真空容器11の右側壁には、イオンを照射するミリング用イオン源30が水平に設置されている。
図3に示されているように、ミリング用イオン源30は、バケット型イオン源と呼ばれるもので、内部にイオン供給部としてのアルゴンイオンを生成するイオン生成部31と、イオン生成部31によって生成されたアルゴンイオンをイオンビームとしてウエハチャック20上のウエハ1に向けて引き出す引出電極(以下、ミリング用電極という。)32とを備えている。
図4(a)に示されているように、ミリング用電極32はイオンビームを透過させる開口部33を備えており、開口部33の開口率はウエハチャック20に保持されたウエハ1がミリング用イオン源30に対向する垂直姿勢に配置された際に、ウエハ1の中心側よりウエハ1の端側が大きくなるように設定されている。
すなわち、ミリング用電極32は垂直方向がウエハ1の外径より短く水平方向がウエハ1の外径より長い矩形形状に形成されており、矩形のミリング用電極32には上下で一対のブランクエリア34、34と、左右で一対の開口部エリア35、35とがそれぞれ形成されており、この左右で一対の開口部エリア35、35により開口部が形成されている。
図4(c)に示されているように、 両ブランクエリア34、34はミリング用電極32の上下の長辺と、ミリング用イオン源30に対向する垂直姿勢に配置された際のウエハ1の円周との四つの交点a、b、c、dのそれぞれa、c間とb、d間とを結ぶ対角線が画成するエリアと略同じエリアとなるように、上下で一対の二等辺三角形のエリアとしてそれぞれ設定されている。
左右の開口部エリア35、35は矩形のミリング用電極32における上下のブランクエリア34、34を除いた一対の細長い五角形形状(ハウス形状)のエリアとしてそれぞれ設定されており、両開口部エリア35、35には円形(好ましくは略真円形)の開口(以下、小孔という。)33aが複数個、マトリックス(格子)形状に形成されている。
【0015】
次に、作用を説明する。
【0016】
スパッタリングすべきウエハ1は予め所定の圧力に減圧されたスパッタリング室12に搬入搬出口13から搬入されて、図1に破線で示された水平姿勢のウエハチャック20の上に受け渡される。
【0017】
次いで、図3に示されているように、ウエハチャック20がチルト機構によって垂直姿勢にチルトされる。
続いて、ウエハチャック20が回転機構21によって回転されつつ、ミリング用イオン源30からイオンビーム36がウエハ1に照射され、ウエハ1はイオンミリング加工される。これによりウエハ1の酸化膜が除去される。
ここで、イオンミリング加工とは、イオンビームを対象物(ウエハ)に照射することにより、対象物を削る加工方法を言う。
この際、図4(a)で参照されるように、矩形のミリング用電極32の開口部33の開口率がウエハ1の中心側よりウエハ1の周辺側が大きくなるように設定され、かつ、ウエハ1が回転されているので、イオンビーム36のウエハ1に対する照射量は、ウエハ1の照射面の中心と周辺部とで略同一となる。
したがって、ミリング用イオン源30のイオンビーム36によるウエハ1に対するミリング加工量は、ウエハ1の全面にわたって均一な分布となる。
【0018】
ところで、図4(b)に示されているように、ミリング用電極がウエハ1より大径の円板形状に形成されており、円板形状のミリング用電極32’に開口部の開口率を全体に均一に設定した場合においては、イオンビームが照射されるウエハ1以外の範囲は斜線の範囲で示されるように、ウエハ1の円周外側の全周照射範囲37’になる。
これに対して、本実施の形態においては、イオンビーム36が照射されるウエハ1以外の範囲は、図4(c)に斜線の範囲で示されているように、ウエハ1の円周外側の矩形のミリング用電極32における両開口部エリア35、35にそれぞれ対応する狭小の照射範囲37、37だけになる。
したがって、本実施の形態によれば、スパッタリング室12内のウエハ1以外の範囲に余分なイオンビーム36が照射されてパーティクルが発生する現象を、円板形状のミリング用電極32’の場合に比べて抑制することができる。
【0019】
その後、図5に示されているように、ウエハチャック20がチルト機構によって水平姿勢にチルトされる。
続いて、ウエハチャック20が回転機構21によって回転されつつ、スパッタリング用イオン源16からアルゴンイオンのイオンビーム17がターゲット15に照射される。イオンビーム17がターゲット15に照射されると、ターゲット15からスパッタ粒子18が飛び出す。
そして、飛び出したスパッタ粒子18がウエハ1の表面に蒸着し、ウエハ1の表面はスパッタ粒子18によってコーティングされる。
【0020】
以上のようにして、ウエハ1に所望の厚さのスパッタリング膜が形成されると、前述したスパッタリング作動が停止されるとともに、搬入搬出口13がゲートバルブ14によって開放されて、ウエハチャック20に保持されたウエハ1が搬入搬出口13から搬出される。
【0021】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0022】
1) ミリング用電極を短辺側がウエハの外径より小さく、長辺側がウエハの外径より大きい矩形形状に形成することにより、ミリング用イオン源のサイズを小さくすることができるので、スペース効率を向上させることにより、例えば、同一のスパッタリング室内で酸化膜除去後に直ちに本処理であるスパッタリングを施すことができる。
【0023】
2) ミリング用電極を短辺側がウエハの外径より小さく、長辺側がウエハの外径より大きい矩形形状に形成することにより、イオンビームが照射されるウエハ以外の範囲を矩形のミリング用電極におけるウエハの円周外側の狭小の範囲に限定することができるので、スパッタリング室内のウエハ以外の範囲に余分なイオンビームが照射されてパーティクルが発生する現象を抑制することができる。
【0024】
3) 矩形のミリング用電極の開口部の開口率をウエハの中心側より周辺側が大きくなるように設定し、かつ、ウエハを回転させることにより、イオンビームのウエハに対する照射量をウエハの照射面の中心部と周辺部とで略同量とすることができるので、ミリング用イオン源のイオンビームによるウエハに対するミリング加工量をウエハの全面にわたって均一化することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0026】
例えば、矩形のミリング用電極の開口部の開口率をウエハの中心側より周辺側が大きくなるように設定する構成は、開口部を構成する複数個の小孔を一対の細長い五角形形状のエリアに均一に配置する構成に限らず、開口部における隣り合う小孔のピッチを中心部と周辺部とで変更する(中心部のピッチよりも周辺部のピッチを外側に行くほど広くする。)構成であってもよいし、開口部における小孔の口径を中心部と周辺部とで変更する(中心部の小孔の口径よりも周辺部の小孔の口径を外側に行くほど大きくする。)構成であってもよい。
要するに、ミリング用イオン源はウエハが1回転する間にミリング用イオン源から照射されたイオンビームがウエハの照射面の中心部と照射面の周辺部とで略同量の照射量となるように構成すればよい。
【0027】
前記実施の形態においては、スパッタリング装置について説明したが、本発明はこれに限らず、基板処理装置全般に適用することができる。
【0028】
また、基板はウエハに限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態である基板処理装置のスパッタリング装置を示す正面図である。
【図2】その側面断面図である。
【図3】ミリング加工時を示す側面断面図である。
【図4】(a)はミリング用電極とウエハとの関係を示す斜視図、(b)は比較例の照射範囲を示す模式図、(c)は本実施の形態の照射範囲を示す模式図である。
【図5】スパッタリング時を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…ウエハ(基板)、10…スパッタリング装置、11…真空容器、12…スパッタリング室(処理室)、13…搬入搬出口、14…ゲートバルブ、15…ターゲット、16…スパッタリング用イオン源、17…イオンビーム、18…スパッタ粒子、20…ウエハチャック(基板保持具)、21…回転機構、30…ミリング用イオン源(イオン供給部)、31…イオン生成部、32、32’…ミリング用電極(引出電極)、33…開口部、33a…小孔(開口)、34…ブランクエリア、35…開口部エリア、36…イオンビーム、37、37’…照射範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内にイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
前記イオン供給部は、前記基板保持具に保持された前記基板が該イオン供給部と対向するように配置された際に、該イオン供給部の短辺側が前記基板の外径より小さく、該イオン供給部の長辺側が前記基板の外径より大きい矩形形状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を処理する処理室と、
該処理室内に収納され前記基板を保持する基板保持具と、
前記処理室内に収納され前記基板保持具に前記基板を保持しつつ回転させる回転機構と、
前記処理室に隣接し該処理室内にイオンビームを照射するイオン供給部とを備え、
前記イオン供給部には、前記処理室内にイオンビームを引き出す開口部を有する電極を備えており、
前記電極は前記基板保持具に保持された前記基板が該電極と対向するように配置された際に、該電極の短辺側が前記基板の外径より小さい矩形形状であって、前記開口部の開口率が前記基板の中心側より前記基板端側が大きくなるように設定されていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−251038(P2007−251038A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75290(P2006−75290)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】