説明

基板処理装置

【課題】 ノズルを用いて被処理版上に処理液を供給する処理液吐出機能の安定性・再現性を保証しつつ吐出開始時の立ち上がり性能を改善すること。
【解決手段】 このレジストポンプ150は、ダイヤフラムポンプ164をシリンジ部166で駆動する。シリンダ178の容積はプランジャ184の位置にほぼ正確に比例するため、応答速度および安定性の高いポンプ性能を実現することができる。さらに、作動油Sを貯留する作動油タンク194を備え、この作動油タンク194より配管200を介して作動油封入部(シリンダ172,作動油室178)に作動油Sを随時補給できる構成としており、これによって作動油の漏れやエアの混入があってもポンプを分解する程のメンテナンス修理が不要となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板にノズルより所定の処理液を供給して所望の処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺型のレジストノズルを用いて被処理基板(ガラス基板等)上にレジスト液をスピンレス法で塗布する塗布装置がよく用いられている。
【0003】
このようなスピンレス方式のレジスト塗布装置は、たとえば特許文献1に開示されるように、載置台またはステージ上に基板を水平に載置して、このステージ上の基板と長尺型レジストノズルの吐出口との間に100μm程度の微小なギャップを設定し、基板上方でレジストノズルを走査方向(一般にノズル長手方向と直交する水平方向)に移動させながら基板上にレジスト液を帯状に吐出させて塗布する。長尺型レジストノズルを基板の一端から他端まで1回移動させるだけで、レジスト液を基板の外に落とさずに所望の膜厚でレジスト塗布膜を形成することができる。
【0004】
一般に、スピンレス方式のレジスト塗布装置では、レジスト液を貯留する容器とレジストノズルとの間にレジストポンプを介在させ、容器から基板一枚分のレジスト液をレジストポンプに移して(吸い込んで)おいて、塗布処理時にレジストポンプからレジストノズルに一定の圧力ないし流量でレジスト液を送給するようにしている。この種のレジストポンプには、気密性または漏洩防止機能に優れたベローズポンプが多く用いられている。
【0005】
ベローズポンプからなるレジストポンプは、ベローズの室をそのままレジストポンプ室とし、ベローズの伸縮動作によってレジスト液の吸入・吐出を行う。しかし、最近は、たとえば特許文献2に示されるように、チューブフラムポンプとベローズとを組み合わせたレジストポンプも使われている。この従来のチューブフラムポンプは、レジストポンプ室を弾性膜からなる容積可変のチューブフラムで構成し、このチューブフラムを容積一定のハウジング内に収容して、このハウジング内でチューブフラムの外側に形成される室に気密に封入される作動油をベローズによって外から出し入れするように構成されている。
【0006】
このようなベローズ駆動型のチューブフラムポンプにおいては、チューブフラムの作動油室とベローズ室とを連通させてその中に作動油を隙間なく充填または封入しており、ベローズを所定の原位置または復動位置から所定のストロークだけ伸長させると、チューブフラムポンプの作動油室からベローズ室へ一定量の作動油が抜かれ、作動油室の圧力が低下してチューブフラムが膨張し、膨張したチューブフラム内にレジスト液タンクから一定量(塗布処理1回分)のレジスト液が吸い込まれる。塗布処理時には、ベローズを往動位置から所定のストロークだけ短縮させると、ベローズ室からチューブフラムポンプの作動油室へ一定量の作動油が押し込まれ、作動油室の圧力が上昇してチューブフラムが収縮し、収縮したチューブフラムからレジスト液がレジストノズルへ向けて吐出ないし圧送されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−156255
【特許文献2】特開平10−305256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スピンレス方式のレジスト塗布装置においては、レジスト塗布膜の均一性、特に膜厚の均一性が切実に要求されている。この点、上記のようなベローズポンプあるいはベローズ駆動型チューブフラムポンプからなる従来のレジストポンプは、ベローズの伸縮運動に相当の時間遅れを伴うため、吸入・吐出動作の立ち上がり性能がよくない。このため、塗布処理の開始時にレジストノズルより被処理基板上に供給されるレジスト液の吐出圧力ないし吐出流量の立ち上がりが遅く、塗布開始位置からレジスト塗布膜を一定の膜厚で形成するのが難しいという問題点を抱えている。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ノズルを用いて被処理基板上に処理液を供給する処理液吐出機能において、特に吐出圧力ないし吐出流量において、安定性・再現性を保証しつつ吐出開始時の立ち上がり性能を改善する基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の基板処理装置は、被処理基板に対して所定の処理液を吐出するノズルと、前記処理液を貯留する処理液貯留部と、吸入口が第1の配管を介して前記処理液貯留部に接続され、吐出口が第2の配管を介して前記ノズルに接続された容積可変のチューブフラムと、前記チューブフラムを収容する容積一定のハウジングとを有し、前記ハウジング内で前記チューブフラムの外側に形成される作動流体室に作動流体を出し入れして、前記貯留部より前記チューブフラム内に前記処理液を吸入し、前記チューブフラムから前記処理液を前記ノズルに向けて圧送するチューブフラムポンプと、前記チューブフラムポンプの作動流体室と連通して前記作動流体を封入するシリンダと、前記シリンダにシール部材を介して軸方向に擦動可能に嵌合されるプランジャとを有し、前記チューブフラムポンプの作動流体室に前記作動流体を押し込むために前記プランジャを往動させ、前記チューブフラムポンプの作動流体室から前記作動流体を抜くために前記プランジャを復動させるシリンジ部と、前記チューブフラムポンプの作動流体室と前記シリンジ部のシリンダとで構成される作動流体封入部に作動流体を補給するための作動流体補給部とを有する。
【0010】
上記の構成においては、シリンジ部のシリンダの容積がプランジャの位置にほぼ正確に比例するので、応答速度が高いポンプ性能を実現することができる。もっとも、シリンジ部においては、プランジャの擦動面を通じてシリンダから作動流体が不可避的に漏れる。しかし、チューブフラムポンプの作動流体室とシリンジ部のシリンダとで構成される作動流体封入部に作動流体補給部より作動流体を補充することによって作動流体封入部内の作動流体を一定容積に保持できるため、ポンプ性能の再現性も保証することができる。
【0011】
本発明の好適な一態様によれば、第1および第2の配管に第1および第2の弁がそれぞれ設けられる。これら第1および第2の弁はそれぞれ開閉弁からなり、 チューブフラムポンプが処理液貯留部より処理液を吸入するときは、前記第1の弁が開状態で第2の弁が閉状態となり、チューブフラムポンプがノズルに向けて処理液を圧送するときは、第1の弁が閉状態で第2の弁が開状態となる。
【0012】
また、好適な一態様によれば、作動流体補給部が、作動流体を貯留する作動流体貯留部と、この作動流体貯留部と作動流体封入部とを結ぶ第3の配管と、この第3の配管に設けられた第3の弁とを有する。好ましくは、第3の弁は開閉弁からなり、作動流体貯留部より作動流体封入部に作動流体を補給するときは第3の弁が開状態になる。第3の配管はシリンダにて作動流体封入部と接続する。
【0013】
さらに、作動流体補給部は、作動流体貯留部とこの作動流体封入部とを結ぶ第4の配管と、第4の配管に設けられた第4の弁とを有する。この第4の配管は、好ましくは、チューブフラムポンプの作動流体室にて作動流体封入部と接続する。また、好ましくは、第4の配管の一端が、作動流体封入部の頂部またはその付近に設けられた第1のベントに接続する。さらに、第4の配管が、作動流体貯留部内の作動流体の液面よりも高い位置で作動流体貯留部と接続する。第4の弁が開閉弁からなり、作動流体貯留部より作動流体封入部に作動流体を補給するときは第4の弁が開状態になる。
【0014】
また、好ましい一態様によれば、作動流体貯留部内の作動流体の液面を所定範囲内の高さ位置に保持するために、作動流体の液面を監視する液面監視部が設けられる。
【0015】
また、好ましい一態様によれば、作動流体封入部より気泡を抜くために、作動流体封入部の頂部またはその付近に第2のベントを設け、作動流体補給部より作動流体封入部に第3の配管を介して作動流体を供給しながら、シリンジ部においてプランジャをシリンダに対して所望のストロークだけ往動させ、第2のベントより作動流体を排出する。好ましくは、第1のベントが第2のベントを兼用し、作動流体封入部の第1のベントより排出される作動流体を第4の配管を介して作動流体貯留部に戻すようにしてよい。
【0016】
また、好ましい一態様として、チューブフラムポンプの作動流体室とシリンジ部のシリンダとが第5の配管を介して連通する構成も可能である。この場合、第5の配管の一端が、チューブフラムポンプの作動流体室の頂部またはその付近に設けられた第3のベントに接続されてよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基板処理装置によれば、上記のような構成および作用により、ノズルを用いて被処理基板上に処理液を供給する処理液吐出機能において、特に吐出圧力ないし吐出流量において、安定性・再現性を保証しつつ吐出開始時の立ち上がり性能を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明の基板処理装置を適用できる一構成例としての塗布現像処理システムを示す。この塗布現像処理システム10は、クリーンルーム内に設置され、たとえばLCD用のガラス基板を被処理基板とし、LCD製造プロセスにおいてフォトリソグラフィー工程の中の洗浄、レジスト塗布、プリベーク、現像およびポストベーク等の各処理を行うものである。露光処理は、このシステムに隣接して設置される外部の露光装置12で行われる。
【0019】
この塗布現像処理システム10は、中心部に横長のプロセスステーション(P/S)16を配置し、その長手方向(X方向)両端部にカセットステーション(C/S)14とインタフェースステーション(I/F)18とを配置している。
【0020】
カセットステーション(C/S)14は、システム10のカセット搬入出ポートであり、基板Gを多段に積み重ねるようにして複数枚収容可能なカセットCを水平な一方向(Y方向)に4個まで並べて載置可能なカセットステージ20と、このステージ20上のカセットCに対して基板Gの出し入れを行う搬送機構22とを備えている。搬送機構22は、基板Gを保持できる手段たとえば搬送アーム22aを有し、X,Y,Z,θの4軸で動作可能であり、隣接するプロセスステーション(P/S)16側と基板Gの受け渡しを行えるようになっている。
【0021】
プロセスステーション(P/S)16は、水平なシステム長手方向(X方向)に延在する平行かつ逆向きの一対のラインA,Bに各処理部をプロセスフローまたは工程の順に配置している。より詳細には、カセットステーション(C/S)14側からインタフェースステーション(I/F)18側へ向う上流部のプロセスラインAには、洗浄プロセス部24と、第1の熱的処理部26と、塗布プロセス部28と、第2の熱的処理部30とを横一列に配置している。ここで、洗浄プロセス部24は、1本の平流し搬送ラインを共有する平流し方式のエキシマUV照射ユニット(e−UV)41およびスクラバ洗浄ユニット(SCR)42を備えている。また、塗布プロセス部28は、レジスト塗布ユニット(CT)82および減圧乾燥ユニット(VD)84を備えている。
【0022】
一方、インタフェースステーション(I/F)18側からカセットステーション(C/S)14側へ向う下流部のプロセスラインBには、第2の熱的処理部30と、現像プロセス部32と、脱色プロセス部34と、第3の熱的処理部36とを横一列に配置している。ここで、現像プロセス部32と脱色プロセス部34は平流し型であり、共通の平流し搬送ラインで接続されている。
【0023】
両プロセスラインA,Bの間には補助搬送空間38が設けられており、基板Gを1枚単位で水平に載置可能なシャトル40が図示しない駆動機構によってライン方向(X方向)で双方向に移動できるようになっている。
【0024】
洗浄プロセス部24の下流側に隣接する第1の熱的処理部26は、プロセスラインAに沿って中心部に縦型の搬送機構46を設け、その前後両側に複数のユニットを多段に積層配置している。たとえば、図2に示すように、上流側の多段ユニット部(TB)44には、基板受け渡し用のパスユニット(PASSL)50、脱水ベーク用の加熱ユニット(DHP)52,54およびアドヒージョンユニット(AD)56が下から順に積み重ねられる。ここで、パスユニット(PASSL)50は、スクラバ洗浄ユニット(SCR)42側から基板Gを平流しで受け取るために用いられる。また、下流側の多段ユニット部(TB)48には、基板受け渡し用のパスユニット(PASSR)60、冷却ユニット(COL)62,64およびアドヒージョンユニット(AD)66が下から順に積み重ねられる。ここで、パスユニット(PASSR)60は、塗布プロセス部28側へ基板Gを平流しで送るためのものである。
【0025】
図2に示すように、縦型搬送機構46は、鉛直方向に延在するガイドレール68に沿って昇降移動可能な昇降搬送体70と、この昇降搬送体70上でθ方向に回転または旋回可能な旋回搬送体72と、この旋回搬送体72上で基板Gを支持しながら前後方向に進退または伸縮可能な搬送アームまたはピンセット74とを有している。昇降搬送体70を昇降駆動するための駆動部76が垂直ガイドレール68の基端側に設けられ、旋回搬送体72を旋回駆動するための駆動部78が昇降搬送体70に取り付けられ、搬送アーム74を進退駆動するための駆動部80が回転搬送体72に取り付けられている。各駆動部76,78,80はたとえば電気モータ等で構成されてよい。かかる構成の搬送機構46は、高速に昇降ないし旋回運動して両隣の多段ユニット部(TB)44,48の中の任意のユニットにアクセス可能であり、補助搬送空間38側のシャトル40とも基板Gを受け渡しできるようになっている。
【0026】
塗布プロセス部28の下流側に隣接する第2の熱的処理部30も、上記第1の熱的処理部26と同様の構成を有しており、両プロセスラインA,Bの間に縦型の搬送機構90を設け、プロセスラインA側(最後尾)に一方の多段ユニット部(TB)88を設け、プロセスラインB側(先頭)に他方の多段ユニット部(TB)92を設けている。また、現像プロセス部32の下流側に配置される第3の熱的処理部36も、上記第1の熱的処理部26や第2の熱的処理部30と同様の構成を有しており、プロセスラインBに沿って縦型の搬送機構100とその前後両側に一対の多段ユニット部(TB)98,102を設けている。
【0027】
インタフェースステーション(I/F)18は、隣接する露光装置12と基板Gのやりとりを行うための搬送装置104を有し、その周囲にバッファ・ステージ(BUF)106、エクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108および周辺装置110を配置している。バッファ・ステージ(BUF)106には定置型のバッファカセット(図示せず)が置かれる。エクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108は、冷却機能を備えた基板受け渡し用のステージであり、プロセスステーション(P/S)16側と基板Gをやりとりする際に用いられる。周辺装置110は、たとえばタイトラー(TITLER)と周辺露光装置(EE)とを上下に積み重ねた構成であってよい。搬送装置104は、基板Gを保持できる手段たとえば搬送アーム104aを有し、隣接する露光装置12や各ユニット(BUF)106、(EXT・COL)108、(TITLER/EE)110と基板Gの受け渡しを行えるようになっている。
【0028】
図3に、この塗布現像処理システムにおける1枚の基板Gに対する処理の手順を示す。先ず、カセットステーション(C/S)14において搬送機構22がステージ20上の所定のカセットCの中から基板Gを取り出し、プロセスステーション(P/S)16の洗浄プロセス部25の搬送ラインに搬入する(ステップS1)。
【0029】
洗浄プロセス部24内で基板Gは搬送ライン上をプロセスラインA方向に平流しで搬送され、途中のエキシマUV照射ユニット(e−UV)41およびスクラバ洗浄ユニット(SCR)42で紫外線洗浄処理やスクラビング洗浄処理等を順次施される(ステップS2,S3)。スクラバ洗浄ユニット(SCR)42内で洗浄処理の済んだ基板Gは、該搬送ライン上に載せられたまま第1の熱的処理部26の上流側オーブンタワー(TB)44内のパスユニット(PASSL)50に搬入される。
【0030】
第1の熱的処理部26において、基板Gは縦型搬送機構46により所定のシーケンスで所定のユニットを回される。たとえば、基板Gは、最初にパスユニット(PASSL)50から加熱ユニット(DHP)52,54の1つに移され、そこで脱水処理を受ける(ステップS4)。次に、基板Gは、冷却ユニット(COL)62,64の1つに移され、そこで一定の基板温度まで冷却される(ステップS5)。しかる後、基板Gはアドヒージョンユニット(AD)56,66の一つに移され、そこで疎水化処理を受ける(ステップS6)。この疎水化処理の終了後に、基板Gは冷却ユニット(COL)62,64の1つで一定の基板温度まで冷却される(ステップS7)。最後に、基板Gは下流側多段ユニット部(TB)48に属するパスユニット(PASSR)60に移される。
【0031】
このように、第1の熱的処理部26内では、基板Gが、搬送機構46を介して上流側の多段ユニット部(TB)44と下流側の多段ユニット部(TB)48との間で任意に行き来できるようになっている。なお、第2および第3の熱的処理部30,36でも同様の基板搬送動作を行えるようになっている。
【0032】
第1の熱的処理部26で上記のような一連の熱的または熱系の処理を受けた基板Gは、下流側多段ユニット部(TB)48内のパスユニット(PASSR)60から下流側隣の塗布プロセス部28のレジスト塗布ユニット(CT)82へ移される。
【0033】
レジスト塗布ユニット(CT)82において、基板Gは、後述するように長尺型のレジストノズルを用いるスピンレス法により基板上面(被処理面)にレジスト液を塗布される。次いで、基板Gは、下流側隣の減圧乾燥ユニット(VD)84で減圧による乾燥処理を受ける(ステップS8)。
【0034】
塗布プロセス部28で上記のようなレジスト塗布処理を受けた基板Gは、下流側隣に位置する第2の熱的処理部30の上流側多段ユニット部(TB)88に属するパスユニット(PASSL)に受け渡される。
【0035】
第2の熱的処理部30内で、基板Gは、搬送機構90により所定のシーケンスで所定のユニットを回される。たとえば、基板Gは、最初に該パスユニット(PASSL)から加熱ユニット(PREBAKE)の1つに移され、そこでレジスト塗布後のベーキングを受ける(ステップS9)。次に、基板Gは、冷却ユニット(COL)の1つに移され、そこで一定の基板温度まで冷却される(ステップS10)。しかる後、基板Gは下流側多段ユニット部(TB)92側のパスユニット(PASSR)を経由して、あるいは経由せずにインタフェースステーション(I/F)18側のエクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108へ受け渡される。
【0036】
インタフェースステーション(I/F)18において、基板Gは、エクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108から周辺装置110の周辺露光装置(EE)に搬入され、そこで基板Gの周辺部に付着するレジストを現像時に除去するための露光を受けた後に、隣の露光装置12へ送られる(ステップS11)。
【0037】
露光装置12では基板G上のレジストに所定の回路パターンが露光される。そして、パターン露光を終えた基板Gは、露光装置12からインタフェースステーション(I/F)18に戻されると(ステップS11)、先ず周辺装置110のタイトラー(TITLER)に搬入され、そこで基板上の所定の部位に所定の情報が記される(ステップS12)。しかる後、基板Gはエクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108に戻される。インタフェースステーション(I/F)18における基板Gの搬送および露光装置12との基板Gのやりとりは搬送装置104によって行われる。
【0038】
プロセスステーション(P/S)16では、第2の熱的処理部30において搬送機構90がエクステンション・クーリングステージ(EXT・COL)108より露光済の基板Gを受け取り、プロセスラインB側の多段ユニット部(TB)92内のパスユニット(PASSR)を介して現像プロセス部32へ受け渡す。
【0039】
現像プロセス部32では、該多段ユニット部(TB)92内のパスユニット(PASSR)から受け取った基板Gを平流しで現像ユニット(DEV)94に搬入する。現像ユニット(DEV)94において、基板Gは、プロセスラインBの下流に向って平流しの搬送ライン上を搬送される間に現像、リンス、乾燥の一連の現像処理を施される(ステップS13)。
【0040】
現像プロセス部32で現像処理を受けた基板Gは、平流しの搬送ラインに載せられたまま下流側隣の脱色プロセス部34へ搬入され、そこでi線照射ユニット(i−UV)96による脱色処理を受ける(ステップS14)。脱色処理の済んだ基板Gは、第3の熱的処理部36の上流側多段ユニット部(TB)98内のパスユニット(PASSL)に受け渡される。
【0041】
第3の熱的処理部36において、基板Gは、最初に該パスユニット(PASSL)から加熱ユニット(POBAKE)の1つに移され、そこでポストベーキングを受ける(ステップS15)。次に、基板Gは、下流側多段ユニット部(TB)102内のパスクーリング・ユニット(PASS・COL)に移され、そこで所定の基板温度に冷却される(ステップS16)。第3の熱的処理部36における基板Gの搬送は搬送機構100によって行われる。
【0042】
カセットステーション(C/S)14側では、搬送機構22が、第3の熱的処理部36のパスクーリング・ユニット(PASS・COL)から塗布現像処理の全工程を終えた基板Gを受け取り、受け取った基板Gをいずれか1つ(通常は元)のカセットCに収容する(ステップS1)。
【0043】
この塗布現像処理システム10においては、塗布プロセス部28のレジスト塗布ユニット(CT)82に本発明を適用することができる。以下、図4〜図17を参照して本発明をレジスト塗布ユニット(CT)82に適用した実施形態を説明する。
【0044】
図4に示すように、塗布プロセス部28は、支持台112の上にレジスト塗布ユニット(CT)82と減圧乾燥ユニット(VD)84とをX方向に(プロセスラインAに沿って)一列に配置している。X方向に延びる一対のガイドレール114,114が支持台112の両端部に平行に敷設され、両ガイドレール114,114に案内されて移動する一組または複数組の搬送アーム116,116により、レジスト塗布ユニット(CT)82から減圧乾燥ユニット(VD)84へ基板Gを転送できるようになっている。さらに、搬送アーム116,116により、隣接するオーブンタワー(TB)48のパスユニット(PASSR)から塗布処理前の基板Gをレジスト塗布ユニット(CT)82に搬入し、減圧乾燥ユニット(VD)84から隣接するオーブンタワー(TB)88のパスユニット(PASSL)へ塗布処理済みの基板Gを搬出するようになっている。
【0045】
レジスト塗布ユニット(CT)82は、基板Gを水平に載置して保持するためのステージ118と、このステージ118上に載置される基板Gの上面(被処理面)に長尺型のレジストノズル120を用いてスピンレス法でレジスト液を塗布するための塗布処理部122と、塗布処理を行わない間にレジストノズル120のレジスト液吐出機能を回復して次に備えるためのノズルリフレッシュ部124等を有する。
【0046】
減圧乾燥ユニット(VD)84は、上面が開口しているトレーまたは底浅容器型の下部チャンバ126と、この下部チャンバ126の上面に気密に密着または嵌合可能に構成された蓋状の上部チャンバ(図示せず)とを有している。下部チャンバ126はほぼ四角形で、中心部には基板Gを水平に載置して支持するためのステージ128が配設され、底面の四隅には排気口130が設けられている。各排気口130は排気管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)に通じている。下部チャンバ126に上部チャンバを被せた状態で、両チャンバ内の密閉された処理空間を該真空ポンプにより所定の真空度まで減圧できるようになっている。
【0047】
図5に、レジスト塗布ユニット(CT)82における塗布処理部122の構成を示す。塗布処理部122は、レジストノズル120を含むレジスト液供給機構132と、塗布処理時にレジストノズル120をステージ118の上方でX方向に水平移動させるノズル移動機構134とを有する。レジスト液供給機構132において、レジストノズル120は、ステージ118上の基板Gを一端から他端までカバーできる長さでY方向に延びる長尺型のノズルであり、後述するレジストポンプ150(図6)から引かれている吐出管136に接続されている。ノズル移動機構134は、レジストノズル120を水平に支持する逆さコ字状または門形の支持体138と、この支持体138をX方向で双方向に直進移動させる直進駆動部140とを有する。この直進駆動部140は、たとえばガイド付きのリニアモータ機構またはボールねじ機構で構成されてよい。また、レジストノズル120の高さ位置を変更または調節するためのガイド付きの昇降機構135が、たとえば支持体138とレジストノズル120とを接続するジョイント部142に設けられている。昇降機構135がレジストノズル120の高さ位置を調節することで、レジストノズル120の下端または吐出口120aとステージ118上の基板Gの上面(被処理面)との間の距離間隔つまりギャップの大きさを任意に設定または調整することができる。
【0048】
この実施形態では、レジストノズル120の両端部に一対のジョイント部142L,142Rを接続し、レジストノズル120の高さ調整を左右両端で独立的に制御できるようになっている。ここで、塗布処理時の進行方向を基準として、レジストノズル120の左側端部に接続されるジョイント部142Lを左ジョイント部とし、反対側(レジストノズル120の右側端部)に接続されるジョイント部142Rを右ジョイント部とする。昇降機構135は、左ジョイント部142L側の左Z軸機構135Lと、右ジョイント部142R側の右Z軸機構135Rとで構成される。左右の両Z軸機構135L,135Rはそれぞれ独立した案内部と駆動部とを有している。
【0049】
レジストノズル120は、たとえばステンレス鋼等の対錆性と加工性に優れた金属からなり、下端の吐出口120aに向って先細りのテーパ面を有している。吐出口120aは、ノズル長手方向に延びるスリット型であってよく、あるいは微細径の吐出孔をノズル長手方向に一定ピッチで配列した多孔型であってもよい。
【0050】
図6に、レジスト液供給機構132の全体構成を示す。このレジスト液供給機構132は、レジスト液Rを貯留するボトル146より吸入管148を介して少なくとも塗布処理1回分(基板1枚分)のレジスト液Rをレジストポンプ150に予め充填しておき、塗布処理時にレジストポンプ150よりレジスト液を吐出管136を介してレジストノズル120に所定の圧力で圧送し、レジストノズル120から基板G上にレジスト液Rを所定の流量で吐出するようになっている。
【0051】
ボトル146は密閉されており、ボトル内の液面に向けてガス管144より圧送ガスたとえばN2ガスが一定の圧力で供給されるようになっている。ガス管144には、たとえばエアオペレートバルブからなる開閉弁152が設けられている。
【0052】
吸入管148の途中には、フィルタ154、脱気モジュール156および開閉弁158が設けられている。フィルタ154はボトル146から送られてくるレジスト液R中の異物(ごみ類)を除去し、脱気モジュール156はレジスト液中の気泡を除去する。開閉弁158は、たとえばエアオペレートバルブからなり、コントローラ160の制御の下で吸入管148におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)するようになっている。
【0053】
吐出管136の途中には、開閉弁162が設けられている。この開閉弁162は、たとえばエアオペレートバルブからなり、コントローラ160の制御の下で吐出管136におけるレジスト液Rの流れをオン(全開導通)またはオフ(遮断)するようになっている。
【0054】
吐出管136には、たとえばレジストノズル120付近に圧力センサ163が取り付けられている。この圧力センサ163は、ゲージ圧力計からなり、大気圧を基準としてセンサ取付位置における吐出管136内のレジスト液Rの圧力を測り、測定圧力をゲージ圧力で現す電気信号(圧力検出信号)を出力する。この圧力検出信号はコントローラ160に与えられる。
【0055】
コントローラ160は、マイクロコンピュータからなり、たとえば光ディスク等の記録媒体に格納されているレジスト液供給プログラムおよびその他のプログラムを主メモリにロードして実行し、プログラムされたシーケンスおよび各種設定値にしたがってレジスト塗布ユニット(CT)82内の各部、特にレジスト液供給機構132の各開閉弁152,158,162、レジストポンプ150やノズル移動機構134、昇降機構135等を制御する。
【0056】
図7に、この実施形態におけるレジストポンプ150の構成を示す。このレジストポンプ150は、チューブフラムポンプ164をシリンジポンプまたはシリンジ部166によって駆動する方式の複合型ポンプである。
【0057】
チューブフラムポンプ164は、レジスト液Rの吸入・吐出を行うポンプ室を容積可変の円筒状チューブフラム168で構成し、このチューブフラム168を容積一定の円筒状ハウジング170の中に同軸に収容し(図8)、ハウジング170内でチューブフラム168の外側に形成される作動油室172に外部から作動油Sを出し入れすることにより、チューブフラム168を収縮・膨張させて、レジスト液吸入・吐出動作を行うように構成されている。チューブフラム168は弾性体たとえばPFA(四ふっか−パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂)からなり、ハウジング170は耐久性や耐薬品性に優れた剛体たとえばステンレスまたはPTFE(四ふっかエチレン樹脂)からなる。チューブフラム168の下端の開口(吸入口)は吸入管148の終端に接続され、上端の開口(吐出口)は吐出管136の始端に接続されている。作動油室172には、その外周面の一箇所に作動油出入り用のベント174が形成されるとともに、その上部たとえば上端面の一箇所に作動油排出用のベント176が形成されている。
【0058】
シリンジ部166は、円筒状のシリンダ178と、このシリンダ178にシール部材180を介して軸方向に擦動可能に嵌合され、かつポンプ駆動部182に結合されている円柱状のプランジャ184とを有している。シール部材180には、擦動運動に対して漏れの少ないシリンダ用シールたとえばUパッキンが用いられる。ポンプ駆動部182は、コントローラ160(図6)の制御の下で回転動作して回転トルクを発生する電気モータたとえばサーボモータまたはステップモータ186と、この電気モータ86の回転駆動力をプランジャ184の直進運動に変換する伝動装置188とを有する。この伝動装置188は、たとえばボールネジ機構や直進ガイド部等で構成されてよい。
【0059】
シリンジ部166のシリンダ178とチューブフラムポンプ164の作動油室172とは、配管190を介して相互に連通しており、協働して一定量の作動油Sを隙間なく充填または封入している作動油封入部を構成している。
【0060】
より詳細には、シリンダ178の上部に作動油出入り用のベント192が形成されており、このベント192と作動油室172のベント174とが配管190で接続されている。ポンプ駆動部182を働かせて、シリンジ部166のプランジャ184を往動または前進移動させると、その往動ストロークに対応する量の作動油がシリンダ178から配管190を通ってチューブフラムポンプ164の作動油室172へ移る(押し込まれる)。逆に、シリンジ部166のプランジャ184を復動または後退移動させると、その復動ストロークに対応する量の作動油が作動油室172から配管190を通ってシリンダ178へ移る(抜かれる)ようになっている。
【0061】
シリンダ178の容積はプランジャ184の位置にほぼ正確に比例するため、ポンプ駆動部182においてプランジャ184の位置や移動速度をフィードバック制御方式等で設定通りに制御できる限り、シリンダ178の作動油容積を設定通りに可変制御し、ひいてはチューブフラムポンプ164におけるレジストポンプ室の容積や吸引・吐出動作も設定通りに制御することができる。これにより、従来のベローズ駆動型チューブフラムポンプに比して応答速度および安定性の高いポンプ性能を実現することができる。
【0062】
しかしながら、シリンジ部166においては、プランジャ184が往復運動すると、プランジャ184とシール部材180との界面を伝わってごくわずかではあるがシリンダ178から作動油が漏れる。塗布処理の回数を重ねると、つまりプランジャ184の往復運動の回数を重ねると、ポンプ性能(特に吐出圧力)の経時劣化という形で作動油漏れの影響が出てくる。また、作動油の漏れはエア混入の原因になりやすい。シリンダ178ないし作動油封入部(172,178)内にエアまたは気泡が混入していると、ポンプ吐出圧力の立ち上がりが遅くなる。
【0063】
この実施形態では、上記のようなシリンジ駆動型チューブフラムポンプに係る問題を解消するために、作動油Sを貯留する作動油タンク194を備え、この作動油タンク194より作動油封入部(172,178)に作動油Sを随時補給できる構成としており、これによって作動油の漏れやエアの混入があってもポンプを分解する程のメンテナンス修理が一切不要となっている。
【0064】
より詳細には、作動油タンク194の下部に作動油送出口196が形成されるとともに、シリンジ部166のシリンダ178の下部に作動油導入口198が形成され、該作動油送出口196と該作動油導入口198とが配管200を介して接続可能となっており、配管200には開閉弁202が設けられている。さらに、作動油タンク194の上部に作動油回収口204が形成され、この作動油回収口204とチューブフラムポンプ164の作動油室172の上記作動油排出用のベント176とが配管206を介して接続可能となっており、配管206には開閉弁208が設けられている。開閉弁202,208は、たとえばエアオペレート式のロータリバルブまたはボールバルブからなり、コントローラ160(図6)によって開閉状態を制御される。
【0065】
また、作動油タンク194には、タンク内の作動油Sの液面の高さを一定範囲内に管理するために、たとえば静電容量センサからなる液面検出器210A,210Bが取り付けられている。各液面検出器210A,210Bの出力信号(液面検出信号)はコントローラ160(図6)に与えられる。
【0066】
次に、図7〜図15につき、この実施形態におけるレジストポンプ150の作用を説明する。
【0067】
先ず、レジスト塗布処理に際してのレジストポンプ150の作用を説明する。基板Gが塗布ユニット(CT)82内に搬入されステージ118上に載置されると(図5)、ノズル移動機構134がレジストノズル120を塗布開始位置に付け、レジスト液供給機構132がレジスト吐出動作を開始する。レジスト液供給機構132では、レジスト吐出動作を開始する直前に、レジストポンプ150の各部は図7に示すような状態になっている。すなわち、プランジャ184は所定の原位置または基準位置で待機し、チューブフラム168の内側の室(レジストポンプ室)は所定量のレジスト液Rを充填している。吸入用の開閉弁158および吐出用の開閉弁162のいずれも閉状態になっている。また、作動油補充用の開閉弁202,208も閉状態に保持されている。
【0068】
ステージ118上の基板Gに対するレジスト吐出動作を実行するために、コントローラ160の制御の下で、吐出用の開閉弁162が閉状態から開状態に切り替えられると同時に、ポンプ駆動部182が作動してシリンジ部166のプランジャ184を上記基準位置から一定ストロークだけ往動または前進移動させる。
【0069】
プランジャ184の往動が開始すると、シリンジ部166のシリンダ178から配管190を介してチューブフラムポンプ164の作動油室172へ作動油Sが押し込まれることにより、作動油室172側からチューブフラム168に加わる圧力が上昇してチューブフラム168が径方向で収縮し、その吐出口からレジスト液Rを吐出管136へ吐き出す。こうして、チューブフラムポンプ164からレジストノズル120へのレジスト液Rの圧送が開始され、レジストノズル120から基板G上へのレジスト液Rの吐出が開始される。吐出管136にフィルタやサックバックバルブ等が設けられておらず、しかも上記のようにシリンジ駆動式であるため、図10に示すようにポンプ圧力は一定かつ高速の立ち上がり特性で所定の吐出圧力Psまでスムースに立ち上がり、吐出圧力に比例してレジスト液Rの吐出流量も安定に立ち上がる。
【0070】
一方、コントローラ160の制御の下で、上記のようなレジスト液供給機構132における吐出動作の開始と相俟って、ノズル移動機構134においてレジストノズル120の移動または走査が開始される。このノズル走査は基板Gと平行な方向(X)方向に一定速度で行われる。こうして、一定速度で走査移動するレジストノズル120からレジスト液Rが一定の流量で帯状に吐出されることにより、基板G上の塗布開始位置から塗布終了位置まであたかもじゅうたんを敷くように一定膜厚のレジスト塗布膜RMが形成される(図9)。
【0071】
そして、レジストノズル120が基板G上の塗布終了位置に着くのとほぼ同時に、プランジャ184も所定の往動位置に着く。この時点でレジストポンプ150のポンプ室またはチューブフラム168は設定量(基板1枚分)のレジスト液Rを吐き出した状態になっている。ここで、コントローラ160は、プランジャ184の往動運動を止め、吐出用の開閉弁162を閉める。
【0072】
しかる後、次の基板Gに対する塗布処理に備えて、ボトル146より塗布処理1回分(基板1枚分)のレジスト液Rをレジストポンプ150へ移すためのポンプ吸い込み動作がコントローラ160の制御の下で行われる。このポンプ吸い込み動作は、吸入管148側の開閉弁158を開けて、シリンジ部166のプランジャ184を上記往動位置から一定ストロークだけ復動または後退移動させることによって行われる。
【0073】
プランジャ184が復動すると、チューブフラムポンプ164の作動油室172から配管190を介してシリンジ部166のシリンダ178へ作動油Sが吸い取られることにより、チューブフラムポンプ164において作動油室172側からチューブフラム168に加わる圧力が下がってチューブフラム168が膨張する方向に変形し、その吸入口よりチューブ(ポンプ室)内にレジストRを取り込む(図11)。この場合、タクトタイムを短くするため、シリンジ駆動式の高速性を利用して吸い込み動作を短時間で安定に行うことができる。その際、レジストボトル146からレジスト液RがN2加圧で圧送されてくることによって、レジストポンプ150の高速吸い込みがアシストされる。
【0074】
もっとも、プランジャ184が所定の復動位置に着いて吸い込み動作を終了させ、開閉弁158が閉められると、チューブフラムポンプ164のチューブフラム168内にはN2加圧のレジスト液Rが閉じ込められており、チューブフラム168内の圧力がポンプ内の基準待機圧力Poを超える傾向がある。ここで、基準待機圧力Poとは、塗布処理またはレジスト吐出動作が開始される前のスタンバイ中のポンプ内圧の基準値であり、吐出管136の開閉弁162を開けた時にレジストノズル120の吐出口からレジスト液Rが噴き出すこともなければ、レジストノズル120の吐出口の奥にレジスト液Rが引っ込んでレジスト液R中に気泡が混入することもないようなポンプ内圧であり、通常は大気圧付近に設定される。
【0075】
そこで、わずかなストロークではあるが、所定の復動位置に着いたプランジャ184を所定位置つまり基準位置まで更に後退移動させ、これによりチューブフラムポンプ164において作動油室172およびチューブフラム168内の圧力を基準待機圧力Poまで下げる。
【0076】
この実施形態においては、このポンプ残圧調整の中で作動油タンク194より作動油封入部(172,178)へ作動油Sを必要な量だけ補充することができるようになっている。すなわち、図12に示すように、チューブフラムポンプ164において吸い込み動作を終了し、プランジャ184を基準位置まで後退させる際あるいは後退後に、配管200,206の開閉弁202,208を同時に開ける。通常、作動油封入部(172,178)内の作動油Sはシリンジ部166の漏れによって経時的に減少するため、開閉弁202,208を開けると、作動油タンク194より配管200を通って作動油封入部(172,178)へ作動油Sが流入する。ここで、作動油タンク194、配管200、シリンダ178、配管190、作動油室172および配管206によって作動油Sの入ったU字管が形成されることにより、一方の極の作動油タンク194内の液面と他方の極の配管206内の液面とが同じ高さになったところで、圧力が均衡し、作動油タンク194から作動油封入部(172,178)への作動油Sの流入または補充が止まる。この圧力均衡ないし調整に要する時管は短く、開閉弁202,208を開けてからタイマ機能によって一定時間経過後に閉状態に戻してよい。なお、配管206は、その管内の作動油Sの容積が作動油タンク194の容積に比して無視できるほど細い管であってよい。
【0077】
上記のようにして作動油タンク194から作動油封入部(172,178)に作動油Sが補充されることによってチューブフラムポンプ164側の圧力も影響を受ける。すなわち、チューブフラム168を介して作動油室172の作動油Sの圧力とチューブフラム168内のレジスト液Rの圧力とが均衡した状態になる。したがって、この均衡状態においてチューブフラム168内の圧力、特にその吐出口付近のポンプ内圧が基準待機圧力Po付近に調整されればよい。この場合、上記作動油U字管内で平衡する液面の高さが重要なパラメータになる。このU字管内の液面が高いほどポンプ内圧が高くなり、U字管内の液面が低いほどポンプ内圧が低くなる。
【0078】
かかる観点から、この実施形態では、作動油補充時にチューブフラムポンプ164内の圧力が基準待機圧力Po付近に調整されるように、作動油タンク194内の作動油Sの液面を所定の範囲HA〜HB内に保つための液面検出器210A,210Bが作動油タンク194に取り付けられている。作動油タンク194内で作動油Sの液面高さが上限値HAを超えていると、液面検出器210Aからの出力信号に基づいてコントローラ160は警報を出力する。また、作動油タンク194内で作動油Sの液面高さが下限値HBを割ったときも、液面検出器210Bからの出力信号に基づいてコントローラ160は警報を出力することができる。なお、図示省略しているが、作動油タンク194には、余分な作動油Sを抜くための排油口も設けられてよい。
【0079】
理想的には、図12中に点線Kで示すように、レジストノズル120が塗布走査位置にあるときのノズル吐出口の高さ位置に作動油タンク194内の作動油Sの液面高さがほぼ一致するのが望ましい。この場合、開閉弁162を開けたときに、チューブフラム168を介して作動油系統とレジスト液系統とを一体化したポンプ全体のU字管において、このU字管の一方の極に位置する作動油系統側の液面(タンク194および配管206内の液面)と他方の極に位置するレジスト液系統側の液面(ノズル吐出口の液面)とが同じ高さ位置になっているので元から平衡状態にあり、ポンプ内の各部で液(作動油S、レジスト液R)の移動が生じない。したがって、レジストノズル120においてレジスト液のぼた落ちや気泡の混入が生ずることはない。
【0080】
上記のような作動油タンク194から作動油封入部(172,178)への作動油Sの補充は、レジストポンプ150におけるポンプ動作の1サイクル毎に行われてもよく、複数サイクル毎あるいは定期的に行われてもよい。
【0081】
さらに、この実施形態では、作動油封入部(172,178)内に気泡が混入しても、簡単で効率よく除去することができる。すなわち、プランジャ184を基準位置またはその付近まで引いてから、図13に示すように、両配管200,206の開閉弁202,208を開けてプランジャ184を往動または前進移動させる。この時、レジスト液系統の開閉弁148,162は閉じておく。プランジャ184の前進移動によりシリンダ178から作動油室172へ作動油Sが送られる。しかし、この場合は、作動油室172のベント176が開放状態になっているので、このベント176から作動油Sは室外へ抜け出ることができ、配管206を通って作動油タンク194へ戻される。一方、作動油タンク194から作動油Sが配管206を通ってシリンダ178内に送り込まれる。
【0082】
このように、作動油封入部(172,178)内、特にその上部ないし頂部を作動油Sが流通することにより、作動油封入部(172,178)内に混入していた気泡は作動油Sの流れに乗って作動油室172のベント176から排出される。なお、作動油封入部(172,178)内の気泡が増えてくると、図10の仮想線(一点鎖線)で示すようにポンプ圧力の立ち上がり速度が低下してくるので、コントローラ160は圧力センサ163からの圧力検出信号に基づいてその異常事態を判定することができる。
【0083】
図14および図15に、この実施形態において作動油封入部(172,178)から気泡を一層効率よく排除するための好適な構成例を示す。図14の構成によれば、作動油室172のベント174,176をケーシング170の外周面上端付近にて互いに180°真向かいの位置に設けることにより、作動油室172内の天井付近を隈なく作動油Sが流れるようにして、天井付近に集まる気泡を殆ど残らずベント176から追い出すことができる。
【0084】
また、図15の構成は、ケーシング170の上端面を斜めに形成し、斜面下端部付近の外周面にベント174を設け、斜面上端部付近の外周面にベント176を設ける。かかる構成によれば、図14の構成と同様に作動油室172の天井に沿った作動油Sの流れを形成できるのに加えて、作動油室172内の天井付近に集まる気泡をベント176側に自然に寄せることができ、一層効率的に気泡を追い出すことができる。
【0085】
以上、本発明の好適な一実施形態を説明したが、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、図16に示すように、チューブフラムポンプ164内の圧力を検出する圧力センサ210を設け、上記のようなレジスト液吸い込み動作の直後にポンプ内の残圧を調整する時や作動油タンク194から作動油封入部(172,178)に作動油Sを補充する際には、圧力センサ210によって計測されるポンプ内圧が基準待機圧力Poに一致するようにコントローラ160を通じてプランジャ184の移動または位置を可変制御するようにしてもよい。この場合、作動油タンク194内の作動油Sの液面の高さは所定の下限以上に保たれておればよく、特に上限を設ける必要はない。
【0086】
また、図17に示すように、作動油封入部(172,178)に対して配管200をシリンダ178にではなくポンプ本体170の作動油室172に設けたベント212に接続する構成も可能である。
【0087】
また、図示省略するが、作動油封入部(172,178)から気泡を抜くためのベントをシリンダ178側に設ける構成や、作動油補充に使われるベント176とは別個に設ける構成も可能である。エア抜き専用のベントを設ける場合は、そのベントから排出される作動油を作動油タンク194に戻さずに別のタンクあるいはドレインへ送ることも可能である。
【0088】
上記実施形態におけるシリンジ駆動式チューブフラムポンプの構成も一例であり、同様の機能を奏する種々の変形が可能である。たとえば、作動油を他の作動流体または圧力媒体に置換することも可能であり、チューブフラムを円筒体以外の形状に構成することも可能である。吸入用の開閉弁158をチェック弁で置き換えることも可能である。また、作動油タンク194から作動油封入部(172,178)に作動油Sを圧送することも可能であり、その場合は開閉弁202をチェック弁で置き換えることも可能である。上記実施形態では基板またはステージを固定してノズルを移動させる走査方式であったが、ノズルを固定して基板またはステージを移動させる走査方式等も可能である。
【0089】
上記した実施形態はLCD製造の塗布現像処理システムにおけるレジスト塗布装置に係るものであったが、本発明は被処理基板上にノズルを用いて処理液を供給する任意の処理装置やアプリケーションに適用可能である。したがって、本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、ガラス基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の適用可能な塗布現像処理システムの構成を示す平面図である。
【図2】実施形態の塗布現像処理システムにおける熱的処理部の構成を示す側面図である。
【図3】実施形態の塗布現像処理システムにおける処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施形態の塗布現像処理システムにおける塗布プロセス部の全体構成を示す平面図である。
【図5】実施形態のレジスト塗布ユニットにおける塗布処理部の構成を示す斜視図である。
【図6】実施形態のレジスト塗布ユニットにおけるレジスト液供給機構の構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態のレジスト液供給機構におけるポンプ回りの構成(第1の状態)を示すブロック図である。
【図8】実施形態のチューブフラムポンプにおける要部の構成を模式的に示す斜視図である。
【図9】実施形態のレジスト液供給機構におけるポンプ回りの構成(第2の状態)を示すブロック図である。
【図10】実施形態のレジスト液供給機構におけるレジスト吐出圧力の立ち上がり特性を示す波形図である。
【図11】実施形態のレジスト液供給機構におけるレジストポンプ回りの構成(第3の状態)を示すブロック図である。
【図12】実施形態のレジスト液供給機構におけるレジストポンプ回りの構成(第4の状態)を示すブロック図である。
【図13】実施形態のレジスト液供給機構におけるレジストポンプ回りの構成(第5の状態)を示すブロック図である。
【図14】実施形態において作動油封入部から気泡を一層効率よく排除するための好適な一構成例を示す部分拡大斜視図である。
【図15】実施形態において作動油封入部から気泡を一層効率よく排除するための好適な別の構成例を示す部分断面図である。
【図16】実施形態の一変形例によるレジストポンプ回りの構成を示すブロック図である。
【図17】実施形態の一変形例によるレジストポンプ回りの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0091】
10 プロセスステーション
28 塗布プロセス部
82 レジスト塗布ユニット(CT)
118 ステージ
120 レジストノズル
122 塗布処理部
132 レジスト液供給機構
134 ノズル移動機構
136 吐出管
146 タンク
148 吸入管
150 レジストポンプ
160 コントローラ
162 吐出用の開閉弁
163,210 圧力センサ
164 チューブフラムポンプ
166 シリンジ部
168 チューブフラム
170 ハウジング
172 圧力室
174,176,192,196,212 ベント
190,200,206 配管
194 作動油タンク
202,208 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に対して所定の処理液を吐出するノズルと、
前記処理液を貯留する処理液貯留部と、
吸入口が第1の配管を介して前記処理液貯留部に接続され、吐出口が第2の配管を介して前記ノズルに接続された容積可変のチューブフラムと、前記チューブフラムを収容する容積一定のハウジングとを有し、前記ハウジング内で前記チューブフラムの外側に形成される作動流体室に作動流体を出し入れして、前記貯留部より前記チューブフラム内に前記処理液を吸入し、前記チューブフラムから前記処理液を前記ノズルに向けて圧送するチューブフラムポンプと、
前記チューブフラムポンプの作動流体室と連通して前記作動流体を封入するシリンダと、前記シリンダにシール部材を介して軸方向に擦動可能に嵌合されるプランジャとを有し、前記チューブフラムポンプの作動流体室に前記作動流体を押し込むために前記プランジャを往動させ、前記チューブフラムポンプの作動流体室から前記作動流体を抜くために前記プランジャを復動させるシリンジ部と、
前記チューブフラムポンプの作動流体室と前記シリンジ部のシリンダとで構成される作動流体封入部に作動流体を補給するための作動流体補給部と
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の配管に設けられる第1の弁と、前記第2の配管に設けられる第2の弁とを有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1および第2の弁がそれぞれ開閉弁からなり、
前記チューブフラムポンプが前記貯留部より前記処理液を吸入するときは、前記第1の弁が開状態で前記第2の弁が閉状態となり、
前記チューブフラムポンプが前記ノズルに向けて前記処理液を圧送するときは、前記第1の弁が閉状態で前記第2の弁が開状態となる請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記作動流体補給部が、
作動流体を貯留する作動流体貯留部と、
前記作動流体貯留部と前記作動流体封入部とを結ぶ第3の配管と、
前記第3の配管に設けられた第3の弁と
を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第3の弁が開閉弁からなり、前記作動流体貯留部より前記作動流体封入部に作動流体を補給するときは前記第3の弁が開状態になる請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第3の配管が、前記シリンダにて前記作動流体封入部と接続する請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記作動流体補給部が、
前記作動流体貯留部と前記作動流体封入部とを結ぶ第4の配管と、
前記第4の配管に設けられた第4の弁と
を有する請求項4〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第4の配管が、前記チューブフラムポンプの作動流体室にて前記作動流体封入部と接続する請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第4の配管の一端が、前記作動流体封入部の頂部またはその付近に設けられた第1のベントに接続する請求項7または請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第4の配管が、前記作動流体貯留部内の作動流体の液面よりも高い位置で前記作動流体貯留部と接続する請求項7〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第4の弁が開閉弁からなり、前記作動流体貯留部より前記作動流体封入部に作動流体を補給するときは前記第4の弁が開状態になる請求項7〜10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記作動流体貯留部内の作動流体の液面を所定範囲内の高さ位置に保持するために、前記作動流体の液面を監視する液面監視部を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記作動流体封入部より気泡を抜くために、前記作動流体封入部の頂部またはその付近に第2のベントを設け、前記作動流体補給部より前記作動流体封入部に前記第3の配管を介して作動流体を供給しながら、前記シリンジ部において前記プランジャを前記シリンダに対して所望のストロークだけ往動させ、前記第2のベントより作動流体を排出する請求項7〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1のベントが前記第2のベントを兼用し、前記作動流体封入部の第1のベントより排出される作動流体を前記第4の配管を介して前記作動流体貯留部に戻す請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記チューブフラムポンプの作動流体室と前記シリンジ部のシリンダとが第5の配管を介して連通する請求項7〜14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第5の配管の一端が、前記チューブフラムポンプの作動流体室の頂部またはその付近に設けられた第3のベントに接続する請求項15に記載の基板処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−35713(P2007−35713A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212976(P2005−212976)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】