説明

塗工装置、塗工方法

【課題】塗工品質を向上させることができる塗工装置、塗工方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、バックアップローラ14とバックアップローラ14により搬送される金属箔30に対してペースト材料を吐出するリップ22を備える塗工ダイ10とリップ22に対しバックアップローラ14の回転方向の上流側の位置で減圧を行う減圧チャンバ18とを有する塗工装置1において、減圧チャンバ18は、チャンバ室32とチャンバ室32にエアを取り込む取り込み口46とチャンバ室32に取り込んだエアを吸引する減圧穴40とを備え、チャンバ室32の内部にて取り込み口46から減圧穴40に向かう渦巻き状の気流を発生させること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工ダイにより箔の表面にペースト材料を塗工する塗工装置、塗工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウム電池の電極の生産においては、塗工ダイから活物質を主成分としたペースト材料(塗工液)を吐出して、バックアップローラにより搬送される薄い金属箔に対し前記のペースト材料を薄く塗工して膜厚が小さい塗工膜を形成することが行われている。
【0003】
そして、塗工膜を形成するペースト材料の粘度が高い場合には、塗工ダイのリップ(ペーストの吐出口)に対して金属箔の搬送方向の上流側の位置にて減圧チャンバにより吸引して、塗工ダイのリップ部付近の減圧を行っている。これにより、金属箔の搬送に沿って塗工ダイのリップ付近に進入するエアが塗工ダイから吐出されるペースト材料内へ巻き込まれることを防止している。
【0004】
このように塗工膜を形成する装置として、特許文献1には、ダイヘッドに対して支持体の搬送方向(バックアップロールの回転方向)の上流側の位置に減圧チャンバを設けた塗工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−181350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたような塗工装置においては、減圧チャンバを大型にすればチャンバ室の内部の乱流を緩和させることができ、塗工幅の全面を均一な減圧度にすることができるが、エア効率が低下するとともに、塗工装置が大型化してしまう。一方、減圧チャンバを小型にするとチャンバ室の内部に乱流が発生して、塗工幅の全面を均一な減圧度にすることができず、塗工品質が低下してしまう。
【0007】
また、金属箔が搬送される方向に連続したストライプ状に塗工を行う場合、金属箔上の塗工幅を制御して塗工部と未塗工部の寸法を高精度に維持する必要がある。そこで、塗工ダイを移動させて塗工ダイと金属箔との間のギャップ(隙間)を調整することにより、塗工幅をフィードバック制御することが行われている。
【0008】
そして、塗工ダイのリップ付近の減圧の効率を上げるために、減圧チャンバは出来るだけ塗工ダイのリップの近くに配置することが望ましい。そこで、減圧チャンバを塗工ダイに直接的に取り付けることが行われている。しかし、前記のように塗工幅をフィードバック制御するために塗工ダイを移動させて塗工ダイと金属箔との間のギャップを変化させると、同時に減圧チャンバとバックアップローラとの隙間の大きさも変化してしまう。そのため、塗工ダイと金属箔との間のギャップを調整する際に、減圧チャンバによる減圧の度合いが変化してしまう。
【0009】
また、塗工の開始時や塗工の終了時や塗工装置の調整時には、塗工ダイのリップから垂れ出したペースト材料が減圧チャンバ内に吸い込まれてしまうことがある。すると、吸い込まれたペースト材料の量によっては、ブロアに接続する減圧穴にペースト材料が詰まって十分な減圧を行うことができないおそれがある。また、減圧チャンバ内に吸い込まれたペースト材料を減圧チャンバ内から取り除くためには、減圧チャンバ全体を取り外してチャンバ室内を清掃する必要があり、清掃作業の工数を要してしまって清掃性が良くない。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、塗工品質を向上させることができる塗工装置、塗工方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、バックアップローラと前記バックアップローラにより搬送される箔に対して塗工材料を吐出する吐出口を備えるダイと前記吐出口に対し前記バックアップローラの回転方向の上流側の位置で減圧を行う減圧手段とを有する塗工装置において、前記減圧手段は、チャンバ室と前記チャンバ室に気体を取り込む取り込み口と前記チャンバ室に取り込んだ前記気体を吸引する吸引穴とを備え、前記チャンバ室の内部にて前記取り込み口から前記吸引穴に向かう渦巻き状の気流を発生させること、を特徴とする。
【0012】
この態様によれば、チャンバ室の内部にて渦巻き状の気流を発生させることにより、取り込み口からチャンバ室の内部に取り込んだ気体は、チャンバ室の内部で吸引穴に向かって一定方向に流れる。そのため、チャンバ室の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、塗工幅全域を均一に減圧することができる。したがって、箔に対し高精度に塗工を行うことができ、塗工品質を向上させることができる。また、チャンバ室を大きくしなくてもチャンバ室の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、チャンバ室を小さくすることにより塗工装置の小型化を図ることができる。
【0013】
上記態様においては、前記チャンバ室の外形部を略円形状に形成し、円筒部を備える整流部材を前記チャンバ室の内部にて前記外形部と間隔を空けて設け、前記外形部と前記円筒部との間にて前記気体の流路を形成すること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、略円形状のチャンバ室の外形部と整流部材の円筒部との間に形成されるおおよそ円周形状の流路に沿って気体が流れるので、確実に渦巻き状の気流を発生させることができる。そのため、確実にチャンバ室の内部での気流の乱れを抑制することが出来る。
【0015】
上記態様においては、前記吸引穴は前記円筒部に形成されていること、が好ましい。
【0016】
この態様によれば、チャンバ室の外形部と間隔を空けて設けられた整流部材の円筒部に形成された吸引穴から気体の吸引を行うので、チャンバ室の内部に吸い込まれてチャンバ室の外形部の底に達した塗工材料は、そのままチャンバ室の外形部の底に溜まる。このように、気体の吸引と塗工材料の回収とを分離して行うので、塗工材料が吸引穴からブロアへ吸引されない。そのため、例えば塗工の開始時や塗工の終了時や塗工装置の調整時などにおいて、ダイから塗工材料が垂れ落ちてチャンバ室の内部に吸い込まれても、塗工材料が吸引穴からブロアへ侵入しない。したがって、ブロアにより吸引穴から安定して吸引動作を行うことができるので、減圧チャンバによる減圧を安定して行うことができる。また、チャンバ室の外形部の底に溜まった塗工材料を除去するだけでチャンバ室の清掃が完了するので、チャンバ室の内部の清掃が容易になり、チャンバ室の清掃性が向上する。
【0017】
上記態様においては、前記ダイは前記減圧手段と独立して移動可能であること、が好ましい。
【0018】
この態様によれば、ダイとバックアップローラとの間のギャップを調整するためにダイをバックアップローラに対し前進および後退するように移動させても減圧手段は移動しないので、減圧手段による減圧の度合いに影響がでない。そのため、減圧手段による減圧が安定する。
【0019】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、バックアップローラと前記バックアップローラにより搬送される箔に対して塗工材料を吐出する吐出口を備えるダイと前記吐出口に対し前記バックアップローラの回転方向の上流側の位置に設けられる減圧手段とを使用する塗工方法において、前記減圧手段は、チャンバ室と前記チャンバ室に気体を取り込む取り込み口と前記チャンバ室に取り込んだ前記気体を吸引する吸引穴とを備え、前記チャンバ室の内部にて前記取り込み口から前記吸引穴に向かう渦巻き状の気流を発生させること、を特徴とする。
【0020】
この態様によれば、チャンバ室の内部にて渦巻き状の気流を発生させることにより、取り込み口からチャンバ室の内部に取り込んだ気体は、チャンバ室の内部で吸引穴に向かって一定方向に流れる。そのため、チャンバ室の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、塗工幅全域を均一に減圧することができる。したがって、箔に対し高精度に塗工を行うことができ、塗工品質を向上させることができる。また、チャンバ室を大きくしなくてもチャンバ室の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、チャンバ室を小さくすることにより塗工装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る塗工装置、塗工方法によれば、塗工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】塗工装置の外観斜視図(一部透視図)である。
【図2】塗工部の周辺を示す断面図である。
【図3】塗工ダイと減圧チャンバの外観斜視図である。
【図4】減圧口部を省略して示した吸引管の外観斜視図である。
【図5】変形例の塗工部の周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施例の塗工装置1の概要について説明する。図1は、塗工装置1の外観斜視図(一部透視図)であり、図2は、塗工部の周辺を示す断面図であり、図3は塗工ダイと減圧チャンバの外観斜視図である。なお、図2は、バックアップローラに金属箔を巻き付けた状態を示した図である。図1に示すように、本実施例の塗工装置1は、塗工ダイ10、ダイ駆動部12、バックアップローラ14、ローラ駆動部16、減圧チャンバ18、吸引管20などを有する。なお、図1においては、説明の便宜上、バックアップローラ14とローラ駆動部16とを仮想線で示している。
【0025】
図2に示すように、塗工ダイ10は、リップ22とマニホールド24などを備えている。リップ22は、後述するように塗工膜42を構成する活物質を主成分としたペースト材料が吐出される吐出口である。また、マニホールド24は、不図示のペーストタンクから供給されたペースト材料を一旦貯留する部分である。また、図1に示すように、ダイ駆動部12は、サーボモータ26やボールネジ28などを備えるNC(Numerical Control)装置であり、塗工ダイ10の駆動を制御する。
【0026】
バックアップローラ14は、円柱形状に形成されており、塗工ダイ10のリップ22に対向する位置に設けられている。塗工時には、このバックアップローラ14の外周面に金属箔30を巻きつけて(図2参照)、ローラ駆動部16によりバックアップローラ14を回転させることで、金属箔30を搬送する。
【0027】
減圧チャンバ18は、塗工ダイ10のリップ22に対してバックアップローラ14の回転方向(金属箔30の搬送方向)の上流側にて、リップ22に隣接した位置に設けられている。この減圧チャンバ18の内部には、空洞のチャンバ室32が設けられている。また、減圧チャンバ18は、塗工装置1における塗工ダイ10以外のいずれかの部位(例えば、ローラ駆動部16のフレーム部など)に固定されており、塗工ダイ10とは独立して設けられている。なお、減圧チャンバ18は、本発明における「減圧手段」の一例である。
【0028】
吸引管20は、減圧チャンバ18のチャンバ室32の内部から外部にかけて設けられている。吸引管20は、図3や図4に示すように、円筒形状に形成された円筒部34と、当該円筒部34から径方向に突出して形成された平板状の気流制御板部36と、円筒部34に接続するおおよそL字形状の減圧口部38とを一体的に備えている。そして、吸引管20の円筒部34は、チャンバ室32の外形部44と間隔を空けて設けられており、チャンバ室32の外形部44と吸引管20の円筒部34との間にてエアの流路を形成している。また、図2や図4に示すように、円筒部34において気流制御板部36の下側の位置(気流制御板部36に対して取り込み口46とは反対側の位置)に軸方向に複数配置された減圧穴40が形成されている。
【0029】
この吸引管20は、減圧口部38に接続したブロア(不図示)により吸引を行うことにより、円筒部34を介してエアを減圧穴40から吸引する。また、吸引管20の円筒部34は、チャンバ室32の内部のエアの流れを整える役割も有している。なお、図4は、減圧口部38を省略して示した吸引管20の外観斜視図である。また、吸引管20は本発明における「整流部材」の一例であり、減圧穴40は本発明における「吸引穴」の一例である。
【0030】
このような構成を有する塗工装置1は、バックアップローラ14により搬送される金属箔30に対し、塗工ダイ10のリップ22からペースト材料を吐出して、金属箔30の表面に当該ペースト材料からなる塗工膜42を形成する。
【0031】
そして、このとき、ダイ駆動部12により塗工ダイ10をバックアップローラ14に対して前進または後退させることにより、塗工ダイ10とバックアップローラ14との間のギャップGを調整する。これにより、塗工膜42の塗工幅(金属箔30の搬送方向と直交する方向の幅)を一定に保つようにフィードバック制御する。
【0032】
また、塗工ダイ10のリップ22に対してバックアップローラ14の回転方向の上流側におけるリップ22付近を、減圧チャンバ18により減圧をしている。これにより、金属箔30の搬送に沿って塗工ダイ10のリップ22付近に進入するエアを減圧チャンバ18により吸引して、当該エアがリップ22から吐出されるペースト材料の内部に巻き込まれることを防止している。
【0033】
ここで、減圧チャンバ18の周辺について説明する。本実施例では、減圧チャンバ18は、前記のように塗工装置1における塗工ダイ10以外のいずれかの部位(例えば、ローラ駆動部16のフレーム部など)に固定されており、塗工ダイ10とは別体に設けられている。そのため、塗工ダイ10は、減圧チャンバ18とは独立してバックアップローラ14に対して前進および後退するように移動する。したがって、ギャップGの調整のために塗工ダイ10が移動しても、減圧チャンバ18は移動しないので、減圧チャンバ18と金属箔30との隙間は変化しない。ゆえに、ギャップGの大きさを変化させてもチャンバ室32内の減圧度は影響を受けないので、減圧チャンバ18により安定して減圧を行うことができる。
【0034】
その結果、金属箔30の搬送に沿って塗工ダイ10のリップ22付近に進入するエアがリップ22から吐出されるペースト材料の内部に巻き込まれることを確実に防止できる。そのため、塗工膜42においてスケ(膜厚が小さくなる部分)が発生することを防止して膜厚が安定した塗工膜42を形成することができ、塗工品質を向上させることができる。
【0035】
また、ギャップGを大きくしても減圧チャンバ18により安定して減圧を行うことができる。そのため、ギャップGを十分に大きくすることができるので、ペースト材料中のダマ(凝集物)が塗工ダイ10のリップ22と金属箔30との間で挟まらない。したがって、塗工膜42にスジ状の欠落部が発生せず、塗工品質を向上させることができる。
【0036】
また、チャンバ室32の外形部44をおおよそ円形状に形成し、このチャンバ室32の内部において当該円形状のおおよそ中心部に吸引管20を設けている。そして、気流制御板部36は、チャンバ室32の内部を流れるエアの流路の一端を取り込み口46と遮断するようにして取り込み口46に隣接する位置に、配置されている。すなわち、気流制御板部36は、取り込み口46からチャンバ室32の内部に取り込まれたエアの流路において、エアの流れ方向の一番奥の位置に配置されている。そして、吸引管20の減圧穴40は、円筒部34の底部分48(図2の下方向(重力の作用方向)における最も下の部分)と気流制御板部36との間の位置に配置されている。
【0037】
そして、吸引管20の減圧穴40から円筒部34や減圧口部38を介してブロア(不図示)によりエアを吸引すると、取り込み口46から取り込まれたエアは、吸引管20の円筒部34の外周面の外側を流れてチャンバ室32の内部で円筒部34を中心に減圧穴40に向かって渦巻き状(図2の矢印参照)に流れた後、減圧穴40から吸引される。このように、チャンバ室32の内部でエアは一定方向に流れ、乱流が発生しないので、塗工ダイ10のリップ22に対して金属箔30の搬送方向の上流側の位置にて安定して減圧を行うことができる。そのため、塗工幅方向の全域に亘って均一に一定の圧力で減圧することができるので、塗工品質を向上させることができる。なお、減圧穴40は、図4に示すように小さい穴を複数設ける仕様に限定されず、吸引管20の長手方向に長い穴を1つ設ける仕様であってもよい。
【0038】
また、減圧穴40は、吸引管20の円筒部34の底部分48と気流制御板部36との間の位置に設けられているので、塗工の開始時や塗工の終了時や塗工装置1の調整時に、塗工ダイ10のリップ22から垂れ落ちてチャンバ室32の内部に吸い込まれたペースト材料を吸い込まない。そして、当該ペースト材料は、チャンバ室32の底面部50(減圧チャンバ18の内周面における底面部分)に溜まる。このように、チャンバ室32の内部でエアを吸引しながら、ペースト材料を分離して回収することができる。そのため、減圧穴40に接続するブロア(不図示)の内部にペースト材料が吸い込まれるおそれがない。また、チャンバ室32の内部を清掃するときには底面部50に溜まったペースト材料を取り除くだけでよいので、清掃作業に必要な工数を削減でき、チャンバ室32内の清掃性が向上する。
【0039】
なお、変形例として、図5に示すように、塗工ダイ10の一部がチャンバ室32に面するように形成してもよい。この変形例では、塗工ダイ10のチャンバ室32に面する部分52の外形を曲線形状(例えば円形状)に形成することにより、チャンバ室32の内部で渦巻き状の気流を発生させている。
【0040】
本実施例によれば、チャンバ室32の内部にて渦巻き状の気流を発生させることにより、取り込み口46からチャンバ室32の内部に取り込んだエアは、チャンバ室32の内部で減圧穴40に向かって一定方向に流れる。そのため、チャンバ室32の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、塗工幅全域を均一に減圧することができる。したがって、金属箔30に対し高精度に塗工を行うことができ、塗工品質を向上させることができる。また、チャンバ室32を大きくしなくてもチャンバ室32の内部での気流の乱れを抑制することが出来るので、チャンバ室32を小さくすることにより塗工装置1の小型化を図ることができる。
【0041】
また、略円形状のチャンバ室32の外形部44と吸引管20の円筒部34との間に形成されるおおよそ円周形状の流路に沿ってエアが流れるので、確実に渦巻き状の気流を発生させることができる。そのため、確実にチャンバ室32の内部でのエアの乱れを抑制することが出来るので、確実に塗工幅全域を均一に減圧することができる。したがって、金属箔30に対し確実に高精度に塗工を行うことができ、確実に塗工品質を向上させることができる。
【0042】
また、吸引管20の円筒部34に形成された減圧穴40からエアの吸引を行うので、チャンバ室32の内部に吸い込まれて底面部50に達したペースト材料は、そのまま底面部50に溜まる。このように、エアの吸引とペースト材料の回収とを分離して行うことができるので、ペースト材料が減圧穴40からブロアへ吸引されない。そのため、例えば塗工の開始時や塗工の終了時や塗工装置の調整時などにおいて、塗工ダイ10からペースト材料が垂れ落ちてチャンバ室32の内部に吸い込まれても、ペースト材料が減圧穴40からブロアへ侵入しない。したがって、ブロアにより減圧穴40から安定して吸引動作を行うことができるので、減圧チャンバ18による減圧を安定して行うことができる。
【0043】
特に、本実施例では、吸引管20の円筒部34の底部分48と気流制御板部36との間の位置に減圧穴40を形成することにより、減圧穴40を塗工ダイ10のリップ22に対向させず、さらに、減圧穴40を減圧チャンバ18の底面部50にも対向させていない。そのため、チャンバ室32の内部に吸い込まれたペースト材料は減圧穴40に吸引されず、確実にペースト材料は減圧チャンバ18の底面部50に溜まる。
【0044】
また、減圧チャンバ18の底面部50に溜まったペースト材料を除去するだけでチャンバ室32の清掃が完了するので、チャンバ室32の内部の清掃が容易になり、チャンバ室32の清掃性が向上する。
【0045】
また、塗工ダイ10は減圧チャンバ18と独立して移動可能であるので、塗工ダイ10とバックアップローラ14との間のギャップGを調整するために塗工ダイ10をバックアップローラ14に対し前進および後退するように移動させても減圧チャンバ18は移動しない。そのため、減圧チャンバ18による減圧の度合いに影響がでないので、減圧チャンバ18による減圧が安定する。
【0046】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1 塗工装置
10 塗工ダイ
14 バックアップローラ
18 減圧チャンバ
20 吸引管
22 リップ
30 金属箔
32 チャンバ室
34 円筒部
36 気流制御板部
40 減圧穴
42 塗工膜
44 外形部
46 取り込み口
48 底部分
50 底面部
52 部分
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップローラと前記バックアップローラにより搬送される箔に対して塗工材料を吐出する吐出口を備えるダイと前記吐出口に対し前記バックアップローラの回転方向の上流側の位置で減圧を行う減圧手段とを有する塗工装置において、
前記減圧手段は、チャンバ室と前記チャンバ室に気体を取り込む取り込み口と前記チャンバ室に取り込んだ前記気体を吸引する吸引穴とを備え、
前記チャンバ室の内部にて前記取り込み口から前記吸引穴に向かう渦巻き状の気流を発生させること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項2】
請求項1の塗工装置において、
前記チャンバ室の外形部を略円形状に形成し、
円筒部を備える整流部材を前記チャンバ室の内部にて前記外形部と間隔を空けて設け、
前記外形部と前記円筒部との間にて前記気体の流路を形成すること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項3】
請求項2の塗工装置において、
前記吸引穴は前記円筒部に形成されていること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの塗工装置において、
前記ダイは前記減圧手段と独立して移動可能であること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項5】
バックアップローラと前記バックアップローラにより搬送される箔に対して塗工材料を吐出する吐出口を備えるダイと前記吐出口に対し前記バックアップローラの回転方向の上流側の位置で減圧を行う減圧手段とを使用する塗工方法において、
前記減圧手段は、チャンバ室と前記チャンバ室に気体を取り込む取り込み口と前記チャンバ室に取り込んだ前記気体を吸引する吸引穴とを備え、
前記チャンバ室の内部にて前記取り込み口から前記吸引穴に向かう渦巻き状の気流を発生させること、
を特徴とする塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187461(P2012−187461A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51310(P2011−51310)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】