説明

塗工装置及び電極箔の製造方法

【課題】電極の塗工開始終了端の湾曲を抑制するに好適に塗工装置及び電極箔の製造方法を提供する。
【解決手段】シート状基材20が巻掛けされたバックアップローラ8と、該バックアップローラ8上を搬送されるシート状基材20に電極スラリー21を塗り付けるダイコーター10とを少なくとも備えた塗工装置2に関する。そして、前記バックアップローラ8のうち、巻掛けられたシート状基材20の幅方向の両端部を支持する外側領域の外径を、当該外側領域間に挟まれる中央領域の外径より、大きい凹形状8Aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を構成する電極箔の製造に使用される塗工装置及び電極箔の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から二次電池を構成する電極箔を製造するにあたり、シート状基材(金属箔)に電極スラリー(電極活物質を含む液体)を塗布する塗工装置において、塗工された電極層の厚みを縁部も含めて均一とするための技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、シート状基材が巻掛けされたバックアップローラと、該バックアップローラ上を搬送されるシート状基材に電極スラリーを塗り付けるダイコーターとを備えた塗工装置を備える。そして、前記バックアップローラのうち、巻掛けられたシート状基材上で前記ダイコーターにて規定幅で電極スラリーが塗布される部位の周面を円柱面で形成し、同じく塗布された電極スラリーが流れて端部側へ拡がる部位の周面を前記円柱面と略同軸であって該バックアップローラの端部に向かい漸次縮径する円錐面で形成するよう構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極箔の電極層を厚膜化してそれを使用する二次電池の容量を向上するためには、電極スラリーの粘度を高くする必要がある。また、電極箔の生産性を上げるためには、塗工速度を上げる必要がある。
【0006】
しかしながら、上記した粘度の高い電極スラリーを速い速度でダイコーターヘッドより吐出させると、ダイコーターヘッドの中央から吐出される電極スラリーの流速がダイコーターヘッドの端部から吐出される電極スラリーの流速より速くなる。その結果、塗工した電極の開始形状及び終了形状が湾曲した形状となり、その端部は電極として使用できず、切断等を必要とし、歩留まりが低下する。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、電極の塗工開始終了端の湾曲を抑制するに好適に塗工装置及び電極箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート状基材が巻掛けされたバックアップローラと、該バックアップローラ上を搬送されるシート状基材に電極スラリーを塗り付けるダイコーターとを少なくとも備えた塗工装置に関する。そして、前記バックアップローラのうち、巻掛けられたシート状基材の幅方向の両端部を支持する外側領域の外径を、当該外側領域間に挟まれる中央領域の外径より、大きい凹形状とした。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明では、ダイコーターヘッドから吐出され、幅方向中央部が幅方向両端部に対して凸形状となる電極スラリーの先端部の形状に、バックアップローラにより幅方向中央領域において凹形状に保持されるシート状基材の形状を相似させることができる。このため、ダイコーターヘッドから繰出される電極スラリーの先端部とシート状基材との距離を、シート状基材の中央部と端部とで同等とでき、塗工した電極の端部の湾曲を少なくできる。よって、電極の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す塗工装置を含む電極箔の製造方法の概略構成図。
【図2】塗工装置の塗工部を示す正面図。
【図3】塗工装置による塗工状態を示す説明図。
【図4】塗工装置の変形例を示す正面図。
【図5】変形例の塗工装置による塗工状態を示す説明図。
【図6】塗工装置の別の変形例を示す正面図。
【図7】塗工装置の更に別の変形例のバックアップローラの斜視図(A)及び正面図(B)。
【図8】更に別の変形例のバックアップローラによりシード状基材の保持状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る塗工装置及び電極箔の製造方法を図面に基づいて説明する。この第1実施形態に係る塗工装置2は、二次電池の電極として使用される電極箔を製造するために使用されるものであり、シート状基材20に電極層22を形成するための装置である。電極箔の製造においては、前記塗工装置2によりシート状基材20に電極スラリー21を塗布・乾燥させ、乾燥された電極層22が後工程である図示しない圧延装置によりプレスされて密度調整され、電極箔に裁断されて二次電池に使用される。
【0012】
前記シート状基材20は、電極層22を形成する基板となるものであって、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、鉄箔、ステンレス鋼箔など製造される電極箔の種類や用途に応じた任意の金属箔である。例えば、正極集電体にはアルミニウムなどの金属箔を用い、負極集電体には銅などの金属箔を用いることができる。金属箔の具体的な厚さについて特に制限はないが、例えば、アルミニウムの場合には20μm、銅の場合には10μm程度の薄膜である。
【0013】
また、前記電極層22は、溶剤で溶いた電極活物質(正極活物質又は負極活物質)とバインダとを混合したスラリー状の流動体(電極スラリー21)から乾燥されプレスされて形成される。正極を形成するために用いる正極スラリーと、負極を形成するために用いる負極スラリーとがある。以下では、正極スラリー及び負極スラリーのいずれかに特に限定されない場合には、単に「電極スラリー」という。
【0014】
正極スラリーは、例えば、正極活物質、導電助剤、およびバインダを有し、溶媒を添加することで、所定の粘度にされる。正極活物質は、例えば、マンガン酸リチウムである。導電助剤は、例えば、アセチレンブラックである。バインダは、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)である。溶媒は、例えば、NMP(ノルマルメチルピロリドン)である。なお、正極活物質は、マンガン酸リチウムに特に限定されないが、容量および出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物を適用することが好ましい。導電助剤は、例えば、カーボンブラックやグラファイトを利用することも可能である。バインダおよび溶媒は、PVDFおよびNMPに限定されない。
【0015】
負極スラリーは、例えば、負極活物質、導電助剤、およびバインダを有し、溶媒を添加することで、所定の粘度にされる。負極活物質は、例えば、グラファイトである。導電助剤、バインダ、および溶媒は、例えば、アセチレンブラック、PVDF、およびNMPである。なお、負極活物質は、グラファイトに特に限定されず、ハードカーボンや、リチウム−遷移金属複合酸化物を利用することも可能である。導電助剤は、例えば、カーボンブラックやグラファイトを利用することも可能である。バインダおよび溶媒は、PVDFおよびNMPに限定されない。
【0016】
図1に示すように、前記塗工装置2には、シート状基材20に電極スラリー21を塗布する機能を有する塗工部4と、電極スラリー21を乾燥させる機能を有する乾燥部6とが備えられる。前記乾燥部6は、例えば、乾燥炉で構成され、この乾燥部6を通過することにより、塗布された電極スラリー21に含まれる溶媒が蒸発され、強制的に乾燥させられる。乾燥炉は、例えば、誘導コイルが金属箔に磁場を作用させて金属箔に熱を付与し、その熱により電極スラリー21を加熱して溶媒を蒸発させる誘導加熱式乾燥炉であってもよく、また、熱風により溶媒を蒸発させる熱風式乾燥炉であってもよい。なお、本実施例においては、塗工装置2として、塗工部4と乾燥部6とを備えるが、乾燥部6を別途独立した構成とすることもできる。
【0017】
前記塗工装置2では、ロール状に巻かれたシート状基材20が連続的に繰り出されて塗工部4まで搬送され、該シート状基材20の一面(表面)に電極スラリー21が塗布され、乾燥部6まで搬送されて強制乾燥させられたのち、再びロール状に巻き取られる。この塗工装置2による一連の処理にて、シート状基材20の一面に電極層22が形成される。電極箔を製造する本実施例では、前記塗工装置2による一連の処理にて、金属箔に電極活物質層が形成されることとなる。なお、シート状基材20の両面に電極層22を形成する場合は、上記と同様の処理をシート状基材20の他面(裏面)に施して、該シート状基材20の他面(裏面)に電極層22を形成することができる。
【0018】
続いて、図示しない圧延装置にて、ロール状に巻かれたシート状基材20が連続的に繰り出されて圧延ロール間でプレスされ、再びロール状に巻き取られる。この圧延装置によるプレス処理により、シート状基材20に形成された電極層22の充填密度が高められる。電極箔を製造する本実施例では、圧延装置にて、電極活物質層が形成された金属箔がプレスされることにより、該電極活物質層の電極活物質の充填密度が高められ、また、均一化されて、電極箔と成る。
【0019】
次に、前記塗工装置2の塗工部4の構成を説明する。図1に示すように、塗工装置2の塗工部4には、シート状基材20が巻掛けされたバックアップローラ8と、該バックアップローラ8上を通過するシート状基材20に電極スラリー21を塗り付けるダイコーター10とを、備える。以下、シート状基材20の幅方向を『幅方向』と定義する。従って、シート状基材20が巻掛けられたバックアップローラ8の軸と略平行な方向は、幅方向である。
【0020】
前記塗工装置2には、前記バックアップローラ8以外に、単数又は複数のガイドローラ14が備えられ、シート状基材20がテンションを有して巻掛けされる。これらのローラ14の回転により、ロール状に巻き取られたシート状基材20が所定の速度で連続的に塗工部4に繰り出され、また、乾燥部6まで搬送されたのち、再びロール状に巻き取られる。
【0021】
前記ダイコーター10は、塗液タンク9から供給される電極スラリー21を、くちばし状ノズルに開口されたスリット11(以下では「ダイコーターヘッド」ともいう)から流出させて、バックアップローラ8上のシート状基材20に塗り付ける。ダイコーター10のノズルのスリット11は、シート状基材20の幅方向に長尺であって、スリット11の開口幅によりシート状基材20に対して電極スラリー21が塗布される規定幅が定まる。なお、前記ダイコーター10は、一般に使用されている既存のダイコーターを広く採用することができる。
【0022】
前記バックアップローラ8は、ダイコーター10にて電極スラリー21が塗布されるシート状基材20を巻掛けるものであり、ダイコーター10からの塗布圧を受けるものである。バックアップローラ8は、該バックアップローラ8の上流又は下流に配置されたガイドローラ14が回転駆動されることにより搬送されるシート状基材20のテンションを受けて回動する従動ローラで構成している。
【0023】
上記構成において、前記バックアップローラ8に巻掛けられたシート状基材20にダイコーター10のスリット11が近づけられて、規定幅(ダイコーター10のスリット11の開口幅)で電極スラリー21が塗布される。
【0024】
前記バックアップローラ8には、図2に示すように、シート状基材20に形成される電極層22の開始線及び終了線を直線とするための、凹形状8Aが備えられている。即ち、前記バックアップローラ8の表面形状は、幅方向中央部で最小径となり、幅方向両側に移るに連れて直径が漸次増径する、凹形状8Aに形成している。つまり、前記バックアップローラ8の幅方向両側で最大径を備え、幅方向中央部に移るに連れて漸次縮径する凹形状8Aとしている。
【0025】
このため、バックアップローラ8にテンションを掛けて巻掛けされるシート状基材20もバックアップローラ8の外周形状に沿って、幅方向中央部で最も凹み、幅方向両側に移るに連れて漸次増径された形状に弾性変形されて、バックアップローラ8に巻掛けされる。
【0026】
従って、シート状基材20の表面は、ダイコーター10のスリット11の開口に対して、幅方向両端部でスリット11の開口に最も接近し、幅方向中央部に移るに連れてスリット11の開口からの距離が漸次大きくなるように位置決めされる。
【0027】
以上の構成の塗工装置2において、ダイコーター10のスリット11から粘度の高い電極スラリー21を流出させると、粘度の高い電極スラリー21はスリット11の壁面を滑りながら流出する。このため、流出開始時においては、スリット11壁面との接触面積が、相対的に大きいスリット11幅方向両端からの流出速度の立上がりが、相対的に小さいスリット11幅方向中央部からの流出速度の立上がりに比較して遅くなる。即ち、スリット11から流出する粘度の高い電極スラリー21の流出量は、スリット11の幅方向中央部において最も多く、幅方向両端に移るに連れて電極スラリー21の流出量が小さくなる。このため、流出開始時においては、スリット11から流出された電極スラリー21の先端形状は、幅方向中央部で最も高く幅方向両端に移るに連れて漸次低くなる山形に湾曲する。そして、スリット11内を滑りながら流出する電極スラリー21の流速が設定されている規定の速度に達した後は、スリット11幅方向の中央部と両端部とで同じ速度で流出される。
【0028】
前記流出開始時の山形の先端を備える電極スラリー21の前方には、前記バックアップローラ8に沿って幅方向中央部で最も凹み、幅方向両側に移るに連れて漸次増径された形状に弾性変形されているシート状基材20の表面が存在する。このため、図3に示すように、電極スラリー21の山形の先端を備える先端は、シート状基材20の表面の幅方向いずれの領域においても略同時刻に到達し、シート状基材20の表面に直線状に塗布される。
【0029】
その後の後続する電極スラリー21の流出速度は、スリット11幅方向の中央部と両端部とで同じ速度で流出されるため、シート状基材20の表面に幅方向に均一に電極スラリー21が塗布される。
【0030】
また、ダイコーター10のスリット11から粘度の高い電極スラリー21の流出を止める、即ち、内圧による押出しを停止させると、粘度の高い電極スラリー21は速やかに流出が停止される。この流出停止時においては、ダイコーター10内圧による押出し力を停止させるため、スリット11壁面との接触面積が、相対的に小さくスリット11壁面による制動が少ないスリット11幅方向中央部からの電極スラリー21の離脱が先行し、相対的に大きくスリット11壁面による制動が大きいスリット11幅方向両端からの電極スラリー21の離脱が若干遅れる。
【0031】
このため、流出停止時においては、スリット11から流出された電極スラリー21の後端形状は、幅方向中央部で最も低く(凹み)幅方向両端に移るに連れて漸次後方に高くなる山形に湾曲する。この山形の後端を備える電極スラリー21は、シート状基材20の表面の幅方向いずれの領域においても略同時刻に塗布が終了し、シート状基材20の表面に略直線状に塗布が終了される。
【0032】
以上の本実施形態においては、バックアップローラ8の幅方向両側で大径を備え、幅方向中央部に移るに連れて漸次縮径する凹形状8Aとしているため、バックアップローラ8にテンションを掛けて巻掛けされるシート状基材20も同様の形状に保持される。このため、ダイコーター10のスリット11から流出される粘度の高い山形となった先端形状を備える電極スラリー21をシート状基材20の表面に対する塗布開始形状及び塗布終了形状を直線状とすることができる。このため、その塗布開始・終了端部を電極として有効に使用でき、切断等を必要とせず、歩留まりを向上できる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態に係る塗工装置2及び電極箔の製造方法を説明したが、本発明に係る塗工装置2及び電極箔の製造方法は上述した実施形態に限定されない。
【0034】
例えば、図4,5は本実施形態の変形例を示す。この変形例においては、バックアップローラ8の内面を空洞とし、空洞内と巻掛けられるシート状基材20が接する領域のローラ表面とを連通させる微細な穴8Bを無数設け、空洞内の空気をエアポンプ16により排出させる構成を、図2,3に示す実施例に追加したものである。前記無数の微細な穴8Bは、バックアップローラ8自体をセラミック等の多孔質体により形成することにより構成することもできる。また、バックアップローラ8自体を金属や樹脂により構成する場合には、ローラ表面から空洞内に貫通する多数の穴8Bを形成することにより構成できる。
【0035】
この変形例においては、バックアップローラ8の空洞内の空気をエアポンプ16により排出させることにより、微細な無数の穴8Bを介してローラ表面の空気が排出される。従って、バックアップローラ8に巻掛けられるシート状基材20がローラ表面に密着された状態となる。このため、シート状基材20が凹形状8Aに形成したバックアップローラ8の表面から離れて浮き上がることを防止でき、安定して電極スラリー21を塗布することができる。
【0036】
また、図6に示す本実施形態の別の変形例では、バックアップローラ8の内面を空洞とし、空洞内に冷却装置18からの冷媒を供給・循環させることにより、バックアップローラ8の表面温度を低温状態とした構成を、図2,3に示す実施例に追加したものである。
【0037】
この変形例においては、バックアップローラ8表面温度を、電極スラリー21が吐出されるダイコーターヘッド11や電極スラリー21温度よりも低い低温状態としている。このため、それに巻掛けられるシート状基材20の温度を低下させることができる。このため、シート状基材20に塗布された電極スラリー21の温度を速やかに低下させることができ、その流動性を低下させ、塗布された電極層22としての形状変化を抑えることができる。
【0038】
図7、8に示す本実施形態の更に別の変形例においては、バックアップローラ8の表面を構成する凹形状8Aを、より単純化した構成を図2,3に示す実施例に追加したものである。
【0039】
即ち、バックアップローラ8は概略円柱状に形成されるも、シート状基材20が巻掛けられる領域内の幅方向両端に環状の突起8Cを設けるようにしている。このため、バックアップローラ8のシート状基材20が巻掛けられる領域は、幅方向両端で大径となり、幅方向中央側において小径となる、単純な凹形状8Aとなる。そして、このバックアップローラ8にシート状基材20がテンションを付与された状態で巻掛けられると、図8に示すように、シート状基材20が弾性変形して、その幅方向両端で大径となり、幅方向中央領域に移るに連れて漸次径が縮小されることとなる。
【0040】
従って、バックアップローラ8のローラ表面形状が段付きを持った凹形状8Aであるにも係わらず、巻掛けられるシート状基材20の表面形状を、図2,3に示すと同様の凹形状に形成することができる。
【0041】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0042】
(ア)シート状基材20が巻掛けされたバックアップローラ8と、該バックアップローラ8上を搬送されるシート状基材20に電極スラリー21を塗り付けるダイコーター10とを少なくとも備えた塗工装置2に関する。そして、前記バックアップローラ8のうち、巻掛けられたシート状基材20の幅方向の両端部を支持する外側領域の外径を、当該外側領域間に挟まれる中央領域の外径より、大きい凹形状8Aとした。したがって、ダイコーターヘッド11から吐出され、幅方向中央部が幅方向両端部に対して凸形状となる電極スラリー21の先端部の形状に、バックアップローラ8により幅方向中央領域において凹形状8Aに保持されるシート状基材20の形状を、相似させることができる。このため、ダイコーターヘッド11からの電極スラリー21の先端部とシート状基材20との距離を、シート状基材20の中央部と端部とで同等とでき、塗工した電極層22の端部の湾曲を少なくできる。
【0043】
(イ)図2、3に示す塗工装置2においては、バックアップローラ8の外側領域間に挟まれる中央領域を、当該外側領域の外径から、巻掛けられるシート状基材20の幅方向中央に向かい漸次縮径する凹形状8Aとしている。このため、ダイコーターヘッド11から吐出され、幅方向中央部が幅方向両端部に対して凸形状となる電極スラリー21の先端部の形状に、バックアップローラ8により幅方向中央領域において凹形状に保持されるシ0046ート状基材20の形状を、より一層相似させることができる。このため、ダイコーターヘッド11からの電極スラリー21の先端部とシート状基材20との距離を、シート状基材20の中央部と端部とで同等とでき、塗工した電極の端部の湾曲を少なくできる。
【0044】
(ウ)図4、5に示す塗工装置2においては、バックアップローラ8の外周には、巻掛けられるシート状基材20が接する領域において開口する多数の空気吸引穴8Bを備え、空気吸引穴8Bを介して巻掛けられるシート状基材20との間の空気を排出させることにより、シート状基材20をバックアップローラ8表面に吸着する。このため、シート状基材20が凹形状8Aに形成したバックアップローラ8の表面から離れて浮き上がることが防止でき、安定して電極スラリー21を塗布することができる。
【0045】
(エ)図6に示す塗工装置2においては、バックアップローラ8は、冷却手段としての冷却装置18によりシート状基材20に塗り付けられる電極スラリー21の温度より低い低温状態に保持される。このため、シート状基材20に塗布された電極スラリー21の温度を低下させることができ、その流動性を低下させ、塗布された電極層22としての形状変化を抑えることができる。
【0046】
(オ)バックアップローラ8に巻掛けされてバックアップローラ8上を搬送されるシート状基材20にダイコーター10より押し出した電極スラリー21を塗り付ける電極箔の製造方法である。そして、前記バックアップローラ8により巻掛けられるシート状基材20の幅方向の中央部を両端部より窪ませた凹形状8Aに保持して、ダイコーター10より押し出した電極スラリー21を塗り付けるようにしている。したがって、ダイコーターヘッド11から吐出され、幅方向中央部が幅方向両端部に対して凸形状となる電極スラリー21の先端部の形状に、バックアップローラ8により幅方向中央領域において凹形状に保持されるシート状基材20の形状を、相似させることができる。このため、ダイコーターヘッド11からの電極スラリー21の先端部とシート状基材20との距離を、シート状基材20の中央部と端部とで同等とでき、塗工した電極層22の端部の湾曲を少なくできる。
【符号の説明】
【0047】
2 塗工装置
4 塗工部
6 乾燥部
8 バックアップローラ
8A 凹形状
10 ダイコーター
11 スリット、ダイコーターヘッド
20 シート状基材
21 電極スラリー
22 電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材が巻掛けされたバックアップローラと、該バックアップローラ上を搬送されるシート状基材に電極スラリーを塗り付けるダイコーターとを少なくとも備えた塗工装置であって、
前記バックアップローラのうち、巻掛けられたシート状基材の幅方向の両端部を支持する外側領域の外径を、当該外側領域間に挟まれる中央領域の外径より、大きい凹形状としたことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記バックアップローラの外側領域間に挟まれる中央領域を、当該外側領域の外径から、巻掛けられるシート状基材の幅方向中央に向かい漸次縮径する凹形状としたことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記バックアップローラの外周には、巻掛けられるシート状基材が接する領域において開口する多数の空気吸引穴を備え、空気吸引穴を介して巻掛けられるシート状基材との間の空気を排出させることにより、シート状基材をバックアップローラ表面に吸着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記バックアップローラは、冷却手段によりシート状基材に塗り付けられる電極スラリーの温度より低い低温状態に保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の塗工装置。
【請求項5】
バックアップローラに巻掛けされてバックアップローラ上を搬送されるシート状基材にダイコーターより押し出した電極スラリーを塗り付ける電極箔の製造方法であって、
前記バックアップローラにより巻掛けられるシート状基材の幅方向の中央部を両端部より窪ませた凹形状に保持して、ダイコーターより押し出した電極スラリーを塗り付けることを特徴とする電極箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−3968(P2012−3968A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138265(P2010−138265)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】