説明

塗工装置

【課題】装置長を短縮することを可能にする。
【解決手段】塗工装置1は、塗工液に所望の塗工量で塗工シート5を塗工するものであって、塗工シート5の下方に配置され、塗工液を貯留するバーホルダー370と、バーホルダー370の上方領域における塗工シート5の進行方向の上流側に配置され、該バーホルダー370の塗工液を塗工シート5に塗工する塗工用メイヤーバー381と、バーホルダー370の上方領域における塗工シート5の進行方向の下流側に配置され、塗工シート5に塗工された塗工液の塗工量を規制する規制用メイヤーバー382と、バーホルダー370の上方に回転自在に軸支され、塗工シート5を規制用メイヤーバー382に押し付けるバックアップロール302とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートやボード等に所定量の塗工液を塗工する塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗工装置は、特許文献1に開示されているように、シート状物を所定の方向に送るバックアップロールと、シート状物がバックアップロールを通過する際に、シート状物の表面に塗工液を供給して塗膜を形成するバットと、バックアップロールの上方位置においてシート状物の表面の塗膜を所定の厚みに規制するコーターヘッドとを備え、バットは、シート状物の幅よりも長い筒体であって所定位置に着脱可能となされ、且つ、その両端は閉塞されるとともにシート状物の表面に臨む側には長手方向に沿うスリット状の塗工液吐出口が形成された構成のものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成は、バックアップロールの上方に配置されたコーターヘッドにより塗工量を規制するため、シート状物の進行方向を変更するには、シート状物の進行方向を変更する案内ロールをコーターヘッドの後段に配置することが必要であり、案内ロールとコーターヘッドとの配置間隔が塗工装置の装置長を増大させる要因となっている。このため、従来から、塗工装置を備えた塗工ラインや塗工機械の小型化を実現することができるように、塗工装置の装置長を短縮することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置長を短縮する塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工する塗工装置であって、前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留する貯留部材と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工部材と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制部材と、前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付ける押付案内ロールとを有する。
【0007】
上記の構成によれば、塗工部材と規制部材とが貯留部材の上方領域における上流側と下流側とに配置されているため、塗工対象物に塗工媒体を塗工して塗工量を規制する一連の処理を短い装置長で実現することができる。さらに、塗工対象物を規制部材に押し付ける押付案内ロールが貯留部材の上方に回転自在に配置されているため、この押付案内ロールにより塗工対象物の進行方向を変更することができることから、塗工対象物の進行方向を塗工量の規制直後の貯留部材の上方で変更することができる。これにより、従来のように、塗工量を規制した後に、後段に配置された案内ロールにより進行方向を変更する場合と比較して、装置長を短縮することができる。この結果、塗工装置の装置長における小型化を実現することができるため、塗工装置を備えた塗工ラインや塗工機械の小型化を実現することができる。
【0008】
さらに、押付案内ロールを塗工対象物の進行方向の変更に利用する場合と利用しない場合とで塗工対象物の進行方向を切り替えることができるため、塗工対象物の進行方向の切り替えを容易且つ短時間で完了することができる。この結果、大きな撓み強度により進行方向を変更できない塗工対象物や、小さな撓み強度により進行方向を容易に変更可能な塗工対象物等のように、各種の撓み強度の塗工対象物にとって好適な塗工経路で塗工することができる。
【0009】
本発明の塗工装置であって、前記塗工部材および前記規制部材は、回転可能に軸支されたメイヤーバーによりそれぞれ形成されていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、塗工部材および規制部材が直径を小さくすることが可能なメイヤーバーで形成されているため、塗工部材および規制部材の間隔を狭めることができる。これにより、塗工媒体の露出面を小さくして貯留部材の長さを短くできるため、一層装置長を短縮することができる。
【0011】
本発明の塗工装置であって、前記塗工部材および前記規制部材が前記貯留部材に一体的に設けられており、前記貯留部材を任意の角度に傾斜可能に支持する支持機構を有していてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、支持機構により貯留部材を任意の角度に変更することができると共に、塗工部材および規制部材が貯留部材と一体的に設けられているため、塗工部材および規制部材と貯留部材との位置関係を一定に維持することができる。従って、塗工対象物の塗工装置への進入角度が異なる場合でも、貯留部材の角度を変更することにより容易に安定した塗工形態となるように調整することができる。この結果、塗工対象物の進入角度を調整するための新たな案内ロールが不要になるため、一層装置長を短くすることが可能になる。
【0013】
本発明の塗工装置であって、前記貯留部材に貯留された塗工媒体の温度を所定温度に変更して維持する温度調整機構を有していてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、温度調整機構により塗工媒体の温度を調整することによって、塗工媒体の粘性等の物性を安定した状態に維持しながら塗工することができるため、塗工品質を高めることができる。
【0015】
本発明は、撓み強度の異なる各種の塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工する塗工装置であって、前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留するバーホルダーと、前記バーホルダーを任意の角度に回動可能に軸支するホルダー支持機構と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工用メイヤーバーと、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制用メイヤーバーと、前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付けると共に前記塗工対象物の進行方向を変更可能な押付案内ロールとを有する。
【0016】
上記の構成によれば、塗工用メイヤーバーと規制用メイヤーバーとがバーホルダーの貯留部材の上方領域における上流側と下流側とに配置されているため、塗工対象物に塗工媒体を塗工して塗工量を規制する一連の処理を短い装置長で実現することができる。さらに、塗工対象物を規制用メイヤーバーに押し付ける押付案内ロールが貯留部材の上方に配置され、この押付案内ロールにより塗工対象物の進行方向を変更可能にされているため、塗工対象物の進行方向を塗工量の規制直後の貯留部材の上方で変更することができる。これにより、従来のように、塗工量を規制した後に、後段に配置された案内ロールにより進行方向を変更する場合と比較して、装置長を短縮することができる。この結果、塗工装置の装置長における小型化を実現することができるため、この塗工装置を備えた塗工ラインや塗工機械の小型化を実現することができる。
【0017】
さらに、押付案内ロールを塗工対象物の進行方向の変更に利用する場合と利用しない場合とで塗工対象物の進行方向を切り替えることができるため、塗工対象物の進行方向の切り替えを容易且つ短時間で完了することができる。この結果、大きな撓み強度により進行方向を変更できない塗工対象物や、小さな撓み強度により進行方向を容易に変更可能な塗工対象物等のように、各種の撓み強度の塗工対象物にとって好適な塗工経路で塗工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図1ないし図10に基づいて以下に説明する。
【0019】
(全体構成)
本実施形態に係る塗工装置は、撓み強度の異なる各種の塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工するように構成されている。具体的には、塗工対象物の下方に配置され、塗工媒体を貯留する貯留部材と、貯留部材の上方領域における塗工対象物の進行方向の上流側に配置され、貯留部材の塗工媒体を塗工対象物に塗工する塗工部材と、貯留部材の上方領域における塗工対象物の進行方向の下流側に配置され、塗工対象物に塗工された塗工媒体の塗工量を規制する規制部材と、貯留部材の上方に回転自在に軸支され、塗工対象物を規制部材に押し付ける押付案内ロールとを有した構成にされている。
【0020】
ここで、『塗工対象物』は、撓み強度および厚みに限定されるものではなく、例えば、フィルム状のプラスチックシートや金属シート、紙シートであってもよい。さらに、枚葉形状のボード(木板、金属板、プラスチック板等)や、表面に凸凹があるシートやボード等であってもよい。
【0021】
『塗工媒体』は、溶媒で希釈された樹脂や塗料、インキ、糊、無溶剤樹脂が例示される。『貯留部材』は、塗工媒体を貯留するものであれば、後述の円環形状に形成されたバーホルダーであってもよいし、容器形状に形成されていてもよい。
【0022】
『塗工部材』とは、塗工媒体を塗工対象物に塗工可能なものであれば特に限定されるものではないが、メイヤーバーであることが好ましい。メイヤーバーは、丸棒に細いピアノ線のようなワイヤーを巻き付け、巻き付けたワイヤーの隣同士に形成された谷溝に塗工媒体が残り、巻き付けた径により残る量が異なるようにした塗工部材である。
【0023】
『規制部材』とは、塗工媒体を塗工した余分な塗工量を規制する後仕上げ塗工に適用可能なものであれば特に限定されるものではないが、メイヤーバーであることが好ましい。
【0024】
(具例的構成)
塗工装置をより具体的に説明する。図1および図2に示すように、塗工装置1は、塗工シート5に所望の塗工量で塗工媒体を塗工する塗工装置本体3と、塗工装置本体3に対して塗工シート5を外部から案内しながら搬入する搬入機構2と、塗工装置本体3において塗工された塗工シート5を外部に搬出する搬出機構4とを有している。
【0025】
(搬入機構2)
搬入機構2は、図2にも示すように、塗工装置本体3に対して塗工シート5の進行方向の上流側に配置されている。搬入機構2は、ニップロール206を有している。ニップロール206は、塗工シート5の進行方向に対して直行するように配置されている。ニップロール206の両端部は、軸受け部材212・213により回転自在に軸支されている。これらの軸受け部材212・213は、ロール支持機構210・211の下端部において支持されている。
【0026】
各ロール支持機構210・211は、鉛直方向に立設されている。ロール支持機構210・211は、ニップロール206を昇降させる昇降シリンダ214・215を備えている。昇降シリンダ214・215は、シリンダロッドの進退移動量を調整可能にされている。これにより、ロール支持機構210・211は、ニップロール206を昇降シリンダ214・215により任意の高さ位置に昇降させることによって、塗工シート5を後述の繰出しロール205とニップロール206とに所望の圧力で挟持することを可能にしている。
【0027】
ニップロール206の下方には、繰出しロール205が設けられている。繰出しロール205は、軸芯がニップロール206の軸芯に対して平行となるように配置されている。即ち、ニップロール206と繰出しロール205とは、ロール面同士が平行に対向されている。繰出しロール205の一端部には、回転駆動機構201が接続されている。回転駆動機構201は、任意の回転速度で回転可能な駆動モータ202と、駆動モータ202の回転速度を減速しながら回転駆動力を繰出しロール205に伝達する減速装置203とを有している。回転駆動機構201は、繰出しロール205を所定の回転速度で回転させることによって、繰出しロール205とニップロール206とに挟持された塗工シート5を所望の進行速度で塗工装置本体3に送り込むようになっている。
【0028】
ニップロール206の上方には、ガイドロール207が配置されている。ガイドロール207は、軸芯がニップロール206の軸芯に平行となるように配置されている。ガイドロール207の両端部は、上述のロール支持機構210・211の上部において回転自在に軸支されている。ガイドロール207は、搬入機構2において塗工された塗工シート5を巻取装置や乾燥炉等の後工程に案内するようになっている。
【0029】
このように構成された搬入機構2は、昇降可能に設けられたガイドロール207と繰出しロール205とで各種の厚みの塗工シート5を任意の進行速度で塗工装置本体3に搬入可能にする機能と、塗工後の塗工シート5をガイドロール207により上流側に存在する後段の工程に案内する機能とを備えた構成とされている。
【0030】
(搬出機構4)
搬出機構4は、塗工装置本体3に対して塗工シート5の進行方向の下流側に配置されている。搬出機構4は、塗工後の塗工シート5を案内するガイドロール405を備えている。ガイドロール405の両端は、図示しない軸受け機構により回転自在に軸支されている。尚、ガイドロール405は、任意の高さ位置に昇降可能にされていることが好ましい。このように構成された搬出機構4は、塗工後の塗工シート5を下流側に存在する後工程に案内する機能を備えた構成にされている。
【0031】
(塗工装置本体3)
塗工装置本体3は、搬入機構2と搬出機構4との間に配置されている。塗工装置本体3は、円筒形状のバーホルダー370(貯留部材)を備えている。バーホルダー370は、搬入機構2から搬入された塗工シート5の下方に配置され、塗工液を外部に露出しながら貯留するように構成されている。バーホルダー370は、軸芯が水平配置されていると共に、塗工シート5の進行方向に対して直交するように設けられている。バーホルダー370の詳細については後述する。
【0032】
バーホルダー370は、図3に示すように、ホルダー支持機構377に任意の角度で回動可能および固定可能に軸支されている。尚、ホルダー支持機構377の角度とは、ホルダー支持機構377の軸心周りの角度を意味する。ホルダー支持機構377は、バーホルダー370の両端部に固設された支持盤375と、支持盤375を図示しない締結ボルトにより分離可能に支持する支持部材376とを有している。これにより、ホルダー支持機構377は、支持部材376に対する支持盤375の締結位置を変更することによって、バーホルダー370の角度を変更することを可能にしている。換言すれば、ホルダー支持機構377は、後述の塗工用メイヤーバー381および規制用メイヤーバー382の配置角度を変更する機能を有している。ここで、『配置角度』とは、塗工用メイヤーバー381および規制用メイヤーバー382の中心点同士を結んだ線分と水平面との交差角度を意味している。
【0033】
尚、ホルダー支持機構377は、回転角度を自動で変更可能な回転駆動機構により構成されていてもよい。この場合には、塗工シート5の種別に応じて最適な回転角度にホルダー支持機構377を自動で設定することが可能になる。
【0034】
上記のバーホルダー370には、塗工用メイヤーバー381および規制用メイヤーバー382が設けられている。塗工用メイヤーバー381および規制用メイヤーバー382は、塗工用メイヤーバー381の回転と共に配置角度を変更するように、バーホルダー370に対して一体的に設けられている。尚、『一体的に設けられる』とは、部材同士がボルト等の締結により連結状態が保持された状態を意味する。
【0035】
図8に示すように、塗工用メイヤーバー381および規制用メイヤーバー382は、軸芯がバーホルダー370の軸芯と平行となるように設定されている。塗工用メイヤーバー381は、バーホルダー370の上方領域における塗工シート5の進行方向の上流側に配置されている。一方、規制用メイヤーバー382は、バーホルダー370の上方領域における塗工シート5の進行方向の下流側に配置されている。これにより、塗工装置本体3は、塗工用メイヤーバー381と規制用メイヤーバー382とがバーホルダー370の上方領域における上流側と下流側とに配置されているため、塗工シート5に塗工液を塗工して塗工量を規制する一連の処理を短い装置長で実現したものになっている。
【0036】
塗工用メイヤーバー381は、塗工シート5の種類や塗工量に応じて取り替えることができるように着脱可能にされている。塗工用メイヤーバー381は、バー表面にメッシュ等の各種の模様や凹凸が形成されており、この模様や凹凸により塗工液を汲み上げることを可能にしている。
【0037】
塗工用メイヤーバー381は、バーホルダー370の表面部において回転自在に軸支されている。図1に示すように、塗工用メイヤーバー381の正面側の一端部は、連結部材364を介して回転駆動機構361に連結されている。回転駆動機構361は、上述の搬入機構2における回転駆動機構201と同様に、駆動モータおよび減速機を有している。回転駆動機構361は、塗工用メイヤーバー381を任意の回転速度で回転駆動するようになっている。これにより、塗工用メイヤーバー381は、回転することによりバーホルダー370に貯留された塗工液を塗工シート5側に移動させ、塗工シート5との接触により所定量の塗工液を塗工シート5に塗工する。
【0038】
一方、図8および図9に示すように、規制用メイヤーバー382は、塗工用メイヤーバー381よりも下流側に配置されている。規制用メイヤーバー382は、バー表面が平滑状態にされている。規制用メイヤーバー382は、バーホルダー370の表面部において回転自在に軸支されている。図1に示すように、規制用メイヤーバー382の正面側の一端部は、連結部材365を介して回転駆動機構362に連結されている。回転駆動機構362は、規制用メイヤーバー382を任意の回転速度で回転駆動するようになっている。これにより、規制用メイヤーバー382は、塗工シート5と接触しながら回転することによって、バーホルダー370で塗工された塗工シート5の塗工液を均一化すると共に、所定の塗工量に規制するようになっている。
【0039】
バーホルダー370の上方には、円筒形状のバックアップロール302(押付案内ロール)が配置されている。バックアップロール302は、軸芯がバーホルダー370の軸芯と平行になるように設定されている。図4に示すように、バックアップロール302は、両端部が軸受け部材313・343により回転自在に軸支されている。各軸受け部材313・343は、ロール支持機構305・335の一部を構成している。ロール支持機構305・335は、軸受け部材313・343と、軸受け部材313・343を任意の高さ位置で停止可能に昇降させる昇降シリンダ309・339とを有している。
【0040】
また、バックアップロール302の背面側の一端部は、回転駆動機構307が連結されている。回転駆動機構307は、バックアップロール302を任意の回転速度で回転可能にしている。これにより、バックアップロール302は、図8に示すように、塗工シート5を規制用メイヤーバー382に対して任意の押圧力で押し付ける機能と、ロール表面に塗工シート5を沿わして進行させることによって、塗工シート5の進行方向を上流側に変更する機能とを有している。これにより、塗工装置本体3は、バーホルダー370の上方に配置されたバックアップロール302により塗工シート5の進行方向を変更可能にされているため、塗工シート5の進行方向を塗工量の規制直後のバックアップロール302の上方で変更することができることから、装置長を短縮が実現されている。
【0041】
バックアップロール302の上流側には、円筒形状の第1アジャストロール301が配置されている。第1アジャストロール301は、軸芯がバーホルダー370の軸芯と平行になるように設定されている。図1に示すように、第1アジャストロール301は、両端部が軸受け部材312・342により回転自在に軸支されている。各軸受け部材312・342は、ロール支持機構306・336の一部を構成している。ロール支持機構306・336は、軸受け部材312・342と、軸受け部材312・342を任意の高さ位置で停止可能に昇降させる昇降シリンダ310・340とを有している。これにより、第1アジャストロール301は、図8に示すように、高さ位置をロール支持機構306・336により設定することによって、塗工シート5がバーホルダー370の塗工用メイヤーバー381に進行する進入角度を調整する機能を有している。
【0042】
一方、バックアップロール302の下流側には、円筒形状の第2アジャストロール303が配置されている。第2アジャストロール303は、軸芯がバーホルダー370の軸芯と平行になるように設定されている。図1に示すように、第1アジャストロール301は、両端部が軸受け部材315・345により回転自在に軸支されている。各軸受け部材315・345は、ロール支持機構304・334の一部を構成している。ロール支持機構304・334は、軸受け部材315・345と、軸受け部材315・345を任意の高さ位置で停止可能に昇降させる昇降シリンダ311・341とを有している。
【0043】
また、第2アジャストロール303の背面側の一端部は、回転駆動機構308が連結されている。回転駆動機構308は、第2アジャストロール303を任意の回転速度で回転可能にしている。これにより、第2アジャストロール303は、図9に示すように、高さ位置をロール支持機構306・336により設定することによって、塗工シート5を下流側に繰り出す機能を有している。
【0044】
以上のように構成された塗工装置本体3は、バックアップロール302を塗工シート5の進行方向の変更に利用する場合と利用しない場合とで塗工シート5の進行方向を切り替えることができる。この結果、塗工シート5の進行方向の切り替えを容易且つ短時間で完了することができる。さらに、大きな撓み強度により進行方向を変更できない塗工シート5や、小さな撓み強度により進行方向を容易に変更可能な塗工シート5等のように、各種の撓み強度の塗工シート5にとって好適な塗工経路で塗工することができる。
【0045】
上記の塗工装置本体3の下部には、支持台352と、支持台352の上面に設けられた貯留壁351とが配置されている。貯留壁351は、バーホルダー370の下方に配置されており、バックアップロール302の下方領域の外周を取り囲むように矩形形状に形成されている。支持台352と貯留壁351とは、上面が開口された回収容器506を形成しており、バーホルダー370から滴下された塗工液を受け止めて貯留する機能を有している。また、支持台352は、図4に示すように、正面側に突出されている。支持台352の突出部には、上述の回転駆動機構361と回転駆動機構362とが固設されている。さらに、支持台352の下面には、図示しないキャスターが設けられており、キャスターは、塗工装置本体3を任意の場所に容易に移動可能にしている。尚、キャスターは、搬入機構2、塗工装置本体3および搬出機構4の全部に設けられていてもよい。この場合には、塗工装置1の各部の組み合わせや距離を容易に変更することが可能になる。
【0046】
(バーホルダー370)
上記の塗工装置本体3に備えられたバーホルダー370は、図8および図9に示すように、中空円筒形状に形成されている。バーホルダー370の外表面側には、塗工用メイヤーバー381の一部を遊嵌する第1溝371cと、規制用メイヤーバー382の一部を遊嵌する第2溝371aとが形成されている。第1溝371cには、多数の貫通穴371bが形成されている。図5に示すように、これらの貫通穴371bは、第1溝371cに沿って等間隔で配置されている。貫通穴371bには、連通ボルト378が螺合されている。連通ボルト378は、ボルト頭部からボルト底部にかけて連通された連通穴が形成されている。連通ボルト378は、バーホルダー370の内部と外部とを連通状態にすることによって、バーホルダー370の内部に貯留された塗工液を穴径に応じた流量で第1溝371cに漏出させるようになっている。
【0047】
尚、連通ボルト378は、複数の穴径を有したものが予め準備されており、塗工量や塗工速度、塗工シート5の種類等に応じて最適な塗工状態となるように、適宜取り替え可能にされている。
【0048】
バーホルダー370の内部には、図8および図9に示すように、パイプ372が貫挿されている。パイプ372は、軸芯がバーホルダー370の軸芯に一致されており、バーホルダー370の内部を内周側空間373と、内周側空間373の外側に位置する外周側空間374とに区分している。また、パイプ372には、多数の貫通穴372aが形成されている。これらの貫通穴372aは、バーホルダー370の軸芯方向に沿って等間隔で配置されており、貫通穴371bを有した第1溝371cの配設位置に対して反対側に位置するように設定されている。
【0049】
バーホルダー370は、外周側空間374が上述の支持盤375により液密状態に遮蔽されている。支持盤375は、中心部に貫通穴375aが形成されている。貫通穴375aは、パイプ372の両端部に密接されている。パイプ372の両端は、塗工液供給系に接続されており、塗工液供給系は、パイプ372に対して任意の流量で塗工液を供給するようになっている。
【0050】
このように構成されたバーホルダー370は、パイプ372の内周側空間373(一次貯留部)に塗工液が所定圧力で供給されると、パイプ372に形成された貫通穴372aを通じてバーホルダー370とパイプ372との隙間である外周側空間374(二次側貯留部)に塗工液を排出する。これにより、バーホルダー370内に供給された塗工液は、流動による圧力損失等の影響が最小限に抑えられるため、外周側空間374において塗工液の圧力が均一化される。そして、バーホルダー370は、外周側空間374の塗工液を連通ボルト378の連通穴から第1溝371cに漏出させ、塗工用メイヤーバー381により汲み上げさせて塗工シート5に塗布させるようになっている。なお、バーホルダー370は、ヒーターにより温度調整可能にされていてもよい。
【0051】
(塗工液供給系)
塗工液供給系は、密閉状態において塗工液を送給するように構成されている。具体的には、図6に示すように、塗工液供給系は、パイプ372の両端に配管を介して接続されたバルブ501・505を有している。一方のバルブ501は、送給量を調整可能なポンプ502に接続されている。ポンプ502は、供給用タンク503に接続されている。供給用タンク503には、未使用の塗工液が収容されている。一方、他方のバルブ505は、回収用タンク504に接続されている。回収用タンク504は、回収容器506にも接続されており、回収容器506に貯留された塗工液を回収するようにもなっている。そして、このように構成された塗工液供給系は、供給用タンク503に収容された塗工液をポンプ502によりパイプ372に供給し、バーホルダー370の内部を所定の圧力に維持しながら、余った塗工液を回収用タンク504に回収するという処理を行うことによって、安定した塗工を可能にしている。
【0052】
また、塗工液供給系は、図示しない温調ヒータを備えており、必要に応じて塗工液を所定の温度に加熱することによって、塗工液の粘度を調整可能になっている。
【0053】
尚、塗工液供給系は、図7に示す構成にされていてもよい。具体的には、パイプ372の両端にバルブ501・505を介してポンプ502・506を接続し、パイプ372の両端から同時に塗工液を供給する構成と、回収容器506に回収用タンク504を接続し、回収容器506の塗工液を回収用タンク504に回収する構成にされていてもよい。この場合には、パイプ372の両端から塗工液が供給されることによって、大きな圧力で塗工液をバーホルダー370に存在させることができることから、連通ボルト378の穴径が小さくても塗工量を増大させることが容易になる。
【0054】
(制御構成)
塗工装置1は、図10に示すように、塗工制御盤を有している。塗工制御盤は、塗工に関する制御全般を行う塗工制御回路700と、塗工制御回路700に対して操作指令信号を出力する操作部709と、塗工に関する情報を表示する表示部710と、塗工に関する情報を記憶する記憶装置711とを有している。
【0055】
塗工制御回路700は、塗工装置本体3等に備えられた昇降シリンダ214・215・310・340・309・339・311・341を駆動する駆動回路704〜707と、バーホルダー370の塗工液の温度を所定温度に加熱制御する温度調整部708と、塗工装置本体3等の動作を制御するCPU703と、CPU703の動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するワークRAM701と、塗工動作に関する制御プログラムやデータを記憶するROM702とを有している。
【0056】
上記の塗工制御回路700には、操作部709と表示部710と記憶装置711とが接続されている。操作部709は、オペレータの操作を受け付けるキーボードやマウス等からなっており、塗工シート5の種類等の各種の品種番号等をデータを操作指令信号として塗工制御回路700に出力する。表示部710は、液晶表示装置等からなっており、オペレータによる入力情報や塗工状態等の各種の情報を文字や画像、動画により表示する。記憶装置711は、ハードディスク装置等の大容量記憶装置からなっている。記憶装置711は、塗工シートの種類や塗工液の温度、塗工量、塗工液の種類、ロール位置等の各種のデータを記憶している。
【0057】
これにより、塗工制御盤は、オペレータにより塗工液や塗工シート5の種類等の塗工条件が入力されたときに、この塗工条件に応じた加熱温度やガイドロール207の位置等の塗工形態を最適な状態に自動設定することが可能になっている。また、塗工制御盤は、オペレータの操作により個別にロール位置や液温を調整することも可能になっている。この結果、塗工制御盤は、塗工形態の自動設定およびマニュアル設定が可能であると共に、塗工形態の微調整も行うことが可能になっている。
【0058】
(塗工シート5の走行経路)
塗工形態を具体的に説明すると、図8に示すように、塗工シート5が撓み強度の小さなシートやフィルムの場合には、塗工シート5が斜め下からバーホルダー370に向かって進行するように第1アジャストロール301の高さ位置が設定される。また、バーホルダー370は、規制用メイヤーバー382がバックアップロール302に対向するように回動角度が設定される。そして、塗工シート5は、バックアップロール302や第2アジャストロール303により進行方向が下流側に向かうように設定される。
【0059】
一方、図9に示すように、塗工シート5が撓み強度の大きな板材の場合には、塗工シート5が水平状態でバーホルダー370に向かって進行するように第1アジャストロール301の高さ位置が塗工シート5の上方に設定される。また、バーホルダー370は、塗工用メイヤーバー381と規制用メイヤーバー382との頂部の高さ位置が一致するように、回動角度が設定される。そして、塗工シート5は、ガイドロール405に載置した状態で進行方向が下流側に直進するように設定される。
【0060】
(動作)
上記の構成において、塗工装置1の動作について説明する。
【0061】
塗工対象となる塗工シート5の種類や塗工量等の塗工条件が決定されると、図5に示すように、先ず、塗工量に応じた穴径を有した連通ボルト378がバーホルダー370に装着される。この際、吐出幅を連通ボルト378の配置数により任意に設定可能なため塗工幅の規制が簡単に行える。この後、図4に示すように、塗工条件に対応した塗工用メイヤーバー381およびバーホルダー370がバーホルダー370にセットされる。そして、バーホルダー370が所定の回動角度に設定される。
【0062】
なお、連通ボルト378等の装着作業やバーホルダー370の回動角度の設定作業は、塗工装置本体3を搬入機構2と搬出機構4との間から外部に引き出すことにより容易に行うことができる。また、一般的には2箇所に必要なメイヤーバー装置がバーホルダー370の1箇所に集合されているため、塗工装置本体3の小型化により移動等の取り扱いが容易なものにもなっている。さらに、1個のバーホルダー370上に2本の色々な種類のメイヤーバーを取り付けて組み合わせることができるため、塗工条件の種類(塗工方法の選択範囲)が増加したものにもなっている。
【0063】
例えば、図8に示すように、フィルム等の撓み強度の大きな塗工シート5の場合には、規制用メイヤーバー382とバックアップロール302とが鉛直線上に存在するように設定される。また、図9に示すように、木材やベニヤ板、金属板等の撓み強度の大きな塗工シート5の場合には、塗工用メイヤーバー381と規制用メイヤーバー382とが水平配置された状態となるようにバーホルダー370の回動角度が設定される。
【0064】
この後、図10に示すように、塗工条件がオペレータにより操作部709を介して入力される。入力された塗工条件は、操作指令信号として塗工制御回路700に送信される。塗工制御回路700は、種類に対応した塗工形態データを参照および抽出し、塗工形態データに含まれるロール位置や塗工液の加熱温度、塗工シート5の進行速度、塗工量を決定し、自動的に設定する。なお、バーホルダー370の回動動作が図示しない回動機構により自動化されている場合には、バーホルダー370の回動角度も自動的に塗工形態に対応した角度に設定されてもよい。
【0065】
この後、操作部709における図示しないスタートボタンが押圧されるときに、塗工シート5の走行が開始されると共に、塗工液がバーホルダー370に供給される。この際、塗工液供給系が密閉状態にされていると共に、バーホルダー370内も密閉状態にされているため、塗工が行われる直前まで塗工液が外気に接触することはない。これにより、塗工液の蒸発による粘土変化等の品質低下を防止することが可能になっている。即ち、塗工液をポンプ等で外気に触れない状態で搬送し、小径のロール(塗工用メイヤーバー381)を回転させて時間をおかずに塗工するため、スラリー液(粉体混合、沈殿性のある)や熱可塑性樹脂も加工可能になっている。さらに、多量の溶剤の蒸発防止により周辺環境への配慮も可能になっている。
【0066】
そして、バーホルダー370から塗工用メイヤーバー381を介して塗工液が塗工シート5に塗工された後、規制用メイヤーバー382により所定量の塗工量に規制されることにより塗工条件に応じた塗工が行われる。この際、塗工用メイヤーバー381と規制用メイヤーバー382とがバーホルダー370に装着して一カ所に集合されることによって、両バー381・382間の距離が短いものである。
【0067】
これにより、従来のメイヤーバー塗工装置の従来の一般的な考え方は、先ず多めに塗工してからメイヤーバーで定量塗工して仕上げる方法であるが、このバーホルダー370に集合させる構成であれば、乾燥の速い塗料や熱可塑性樹脂を塗工液とした塗工では場所の制約があり(2箇所の塗工装置が必要なため)、距離、即ち、時間をおいて加工することになる。この結果、薄膜定量にするときには、乾燥および硬化してしまい薄膜に定量塗工できていなかったという問題を解決することを可能にしている。
【0068】
塗工された塗工シート5は、撓み強度が小さい塗工シート5の場合、図8にも示すように、塗工シート5がバックアップロール302や第2アジャストロール303に案内されて逆方向に進行方向が変更された後、後工程に送り出される。一方、塗工シート5の撓み強度が大きい場合には、図9にも示すように、塗工シート5がガイドロール405に案内されながら水平方向に直進して後工程に送り出される。
【0069】
塗工が完了すると、塗工装置本体3が外部に引き出され、塗工液の清掃が行われる。この際、塗工用メイヤーバー381と規制用メイヤーバー382とがバーホルダー370の一カ所に集中されてるため、清掃を容易に行うことが可能になっている。
【0070】
(概略構成)
本実施形態の塗工装置1は、図8および図9に示すように、塗工対象物(塗工液)に所望の塗工量で塗工媒体(塗工シート5)を塗工するものであって、前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留する貯留部材(バーホルダー370)と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工部材(塗工用メイヤーバー381)と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制部材(規制用メイヤーバー382)と、前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付ける押付案内ロール(バックアップロール302)とを有する構成にされている。
【0071】
上記の構成によれば、塗工部材と規制部材とが貯留部材の上方領域における上流側と下流側とに配置されているため、塗工対象物に塗工媒体を塗工して塗工量を規制する一連の処理を短い装置長で実現することができる。さらに、塗工対象物を規制部材に押し付ける押付案内ロールが貯留部材の上方に回転自在に配置されているため、この押付案内ロールにより塗工対象物の進行方向を変更することができることから、塗工対象物の進行方向を塗工量の規制直後の貯留部材の上方で変更することができる。これにより、従来のように、塗工量を規制した後に、後段に配置された案内ロールにより進行方向を変更する場合と比較して、装置長を短縮することができる。この結果、塗工装置の装置長における小型化を実現することができるため、塗工装置を備えた塗工ラインや塗工機械の小型化を実現することができる。
【0072】
さらに、押付案内ロールを塗工対象物の進行方向の変更に利用する場合と利用しない場合とで塗工対象物の進行方向を切り替えることができるため、塗工対象物の進行方向の切り替えを容易且つ短時間で完了することができる。この結果、大きな撓み強度により進行方向を変更できない塗工対象物や、小さな撓み強度により進行方向を容易に変更可能な塗工対象物等のように、各種の撓み強度の塗工対象物にとって好適な塗工経路で塗工することができる。
【0073】
また、本実施形態の塗工装置1における前記塗工部材および前記規制部材(塗工用メイヤーバー381・規制用メイヤーバー382)は、回転可能に軸支されたメイヤーバーによりそれぞれ形成されている。
【0074】
上記の構成によれば、塗工部材および規制部材が直径を小さくすることが可能なメイヤーバーで形成されているため、塗工部材および規制部材の間隔を狭めることができる。これにより、塗工媒体の露出面を小さくして貯留部材の長さを短くできるため、一層装置長を短縮することができる。
【0075】
また、本実施形態の塗工装置1は、前記塗工部材および前記規制部材が前記貯留部材に一体的に設けられており、前記貯留部材を任意の角度に傾斜可能に支持する支持機構(ホルダー支持機構377)を有している構成にされている。
【0076】
上記の構成によれば、支持機構により貯留部材を任意の角度に変更することができると共に、塗工部材および規制部材が貯留部材と一体的に設けられているため、塗工部材および規制部材と貯留部材との位置関係を一定に維持することができる。従って、塗工対象物の塗工装置への進入角度が異なる場合でも、貯留部材の角度を変更することにより容易に安定した塗工形態となるように調整することができる。この結果、塗工対象物の進入角度を調整するための新たな案内ロールが不要になるため、一層装置長を短くすることが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の塗工装置1は、図10に示すように、前記貯留部材に貯留された塗工媒体の温度を所定温度に変更して維持する温度調整機構(温度調整部708、ヒーター等)を有している構成にされている。
【0078】
上記の構成によれば、温度調整機構により塗工媒体の温度を調整することによって、塗工媒体の粘性等の物性を安定した状態に維持しながら塗工することができるため、塗工品質を高めることができる。
【0079】
また、本実施形態の塗工装置1は、撓み強度の異なる各種の塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工するものであって、前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留するバーホルダーと、前記バーホルダーを任意の角度に回動可能に軸支するホルダー支持機構と、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工用メイヤーバーと、前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制用メイヤーバーと、前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付けると共に前記塗工対象物の進行方向を変更可能な押付案内ロールとを有する構成にされている。
【0080】
上記の構成によれば、塗工用メイヤーバーと規制用メイヤーバーとがバーホルダーの貯留部材の上方領域における上流側と下流側とに配置されているため、塗工対象物に塗工媒体を塗工して塗工量を規制する一連の処理を短い装置長で実現することができる。さらに、塗工対象物を規制用メイヤーバーに押し付ける押付案内ロールが貯留部材の上方に配置され、この押付案内ロールにより塗工対象物の進行方向を変更可能にされているため、塗工対象物の進行方向を塗工量の規制直後の貯留部材の上方で変更することができる。これにより、従来のように、塗工量を規制した後に、後段に配置された案内ロールにより進行方向を変更する場合と比較して、装置長を短縮することができる。この結果、塗工装置の装置長における小型化を実現することができるため、この塗工装置を備えた塗工ラインや塗工機械の小型化を実現することができる。
【0081】
さらに、押付案内ロールを塗工対象物の進行方向の変更に利用する場合と利用しない場合とで塗工対象物の進行方向を切り替えることができるため、塗工対象物の進行方向の切り替えを容易且つ短時間で完了することができる。この結果、大きな撓み強度により進行方向を変更できない塗工対象物や、小さな撓み強度により進行方向を容易に変更可能な塗工対象物等のように、各種の撓み強度の塗工対象物にとって好適な塗工経路で塗工することができる。
【0082】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。尚、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】塗工装置の斜視図。
【図2】塗工装置の正面図。
【図3】塗工装置の側面図。
【図4】図3におけるA−A線矢視断面図。
【図5】バーホルダーの斜視図。
【図6】塗工液供給系の説明図。
【図7】塗工液供給系の説明図。
【図8】塗工シートの進行方向を示す説明図。
【図9】塗工シートの進行方向を示す説明図。
【図10】塗工装置の制御ブロック図。
【符号の説明】
【0084】
1 塗工装置
2 搬入機構
3 塗工装置本体
4 搬出機構
5 塗工シート
302 バックアップロール
370 バーホルダー
377 ホルダー支持機構
381 塗工用メイヤーバー
382 規制用メイヤーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工する塗工装置であって、
前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留する貯留部材と、
前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工部材と、
前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制部材と、
前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付ける押付案内ロールと
を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記塗工部材および前記規制部材は、回転可能に軸支されたメイヤーバーによりそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工部材および前記規制部材が前記貯留部材に一体的に設けられており、
前記貯留部材を任意の角度に傾斜可能に支持する支持機構を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記貯留部材に貯留された塗工媒体の温度を所定温度に変更して維持する温度調整機構を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項5】
撓み強度の異なる各種の塗工対象物に所望の塗工量で塗工媒体を塗工する塗工装置であって、
前記塗工対象物の下方に配置され、前記塗工媒体を貯留するバーホルダーと、
前記バーホルダーを任意の角度に回動可能に軸支するホルダー支持機構と、
前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の上流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、該貯留部材の前記塗工媒体を前記塗工対象物に塗工する塗工用メイヤーバーと、
前記貯留部材の上方領域における前記塗工対象物の進行方向の下流側に配置されていると共に、前記バーホルダーに回転可能に軸支され、前記塗工対象物に塗工された前記塗工媒体の塗工量を規制する規制用メイヤーバーと、
前記貯留部材の上方に回転自在に軸支され、前記塗工対象物を前記規制部材に押し付けると共に前記塗工対象物の進行方向を変更可能な押付案内ロールと
を有することを特徴とする塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−178660(P2009−178660A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20426(P2008−20426)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(508033122)株式会社理峰 (1)
【Fターム(参考)】