説明

塗布方法、及び塗布装置

【課題】タクト短縮が可能であり、安価で安定して基板上に液体材料を塗布できる塗布方法、及び塗布装置を提供する。
【解決手段】基板を保持したチャック部が回転することで液体材料を基板の表面に塗り広げる塗布方法に関するものである。基板載置位置にあるチャック部に対して基板を載置する載置工程S1と、基板を載置したチャック部を基板載置位置から回転動作を行う回転位置へと移動する移動工程S3と、回転位置においてチャック部が回転する回転工程S4と、を含む。そして、載置工程S1と移動工程S3との間に、チャック部に載置された基板の表面に前記液体材料を滴下する滴下工程S2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池が様々な用途において注目されている。太陽電池用基板の製造工程では、半導体基板の表面に拡散材を塗布する工程がある。このような太陽電池用塗布装置には安価、且つ高速タクトの装置が要求されている。
【0003】
ところで、従来から、IC等の半導体装置を製造する際、ウエハを回転させ、その表面に遠心力でレジストを塗布する塗布装置としてスピンコータが知られている(例えば、特許文献1参照)。そこで、太陽電池用基板に拡散材を塗布するための装置として上述のスピンコータを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−20935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、スピンコータをそのまま拡散材の塗布に適用すると、処理時間がかかるため、太陽電池用基板を安価に製造することができず、実用性が低いといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、タクト短縮が可能であり、安価で安定して基板上に液体材料を塗布できる塗布方法、及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る塗布方法は、基板を保持したチャック部が回転することで液体材料を前記基板の表面に塗り広げる塗布方法において、基板載置位置にある前記チャック部に対して基板を載置する載置工程と、前記基板を載置した前記チャック部を前記基板載置位置から回転動作を行う回転位置へと移動する移動工程と、前記回転位置において前記チャック部が回転する回転工程と、を含み、前記載置工程と前記移動工程との間に、前記チャック部に載置された前記基板の表面に前記液体材料を滴下する滴下工程を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の塗布方法によれば、載置工程と移動工程との間において、チャック部に載置された基板の表面に液体材料を滴下するので、塗布工程におけるタクトの短縮を図ることができる。
【0009】
また、上記塗布装置においては、前記滴下工程においては、前記チャック部を回転させた状態で行うのが好ましい。
この構成によれば、基板の表面に液体材料を予め塗り広げておくことができ、タクト短縮を実現できる。
【0010】
また、上記塗布装置においては、前記滴下工程における前記チャック部の回転速度は、前記回転工程における前記チャック部の回転速度よりも低く設定されるのが好ましい。
この構成によれば、基板からはみ出さない範囲内で液体材料を良好に塗り広げることができる。
【0011】
また、上記塗布装置においては、前記滴下工程における前記チャック部の回転速度が50rpm以下に設定されるのが好ましい。
この構成によれば、基板からはみ出さないように液体材料を塗り広げることができるので、液体材料を振り切る回転工程の時間を短くすることができる。
【0012】
また、上記塗布装置においては、前記回転工程においては、前記チャック部が前記液体材料の飛散を防止する飛散防止用カップ内で回転するのが好ましい。
この構成によれば、回転工程時に液体材料が周囲に飛び散るのを確実に防止することができる。
【0013】
また、上記塗布装置においては、前記回転工程における前記チャック部の回転動作は、4000rpm以上の回転数であり、且つ5秒以内で行われるのが好ましい。
この構成によれば、液体材料を基板の全面に亘って確実に塗り広げることができる。
【0014】
また、上記塗布装置においては、前記基板に前記液体材料を滴下するノズルを前記チャック部に対して進退させるのが好ましい。
この構成によれば、ノズルがチャック部に対して進退する構成を採用するため、ノズルが基板のチャック部への搬入工程を妨げることがない。
【0015】
また、上記塗布装置においては、前記ノズルにおける進退方向は、前記基板の前記チャック部に対する搬入方向と平行であるのが好ましい。
この構成によれば、ノズルの移動距離を短くすることができ、塗布工程全体のタクトの短縮を図ることができる。
【0016】
また、上記塗布装置においては、前記基板を前記チャック部に載置するタイミングと同時に前記ノズルを前記基板に対向させるのが好ましい。
この構成によれば、基板がチャック部に載置するタイミングと同時にノズルが基板に対向するため、ノズルがチャック部まで移動する際の待ち時間を無くしている。
【0017】
また、上記塗布装置においては、前記回転工程においては、前記基板の裏面を洗浄するバックリンス処理を行うのが好ましい。
この構成によれば、回転工程時にバックリンス処理を同時に行うことで液体材料が裏面側に回りこむのを防止できる。よって、回転工程の後にバックリンスを別途行う場合に比べて、タクト短縮を図ることができる。
【0018】
また、上記塗布装置においては、前記液体材料として、粘度が20cp以上の材料を用いるのが好ましい。
この構成によれば、粘度が20cp以上の液体材料を用いるので、回転工程において液体材料が基板の裏面側に回りこむのを防止することができる。よって、基板の裏面を洗浄するバックリンス処理を省略することができ、タクトの短縮を図ることができる。
【0019】
また、上記塗布装置においては、前記基板が太陽電池用基板であるのが好ましい。
本発明を採用すれば、スピンコートを用いて、太陽電池用基板に例えば拡散材を塗布することができるので、太陽電池用基板を安価に提供できる。
【0020】
本発明の塗布装置は、基板を回転させることで前記基板の表面に液体材料を塗り広げる塗布装置において、前記基板に前記液体材料を滴下するノズルと、前記基板を保持した状態で回転可能であり、前記基板を載置する基板載置位置と前記回転を行う回転位置との間で昇降動作を行うチャック部と、前記チャック部が前記回転位置への移動を開始する前のタイミングで、前記基板載置位置にある該チャック部に載置された前記基板の表面に前記液体材料を滴下するように前記ノズルを制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の塗布装置によれば、チャック部が回転位置への移動を開始する前のタイミングでチャック部に載置された基板の表面に液体材料を滴下するので、タクト短縮が可能となり、安価で安定した液体材料の塗布が可能な装置を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、タクト短縮が可能であり、安価で安定して基板上に液体材料を塗布できる塗布方法及び塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)、(b)は基板処理装置の構成を示す平面図及び断面図である。
【図2】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】塗布装置の要部構成を示す図である。
【図4】ノズル部の要部構成を示す図である。
【図5】塗布装置による拡散材料の塗布工程を示すフローチャートを示す図である。
【図6】塗布装置における塗布工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1(a)は本発明の塗布装置を含む基板処理装置の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視による断面図である。図2は基板処理装置100の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態に係る基板処理装置は太陽電池を構成する太陽電池用基板に不純物を拡散するための拡散材料を塗布及び乾燥する処理を行うためのものであり、基板塗布装置は太陽電池用基板(以下、基板と称す)に拡散材を塗布するために用いられる。
【0025】
以下、基板処理装置100の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。基板処理装置100の長手方向であって基板の搬送方向をX方向と表記する。平面視でX方向(基板搬送方向)に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。なお、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとする。
【0026】
図1(a)、(b)に示すように、基板処理装置100は、被処理物である基板Wを搬入するための搬入部1と、該搬入部1の下流側(+X方向)に設けられた塗布装置10と、該塗布装置10の下流側(+X方向)に設けられた乾燥装置3と、これら搬入部1から乾燥装置3まで基板Wを搬送する第1搬送装置6と、乾燥装置3の部分において基板Wを搬送する第2搬送装置7と、を備えている。
【0027】
基板処理装置100は、図2に示すように、搬入部1、塗布装置10、乾燥装置3、第1搬送装置6、及び第2搬送装置7の各々の駆動を制御する制御部9を備えている。
【0028】
乾燥装置3は、下流側(+X方向)に向かって順に配置された3台のホットプレート3a、3b、3cから構成されている。各ホットプレート3a,3b,3cは、基板の搬送方向と直交する方向(Y方向)に3分割され、各ホットプレート3a,3b,3c間に隙間51が形成されている。
【0029】
上記第2搬送装置7は、隙間51を介してホットプレート3a、3b、3cの裏面側と表面との間を進退可能な薄板状の基板支持部材52と、該基板支持部材52をX方向に沿ってガイドするガイドロッド53と、該ガイドロッド53に沿って基板支持部材52をX方向に沿って移動するシリンダユニット54と、を含む。乾燥装置3は、制御部9と電気的に接続されており、各ホットプレート3a,3b,3cの駆動が制御部9により制御されている。
【0030】
塗布装置10は、基板Wを保持するチャック部20と、チャック部20に保持された基板Wに対して拡散材料(液体材料)を滴下するノズル部21と、回転中のチャック部20を収容するカップ部(飛散防止用カップ)22と、を含む。本実施形態に係る塗布装置10は、所謂スピンコータである。塗布装置10は、制御部9と電気的に接続されており、チャック部20の動作が制御部9により制御されている。
【0031】
第1搬送装置6は、基板処理装置100の一端(−Y方向)側に沿って設けられたレール60と、該レール60に沿って移動する複数の移動体61と、該各移動体61から上方(+Z方向)に昇降自在であり基板Wを支持する複数の基板支持部材62と、を含む。基板支持部材62は、基板Wを支持するための複数の支持爪63が設けられている。第1搬送装置6は、制御部9と電気的に接続されており、移動体61及び基板支持部材62の駆動が制御部9により制御されている。
【0032】
第1搬送装置6は、複数の移動体61を独立して駆動可能となっている。これら移動体61はレール60に沿って移動する際、各々が干渉しない位置に設けられている。これにより、第1搬送装置6は、例えば一の移動体61に設けられた基板支持部材62が拡散材料200の塗布後の基板Wを塗布装置10内から搬出して乾燥装置3内に搬入するタイミングと同時に、他の移動体61に設けられた基板支持部材62が搬入部1から別の基板Wを塗布装置10内に搬入することが可能となっている。これにより、基板処理装置100は基板Wに対する拡散材料200の塗布工程及び乾燥工程に要するタクトを短縮している。
【0033】
第2搬送装置7は、制御部9と電気的に接続されており、シリンダユニット54の駆動が制御部9により制御されている。第2搬送装置7は、シリンダユニット54によるZ方向の伸長動作を行うことで、基板支持部材52の上端を隙間51から突出させることでホットプレート3a上の基板Wを持ち上げ、この状態でガイドロッド53に沿ってシリンダユニット54とともに基板支持部材52を下流側へ移動し、次いでシリンダユニット54を圧縮し、基板支持部材52の上端をホットプレート3aの上面より下げることで、基板Wを下流側のホットプレート3bに移し換える。このような動作を繰り返すことで、順次下流側のホットプレート3cへと基板Wを移し換えるようになっている。
【0034】
図3は、塗布装置10の要部構成を示す図である。チャック部20は基板Wを吸着保持した状態で回転可能とされており、図3に示すようにカップ部22に対して昇降可能となっている。具体的にチャック部20は、基板Wを載置する載置ポジション(基板載置位置)からカップ部22内において回転動作を行う回転ポジション(回転位置)との間で昇降可能となっている。
【0035】
カップ部22は、基板Wに滴下された拡散材の周囲への飛散を防止するためのものであり、基板Wの裏面側を洗浄する裏面洗浄ノズル22aを備えている。裏面洗浄ノズル22aは、図示しない洗浄液供給源が接続されている。この洗浄液供給源は加圧することで洗浄液を裏面洗浄ノズル22aから噴射するようになっている。
【0036】
図4はノズル部21の要部構成を示す図である。
ノズル部21は、図4に示すように、拡散材料を滴下する開口部23aが形成されたノズル23と、ノズル23を収容する収容部24と、を有している。収容部24は、図4に示すように、ノズル23に一体に設けられる蓋部24aと、該蓋部24aとともにノズル23を収容する密閉空間を形成する本体部24bと、を有している。このように収容部24は、ノズル23を密閉状態で収容することで開口部23aが乾燥するのを防止することができる。なお、蓋部24aはノズル23とともに移動し、本体部24bはノズル部21の待機位置から動くことが無い。
【0037】
ノズル23には移動機構25が設けられており、該移動機構25によってノズル23はチャック部20に対して進退可能となっている。これにより、ノズル23は基板Wのチャック部20に対する搬入方向(X方向)と平行に進退可能となっている。これにより、ノズル23の移動距離を少なくすることができ、塗布工程全体のタクトを短縮することができる。
【0038】
また、ノズル23の内部には拡散材料200を開口部23aに流通させる図示しない流通路が設けられており、この流通路には図示しない拡散材供給源が接続されている。この拡散材供給源は例えば図示しないポンプを有しており、当該ポンプで拡散材を開口部23aへと押し出すことで開口部23aから拡散材料が滴下されるようになっている。
【0039】
ここで、ノズル23から基板W上に滴下する拡散材料について説明する。
本実施形態で使用する拡散材料200に添加する不純物元素としては、13族元素として、ホウ素、ガリウム等が、15族元素として、リン、ヒ素、アンチモン等が、その他の元素として、亜鉛、銅等が挙げられる。そして、上記不純物元素は、酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩等の無機塩、酢酸等の有機酸の塩の形で膜形成組成物に添加することができる。具体的には、P、NH・PO、(RO)P、(RO)P(OH)、(RO)PO、(RO)(OH)、(RO)P(OH)等のリン化合物、B、(RO)B、RB(OH)、RB(OH)等のホウ素化合物、HSbO、(RO)Sb、SbX、SbOX、SbX等のアンチモン化合物、HAsO、HAsO、(RO)As、(RO)As、(RO)As(OH)、RAsO、RAs=AsR等のヒ素化合物、Zn(OR)、ZnX、Zn(NO等の亜鉛化合物、(RO)Ga、RGa(OH)、RGa(OH)、RGa〔OC(CH)=CH−CO−(CH)〕等のガリウム化合物等が挙げられる(ただし、Rはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基、Xはハロゲン原子を表す)。これらの化合物の中では、酸化ホウ素、酸化リン等を好ましく用いることができる。
【0040】
本実施形態に係る拡散材料200は、拡散と同時に基板上への絶縁膜、平坦化膜、又は保護膜の形成するために、RSi(OR4−nで表されるアルコキシシランのうちの少なくとも一種を出発原料とする加水分解・縮合重合物を含んでも良い。(式中、Rは水素原子、又は1価の有機基であり、Rは1価の有機基であり、nは1〜3の整数を示す。)
【0041】
ここで、1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基を挙げることができる。これらの中では、アルキル基及びアリール基が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。また、アルキル基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、水素がフッ素により置換されていてもよい。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0042】
(i)n=1の場合、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、及びモノプロピルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン、モノフェニルトリオキシシラン、及びモノフェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン等。
【0043】
(ii)n=2の場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルプロポキシシラン、ジプロピルメトキシシラン、及びジプロピルエトキシシラン等のジアルキルアルコキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、及びジフェニルエトキシシラン等のジフェニルアルコキシシラン等。
【0044】
(iii)n=3の場合、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、及びトリプロピルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等のトリフェニルアルコキシシラン等。
【0045】
これらの中では、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、及びモノメチルトリプロポキシシラン等のモノメチルトリアルコキシシランを好ましく用いることができる。
【0046】
本実施形態に係る拡散材料200は、膜厚及び塗布成分の均一性、及び塗布性を向上させるために、溶剤を含有させることが好ましい。この場合、溶剤としては、従来用いられている有機溶剤を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び3−メトキシ−1−ブタノール等の1価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、及びエチル−3−エトキシプロピオネート等のアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセエート等の多価アルコール誘導体;酢酸、及びプロピオン酸等の脂肪酸;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトンを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0047】
続いて、基板処理装置100の動作について説明する。本発明は、拡散材料200の塗布方法に特徴を有していることから、主に塗布装置10による半導体基板W上への拡散材料の塗布工程について説明する。
【0048】
図5は塗布装置10による拡散材料の塗布工程を示すフローチャートを示す図である。
塗布装置10における拡散材料の塗布工程は、基板載置位置にあるチャック部20に対して基板Wを載置する載置工程S1と、基板Wを載置したチャック部20を基板載置ポジションからカップ部22内で回転動作を行う回転ポジションへと移動する移動工程S3と、回転ポジションにおいてチャック部20が回転する回転工程S4とを含み、さらに載置工程S1と移動工程S3との間に、チャック部20に載置された基板Wの表面に拡散材料を滴下する滴下工程S2を有している。
【0049】
以下、図6を参照しつつ、塗布工程について説明する。
まず、図6(a)に示すように、基板処理装置100は搬入部1に搬入された基板Wを第1搬送装置6により塗布装置10へと受け渡す(載置工程S1)。このとき、チャック部20は基板支持部材62により搬送される基板Wを載置する載置ポジションまで上昇している。このとき、基板処理装置100は、次の塗布工程に備えて、搬入部1内に他の基板Wを搬入しておく。
【0050】
本実施形態では、基板Wをチャック部20に載置するタイミングと同時にノズル部21を基板Wに対向させるようにしている。このように基板Wがチャック部20に載置されるタイミングと同時にノズル部21が基板Wに対向するため、ノズル部21がチャック部20まで移動する際の待ち時間を無くしている。
【0051】
制御部9は、基板Wが載置されると該基板Wを吸着保持するようにチャック部20を駆動し、チャック部20に載置された基板Wに対して、ノズル23の開口部23aから拡散材料200を滴下する(滴下工程S2)。
【0052】
本実施形態では、制御部9が、図6(b)に示すように、ノズル23から拡散材料200を滴下する際、チャック部20を回転させるように制御する。具体的に本実施形態では、制御部9は、50rpm以下でチャック部20を回転させる。これにより、基板Wの表面からはみ出さない範囲まで拡散材料200を広げることができる。
【0053】
次に、制御部9は、図6(c)に示すようにチャック部20を回転させた状態のまま下降させ、カップ部22内に移動する(移動工程S3)。このとき、制御部9はノズル23をチャック部20に対向する位置から待機位置まで退避させる。ノズル23は、待機位置において蓋部24aと本体部24bとが当接することで構成される収容部24内に収容されることとなる(図4参照)。
【0054】
そして、制御部9は、図6(d)に示すようにチャック部20をカップ部22内に配置し、チャック部20がカップ部22に収まると同時に4000rpm以上の回転数且つ5秒以内回転させる(回転工程S4)。これにより、基板Wの表面から拡散材料200を振り切ることができる。
【0055】
チャック部20は、例えば50rpm以下の回転数から4000rpm以上の回転数へと1.0秒以内に加速するとともに、回転動作の停止時には4000rpm以上の回転数から回転数0rpmへと0.5秒以内に減速するのが望ましい。これにより、基板W上に拡散材料200を良好に塗り広げることができる。
【0056】
なお、基板Wから拡散材料200がはみ出さないように50rpm以下の回転速度から4000rpmまでゆるやかな加速をしつつ、移動工程S3を行う構成を採用することもできる。このようにすれば、移動工程S3から回転工程S4への移行をスムーズに行うことができ、塗布工程のタクトを短縮できる。
【0057】
本実施形態では、チャック部20が回転するのと同時に裏面洗浄ノズル22aから基板Wの裏面に洗浄液としてアルコールを噴射する所謂バックリンス処理を行うようにしている。洗浄液の噴射は、チャック部20の回転開始から3秒以内で行う。当該洗浄液としてのアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び3−メトキシ−1−ブタノール等の炭素数1〜5のアルコールが挙げられる。
【0058】
これにより、基板Wの裏面では、洗浄液が遠心力の働きにより基板Wの外周端部へと拡がることで、拡散材料200が基板の裏面側に回りこむのを防止することができる。よって、回転工程の後、基板Wの裏面を洗浄する工程を設ける必要が無くなる。よって、塗布装置10の処理に要するタクトを短縮することができる。
【0059】
回転工程の終了後、チャック部20が上昇することでカップ部22内から退避する。続いて、制御部9は第1搬送装置6の基板支持部材62を駆動し、チャック部20から基板Wを受け取り、乾燥装置3内に搬送する。そして、基板W上の拡散材料200が乾燥される。
【0060】
本実施形態では、拡散材料200を塗布した基板Wをチャック部20から搬出した後、制御部9は他の基板Wを搬入部1から塗布装置10へと受け渡す。このとき、制御部9は第1搬送装置6の他の基板支持部材62を用いて基板Wをチャック部20に載置する。そして、乾燥装置3内に拡散材料200を塗布済みの基板Wを搬入している間に、塗布装置10内では基板Wに対して、同様に拡散材料200を塗布しておく。
【0061】
続いて、制御部9は、基板Wを乾燥装置3内に搬入する。乾燥装置3では、一枚の基板Wに対してホットプレート3a,3b,3cを用いて150℃で10秒間ずつ乾燥処理を行う。このような構成に基づき、基板処理装置100は乾燥装置3内に基板Wを10秒毎に搬入することが可能となっており、塗布装置10から搬出される基板Wを乾燥装置3内に順次搬送することで処理速度を大幅に向上させている。
【0062】
具体的に基板処理装置100は、まず拡散材料200を塗布した基板Wを最上流に位置するホットプレート3aに載置する。ホットプレート3aは基板Wを150℃で10秒間乾燥する。その後、制御部9はシリンダユニット54を圧縮し、基板支持部材52の上端をホットプレート3aの上面より下げることで基板Wを下流のホットプレート3bに移し換える。ホットプレート3bは基板Wを150℃で10秒間乾燥する。その後、制御部9はシリンダユニット54を圧縮し、基板支持部材52の上端をホットプレート3bの上面より下げることで、ホットプレート3bによる乾燥後の基板Wを下流のホットプレート3cに移し換える。ホットプレート3cは基板Wを150℃で10秒間乾燥する。これにより、基板Wに対し、150℃で30秒間の乾燥処理が施すことができる。
【0063】
本実施形態では基板Wをホットプレート3aからホットプレート3bに移動するとともに第1搬送装置6の基板支持部材62が塗布装置10から搬出した基板Wをホットプレート3aに載置する。また、一の基板Wをホットプレート3bからホットプレート3cに移動するとともにホットプレート3cから他の基板Wを不図示の搬出用アームが基板処理装置100内から搬出する。
【0064】
このように本実施形態では、各基板Wをホットプレート3a〜3c間に順次送ることで拡散材料200の乾燥処理を行うようにしている。これにより、基板Wの表面に拡散膜を形成することができる。
【0065】
以上述べたように、本実施形態によれば塗布装置10が基板Wをチャック部20に載置する載置工程S1と、チャック部20がカップ部22内に移動する移動工程S3との間にノズル23から基板W上に拡散材料200を滴下する滴下工程S2を行う構成としたので、拡散材料200を基板Wに塗布する塗布工程におけるタクトの短縮を図ることができる。また、滴下工程S2のタイミングを制御することで、塗布装置10として従来のスピンコータと同様の構成のものを採用することができる。よって、基板処理装置100のコストを抑えることができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、チャック部20を回転させるのと同時に、基板Wの裏面に対して洗浄液を供給する場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、ノズル23から基板W上に滴下する拡散材料200の粘度を20cp以下に設定することで、チャック部20の回転時に基板Wに滴下した拡散材料200が基板Wの裏面に回りこむのを防止するようにしてもよい。このようにすれば、拡散材料200は粘度が低く、基板Wの回転時に基板の裏面側に回りこむことが無いので、上記洗浄液を噴射する必要が無い。
【符号の説明】
【0067】
W…基板、S1…載置工程、S2…滴下工程、S3…移動工程、S4…回転工程、10…塗布装置、20…チャック部、22…カップ部(飛散防止用カップ)、100…基板処理装置、200…拡散材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持したチャック部が回転することで液体材料を前記基板の表面に塗り広げる塗布方法において、
基板載置位置にある前記チャック部に対して基板を載置する載置工程と、
前記基板を載置した前記チャック部を前記基板載置位置から回転動作を行う回転位置へと移動する移動工程と、
前記回転位置において前記チャック部が回転する回転工程と、を含み、
前記載置工程と前記移動工程との間に、前記チャック部に載置された前記基板の表面に前記液体材料を滴下する滴下工程を有することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記滴下工程においては、前記チャック部を回転させた状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記滴下工程における前記チャック部の回転速度は、前記回転工程における前記チャック部の回転速度よりも低く設定されることを特徴とする請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記滴下工程における前記チャック部の回転速度が50rpm以下に設定されることを特徴とする請求項3に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記回転工程においては、前記チャック部が前記液体材料の飛散を防止する飛散防止用カップ内で回転することを特徴とする請求項3又は4に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記回転工程における前記チャック部の回転動作は、4000rpm以上の回転数であり、且つ5秒以内で行われることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項7】
前記基板に前記液体材料を滴下するノズルを前記チャック部に対して進退させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記ノズルにおける進退方向は、前記基板の前記チャック部に対する搬入方向と平行であることを特徴とする請求項7に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記基板を前記チャック部に載置するタイミングと同時に前記ノズルを前記基板に対向させることを特徴とする請求項7又は8に記載の塗布方法。
【請求項10】
前記回転工程においては、前記基板の裏面を洗浄するバックリンス処理を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項11】
前記液体材料として、粘度が20cp以上の材料を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項12】
前記基板が太陽電池用基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項13】
基板を回転させることで前記基板の表面に液体材料を塗り広げる塗布装置において、
前記基板に前記液体材料を滴下するノズルと、
前記基板を保持した状態で回転可能であり、前記基板を載置する基板載置位置と前記回転を行う回転位置との間で昇降動作を行うチャック部と、
前記チャック部が前記回転位置への移動を開始する前のタイミングで、前記基板載置位置にある該チャック部に載置された前記基板の表面に前記液体材料を滴下するように前記ノズルを制御する制御部と、を備えることを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30159(P2012−30159A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170475(P2010−170475)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】