説明

塗布装置及びこれを用いるインクジェット記録装置

【課題】高粘度の機能性液体を高速で、均一に塗布することができる塗布装置を提供すること。
【解決手段】機能性液体を貯留すると液受け皿と、液受け皿の機能性液体に表面の一部が浸漬され、機能性液体を保持する複数の凹部を備える塗布ローラと、塗布ローラを回転させる塗布ローラ回転手段と、液受け皿に貯留された塗布ローラとの接触する領域の機能性液体を、塗布ローラの前記液受け皿に浸漬している部分の回転方向とは反対の方向に流す液流発生手段と、塗布ローラと接触し、機能性液体が塗布される塗布対象を搬送する搬送手段とを有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を塗布する塗布装置の分野に属し、より詳しくは、ローラを用いて対象に機能性液体を塗布する塗布装置及びその塗布装置を用いるインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体上に画像を形成する方法としては、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出させ、画像を形成する方法がある。
このインクジェットヘッドを用いた画像記録装置としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたインクジェット記録装置がある。
特許文献1には、活性光線により硬化する化合物を有するインクをインクジェット法により被記録媒体に印字し、硬化させるインクジェット記録方法において、2色以上のインクにより画像形成を行い、かつ画像形成に要するインクの全てを吐出した後、10秒以内に該活性光線を照射するインクジェット記録方法を用いるインクジェット記録装置が記載されている。また、特許文献2には、インクジェットヘッドとして、従来知られている任意の多チャンネルインクジェットヘッドを使用することができることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、被記録媒体に単層又は複層の塗膜層を形成し、その塗膜層が未硬化状態のときにインクジェットにより画像を形成し、その後、加熱または活性エネルギー線を用いてインクと塗膜を同時に硬化するインクジェット記録装置が記載されている。
【0004】
さらに、塗布対象物に機能性液体を塗布する装置としては、特許文献3に、塗布液(機能性液体)を溜めた塗布液受けパンと、該塗布液受けパンの塗布液中に一部が浸漬され、かつ、凹状のセルが形成された塗布ロールと、塗布液パンに超音波を当てる超音波発振装置とを有し、超音波発振装置により液受けパン内の塗布液に振動を与えつつ、塗布ロールで塗布対象物に塗布液を塗布する装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−11341号公報
【特許文献2】特開平03−222749号公報
【特許文献3】特開2003−19453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、インクジェット記録装置では、被記録媒体上に画像を記録する際、被記録媒体の種類によっては、被記録媒体の表面エネルギーにより滲みが発生することや、特許文献1に記載のインクジェット記録装置のように、被記録媒体上に連続してインク液滴と吐出させ、ドットを隣接させもしくは重ねて打滴すると被記録媒体上のインク液滴同士がその表面張力によって合一してしまい、所望のドットを形成できなくなるブリード(着弾干渉)が発生し、画質が低くなってしまうという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献2に示すように被記録媒体上に機能性液体を塗布し塗膜層を形成することで、種々の記録媒体に画像を形成することが可能となる。
しかしながら、被記録媒体上に塗膜層を形成する場合は、塗膜層に塗布ムラがあると、画像ムラとなるため問題となる。
【0008】
これに対して、特許文献3に記載された塗布装置のように、塗布ロールとして凹状のセルが形成された、いわゆるグラビアローラを用い、超音波により機能性液体を振動させながら、塗布ロールのセルに機能性液体を充填することで、塗布ロールに含浸させる機能性液体の量を一定にすることができ、被記録媒体上に均一な塗布層を形成することができる。
しかしながら、特許文献3に記載された塗布装置を用いた場合でも、被記録媒体の搬送速度が高速となり、機能性液体を高速で塗布する場合や、機能性液体としてより高い粘度の液体を使用する場合には、塗布ムラが発生するという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録装置のように未硬化状態の塗膜層に画像を形成すると、隣接して打適したドット間に未硬化塗膜液が介在し、良好に画像を形成することができず、色再現性が悪い画像となるという問題もある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、高粘度の機能性液体を高速で、均一に塗布することができる塗布装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、高画質、高品質な印刷物を高速で提供することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の第1の形態は、機能性液体を貯留すると液受け皿と、前記液受け皿の前記機能性液体に表面の一部が浸漬され、前記機能性液体を保持する複数の凹部を備える塗布ローラと、前記塗布ローラを回転させる塗布ローラ回転手段と、前記液受け皿に貯留された前記塗布ローラとの接触する領域の前記機能性液体を、前記塗布ローラの前記液受け皿に浸漬している部分の回転方向とは反対の方向に流す液流発生手段と、前記塗布ローラと接触し、前記機能性液体が塗布される塗布対象を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする塗布装置を提供するものである。
【0012】
ここで、第1の態様の塗布装置は、さらに、前記塗布ローラ及び機能性液体の少なくとも一方を振動させる加振手段を有することが好ましい。
また、前記加振手段は、前記液受け皿に配置され、前記液受け皿に貯留された前記機能性液体に超音波を印加する超音波発生手段であることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の第2の形態は、機能性液体を貯留すると液受け皿と、前記液受け皿の前記機能性液体に表面の一部が浸漬され、前記機能性液体を保持する複数の凹部を備える塗布ローラと、前記塗布ローラを回転させる塗布ローラ回転手段と、前記液受け皿の前記機能性液体が貯留された領域内に設置され、前記塗布ロールと当接するブラシと、前記塗布ローラと接触し、前記機能性液体が塗布される塗布対象を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする塗布装置を提供するものである。
【0014】
ここで、第2の態様の塗布装置は、さらに、前記ブラシを前記塗布ロールの回転方向と同一方向に回転させるブラシ回転部を有することが好ましい。
また、第1及び第2の態様の塗布装置は、前記塗布ローラ回転手段は、前記搬送手段が前記塗布対象を搬送する方向とは反対方向に前記塗布ローラを回転させることが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、前記塗布対象物は、被記録媒体であり、かつ、前記機能性液体は下塗り液であり、上記のいずれかに記載の塗布装置と、前記被記録媒体の搬送方向において、前記塗布装置の下流に配置され、少なくとも色材を含んだインクを吐出して前記下塗り液が付与された前記被記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドを有する画像形成手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置提供するものである。
【0016】
ここで、第2の形態のインクジェット記録装置は、前記下液塗り液は、前記被記録媒体に前記活性エネルギー線が照射されることにより硬化する液体であり、前記塗布装置の前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置され、前記被記録媒体に塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射し、前記被記録媒体上に塗布された下塗り液を半硬化させる下塗り液半硬化手段を有することが好ましい。
また、前記インクジェットヘッドから吐出されるインクは、活性エネルギー線を照射することで、硬化するインクであり、前記画像形成手段は、さらに、前記被記録媒体の搬送方向において、前記インクジェットヘッドの下流側に配置され、前記被記録媒体上に形成された画像に活性光線を照射し、前記画像を構成するインクを硬化する画像硬化手段を有することが好ましい。
また、前記画像形成手段は、異なる色のインクを吐出する少なくとも2つの前記インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの間に配置され、前記被記録媒体の搬送方向上流側の前記インクジェットヘッドにより形成された前記画像を構成するインクを半硬化させるインク半硬化手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液受け皿に貯留された塗布ローラとの接触する領域の機能性液体を、塗布ローラの液受け皿に浸漬している部分の回転方向とは反対の方向に流すこと、もしくは、液受け皿の機能性液体が貯留された領域内に設置され、塗布ロールと当接するブラシを配置することで、塗布ローラにむらなく機能性液体を付着させることが可能となり、より高粘度な機能性液体を高速で塗布対象にむらなく塗布することができる。これにより、種々の機能性液体を使用することが可能となり、かつ、高速でむらなく塗布できることで、均一な機能性液体の層を形成しつつ、製造速度を向上させることができる。
【0018】
また、高速で均一な下塗層を形成し、その上に画像を形成することで、種々の被記録媒体に高速で画像を形成することができる。
さらに、下塗層を半硬化させ、半硬化した下塗層の上に画像を形成することで、高画質で高品質な画像を形成することができる。これにより、高速でより高品質、高画質な印刷物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るに塗布装置及びインクジェット記録装置について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の塗布装置を下塗部として用いる本発明のインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す正面図であり、図2は、図1に示すインクジェット記録装置の下塗部13の概略構成を拡大して示す正面図である。
尚、以下の各実施形態において、活性光線(活性エネルギー線ともいう)の照射によって硬化する活性光線硬化型インク(活性エネルギー線硬化型インクともいう)のうち紫外線硬化型インクを使用する活性光線硬化型インクジェット記録装置を例に説明するが、本発明は、これに限定されることはなく、各種活性光線硬化型インクを用いるインクジェット記録装置に適用することができる。
【0021】
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、被記録媒体Pを搬送する搬送部12と、被記録媒体Pに下塗り液を塗布する下塗部13と、被記録媒体Pに塗布された下塗り液を半硬化させる下塗り液半硬化部14と、被記録媒体P上に画像を記録する画像記録部16と、被記録媒体P上に記録された画像を定着させる画像定着部18と、画像記録部16のインク液滴の吐出を制御する制御部20とを有する。
また、インクジェット記録装置10の制御部20には、入力装置22が接続されている。入力装置22としては、スキャナ等の画像読取装置や、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置等の画像データを送信する種々の装置を用いることができる。また、入力装置22と制御部20との接続方法は、有線、無線を問わず種々の接続方法を用いることができる。
【0022】
搬送部12は、供給ロール30と、搬送ロール32、搬送ロール対34と、回収ロール36とを有し、被記録媒体Pを供給し、搬送し、回収する。
供給ロール30は、ロール状に巻きつけられている連続紙状の被記録媒体Pを有し、被記録媒体Pを供給する。
搬送ロール32は、被記録媒体Pの搬送方向において、供給ロール30の下流側に配置され、供給ロール30から送り出された被記録媒体Pを、搬送方向下流側に搬送する。
搬送ロール対34は、一対のロール対であり、被記録媒体Pの搬送経路において、搬送ロール32の下流側に配置され、搬送ロール32を通過した被記録媒体Pを挟持して、搬送方向下流側に搬送する。
回収ロール36は、被記録媒体Pの搬送経路の最下流に配置されている。回収ロール36は、供給ロール30から供給され、さらに搬送ロール32,搬送ロール対34により搬送されて後述する下塗部13、下塗り液半硬化部14、画像記録部16、画像定着部18に対向する位置を通過した被記録媒体Pを巻き取る。
また、搬送ロール32、搬送ロール対34及び回収ロール36は、図示しない駆動部と接続され、駆動部により回転される。
【0023】
次に、搬送部12の各部の配置位置関係について説明し、被記録媒体Pの搬送経路について説明する。
供給ロール30は、鉛直方向において、搬送ロール32、搬送ロール対34及び回収ロール36よりも下側で、かつ、水平方向において、搬送ロール32よりも回収ロール36側に配置されている。また、搬送ロール32、搬送ロール対34及び回収ロール36は、水平方向と平行な方向に直線で配置されている。また、供給ロール30と搬送ロール32との間には、後述する下塗部13の被記録媒体Pと当接する位置決め部68が配置されており、この位置決め部68は、供給ロール30よりも鉛直方向下側に配置されている。
【0024】
搬送部12は、以上のような構成であり、被記録媒体Pは、供給ロール30から、回収ロール36から引き出され、離れる方向、かつ、斜め下向き方向に搬送される。ここで、供給ロール30から引き出された被記録媒体Pは、画像記録面が下向きになる向きで搬送される。
その後、被記録媒体Pは、位置決め部68の通過時に水平とされ、その後、搬送ロール32に向けて、回収ロール36から離れる方向、かつ、斜め上向き方向に搬送される。その後、被記録媒体Pは、搬送ロール32で搬送方向を変え、搬送ロール32通過後は、水平方向に回収ロール36に向けて搬送され、回収ロール36で巻き取られる。
【0025】
下塗部13は、供給ロール30と搬送ロール32との間に、つまり、被記録媒体Pの搬送方向において、供給ロール30の下流側、かつ、搬送ロール32の上流側に配置されている。
図2に示すように、下塗部13は、被記録媒体Pに下塗り液を塗布する塗布ロール60と、塗布ロール60を回転させる駆動部62と、塗布ロール60に下塗り液を供給する貯留皿(液受け皿)64と、塗布ロール60に付着する下塗り液の量を調整するブレード66と、塗布ロール60に対して被記録媒体Pが所定位置となるように被記録媒体Pを支持する位置決め部68と、貯留皿64に貯留された下塗り液を循環させる循環部74と、貯留皿64に貯留され下塗り液に超音波を印加する超音波発生部76とを有する。
【0026】
塗布ロール60は、被記録媒体Pの搬送経路において供給ロール30と搬送ロール32との間に配置され、供給ロール30と搬送ロール32との間を搬送される被記録媒体Pの下側に向いている面(被記録媒体Pの画像が形成される側の面)に当接している。
塗布ロール60は、被記録媒体Pの幅よりも長いロールであり、かつ、その表面(外周面)に一定間隔毎に、つまり、均等に凹部が形成されている、いわゆるグラビアロールである。ここで、塗布ロール60に形成する凹部の形状は特に限定されず、丸、矩形、多角形、星型等の種々の形状とすることができる。また、凹部は、塗布ロールの全周に溝状に形成してもよい。
【0027】
駆動部62は、モータ、モータの回転を塗布ロール60に伝えるギア等で構成される駆動機構であり、塗布ロール60を回転させる。なお、駆動部62は、本実施形態に限定されず、プーリー駆動、ベルト駆動、ダイレクト駆動等の塗布ロール60を回転させる種々の駆動機構を用いることができる。
駆動部62は、図1及び図2に矢印で示すように、塗布ロール60を接触位置における被記録媒体Pの搬送方向とは、逆の方向に回転させる(図1及び図2中時計周り)。
【0028】
貯留皿64は、上面が開放された皿形状を有し、内部には、下塗り液が貯留されている。貯留皿64は、塗布ロール60の下側に、塗布ロール60に近接して配置されており、塗布ロール60の一部を貯留されている下塗り液に浸漬させている。また、貯留皿64には、必要に応じて図示しない供給タンクから下塗り液が供給される。
【0029】
ブレード66は、塗布ロール60の表面に当接して配置されている。より具体的には、ブレード66は、塗布ロール60の回転方向において、貯留皿64の下流側で、かつ、被記録媒体Pの上流側に配置され、塗布ロール60の貯留皿64に浸漬され、かつ、被記録媒体Pと接触する前の部分と接触している。
ブレード66は、貯留皿64に浸漬して塗布ロール60に付着した下塗り液のうち必要以上に付着した下塗り液を掻き落とし、塗布ロール60に付着した下塗り液の付着量を一定量にする。本実施形態では、ブレード66は、塗布ロール60の表面に形成されている凹部に保持された下塗り液を除いて、塗布ロール60の他の部分に付着した下塗り液を掻き落とし、塗布ロール60の被記録媒体Pと接触する部分に保持されている下塗り液を、実質的に凹部に保持されている下塗り液のみとする。
ブレード66により、塗布ロール60の表面に付着した余分な下塗り液(余剰液)を掻き取り、塗布ロール60の表面に付着した下塗り液を一定量とすることで、被記録媒体上に下塗り層をより均一に形成することができる。
【0030】
位置決め部68は、位置決めロール70及び72を有し、塗布ロール60と接触する位置の被記録媒体Pが所定の位置となるように被記録媒体Pを支持する。
位置決めロール70及び72は、それぞれ被記録媒体Pを介して塗布ロール60とは反対側に、被記録媒体Pの搬送方向において塗布ロール60を挟むように、塗布ロール60の上流側と下流側にそれぞれ配置され、被記録媒体Pの画像が形成される面(下塗り液が塗布される面)とは反対側の面から、被記録媒体Pを支持する。
また、位置決めロール70及び72は、供給ロール30と搬送ロール32を直線で結んだ直線よりも外側(被記録媒体Pの搬送経路を長くする側)に突出しており、搬送されている被記録媒体Pに一定の張力を付加し、被記録媒体Pの位置ずれを防止している。
【0031】
循環部74は、塗布ローラ60の回転軸と平行な、貯留皿64の一方の側面に接続された第1管路77と、他方の側面に接続された第2管路78と、第1管路77及び第2管路78と接続されたポンプ79とを有し、貯留皿64に貯留された下塗り液を循環させる。
ポンプ79は、第2管路78から下塗り液を吸引して第1管路77から排出する。これにより、循環部74と貯留皿64との間では、下塗り液が貯留皿64、第1管路77、ポンプ79、第2管路78、貯留皿64の順(図2中矢印方向)で循環する。
循環部74は、貯留皿64内の下塗り液に浸漬している部分の塗布ローラ60の回転方向(つまり、塗布ローラ60の移動方向)とは逆方向に所定の速度で、下塗り液を循環させている(つまり、下塗り液を流している)。
【0032】
超音波発生部76は、超音波洗浄器に用いられるような超音波発振器等の超音波を発生する機構であり、貯留皿64の底面に配置されている。超音波発生部76は、貯留皿64内に貯留されている下塗り液に超音波を印加し、下塗り液を振動させる。
ここで、超音波発生部76からの超音波の周波数としては、20kHz〜50kHzであることが好ましい。
【0033】
下塗部13は、以上のような構成であり、駆動部62が、塗布ロール60を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させる。回転している塗布ロール60の表面は、貯留皿64に貯留された下塗り液に浸漬される。さらに、塗布ロール60が回転することで、塗布ロール60の下塗り液に浸漬された部分は、その後、ブレード66と当接し、表面に保持する下塗り液の量を一定量とされた後、被記録媒体Pと接触し、被記録媒体P上に下塗り液を塗布する。このように、塗布ロール60を被記録媒体Pの搬送方向とは逆回転させて、被記録媒体Pに下塗り液を塗布することで、平滑化され、かつ、ムラのない良好な塗布面状の下塗り液の層(以下「下塗り層」ともいう。)を被記録媒体P上に形成する。また、被記録媒体Pと接触した塗布ロール60は、さらに回転し、再び貯留皿64に浸漬される。
さらに、貯留皿64に貯留されている下塗り液は、循環器74により、貯留皿64の下塗り液に浸漬されている部分の塗布ロールの移動方向とは逆方向に所定速度で流され、かつ、超音波発生部76から超音波を印加され、振動している。
【0034】
次に、下塗り液半硬化部14について説明する。
下塗り液半硬化部14は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向して配置されている。ここで、UVランプは、紫外線を射出する光源であり、被記録媒体P側に向けて、紫外線を照射する。UVランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
【0035】
下塗り液半硬化部14は、対向する位置を通過する、表面に下塗り液が塗布された被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射し、被記録媒体Pの表面に塗布された下塗り液を半硬化状態にする。ここで、下塗り液の半硬化については後ほど詳細に説明する。
【0036】
次に、被記録媒体上にインク液滴を吐出させ画像を記録する画像記録部16及び画像記録部16で被記録媒体上に形成された画像を硬化させ、被記録媒体上に定着する画像定着部18について説明する。
【0037】
画像記録部16は、記録ヘッドユニット46と、インクタンク50とを有する。
記録ヘッドユニット46は、記録ヘッド48X、48Y、48C、48M、48K(以下5つの記録ヘッドを一度に示す場合は、単に「各記録ヘッド48」ともいう。)を有する。
各記録ヘッド48は、被記録媒体Pの搬送方向の上流から下流に向かって、記録ヘッド48X、記録ヘッド48Y、記録ヘッド48C、記録ヘッド48M、記録ヘッド48Kの順に配置されている。また、各記録ヘッド48は、それぞれのインク吐出部の先端が被記録媒体Pの搬送経路に対向して、つまり、搬送部12により搬送経路上を搬送される被記録媒体Pに対向して(以下単に「被記録媒体Pに対向して」ともいう。)配置されている。
【0038】
各記録ヘッド48は、被記録媒体Pの搬送方向に対して直交する方向、つまり、被記録媒体Pの幅方向の全域に一定間隔で多数の吐出口(ノズル、インク吐出部)が配置されたフルライン型であり、かつ、ピエゾ型のインクジェットヘッドであり、後述する制御部20及びインクタンク50に接続されている。各記録ヘッド48は、制御部20によりインク液滴の吐出量、吐出タイミングが制御される。また、記録ヘッド48X、48Y、48C、48M、48Kは、それぞれ特色(X)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(K)のインクを吐出する。
搬送部12により被記録媒体Pを搬送しつつ、各記録ヘッド48から特色(X)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(K)のそれぞれの色インクを被記録媒体Pに向けて吐出することにより被記録媒体P上にカラー画像を形成することができる。
【0039】
本実施形態では、記録ヘッドをピエゾ素子(圧電素子)方式としたが、これに限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒーターなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式の記録ヘッドを用いることも適用できる。
ここで、記録ヘッド48Xから吐出させる特色インクとしては、白、橙、紫、緑等の種々のインクを用いることができる。
なお、本実施形態の記録ヘッドから吐出されるインクは、紫外線硬化型インクである。
【0040】
インクタンク50は、各記録ヘッド48に対応して設けられている。各インクタンク50は、記録ヘッドに対応して各色のインクが貯蔵しており、貯蔵しているインクを対応している各記録ヘッド48に供給する。
【0041】
また、被記録媒体の画像が形成されない面側の各記録ヘッド48に対向する位置には、板状のプラテン56が配置されている。
プラテン56は、各記録ヘッドに対向する位置を搬送される被記録媒体Pを、画像が形成されない面側、つまり、被記録媒体Pの記録ヘッドユニット46が配置されている面とは反対側の面から支持する。これにより被記録媒体Pと各記録ヘッドとの距離を一定にすることができ、被記録媒体P上に高画質な画像を形成することができる。
なお、プラテン56の形状は、平板に限定されず、記録ヘッド側に凸の曲面形状としてもよい。この場合、各記録ヘッド48は、プラテンとの距離が一定となるように配置される。
【0042】
次に、画像定着部18は、複数の紫外線照射ユニット52と、最終硬化用紫外線照射ユニット54とで構成され、記録ヘッドユニット46により被記録媒体P上に形成された画像に紫外線を照射し、画像(つまり、インク)を半硬化または硬化させ、画像を定着させる。
【0043】
複数の紫外線照射ユニット52は、被記録媒体Pの搬送経路において、それぞれ記録ヘッド48X、48Y、48C、48Mの下流側に配置されている。さらに、最終露光用紫外線照射ユニット54は、被記録媒体Pの搬送経路において、記録ヘッド48Kの下流側に配置されている。つまり最終露光用紫外線照射ユニット54は、被記録媒体Pの搬送経路において、最も下流側に配置されている記録ヘッドの下流側に配置されている。
【0044】
つまり、各記録ヘッドと各紫外線照射ユニット52、最終露光用紫外線照射ユニット54とは、図1に示すように、搬送経路の上流から下流に向けて、記録ヘッド48X、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Y、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48C、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48M、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48K、最終硬化用紫外線照射ユニット54の順に配置されている。
【0045】
ここで、紫外線照射ユニット52と、最終硬化用紫外線照射ユニット54とは、装置の大きさ、紫外線を照射する対象が異なる、具体的には、紫外線照射ユニット52は、各記録ヘッドにより形成された画像を硬化させ、最終露光用紫外線ユニット54は、他の紫外線照射ユニットよりも強度の強い光を照射し、被記録媒体P上に塗布された下塗り液及び各種インクの画像を確実に硬化させる点が異なるのみで、装置構成は、基本的に紫外線照射ユニット52と同様であるので、代表して紫外線照射ユニット52を用いて説明する。
また、各紫外線照射ユニット52は、同様の構成であるので、1つの紫外線照射ユニット52について説明する。
【0046】
紫外線照射ユニット52は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向し、被記録媒体Pの幅方向に延在して配置されている。
UVランプは、紫外線を射出する光源であり、被記録媒体P側に向けて、紫外線を照射する。UVランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
紫外線照射ユニット52は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射し、被記録媒体P上に着弾されたインクを半硬化させる。
また、最終硬化用紫外線照射ユニット54は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射し、被記録媒体P上に着弾されたインク及び下塗り層を硬化させる。
【0047】
次に、制御部20は、記録ヘッドユニット46の各記録ヘッド48と接続しており、入力装置22から送られた画像データを描画信号とし、各記録ヘッド48のインク吐出/非吐出を制御し、被記録媒体P上が画像を形成させる。
インクジェット記録装置10は基本的に以上のような構成である。
【0048】
ここで、下塗り液の半硬化及びインクの半硬化について説明する。
本発明において、「下塗り液の半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。なお、被記録媒体(基材)P上に塗布された下塗り液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよく、下塗り液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。ここで、本実施形態において、半硬化させる下塗り液は、下塗り層を形成している下塗り液である。
【0049】
例えば、空気中又は部分的に不活性ガスで置換した空気中で、ラジカル重合性の下塗り液を硬化させると、酸素のラジカル重合抑制作用のために、下塗り液の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、下塗り液の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
【0050】
本発明において、ラジカル光重合性の下塗り液を、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化することで、下塗り液の硬化度は外部よりも内部の方が高くすることができる。
【0051】
また、湿気を有する空気中で、カチオン重合性の下塗り液を硬化させる場合にも、水分のカチオン重合阻害作用があるために、下塗り液の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
このカチオン重合性の下塗り液を、カチオン重合阻害作用がある湿度条件下で使用して、部分的に光硬化することでも、下塗り液の硬化度は外部よりも内部の方が高くすることができる。
【0052】
このように、下塗り液を半硬化させ、半硬化の状態の下塗り液上にインク液を打滴させると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果を得ることができる。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0053】
以下、下塗り液(つまり、下塗り液で被記録媒体上に形成された下塗り層)の半硬化について、詳細に説明する。なお、以下では、被記録媒体P上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pLのインク液(つまり、インク液滴)を打滴した場合の高濃度部分を一例として説明する。
図3は、半硬化された下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図4(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図4(C)は、完全に硬化させた状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【0054】
本発明によれば、下塗り液は半硬化されることで、被記録媒体P側の硬化度が表面層の硬化度よりも高くなる。この場合には、3つの特徴が観察される。すなわち、図3に示すように半硬化された下塗り液Uにインク液dを打滴すると、(1)インク液dの一部は、下塗り液Uの表面に出ている、(2)インク液dの一部は下塗り液Uに潜り込んでいる、かつ、(3)インク液dの下側と被記録媒体Pの間には下塗り液が存在する。
このように、下塗り液にインク液を打滴した時、下塗り液とインク液とが上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、下塗り液が半硬化状態であると言える。
下塗り液を半硬化させること、つまり、上記の(1)、(2)及び(3)を満たすように下塗り液を硬化させることで、高密度に打液されたインク液の液滴(つまり、インク液滴)が相互に繋がってインク液の膜層(つまり、インク液膜、インク層)を形成し、均一で高い色濃度を与える。
【0055】
これに対して、未硬化状態の下塗り液にインク液を打滴した場合は、図4(A)に示すようにインク液dの全部が下塗り液Uに潜り込むか、および/または、図4(B)に示すようにインク液dの下層には下塗り液Uが存在しない状態となる。
この場合は、高密度にインク液を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる。
【0056】
また、完全に硬化した下塗り液にインク液を打滴した場合は、図4(C)に示すように、インク液dは下塗り液Uに潜り込まない状態となる。
この場合は、打滴干渉の発生し、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性を高くすることができない(つまり色再現性の低下を招く)。
【0057】
ここで、高密度にインク液の液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液の膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの下塗り液(つまり下塗り層)の未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液の最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、下塗り液層の未硬化部の単位面積当たりの重量M(M(下塗り液)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量m(m(インク液)ともいう。)との関係は、(m/30)<M<mを満たすことが好ましく、(m/20)<M<(m/3)を満たすことがさらに好ましく、(m/10)<M<(m/5)を満たすことが特に好ましい。ここで、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量とは、1色当たりの最大重量である。
(m/30)<Mとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、M<mとすることで、インク液の液層を均一に形成でき、濃度の低下を防止できる。
【0058】
ここで、単位面積当たりの下塗り液の未硬化部の重量は、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の下塗り液に押し当てて、浸透媒体に転写した下塗り液の量を重量測定によって測定し、測定した値を下塗り液の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液の最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mは、0.04g/cmとなる(なお、インク液の密度は、約1.1g/cmとする。)。従って、この場合は、下塗り液の単位面積当たりの未硬化部の重量Mを、0.0013g/cmより大きく0.04g/cm未満とすることが好ましく、0.002g/cmより大きく0.013g/cm未満とすることがさらに好ましく、0.004g/cmより大きく0.008g/cmとすることが特に好ましい。
【0059】
次に、本発明において、「インクの半硬化」とは、下塗り液の場合と同様であり、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、インク液(つまり、インク、着色液)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。なお、下塗り液上に吐出されたインク液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよく、インク液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。ここで、本実施形態において、半硬化させるインク液は、下塗り層または被記録媒体に着弾しインク層を形成するインク液滴である。
【0060】
インク液を半硬化させ、半硬化の状態のインク液上にこれとは色相の異なるインク液を打滴させると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果を得ることができる。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0061】
以下、インク液(つまり、被記録媒体または下塗り層上に着弾させたインク液滴、または着弾させたインク液滴により形成したインク層)の半硬化について説明する。
図5は、半硬化されたインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体を示す模式的断面図であり、図6(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図6(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
インク液dを打滴した後に、インク液dの上にインク液dを打滴して2次色を形成する時は、半硬化状態のインク液d上にインク液dを付与することが好ましい。
ここで、インク液dの半硬化状態とは、上述した下塗り液の半硬化状態と同様であり、図5に示すように、インク液d上にインク液dを打滴した場合に、(1)インク液dの一部がインク液dの表面に出ており、(2)インク液dの一部がインク液dに潜り込み、かつ、(3)インク液dの下層にはインク液dが存在する状態である。
このようにインク液を半硬化させることで、インク液dの硬化膜(着色膜A)及びインク液dの硬化膜(着色膜B)を好適に積層させることができ、良好な色再現が可能となる。
【0062】
これに対して、未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図6(A)に示すようにインク液dの全部がインク液dに潜り込むか、および/または、図6(B)に示すようにインク液dの下層にはインク液dが存在しない状態となる。この場合は、高密度にインク液d液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる。
【0063】
また、完全に硬化したインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図6(C)で示すようにインク液dはインク液dに潜り込まない状態となる。この場合は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性の低下を招く
【0064】
ここで、高密度にインク液dの液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液dの膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液dの最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、インク液d層の未硬化部の単位面積当たりの重量Mda(M(インク液A)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mdb(m(インク液B)ともいう。)との関係は、(mdb/30)<Mda<mdbを満たすことが好ましく、(m(db/20)<Mda<(mdb/3)を満たすことがさらに好ましく、(mdb/10)<Mda<(mdb/5)を満たすことが特に好ましい。
(mdb/30)<Mdaとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、Mda<mdbとすることで、インク液dの膜層を均一に形成ができ、濃度の低下を防止できる。
【0065】
ここで、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の重量は、上述した下塗り液の場合と同様に、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギー線の照射後)であってインク液dの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態のインク液d層に押し当てて、浸透媒体に転写したインク液dの量を重量測定によって測定し、測定した値をインク液の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液dの最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液dの最大重量mdbは、0.04g/cmとなる(なお、インク液dの密度は、約1.1g/cm3とする。)。従って、この場合は、インク液d層の単位面積当たりの未硬化部の重量Mdaを、0.0013g/cmより大きく0.04g/cm未満とすることが好ましく、0.002g/cmより大きく0.013g/cm未満とすることがさらに好ましく、0.004g/cmより大きく0.008g/cm未満とすることが特に好ましい。
【0066】
前記下塗り液および/またはインク液の半硬化状態を活性エネルギー線の照射や加熱によって開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、非重合率(つまり、A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
【0067】
ここで、A(重合前)は、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合後)は、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度である。
例えば、下塗り液および/またはインク液の含有する重合性化合物がアクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm−1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記非重合率を定義することが好ましい。また、重合性化合物がオキセタン化合物である場合は、986cm−1付近に重合性基(オキセタン環)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、前記非重合率を定義することが好ましい。重合性化合物がエポキシ化合物である場合は、750cm−1付近に重合性基(エポキシ基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、前記非重合率を定義することが好ましい。
【0068】
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型および反射型のいずれでも良く、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RAD社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0069】
また、エチレン性不飽和化合物又は環状エーテルに基づく硬化反応の場合には、非重合率をエチレン性不飽和基又は環状エーテル基の反応率により定量的に測定することができる。
【0070】
また、下塗り液および/またはインク液を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液および/またはインク液を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調製した下塗り液および/またはインク液を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液および/またはインク液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。中でも(4)下塗り液および/またはインク液に活性エネルギー線又は熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましい。
【0071】
なお、活性エネルギー線又は熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液及び/またはインク液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行う方法である。前記下塗り液及び/またはインク液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって活性エネルギー線又は熱の付与条件を制御することにより、下塗り液及び/またはインク液の半硬化反応を起こさせることができる。
【0072】
下塗り液および/またはインク液の半硬化に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギー線によりエネルギーを付与する場合には、一般には1〜500mJ/cm程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
【0073】
活性光や加熱などの活性エネルギー線又は熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性又は架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、又は加熱によって好適に行うことができる。
【0074】
次に、インクジェット記録装置10の作用、つまり、被記録媒体Pへの記録動作を説明することで、本発明のインクジェット記録装置についてより詳細に説明する。
図7(A)〜(D)は、それぞれ被記録媒体上に画像を形成する工程を模式的に示す工程図である。
【0075】
まず、供給ロール30から送り出された被記録媒体Pは、搬送ロール32及び搬送ロール対34の回転により所定方向(図1中Y方向)に搬送される。ここで、本実施形態の被記録媒体Pは、上述したように、一定以上の長さの連続紙であり、被記録媒体Pが切れ目なく搬送される。
【0076】
供給ロール30から引き出された被記録媒体Pは、図7(A)に示すように、下塗部13の塗布ロール60と接触し、表面に下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成される。ここで、塗布ロール60は、駆動部62により被記録媒体Pの搬送方向と逆方向に回転させられている。また、塗布ロール60が浸漬している貯留皿64内の下塗り液は、塗布ロール60の回転方向とは逆方向に流され、かつ、振動させらている。
【0077】
下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成された被記録媒体Pは、搬送部12の搬送ロール32及び搬送ロール対34によりさらに搬送され、下塗り液半硬化部14に対向する位置を通過する。
図7(B)に示すように、下塗り液半硬化部14は、対向する位置を通過する下塗り液が塗布された被記録媒体Pに紫外線を照射し、被記録媒体P上の下塗り層Uを半硬化させる。
【0078】
下塗り液を半硬化した被記録媒体Pは、搬送部12の搬送ロール32及び搬送ロール対34によりさらに搬送され、記録ヘッド48Xに対向する位置を通過する。
記録ヘッド48Xは、吐出口からインク液滴を吐出させ、搬送部12により搬送され対向する位置を通過する被記録媒体P上に画像を形成する。
具体的には、記録ヘッド48Xは、被記録媒体P上に第1のインク液滴d1を吐出させる。記録ヘッド48Xから吐出された第1のインク液滴d1は、図7(C)に示すように、下塗り層Uの表面に着弾する。ここで、下塗り層Uは、半硬化状態であり、表面が硬化していないため、インク液滴d1となじみやすい。
また、図7(D)に示すように、先に打滴した第1のインク液滴d1の着弾位置近傍に、第2のインク液滴d2を打滴する。この時も、下塗り層Uは、半硬化状態であり、表面が硬化していないため、インク液滴d2となじみやすい。
【0079】
このように、インク液滴d1とインク液滴d2とを被記録媒体P上の近傍に着弾された場合は、インク液滴d1とインク液滴d2とを合一しようとする力が働くが、下塗り層Uが半硬化されており、粘度が高くなっているため、インク液滴間の合一に対する抵抗力となることにより被記録媒体Pに着弾したインク液滴同士の干渉が抑制される。
このように記録ヘッド48Xから制御部20による制御に応じて、複数のインク液滴を吐出し、被記録媒体P上に着弾させることにより画像を形成する。
【0080】
記録ヘッド48Xにより画像が形成された被記録媒体Pは、搬送部12によりさらに搬送され、記録ヘッド48Xの下流に配置された紫外線照射ユニット52に対向する位置を通過する。
紫外線照射ユニット52は、対向する位置を通過する被記録媒体Pに紫外線を照射し、記録ヘッド48Xにより被記録媒体P上に形成された画像を半硬化、つまり、被記録媒体上に着弾したインク液滴を半硬化させる。
【0081】
その後、被記録媒体Pは、さらに搬送され、記録ヘッド48Y、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48C、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48M、紫外線照射ユニット52、記録ヘッド48Kの順に対向する位置を通過する。被記録媒体Pは、各色の記録ヘッド及び紫外線照射ユニットに対向する位置を通過する毎に、記録ヘッド48X及び紫外線照射ユニット52に対向する位置を通過した場合と同様にして、画像が形成され、形成された画像が半硬化される。
【0082】
被記録媒体Pは、記録ヘッド48Kにより画像が形成された後に、最終硬化用紫外線照射ユニット54に対向する位置を通過する。
最終硬化用紫外線照射ユニット54は、他の紫外線照射ユニットよりも強度の強い紫外線を被記録媒体P上に照射し、記録ヘッド48Kにより記録された画像を含む各種ヘッドで形成された被記録媒体P上の画像及び下塗り液を硬化させる。
このようにして被記録媒体P上にカラー画像が形成される。
カラー画像が形成された被記録媒体Pは、搬送ロール32及び搬送ロール対34によりさらに搬送され、回収ロール36により巻き取られる。
インクジェット記録装置10は、このようにして被記録媒体P上に画像を形成する。
【0083】
このようにインクジェット記録装置10は、被記録媒体P上に下塗り層を形成することで、被記録媒体上に着弾したインク液滴が被記録媒体にしみ込み、画像ににじみが生じることを防止でき、高画質な画像を形成することが可能となる。また、インク液滴との密着性が低い、つまり、着弾したインク液滴をはじいてしまう被記録媒体も用いることが可能となり、種々の被記録媒体への画像記録が可能となる。
【0084】
また、塗布ロール60としていわゆるグラビアローラを用い、循環部74により貯留皿64の下塗り液を、塗布ロール60の回転方向とは反対方向に所定速度で循環させて(つまり、流し、移動させて)、さらに、超音波発生部76から貯留皿64の下塗り液に超音波を印加し、下塗り液を振動させることで、塗布速度が高速になった場合、及び/または、下塗り液の粘度が高い場合でも、塗布ロール60のグラビアローラのセルへの給液を促進するとともにセル中の液の置換を促進し、塗布ロール60の表面にむらなく下塗り液を付着させることができる。貯留皿64に浸漬している塗布ロール60の表面にむらなく下塗り液を付着できることで、被記録媒体Pに当接する部分の下塗り液の保持量を一定にすることができ、被記録媒体Pに均一に下塗り液を塗布することができる。
つまり、下塗部13は、被記録媒体Pに粘度の高い下塗り液を高速で均一に塗布することができる。これにより、より高速でかつより高画質な画像を形成することが可能となる。また、粘度の高い下塗り液を用いることで、被記録媒体として緩浸透媒体を用いた場合でも被記録媒体に下塗り液が振動することを防止でき、高画質な画像を形成することができる。
【0085】
さらに、塗布ロール60を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させて、被記録媒体P上に下塗り液を塗布することで、塗布ロール60が被記録媒体Pに下塗り液を塗布した後、塗布ロール60が被記録媒体Pと離れるときに被記録媒体P上に塗布した下塗り液の表面を乱すことを防止でき、被記録媒体P上に面状が改善された下塗り層Uを形成することができる。
【0086】
さらに、本実施形態のように、下塗り液半硬化部により下塗り層を半硬化させることで、インク液滴が互いに重なり部分を有して被記録媒体上に着弾しても、下塗り液とインク液滴の相互作用により、これら隣接したインク液滴間の合一を抑えることができる。
つまり、被記録媒体上に半硬化した下塗り液の層を形成することにより、記録ヘッドから吐出されたインク液滴が被記録媒体上に近接して着弾した場合、例えば、単一色のインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合や、色違いのインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合もインク液滴が移動することを防止できる。
これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一及び着色面の色ムラの発生を効果的に防止することができ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を細線等の微細像を再現よく行うことができる。つまり、被記録媒体により高画質な画像を形成することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態のように、各記録ヘッド間に、紫外線照射ユニットを配置し、各記録ヘッドにより被記録媒体上に着弾させたインク液滴つまり画像を半硬化させることで、近接した位置に着弾した異なる色のインク液滴が重なることや、着弾したインク液滴が移動することを防止できる。
【0088】
また、被記録媒体の搬送経路において、最下流側に配置された記録ヘッドに対応する紫外線照射ユニットを最終硬化用紫外線照射ユニットとし、他の紫外線照射ユニットよりも強い強度の紫外線を射出させることで、被記録媒体上に形成された画像を確実に硬化させることができる。
【0089】
ここで、インクジェット記録装置10では、循環部74により貯留皿74内の下塗り液を循環させることで、下塗り液を塗布ロール60の回転方向とは逆方向に所定速度で流したが、本発明はこれに限定されず、貯留皿74内の塗布ロール60と接触する領域の下塗り液が、塗布ロール60の回転方向とは逆方向に所定速度で流れていればよい。例えば、下塗り液の消費量が増大するが、循環させずに一定方向に流し続けるようにしてもよい。または、貯留皿内部で下塗り液を循環させるようにしてもよく、具体的には、貯留皿内の中心を回転軸として、下塗り液が、液面、側面(液面から底面方向)、底面(液面とは逆方向の流れ)、側面(底面から液面方向)の順で流れる液流としてもよい。
【0090】
また、循環部または、液流発生部は、塗布ロールと接触する領域での下塗り液の流速が5mm/s以上である液流を形成することが好ましい。
流速を5mm/s以上とすることで、より確実に塗布ロールの表面に均一に下塗り液を付着させることができ、塗布ロールへの下塗り液の付着むらが発生することを防止できる。
【0091】
また、本実施形態では、構成が簡単となり、かつ高精度な加振ができるため超音波発生部から下塗り液に超音波を印加して下塗り液を振動させたが、加振方法は特に限定されず、偏心モータ、圧電素子等を用いた他の機械的振動発生機構で貯留皿を振動させて下塗り液を加振してもよい。
また、より確実に下塗り液を塗布ロールに付着させるとができるため、貯留皿の下塗り液を加振させたが、振動発生機構により、塗布ロールを振動させてもよい。
なお、超音波発生器及び/または振動発生機構は、より確実に下塗り液を塗布ロールに付着させるとができるため設けることが好ましいが、必ずしも配置しなくてもよい。
【0092】
ここで、本実施形態では、貯留皿内の塗布ロールと接触する領域の下塗り液を塗布ロールの回転方向とは逆方向に流すことで、塗布ロールに下塗り液を付着むらなく付着させたが、塗布ロールへの下塗り液の給液促進手段は、これに限定されない。
図8は、本発明の塗布装置を下塗部として用いた他の一例の概略構成を示す正面図である。ここで、下塗部80は、塗布ロールへの下塗り液の給液促進手段として、循環部74及び超音波発生部76に替えて、ブラシ82及びブラシ駆動部84を設けた点を除いて他の構成は、下塗部13と同様であるので、下塗部13と同様の構成要件には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略し、以下、下塗部80に特有の点について説明する。
【0093】
図8に示すように、下塗部80は、被記録媒体Pに下塗り液を塗布する塗布ロール60と、塗布ロール60を回転させる駆動部62と、塗布ロール60に下塗り液を供給する貯留皿(液受け皿)64と、塗布ロール60に付着する下塗り液の量を調整するブレード66と、塗布ロール60に対して被記録媒体Pが所定位置となるように被記録媒体Pを支持する位置決め部68と、貯留皿64内に配置され塗布ロール60への下塗り液の付着を促進させるブラシ82と、ブラシ82を回転させるブラシ駆動部84(以下単に「駆動部84」という。)とを有する。
【0094】
ブラシ82は、ロールの表面に所定長さの所定硬さの線状部が多数配置された部材であり、貯留皿64の下塗り液が貯留された領域内に設置され、線状部が塗布ロール60と当接している。ここで、ブラシ82の線状部は、塗布ロール60と接触することでしなる柔軟性のある材料で形成されている。
【0095】
駆動部84は、モータ、モータの回転を塗布ロール82に伝えるギア等で構成される駆動機構であり、塗布ロール60を回転させる。ここで、駆動部84は、下塗液中でブラシ82と接続させても、ブラシ82の回転軸を貯留皿64から露出させ、ブラシ82の貯留皿64から露出した部分と接続させてもよい。
なお、駆動部84も、本実施形態に限定されず、プーリー駆動、ベルト駆動、ダイレクト駆動等のブラシ82を回転させる種々の駆動機構を用いることができる。
駆動部84は、図8に矢印で示すように、を塗布ロールの回転方向とは、同じ方向に回転させる(図8中時計周り)。
【0096】
下塗部80は、以上のような構成であり、下塗部13と同様に一部が貯留皿64の下塗り液に浸漬した塗布ロール60が回転することで被記録媒体Pに下塗液を塗布する。
また、塗布ロール60の貯留皿64の下塗り液に浸漬した部分は、駆動部84により塗布ロール60と同じ方向に回転されている(つまり、接触部分においては逆方向に移動されている)ブラシ82の線状部と接触している。また、ブラシ82を回転させることで、塗布ロール60との接触する線状部を多くすることができ、かつ、塗布ロールとの接触領域の下塗液に、塗布ロールの回転方向とは反対の方向の流れを形成することができる。
【0097】
このように、塗布ロール60の下塗り液に浸漬している部分を、逆方向に移動しているブラシ82の線状部と接触させることで、塗布ロール60の表面に付着した気泡等を除去しつつ、塗布ロール60に下塗液を好適に接触させることができ、塗布ロール60に下塗液をむらなく付着させることができる。
このように、塗布ロールと線状部が接触するブラシを設けることでも、塗布速度が高速になった場合、及び/または、下塗り液の粘度が高い場合でも、塗布ロール60の表面にムラなく下塗り液を付着させることができる。
【0098】
また、ブラシ82は、本実施形態のように塗布ロール60と同一方向に回転させることが好ましい。
ブラシ82を塗布ロール60と同一方向に回転させることで、塗布ロール60のセルへの給液性をより向上させることができ、塗布ロール60によりむらなく下塗り液を付着させることができる。
さらに、貯留皿64に貯留されている下塗り液は、下塗り液の粘度が高くなるほど塗布ロール60が回転することで、回転方向下流側の液面が高くなるが、ブラシ82を塗布ロール60と同一方向に回転させることで、塗布ロール60の回転方向下流側の液面上昇を抑制し、下塗り液が貯留皿64から漏れることを防止できる。
【0099】
なお、本実施形態では、液流を形成でき、より塗布ロール60によりむらなく下塗り液を付着させることができ、下塗り液が貯留皿64から漏れることを好適に防止できるため、ブラシ82を駆動部84により回転させたが、ブラシ82を固定してもよい。
【0100】
ここで、下塗り液は、粘度を10mPa・s以上500mPa・s以下とすることが好ましく、50mPa・s以上300mPa・s以下とすることがより好ましい。
下塗り液の粘度を、10mPa・s以上、より好ましくは、50mPa・s以上とすることで、上述したように、被記録媒体として、液体が付着しにくい被記録媒体にも下塗り液を塗布することが可能となる。
また、下塗り液の粘度を、500mPa・s以下、より好ましくは、300mPa・s以下とすることで、被記録媒体P上に形成する下塗り層の表面粗さをより確実に小さくすることができる。
また、後述するが、本発明によれば、下塗り液として高粘度なした塗り液を用いた場合でも均一な下塗り層を高速に形成することができる。
【0101】
また、搬送部12による被記録媒体Pの搬送速度は、100mm/s以上1000mm/s以下とすることが好ましい。これにより、被記録媒体に効率よく高画質な画像を形成することができる。また、高速で印刷物を作成することができる。つまり短時間で大量の被記録媒体を印刷することが可能となる。
【0102】
また、紫外線照射ユニットは、記録ヘッドにより被記録媒体上にインク液滴が着弾された後、数百ミリ秒から5秒の間に紫外線を照射し、被記録媒体に着弾したインク液滴を半硬化させることが好ましい。
インク液滴の着弾後、数百ミリ秒から5秒の間にインク液滴を半硬化させることで、被記録媒体上のインク液滴の形状が崩れることを防止でき、高画質な画像を形成することができる。
【0103】
また、下塗部13の塗布ロール60、位置決めロール70及び72は、互いの位置を固定する位置決め機構を設けることが好ましい。位置決め機構を設けることで、塗布ロール60、位置決めロール70及び72の互いの位置関係にずれが生じることを防止できる。
なお、位置決め機構としては、塗布ロール60、位置決めロール70及び72のそれぞれ支持する部材同士を接触させる構成であればよく、例えば、各部材の軸受け同士を接触させる機構、軸受けを固定する固定部材同士を接触させる機構を用いることができる。
【0104】
また、本実施形態では、各色の記録ヘッド間に紫外線照射ユニットを配置し、各記録ヘッドで画像が記録される毎に被記録媒体上の画像部を硬化させることで、上述したように、異なる色のインクが混ざることを防止でき、より高画質な画像を形成できるため、各記録ヘッドに対応して、紫外線照射ユニットを配置したが、本発明はこれに限定されず、複数の記録ヘッドに対して1つの紫外線照射ユニットを配置した構成としてもよい。例えば、画像定着部91を最終硬化用紫外線照射ユニット52aのみとしてもよい。
【0105】
また、本実施形態では、記録ヘッドユニットを、特色(X)と、YCMKの5色としたが、単にYCMKの4色、さらに他の特色のヘッドを有する6色以上の構成等の種々の組み合わせのヘッドとすることができる。また、各色の記録ヘッドの配置順も特に限定されず、任意の順番とすることができる。
さらに、記録ヘッドを複数配置することに限定されず、1つの記録ヘッドを用いて被記録媒体上に画像を形成し、その後、紫外線を照射して、単色の画像を形成するインクジェット記録装置としてもよい。
【0106】
以下、測定例とともに本発明についてより詳細に説明する。
本測定では、塗布ロールとして、凹部の間隔が150線/inch、凹部の形状が斜線型、凹部の深さ30μmで形成されたロール径Φ=60mmのロールを用いた。また、塗布ローラの回転速度は、周速が被記録媒体(基材)の搬送速度と同速とした。なお、塗布ローラは被記録媒体と搬送方向とは逆方向となる方向に回転させた。
また、下塗り液としては、粘度が10cP、30cP、40cP、50cP、100cP、200cPの下塗り液を用意し、それぞれの下塗り液の場合について、塗布速度(つまり、被記録媒体Pの搬送速度)を100mm/s、200mm/s、400mm/s、600mm/sと変化させ、それぞれの塗布速度で作製した下塗層の面性状を観察した。
観察した結果、塗布ロールのセルへの塗布液供給不足による筋状のムラが発生しない場合は、面状良好として○と判定し、塗布液供給不足による筋状のムラが発生した場合は、面状不良(スジムラあり)として×と判定した。
【0107】
まず、測定例1として、図1に示す下塗部13の構成の装置を用い、循環部74により10mm/sの流速で下塗液を循環させ、超音波発生部により超音波を印加し、貯留皿64内の下塗液を加振させた場合について測定した。なお、超音波発生部からは、30kHzの超音波を印加した。
測定した結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
次に、測定例2として、図1に示す下塗部13の構成の装置を用い、循環部74により30mm/sの流速で下塗液を循環させ、超音波発生部により超音波を印加し、貯留皿64内の下塗液を加振させた場合について測定した。
測定した結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
次に、測定例3として、図1に示す下塗部13の構成の装置を用い、循環部74により30mm/sの流速で下塗液を循環させるのみで、超音波発生部により超音波を印加しない場合について測定した。
測定した結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
次に、測定例4として、図8に示す下塗部80の構成の装置を用い、駆動部84によりブラシ82を周速50mm/sで回転させた場合について測定した。ここで、ブラシ82としては、中心から線状部先端までの長さが15mmのロール状のブラシを用い、ブラシの回転中心と塗布ロールの中心との距離を44mmとした。
測定した結果を表4に示す。
【0114】
【表4】

【0115】
次に、測定例5として、図8に示す下塗部80の構成の装置を用い、駆動部84によりブラシ82を回転させないで固定した場合について測定した。ここで、ブラシ82としては、中心から線状部先端までの長さが15mmのロール状のブラシを用い、ブラシの回転中心と塗布ロールの中心との距離を44mmとした。
測定した結果を表5に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
また、比較例1として、図1に示す下塗部13の構成の装置を用い、貯留皿内の下塗り液に液流を発生させず、超音波も印加せず、かつブラシも配置していない場合について測定した。
測定した結果を表6に示す。
【0118】
【表6】

【0119】
さらに、比較例2として、図1に示す下塗部13の構成の装置を用い、貯留皿内の下塗り液に液流を発生させず、超音波発生部により超音波を印加し、貯留皿64内の下塗液を加振させた場合について測定した。
測定した結果を表7に示す。
【0120】
【表7】

【0121】
表1〜7に示すように、貯留皿内の塗布ロールと接触する領域の下塗り液を塗布ロールの回転方向とは逆方向に流し、かつ超音波発生部から下塗り液に超音波を印加することで、液流を発生させなかった場合に比べて、塗布速度をより高速にした場合及び/または下塗液の粘度をより高くした場合でもむらなく塗布することができることがわかる。
また、貯留槽の下塗液内に塗布ロールと接触するブラシを設け、かつ、塗布ロールと同方向に回転させることによっても、ブラシを設けなかった場合に比べ、塗布速度をより高速にした場合及び/または下塗液の粘度をより高くした場合でもむらなく塗布することができることがわかる。
【0122】
また、表2及び表3に示すように、超音波で振動させずに、貯留皿内の塗布ロールと接触する領域の下塗り液を塗布ロールの回転方向とは逆方向に流すことのみでも、上記効果は低くなるが、液流を発生させなかった場合に比べて、塗布速度をより高速にした場合及び/または下塗液の粘度をより高くした場合でもむらなく塗布することができることがわかる。
また、表4及び表5に示すように、貯留槽の下塗液内に塗布ロールと接触するブラシを設け、回転させずに固定したのみでも、上記効果は低くなるが、ブラシを設けなかった場合に比べ、塗布速度をより高速にした場合及び/または下塗液の粘度をより高くした場合でもむらなく塗布することができることがわかる。
以上より、本発明の効果は明らかである。
【0123】
以下、本発明のインクジェット記録装置に好適に用いることができる被記録媒体、下塗り液及びインクについて説明する。
【0124】
(インク及び下塗り液の物性)
ここで、被記録媒体上に吐出されるインク(液滴)の物性としては、装置により異なるが一般には25℃での粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。また、下塗り液の内部硬化前の粘度(25℃)は、10〜500mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・s以内であることがより好ましい。
【0125】
本発明においては、被記録媒体上に目的の大きさのドットを形成する観点から、下塗り液は、界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことがさらに好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、被記録媒体上に吐出されるいずれかのインクの表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2
の関係を満たす。
【0126】
ここで、γsは、下塗り液の表面張力の値である。γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0127】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液の表面張力γsを、いずれかのインクの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を形成(印字、描画)する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、下塗り液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインクの表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインクの表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、吐出適正の観点から、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsとは、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsの値が上記の関係を満たし、かつ、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
両者の値を15mN/m以上とすることで、インクジェットヘッドによる打滴時に液滴を好適に形成することができ、不吐出が生じることを防止できる。つまり、インク液滴を好適に吐出させることができる。また、50mN/m以下とすることで、インクジェットヘッドとの濡れ性を高くすることができ、インク液滴を好適に吐出させることができる。つまり、液滴の不吐出が生じることを防止できる。両者の値を、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内、さらには、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内とすることで、上記効果をより好適に得ることができ、インク液滴を確実に吐出させることができる。
ここで、本実施形態において、表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0128】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、下塗り液は、少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。下塗り液に少なくとも一種類以上の界面活性剤を含有させることで、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットをより確実に形成させることができる。なお、この場合は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、下塗り液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2 …条件(C)
【0129】
既述のように、γsは、下塗り液の表面張力の値である。また、γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、下塗り液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0130】
なお、前記γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0131】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)maxについて具体的に説明する。
例えば、下塗り液(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合性材料(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros社製)、重合開始剤(TPO、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファックF475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)maxは、下記の通りとなる。
【0132】
【化1】

【0133】
即ち、γs(0)は、下塗り液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記フッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に前記炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0134】
前記下塗り液(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))の2つの値をとり得る。ここでγs(飽和)maxは、前記γs(飽和)及びγs(飽和)のうちの最大値であることから、γs(飽和)の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)max=30.5mN/m
【0135】
以上の結果から、上記具体例の場合下塗り液の表面張力γsは、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、下塗り液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)max}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)max
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0136】
インク及び下塗り液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、これらの液体は界面活性剤を含有することが好ましい。既述のように、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤について以下に説明する。
【0137】
(界面活性剤)
本発明において界面活性剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボルニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質を用いることが好ましい。
【0138】
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ溶媒(0)を測定する。前記γ溶媒(0)を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、該化合物濃度の変化に対する表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ溶媒(飽和)を測定する。前記γ溶媒(0)と前記γ溶媒(飽和)の関係が、
γ溶媒(0) − γ溶媒(飽和) > 1 (mN/m)
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断することができる。
【0139】
下塗り液に含有する界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0140】
(インク及び下塗り液の硬化感度)
本発明において、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上とすることが好ましい。また、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の4倍以下とすることがより好ましく、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の2倍以下とすることが更に好ましい。
ここで硬化感度とは、水銀灯(超高圧、高圧、中圧等、好ましくは超高圧水銀灯)を使用してインク及び/又は下塗り液を硬化する場合において、完全に硬化するために必要なエネルギー量をいい、エネルギー量が小さいほど高感度である。したがって硬化感度が2倍であるとは、完全に硬化するために必要なエネルギー量が1/2であることを意味する。
また、硬化感度が同等であるとは、比較する両者の硬化感度の差が2倍以下であり、より好ましくは1.5倍以下であることをいう。
【0141】
(被記録媒体)
本実施形態のインクジェット記録装置においては、被記録媒体として、浸透性の被記録媒体、非浸透性の被記録媒体、及び緩浸透性の被記録媒体のいずれも使用することができる。中でも、被記録媒体として、非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いた場合は、本発明の効果をより顕著に得ることができる。ここで、浸透性の被記録媒体とは、例えば、10pL(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以下である被記録媒体をいう。また、非浸透性の被記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、例えば、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性の被記録媒体とは、10pLの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以上である被記録媒体をいう。
【0142】
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙及びその他液を吸収できる被記録媒体が挙げられる。
非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器及び木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
【0143】
合成樹脂の被記録媒体としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状としては、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0144】
この合成樹脂の被記録媒体としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状の各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることも好ましい。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム、PPフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0145】
樹脂コート紙の被記録媒体としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体を用いることが好ましい。
【0146】
金属の被記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等及びステンレス等、並びにこれらの複合材料を好適に用いることができる。
【0147】
また更に、被記録媒体としては、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能である。この場合は、いわゆるレーベル面側に画像を記録することが好ましい。
【0148】
(インク及び下塗り液)
以下、本発明に好適に用いることができるインク及び下塗り液について詳細に説明する。
【0149】
インクは、少なくとも画像を形成するための組成となる構成であり、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成される。
下塗り液は、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成されることが好ましい。また、下塗り液は、インクと組成が異なるように構成することが好ましい。
【0150】
重合開始剤は、活性エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させ得るものであることが好ましい。これにより、被記録媒体に付与された下塗り液を活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
また、下塗り液は、ラジカル重合性組成物を含むことが好ましい。本発明において、ラジカル重合性組成物とは、少なくとも1種のラジカル重合性材料と少なくとも1種のラジカル重合開始剤とを含む組成物である。下塗り液がラジカル重合性組成物を含むことで、下塗り液の硬化反応を高感度に短時間で行うことができる。
また、インクは、着色剤を含有するものであることが好ましい。また、このインクと組み合わせて用いられる下塗り液は、着色剤を含有しないもしくは着色剤の含有量が1質量%未満の構成、又は、下塗り液が着色剤として白色顔料を含む構成のいずれかであることが好ましい。
以下、インク及び/又は下塗り液を構成する各成分について詳述する。
【0151】
(重合性又は架橋性材料)
重合性又は架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0152】
重合性又は架橋性材料としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起する重合性又は架橋性材料を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
重合性又は架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0153】
本発明における重合性又は架橋性材料としては、特に、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーを用いることが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをさし、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをさす。
【0154】
(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0155】
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0156】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0157】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0158】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0159】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0160】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0161】
また、(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0162】
芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0163】
ビニルエーテル類の具体例としては、単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0164】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
なお、ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点からジ又はトリビニルエーテル化合物を用いることが好ましく、特にジビニルエーテル化合物を用いることがより好ましい。
【0165】
また、上記以外に、ラジカル重合性モノマーとしては、更に、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0166】
上記のうち、ラジカル重合性モノマーとしては、硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類を用いることが好ましく、特に硬化速度の点から、4官能以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。更には、インク組成物の粘度の観点から、多官能(メタ)アクリレートと、単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドとを併用することが好ましい。
【0167】
重合性又は架橋性材料のインク及び下塗り液中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲とすることが好ましく、70〜99.0質量%の範囲とすることがより好ましく、80〜99.0質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲とすることが好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0168】
(重合開始剤)
また、少なくとも下塗り液、または、インク及び下塗り液は、少なくとも1種の重合開始剤を含有することが好ましい。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性又は架橋性材料の重合又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0169】
重合性の態様において、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、さらに、光重合開始剤であることが特に好ましい。
光重合開始剤は、光の作用、増感色素の電子励起状態との相互作用によって化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル発生剤であることが好ましい。
【0170】
本発明における光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0171】
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も使用することができる。
【0172】
好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0173】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等が挙げられる。
【0174】
ここで、(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム塩等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号各公報記載の化合物を好適に使用することができる。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0175】
また、(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系を用いることが好ましい。
【0176】
また、(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0177】
また、(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0178】
また、(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
また、(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群が上げられる。
【0179】
また、(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体が挙げられる。
【0180】
チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等が挙げられる。
【0181】
また、(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンジルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0182】
また、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等が挙げられる。
【0183】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等も挙げられる。さらに、ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等も挙げられる。
【0184】
本発明における光重合開始剤としては、例えば、以下に例示する化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0185】
【化2】

【0186】
【化3】

【0187】
【化4】

【0188】
【化5】

【0189】
【化6】

【0190】
【化7】

【0191】
【化8】

【0192】
【化9】

【0193】
なお、重合開始剤としては、感度に優れるものが好ましいが、保存安定性の観点から、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を用いることが好ましい。
【0194】
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0195】
重合開始剤の下塗り液中における含有量としては、経時安定性と硬化性及び硬化速度との観点から、下塗り液中の重合性材料に対して0.5〜20質量%の範囲内とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがさらに好ましく、3〜10質量%とすることが特に好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることを抑制できる。
【0196】
なお、重合開始剤を下塗り液に含有すると共にインクに含有させてもよく、この場合には、インクの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。この場合は、インク液滴中の含有量は、インク中の重合性又は架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0197】
(増感色素)
また、インク及び/または下塗り液には、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加することが好ましい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げられる。
【0198】
具体的には、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)が挙げられる。
【0199】
また、より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0200】
【化10】

【0201】
式(IX)中、A1は硫黄原子又は−NR50−を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、Aは硫黄原子又は−NR59−を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0202】
式(XII)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Aは酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0203】
また、一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0204】
【化11】

【0205】
【化12】

【0206】
(共増感剤)
さらに、インク及び/または下塗り液には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えることが好ましい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0207】
別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0208】
(着色剤)
少なくともインク、もしくは、インク及び下塗り液は、少なくとも一種の着色剤を含有する。なお、着色剤はインク以外に下塗り液やその他の液体に含有してもよい。
【0209】
着色剤としては、特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料、及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも、本発明の効果を好適に得ることができる非水溶性の有機溶剤系でインク及び下塗り液を構成する場合は、着色剤としては、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料を用いることが好ましい。
【0210】
着色剤は、インク中の含有量を1〜30質量%とすることが好ましく、1.5〜25質量%とすることがさらに好ましく、2〜15質量%とすることが特に好ましい。また、着色剤として下塗り液に白色顔料を含有させる場合には、下塗り液中の着色剤の含有量を2〜45質量%とすることが好ましく、4〜35質量%とすることがより好ましい。
【0211】
以下、本発明に好適な顔料を中心に説明する。
〈顔料〉
着色剤として、顔料を用いる態様が好ましい。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0212】
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン系顔料及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0213】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメント・レッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメント・レッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメント・バイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメント・レッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメント・バイオレット42、C.I.ピグメント・レッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメント・レッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメント・レッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント・レッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメント・オレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメント・ブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメント・バイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメント・イエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメント・イエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメント・オレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメント・レッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメント・イエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメント・イエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメント・イエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメント・イエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメント・オレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメント・オレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメント・オレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメント・レッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメント・レッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメント・レッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメント・レッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメント・レッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメント・レッド248、C.I.ピグメント・レッド262、もしくはC.I.ピグメント・ブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
【0214】
C.I.ピグメント・イエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメント・イエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメント・イエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメント・レッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメント・レッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメント・イエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメント・イエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメント・レッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメント・レッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメント・オレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメント・レッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメント・ブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメント・グリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメント・グリーン36(C.I.番号74265)、C.I.ピグメント・グリーン37(C.I.番号74255)、C.I.ピグメント・ブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメント・ブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント・ブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメント・ブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメント・バイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメント・レッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメント・レッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・レッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメント・オレンジ71、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメント・レッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメント・イエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメント・オレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメント・レッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、又はC.I.ピグメント・バイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
また着色剤としては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0215】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。さらに、樹脂被覆された顔料も使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販品が入手可能である。
【0216】
液中に含有される顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、10〜250nmの範囲であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの粒径分布測定装置により測定することができる。
【0217】
着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0218】
(その他成分)
また、インク及び/または下塗り液には、上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
【0219】
〈貯蔵安定剤〉
インク及び下塗り液(特にインク)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することが好ましい。貯蔵安定剤は、重合性又は架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0220】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシルアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0221】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性又は架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算を、0.005〜1質量%とすることが好ましく、0.01〜0.5質量%とすることがより好ましく、0.01〜0.2質量%とすることがさらに好ましい。
【0222】
〈導電性塩類〉
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0223】
〈溶剤〉
本発明においては、必要に応じて公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
高沸点有機溶媒としては、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有するものが好ましい。
具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルを用いることが好ましい。
【0224】
公知の溶剤としては、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0225】
溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量を各液中0〜20質量%とすることが好ましく、0〜10質量%とすることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。本発明に係るインク及び下塗り液に水を実質的に含まないことで、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性を向上させ、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性も高くすることができる。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0226】
〈その他添加剤〉
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0227】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係るインクと下塗り液とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
ここで、1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0228】
以上、本発明に係るインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0229】
例えば、上述したように、被記録媒体上に形成する画像をより高画質にできるため、下塗り液を半硬化することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、被記録媒体上に塗布した下塗り液を完全に硬化させた後、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成してもよく、または、被記録媒体上に塗布した下塗り液を硬化させずに、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成し、その後、活性光線を照射し、被記録媒体上の画像部と下塗り層を同時に硬化させてもよい。
【0230】
また、下塗り液(下塗り層)及び/またはインクを半硬化させる方法も上記方法に限定されず、酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、下塗り液(インク)を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、高粘度に調製した下塗り液(インク)を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、下塗り液(インク)に熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。
なお、下塗り液及びインクを半硬化させる方法としては、熱を与えるまたは、上述した活性エネルギー線を照射することにより硬化反応を起こさせる方法を用いることが好ましい。
【0231】
また、本実施形態では、下塗り液及びインクとして、活性光硬化型の下塗り液及びインクを用い、下塗り液及びインクに活性光線を照射させることで硬化させたが、本発明はこれに限定されず、活性光線硬化型以外の下塗り液及びインクを用いてもよい。例えば、熱硬化型のインクを用い、従来公知の手段で画像を形成してもよい。また、下塗り液として熱硬化型の液体を用いてもよい。
【0232】
以上、本発明に係る塗布装置及びインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0233】
例えば、本実施形態では、より高画質で、高品質な画像を形成できるため下塗液を半硬化させたが、本発明はこれに限定されず、半硬化していない(つまり、未硬化、もしくは硬化した)下塗層にインクジェットで画像を形成してもよい。この場合も、半硬化した場合よりは品質、画質が低下するが、高粘度な下塗り液を均一にかつ高速に形成できるため、品質及び画質の高い印刷物を形成することができる。
【0234】
また、本実施形態では、塗布装置を、下塗液を塗布する下塗部として説明したが、発明はこれに限定されず、塗布対象に一定厚みの機能性液体を塗布する種々の塗布装置として用いることができ、例えば、インクジェット記録で被記録媒体上に画像を記録する際に被記録媒体に機能性液体(例えば、画質向上剤、密着向上剤)を塗布する塗布装置や、印刷物の後処理で印刷物にニスをコーティングする塗布装置等に用いることができる。
また、本発明のインクジェット記録装置は、ラベルを印刷するラベル印刷装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の下塗り部の概略構成を拡大して示す正面図である。
【図3】半硬化された下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図5】半硬化されたインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図6】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図7】(A)〜(D)は、それぞれ被記録媒体上に画像を形成する工程を模式的に示す工程図である。
【図8】下塗り部の他の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0236】
10 インクジェット記録装置
12 搬送部
13 下塗部
14 下塗り液半硬化部
16 画像記録部
18 画像定着部
20 制御部
22 入力装置
30 供給ロール
32 搬送ロール
34 搬送ロール対
36 回収ロール
46 記録ヘッドユニット
48X、48Y、48C、48M、48K 記録ヘッド
50 インクタンク
52、54 紫外線照射ユニット
56 プラテン
60 塗布ロール
62 (塗布ロール)駆動部
64 貯留皿
66 ブレード
68 位置決め部
70、72 位置決めロール
74 循環部
76 超音波発生部
77 第1管路
78 第2管路
79 ポンプ
82 ブラシ
84 (ブラシ)駆動部
100 ラベル印刷機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性液体を貯留すると液受け皿と、
前記液受け皿の前記機能性液体に表面の一部が浸漬され、前記機能性液体を保持する複数の凹部を備える塗布ローラと、
前記塗布ローラを回転させる塗布ローラ回転手段と、
前記液受け皿に貯留された前記塗布ローラとの接触する領域の前記機能性液体を、前記塗布ローラの前記液受け皿に浸漬している部分の回転方向とは反対の方向に流す液流発生手段と、
前記塗布ローラと接触し、前記機能性液体が塗布される塗布対象を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
さらに、前記塗布ローラ及び機能性液体の少なくとも一方を振動させる加振手段を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記加振手段は、前記液受け皿に配置され、前記液受け皿に貯留された前記機能性液体に超音波を印加する超音波発生手段である請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
機能性液体を貯留すると液受け皿と、
前記液受け皿の前記機能性液体に表面の一部が浸漬され、前記機能性液体を保持する複数の凹部を備える塗布ローラと、
前記塗布ローラを回転させる塗布ローラ回転手段と、
前記液受け皿の前記機能性液体が貯留された領域内に設置され、前記塗布ロールと当接するブラシと、
前記塗布ローラと接触し、前記機能性液体が塗布される塗布対象を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
さらに、前記ブラシを前記塗布ロールの回転方向と同一方向に回転させるブラシ回転部を有する請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布ローラ回転手段は、前記搬送手段が前記塗布対象を搬送する方向とは反対方向に前記塗布ローラを回転させる請求項1〜5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布対象物は、被記録媒体であり、かつ、前記機能性液体は下塗り液であり、
請求項1〜6のいずれかに記載の塗布装置と、
前記被記録媒体の搬送方向において、前記塗布装置の下流に配置され、少なくとも色材を含んだインクを吐出して前記下塗り液が付与された前記被記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドを有する画像形成手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記下液塗り液は、前記被記録媒体に前記活性エネルギー線が照射されることにより硬化する液体であり、
前記塗布装置の前記被記録媒体の搬送方向の下流側に配置され、前記被記録媒体に塗布された下塗り液に活性エネルギー線を照射し、前記被記録媒体上に塗布された下塗り液を半硬化させる下塗り液半硬化手段を有する請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドから吐出されるインクは、活性エネルギー線を照射することで、硬化するインクであり、
前記画像形成手段は、さらに、前記被記録媒体の搬送方向において、前記インクジェットヘッドの下流側に配置され、前記被記録媒体上に形成された画像に活性光線を照射し、前記画像を構成するインクを硬化する画像硬化手段を有する請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記画像形成手段は、異なる色のインクを吐出する少なくとも2つの前記インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの間に配置され、前記被記録媒体の搬送方向上流側の前記インクジェットヘッドにより形成された前記画像を構成するインクを半硬化させるインク半硬化手段を有することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−82821(P2009−82821A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255985(P2007−255985)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】