説明

塗布装置及びノズル洗浄方法

【課題】基板幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを備えた塗布装置において、生産性を低下させることなく、前記ノズルの洗浄を効果的に行う。
【解決手段】被処理基板Gの幅方向に長いスリット状の吐出口10aを有し、前記基板に対し、前記吐出口から塗布液Rを吐出するノズル10と、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段5,6とを具備する塗布装置1であって、前記吐出口が形成されるノズル先端部10bにおいて塗布液が流れる流路内に設けられた光触媒層30と、前記光触媒層に光触媒可能な光を照射する光照射手段34,35とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット状の吐出口を有するノズルの洗浄機能を備えた塗布装置、及びそのノズル洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
前記フォトリソグラフィ工程は、具体的には次のように行われる。
先ず、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、塗布液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜が形成される。そして、回路パターンに対応してレジスト膜が露光され、これが現像処理される。
【0003】
このフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト膜を塗布形成する方法として、図11に示すように基板幅方向に長いスリット状の吐出口50aを有するノズル50を用いる方法(スリットコーティング法と呼ぶ)がある。
このスリットコーティング法にあっては、仰向けにされた被処理基板と、その上方に配置されたノズル50とを相対的に移動させ、前記吐出口50aから帯状のレジスト液を基板上に吐出することによってレジスト膜を塗布形成するものである。
この方法によれば、基板上に均一な厚膜のレジスト膜を容易に形成することができる。
【0004】
尚、前記ノズル50にあっては、図12(ノズル断面)に示すように、一対の内側面50b、50cが所定の間隙を空けて対向配置され、その下端に吐出口50aが形成されている。
また、搬送される被処理基板Gの移動方向側の内側面50bには、ノズル50の長手方向に沿って溝状に形成されたキャビティ50dが設けられている。このキャビティ50dに、ノズル50に供給されたレジスト液が一旦溜められることによって、スリット状の吐出口50aから一様に吐出されるようになされている。
【0005】
ところで、基板移動方向側の内側面50bにあっては、基板Gへのレジスト吐出が完了すると、キャビティ50dに溜められたレジスト液が流れ落ちることによって、吐出口50a付近におけるレジスト付着量が多くなる。
そのように内側面50bに付着しているレジストは、乾燥固化し、結晶物(以下、付着物と呼ぶ)となりやすく、そのまま放置すると、吐出口50aからレジストを一様に吐出することができなるため、定期的にノズル内の洗浄を行う必要があった。
従来、ノズル内の洗浄は、吐出口50aからノズル50内に金属板を挿入し、内側面50b、50cの付着物を掻き出して除去する方法、或いは、ノズル50を分解して各部品の洗浄を行う方法が採られていた。
尚、このようなスリット状のノズルについては、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−243670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のように吐出口50aからノズル50内に金属板を挿入し、内側面50b、50cの付着物を除去する方法にあっては、内壁面50b、50cに擦り傷が生じ、それにより一様な吐出が困難となる虞があった。
また、ノズル50を分解し、各部品を洗浄する方法にあっては、その作業工程数が多く、生産性が大きく低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、基板幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを備えた塗布装置において、生産性を低下させることなく、前記ノズルの洗浄を効果的に行うことのできる塗布装置及びノズル洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対し、前記吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置であって、前記吐出口が形成されるノズル先端部において塗布液が流れる流路内に設けられた光触媒層と、前記光触媒層に光触媒可能な光を照射する光照射手段とを備えることに特徴を有する。
【0010】
このような構成によれば、ノズル先端において塗布液付着量の多い基板移動方向側の内側面に光触媒層が形成され、相対向する内側面から前記光触媒層に光照射が可能となされる。
即ち、ノズル待機時にノズル先端の内側面に光照射を行うことにより、前記内側面における付着物を解離することができ、吐出口から洗浄液、或いは塗布液を吐出することによって、前記解離した付着物を容易に洗い流して除去することができる。
したがって、従来のようにメンテナンス時において、吐出口から金属板を挿入する作業、或いは、ノズルを分解する作業が必要ないため、ノズル内を傷つけることがなく、生産性の低下を防ぐことができる。
【0011】
また、プライミング処理の直前に光触媒層への光照射を行うことによって、解離した付着物を洗い流す作業をプライミング処理でまかなうことができ、レジスト液の無駄な消費を抑えることができる。
さらにプライミング処理前に毎回、光触媒層への光照射を行うことによって、ノズル先端の内側面への付着物の蓄積を防止することができ、洗浄液の使用回数やメンテナンスの回数を低減することができる。
【0012】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係るノズル洗浄方法は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対し前記吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段と、前記吐出口が形成されるノズル先端部において塗布液が流れる流路内に設けられた光触媒層と、前記光触媒層に光触媒可能な光を照射する光照射手段とを備える塗布装置において、前記ノズル先端部内を洗浄するノズル洗浄方法であって、前記ノズルの吐出口から前記基板への塗布液の吐出が完了した後、前記光照射手段により前記透光部材を介して前記光触媒層に光照射するステップと、前記吐出口から前記塗布液、又は前記塗布液を溶解可能な洗浄液を吐出するステップとを含むことに特徴を有する。
このような方法によれば、前記した塗布装置による効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを備えた塗布装置において、生産性を低下させることなく、前記ノズルの洗浄を効果的に行うことのできる塗布装置及びノズル洗浄方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明にかかる第一の実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる第一の実施形態の全体概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図1の塗布装置が備えるノズルの概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる第一の実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【図5】図5は、本発明にかかる第一の実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図6】図6は、本発明にかかる第二の実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる第二の実施形態の全体概略構成を示す側面図である。
【図8】図8は、図6の塗布装置が備えるノズルの概略構成を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明にかかる第二の実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【図10】図10は、本発明にかかる第二の実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図11】図11は、従来のスリット状の吐出口を有するノズルを示す斜視図である。
【図12】図12は、従来のスリット状の吐出口を有するノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の塗布装置及びノズル洗浄方法にかかる第一の実施形態を、図1乃至図5に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、塗布装置を、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し塗布液であるレジスト液の塗布膜形成を行うレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
【0016】
図1、図2に示すように、塗布装置1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送部2Aと、前記浮上搬送部2Aから基板Gを受け取り、コロ搬送するコロ搬送部2Bとを備え、基板Gが所謂平流し搬送されるように構成されている。前記浮上搬送部2Aにおいては、基板搬送方向であるX方向に延長された浮上ステージ3が設けられている。浮上ステージ3の上面には、図示するように多数のガス噴出口3aとガス吸気口3bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられ、ガス噴出口3aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口3bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gを浮上させている。
尚、この実施形態では、ガスの噴出及び吸気により基板Gを浮上させるようにしたが、それに限定されず、ガス噴出のみの構成によって基板浮上させるようにしてもよい。
【0017】
また、前記コロ搬送部2Bにおいては、ステージ3の後段に、コロ駆動部40によって回転駆動される複数本のコロ軸41が並列に設けられている。各コロ軸41には、複数の搬送コロ42が取り付けられ、これら搬送コロ42の回転によって基板Gを搬送する構成となされている。
【0018】
また、前記浮上ステージ3の幅方向(Y方向)の左右側方には、X方向に平行に延びる一対のガイドレール5が設けられている。この一対のガイドレール5には、ガラス基板Gの四隅の縁部を下方から吸着保持してガイドレール5上を移動する4つの基板キャリア6が設けられている。これら基板キャリア6により浮上ステージ3上に浮上したガラス基板Gを搬送方向(X方向)に沿って移動される。
尚、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bへの基板引き渡しを円滑に行うために、ガイドレール5は、浮上ステージ3の左右側方だけでなく、コロ搬送部2Bの側方にまで延設されている。
また、前記基板キャリア6による基板Gの保持、及び搬送動作は、コンピュータからなる制御部50により制御される。
【0019】
また、図1、図2に示すように、塗布装置1の浮上ステージ3上には、ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル10が設けられている。ノズル10は、Y方向に向けて例えば長い略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されている。図2に示すようにノズル10の下端部には、浮上ステージ3の幅方向に長いスリット状の吐出口10aが形成され、このノズル10には、レジスト液供給源20から送出ポンプ21及び流量調整バルブ22を介してレジスト液が供給されるようになされている。
尚、本実施形態にあっては、ガラス基板Gへのレジスト液の塗布時には、ノズル10は浮上ステージ3に対し移動せず、ノズル10の下方をガラス基板Gが搬送される。このため、ガイドレール5及び基板キャリア6により、ノズル10に対し基板Gを相対的に移動させる相対移動手段が構成される。また、レジスト供給源20、送出ポンプ21、及び流量調整バルブ22により塗布液供給手段が構成される。
【0020】
また、図1に示すようにノズル10の両側には、X方向に延びる一対のガイドレール11が設けられている。ノズル10は、ガイドレール11上を移動するノズルアーム12によって保持されている。このノズル10は、ノズルアーム12が有する駆動機構により、ガイドレール11に沿ってX方向に移動可能となされている。
また、ノズルアーム12には、昇降機構が設けられており、ノズル10は、所定の高さに昇降可能である。かかる構成により、図2に示すように、ノズル10は、ガラス基板Gにレジスト液を吐出する吐出位置と、それより上流側にある回転ロール13、及び待機部15との間を移動可能となされている。
【0021】
前記回転ロール13は、ノズル10の吐出口10aに均一にレジスト液を付着させるためのプライミング処理に用いられる。回転ローラ13は、洗浄タンク14内に軸周りに回転可能に収容されている。プライミング処理の際には、回転ロール13の最上部にノズル10の吐出口10aを近接し、回転ロール13を回転させながら、吐出口10aから回転ロール13にレジスト液を吐出する。これにより、吐出口10aにおけるレジスト液の付着状態が整えられ、吐出口10aにおけるレジスト液の吐出状態を安定させることができる。
【0022】
また、ステージ3の上方において、ノズル10よりも上流側には待機部15が設けられている。この待機部15は、図1に示すようにノズル10の吐出口10aに付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部15aと、いわゆるダミー吐出を行うダミーディスペンス部15bとを有している。
尚、ノズル10の吐出位置と待機位置との間の移動制御、及びプライミング処理に係る回転ローラ13の駆動、ノズル10の吐出口10aからの吐出制御、待機部15の動作制御等は制御部50によって行われる。
【0023】
また、本発明にかかる構成にあっては、ノズル内部の洗浄機構を備える。
即ち、図3に示すようにノズル10は、ガラス基板Gの移動方向側(下流側)に配置されるノズルパーツ16(第一のノズルパーツ)と、ノズルパーツ17に対し所定の間隙Cを空けて(上流側に)対向配置されるノズルパーツ17(第二のノズルパーツ)とにより構成される。
レジスト液の流路となる前記間隙Cは、ノズルパーツ16の内側面16aとノズルパーツ17の内側面17aとにより形成される。内側面16a、17aはそれぞれ略垂直面となされ、浮上ステージ3の幅方向に延設されている。
【0024】
ノズルパーツ16は例えばステンレス鋼により形成され、その内側面16aには、ノズル10の長手方向(浮上ステージ3の幅方向)に沿ってキャビティ16b(半円筒状の溝)が形成されている。このため、上方から間隙Cに供給されたレジスト液がキャビティ16bに一旦溜められ、スリット状の吐出口10aからレジスト液を一様に吐出することができる。
【0025】
また、キャビティ16bの表面、及びそれより下方のノズル先端部10bの内側面16aには、光触媒層30が一様に形成されている。この光触媒層30は、例えば酸化チタン(TiO)をコーティングすることにより形成される。
このようにノズル先端部10bにおいて、レジスト吐出後にレジスト付着量の多い基板移動方向側の内側面16aに光触媒層30が形成されていることによって、付着物を酸化作用により解離し、除去しやすい状態とすることができる。
【0026】
一方、ノズルパーツ16に対向配置されたノズルパーツ17にあっては、ノズルパーツ16に形成された光触媒層30を効果的に作用させるための構成を有する。
即ち、図3に示すようにノズルパーツ17のノズル先端部10bは、透光部材31により形成される。透光部材31は、光ファイバとして利用可能な材料、例えば透光性に優れる石英部材で形成されるのが望ましい。
この透光部材31は、図示するように下端は吐出口10a、上端はノズルパーツ16のキャビティ16bの上端と略同じ高さとなされている。
また、透光部材31の外側面にはノズル内方向に反射面を有する光反射板32がノズル10の長手方向(ステージ3の幅方向)に沿って設けられている。
【0027】
また、ノズルパーツ17の内部において、前記透光部材31上には、ノズル長手方向(ステージ3の幅方向)に長い導光板33が設けられている。この導光板33は、例えばアクリル樹脂により形成されている。
さらに、この導光板33の上端部には光触媒反応可能な光である短波長の紫外線を放射する光源34(例えばエキシマランプ)が配置され、その放射方向が下方、即ち導光板33に向けられている。このため、光源34から放射された紫外線は、導光板33を介して透光部材31に入射され、さらに光反射板32に反射することによって放射角度が変更され、ノズルパーツ16の光触媒層30に対し照射されるようになされている。
かかる構成により、光源34から放射された紫外線が照射される光触媒層30では効果的に光触媒作用が生じ、光触媒層30上の付着物を容易に解離することができる。
【0028】
尚、前記光源34は、光源駆動部35により点灯制御され、さらに光源駆動部35は制御部50により制御がなされる。また、光源34と光源駆動部35により光照射手段が構成される。
また、ノズルパーツ17において、前記透光部材31、導光板33を除く部分は、例えばステンレス鋼により形成されている。
【0029】
また、ノズルパーツ16,17により形成される前記間隙Cには、レジスト液だけではなく、ノズル待機時において内側面16a、17aを洗浄するためのレジスト溶解可能な洗浄液(例えばシンナー液)が必要に応じて供給可能となされている。
即ち、洗浄液供給手段として、洗浄液供給源36と、そこから所定量の洗浄液を送出するための送出ポンプ37、流量調整バルブ38が設けられている。そして、ノズル10への供給液が、切換バルブ39(切換手段)によって、レジスト液と洗浄液のいずれかに切り換えられるようになされている。
【0030】
続いて、このように構成された第一の実施形態にかかる塗布装置1において、基板Gへのレジスト液の塗布から待機時におけるノズルのプライミング処理(ノズル洗浄処理)までの一連の流れについて図4に基づいて説明する。
塗布装置1においては、浮上ステージ3に新たにガラス基板Gが搬入されると、基板Gはステージ3上に形成された不活性ガスの気流によって下方から支持され、基板キャリア6により保持される(図4のステップS1)。
そして、制御部50の制御により基板キャリア6が駆動され、基板搬送方向に搬送開始される(図4のステップS2)。
【0031】
また、図5(a)に示すように、レジストノズル10の吐出口10aからレジスト液Rが吐出され、ノズル10の下方を通過する基板Gに対し塗布処理が施される(図4のステップS3)。
基板G上へのレジスト液の塗布処理が終了すると、ノズル10からのレジスト液の吐出が停止され、塗布処理が完了した基板Gは、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bに引き渡され、コロ搬送によって後段の処理部へ搬出される(図4のステップS4)。
【0032】
待機期間になると、制御部50は、ノズル10をレール10に沿って待機部15の上方へと移動させる(図4のステップS5)。
そして、先ずノズル10の先端部10bの外面に対し、ノズル洗浄部15aにより洗浄が行われ、ダミーディスペンス部15bにおいて所定量のレジスト液を予備的に吐出するダミー吐出が行われ、ノズル10の一次洗浄が完了する(図4のステップS6)。
【0033】
一次洗浄が完了したノズル10は、図5(b)に示すように回転ローラ13の上方へと移動される。そして、光源駆動部35により光源34が点灯され、導光板33、透光部材31、及び反射板32を介して、短波長の紫外線がノズル先端部10bに形成された光触媒層30に照射される(図4のステップS7)。
これにより、ノズル先端部10bにおいて光触媒層30上に残る付着物が酸化作用により分解され解離される。
【0034】
次いで、例えば塗布処理を行った基板枚数が所定数に達しない場合(通常時)、図5(c)に示すように回転ローラ13が所定方向に回転駆動され、レジスト供給源20からノズル10にレジスト供給されて吐出口10aから回転ローラ13のローラ面にレジスト液Rが吐出される(図4のステップS9)。これにより、前記ステップS7において解離された付着物が洗い流され、ノズル10の二次洗浄が行われると共に、吐出口10aに均一にレジスト液Rを付着させるためのプライミング処理が行われる(図4のステップS9)。
また、プライミング処理が完了したノズル10は塗布位置へと移動され、次の基板Gの塗布処理を行うこととなる(図4のステップS10)。
【0035】
一方、前記ステップS8において、例えば塗布処理を行った基板枚数が所定数に達した場合、切換バルブ39の切換によってノズル10内の間隙Cに洗浄液(シンナー液)が供給され、図5(d)に示すように吐出口10aから洗浄液Tが洗浄タンク14内に吐出される(図4のステップS11)。
これにより、内側面16a,17aに残る付着物を洗浄液Tがきれいに溶解洗浄すると共に、ステップS7において解離された付着物が容易に洗い流される(二次洗浄)。
その後、プライミング処理によって吐出口10aに均一にレジスト液Rが付着され(図4のステップS9)、ノズル10は塗布位置へと移動される(図4のステップS10)。
【0036】
以上のように、本発明に係る第一の実施形態によれば、ノズル先端10bにおいてレジスト付着量の多い基板移動方向側の内側面16aに光触媒層30が形成され、相対向する内側面17aから前記光触媒層30に光(紫外線)照射が可能な構成となされる。
この構成において、ノズル待機時にノズル先端10bの内側面16aに光照射を行うことにより、前記内側面16aにおける付着物を解離することができ、吐出口10aから洗浄液、或いはレジスト液を吐出することによって、前記解離した付着物を容易に洗い流して除去することができる。
したがって、従来のようにメンテナンス時において、吐出口10aから金属板を挿入する作業、或いは、ノズルを分解する作業が必要ないため、ノズル内を傷つけることがなく、生産性の低下を防ぐことができる。
【0037】
また、プライミング処理の直前に光触媒層30への光照射を行うことによって、解離した付着物を洗い流す作業をプライミング処理でまかなうことができ、レジスト液の無駄な消費を抑えることができる。
さらにプライミング処理前に毎回、光触媒層30への光照射を行うことによって、ノズル先端10bの内側面16aへの付着物の蓄積を防止することができ、洗浄液の使用回数やメンテナンスの回数を低減することができる。
【0038】
続いて、本発明にかかる第二の実施形態を、図6乃至図10に基づき説明する。この第二の実施形態にあっては、前記した第一の実施形態と、ノズル10の構成、及びその洗浄機構が一部異なるのみであるため、第一の実施形態と同じ構成のものについては、同じ符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
本発明にかかる第二の実施形態にあっては、図6、図7に示すようにステージ3の幅方向に長く形成され、短波長の紫外線を照射する光源34(例えばエキシマランプ)が、ノズル10ではなく回転ローラ13の上流側の側方に配置されている。
さらに、光源34の上流側の側方には、浮上ステージ3を跨いでレール45が架設され、そのレール45に沿ってCCDカメラ46(光センサ)が移動可能に設けられている。このCCDカメラ46は、投光部(図示せず)と受光部(図示せず)とを有し、投光部により所定波長の光を投光し、投光対象において反射した光を受光部が受光する構成となされている。
【0040】
図7に示すように、CCDカメラ46の投光方向、及び受光方向は回転ローラ13の少し上方、即ちプライミング時にノズル先端10bが位置する方向に向けられている。即ち、CCDカメラ46からの投光対象はノズル先端部10bであり、プライミング処理時において、CCDカメラ46は、レール45に沿って移動しながら、ノズル10の先端10bの一端から他端まで、所定波長の光を投光し、その反射光を受光するようになされている。
【0041】
また、図8に示すように、第二の実施形態にあっては、ノズル10の構成が第一の実施形態とは異なる。
即ち、図示するように、ノズルパーツ16の構成は第一の実施形態と同じであるが、ノズルパーツ17において図3に示した導光板33及び反射板32は具備しない。
また、ノズルパーツ17において先端部10bには、図3に示した透光部材31と同様の部材で形成された透光部材47が設けられる。この透光部材47の上端は、少なくとも光源34から放射された光が、この透光部材47を透過し、対向するノズルパーツ16のキャビティ16bに照射される高さとなされている。
【0042】
かかる構成により、図8に示すようにノズル10が回転ローラ13上に位置する状態で、光源34が点灯すると、ノズル先端10bの透光部材47を介し、ノズルパーツ16の内側面16a(及びキャビティ16b)に形成された光触媒層30に対して紫外線が照射されるようになされている。
このため、プライミング処理において、ノズル10の吐出口10aからレジスト液を吐出する前に、光源34により光触媒層30に対し紫外線を照射することによって、光触媒層30上における付着物を効果的に解離することができる。そして、吐出口10aからレジスト液を吐出することにより、解離された付着物を容易に除去することができる。
【0043】
また、図8に示すようにノズル10が回転ローラ13上に位置する状態で、CCDカメラ46がレール45に沿って移動しながら投光した所定波長の光は、透光部材47を透過し、ノズルパーツ16の内側面16aに形成された光触媒層30に照射されて反射し、再び透光部材47を透過してCCDカメラ46に受光されることとなる。
【0044】
また、CCDカメラ46が受光した受光信号は、制御部50に供給され、その受光信号は、ノズル先端10bの内側面16aに、固化した付着物が存在するか否かの判定に用いられる。
具体的には、ノズル先端10bの内側面16aに固化した付着物が存在する場合、投光された光の強度が反射光において低下すると共に、反射光において位相ずれが生じる。そのため、制御部50では、受光信号から得られる反射光の位相と強度とが、それぞれ所定範囲内であるか否かを判定することによって、内側面16aにおいて固化した付着物の有無を判定するようになされている。
尚、CCDカメラ46が投光する光の波長は、レジスト液に対し吸収帯の少ない波長が望ましい。
【0045】
続いて、このように構成された第二の実施形態にかかる塗布装置1において、基板Gへのレジスト液の塗布から待機時におけるノズルのプライミング処理(ノズル洗浄処理)までの一連の流れについて説明する。
塗布装置1においては、浮上ステージ3に新たにガラス基板Gが搬入されると、基板Gはステージ3上に形成された不活性ガスの気流によって下方から支持され、基板キャリア6により保持される(図9のステップST1)。
そして、制御部50の制御により基板キャリア6が駆動され、基板搬送方向に搬送開始される(図9のステップST2)。
【0046】
また、図10(a)に示すように、レジストノズル10の吐出口10aからレジスト液Rが吐出され、ノズル10の下方を通過する基板Gに対し塗布処理が施される(図9のステップST3)。
基板G上へのレジスト液の塗布処理が終了すると、ノズル10からのレジスト液の吐出が停止され、塗布処理が完了した基板Gは、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bに引き渡され、コロ搬送によって後段の処理部へ搬出される(図9のステップST4)。
【0047】
待機期間に入ると、制御部50は、ノズル10をレール10に沿って待機部15の上方へと移動させる(図9のステップST5)。
そして、先ずノズル10の先端部10bの外面に対し、ノズル洗浄部15aにより洗浄が行われ、ダミーディスペンス部15bにおいて所定量のレジスト液を予備的に吐出するダミー吐出が行われ、ノズル10の一次洗浄が完了する(図9のステップST6)。
【0048】
一次洗浄が完了したノズル10は、図10(b)に示すように回転ローラ13の上方へと移動される。
そして、CCDカメラ46がレール45に沿って移動しながら所定波長の光をノズル先端部10bに向けて投光し、光触媒層30において反射した反射光を受光する(図9のステップST7)。
CCDカメラ46による受光信号は、制御部50において光強度及び位相が所定範囲内であるか解析され、ノズル先端部10bの内側面16aに付着した固化物の有無が判定される。
【0049】
そして、制御部50により、内側面16aに付着物があると判定された場合(図9のステップST8)、光源駆動部35により光源34が点灯され、透光部材47を透過した光がノズルパーツ16の先端部10bに形成された光触媒層30に照射される(図9のステップST9)。
これにより、ノズル先端部10bにおいて光触媒層30上に残る付着物が酸化作用により分解され解離される。
【0050】
次いで、切換バルブ39の切換によってノズル10内の間隙Cに洗浄液(シンナー液)が供給され、図10(c)に示すように吐出口10aから洗浄液Tが洗浄タンク14内に吐出される(図9のステップST10)。
これにより、内側面16a,17aに残る付着物を洗浄液Tがきれいに溶解洗浄すると共に、ステップST9において解離された付着物が容易に洗い流される(二次洗浄)。
【0051】
次に、図10(d)に示すように回転ローラ13が所定方向に回転駆動され、切換バルブ39の切換によってレジスト供給源20からノズル10にレジスト供給されて吐出口10aから回転ローラ13のローラ面にレジスト液Rが吐出される。これにより、吐出口10aに均一にレジスト液Rを付着させるためのプライミング処理が行われる(図9のステップST11)。
尚、ステップST8において、制御部50により内側面16aに付着物が無いと判定された場合、紫外線照射(ステップST9)及び洗浄液Tの吐出(ステップST10)は行われず、ステップST11のプライミング処理が行われる。
プライミング処理が完了したノズル10は塗布位置へと移動され、次の基板Gの塗布処理を行うこととなる(図9のステップST12)。
【0052】
以上のように、本発明に係る第二の実施形態によれば、前記第一の実施形態と同様にノズル先端10bにおいてレジスト付着量の多い基板移動方向側の内側面16aに光触媒層30が形成され、相対向する内側面17aから前記光触媒層30に光(紫外線)照射が可能な構成となされる。
さらに、ノズル先端部10bの内側面16aの状態を検出するためのCCDカメラ46が設けられ、制御部50において内側面16aにおける付着物の有無が判定される。
この構成により、前記第一の実施形態と同様の作用効果を得ることができるだけでなく、ノズル先端部10bの内側面16aに付着物が有る場合にのみ、内側面16aの光触媒層30に対し光照射を行えばよく、効率的にノズル内の洗浄を行うことができる。
【0053】
尚、前記第二の実施形態においては、内側面16aの光触媒層30に光照射し(図9のステップST9)、解離した付着物を洗浄液Tにより洗い流すようにしたが(図9のステップST10)、それに限定されるものではない。
例えば、前記ステップST10を省き、ステップST11のプライミング処理におけるレジスト液Rの吐出により付着物を洗い流すようにしてもよい。
【0054】
また、前記第一、第二の実施形態にあっては、ノズル10の一次洗浄(図4のステップS6、図9のステップST6)の後にノズル内側面16aの光触媒層30に対し光照射を行い、解離した付着物を洗浄液T、或いはプライミング処理でのレジスト液吐出により洗い流すようにしたが、光照射、及び洗い流しのタイミングは、それに限定されるものではない。
例えば、ノズル10の一次洗浄において、ノズル先端部10bの外面をノズル洗浄部15aで洗浄した後、前記光触媒層30に光照射を行い、解離した付着物を、ダミーディスペンス部15bにおけるレジスト液吐出により洗い流し、更にその後、プライミング処理を行うようにしてもよい。
【0055】
また、前記第一、第二の実施形態においては、浮上ステージ3上を平流し搬送される基板Gに対しレジスト膜を形成する構成としたが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、塗布液を吐出するノズルと被処理基板とが相対的に移動する構成であれば、その他の構成にも適用することができる。例えば、基板Gをステージに載置(吸着)し、前記ステージをノズルに対して移動させる構成であってもよい。或いは、基板Gをステージに載置(吸着)し、ノズルを走査しながら塗布膜を形成する構成であってもよい。
【0056】
また、光触媒層30を、例えば酸化チタン(TiO2)をコーティングすることにより形成し、光源34が放射する光を短波長の紫外線としたが、その組み合わせに限定されるものではなく、光触媒反応可能な組み合わせであれば、他の光触媒や他の波長の光を用いてもよい。
また、前記第一、第二の実施形態にあっては、本発明にかかる塗布装置をレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明したが、本発明にかかる塗布装置は、このユニットに限定されることなく、他の基板処理ユニット等においても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 塗布装置
5 ガイドレール(相対移動手段)
6 基板キャリア(相対移動手段)
10 ノズル
10a 吐出口
30 光触媒層
34 光源(光照射手段)
35 光源駆動部(光照射手段)
G ガラス基板(被処理基板)
R レジスト(塗布液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対し、前記吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置であって、
前記吐出口が形成されるノズル先端部において塗布液が流れる流路内に設けられた光触媒層と、前記光触媒層に光触媒可能な光を照射する光照射手段とを備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記ノズル先端部は、前記基板の移動方向側に配置された第一のノズルパーツと、前記第一のノズルパーツに対し所定の間隙を空けて対向配置された第二のノズルパーツとにより構成され、
前記第一のノズルパーツの内側面に、前記光触媒層が設けられ、前記第二のノズルパーツは透光部材により形成され、
前記光照射手段は、前記透光部材を介して前記光触媒層に光照射することを特徴とする請求項1に記載された塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルに前記塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記ノズルに前記塗布液を溶解可能な洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記塗布液供給手段から前記ノズルへの供給経路と前記洗浄液供給手段から前記ノズルへの供給経路とを切換可能な切換手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された塗布装置。
【請求項4】
前記第二のノズルパーツの透光部材を介して、第一のノズルパーツの内側面に形成された光触媒層に対し、所定波長の光を投光し、その反射光を受光する光センサと、
前記光センサの受光信号に基づいて、前記光触媒層における付着物の有無を判定する制御手段とを備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載された塗布装置。
【請求項5】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対し前記吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段と、前記吐出口が形成されるノズル先端部において塗布液が流れる流路内に設けられた光触媒層と、前記光触媒層に光触媒可能な光を照射する光照射手段とを備える塗布装置において、前記ノズル先端部内を洗浄するノズル洗浄方法であって、
前記ノズルの吐出口から前記基板への塗布液の吐出が完了した後、前記光照射手段により前記透光部材を介して前記光触媒層に光照射するステップと、
前記吐出口から前記塗布液、又は前記塗布液を溶解可能な洗浄液を吐出するステップとを含むことを特徴とするノズル洗浄方法。
【請求項6】
前記ノズルの吐出口から前記基板への塗布液の吐出が完了した後、
前記透光部材を介して前記光触媒層に対し所定波長の光を投光し、その反射光を光センサにより受光するステップと、
前記光センサの受光信号に基づいて、前記光触媒層における付着物の有無を判定するステップとを実行し、
前記光触媒層における付着物が有ると判定された場合に、
前記光照射手段により前記透光部材を介して前記光触媒層に光照射するステップと、
前記吐出口から前記塗布液、又は前記塗布液を溶解可能な洗浄液を吐出するステップとを実行することを特徴とする請求項5に記載されたノズル洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−173091(P2011−173091A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40485(P2010−40485)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】