説明

塗布装置

【課題】複数の吐出口から吐出された流動性材料の乾燥速度の均一性を向上する。
【解決手段】塗布ヘッド14の主走査方向の両側には蛇腹状の2つの拡散部材31がそれぞれ取り付けられる。また、塗布ヘッド14では複数の吐出口171が主走査方向に垂直な副走査方向に関して等ピッチにて配列され、基板9上に有機EL液が吐出される。塗布装置1では、ヘッド移動機構15による塗布ヘッド14の主走査方向への移動により、拡散部材31が塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間にて伸展して当該空間に空気を送り込み、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌する気流を発生させる。これにより、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の周囲の雰囲気において有機EL液の溶媒成分の濃度が均一化され、有機EL液の乾燥速度の均一性が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体の基板上にレジスト液等の流動性材料を塗布する装置として、特許文献1および2に開示されているように、流動性材料を連続的に吐出するノズルを基板上で走査することにより、複数の平行線状に流動性材料を基板上に塗布し、流動性材料が広がって互いに接触することにより基板の主面全域に塗布を行う塗布装置が知られている。
【0003】
このような塗布装置では、流動性材料の膜厚の均一性を向上するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、レジスト塗布装置により塗布液が塗布された半導体の基板を、レジスト塗布装置とは別に設けられた溶剤雰囲気装置において塗布液の溶剤雰囲気に曝すことにより、溶剤を塗布液表面に付着させて塗布液表面の粘性を低下させ、その後、基板が収容されている容器内に気流を形成して当該気流により塗布液の表面を平坦化する技術が開示されている。特許文献2の塗布成膜装置では、基板の上方2mm以内の位置に基板のほぼ全体を覆う乾燥防止板を設け、当該乾燥防止板に形成された直線状の隙間において、絶縁膜用の塗布液を吐出するノズルを基板に対して走査することにより、基板上に一様に塗布液が塗布される。これにより、基板と乾燥防止板との間に高濃度の溶剤雰囲気が形成され、基板に塗布された塗布液の乾燥が抑制される。
【0004】
ところで、流動性材料を吐出するノズルを走査することにより基板に流動性材料を塗布する塗布装置は、平面表示装置用のガラスの基板に対して画素形成材料を含む流動性材料を塗布する際にも応用が検討されている。典型的な例では、基板上に形成された隔壁に沿ってノズルを繰り返し走査することにより、流動性材料が所定のピッチにてストライプ状に塗布される。このとき、基板上では、流動性材料の各ライン(線状要素)から溶媒成分が蒸発し、これらのラインが塗布された順に乾燥していく。流動性材料は、乾燥するまでの間に画素形成材料が十分に分散して基板上にほぼ均一に定着するが、塗布から乾燥終了までの時間が短いと、画素形成材料の分散の程度が他の領域と異なる状態で流動性材料の乾燥が終了してしまうこととなる。
【0005】
基板上の塗布の開始端側のラインおよび終端側のラインでは、塗布領域の中央部に比べて、周囲の流動性材料から蒸発する溶媒成分の量が少ないため、雰囲気中の溶媒成分の濃度が低くなる。このため、流動性材料の乾燥時間が他の領域に比べて短くなり、画素形成材料の分散状態が中央部と異なってしまう。そこで、特許文献3では、基板上の塗布の開始端側および終端側のそれぞれにおいて、塗布領域の外側の非塗布領域に流動性材料を塗布する(ダミーラインを形成する)ことにより、流動性材料の乾燥時間が他の領域よりも短くなることを抑制する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−17402号公報
【特許文献2】特開2005−13787号公報
【特許文献3】特開2007−144240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、塗布装置におけるタクト時間の向上を図るために、複数のノズルの走査、および、走査方向に垂直な方向への基板のステップ移動を繰り返すことにより、ガラスの基板上に流動性材料をストライプ状に塗布する場合、基板のステップ移動方向の後側には流動性材料が塗布されていないため、複数のノズルのうち、ステップ移動方向に関して最も後側に位置するノズルにより塗布された流動性材料のラインの周囲では、他のノズルにより塗布された流動性材料のラインの周囲に比べて雰囲気中の溶媒成分の濃度が低くなってしまう。このため、最も後側のノズルにより塗布された流動性材料のラインが、他のノズルにより塗布された流動性材料のラインよりも早く乾燥し、画素形成材料の分散状態が他のラインと異なってしまう。その結果、基板全体としてみた場合に塗布ムラが発生し、製品となった後の平面表示装置における表示の質が低下してしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の吐出口から吐出された流動性材料の乾燥速度の均一性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、揮発性の溶媒および前記基板上に付与する材料を含む流動性材料を、前記基板に平行な副走査方向に関して等間隔にて配列された複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出機構と、前記副走査方向に垂直かつ前記基板に平行な主走査方向に前記吐出機構を移動する主走査機構と、前記吐出機構の前記主走査方向への移動が完了する毎に前記基板を前記吐出機構に対して前記副走査方向に相対的に移動する副走査機構と、前記吐出機構に取り付けられており、前記主走査機構による前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記基板上に吐出された直後の前記流動性材料の周囲に気流を発生する気流発生部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗布装置であって、前記気流発生部が、前記主走査機構による前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記吐出機構の進行方向の後側の空間に空気を送り込む。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の塗布装置であって、前記気流発生部が、前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記吐出機構の進行方向の後側の空間にて伸展して前記空間に周囲の空気を送り込む蛇腹状の部材である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の塗布装置であって、前記気流発生部が、前記主走査機構により前記吐出機構と共に前記主走査方向に移動することにより、前記吐出機構と前記基板との間に空気を送り込む送風部材である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の塗布装置であって、前記送風部材が、前記吐出機構の前記副走査方向側に取り付けられる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の塗布装置であって、前記送風部材が、前記副走査機構による前記基板の間欠的な相対移動方向の前側に取り付けられる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の塗布装置であって、前記送風部材が、前記吐出機構の前記主走査方向側に取り付けられる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、前記吐出機構が前記主走査方向への移動の往路および復路にて前記基板上に前記流動性材料を吐出し、前記気流発生部が、前記吐出機構の移動の前記往路および前記復路の双方にて前記気流を発生する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の塗布装置であって、前記流動性材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板上に吐出された直後の流動性材料の周囲に気流を発生させることにより、複数の吐出口から吐出された流動性材料の周囲の雰囲気において流動性材料の溶媒成分の濃度を均一化することができ、その結果、流動性材料の乾燥速度の均一性を向上することができる。
【0018】
また、請求項2の発明では、吐出機構の進行方向の後側の空間に空気を送り込むことにより、吐出機構からの流動性材料の吐出に影響を与えることなく、溶媒成分の濃度を均一化することができ、請求項3の発明では、吐出機構の進行方向の後側の空間に空気を容易に送り込むことができる。
【0019】
また、請求項4の発明では、簡単な構造で溶媒成分の濃度の均一化を図ることができ、請求項6の発明では、溶媒成分の濃度をさらに均一化することができる。
【0020】
また、請求項8の発明では、流動性材料を基板上の広範囲に短時間にて塗布することができ、請求項9の発明では、有機EL表示装置において塗布ムラによる表示の質の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置1を示す平面図であり、図2は塗布装置1の正面図である。塗布装置1は、平面表示装置用のガラス基板9(以下、単に「基板9」という。)に、平面表示装置用の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する装置である。本実施の形態では、塗布装置1において、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板9に、揮発性の溶媒、および、一の色の発光材料として基板9上に付与される有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される。
【0022】
塗布装置1は、図2に示すように、基板9の一の主面(図2中の(−Z)側の主面)に当接して基板9を保持する基板保持部11を備え、図1および図2に示すように、基板保持部11を基板9の主面に平行な所定の方向(すなわち、図1中のY方向であり、以下、「副走査方向」という。)に水平移動するとともに垂直方向(すなわち、Z方向)に向く軸を中心として回転する基板移動機構12を備える。基板保持部11は、基板9を下側から加熱する基板加熱部であるヒータ(図示省略)を内部に備える。基板9の(+Z)側の主面90上の塗布領域91(図1中において細線の矩形にて示す。)には、それぞれが図1中のX方向に伸びる複数の隔壁がY方向に一定のピッチ(例えば100〜150マイクロメートル(μm)のピッチ)にて配列形成されている。なお、基板保持部は、基板9の(−Z)側の主面に当接して基板9を保持するもの以外に、基板9のY方向の端部を把持することにより基板9を保持するもの等であってもよい。
【0023】
塗布装置1は、また、基板保持部11に保持された基板9の主面90に向けて流動性材料を吐出する吐出機構である塗布ヘッド14、塗布ヘッド14を基板9の主面90に平行かつ副走査方向に垂直な方向(すなわち、図1中のX方向であり、以下、「主走査方向」という。)に水平移動するヘッド移動機構15、塗布ヘッド14の移動方向(すなわち、X方向)に関して基板保持部11の両側に設けられるとともに塗布ヘッド14からの有機EL液を受ける2つの受液部16(図2参照)、塗布ヘッド14に流動性材料を供給する流動性材料供給部18、並びに、これらの構成を制御する制御部2を備える。
【0024】
塗布装置1では、ヘッド移動機構15が、塗布ヘッド14を主走査方向に移動する(すなわち、主走査する)主走査機構となり、基板移動機構12が、塗布ヘッド14の主走査方向への移動が完了する毎に基板9を副走査方向に移動する(すなわち、副走査する)副走査機構となっている。なお、塗布ヘッド14の主走査時には、受液部16の近傍にて加速または減速が完了し、基板9の上方では塗布ヘッド14はほぼ一定の速度(例えば、毎秒3〜5メートル(m))にて移動する。また、基板9の主走査方向の幅は例えば1〜2mとされる。
【0025】
図1および図2に示すように、塗布ヘッド14は複数(本実施の形態では、5本)の吐出ノズル17を備える。各吐出ノズル17の(−Z)側の端面には吐出口(図2中では2つの吐出ノズル17の吐出口のみに符号171を付している。)が形成され、複数の吐出口171から同一種類の有機EL液が連続的に吐出される。本実施の形態では、基板9の主面90と吐出口171との間の距離は約0.5ミリメートル(mm)とされる。5本の吐出ノズル17は、X方向(すなわち、主走査方向)に略直線状に配列されるとともにY方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置される。塗布装置1では、複数の吐出ノズル17のY方向の位置が個別に調整可能とされており、5本の吐出ノズル17の吐出口171は副走査方向に関して等間隔にて配列され、互いに隣接する2本の吐出ノズル17の吐出口171の副走査方向の中心間距離は、基板9上の隔壁のY方向のピッチの3倍に等しくされる。
【0026】
図2に示すように、塗布ヘッド14の(+X)側および(−X)側のそれぞれには蛇腹状の部材31(後述するように、基板9の主面90近傍の雰囲気において有機EL液の溶媒成分を拡散する部材であるため、以下、「拡散部材31」という。)が設けられる。詳細には、各拡散部材31の一方の端部は塗布ヘッド14に固定され、他方の端部は基板保持部11および塗布ヘッド14を跨ぐようにして設けられる支持台311(図1では支持台311の図示を省略している。)に固定される。各拡散部材31は主走査方向に伸縮可能とされており、図1および主走査方向に沿って塗布ヘッド14近傍を示す図3のように、主走査方向に伸びるレール312により拡散部材31の(+Y)側の部分が主走査方向に移動可能に支持される。なお、図3では、ヘッド移動機構15、(+X)側の拡散部材31および基板9上の隔壁の図示を省略している。拡散部材31の基板9側の端部(または、吐出ノズル17を除く塗布ヘッド14の基板9側の端面)と基板9の主面90との間の距離は、好ましくは基板9の主面90と吐出口171との間の距離の2倍以上30倍以下とされ、本実施の形態では10倍(5mm)とされる。
【0027】
このような構成により、塗布ヘッド14が(−X)側から(+X)方向へと移動する際には、(−X)側の拡散部材31が伸展するとともに、(+X)側の拡散部材31が縮み(後述の図5参照)、(+X)側から(−X)方向へと移動する際には、(+X)側の拡散部材31が伸展するとともに、(−X)側の拡散部材31が縮むこととなる。
【0028】
次に、塗布装置1による有機EL液の塗布について述べる。図1に示す塗布領域91に有機EL液が塗布される際には、各吐出ノズル17から主面90上における隔壁間の領域(すなわち、主走査方向に伸びる領域であり、以下、「線状領域」という。)に有機EL液が吐出されて塗布される。後述するように、塗布装置1では副走査方向に一定のピッチ(隔壁のピッチに等しいピッチであり、以下、「領域ピッチ」という。)にて配列される複数の線状領域において、副走査方向に2つ置きに存在する線状領域に有機EL液が塗布される。すなわち、塗布装置1にて有機EL液が塗布される2つの線状領域の間には、他の塗布装置等により他の種類の有機EL液が塗布される2つの線状領域が挟まれている。以下、塗布装置1における具体的な塗布動作について説明する。
【0029】
図4は、塗布装置1における有機EL液の塗布の流れを示す図である。塗布装置1では、基板9が基板保持部11にて保持されると、基板9上に形成されたアライメントマークがアライメントマーク検出部(図示省略)にて検出され、アライメントマーク検出部からの出力に基づいて基板移動機構12が駆動されて基板9が移動および回転し、図1中に実線にて示す塗布開始位置に位置する(ステップS11)。既述のように、基板9の主面90上には互いに平行な複数の隔壁が配列形成され、主面90上の隔壁間の領域として線状領域が規定されており、基板9が塗布開始位置に配置されることにより、塗布装置1において、それぞれが主走査方向に伸びる複数の線状領域が主走査方向に垂直な副走査方向に一定の領域ピッチにて主面90上に配列設定された状態で、処理対象の基板9が準備されることとなる。このとき、塗布ヘッド14は、副走査方向に関して基板9の(+Y)側の端部近傍であり、主走査方向において、図1および図2中に実線にて示す待機位置(すなわち、図1中の(−X)側の受液部16の上方)に予め配置されている。
【0030】
続いて、複数の吐出ノズル17から有機EL液の吐出が開始され(ステップS12)、さらに、ヘッド移動機構15が制御されて塗布ヘッド14の主走査方向の移動(すなわち、図1中の(−X)側から(+X)側への主走査)が開始される。これにより、複数の吐出口171のそれぞれから基板9の主面90に向けて有機EL液を一定の流量にて連続的に(途切れることなく)吐出しつつ、塗布ヘッド14が主走査方向に連続的に一定の速度にて移動し、基板9の塗布領域91の5個の線状領域に有機EL液がストライプ状に塗布される(ステップS13)。
【0031】
そして、図5に示すように、塗布ヘッド14が(+X)側の受液部16の上方(すなわち、図1および図2中に二点鎖線にて示す待機位置)まで移動することにより、有機EL液によるストライプ状のパターンが形成される。以下の説明では、当該パターンにおいて1つの吐出口171に対応するラインを線状要素と呼ぶ。なお、図1中における塗布領域91の(+X)側および(−X)側の非塗布領域(並びに、必要に応じて(+Y)側および(−Y)側の非塗布領域)は図示省略のマスクにより覆われているため有機EL液は基板9上に直接には塗布されない。
【0032】
図6は、基板9の主走査方向に垂直な断面を示す図である。塗布装置1では、既述のように、複数の線状領域(すなわち、図6に示すように、それぞれが互いに隣接する2つの隔壁92間の主面90上の領域であり、図6中にて符号93を付している。)のうち副走査方向に2つ置きに存在する線状領域93に対して有機EL液が塗布されている。
【0033】
塗布ヘッド14の主走査にて複数の吐出ノズル17により複数の線状領域93上に塗布された有機EL液は、短時間にて乾燥(すなわち、有機EL液からの溶媒の蒸発)が終了するが、塗布装置1では、塗布ヘッド14が(−X)側から(+X)方向へと移動する際に、図5に示すように、塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間(すなわち、連続的に移動する塗布ヘッド14の(−X)側の空間)にて(−X)側の拡散部材31が伸展することにより、当該空間に周囲の空気が送り込まれる。このとき、基板9上に吐出された有機EL液の上方が、伸展した拡散部材31にて覆われることにより、実際には基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌する気流(すなわち、様々な方向に向かう気流)が発生する。これにより、複数の吐出口171から複数の線状領域93上に吐出された有機EL液の周囲の雰囲気において、揮発する有機EL液の溶媒成分が拡散されて溶媒成分の濃度が均一化され、複数の線状領域93上に塗布された有機EL液は、ほぼ同じ雰囲気の下で乾燥する(すなわち、有機EL液から溶媒が蒸発する)。そして、図6に示すように、有機EL材料が半乾燥状態で基板9上に残置されて(すなわち、付与されて)、各線状要素94が有機EL材料の膜となる。なお、図6では、複数の線状要素94の全体を符号A1を付す二点鎖線にて囲むことにより、複数の線状要素94の周囲の雰囲気にて有機EL液の溶媒成分の濃度が均一化されている状態を抽象的に示している。
【0034】
塗布ヘッド14が待機位置まで移動すると、基板移動機構12が駆動され、基板9が基板保持部11と共に(+Y)方向(すなわち、副走査方向)に領域ピッチの15倍に等しい距離だけ移動する(ステップS14)。このとき、塗布ヘッド14では、複数の吐出ノズル17から受液部16に向けて有機EL液が連続的に吐出されている。
【0035】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、基板9および基板保持部11が図1中に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動したか否かが制御部2により確認される(ステップS15)。そして、塗布終了位置まで移動していない場合には、ステップS13に戻って塗布ヘッド14が複数の吐出ノズル17から有機EL液を吐出しつつ基板9の(+X)側から(−X)方向(すなわち、主走査方向)に移動することにより、基板9上の線状領域に有機EL液が塗布される(ステップS13)。このとき、図2に示すように(+X)側の拡散部材31が伸展することにより、塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間(すなわち、連続的に移動する塗布ヘッド14の(+X)側の空間)に周囲の空気が送り込まれ、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌する気流が発生する。その後、基板9が副走査方向に移動し、塗布終了位置まで移動したか否かの確認が行われる(ステップS14,S15)。
【0036】
塗布装置1では、基板保持部11および基板9が塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド14の主走査方向への移動が完了する毎に、基板9が副走査方向に相対的に移動され(すなわち、塗布ヘッド14の主走査方向における移動、および、基板9の(+Y)側へのステップ移動が繰り返され)、これにより、基板9の塗布領域91において、有機EL液が領域ピッチの3倍に等しいピッチにて配列されたストライプ状に塗布される(ステップS13〜S15)。塗布装置1では、副走査方向に関し、基板9上において有機EL液の塗布が進行する方向(すなわち、塗布ヘッド14の基板9に対する相対移動方向)は、基板移動機構12による基板9の移動方向とは反対向きとなっている。
【0037】
基板9が塗布終了位置まで移動すると、複数の吐出ノズル17からの有機EL液の吐出が停止され(ステップS15,S16)、塗布装置1による基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。塗布装置1による塗布が終了した基板9は、他の塗布装置等へと搬送され、塗布装置1により塗布された有機EL液以外の他の2色の有機EL液が塗布される。そして、基板9に対して所定の工程が行われた後、他の部品と組み合わされて有機EL表示装置が製造される。
【0038】
ところで、仮に、図1の塗布装置1から拡散部材31を省略した比較例の塗布装置にて基板9上に有機EL液の塗布を行った場合、複数の(5本の)吐出ノズル17のうち中央近傍の3本の吐出ノズル17により塗布された有機EL液の線状要素の周囲では、雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなり、(+Y)側の吐出ノズル17により塗布された有機EL液の線状要素の周囲においても、直前の塗布ヘッド14の主走査にて最も(−Y)側の吐出ノズル17により塗布された有機EL液の線状要素の影響により、雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が高くなる。
【0039】
しかしながら、(−Y)側の吐出ノズル17(すなわち、副走査方向における基板の相対移動方向後側のノズルであり、以下、「後側ノズル」という。ただし、塗布ヘッド14に着目した場合、前側のノズルとなる。)により塗布された有機EL液の線状要素(以下、後側ノズルにて形成される線状要素を「後側線状要素」という。)の(−Y)側には、他の有機EL液の線状要素は形成されておらず、(+Y)側にのみ、中央近傍の吐出ノズル17により並行して塗布された有機EL液の線状要素が配置されることとなる。このため、(−Y)側の後側ノズルにより塗布された後側線状要素の周囲では、(+Y)側の吐出ノズル17および中央近傍の3本の吐出ノズル17により塗布された線状要素の周囲と比べて有機EL液の溶媒成分の濃度が低くなる。正確には、後側線状要素の周囲では、後側線状要素の(−Y)側における雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が、後側線状要素の(+Y)側における濃度よりも低くなる。
【0040】
したがって、後側線状要素の(−Y)側の部位が(+Y)側の部位よりも大幅に早く乾燥してしまい、図7.Aに示すように、半乾燥状態の有機EL材料にて形成される(−Y)側の後側線状要素94aにおいて、(−Y)側の部位(角状の突起を含む部位。(+Y)側の部位において同様。)の膜厚と(+Y)側の部位の膜厚との差D1(以下、「縁部膜厚差」という。)が、縁部膜厚差はほぼ0となっている他の線状要素94に比べて大きくなり、複数の線状要素94において主走査方向に垂直な断面の形状である有機EL材料の分散状態が一定ではなくなる。なお、図7.Aでは、(−Y)側の後側線状要素94aの一部および他の線状要素94を符号A2を付す二点鎖線にて囲むことにより、後側線状要素94aの(−Y)側における雰囲気中の有機EL液の溶媒成分の濃度が、後側線状要素94aの(+Y)側における濃度と異なる状態を抽象的に示している。
【0041】
そして、このように厚さに偏りがある有機EL材料の後側線状要素94aが、塗布領域に周期的に(すなわち、5本毎に)形成されると、塗布ムラ(ステッチングとも呼ばれる。)として認識されてしまい、製品となった後の有機EL表示装置における表示の質が低下してしまう場合がある。後側線状要素では、必ずしも同時に形成される他の線状要素側の部位の膜厚が当該部位とは反対側の部位の膜厚よりも小さくなる訳ではなく、塗布に用いられる有機EL液の種類によっては、同時に形成される他の線状要素側の部位の膜厚が当該部位とは反対側の部位の膜厚よりも大きくなることもある。
【0042】
なお、仮に塗布ヘッドに1本のノズルのみを設け、図7.Aの場合と同様のピッチにて塗布を行う場合には、基板9上における複数の線状要素はほぼ一定の条件にて形成されることとなり、図7.Bに示すように、複数の線状要素94において主走査方向に垂直な断面の形状はほぼ一定となる。この場合、塗布ムラは認識されないが、基板9の全体への線状要素94の形成に要する時間(タクト時間)が長くなってしまう。
【0043】
上記比較例の塗布装置に対して、図1の塗布装置1では、気流発生部である拡散部材31が塗布ヘッド14に取り付けられ、ヘッド移動機構15による塗布ヘッド14の主走査方向への移動により、拡散部材31が塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間に空気を送り込み、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生する(すなわち、一の主走査にて基板9上に吐出される有機EL液の周囲に、当該主走査が完了するまでに気流を発生する)。これにより、塗布ヘッド14からの有機EL液の吐出に影響を与えることなく、複数の吐出口171から吐出される有機EL液にて形成される複数の線状要素94の周囲の雰囲気において、有機EL液の溶媒成分の濃度を均一化する(すなわち、雰囲気を均質化する)ことができ、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の乾燥速度の均一性を向上することができる。その結果、基板9上に形成される有機EL材料の線状要素94の断面形状の不均一性(縁部膜厚差のばらつき)を低減して、基板9を用いて製造される有機EL表示装置において塗布ムラによる表示の質の低下を抑制することができる。
【0044】
また、気流発生部が蛇腹状の拡散部材31とされることにより、塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間に空気を容易に送り込むことができる。さらに、塗布装置1では、塗布ヘッド14が主走査方向への移動の往路および復路にて基板9上に有機EL液を吐出し、2つの拡散部材31が、塗布ヘッド14の移動の往路および復路の双方にて基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生する。これにより、基板9上に形成される有機EL材料の線状要素94の断面形状の不均一性を低減しつつ、有機EL液を基板9上の広範囲に短時間にて塗布することができる(すなわち、基板9上の広範囲に複数の線状要素94を短時間にて形成することができる。)。
【0045】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る塗布ヘッド14近傍を示す平面図であり、図9は図8中の矢印A−Aの位置における送風部材32の断面図である。本実施の形態における塗布装置1は、図1の塗布装置1において拡散部材31、支持台311およびレール312が省略されるとともに、送風部材32が追加される。他の構成は、図1の塗布装置1と同様である。
【0046】
図8に示すように、2つの送風部材32は塗布ヘッド14の副走査方向側((+Y)側)に設けられ、塗布ヘッド14の(+X)側および(−X)側の端部近傍にそれぞれ配置される。図8および図9に示すように、各送風部材32は、外形が直角三角形であって、隙間を空けて平行に配置される2つの板状の側壁板322を有し、2つの側壁板322は、塗布ヘッド14の中央部側に斜辺を位置させつつ、斜辺を除く2つの辺がX方向またはZ方向に沿うように配置される。互いに対向する2つの側壁板322の斜辺の部位には、板状部材321(以下、「傾斜板321」という。)が取り付けられ、傾斜板321はX方向に関して塗布ヘッド14の中央に向かうに従って基板9との間の距離が減少するように傾斜している。
【0047】
図8の送風部材32を有する塗布装置1にて有機EL液の塗布を行う際には、基板9を塗布開始位置に移動するとともに(図4:ステップS11)、吐出ノズル17からの有機EL液の吐出を開始した後(ステップS12)、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14が(−X)側から(+X)方向に主走査することにより、基板9上に有機EL液が塗布される(ステップS13)。
【0048】
このとき、塗布ヘッド14の主走査に伴って(+X)側の送風部材32の内部へと進入する空気(すなわち、塗布ヘッド14の進行方向前側の空気)は、図9中にて符号81aを付す矢印にて示すように(ただし、図9ではX方向の向きが図8とは左右反対となっている。)、傾斜板321のおよそ基板9側を向く面321a(塗布ヘッド14の進行方向前側の面であり、以下、「案内面321a」という。)により基板9側へと案内される。塗布装置1では、第1の実施の形態における拡散部材31の場合と同様に、塗布ヘッド14および傾斜板321と基板9の主面90との間の距離は微小とされており、基板9側へと向かう空気が主面90上にて広がって塗布ヘッド14と基板9との間に空気が送り込まれることにより、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌する気流が発生する。これにより、複数の吐出口171から複数の線状領域上に吐出された有機EL液の周囲の雰囲気において有機EL液の溶媒成分の濃度が均一化され、複数の線状領域上の有機EL液がほぼ同じ雰囲気の下で乾燥する。
【0049】
その後、基板9が副走査方向に移動し(ステップS14)、基板9が塗布終了位置まで移動していないことが確認されると(ステップS15)、塗布ヘッド14が(+X)側から(−X)方向に主走査することにより、基板9上に有機EL液が塗布される(ステップS13)。このとき、送風部材32が、基板移動機構12による基板9の間欠的な相対移動方向の前側(塗布ヘッド14に着目した場合、塗布ヘッド14の相対移動方向の後側)に取り付けられていることにより、直前の塗布ヘッド14の主走査にて基板9上に塗布された有機EL液の近傍における空気、すなわち、有機EL液の溶媒成分の濃度が比較的高い空気が(−X)側の送風部材32の内部へと進入し、図9中にて符号81bを付す矢印にて示すように、傾斜板321の案内面321aにより基板9側へと案内され、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌する気流が発生する。
【0050】
塗布装置1では、基板9が塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド14の主走査方向への移動が完了する毎に、基板9が副走査方向に相対的に移動され、基板9の塗布領域91において、有機EL液が領域ピッチの3倍に等しいピッチにて配列されたストライプ状に塗布される(ステップS13〜S15)。そして、基板9が塗布終了位置まで移動すると、複数の吐出ノズル17からの有機EL液の吐出が停止され(ステップS15,S16)、塗布装置1による基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。
【0051】
以上に説明したように、第2の実施の形態に係る塗布装置1では、気流発生部である送風部材32が塗布ヘッド14に取り付けられ、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14と共に主走査方向に移動することにより、送風部材32が基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生する。これにより、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の周囲の雰囲気において、有機EL液の溶媒成分の濃度を均一化することを簡単な構造にて実現することができ、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の乾燥速度の均一性を向上することができる。その結果、基板9上に形成される有機EL材料の線状要素の断面形状の不均一性を低減して、基板9を用いて製造される有機EL表示装置において塗布ムラによる表示の質の低下を抑制することができる。
【0052】
また、塗布装置1では、塗布ヘッド14が主走査方向への移動の往路および復路にて基板9上に有機EL液を吐出し、2つの送風部材32が、塗布ヘッド14の移動の往路および復路の双方にて基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生する。これにより、基板9上に形成される有機EL材料の線状要素の断面形状の不均一性を低減しつつ、基板9上に多数の線状要素を短時間にて形成することができる。
【0053】
図10は送風部材の他の例を示す斜視図であり、図10では、塗布ヘッド14を二点鎖線にて示している。図10の塗布ヘッド14では、送風部材32が主走査方向(X方向)側に取り付けられており、実際には、塗布ヘッド14の(+X)側および(−X)側の双方に取り付けられる。これにより、図10中にて符号82を付す矢印にて示すように、塗布ヘッド14の主走査に伴って、送風部材32により塗布ヘッド14と基板9との間に(すなわち、図10中の塗布ヘッド14の(−Z)側の空間に)空気を直接的に送り込むことが可能となる。その結果、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を効率よく攪拌して、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の乾燥速度の均一性を向上することが実現される。なお、既述のように、実際の塗布装置1では、吐出ノズル17の吐出口171は基板9の主面90に近接して設けられるため、塗布ヘッド14と基板9との間に直接的に送り込まれる空気により、有機EL液の塗布が乱れることはない。
【0054】
図11は送風部材のさらに他の例を示す斜視図であり、図12は塗布ヘッド14および送風部材32aを示す平面図である。なお、図12では、基板9上の隔壁の図示を省略しつつ基板9上に形成される線状要素94を細線にて示している(後述の図13および図16において同様)。
【0055】
図11の送風部材32aは板状部材であって、一の主面の法線が基板9の主面に平行(すなわち、図11中のXY平面に平行)かつ主走査方向(X方向)に対して傾斜しており、塗布ヘッド14の副走査方向(Y方向)側に取り付けられる。実際には、図12に示すように、2つの送風部材32aが塗布ヘッド14の(+X)側および(−X)側の端部近傍にそれぞれ取り付けられており、各送風部材32aは主走査方向に関して塗布ヘッド14の端部に向かうに従って塗布ヘッド14から離れるように傾斜しつつ、少なくとも一部が塗布ヘッド14の下面(ただし、吐出ノズル17は含まない。以下同様。)よりも基板9側に位置するように固定されている。
【0056】
送風部材32aを有する塗布装置1では、塗布ヘッド14が(+X)側から(−X)方向に移動する際に、図11および図12中にて符号83を付す矢印にて示すように、(−X)側の送風部材32aの(−X)側の面により空気が塗布ヘッド14と基板9との間(すなわち、図11の塗布ヘッド14の(−Z)側の空間)に案内される。これにより、塗布ヘッド14と基板9との間にて気流が発生して基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気が攪拌され、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の周囲の雰囲気において有機EL液の溶媒成分の濃度が均一化される。また、塗布ヘッド14が(−X)側から(+X)方向に移動する際には、(+X)側の送風部材32aにより、塗布ヘッド14と基板9との間に空気が送り込まれる。
【0057】
塗布装置1では、図13に示すように、各送風部材32aが主走査方向に関して塗布ヘッド14の中央部に向かうに従って塗布ヘッド14から離れるように傾斜して取り付けられてもよい。この場合でも、図13中に符号84を付す矢印にて示すように、塗布ヘッド14と基板9との間に空気を送り込んで、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気を攪拌することが可能となる。
【0058】
図14は送風部材のさらに他の例を示す斜視図である。図14に示すように、送風部材32bは塗布ヘッド14の主走査方向(X方向)の各端部近傍において、塗布ヘッド14の基板9側に取り付けられており(ただし、図14では、塗布ヘッド14の一方の端部近傍のみを図示している。)、送風部材32bは主走査方向に関して塗布ヘッド14の中央部側に向かうに従って副走査方向(Y方向)の幅が漸次増大する形状となっている。塗布ヘッド14が図14中の(+X)側から(−X)方向に移動する際には、図14中に符号85を付す矢印にて示すように、副走査方向に関して塗布ヘッド14の中心から離れるように、空気が送風部材32bにより導かれる。これにより、実際には、送風部材32bの(+X)側(塗布ヘッド14の進行方向の後側)にて空気の渦が発生し、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気が攪拌される。その結果、複数の吐出口171から吐出された有機EL液の乾燥速度の均一性を向上することが実現される。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0060】
第1の実施の形態では、拡散部材31はレール312にて支持されるが、他の手法により拡散部材31が支持されてもよい。例えば、図15に示すように、支持台311が(+Z)方向に高くされ、伸縮可能な複数の紐状部材313の一端が支持台311のX方向に伸びる支持部311aに固定され、他端が拡散部材31に固定されることにより、拡散部材31が複数箇所にて支持される。また、紐状部材313に代えて棒状部材が用いられ、当該棒状部材の一端が支持部311aによりX方向に移動可能に支持され、他端が拡散部材31に固定されることにより、拡散部材31が複数箇所にて支持されてもよい。
【0061】
また、第1の実施の形態では、塗布ヘッド14の主走査方向への移動の際に、拡散部材31により塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間に空気が送り込まれるが、例えば、図16に示すように、図13の送風部材32aと同様の板状部材31aが、主走査方向に関して塗布ヘッド14から離れた位置に配置されて塗布ヘッド14に対して固定され(実際には、図示省略の支持部材により、塗布ヘッド14の下面よりも(+Z)側において塗布ヘッド14に対して固定される。)、塗布ヘッド14が(+X)側から(−X)方向に移動する際に、図16中に符号86を付す矢印にて示すように、塗布ヘッド14の進行方向の後側の空間に空気が送り込まれてもよい。
【0062】
上記第2の実施の形態では、2つの送風部材32,32a,32bが設けられることにより、塗布ヘッド14の主走査方向への往復移動の往路および復路のそれぞれにおいて、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生することが実現されるが、例えば、図17に示すように、図9中の2つの送風部材32における2つの案内面321aと同等の2つの案内面321cを有する1つの送風部材32cが、塗布ヘッド14の中央部近傍において塗布ヘッド14の副走査方向側に設けられることにより、塗布ヘッド14の主走査方向への往復移動の往路および復路のそれぞれにおいて、基板9上に吐出された直後の有機EL液の周囲に気流を発生させてもよい。
【0063】
また、図8および図9に示す送風部材32では、傾斜板321の案内面321aが側壁板322にて囲まれることにより空気を基板9側に効率よく導くことが実現されるが、送風部材の設計によっては、側壁板322を省略することも可能である。
【0064】
図8、図12および図13の送風部材32aは、塗布ヘッド14の(−Y)側(すなわち、基板移動機構12による基板9の間欠的な相対移動方向の後側)に配置されてもよい。ただし、複数の吐出口171から吐出された直後の有機EL液の周囲の雰囲気において、有機EL液の溶媒成分の濃度をさらに均一化するには、基板移動機構12による基板9の間欠的な相対移動方向の前側に送風部材32aが取り付けられ、溶媒成分の濃度が高い空気が塗布ヘッド14と基板9との間に送り込まれることが好ましい。
【0065】
上記第1および第2の実施の形態では、同一色の発光材料を含む有機EL液にて形成される複数の線状要素94を領域ピッチの3倍のピッチにて主面90上に配列して、基板9上に発光材料のパターンを適切に形成することが実現されるが、流動性材料として、揮発性の溶媒(例えば、水)に加えて正孔輸送材料を含むものが基板9に塗布されてもよい。この場合も、塗布装置では、複数の吐出口171から吐出された流動性材料の乾燥速度の均一性を向上して、乾燥後の線状要素の断面形状のばらつきを抑制することが可能となり、有機EL表示装置において正孔輸送層の断面形状のばらつきに依存する表示の質の低下を抑制することが実現される。なお、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0066】
塗布装置では、例えば、塗布ヘッド14に3本の吐出ノズル17が設けられ、これらの吐出ノズル17から赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が同時に吐出されて基板9に塗布されてもよい。また、塗布ヘッド14では、流動性材料を吐出する吐出ノズル17は2本以上とされるのであれば、他の本数とされてもよい。
【0067】
また、塗布装置では、基板移動機構12による基板9および基板保持部11の移動に代えて、塗布ヘッド14が副走査方向に移動することにより、副走査方向における基板9の塗布ヘッド14に対する相対移動が行われてもよい。
【0068】
上記実施の形態における処理対象の基板9では、隔壁が形成された基板9上に有機EL液が塗布されるが、塗布装置では隔壁が形成されていない基板9上に流動性材料を塗布することも可能である。
【0069】
塗布装置は、1枚の基板から複数の有機EL表示装置を製造する(いわゆる、多面取りを行う)場合にも利用できる。また、基板9上に付与する材料として有機EL表示装置用の画素形成材料(有機EL材料または正孔輸送材料)を含む流動性材料を塗布装置を用いて基板9上に塗布することにより、有機EL表示装置における塗布ムラによる表示の質の低下が抑制されるが、ノズルプリンティング方式の塗布装置は、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の他の平面表示装置用の基板に対し、着色材料や蛍光材料等の他の種類の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する場合に利用されてもよい。この場合も、平面表示装置において、塗布ムラによる表示の質の低下を抑制することが可能となる。
【0070】
また、塗布装置は、平面表示装置用の基板以外に、半導体基板等の様々な基板に対する様々な種類の流動性材料の塗布に利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1の実施の形態に係る塗布装置を示す平面図である。
【図2】塗布装置の正面図である。
【図3】塗布ヘッド近傍を示す側面図である。
【図4】塗布装置における有機EL液の塗布の流れを示す図である。
【図5】有機EL液の塗布途上における塗布装置を示す図である。
【図6】基板上の線状要素の断面を示す図である。
【図7.A】比較例の塗布装置にて形成される線状要素の断面を示す図である。
【図7.B】他の比較例の塗布装置にて形成される線状要素の断面を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る塗布ヘッド近傍を示す平面図である。
【図9】送風部材の断面図である。
【図10】送風部材の他の例を示す斜視図である。
【図11】送風部材のさらに他の例を示す斜視図である。
【図12】塗布ヘッドおよび送風部材を示す平面図である。
【図13】送風部材のさらに他の例を示す平面図である。
【図14】送風部材のさらに他の例を示す斜視図である。
【図15】拡散部材の支持の他の例を示す図である。
【図16】塗布ヘッドの進行方向の後側の空間に空気を送り込む他の例を示す図である。
【図17】送風部材のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 塗布装置
9 基板
11 基板保持部
12 基板移動機構
14 塗布ヘッド
15 ヘッド移動機構
31 拡散部材
31a 板状部材
32,32a〜32c 送風部材
94 線状要素
171 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
揮発性の溶媒および前記基板上に付与する材料を含む流動性材料を、前記基板に平行な副走査方向に関して等間隔にて配列された複数の吐出口から前記基板に向けて吐出する吐出機構と、
前記副走査方向に垂直かつ前記基板に平行な主走査方向に前記吐出機構を移動する主走査機構と、
前記吐出機構の前記主走査方向への移動が完了する毎に前記基板を前記吐出機構に対して前記副走査方向に相対的に移動する副走査機構と、
前記吐出機構に取り付けられており、前記主走査機構による前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記基板上に吐出された直後の前記流動性材料の周囲に気流を発生する気流発生部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記気流発生部が、前記主走査機構による前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記吐出機構の進行方向の後側の空間に空気を送り込むことを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置であって、
前記気流発生部が、前記吐出機構の前記主走査方向への移動により、前記吐出機構の進行方向の後側の空間にて伸展して前記空間に周囲の空気を送り込む蛇腹状の部材であることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記気流発生部が、前記主走査機構により前記吐出機構と共に前記主走査方向に移動することにより、前記吐出機構と前記基板との間に空気を送り込む送風部材であることを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布装置であって、
前記送風部材が、前記吐出機構の前記副走査方向側に取り付けられることを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布装置であって、
前記送風部材が、前記副走査機構による前記基板の間欠的な相対移動方向の前側に取り付けられることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項4に記載の塗布装置であって、
前記送風部材が、前記吐出機構の前記主走査方向側に取り付けられることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記吐出機構が前記主走査方向への移動の往路および復路にて前記基板上に前記流動性材料を吐出し、
前記気流発生部が、前記吐出機構の移動の前記往路および前記復路の双方にて前記気流を発生することを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記流動性材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を含むことを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−135012(P2009−135012A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310670(P2007−310670)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】