説明

塗料供給装置およびその塗料供給経路の洗浄方法

【課題】容易な構成により、従来通りの生産性と優れた洗浄性を確保し、かつ、洗浄液使用量の削減を実現する塗料供給装置の洗浄方法に関する技術を提供する。
【解決手段】洗浄液用バルブ9とエア用バルブ10が、塗料供給経路4の他端に対して、洗浄液供給経路5を介して接続され、予め設定したタイムチャートに従って、まず洗浄液用バルブ9を一定時間だけ開として洗浄液供給経路5と塗料供給経路4に洗浄液を供給し、その後エア用バルブ10を一定時間だけ開として洗浄液供給経路5と塗料供給経路4にエアを供給し、洗浄液供給経路5および塗料供給経路4に滞留する洗浄液を吐出口6より排出して塗料供給経路4を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機や塗料充填装置等の塗料供給装置の技術に関し、より詳しくは、塗料供給装置内の塗料供給経路を効率よく洗浄するための洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディーや各種筐体に塗装を施す際に用いる塗装機や塗料充填装置等の塗料供給装置においては、色彩等が異なる複数の塗料を取り扱う構成とする場合がある。この場合、バルブ切換等によって色換えをするため、同じ系統の塗料流通経路(例えば塗装機の塗料供給経路)に複数種類の塗料を流通させることが多い。そして、色換えの際にはその都度塗料流通経路の洗浄を行い、直前に使用していた塗料を塗料流通経路から完全に除去した後に、次の塗料を塗料流通経路に流通させるようにしている。
【0003】
この場合、塗料流通経路の洗浄が不十分であると、塗料のコンタミネーションが発生し、塗装品質に悪影響を及ぼすこととなるため、塗料流通経路に残留する塗料を確実に洗浄し除去することが塗装品質の確保のためには重要となってくる。
従来通りの装置構成であっても、洗浄時間を長く設定すれば塗料の残留を確実に防止することが可能である。しかし、塗料の切換時間を延長すれば生産性が低下してしまうという問題点があり、このような対応は現実的ではない。
そこで従来、塗料流通経路の洗浄を確実に行うための技術が種々開発・検討されており、洗浄液(シンナー)とエアを気液混合器により混合し、洗浄液中に微小な気泡が均一に混入するようにした上で塗料流通経路の洗浄に用いる技術が公知となっている(特許文献1参照)。
また従来、洗浄液を供給する洗浄液用バルブ、およびエアを供給するエア用バルブを塗料流通経路に複数接続する構成として、一度に供給できる洗浄液量を増加させて洗浄時間の短縮を図る構成も実施されている。
【特許文献1】特開平6−134359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、気液混合器等を備えたシステムを別途必要としたり、あるいは、洗浄液用バルブおよびエア用バルブを多数必要とする構成であるため、設備が大掛かりなものとなっていた。
また従来は、洗浄液の吐出量を増やせば洗浄性が高められると考えられてきたため、塗料供給経路の洗浄に際しては、短時間にできるだけ多量の洗浄液を供給するようにバルブ切換のタイムチャートが設定されていた。このため、実際には塗料供給経路の洗浄に寄与していない洗浄液が消費されてしまい、洗浄液の使用量が無駄に多くなっていた。
そこで本発明では、このような現状を鑑み、容易な構成により、従来通りの生産性と優れた洗浄性を確保し、かつ、洗浄液使用量の削減を実現する塗料供給装置の洗浄方法に関する技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、一端には開放部たる吐出口が形成され、他端には洗浄液の供給手段たる洗浄液用バルブとエアの供給手段たるエア用バルブが接続され、さらに、前記洗浄液バルブおよび前記エア用バルブよりも前記吐出口寄りに複数の塗料供給手段が接続される塗料供給経路を有する塗料供給装置における、前記塗料供給経路の内部に残留する塗料を洗浄する塗料供給経路の洗浄方法であって、前記洗浄液用バルブと前記エア用バルブは、前記洗浄液供給経路を介して前記塗料供給経路の他端に接続され、予め設定したタイムチャートに従って、まず前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路に洗浄液を供給し、その後前記エア用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路にエアを供給し、前記洗浄液供給経路および前記塗料供給経路に滞留する洗浄液を前記吐出口より排出して前記塗料供給経路を洗浄する、ことを特徴としたものである。
【0007】
請求項2においては、前記洗浄液供給経路の経路内容積は、前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積が、前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量に比して大きくなるように設定される、ことを特徴としたものである。
【0008】
請求項3においては、前記洗浄液供給経路の経路内容積は、前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量が、前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積に比して80〜120%となるように設定される、ことを特徴としたものである。
【0009】
請求項4においては、一端には開放部たる吐出口が形成され、他端には洗浄液の供給手段たる洗浄液用バルブとエアの供給手段たるエア用バルブが接続され、さらに、前記洗浄液バルブおよび前記エア用バルブよりも前記吐出口寄りに複数の塗料供給手段が接続される塗料供給経路を有し、前記複数の塗料供給手段を切換えることによって前記塗料供給経路に複数の塗料を供給可能とするとともに、前記塗料供給経路の内部に残留する塗料を洗浄可能とする塗料供給装置において、前記洗浄液用バルブと前記エア用バルブが、前記塗料供給経路の他端に対して、洗浄液供給経路を介して接続され、予め設定したタイムチャートに従って、まず前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路に洗浄液を供給し、その後前記エア用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路にエアを供給し、前記洗浄液供給経路および前記塗料供給経路に滞留する洗浄液を前記吐出口より排出して前記塗料供給経路を洗浄する、ことを特徴としたものである。
【0010】
請求項5においては、前記洗浄液供給経路の経路内容積は、前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積が、前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量に比して大きくなるように設定される、ことを特徴としたものである。
【0011】
請求項6においては、前記洗浄液供給経路の経路内容積は、前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量が、前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積に比して80〜120%となるように設定される、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、塗料供給経路の内容積が増大するため、塗料供給経路内の洗浄に用いる洗浄液をより多く滞留させることができ、汎用のバルブを用いた場合であっても塗料供給経路から洗浄液を溢れさせることなく洗浄をすることができる。これにより、洗浄性を向上させることができる。また、既存の塗装機を改造して適用することも容易に可能であり、洗浄液の供給量に応じて、洗浄液供給経路を容易に調整することができ、洗浄性を改善することができる。
【0014】
請求項2においては、洗浄液が塗料供給経路内の洗浄に寄与することなく吐出口から溢れ出てしまうことが防止できる。これにより、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0015】
請求項3においては、洗浄液を効率よく使用することができる。これにより、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0016】
請求項4においては、塗料供給経路の内容積が増大するため、塗料供給経路内の洗浄に用いる洗浄液をより多く滞留させることができ、汎用のバルブを用いた場合であっても塗料供給経路から洗浄液を溢れさせることなく洗浄をすることができる。これにより、洗浄性を向上させることができる。また、既存の塗装機を改造して適用することも容易に可能であり、洗浄液の供給量に応じて、洗浄液供給経路を容易に調整することができ、洗浄性を改善することができる。
【0017】
請求項5においては、洗浄液が塗料供給経路内の洗浄に寄与することなく吐出口から溢れ出てしまうことが防止できる。これにより、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0018】
請求項6においては、洗浄液を効率よく使用することができる。これにより、洗浄液の使用量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る塗装機の全体構成を示す模式図、図2は本発明の一実施例に係る塗装機における洗浄工程を示す説明図(その1)、図3は同じく説明図(その2)、図4は洗浄液用バルブおよびエア用バルブの作動状況を示すタイムチャート、図5は洗浄後の洗浄液濁度と洗浄時の洗浄液充填率との関係を示す図、図6は本発明の一実施例に係る塗料充填機の全体構成を示す模式図、図7は従来の塗装機の全体構成を示す模式図、図8は従来の塗装機における洗浄工程を示す説明図(その1)、図9は同じく説明図(その2)である。
【0020】
まず始めに、塗装機の塗料供給経路等の塗料流通経路を洗浄する際の洗浄液の適正使用量の考え方について説明をする。
図5に洗浄液の塗料流通経路への充填率と該塗料流通経路の洗浄効率の関係を調査した際の実験結果をグラフとして示している。尚、図5は、縦軸を洗浄液の洗浄後濁度(%)とし、横軸を洗浄液充填量(%)としている。
本実験では、塗料流通経路の管内面に同量の塗料を付着させた同条件のテストサンプルを複数準備し、洗浄時間等の他の条件は統一した上で、洗浄液の塗料流通経路への供給量(充填量)をテストサンプルごとに変えて管内の洗浄を行うようにしている。そして、洗浄後の洗浄液の濁度を検出し、濁度が高ければより多くの塗料が管内から除去されたものと考えて、濁度が高いほど洗浄効率が良いと判断するようにしている。
【0021】
図5に示す実験結果によれば、洗浄液の管内への充填量が増加するに従って洗浄後濁度が上昇していくが、充填量が100(%)の状態(即ち、塗料流通経路の管内容積と同量の洗浄液を該塗料流通経路に供給した場合)を越えると、充填量が増加しても洗浄後濁度に殆ど変化がみられなくなり、洗浄液の供給量の増加に対して洗浄効率の改善率が著しく鈍くなることが判明した。即ち、従来は洗浄液の使用量を増加させれば洗浄性が向上するものと考えられていたが、必ずしもそうではないことが判明した。
また、この実験結果からは、管内に滞留しておりエアと共に排出される洗浄液が洗浄性の向上に寄与するものと考えられ、逆に、エアの供給が行われる前に管内から溢れ出して排出されてしまった洗浄液は(充填量が100%を超えた部分に相当する洗浄液)、洗浄性にあまり寄与することがないと考えられる。
つまり、洗浄必要部位の容積に応じて、洗浄液の使用量には適正範囲が存在していることが判明した。そして、洗浄液の使用量を適正使用範囲に設定することにより、洗浄効率を向上させることができ、洗浄液の使用量が削減できるものと考えられる。
そこで本発明では、図5における洗浄後濁度(%)がおよそ70%以上の範囲を洗浄性能の許容範囲と考え、また、洗浄液充填量(%)が100%以上では洗浄効率の改善率が鈍化することを考慮して、洗浄液充填量(%)が80〜120%の範囲を適正使用範囲として設定するようにしている。
【0022】
次に、従来の塗装機について説明をする。
尚、説明の便宜上、図7中に示す矢印Yの方向を前方として以下の説明を行う。
図7に示す如く、従来の塗装機51は、本体52、ベルカップ53、塗料用バルブ(以下CCVと記載する(CCV:Color Change Valve))57・58、洗浄液用バルブ59、エア用バルブ60、塗料供給装置61・62、洗浄液供給装置63およびエア供給装置64等により構成している。
【0023】
本体52の前方には、本体52内部に備えられる図示しないエアモータにより回転可能に支持されるベルカップ53を配設している。ベルカップ53は側面視略円錐台形状のカップ状部材であり、カップの底面に相当する後面の中心部に吐出口56を形成している。
また、本体52の内部には、管状の空隙部たる塗料供給経路54(即ち、図7中に示す範囲A)が形成され、塗料や洗浄液あるいはエア等が流通できるようにしている。そして、塗料供給経路54の前側の一端は前記吐出口56と連通しており、該吐出口56から塗料や洗浄液あるいはエアが排出されるように構成している。塗装工程においては、吐出口56から塗料が排出されると、塗料は高速で回転するベルカップ53の内面に沿って流れながら遠心力が付勢され、最終的にはベルカップ53の先端から均一に拡散された霧状の塗料として塗装対象物に向けて放出されるものである。
【0024】
また、塗料供給経路54の後側の端部には洗浄液用バルブ59とエア用バルブ60を接続している。そして、洗浄液用バルブ59を「開」としている間には、洗浄液供給装置63から供給される「洗浄液」が塗料供給経路54に供給され、また、エア用バルブ60を「開」としている間には、エア供給装置64から供給される「エア」が塗料供給経路54に供給される構成としている。
【0025】
さらに、塗料供給経路54には、洗浄液用バルブ59およびエア用バルブ60に対して吐出口56寄りの下流側にCCV57・58を接続している。係る配置とすることにより、塗料が洗浄されない部位(よどみ)を設けないように配慮している。通常CCV57・58は使用する塗料の種類分だけ設けられるものであるが、本実施例では、説明の便宜上、2種類の塗料を使用する場合を例に挙げて説明をするようにしている。
【0026】
そして、CCV57を「開」としている間には、塗料供給装置61から供給される「塗料1」が塗料供給経路54に供給され、また、CCV58を「開」としている間には、塗料供給装置62から供給される「塗料2」が塗料供給経路54に供給される構成としている。但し、CCV57・58の切換(色換え)を行う際には、塗料供給経路54の洗浄を行うようにし、以前使用していた他の塗料が塗料に混入することを防止するようにしている。
【0027】
次に、従来の塗装機における塗料供給経路の洗浄方法について説明をする。尚、本実施例では、「塗料1」から「塗料2」に色換えを行う場合を例に挙げて説明をする。
また本実施例では、各バルブ(即ち、CCV57・58、洗浄液用バルブ59、エア用バルブ60)は、図4に示すタイムチャートに従って、「開」または「閉」のタイミングを制御しているものとする。
【0028】
図8(a)に示す如く、まず始めに、CCV57のみを一定時間(即ち、図4に示す時間T1)だけ「開」とし、塗料供給装置61から塗料供給経路54に「塗料1」を供給する。このとき、塗装機51からは「塗料1」が噴射される。
【0029】
「塗料1」の噴射開始後一定時間(T1(秒))が経過した後に「塗料1」を使用した塗装工程を完了し、若干の間をおいて洗浄工程に移行するものとする。つまり、「塗料2」を塗料供給経路54に供給する前に、洗浄工程を実行するようにしている。
洗浄工程では、まず洗浄液用バルブ59を一定時間(即ち、図4に示す時間T2(秒))だけ開とし、洗浄液供給装置63から塗料供給経路54に「洗浄液」を供給する。
【0030】
ここで、洗浄液供給装置63の「洗浄液」の供給能力をa(cc/秒)とすると、塗料供給経路54には、(a×T1)(cc)の「洗浄液」が供給されることになる。
従来の塗装機51では、塗料供給経路54の経路内容積をP(cc)とした場合、P<(a×T1)となるように設計が成されていた。つまり、塗料供給経路54の経路内容積に比して多量の「洗浄液」を供給することにより、洗浄性を確保するように考えられていた。
しかし、従来の塗装機51では、図8(b)に示す如く、塗料供給経路54に供給された「洗浄液」のうち、経路内容積Pを越える分の「洗浄液」は、「エア」の供給を待たずに吐出口56から溢れ出して排出されてしまう。
図5を用いて前述した通り、このようにして溢れ出して排出されてしまう「洗浄液」は、洗浄性にあまり寄与することがないため、溢れ出る「洗浄液」を増やすことは「洗浄液」の浪費に繋がってしまう。
【0031】
また、洗浄液用バルブ59に応答性の高い(即ち、時間T1を短く設定できる)バルブを採用することにより、P>(a×T1)となるように構成することも可能であるが、一般的な汎用バルブでは性能的に対応できない場合が多く、実現が困難である場合が多い。
【0032】
次に図4に示す如く、一定時間(T2(秒))が経過した後、エア用バルブ60を一定時間(即ち、図4に示す時間T3(秒))だけ開とし、エア供給装置64から塗料供給経路54に「エア」を供給する。
このとき、図9(a)に示す如く、塗料供給経路54に供給された「エア」により、塗料供給経路54内に滞留していた「洗浄液」を「エア」と共に吐出口56から排出し、塗料供給経路54を洗浄するようにしている。
【0033】
そして、図4に示す如く、洗浄液用バルブ59の「開」とエア用バルブ60の「開」の切換を数回繰り返した後(本実施例では3回繰り返し)、洗浄工程を完了するようにしている。このように、「洗浄液」と「エア」の供給および排出を数回繰り返すことにより洗浄性を確保するようにしている。そして、若干の間をおいて洗浄工程を完了するようにしている。
【0034】
次に、図9(b)に示す如く、洗浄工程を経た後にCCV58のみを一定時間(即ち、図4に示す時間T4)だけ「開」とし、塗料供給装置62から塗料供給経路54に「塗料2」を供給する。このとき、塗装機51からは「塗料2」が噴射される。このようにして、「塗料1」から「塗料2」への色換えの一連の工程を完了するようにしている。
【0035】
次に、本発明の一実施例に係る塗装機について説明をする。
尚、説明の便宜上、図1中に示す矢印Xの方向を前方として以下の説明を行う。
図1に示す如く、本発明に係る塗装機1は、本体2、ベルカップ3、CCV7・8、洗浄液用バルブ9、エア用バルブ10、塗料供給装置11・12、洗浄液供給装置13およびエア供給装置14、接続バルブ15等により構成されている。
【0036】
本体2の前方には、従来の塗装機51と同様に、本体2内部に備えられる図示しないエアモータにより回転可能に支持されるベルカップ3を配設している。ベルカップ3は側面視略円錐台形状のカップ状部材であり、カップの底面に相当する後面の中心部に吐出口6を形成している。
また、本体2の内部には、従来の塗装機51と同様に、管状の空隙部たる塗料供給経路4(即ち、図1中に示す範囲A)が形成され、塗料や洗浄液あるいはエア等が流通できるようにしている。そして、塗料供給経路4の前側の一端は前記吐出口6と連通しており、該吐出口6から塗料や洗浄液あるいはエアが排出されるように構成している。
即ち、本発明に係る塗装機1は基本的な構成においては、従来の塗装機51と共通しているが、後述する洗浄液供給経路5を備えている点で従来の塗装機51とは相違しており、係る洗浄液供給経路5が本発明に係る塗装機1の特徴的な部位となっている。
【0037】
塗料供給経路4の後側の端部には、接続バルブ15を介して管状の洗浄液供給経路5(即ち、図1中に示す範囲B)が接続されている。また、洗浄液供給経路5の後端部には洗浄液用バルブ9とエア用バルブ10を接続している。つまり塗装機1は、塗料供給経路4に対して、洗浄液供給経路5を介して洗浄液用バルブ9とエア用バルブ10を別体として接続する構成としている。
そして、洗浄液用バルブ9を「開」としている間には、洗浄液供給装置13から供給される「洗浄液」が洗浄液供給経路5を介して塗料供給経路4に供給され、また、エア用バルブ10を「開」としている間には、エア供給装置14から供給される「エア」が洗浄液供給経路5を介して塗料供給経路4に供給される構成としている。尚、塗装機1使用時においては、接続バルブ15は常時「開」としている。
【0038】
さらに、塗料供給経路4には、洗浄液供給経路5に対して吐出口6寄りの下流側にCCV7・8を接続している。係る配置とすることにより、塗料が洗浄されない部位(よどみ)を設けないように配慮している。通常CCV7・8は使用する塗料の種類分だけ設けられるものであるが、本実施例では、説明の便宜上、2種類の塗料を使用する場合を例に挙げて説明をしている。よって、本発明に適用するCCVの個数を、本実施例の個数に限定するものではない。
【0039】
そして、CCV7を「開」としている間には、塗料供給装置11から供給される「塗料1」が塗料供給経路4に供給され、また、CCV8を「開」としている間には、塗料供給装置12から供給される「塗料2」が塗料供給経路4に供給される構成としている。但し、CCV7・8の切換(色換え)を行う際には、塗料供給経路4の洗浄を行うようにし、以前使用していた他の塗料が塗料に混入することを防止するようにしている。
【0040】
次に、本発明に係る塗装機における塗料供給経路の洗浄方法について説明をする。尚、本実施例でも、「塗料1」から「塗料2」に色換えを行う場合を例に挙げて説明をする。
また本実施例でも、各バルブ(即ち、CCV7・8、洗浄液用バルブ9、エア用バルブ10)は、図4に示すタイムチャートに従って、「開」または「閉」のタイミングを制御しているものとする。即ち、洗浄工程(色換え)に要する時間は従来と同じである。
【0041】
図2(a)に示す如く、まず始めに、CCV7のみを一定時間(即ち、図4に示す時間T1)だけ「開」とし、塗料供給装置11から塗料供給経路4に「塗料1」を供給する。このとき、塗装機1からは「塗料1」が噴射される。そして、「塗料1」を使用した塗装工程が完了すると、従来と同様に洗浄工程に移行するようにしている。
【0042】
つまり、図4に示す如く、「塗料1」の噴射開始から一定時間(T1(秒))が経過した後、若干の間をおいて洗浄工程が開始されるようにしている。洗浄工程では、まず洗浄液用バルブ9を一定時間(即ち、図4に示す時間T2(秒))だけ開とし、洗浄液供給装置13から洗浄液供給経路5を介して塗料供給経路4に「洗浄液」を供給する。
ここで、洗浄液供給装置13の「洗浄液」の供給能力をa(cc/秒)とすると、塗料供給経路4には、従来と同様に(a×T1)(cc)の「洗浄液」が供給されることになる。
本発明に係る塗装機1では、塗料供給経路4の経路内容積をP(cc)とし、洗浄液供給経路5の経路内容積をQ(cc)とした場合、「洗浄液」が流通する経路内容積の合計が(P+Q)(cc)となっている。つまり、(P+Q)>(a×T1)であれば、「洗浄液」が吐出口6から溢れ出ることがないのである。そこで、本発明に係る塗装機1では、(P+Q)>(a×T1)となるように洗浄液供給経路5の長さや管径を設定するようにしている。
【0043】
このように、洗浄液供給経路5の長さや管径を設定することで、図2(b)に示す如く、塗料供給経路4および洗浄液供給経路5に供給された「洗浄液」は、吐出口6から溢れ出ることなく、塗料供給経路4および洗浄液供給経路5の経路内に滞留することとなる。
図5を用いて前述した通り、このようにして塗料供給経路4および洗浄液供給経路5の経路内に滞留している「洗浄液」は、洗浄性の向上に寄与するため、「洗浄液」を効率よく使用することができるのである。
【0044】
即ち、本発明に係る塗料供給経路4の洗浄方法において、洗浄液供給経路5は、塗料供給経路4の経路内容積Pと洗浄液供給経路5の経路内容積Qを合計した容積(P+Q)が、洗浄液用バルブ9を一定時間だけ開とするときの「洗浄液」の供給量(a×T1)に比して大きくなるように設定している。
これにより、「洗浄液」が塗料供給経路4内の洗浄に寄与することなく吐出口6から溢れ出てしまうことが防止でき、「洗浄液」の使用量を削減することができるのである。
【0045】
また、図5を用いて前述したように、本発明では洗浄液充填量(%)が80〜120%の範囲を適正範囲として設定するようにしているため、洗浄液の供給量(a×T1)が、塗料供給経路4の経路内容積Pと洗浄液供給経路5の経路内容積Qを合計した容積(P+Q)に対して80〜120(%)となるように洗浄液供給経路5を設定することができる。
尚、洗浄液供給経路5には、汎用品のチューブやホース等を採用することができるため、チューブの内径を考慮しつつ、チューブの長さを調整することにより洗浄液供給経路5の経路内容積の設定および調整を容易に行うことが可能である。
【0046】
即ち、本発明に係る塗料供給経路4の洗浄方法において、洗浄液供給経路5は、洗浄液用バルブ9を一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量(a×T1)が、塗料供給経路4の経路内容積Pと洗浄液供給経路5の経路内容積Qを合計した容積(P+Q)に比して80〜120%となるように設定することができる。
これにより、「洗浄液」を適正範囲で効率よく使用することができ、「洗浄液」の使用量を削減することができるのである。
【0047】
また、洗浄液供給経路5の経路内容積Qを調整することにより、洗浄液用バルブ9に応答性の高い(即ち、時間T1を短く設定できる)バルブを採用することなく、(P+Q)>(a×T1)となるように構成することが可能であるため、従来通りの一般的な汎用バルブで対応ができ、容易に実現が可能である。
【0048】
次に図4に示す如く、一定時間(T2(秒))が経過した後、エア用バルブ10を一定時間(即ち、図4に示す時間T3(秒))だけ開とし、エア供給装置14から洗浄液供給経路5を介して塗料供給経路4に「エア」を供給する。
このとき、図3(a)に示す如く、塗料供給経路4に供給された「エア」により、塗料供給経路4内に滞留していた「洗浄液」が「エア」と共に吐出口6から排出され、塗料供給経路4を洗浄するようにしている。
【0049】
そして、図4に示す如く、洗浄液用バルブ9の「開」とエア用バルブ10の「開」の切換を数回繰り返した後(本実施例では3回繰り返し)、洗浄工程を完了するようにしている。このように、「洗浄液」と「エア」の供給および排出を数回繰り返すことにより洗浄性を確保するようにしている。尚、この繰り返し回数はタイムチャートにより任意に設定することができるものであり、本発明の洗浄方法をこの繰り返し回数(3回)に限定するものではない。
【0050】
そして、図3(b)に示す如く、洗浄工程を経た後にCCV8のみを一定時間(即ち、図4に示す時間T4)だけ「開」とし、塗料供給装置12から塗料供給経路4に「塗料2」を供給する。このとき、塗装機1からは「塗料2」が噴射される。このようにして、「塗料1」から「塗料2」への色換えの一連の工程を完了するようにしている。
【0051】
即ち、本発明に係る塗料供給経路4の洗浄方法は、洗浄液用バルブ9とエア用バルブ10が、塗料供給経路4の他端に対して、洗浄液供給経路5を介して接続され、予め設定したタイムチャートに従って、まず洗浄液用バルブ9を一定時間だけ開として洗浄液供給経路5と塗料供給経路4に「洗浄液」を供給し、その後エア用バルブ10を一定時間だけ開として洗浄液供給経路5と塗料供給経路4に「エア」を供給し、洗浄液供給経路5および塗料供給経路4に滞留する「洗浄液」を吐出口6より排出して塗料供給経路4を洗浄するようにしている。
これにより、塗料供給経路4内の洗浄に用いる「洗浄液」をより多く滞留させることができ、洗浄性を向上させることができるのである。
【0052】
また、本発明は既存の塗装機に対しても容易に適用することが可能であり、既存の塗装機を改造してチューブ等を用いて洗浄液供給経路を接続した上で、該洗浄液用供給経路(チューブ)を介して別体の洗浄液バルブおよびエア用バルブを接続するようにすれば、「洗浄液」の供給量に応じて洗浄液供給経路を容易に調整することができ、既存の塗装機の洗浄性を改善することができるのである。
【0053】
尚、本発明を適用することができる塗料供給装置は、前述した塗装機1に限定されるものではなく、例えば図6に示すような塗料充填装置31においても、要部の構成を塗装機1と同様の構成とすることが可能であり、塗料供給経路に洗浄液とエアを供給することにより洗浄を行う構成の装置であれば、本発明を広く適用することができる。
また、本実施例に示すように塗料供給装置が2系統(即ち、「塗料1」および「塗料2」だけ)である場合だけでなく、さらに多数(3系統以上)の塗料供給装置を備える塗装機であっても、本発明を適用することが可能であり、本発明を適用する塗料供給装置を限定するものではない。
さらに、複数系統の洗浄液供給経路を接続する構成とすることも可能であり、このような構成とすれば、例えば、使用する塗料の特性に応じて洗浄液の適正使用範囲が異なるような場合であっても、洗浄液供給経路を切換えて洗浄液の使用量を適正に維持する構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る塗装機の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施例に係る塗装機における洗浄工程を示す説明図(その1)。
【図3】同じく説明図(その2)。
【図4】洗浄液用バルブおよびエア用バルブの作動状況を示すタイムチャート。
【図5】洗浄後の洗浄液濁度と洗浄時の洗浄液充填率との関係を示す図。
【図6】本発明の一実施例に係る塗料充填機の全体構成を示す模式図。
【図7】従来の塗装機の全体構成を示す模式図。
【図8】従来の塗装機における洗浄工程を示す説明図(その1)。
【図9】同じく説明図(その2)。
【符号の説明】
【0055】
1 塗装機
2 本体
4 塗料供給経路
5 洗浄液供給経路
6 吐出口
9 洗浄液用バルブ
10 エア用バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端には開放部たる吐出口が形成され、
他端には洗浄液の供給手段たる洗浄液用バルブとエアの供給手段たるエア用バルブが接続され、
さらに、前記洗浄液バルブおよび前記エア用バルブよりも前記吐出口寄りに複数の塗料供給手段が接続される塗料供給経路を有する塗料供給装置における、
前記塗料供給経路の内部に残留する塗料を洗浄する塗料供給経路の洗浄方法であって、
前記洗浄液用バルブと前記エア用バルブは、
前記洗浄液供給経路を介して前記塗料供給経路の他端に接続され、
予め設定したタイムチャートに従って、
まず前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路に洗浄液を供給し、
その後前記エア用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路にエアを供給し、前記洗浄液供給経路および前記塗料供給経路に滞留する洗浄液を前記吐出口より排出して前記塗料供給経路を洗浄する、
ことを特徴とする塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液供給経路の経路内容積は、
前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積が、
前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量に比して大きくなるように設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液供給経路の経路内容積は、
前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量が、
前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積に比して80〜120%となるように設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項4】
一端には開放部たる吐出口が形成され、
他端には洗浄液の供給手段たる洗浄液用バルブとエアの供給手段たるエア用バルブが接続され、
さらに、前記洗浄液バルブおよび前記エア用バルブよりも前記吐出口寄りに複数の塗料供給手段が接続される塗料供給経路を有し、
前記複数の塗料供給手段を切換えることによって前記塗料供給経路に複数の塗料を供給可能とするとともに、
前記塗料供給経路の内部に残留する塗料を洗浄可能とする塗料供給装置において、
前記洗浄液用バルブと前記エア用バルブが、
前記塗料供給経路の他端に対して、
洗浄液供給経路を介して接続され、
予め設定したタイムチャートに従って、
まず前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路に洗浄液を供給し、
その後前記エア用バルブを一定時間だけ開として前記洗浄液供給経路と前記塗料供給経路にエアを供給し、前記洗浄液供給経路および前記塗料供給経路に滞留する洗浄液を前記吐出口より排出して前記塗料供給経路を洗浄する、
ことを特徴とする塗料供給装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給経路の経路内容積は、
前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積が、
前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量に比して大きくなるように設定される、
ことを特徴とする請求項4記載の塗料供給装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給経路の経路内容積は、
前記洗浄液用バルブを一定時間だけ開とするときの洗浄液の供給量が、
前記塗料供給経路の経路内容積と前記洗浄液供給経路の経路内容積を合計した容積に比して80〜120%となるように設定される、
ことを特徴とする請求項4記載の塗料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−307480(P2008−307480A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157829(P2007−157829)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】