説明

塗液の塗布方法、プラズマディスプレイ部材の製造方法および塗液の塗布装置

【課題】塗布ヘッドの吐出口および吐出口周辺部に残留塗液が多量に且つ不均一に付着し、拭き取りによる傷の発生を抑制する塗布方法を提供する。
【解決手段】吐出口202を有する塗布ヘッド200を基板1と対向させて相対的に移動させながら塗液を前記吐出口から吐出して前記基板1上に塗布し、前記吐出口202からの塗液の吐出を停止させ、塗液の吐出を停止すると同時または塗液の吐出を停止した後さらに塗布ヘッド200と基板1を相対移動させた後に相対移動を停止させ、その後、前記塗布ヘッド200を前記基板1から離間させる塗液の塗布方法であって、少なくとも前記塗布ヘッド200を前記基板1から離間させるまでに前記基板1を帯電させ、塗液の塗布終了位置における前記基板と前記塗布ヘッドの電位差が200V以上の状態で離間することを特徴とする塗液の塗布方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ、プラズマディスプレイ、プリント基板等の製造工程において塗液を塗布した後に、塗液を吐出するダイ又はノズル等の塗布ヘッドの塗液吐出口周辺
部を効率よく清掃する塗液の塗布方法およびプラズマディスプレイ部材、例えばプラズマディスプレイ用発光基板の製造方法、さらに塗液の塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から基板上に塗液を塗布する装置としてダイやノズル等の塗布ヘッドを用いた塗液の塗布装置が知られている。従来の塗布装置を用いた塗液の塗布方法においては、塗布後に残留塗液により塗布ヘッドが汚れるという問題がある。この問題は特に高粘度のペーストを塗液として用いる場合に顕著である。図2は塗液としてペーストを用いる塗布装置において、塗布ヘッドの一例であるノズルヘッドを用いた塗液の塗布方法を示す模式図である。図2において、ノズルヘッド200の筐体207内には、ペースト供給口206からペースト203が供給され、ノズルヘッド200の下面には複数個の吐出口202が一直線に列状に穿設されている。ここで、気体圧力供給口205から圧縮空気等の気体圧力を供給し、吐出口202に対向するように置かれた基板1上にペーストを吐出して塗布することができる。図2においては、基板1の表面には塗布方向に平行なストライプ状の隔壁が設けられており、ペーストをその隔壁の間に塗布するという高精度な塗布を行っている。このような塗布は、プラズマディスプレイ部材、特にプラズマディスプレイ用発光基板に蛍光体粉末を多く含む蛍光体ペーストを塗布する際に用いられる。
【0003】
しかしながら、ノズルヘッド200を用いた上記塗液塗布装置では、吐出口202からのペーストの吐出、停止により、吐出口202の周辺部に残留ペーストが付着しやすい。このように残留ペーストが吐出口202の周辺部に付着した状態で吐出口202に対向するように置かれた基板1上にペーストの吐出を行うと、吐出口202からのペースト吐出流が鉛直にならないので、高精度な塗布、すなわち基板1上にペーストを一直線上に均一厚さで塗布することが困難となる。さらに吐出口202に残留ペーストとして付着するペースト量は一定ではなく、かつノズルヘッド200の長手方向にわたって不均一であるため、この残留ペーストが基板1に付着すると、全領域にわたって均一厚さの塗布が行えなくなる。特に粘度が5000mPa・sを超える高粘度ペーストを用いる場合には、以上の不具合の発生は顕著になる。この不具合を解消するには、ペースト吐出前にノズルヘッド200の吐出口202およびその周辺に付着した残留ペーストを確実に除去、清掃することが必須となる。
【0004】
塗布ヘッドの吐出口周辺部の清掃を行う従来技術としては、ペースト吐出口周辺部に溶剤で湿潤させた拭き取り部材をゴム等の弾性ロールで押し当ててから、塗布ヘッドと拭き取り部材を相対的に摺動させ、付着している残留ペーストを拭き取って清掃する方法が知られている(例えば、特許文献1)。これは、図3に示すように、織編物からなる拭き取り部材104を吐出口202および吐出口周辺部に押し当て部材102で押し当てつつ、一定の摺動方向110に摺動させながら摩擦により吐出口202および吐出口周辺部に付着した残留ペースト203aを拭き取る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−126599公報
【特許文献2】特開2002−042651公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法は塗布ヘッドの長手方向に不均一に多量に付着した残留ペーストを、拭き取り部材によって拭き取る際に、ペースト中に含まれる蛍光体粉末等の硬い無機粉末を、塗布ヘッドの吐出口周辺部と接触させた状態で摺動することにより、塗布ヘッド表面に図4に示す擦り傷112が発生するという問題がある。塗布ヘッドにこのような傷が発生すると、塗布開始時点におけるペースト吐出流の挙動が不安定になりやすく、基板上に均一厚さで塗布することが困難となり塗布品位が大きく損なわれる原因となる。このため、塗布ヘッドに傷が発生した場合は傷のない塗布ヘッドと交換せざるを得なくなるが、塗布ヘッドを交換するためには塗布装置を停止させる必要があるため生産性を低下させてしまう。且つ、このような塗布ヘッドは高精度に加工されており、非常に高価であるので、擦り傷の発生によるこのような塗布ヘッドの交換は塗布により製造される製品、たとえばプラズマディスプレイパネルの製造コストを著しく増大させてしまう。
【0007】
そこで本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、塗布ヘッドの吐出口および吐出口周辺部の残留塗液を減少し、傷の発生を防止しながら効率的に除去することが可能な塗液の塗布方法およびプラズマディスプレイ部材の製造方法並びに塗液の塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、吐出口を有する塗布ヘッドを基板と対向させて相対的に移動させながら塗液を前記吐出口から吐出して前記基板上に塗布し、前記吐出口からの塗液の吐出を停止させ、塗液の吐出を停止すると同時または塗液の吐出を停止した後さらに塗布ヘッドと基板を相対移動させた後に相対移動を停止させ、その後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させる塗液の塗布方法であって、少なくとも前記塗布ヘッドを前記基板から離間させるまでに前記基板を帯電させ、塗液の塗布終了位置における前記基板と前記塗布ヘッドの電位差が200V以上の状態で離間することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記塗布ヘッドと前記基板の相対移動は相対的に停止した状態から一定の相対移動速度Vまで増速する増速期、次いで前記相対移動速度Vで相対移動させる定速期、さらに次いで前記相対移動速度Vから相対的に停止した状態まで減速する減速期に区分して行い、前記増速期または定速期において前記吐出口からの前記塗液の吐出を開始し、定速期において前記基板への帯電を開始し、減速期において前記吐出口からの前記塗液の吐出を停止し、減速期の後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させた後に前記基板への帯電を停止することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記基板への帯電を開始してから前記基板上に安定した帯電が得られるまでの時間をT1(秒)とした時、前記減速期の開始よりT1(秒)以上前に前記基板への帯電を開始させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記減速期および前記塗布ヘッドと前記基板を相対的に停止した後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させるまでの間、塗布ヘッドを非接地とすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、前記基板を帯電させる前に少なくとも前記基板の塗布面全面を除電することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、前記基板を帯電させる帯電手段を前記塗布ヘッドと一体に移動させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、前記塗布ヘッドの吐出口は所定のピッチで列状に穿設された複数の吐出孔からなり、一回の前記相対移動で前記基板の全幅にわたり塗布を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、前記基板が塗布方向に平行なストライプ状の複数の隔壁または塗布方向に平行なストライプ状の複数の主隔壁および該主隔壁に略直交する複数の補助隔壁からなる井桁状の隔壁を有し、請求項7の塗液の塗布方法を用いて前記隔壁間に形成された凹部に塗布ヘッドの吐出口から赤色、緑色または青色のいずれか一色の蛍光体を含むペーストを塗液として吐出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、塗液を吐出する塗布ヘッドと、該塗布ヘッドから吐出される塗液が塗布される基板を載置する載置台と、前記塗布ヘッドと前記載置台とを前記載置台表面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記塗布ヘッドを前記載置台から離間させる離間手段とを有する塗液の塗布装置であって、前記基板を帯電させる帯電手段と、該帯電手段による前記基板への帯電の付与タイミングを制御する帯電制御手段と、前記塗布ヘッドを接地状態と非接地状態に切り替えるための接地切り替え手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項9に記載の発明では、塗布後に塗布ヘッドを基板から離間させるまでに基板を帯電させ、塗布終了位置における基板と塗布ヘッドの電位差が200V以上の状態で離間することによって、塗液を基板に引き寄せ吐出流の径を十分に細くして、塗布ヘッド吐出口のより近い所で塗液が断ち切れるので、塗布ヘッド吐出口および吐出口周辺部には少量、且つ均一の塗液が残留付着するのみとなる。
【0018】
類似の従来技術として、上述の特許文献2においては、静電気発生器を基板と一体に移動させ、且つ複数の各ノズルと相対的に移動させて、蛍光体液が帯びている静電気の極と逆の極の静電気を基板に付与して、引き合いで引き寄せられて基板の凹部に蛍光体液を注入することによって、基板の凹部に蛍光体ペーストをスムーズに注入する方法が記載されている。しかしながら、特許文献2の蛍光体膜形成方法では、塗布動作中に基板を帯電させることは記載されているが、塗液の吐出を停止させた後も基板と塗布ヘッドの間に電位差をつける事は記載されておらず、塗布ヘッドの吐出口および吐出口周辺部に付着する残留塗液を少なくすることはできなかった。
【0019】
また、請求項2の発明では、塗布ヘッドを基板から離間させた後に基板への帯電を停止することによって、塗布ヘッドを基板から離間させるとき、基板と塗布ヘッドの電位差が200V以上の状態を確実に保持できる。
【0020】
また、請求項3の発明では、減速期の開始よりT1(秒)以上前に基板への帯電を開始することによって、基板上の塗布終了位置で安定した帯電が得られる。
【0021】
また、請求項4の発明では、減速期および塗布ヘッドを基板から離間させるまでの間、塗布ヘッドを非接地とすることによって、基板上の帯電が減衰するのが防止でき、基板と塗布ヘッドの電位差が安定する。
【0022】
また、請求項5の発明では、基板を帯電させる前に除電することによって、再現性よく基板上に帯電が得られる。
【0023】
また、請求項6の発明では、帯電手段を塗布ヘッドと一体に移動させることにより、塗布終了位置近傍を帯電させることができる。
【0024】
また、請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載の塗布方法を有しており、複数の吐出口からなる塗布ヘッドを用いることによって、一回の吐出で基板全幅を塗布するので生産性が向上できる。
【0025】
また、請求項8の発明では、請求項7の塗布方法を用いてプラズマディスプレイ部材を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施態様に係る塗液の塗布装置の概略側面図である。
【図2】塗布ヘッドの一例を用いた塗液の塗布方法を示した模式図である。
【図3】塗布ヘッドの清掃方法を示した模式図である。
【図4】吐出口周辺部の擦り傷の状態を示した模式図である。
【図5】吐出口および吐出口周辺部の残留塗液の付着状態を示した模式図である。
【図6】塗布ヘッドを基板から離間させた状態を示した模式図ある。
【図7】塗布ヘッドを基板から離間させた状態をカメラで捉えたカメラ画像である。
【図8】本発明の一実施態様における塗布動作のタイムチャートである。
【図9】本発明による塗液の塗布方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。以降、塗布ヘッドとして、プラズマディスプレイ製造用蛍光体塗布ノズルの一例であるノズルヘッドを用い、塗液として蛍光体ペーストを用いて説明する。本発明はこれに限定されない。
【0028】
図1を参照して塗液の塗布装置Aの構成を説明する。まず、基板1が載置される載置台10は機台12上のX軸移動レール11でX軸方向に自在に案内されるとともに、X軸モータ(図示しない)でボールネジ(図示しない)を介して駆動される。また、図示されていないが、載置台10は真空吸着により、基板1を吸着固定する機構を有している。
機台12の中央部には、載置台10上の基板1の幅方向(紙面に垂直な方向)にわたって、門型の支持機台13が架設されている。支持機台13には、載置台10の基板載置面に対して垂直方向に設置されたZ軸移動レール15があり、このZ軸移動レール15に沿って自在に昇降するホルダ16に、絶縁部材17を介してノズルヘッド200が取り付けられている。ノズルヘッド200の長手方向は、基板1の幅方向に一致するよう配置されている。ホルダ16及びノズルヘッド200は、Z軸モータ14によって、ボールネジ(図示しない)を介して駆動され、Z軸方向(上下方向)に自在に往復動できる。絶縁部材17としてはシート、スペーサ等いかなる部材でも構わないが、形状の変形が少なく、ノズルヘッド200が絶縁部材17を介してホルダ16に取り付けられた際に、基板1上面とノズルヘッド200下面とが所定の距離で対向したとき、再現性よくその距離が得られることが望ましい。絶縁部材17の材料としては、例えばゴム、樹脂等の公知の材料が使用できる。また、ノズルヘッド200とアース間の抵抗は、1×1010Ω以上が好ましく、1×1012Ω以上がより好ましい。そして、ノズルヘッド200は接地切り替え手段31を経てアースに接続される。このことで、接地切り替え手段31が操作されると、ノズルヘッド200は、アースと同電位の接地状態とアースを浮かせた状態の非接地状態に切り替えることができる。
【0029】
また、ノズルヘッド200を挟むように下流側(紙面の右側)と上流側(紙面の左側)にブラケットを介して帯電手段20a、20bが設けられている。帯電手段20a、20bの配置は、ノズルヘッド200の吐出口202により近いところがノズルヘッド200を基板1から離間させるときにペースト203を断ち切る位置近傍を効率よく帯電させられるので好ましい。さらに、帯電手段20a、20bをノズルヘッド200と一体とすることで、ノズルヘッド200を基板1から離間させる位置、すなわちペースト203を断ち切る位置近傍を効果的に帯電することができる。したがって、ノズルヘッド200を基板1から離間するとき、ペースト203が基板1に引き寄せられて吐出流の径が十分に細くなった状態となるので好ましい。なお、帯電手段20a、20bはノズルヘッド200と一体としたが、これに限定されるものではなく、ノズルヘッド200を基板1から離間させるときに基板1とノズルヘッド200の電位差が所定値以上で安定すれば、帯電手段20a、20bはどの位置に設けられていても構わない。
【0030】
帯電手段を基板と一体に、且つノズルと相対的に移動させる場合は、帯電を塗布面に一様に付与することが困難な傾向にある。このため、一方向に向けて塗布していくときの塗布開始位置近傍に帯電手段を配置する場合は基板に帯電が十分に付与されていて吐出流は安定するが、塗布終了位置近傍では基板に十分な帯電が付与されていないため吐出流が不安定になる不具合が生じやすい。そして、この状態でノズルを基板から離間させても、吐出流が基板に引き寄せられにくく、吐出流を十分に細くすることは困難となる。
帯電手段20a、20bとしては、正負の何れか一方の極性のみの静電気を帯電させれば足りるので、コロナ放電式除電器(例えば、キーエンス社製、SJ−H132)を用いることができるが、ノズルヘッド200の長手方向と同等もしくはそれ以上の有効長さを有していることが、すべての吐出口202および吐出口周辺部に帯電の効果を付与させられるので有利である。なお、帯電を付与するとき、帯電手段20bの帯電付与位置が基板1から外れない場合は、帯電手段20aと共に用いるのが帯電量を増加させられる。また、基板1の塗布開始位置近傍を帯電させる場合にも帯電手段20bを用いることができる。なお、所望の帯電量はペースト品種、基板タイプにより適宜合わせることができる。
【0031】
また、基板1とノズルヘッド200の吐出口202までの距離が所定値で対向したとき、基板1と帯電手段20a、20bまでの距離が予め定められている値(例えば、50mm)になるようになっている。そして、帯電手段20a、20bは、帯電制御手段30に接続される。この帯電制御手段30により基板1への帯電の開始/停止タイミングが制御される。
【0032】
基板1を除電する除電手段21a、21bがノズルヘッド200の下流側(紙面の右側)と上流側(紙面の左側)に設けられている。除電手段21bの下方を基板1が通過することで、少なくとも基板1の塗布面全面を除電する。載置台10に基板1が載置されると基板1は正極または負極の何れかに不均一に帯電している場合が多く、除電して基板1を中性とするのが塗布を安定させる上で好ましく、また、基板1を帯電させる場合において、基板1の表面に所望の帯電量が再現性よく得られやすくなるので好ましい。また、塗布後、除電手段21aの下方を基板1が通過することで、帯電されたままの基板1を次工程に搬出することが防止できるので好ましい。除電手段21aは必須ではなく、塗布後の基板1の帯電残量の大きさや次工程の設備に鑑みて決定しても構わない。除電手段21a、21bとしては、コロナ放電式除電器(例えば、キーエンス社製、SJ−R132)を用いることができる。また、有効長さは、基板1の幅方向(紙面に垂直な方向)と同等もしくはそれ以上を有していることが望ましい。基板1と除電手段21a、21bまでの距離は予め定められた値(例えば、500mm)になるようになっている。
【0033】
機台12の図1における下流側(紙面の右側)には、後述するノズルヘッド200の清掃装置として構成される拭き取り装置100が設けられている。拭き取り装置100は、X軸移動レール11に沿って、図1に示す位置J(以降、待機位置Jと呼ぶ)から、ノズルヘッド200の真下付近にあるノズルヘッド拭き取り位置H(拭き取り装置100を破線で示した位置)の間を、載置台10より独立して、自在に往復動できる。
【0034】
次に、後述する準備作業の後、塗布作業が開始されると、載置台10はノズルヘッド200の方へ向けて移動が開始され、ノズルヘッド200の上流側(紙面の左側)に設けられている除電手段21bの下を載置台10が通過する。そして、図示しないアライメント装置による基板1の画像処理位置に載置台10が到達すると載置台10の移動が停止され基板1の画像処理が行われる。
【0035】
その後、図8に示すような塗布動作が開始される。まず、載置台10は移動が停止した状態から一定の移動速度V(塗布速度)まで増速する増速期、次いで移動速度V(塗布速度)で移動させる定速期、さらに次いで移動速度V(塗布速度)から停止した状態まで減速する減速期に区分して移動する。
【0036】
増速期において、図9および図2に示すようにノズルヘッド200の吐出口202の真下に基板1の塗布開始位置が到達する少し前(例えば、10mm)または同時に、ノズルヘッド200の下面と基板1の隔壁頂部または隔壁間底部までの距離が所定値になるようZ軸モータ14が操作され、ノズルヘッド200は下降する。そして、基板1の塗布開始位置がノズルヘッド200の吐出口202の真下に達したら、ノズルヘッド200の気体圧力供給口205へ圧縮空気を供給し、気体加圧を行うことでノズルヘッド200の吐出口202よりペースト203を吐出し、基板1の隔壁間にペースト203を塗布する。そして、載置台10は定速期へと移行する。なお、載置台10の増速期にて基板1への塗布を開始したがこれに限定されるものではなく、例えばプラズマディスプレイにおいて、非表示域が十分な広さを確保できるならば、載置台10が移動速度V(塗布速度)に達した定速期に塗布を開始しても構わない。
【0037】
定速期において、帯電制御手段30を操作して帯電手段20aまたは/および20bを用いて基板1への帯電を開始する。基板1への帯電を開始してから基板1上に安定した帯電が得られるまでの時間をT1(秒)とした時、減速期の開始よりT1(秒)以上前に帯電を開始させることが、減速期で安定した帯電を得るのに重要である。帯電を開始してから基板上に安定した帯電が得られるまでの時間T1(秒)は、事前に本装置を用いて、基板上に帯電を付与させ、その帯電量をモニターする電位センサをノズルヘッド200近傍に設けて値を求めておくのがよい。または、コロナ放電式除電器(例えば、キーエンス社製)メーカの参考値を用いても構わない。
【0038】
基板上に付与された帯電量としては、塗布ヘッドとの電位差が200V以上であることが好ましく、より好ましくは400V以上、さらに好ましくは600V以上である。さらに、帯電量は2000V以下が好ましく、その帯電量に到達するまでの時間が好ましくは2秒以下、より好ましくは1秒以下である。基板とノズルヘッド200の電位差が2000Vを超えると、基板とノズルヘッド200の間で放電が発生しやすく好ましくない。
【0039】
定速期における移動速度V(塗布速度)の変動は小さい方がよい。例えば移動速度V(塗布速度)が100mm/秒のとき、速度変動は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.3%以下である。速度変動が大きいと塗布ムラや隔壁頂部にペースト203が付着する等の不具合が発生するので好ましくない。また、載置台10の増速および減速は一定の加速度で行う必要はなく、多段階に分けて行ってもよい。なお、帯電の開始を減速期の開始よりT1(秒)以上大きく前にすると、基板1に過大の帯電が付与されることとなり、次工程に基板1を搬出する際、除電に時間がかかりタクトが延びるので好ましくない。
【0040】
さらに、ペーストによっては電気を流すものがある。したがって、帯電制御手段30を操作して基板1に帯電を開始すると同時または帯電を開始する(例えば、1秒)前に、接地切り替え手段31を用いてノズルヘッド200をアースと同電位の接地状態からアースを浮かせた状態の非接地状態に切り替える。この操作により、基板1上に帯電で付与された静電気が塗布中ペースト203を伝わりノズルヘッド200を経由してアースに漏洩するのが防止できるので、ノズルヘッド200を基板1から離間するときも基板1とノズルヘッド200の電位差が200V以上で安定する。
【0041】
減速期に基板1の塗布終了位置がノズルヘッド200の吐出口202の真下に来ると、ノズルヘッド200への圧縮空気の供給が停止され、減速期の終了と同時または停止が安定するまでの時間経過(例えば、1秒)後、Z軸モータ14が操作されてノズルヘッド200を基板1から離間させて完全にペースト203を断ち切る。ノズルヘッド200を基板1から離間させた後も帯電は継続(例えば、1秒)され、その後、帯電制御手段30が操作されて基板1への帯電が停止される。さらに、基板1への帯電の停止と同時または所定時間(例えば、1秒)後、接地切り替え手段31が操作され、ノズルヘッド200をアースを浮かせた状態の非接地状態からアースと同電位の接地状態に切り替えられる。この操作により、ペースト203を含むノズルヘッド200が帯びた静電気をアースに逃がすことができるので、次の塗布への帯電の影響は低減できる。
【0042】
ノズルヘッド200を基板1から離間させた後まで帯電やノズルヘッド200の非接地を継続することで、離間が完了するまで安定した電位差が基板1とノズルヘッド200間に得られることになる。
【0043】
上述したように、少なくとも減速期およびノズルヘッド200を基板1から離間させるまでの間、ノズルヘッド200をアースを浮かせた状態の非接地状態としたが、これに限定されるものではなく、基板1の塗布終了位置およびペースト203を断ち切る位置近傍において、基板1とノズルヘッド200の電位差が200V以上を安定して確保できるのであれば、必ずしもノズルヘッド200を非接地にしなくても構わない。
【0044】
基板1を帯電させる場合に載置台10の漏洩抵抗は好ましくは1×10Ω以上、より好ましくは1×1010Ω以上で、1×1014Ω以下が好ましい。漏洩抵抗が低いと、基板1に帯電した静電気の減衰速度が速く、ノズルヘッド200を基板1から離間させる位置近傍で200V以上の電位差が確保しにくくなるので好ましくない。また、漏洩抵抗が1×1014Ω以上になると、載置台10に帯電された静電気が減衰しづらくなり、次の工程まで静電気が残るので好ましくない。漏洩抵抗とは載置台10の表面と接地間の抵抗である。
【0045】
図1において、塗布動作が終了すると載置台10はさらに下流側(紙面の右側)に移動しつつ、除電手段21aの下を通過し、基板1の帯電を除電する。そして、載置台10は基板排出位置(図示しない)まで移動して停止する。その後、載置台10は真空吸着が解除され、図示しないリフトピンで基板1を上昇する。そして、図示しない移載機によって基板1が次工程に搬出される。載置台10はリフトピンが下降した後、準備位置(図1の載置台10の位置)に戻ることで塗布作業は終了する。
【0046】
以上の塗布作業を繰り返す場合、塗布前にノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部を清掃しないと、吐出量のばらつきを生じたり、吐出流の挙動が乱れたりして塗布が不安定になりやすいので、ノズルヘッド200の清掃は必須である。しかしながら、塗布終了位置およびペースト203を断ち切る位置近傍における基板1とノズルヘッド200の電位差が200V以上で、ノズルヘッド200を基板1から離間させる最適な条件が見つけ出せれば、ノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部には残留ペーストがほとんど付着しないので塗布作業を繰り返す場合でも、塗布前にノズルヘッド200の清掃が必須でなくなり、清掃時間の短縮が図れるので好ましい。
【0047】
また、除電手段21a、21bは常時動作状態として、除電手段の下方を通過する基板1を除電しても構わないが、帯電手段20aまたは/および20bを用いて基板1を帯電しているときに、除電手段の影響で基板1の帯電が減衰、または帯電手段との間で放電が発生しないように除電手段21a、21bの配置は考慮しなければならない。
【0048】
また、基板上の帯電量をモニターする機構を設け、そのモニター値が略一定になるように帯電を開始するタイミング、または帯電を終了するまでの時間およびノズルヘッド200の接地状態を操作すればより効果的な帯電が得られる。
【0049】
図1におけるX軸、Z軸、その他の各軸の移動駆動機構としては、サーボモータとボールネジを用いて回転運動をリニア運動に変換する方式の他、リニアモータ、エアーシリンダ等直接リニア運動する方式があるが、塗液の塗布装置に求められる位置決め精度及び速度精度が達成できるならば、何れの方式を用いてもよい。また、リニア運動を案内するガイドとしては、通常のリニアガイドの他、エアーベアリングを用いてもよい。また各々軸には移動位置を検出する位置センサ(図示しない)が設けられている。位置センサを使用する代わりに、エンコーダが組み込まれたモータを使用して、各々軸の位置を検出しても構わない。
【0050】
次に、図2に示されるノズルヘッド200の構成について説明する。ノズルヘッド200は筐体207と上面板204から構成される。筐体207の内部にはペースト203の溜まり部分と空気室201が形成される一方、筐体207の底面には複数個のペーストの吐出口202が一直線上に穿設されている。また、上面板204には気体圧力供給口205及びペースト供給口206が備えられている。ペースト203はペースト供給口206より供給され、空気室201内に貯留された後、気体圧力供給口205より圧縮空気等の気体圧力で加圧されて、吐出口202に対向するように置かれた基板1の隔壁間内にペースト203を吐出することで塗布する。ここで、ペースト吐出方法としては、気体圧力で加圧する方法の他、シリンジポンプやギヤポンプ等の定容量ポンプで定量供給する方法でもよく、ペーストの特性と塗布条件に応じて最適な方法を選択することが望ましい。
【0051】
吐出口202は単数であっても複数であってもよく、スリット状、円形、楕円形または多角形等どのような形状であってもよいが、プラズマディスプレイにおいて、1画面に必要な蛍光体層を少なくとも各色につき1回の吐出で塗布できるように走査方向の画素数に応じた数以上の数(例えば、1000〜4000個程度)の円形の吐出口202(例えば、直径50〜200μm程度)をノズルヘッド200の長手方向に一直線の列状に穿設して備えていることが好ましい。
【0052】
基板1としては、塗布方向に平行なストライプ状の複数の隔壁を有するタイプ、または塗布方向に平行なストライプ状の複数の主隔壁および主隔壁に該直交する複数の補助隔壁からなる井桁状が形成されているタイプ等を用いることができる。基板1はこれに限定されるものではなく、複雑な形状の隔壁を持った基板であってもよい。上述のノズルヘッド200を用いて隔壁を有する基板に塗布を行う場合は、非常に高精度な塗布が必要となるため、残留ペーストが付着している場合には問題となりやすく、本願発明を特に好ましく用いることができる。
【0053】
基板1に塗布されるペーストは1000〜100000mPa・sの高粘度の赤色、緑色または青色のいずれか一色の蛍光体を含むペーストを使用することができる。
【0054】
次に図3を参照して、ノズルヘッド200の清掃装置である拭き取り装置100を説明する。拭き取り部材104を巻き出す巻出し部材ロール101と、巻き出された拭き取り部材104が巻き付く押し当て部材102と、押し当て部材102を通った拭き取り部材104を巻き取る巻取り部材ロール103を有する。ここで、押し当て部材102は、図1に示す通り、拭き取り部材104をノズルヘッド拭き取り位置Hでノズルヘッド200に押し当てられるようになっている。この押し当て部材102は、固定の芯軸に弾性体を固着しロール上に形成したものである。弾性体は、適度な柔らかさと共に、押し当てた相手の形状にならう融通性を有するものが適しており、発泡性スポンジや合成ゴム等を使用することが好ましい。具体的には、シリコンスポンジ、ポリエチレンスポンジ、フッ素スポンジ、シリコンゴム等が好ましい。なお、押し当て部材102の形状については、円筒形の他、接触面が平面となる直方体でもよい。
【0055】
巻出し部材ロール101と巻取り部材ロール103は、巻出しモータ(図示しない)及び巻取りモータ(図示しない)によって駆動される。押し当て部材102上で拭き取り部材104にしわが発生しないように、常に拭き取り部材104に張力を付加した状態とすることが好ましい。拭き取り部材104には布材を用いている。布材には多くの品種があるが、拭き取りによる汚れの除去作用が高く、且つ毛羽等がなく発塵しないものが好ましい。具体例として、極細長繊維を使用した不織布が好ましい。
【0056】
さらに、ノズルヘッド200に付着したペースト及び溶剤を確実に拭き取るには、押し当て部材102で拭き取り部材104をノズルヘッド200に押し当てたときに、拭き取り部材104がノズルヘッド200に十分に密着していることが必要である。そのために押し当て部材102には適度な柔軟性が要求される。具体的には、拭き取り部材104及び押し当て部材102の弾性体を重ね合わせて、ゴム硬度計(JIS K6351準拠)で一括して測定する場合に、そのゴム硬度が15〜60度とする構成を実現することが好ましい。
【0057】
また、拭き取り効果の向上を目的に、押し当て部材102上の拭き取り部材104に溶剤を吹きかける場合、吹きかける溶剤は、沸点が80℃以下の揮発性の高い溶剤をノズルヘッド200の長手方向と略同等の長さ塗布するのが好ましい。具体的にはアセトン、エタノール、メタノール等を挙げることができる。そして、拭き取り装置100を矢印110の方向に摺動させることでノズルヘッド200を清掃する。
【0058】
ここで、ノズルヘッド200の押し当て部材102への押し込み量は0.1〜1mmであることが好ましい。押し込み量が不足すると、ノズルヘッド200と拭き取り部材104が均等に接触せず、吐出口202および吐出口周辺部の残留ペースト203a及び溶剤を確実に拭き取ることができない。また、押し込み量が過大だと、拭き取り動作時にノズルヘッド200や押し当て部材102に大きな負荷がかかり、押し当て部材102を損傷する。また、拭き取り装置100を矢印110の方向に速度10〜40mm/秒で移動させる。
【0059】
塗布作業が開始される前に準備作業を行う。まず、準備作業として、ノズルヘッド200の内部にペーストを充填する。ペーストは気体圧力を利用してペースト供給源からペースト供給口206を通って供給され、ノズルヘッド200内部に充填される。そして、所定量のペーストを充填し、且つノズルヘッド200内部の空気抜きを完了したら、ペーストの供給を停止する。その後、塗布装置における各作動部の原点復帰が行われると載置台10、ノズルヘッド200は各々X軸、Z軸の準備位置(載置台は図1の載置台10の位置、ノズルヘッドは図示しない)に移動する。また、拭き取り装置100も待機位置Jに移動する。そして、載置台10の表面には図示しないリフトピンが上昇し、図示しない移載機から基板1がリフトピン上部に載置される。
【0060】
次に、リフトピンを下降させて基板1を載置台10の上面に載置し、図示しない基板位置決め装置による基板1の位置決めが行われ、基板1は吸着固定される。
次に、ノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部に付着している残留ペースト203aを拭き取り装置100を用いて除去し清掃する。まず、図1の待機位置Jに位置する拭き取り装置100は、巻出し部材ロール101から巻取り部材ロール103へ拭き取り部材104を送り出し、ノズルヘッド200と接触する拭き取り部材104を未使用の清浄な部分に更新する。そして、図1の待機位置Jからノズルヘッド200の真下付近にあるノズルヘッド拭き取り位置H(拭き取り装置100を破線で示した位置)より上流側に5〜30mm程度離れた位置まで移動させ、停止させる。ノズルヘッド拭き取り位置Hは、拭き取り部材104がノズルヘッド200と接触する位置である。そして、拭き取り装置100をX軸移動レール11に沿って下流側(紙面の右側)に移動させる。押し当て部材102がノズルヘッド200の下を通過する時、すなわちノズルヘッド拭き取り位置Hに達した時に、拭き取り部材104がノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部に押し当てられて摺動するので、吐出口202および吐出口周辺部に付着した残留ペースト203aを除去、清掃できる。その後、拭き取り装置100は図1の待機位置Jに移動する。
【0061】
ノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部に残留ペースト203aが多量に且つ不均一に付着しているときは、一回の摺動で残留ペースト203aを確実に除去、清掃するのが困難な場合がある。このときは摺動回数を増やすか、ノズルヘッド200の押し当て部材102への押し込み量を大きくとる必要がある。このことによって、ノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部には擦り傷の発生が顕著になる。また、摺動回数が増えると効率的な清掃ができなくなり、生産性が低下する不具合も生じる。したがって、ノズルヘッド200の吐出口202および吐出口周辺部に付着する残留ペーストは常に少量、且つ均一にする必要がある。
次に、載置台10を下流側(紙面の右側)のノズルヘッド200の方へ向けて移動させ、図示しないアライメント装置によって、基板1の代表の隔壁間溝中心位置とノズルヘッド200の代表吐出口と一致させる位置合わせ制御を行う。この位置合わせ制御は準備作業で一回行えばよいが、予め定められた塗布回数毎に行うことによって、その都度、基板の隔壁間溝中心とノズルヘッド200の代表吐出口の一致が図られるので、基板とノズルヘッド200の塗布方向と直交する方向のズレが防止でき、精度よく塗布が実現できるので好ましい。また、精度よく塗布ができるので、塗布中余分なペーストがノズル200下面に付着することもない。その後、載置台10は上流側(紙面の左側)に設けられている準備位置(図1の載置台10の位置)に移動する。このようにして準備作業が終了する。
【0062】
上述の説明では、載置台10への基板1の載置とノズルヘッド200の拭き取り作業を分けているが、これに限定されるものではなく、基板1の載置と並行してノズルヘッド200の拭き取りを行っても構わない。並行して作業を行うことでタクトの短縮が図られるので好ましい。
【0063】
上述の説明から明らかなように、ノズルヘッドを基板から離間させるまでに基板を帯電させ、離間後も帯電を継続することでペーストの塗布終了位置およびペーストを断ち切る位置近傍における基板とノズルヘッドの電位差が200V以上を確実に保持できている状態でノズルヘッドを基板から離間させるので、図7(b)に示すようにノズルヘッドの吐出口のより近い所でペーストが断ち切ることが可能となり、ノズルヘッドの吐出口および吐出口周辺部には少量、且つ均一のペーストが残留付着するのみとなる。したがって、付着した残留ペーストを拭き取り部材を用いて拭き取る場合でも傷の発生を抑制することが可能となり、残留ペーストの除去を短時間で行うことができるので、生産性が向上する。
【0064】
一方、ノズルヘッドを基板から離間する時、ペーストの塗布終了位置およびペーストを断ち切る位置近傍における基板とノズルヘッドの電位差が十分に確保されないとノズルヘッドの吐出口および吐出口周辺部には、図7(a)に示されるように多量の残留ペーストが付着する。
【実施例】
【0065】
比較例1
図1に示す塗布装置にて、まず、準備作業として、塗布ヘッドの一例であるノズルヘッドに、赤色(R)の蛍光体を含むペースト(粘度約30Pa・s)を充填した後、ノズルヘッドの清掃を拭き取り装置で行った。なお、拭き取り用溶剤ヘキサノール(沸点157.1℃、引火点63℃)を用い、溶剤塗布量0.5ccを塗布幅10mm、塗布長約970mmに塗布した。使用したノズルヘッドは、吐出口が径150μm、ピッチ750μmで1280個設けられたものを用いた。清掃と並行して、載置台上に基板サイズ990×600mm、基板面には高さ100μmで頂部の幅70μmの隔壁が、ピッチ250μm(溝幅180μm)で3841本形成された基板を移載機により載置し、基板位置決め装置により基板の位置決めを行った後、吸着固定した。その後、アライメント装置によって位置合わせ制御が行われ代表の隔壁間溝中心位置とノズルヘッドの代表吐出口と一致させた。除電手段21a、21bは動作させ、帯電手段20a、20bは停止状態とし、載置台が除電手段21bの下を通過することで、少なくとも基板の塗布面全面を除電した。除電手段21a、21bは、市販の1320mmのコロナ放電式除電器(キーエンス社製、SJ−R132)を用い、常時運転状態とした。そして、基板の塗布開始位置がノズルヘッド吐出口の真下に到達すると同時にノズルヘッド下面と基板の隔壁頂点との間隔を100μmになるようにし、ノズルヘッドに圧力約300KPaをかけて塗布を開始した。載置台の塗布開始時の移動速度を20mm/秒、塗布開始から20mm移動した時点で移動速度V(塗布速度)が80mm/秒になるよう増速させて定速期に移行させた。減速期に設けられている基板の塗布終了位置がノズルヘッド吐出口の真下に到達すると吐出を停止させほぼ同時に載置台の移動も停止し、そして、停止が安定するのを0.5秒待ってノズルヘッドを基板から離間させた。
【0066】
その結果、図5(a)に示すように、ノズルヘッドの吐出口および吐出口周辺部に残留ペースト203aが確認できた。この残留ペースト203aは、ノズルヘッドの長手方向に不均一に多量に付着していた。また、ノズルヘッドが基板から離間する様子を観察したところ、図6(a)に示すように、ペーストがノズルヘッドの吐出口下方で基板と断ち切れており、そのペーストが残留ペーストとして吐出口周辺部に付着していた。その様子をカメラで捉えた結果が図7(a)である。
実施例1
帯電手段20aを運転状態とした。事前に、帯電を開始してから基板上に安定した帯電が得られるまでの時間を測定したところ、約1秒であった。帯電の開始と終了タイミングを帯電制御手段に入力した。まず、帯電の開始は減速期の開始より1.5秒前とし、帯電の終了はノズルヘッドが基板から離間した後2秒とした。さらに、ノズルヘッドを接地/非接地にするタイミングを接地切り替え手段に入力した。接地状態から非接地状態に切り替えるのを帯電の開始より1秒前とし、非接地状態から接地状態に切り替えるのを帯電の終了後1秒とした。帯電手段20aは市販の1320mmのコロナ放電式除電器(キーエンス社製、SJ−H132)を用い、基板を負極に帯電させる操作を行った。基板の帯電量をモニターするため電位センサをノズルヘッド近傍に設置した。なお、電位センサはトレック・ジャパン社製(MODEL533C−S)を用いた。他は変更せず、比較例1と同様の塗布を行った。
【0067】
その結果、図5(b)に示すように、ノズルヘッド吐出口の同心円状に少量、且つ均一に残留ペースト203aが付着していた。CCDカメラで残留ペースト203aの直径を測定したところ約210μmであった。この直径が約470μmを超えると残留ペーストの除去が短時間で行えないばかりか、長期にわたりこの状態で上述の拭き取り装置を用いてノズルヘッドの吐出口および吐出口周辺部を清掃すると、傷の発生を抑制することが困難になることが実験的に分かっている。なお、ノズルヘッドの長手方向にも同様の少量、且つ均一の残留ペースト203aが付着した状態であった。各々の記録波形を確認したところ、各手段とも設定値通りに動作がなされていることを確認した。また、離間時の基板とノズルヘッドの電位差は約900Vであった。塗布基板を確認したところ、塗布開始位置及び塗布終了位置近傍にも塗布乱れはなく横一線にきれいに揃っていた。さらに、ノズルヘッドが基板から離間する様子を観察したところ、図6(b)に示すように、ペーストがノズルヘッドの吐出口のより近い所で基板と断ち切れているため、吐出口周辺部には少量の残留ペーストが付着するのみであった。その様子をカメラで捉えた結果が図7(b)である。
10回繰り返して塗布を行ったが、基板とノズルヘッドの電位差は10回とも900V前後を示し、ノズルヘッド吐出口および吐出口周辺部の残留ペーストも少量、且つ均一であった。また、塗布基板も塗布乱れはなく横一線にきれいに揃っていた。
実施例2
次に、帯電手段20aを運転状態として、塗布終了位置近傍およびペーストを断ち切る位置近傍における基板と塗布ヘッドの電位差が200Vになるよう、ノズルヘッド近傍に設けた基板の帯電量をモニターする電位センサを確認しながら、帯電手段20aの帯電開始位置、帯電停止までの時間、および帯電手段の取り付け高さを操作した。接地切り替え手段は動作させず、ノズルヘッドは接地状態のままとした。他は変更せず、実施例1と同様の塗布を行った。
【0068】
その結果、基板の塗布終了端を確認したところ横一線にきれいに揃っていた。塗布後のノズルヘッド吐出口の同心円状の残留ペースト203aをCCDカメラで確認したところ、直径が約390μmと、実施例1に比べ直径が拡大しているものの、付着量は均一であった。10回繰り返して塗布を行った。全ての基板において塗布開始位置及び塗布終了位置近傍を確認したところ横一線にきれいに揃っていた。また、記録波形で離間時の基板とノズルヘッドの電位差は10回とも200V以上を示していた。
実施例3
実施例1の塗布を繰り返し、2000枚の基板に連続して塗布を行った後、ノズルヘッド吐出口および吐出口周辺部の傷の発生状況を確認したところ、ノズルヘッドの長手方向の吐出口および吐出口周辺部にごく僅かな傷の発生が確認できた。
比較例2
比較例1の塗布を繰り返し、2000枚の基板に連続して塗布を行った後、ノズルヘッド吐出口および吐出口周辺部の傷の発生状況を確認したところ、ノズルヘッドの長手方向の吐出口および吐出口周辺部に多くの傷が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、カラーフィルタ、プラズマディスプレイ、プリント基板等の製造において、高粘度の塗液を塗布する塗布方法並びに塗布装置として好適である。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
10 載置台
11 X軸移動レール
12 機台
13 支持機台
14 Z軸モータ
15 Z軸移動レール
16 ホルダ
17 絶縁部材
30 帯電制御手段
31 接地切り替え手段
20a、20b 帯電手段
21a、21b 除電手段
100 拭き取り装置
101 巻出し部材ロール
102 押し当て部材
103 巻取り部材ロール
104 拭き取り部材
110 摺動方向
112 擦り傷
200 ノズルヘッド
201 空気室
202 吐出口
203 ペースト
204 上面板
205 気体圧力供給口
206 ペースト供給口
207 筐体
203a 残留ペースト
H ノズルヘッド拭き取り位置
J 待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する塗布ヘッドを基板と対向させて相対的に移動させながら塗液を前記吐出口から吐出して前記基板上に塗布し、前記吐出口からの塗液の吐出を停止させ、塗液の吐出を停止すると同時または塗液の吐出を停止した後さらに塗布ヘッドと基板を相対移動させた後に相対移動を停止させ、その後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させる塗液の塗布方法であって、少なくとも前記塗布ヘッドを前記基板から離間させるまでに前記基板を帯電させ、塗液の塗布終了位置における前記基板と前記塗布ヘッドの電位差が200V以上の状態で離間することを特徴とする塗液の塗布方法。
【請求項2】
前記塗布ヘッドと前記基板の相対移動は相対的に停止した状態から一定の相対移動速度Vまで増速する増速期、次いで前記相対移動速度Vで相対移動させる定速期、さらに次いで前記相対移動速度Vから相対的に停止した状態まで減速する減速期に区分して行い、前記増速期または定速期において前記吐出口からの前記塗液の吐出を開始し、定速期において前記基板への帯電を開始し、減速期において前記吐出口からの前記塗液の吐出を停止し、減速期の後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させた後に前記基板への帯電を停止することを特徴とする請求項1に記載の塗液の塗布方法。
【請求項3】
前記基板への帯電を開始してから前記基板上に安定した帯電が得られるまでの時間をT1(秒)とした時、前記減速期の開始よりT1(秒)以上前に前記基板への帯電を開始させることを特徴とする請求項2に記載の塗液の塗布方法。
【請求項4】
前記減速期および前記塗布ヘッドと前記基板を相対的に停止した後、前記塗布ヘッドを前記基板から離間させるまでの間、塗布ヘッドを非接地とすることを特徴とする請求項2または3に記載の塗液の塗布方法。
【請求項5】
前記基板を帯電させる前に少なくとも前記基板の塗布面全面を除電させる請求項1〜4のいずれかに記載の塗液の塗布方法。
【請求項6】
前記基板を帯電させる帯電手段を前記塗布ヘッドと一体に移動させる請求項1〜5のいずれかに記載の塗液の塗布方法。
【請求項7】
前記塗布ヘッドの吐出口は所定のピッチで列状に穿設された複数の吐出孔からなり、一回の前記相対移動で前記基板の全幅にわたり塗布を行う請求項1〜6のいずれかに記載の塗液の塗布方法。
【請求項8】
前記基板が塗布方向に平行なストライプ状の複数の隔壁または塗布方向に平行なストライプ状の複数の主隔壁および該主隔壁に略直交する複数の補助隔壁からなる井桁状の隔壁を有し、請求項7の塗液の塗布方法を用いて前記隔壁間に形成された凹部に塗布ヘッドの吐出口から赤色、緑色または青色のいずれか一色の蛍光体を含むペーストを塗液として吐出することを特徴とするプラズマディスプレイ部材の製造方法。
【請求項9】
塗液を吐出する塗布ヘッドと、該塗布ヘッドから吐出される塗液が塗布される基板を載置する載置台と、前記塗布ヘッドと前記載置台とを前記載置台表面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記塗布ヘッドを前記載置台から離間させる離間手段とを有する塗液の塗布装置であって、前記基板を帯電させる帯電手段と、該帯電手段による前記基板への帯電の付与タイミングを制御する帯電制御手段と、前記塗布ヘッドを接地状態と非接地状態に切り替えるための接地切り替え手段とを備えたことを特徴とする塗液の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149104(P2010−149104A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226400(P2009−226400)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】