説明

変位検出装置

【課題】干渉光と各部品の多重反射による迷光が重なることがなく、検出精度の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】変位検出装置は、回折格子2と、格子干渉計4,5と、相対位置情報出力手段6,7とを備えている。格子干渉計4,5は、光源3と、反射手段12,13と、ビームスプリッタ17と、受光手段18,19とを有している。反射手段12,13は、回折格子2によって回折された1回回折光L,Lを反射させて、光源3からの光Lが照射された位置とほぼ同じ位置に再び入射させている。更に、反射手段12,13は、光源3から複合回折格子2への入射角度及び、1回回折光L,Lが回折格子2を透過又は反射した角度と異なる角度で回折格子2に1回回折光L,Lを入射させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉を利用して回折格子(スケール)の変位(移動)量を検出する変位検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直線変位や回転変位等の精密な測定を行う測定器として、スケールと検出ヘッドを備えた変位検出装置が広く利用されている。近年では、発光ダイオードやレーザの光を用いた変位検出装置が用いられている。そして、1nm以下の変位の計測が行える高分解能化された変位検出装置が求められている。
【0003】
従来の、この種の変位検出装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。この特許文献1に記載された変位検出装置では、光源から照射された光をビームスプリッタによって2つの光に分割すると共に、反射手段によって反射させて、回折格子上の同一の位置に照射している。
【0004】
そして、回折格子に照射された2つの光は、回折格子で回折され、2つの1回回折光が生じる。この1回回折光を、ミラー等の反射手段で反射し、光源から照射された光の光路と同じ光路を通って再び回折格子に照射している。これにより、回折格子によって2回回折された2つの2回回折光を生成している。
【0005】
次に、この2つの2回回折光を、ビームスプリッタで重ね合わせて干渉させて、2つの2回回折光を干渉させた干渉光を受光素子に結像している。そして、受光素子で干渉光から干渉信号を検出し、干渉信号から2つの2回回折光の移動差を求めて、回折格子の移動位置を検出している。
【0006】
また、特許文献2に記載された変位検出装置には、光源から照射された光をビームスプリッタによって分割した光を回折格子上の異なる2つの位置に照射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−257841号公報
【特許文献2】特開2007−218833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された変位検出装置では、光源から照射された光が回折格子によって回折されて回折格子を出射する出射角度と、反射手段によって反射して回折格子に再び入射する入射角度とが同じである。そのため、回折格子によって2回回折された2回回折光のうち各部品の多重反射による不要な迷光が干渉光と重なる恐れがあった。その結果、不要な迷光が干渉光と重なることで、ノイズが発生し、検出精度が低下する、という問題を有していた。
【0009】
また、迷光が干渉光と重ならないように、部品を傾けたり、位相板等を設けたりすることが考えられる。しかしながら、位相板等を設ける場合、位相板等によって部品点数が増えていた。
【0010】
また、特許文献2に記載された技術では、回折格子上の異なる2つの位置に光を照射していた。そのため、回折格子の表面の面精度が悪いと、各光の光路長に変化が生じていた。その結果、この光路長の変化が誤差となって検出される、という問題を有していた。
更に、近年の半導体製造装置や検査装置のチルト機構を有する超精密位置決めステージでは、リニアエンコーダとして、チルトやクリアランスの許容を持たせつつ、高速応答で1nm以下の変位検出精度が要求されている。そのため、上述したような僅かな誤差も解消する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、光源から照射された光が回折格子によって2回の回折をする際に、それぞれの入出射角度を一致させないで、干渉光と各部品の多重反射による迷光が重なることがなく、検出精度の向上を図ることができる変位検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、複数のスリットが形成され、光を回折する略平板状の回折格子を備えている。また、回折格子に光を照射し、正負の次数の2つの光に回折し、且つ回折された2つの光を干渉させると共に干渉信号を生成する格子干渉計と、格子干渉計によって生成した干渉信号から回折格子の相対位置情報を検出する相対位置情報出力手段と、を備えている。
格子干渉計は、回折格子に光を照射する光源と、回折格子によって回折された1回回折光を反射させて、光源からの光が照射された位置とほぼ同じ位置に再び入射させる反射手段と、を有している。更に、回折格子によって2回回折された2つの2回回折光を重ね合わせるビームスプリッタと、ビームスプリッタによって重ね合わされた2回回折光同士を受信して干渉信号を生成する受信手段と、を有している。そして、反射手段は、光源から回折格子への入射角度及び、1回回折光が回折格子を透過又は反射した角度と異なる角度で回折格子に1回回折光を入射させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の変位検出装置によれば、反射手段によって、回折格子によって回折された1回回折光の出射角度と、再び回折格子に入射する1回回折光の入射角度を異なる角度に設定している。これにより、2回回折された2回回折光が、1回回折光や光源から回折格子に入射される光の光路と平行にならない。その結果、各部品の多重反射で発生する不要な迷光が干渉光と重なることを防ぐことができ、正確な干渉強度の検出が可能となる。
【0014】
更に、光源から照射された光が回折格子に入射した位置とほぼ同じ位置に、反射手段によって反射させた1回回折光を入射させている。その結果、回折格子の表面の面精度の影響によって生じる誤差を解消することができ、検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる複合回折格子を示す説明図である。
【図4】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる回折格子の第1の格子ベクトル方向及び第2の格子ベクトル方向と、第1の格子干渉計及び第2の格子干渉計の位置関係を示す説明図である。
【図5】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる要部を拡大して示す説明図である。
【図6】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例にかかる要部の変形例を拡大して複合回折格子の上方から見た状態を示す説明図である。
【図7】本発明の変位検出装置の第2の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の変位検出装置の第2の実施の形態例にかかる相対位置情報出力手段を示すブロック図である。
【図9】本発明の変位検出装置の第3の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図10】本発明の変位検出装置の第3の実施の形態例にかかる要部を拡大して示すものである。
【図11】本発明の変位検出装置の第4の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図12】本発明の変位検出装置の第5の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図13】本発明の変位検出装置の第6の実施の形態例にかかる光学系を模式的に示す側面図である。
【図14】回折格子の第1の変形例を示す説明図である。
【図15】回折格子の第2の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の変位検出装置の実施の形態例について、図1〜図15を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
また、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.変位検出装置の構成例
1−2.変位検出装置の動作
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
4.第4の実施の形態例
5.第5の実施の形態例
6.第6の実施の形態例
7.回折格子の変形例
【0017】
<1.第1の実施の形態例>
まず、本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)の構成を図1〜図3に従って説明する。
【0018】
1−1.変位検出装置の構成例
図1は、変位検出装置の光学系を示す斜視図、図2は、変位検出装置の光学系を示す側面図である。
【0019】
本例の変位検出装置1は、反射型の複合回折格子を用いて、2次元(平面)の変位を検出することができる変位検出装置である。図1及び図2に示すように、変位検出装置1は、複合回折格子2と、光源3を有する第1の格子干渉計4及び第2の格子干渉計5と、第1の相対位置情報出力手段6と、第2の相対位置情報出力手段7(図2参照)とを備えている。
【0020】
図3は、複合回折格子2を上面から見た説明図である。
この図3に示すように、複合回折格子2は、平板状に形成されており、第1の回折格子2aと、第2の回折格子2bとを有している。第1の回折格子2a及び第2の回折格子2bは、細いスリットsを等間隔に形成したものである。
【0021】
第1の回折格子2aのスリットsは、複合回折格子2の面と平行をなす第1の格子ベクトル方向Cに直交して形成されている。この第1の回折格子2aのピッチΛaは、dに設定されている。なお、この複合回折格子2のスリットsは一例であり、表面が凹凸形状の反射型回折格子でもよく、あるいは透過型のボリュームタイプホログラムであってもよい。
【0022】
第2の回折格子2bのスリットsは、複合回折格子2の面と平行で、且つ第1の格子ベクトル方向Cに対して角度θa傾いた第2の格子ベクトル方向Dに直交して形成されている。この第2の回折格子2bのピッチΛbは、dに設定されている。なお、第1の回折格子2aのピッチΛaと、第2の回折格子2bのピッチΛbは、同じ長さに設定してもよく、あるいは異なる長さでもよい。更に、角度θaは、90°であってもよく、あるいは90°以外の角度であってもよい。
【0023】
図4は、複合回折格子2の第1の格子ベクトル方向C及び第2の格子ベクトル方向Dと、第1の格子干渉計4及び第2の格子干渉計5の仮想面の関係を説明する説明図である。
ここで、図4に示すように、複合回折格子2に入射される任意の位置を照射スポットPとする。そして、この照射スポットPを通り、第1の格子ベクトル方向Cと平行で、複合回折格子2の面と直交する面が第1の仮想面10Aとなる。また、照射スポットPを通り、第2の格子ベクトル方向Dと平行で、且つ複合回折格子2の面と直交する面が第2の仮想面10Bとなる。なお、複合回折格子2の直交する方向を第3の方向Zとする。
【0024】
この第1の仮想面10Aに合わせて第1の格子干渉計4が配置されており、第2の仮想面10Bに合わせて第2の格子干渉計5が配置されている。第1の格子干渉計4は、第1の回折格子2aによって回折された光の干渉信号を生成し、第2の格子干渉計5は、第2の回折格子2bによって回折された光の干渉信号を生成している。
【0025】
なお、本例では、複合回折格子2の第1の格子ベクトル方向Cが第1の計測方向と一致しており、第2の格子ベクトル方向Dが第2の計測方向と一致している。
【0026】
図2に示すように、第1の格子干渉計4及び第2の格子干渉計5は、同一の構成を有しているため、ここでは、第1の格子干渉計4について説明する。また、第2の格子干渉計5を構成する構成要素において、第1の格子干渉計4と共通する部分には、第1の格子干渉計4の構成要素の符号にBを付けて示す。
【0027】
第1の格子干渉計4は、光源3と、レンズ11と、第1の反射手段12と、第2の反射手段13と、第1のミラー14と、第2のミラー16と、ビームスプリッタ17と、第1の受光手段18と、第2の受光手段19とを有している。
【0028】
光源3は、複合回折格子2の面に対して略垂直に配置されている。なお、この光源3は、第2の格子干渉計5の光源としての役割も兼ねている。光源3としては、可干渉性光源が望ましく、例えばガスレーザ、半導体レーザダイオード、スーパールミネッセンスダイオードや発光ダイオード等が挙げられる。
【0029】
なお、本例では、光源3を第1の格子干渉計4内に配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光源3は、光ファイバによって第1の格子干渉計4の外部に設けた光源から光を供給する構成であってもよい。また、これをさらに脱着可能な構成とすることで、変位検出装置1から離れた場所での光源のメンテナンスが可能となり、作業性が向上する。
【0030】
また、光源3と複合回折格子2との間には、レンズ11が配置されている。このレンズ11は、光源3から照射された光Lを任意の径に集光している。レンズ11は、使用する波長領域によって色消し対策を施したものを用いてもよい。レンズ11に色消す対策を施すことで、光源3の波長変動によって焦点距離の変動を受けにくくすることができる。その結果、より安定した変位計測を行うことが可能となる。
【0031】
なお、この光源3とレンズ11は、第2の格子干渉計5と共有の部材である。
【0032】
第1の反射手段12と、第2の反射手段13は、光源3を間に挟むようにして、第1の格子ベクトル方向Cに沿って配置されている。なお、第2の格子干渉計5では、第2の格子ベクトル方向Dに沿って配置されている。この第1の反射手段12及び第2の反射手段13は、プリズムであり、複合回折格子2から反射された光Lを再び複合回折格子2に反射している。なお、第1の反射手段12及び第2の反射手段13は、プリズムだけでなく、複数のミラーを組み合わせて構成してよい。
【0033】
第1のミラー14と、第2のミラー16は、光源3を間に挟むようにして、第1の格子ベクトル方向Cに沿って配置されている。なお、第2の格子干渉計5では、第2の格子ベクトル方向Dに沿って配置されている。第1のミラー14及び第2のミラー16は、複合回折格子2で2回回折された光Lをビームスプリッタ17に反射するものである。
【0034】
そして、光源3の第3の方向Zの上方には、ビームスプリッタ17が配置されている。このビームスプリッタ17は、第1のミラー14及び第2のミラー16から反射された2つの光Lを重ね合わせると共に干渉させて、2つに分割している。そして、このビームスプリッタ17における光Lの出射口には、第1の受光手段18と、第2の受光手段19が設けられている。また、第1の受光手段18及び第2の受光手段19は、第1の相対位置情報出力手段6に接続されている。
【0035】
また、第2の格子干渉計5の第1の受光手段18B及び第2の受光手段19Bは、第2の相対位置情報出力手段7に接続されている。
【0036】
なお、第1の反射手段12,第2の反射手段13、第1のミラー14及び第2のミラー16の光反射面を、例えば金等の金属皮膜により構成してもよい。これにより、一般の誘電体多膜層による反射面に比べて、湿度の変化による偏光や波長特性の変化を抑えることが可能であり、安定した位置検出が行われる。
【0037】
そして、第1の格子干渉計4と、第2の格子干渉計5と、第1の相対位置情報出力手段6と、第2の相対位置情報出力手段7で非接触センサを構成している。
【0038】
1−2.変位検出装置の動作
次に、図1、図2及び図5、図6を参照して、本例の変位検出装置1の動作について説明する。図5は、本例の変位検出装置1の要部を拡大して示す説明図である。
【0039】
図1に示すように、光源から照射された光Lは、レンズ11を透過して、複合回折格子2の面の任意の照射スポットPに略垂直に入射する。そして、光Lは、複合回折格子2の第1の回折格子2aと第2の回折格子2bによって、第1の格子ベクトル方向Cと第2の格子ベクトル方向Dに沿って4つの1回回折光に回折される。
【0040】
具体的には、図5に示すように、任意の照射スポットPに入射された光Lは、複合回折格子2の第1の回折格子2aによって正負の次数の1回回折光L,−Lが得られる。すなわち、複合回折格子2の第1の格子ベクトル方向Cのプラス方向(進行方向)への1回回折光Lが正となり、マイナス方向への1回回折光Lが負となる。第2の回折格子2bでも同様であるため、その説明は、省略する。
【0041】
ここで、回折光の回折角は、一般的に下記式(1)によって得られる。
sinθin+sinθout=n・λ/Λ・・・・(1)
なお、角度θinは、複合回折格子2への入射角を示し、角度θoutは、複合回折格子2からの回折角(本例では、反射角)を示している。そして、Λは、格子のピッチ(幅)を示し、λは、光Lの波長を示し、nは、回折次数を示している。本例では、複合回折格子2に対して略垂直に光Lを入射させているため、角度θinは、0°である。
【0042】
1回回折光L,−Lは、複合回折格子2から第1の出射角度θで反射(回折)され、第1の格子干渉計4の第1の反射手段12又は第2の反射手段13に向かう。正の次数の1回回折光Lは、第1の反射手段12に向かい、負の次数の1回回折光−Lは、第2の反射手段13に向かう。そして、2つの1回回折光L,−Lは、第1の反射手段12と第2の反射手段13によって反射されて、再び複合回折格子2の照射スポットPに向けて入射される。そのため、2つの1回回折光L,−Lは、複合回折格子2によって再び回折され、2回回折光L,−Lとなって複合回折格子2から出射される。
【0043】
このとき、2つの1回回折光L,−Lは、第1の反射手段12又は第2の反射手段13内で2回反射される。そのため、第1の反射手段12と第2の反射手段13よって反射された2つの1回回折光L,−Lにおける複合回折格子2への入射角度θは、出射角度θと異なる角度となる。なお、第1の反射手段12及び第2の反射手段13で1回回折光L,−Lを反射させる回数は、2回に限定されるものではない。例えば、第1の反射手段12又は第2の反射手段13内で、2つの1回回折光L,−Lを3回以上反射させてもよい。
【0044】
図は6、本例の変位検出装置1の要部の他の例を照射スポットPの上方から見た状態を示す説明図である。
なお、図5では、1回回折光L,−L及び2回回折光L,−Lを仮想面10A、10B上に配置した例を示している。しかしながらが、図6に示すように、1回回折光L,−L及び2回回折光L,−Lは、仮想面10A,10B上に配置しなくても良い。1回回折光L,−Lは、入射角度θで回折格子に入射させるために、仮想面10A,10B上に配置すると、1回回折光Lの0次光(光L)が1回回折光−Lと、重なる可能性がある。同様に、1回回折光−Lの0次光(光L)が1回回折光Lと、重なる可能性がある。
【0045】
図6に示すように、これを回避するために、複合回折格子2の上方から見ても、更に、1回回折光L,−Lを角度θだけ傾けて入射させてもよい。これにより、1回回折光Lの0次光(光L)が負の1回回折光−Lと、1回回折光−Lの0次光(光L)が1回回折光Lと重なることをより効果的に防止することができ、不要な迷光が光原3に戻ることを防ぐことができる。
【0046】
そして、複合回折格子2によって2回回折された2回回折光L,−Lは、第1の出射角度θ及び入射角度θとは、異なる第2の出射角度θで出射(回折)される。よって、この2回回折光L,−Lは、1回目の1回回折光L,−Lや入射光Lと平行になることがない。これにより、各部品の多重反射で発生する不要な迷光が干渉光と重なることを防ぐことができる。
【0047】
更に、2回目の回折を行う場合も、1回目の回折とおなじ照射スポットPに光を照射している。これにより、複合回折格子2の表面の面精度の影響を受ける心配がない。これにより、複合回折格子2の表面の面精度の荒さによって生じる誤差を無くすことが可能である。
【0048】
次に、2回回折光L,−Lは、それぞれ第1のミラー14、第2のミラー16に入射される。具体的には、2回回折光Lは、第1のミラー14に入射されると共に第1のミラー14によってビームスプリッタ17に反射される。また、2回回折光−Lは、第2のミラー16に入射されると共に、第2のミラー16によってビームスプリッタ17に反射される。
【0049】
そして、2つの2回回折光L,−Lは、ビームスプリッタ17によって重ね合わされて干渉し、干渉光Ldとなる。更に、この干渉光Ldは、ビームスプリッタ17によって2つに分割され、第1の受光手段18に第2の受光手段19に導かれる。
【0050】
第1の受光手段18では、干渉光Ldを受信し、光電変換することで、Acos(4Kx+δ)の干渉信号が得られる。Aは、干渉の振幅であり、Kは2π/Λで示される波数である。また、xは、複合回折格子2の第1の格子ベクトル方向Cの移動量を示しており、δは、初期位相を示している。
【0051】
ここで、図5に示すように、最初に複合回折格子2に入射された際に、光Lは、正負の次数の2つの1回回折光L,−Lに分かれている。そして、一方の1回回折光Lが、第2の反射手段13によって反射されて複合回折格子2によって2回回折し(2K)、他方の1回回折光−Lも同様に、複合回折格子2によって2回回折している(2K)。そして、ビームスプリッタ17によって重ね合わさることで、2K+2K=4Kとなる。そのため、上述した干渉信号のようにxの移動量に4Kをかけることになる。
【0052】
よって、複合回折格子2が第1の格子ベクトル方向Cに移動することによって、第1の回折格子2aの1ピッチ(1Λ)あたり、4つの波、すなわち4回の光の明暗が第1の受光手段18によって得ることができる。これにより、高分解能の変位検出が可能となる。
【0053】
なお、第2の受光手段19によって得られる信号は、第1の受光手段18によって得られる干渉信号に対して90度位相が異なっている。これにより、sin信号とcos信号を得ることができる。そして、このsin信号とcos信号を第1の相対位置情報出力手段6に出力することで、第1の格子ベクトル方向Cの変位量を検出することができる。また、第1の相対位置情報出力手段6の詳細な説明は、後述する他の実施の形態例で説明する。
【0054】
このように、複合回折格子2で回折された正負の次数の1回回折光L,−Lのうち正の次数の1回回折光Lだけでなく、負の次数の1回回折光−Lも干渉信号を生成するために使用している。そのため、負の次数の1回回折光−L、又は正の次数の1回回折光Lが不要な迷光とならないため、正確な干渉強度の検出を行うことができる。更に、第1の受光手段18や第2の受光手段19に受光される干渉光Ldの光量を増やすことができ、検出精度の向上を図ることも可能である。
【0055】
なお、第2の格子干渉計5における第2の格子ベクトル方向Dの変位量の検出は、光源3から照射スポットPに入射され、且つ第2の格子ベクトル方向Dに沿って回折した、2つの回折光L,−Lによって行われる。そして、その他の説明は、上述した第1の格子ベクトル方向Cと同一であるため、ここではその説明は省略する。
【0056】
このように、1つの光源3から照射された光Lを効率良く第1の格子干渉計4と第2の格子干渉計5に使用することができる。よって、1つの光源3から照射された光Lによって、複合回折格子2における第1の格子ベクトル方向Cと第2の格子ベクトル方向Dの変位量を検出することができる。これにより、それぞれの格子干渉計4、5に光源を用意する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0057】
<2.第2の実施の形態例>
次に、図7及び図8を参照して本発明の変位検出装置の第2の実施の形態例について説明する。
図7は、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31の光学系を示す側面図、図8は、変位検出装置31にかかる相対位置情報出力手段を示すブロック図である。
【0058】
この第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31は、複合回折格子2と反射手段との間にレンズを設けると共に、第1の受光手段及び第2の受光手段の構成について詳細に説明したものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
図7に示すように、変位検出装置31は、複合回折格子2と、光源3と、第1の格子干渉計34と、第2の格子干渉計35と、第1の相対位置情報出力手段6及び第2の相対位置情報出力手段7とを備えている。この第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31の光源3は、円偏光の光を照射するものである。
【0060】
第1の格子干渉計34及び第2の格子干渉計35は、同一の構成を有しているため、ここでは、第1の格子干渉計34について説明する。また、第2の格子干渉計35を構成する構成要素において、第1の格子干渉計34と共通する部分には、第1の格子干渉計34の構成要素の符号にBを付けて示す。
【0061】
図7に示すように、複合回折格子2と、第1の反射手段12との間には、第1のレンズ37が配置されている。また、複合回折格子2と、第2の反射手段13との間には、第2のレンズ38が配置されている。
【0062】
第1のレンズ37の焦点距離は、複合回折格子2とレンズ11との距離と等しく設定されている。また、第2のレンズ38の焦点距離は、複合回折格子2とレンズ11との距離と等しく設定されている。
【0063】
そのため、複合回折格子2がチルトした(傾いた)際に、第1のレンズ37及び第2のレンズ38の焦点距離は、複合回折格子2とレンズ11との距離と等しくすることで、第1のレンズ37を通過した後の光路は、チルトしてない場合の光路と略平行になる。そして、第1の反射手段12及び第2の反射手段13が、2枚のミラーで構成されているため、複合回折格子2への再入射の際に、照射スポットP付近に入射させることができる。これにより、複合回折格子2のチルトによる計測誤差を軽減できる。
【0064】
その結果、第1の反射手段12及び第2の反射手段13によって反射され、複合回折格子2に入射される2回目の入射ポイントを任意の照射スポットPから外れ難くすることができる。更に、複合回折格子2のチルト(傾き)の許容範囲を広げることができる。
【0065】
また、ビームスプリッタ17における光の入射口側には、第1の位相板39と第2の位相板40が設けられている。第1の位相板39は、ビームスプリッタ17と第1のミラー14との間の光路上に配置されており、第2の位相板40は、ビームスプリッタ17と第2のミラー16との間の光路上に配置されている。
【0066】
第1の位相板39と第2の位相板40は、例えば1/4波長板からなり、円偏光である2回回折光L,−Lを直線偏光にするものである。また、第1の位相板39及び第2の位相板40は、透過する2回回折光L,−Lを互いに直交した直線偏光になるように、位相板の結晶軸が互いに直交する方向に向いている。
【0067】
また、第1の受光手段18は、第1の偏光ビームスプリッタ42と、第1の受光素子43と、第2の受光素子44とから構成されている。第2の受光手段19は、第2の偏光ビームスプリッタ46と、第3の受光素子47と、第4の受光素子48とから構成されている。
【0068】
そして、ビームスプリッタ17と第1の受光手段18との間の光路上には、第3のレンズ49が配置されている。更に、ビームスプリッタ17と第2の受光手段19との間の光路上には、第3の位相板41と、第4のレンズ50が配置されている。
【0069】
そして、第1の位相板39と第2の位相板40によって互いに直交した直線偏光の2つの2回回折光L,−Lは、ビームスプリッタ17によって重ね合わされると共に、2つに分割される。そして、2つに分割された光は、第3のレンズ49又は第4のレンズ50に導かれる。
【0070】
ここで、第1の偏光ビームスプリッタ42は、互いに偏光方向が90度異なる2つの2回回折光L,−Lの偏光方向が、第1の偏光ビームスプリッタ42の入射面に対してそれぞれ偏光方向が45度傾くように傾けて配置されている。
【0071】
ここで、第1の偏光ビームスプリッタ42は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、光を分割するものである。
【0072】
これにより、2つの2回回折光L,−Lは、第1の偏光ビームスプリッタ42に対してそれぞれp偏光成分及びs偏光成分を有することになる。したがって、第1の偏光ビームスプリッタ42を透過した2つの2回回折光L,−Lは、例えば同じ偏光方向を有するp偏光となるので、2つの2回回折光L,−Lを干渉させることができる。
【0073】
また、同様に、第1の偏光ビームスプリッタ42によって反射される2回回折光L,−Lは、第1の偏光ビームスプリッタ42に対するs偏光であり、同じ偏光方向を有しているので干渉させることができる。
【0074】
第1の偏光ビームスプリッタ42を透過した干渉光Ldは、第1の受光素子43によって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ42によって反射された干渉光Ldは、第2の受光素子44によって受光される。ここで、第1の受光素子43と第2の受光素子44とによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
【0075】
第1の受光素子43と第2の受光素子44によって得られる干渉信号は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様に、Acos(4Kx+δ)の干渉信号が得られる。
【0076】
また、他方の第4のレンズ50に導かれた2つの2回回折光L,−Lは、1/4波長板等からなる第3の位相板41に入射する。互いに偏光方向が90度異なる直線偏光である2つの2回回折光L,−Lは、第3の位相板41を透過することにより、互いに逆回りの円偏光となる。そして、この互いに逆回りの円偏光は同一光路上にあるので、重ね合わされることにより直線偏光となり、第2の偏光ビームスプリッタ46に入射する。
【0077】
この直線偏光のs偏光成分は第2の偏光ビームスプリッタ46によって反射され、第3の受光素子47に受光される。また、p偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ46を透過し、第4の受光素子48によって受光される。
【0078】
第2の偏光ビームスプリッタ46に入射する直線偏光は、互いに逆回りの円偏光の重ね合わせによって生じている。そして、第2の偏光ビームスプリッタ46に入射される直線偏光の偏光方向は、複合回折格子2が第1の格子ベクトル方向CにΛ/2だけ移動すると、1回転する。したがって、第3の受光素子47と第4の受光素子48でも同様に、Acos(4Kx+δ’)の干渉信号が得られる。δ’は初期位相である。
【0079】
また、第3の受光素子47と第4の受光素子48とで光電変換される信号は、180度位相が異なる。
【0080】
なお、本実施形態では、第1の偏光ビームスプリッタ42に対して、第3の受光素子47と第4の受光素子48に受光される光束を分割する第2の偏光ビームスプリッタ46を45度傾けて配置している。このため、第3の受光素子47と第4の受光素子48において得られる信号は、第1の受光素子43と第2の受光素子44において得られる信号に対し、90度位相がずれている。
【0081】
したがって、例えば第1の受光素子43と第2の受光素子44で得られる信号をsin信号、第3の受光素子47と第4の受光素子48において得られる信号をcos信号として用いることによりリサージュ信号を取得することができる。
【0082】
これらの受光素子によって得られる信号は、第1の相対位置情報出力手段6によって演算され、被測定面の変位量がカウントされる。
図8に示すように、第1の相対位置情報出力手段6は、第1の差動増幅器51aと、第2の差動増幅器51bと、第1のA/D変換器52aと、第2のA/D変換器52bと、波形補正処理部53と、インクリメンタル信号発生機54とを有している。
【0083】
例えば、本実施形態の第1の相対位置情報出力手段6では、まず、第1の受光素子43と第2の受光素子44で得られた位相が互いに180度異なる信号を第1の差動増幅器51aによって差動増幅し、干渉信号の直流成分をキャンセルする。
【0084】
そして、この信号は、第1のA/D変換器52aによってA/D変換され、波形補正処理部53によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。この信号は、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64において演算される。
【0085】
また同様に、第3の受光素子47及び第4の受光素子48で得られた信号は、第2の差動増幅器51bによって差動増幅され、第2のA/D変換器52bによってA/D変換される。そして、波形補正処理部53により信号振幅とオフセットと位相とが補正され、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
【0086】
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別回路等により正逆の判別が行われ、これにより、被測定面の第1の格子ベクトル方向Cの変位量が、プラス方向であるかマイナス方向であるかを検出できる。
【0087】
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号のパルス数をカウントすることにより、2つの2回回折光L,−Lの干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。したがって、これにより第1の格子ベクトル方向Cの変位量が検出される。
【0088】
なお、本実施形態の第1の相対位置情報出力手段6の出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
【0089】
また、第2の相対位置情報出力手段7も、第1の相対位置情報出力手段6と同様の構成を有しているため、その説明は、省略する。
【0090】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置31によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
<3.第3の実施の形態例>
次に、図9及び図10を参照して本発明の変位検出装置の第3の実施の形態例について説明する。
図9は、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置61の光学系を示す側面図である。図10は、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置31の要部を拡大して示す説明図である。
【0092】
この第3の実施の形態例にかかる変位検出装置61と、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31と異なる点は、第1のレンズ及び第2のレンズの構成である。そのため、ここでは、第1のレンズ及び第2のレンズについて説明し、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0093】
図9に示すように、変位検出装置61は、第1の格子干渉計64と、第2の格子干渉計65とを有している。第1の格子干渉計64の第1の反射手段12と複合回折格子2との間の光路上には、第1のレンズ群62が配置されている。また、第2の反射手段13と複合回折格子2との間の光路上には、第2のレンズ群63が配置されている。
【0094】
第1のレンズ群62は、第1レンズ62aと、第2レンズ62bとから構成されている。第1レンズ62aは、複合回折格子2から反射された1回回折光Lが第1の反射手段12に入射される光路上に配置されている。また、第2レンズ62bは、第1の反射手段12によって反射された1回回折光Lが複合回折格子2に照射される光路上に配置されている。
【0095】
また、第1レンズ62aから第1の反射手段12を通り、第2レンズ62bまでの光路の距離は、第1レンズ62aの焦点距離と第2レンズ62bの焦点距離との和と等しく設定されている。
【0096】
同様に、第2のレンズ群63は、第1レンズ63aと、第2レンズ63bとから構成されている。第1レンズ63aは、複合回折格子2から反射された1回回折光−Lが第2の反射手段13に入射される光路上に配置されている。また、第2レンズ63bは、第2の反射手段13によって反射された1回回折光−Lが複合回折格子2に照射される光路上に配置されている。
【0097】
更に、第1レンズ63aから第2の反射手段13を通り、第2レンズ63bまでの光路の距離は、第1レンズ63aの焦点距離と第2レンズ63bの焦点距離との和と等しく設定されている。
【0098】
また、第1のレンズ群62及び第2のレンズ群63を構成する第1レンズ62a,63a及び第2レンズ62b、63bの焦点距離を、複合回折格子2とレンズ11との距離と等しくしている。そのため、図10(a)に示すように、複合回折格子2がチルトした場合、第1のレンズ群63の第1レンズ62aを通過した後の光路は、チルトしてない場合の光路と略平行になる。ここで、第1の反射手段12及び第2の反射手段13が、2枚のミラーで構成されている場合、複合回折格子2への再入射の際に、照射スポットP付近に入射させることができる。これにより、複合回折格子2のチルトによる計測誤差を軽減できる。
【0099】
また、図10(b)に示すように、第1の反射手段12及び第2の反射手段13を3枚のミラーで構成した場合、再入射の際に照射スポットP付近に入射し、再入射の角度が、チルト方向と同じになる。これにより、2回目の回折による回折光を常に安定させることができる。
【0100】
その結果、複合回折格子2に入射される2回目の入射ポイントを任意の照射スポットPから外れ難くすることができる。更に、複合回折格子2が傾いたり、複合回折格子2の表面にうねり等があった場合でも、最初に光Lが入射した照射スポットPに1回回折光L,−Lを入射させることができ、検出精度が低下することを防ぐことができる。
【0101】
また、複合回折格子2のチルト傾き(変動)やクリアランス変動、いわゆる第3の方向Zの変動によって拡大する波面収差を控え、安定した干渉信号を得ることができる。
【0102】
なお、第2の格子干渉計65も同様に、第1のレンズ群62B及び第2のレンズ群63Bを有している。そして、その構成は、第1の格子干渉計64の第1のレンズ群62及び第2のレンズ群63と同様の構成を有しているため、その説明は、省略する。
【0103】
その他の構成は、第2の実施の形態にかかる変位検出装置31と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置61によっても、上述した第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31と同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
<4.第4の実施の形態例>
次に、図11を参照して本発明の変位検出装置の第4の実施の形態例について説明する。
図11は、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置71の光学系を示す側面図である。
【0105】
この第4の実施の形態例にかかる変位検出装置71は、光源3から直線偏光の光を照射させて、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31から第3の位相板41を無くしものである。そのため、ここでは、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0106】
図11に示す第4の実施の形態例にかかる変位検出装置71の光源3からは、直線偏光の光Lが照射される。第1の位相板39と、第2の位相板40は、例えば1/4波長板である。そして、第1の位相板39及び第2の位相板40は、直線偏光の2つの2回回折光L,−Lを互いに逆方向に回転する円偏光の光に偏光している。そのため、この第1の位相板39と第2の位相板40の結晶軸は、互いに直交する方向に向いている。
【0107】
互いに逆方向に回転する円偏光の2つの2回回折光L,−Lは、ビームスプリッタ17によって重ね合わされる。そして、この互いに逆回りの円偏光の光は、同一光路上にあるので、重ね合わされることにより回転する直線偏光となり、第1の偏光ビームスプリッタ42又は第2の偏光ビームスプリッタ46に入射される。
【0108】
その他の構成は、第2の実施の形態にかかる変位検出装置31と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置71によっても、上述した第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31と同様の作用効果を得ることができる。
【0109】
なお、この第4の実施の形態例にかかる変位検出装置71によれば、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置31よりも第3の位相板41の部品点数を削減することができる。
【0110】
<5.第5の実施の形態例>
次に、図12を参照して本発明の変位検出装置の第5の実施の形態例について説明する。
図12は、第5の実施の形態例にかかる変位検出装置81の光学系を示す側面図である。
【0111】
この第5の実施の形態例にかかる変位検出装置81は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1に第2の光源83を更に設けたものである。そのため、ここでは、第2の光源83について説明し、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0112】
図12に示すように、第1の格子干渉計84及び第2の格子干渉計85には、第1の光源3と、第2の光源83と、第2のビームスプリッタ88とを有している。第2のビームスプリッタ88は、第1の光源3から照射された光と、第2の光源83から照射された光を重ね合わせて、複合回折格子2の任意の照射スポットPに光を照射している。
【0113】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置81によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0114】
なお、この第5の実施の形態例にかかる変位検出装置81によれば、第1の光源3と、第2の光源83の波長が略等しい場合、第1の光源3と第2の光源83を交互に発光させることで、2つの光源の寿命を延ばすことができる。更に、第1の光源3が故障したり、不具合が発生したりしても、第2の光源83を予備光源として用いることで、長時間使用することができる。
【0115】
また、第1の光源3から照射される光と第2の光源83から照射される光は、それぞれ偏光軸が互いに直交した直線偏光であってもよい。この場合、第2のビームスプリッタ88は、偏光ビームスプリッタである。これにより、第1の光源3が寿命等で検出不可能になったときに、第2の光源83に切り換えることで、使用時間を延ばすことができる。更に、ビームスプリッタ17による光量ロスを最小限に抑えることも可能である。
【0116】
更に、第1の光源3から照射される光の波長と、第2の光源83から照射される光の波長が、互いに異なるように設定した場合、第2のビームスプリッタ88は、波長選択フィルタである。これにより、第1の格子干渉計84と、第2の格子干渉計85は、任意の照射スポットPを一致させた状態で、異なる光源の光を用いて干渉信号を得ることができる。その結果、高次の回折光や迷光が、互いの格子干渉計84,85に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0117】
<6.第6の実施の形態例>
次に、図13を参照して本発明の変位検出装置の第5の実施の形態例について説明する。
図13は、第6の実施の形態例にかかる変位検出装置91の光学系を示す側面図である。
【0118】
この第6の実施の形態例にかかる変位検出装置91と、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と異なる点は、複合回折格子を反射型から透過型に変えた点である。そのため、ここでは、複合回折格子及び反射手段について説明し、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0119】
図13に示すように、この第6の実施の形態例にかかる変位検出装置91の複合回折格子92は、透過型の回折格子である。その他の点は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1の複合回折格子2と同様であるため、その説明は、省略する。このような透過型の複合回折格子92の回折角も、反射型の複合回折格子2の回折角と同一の式(1)で表すことができる。
【0120】
図13に示すように、第1の格子干渉計94及び第2の格子干渉計95は、同一の構成を有しているため、ここでは、第1の格子干渉計94について説明する。また、第2の格子干渉計95を構成する構成要素において、第1の格子干渉計94と共通する部分には、第1の格子干渉計94の構成要素の符号にBを付けて示す。
【0121】
第1の格子干渉計94は、光源3と、レンズ11と、第1の反射手段102と、第2の反射手段103と、第1のミラー14と、第2のミラー16と、ビームスプリッタ17と、第1の受光手段18と、第2の受光手段19とを有している。
【0122】
第1の反射手段102と、第2の反射手段103は、複合回折格子92を間に挟んで、光源3と第3の方向Zの反対側に配置されている。第1の反射手段102及び第2の反射手段103には、複合回折格子92を透過し、回折した1回回折光L,−Lが入射される。すなわち、第1の反射手段102には、正の次数の1回回折光Lが入射され、第2の反射手段103には、負の次数の1回回折光−Lが入射される。
【0123】
そして、第1の反射手段102及び第2の反射手段103は、2つの1回回折光L,−Lが、複合回折格子92を透過した角度(回折角度)とは、異なる角度で、2つの1回回折光L,−Lを再び複合回折格子92に入射させている。
【0124】
そのため、複合回折格子92を透過し、再び回折された2回回折光L,−Lは、光源3から照射された光Lと異なる光路を通って、第1のミラー14又は第2のミラー16に入射される。
【0125】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置91によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0126】
<7.回折格子の変形例>
次に、図14及び図15を参照して、複合回折格子の変形例について説明する。
図14は、複合回折格子の第1の変形例を示す説明図である。図15は、複合回折格子の第2の変形例を示す説明図である。
【0127】
図14に示す複合回折格子112は、放射状にスリットsが形成されると共に、同心円状に略円弧状のスリットsが形成されている。この複合回折格子112は、いわゆるロータリーエンコーダーとして、回転移動する工作機械の可動部分等の位置検出を行うことができる。また、この複合回折格子112によれば、角度情報を検出しながら、第2の格子ベクトル方向Dの偏心成分も計測することが可能である。
【0128】
上述した実施の形態例の複合回折格子2では、第1の格子ベクトル方向C及び第2の格子ベクトル方向Dが、計測方向であった例を説明したが、これに限定される物ではない。例えば、図15に示す第2の変形例にかかる複合回折格子122のように、第1の格子ベクトル方向C及び第2の格子ベクトル方向Dが計測方向と一致していなくてもよい。
【0129】
図15に示すように、複合回折格子122は、第1の回折格子122aと、第2の回折格子122bとを有している。第1の回折格子122aの格子ピッチΛaは、d1に設定されており、第2の回折格子の格子ピッチΛbは、d2に設定されている。
【0130】
そして、第2の回折格子122bの第2の格子ベクトル方向Dは、複合回折格子122の面と平行で、且つ第1の回折格子122aの第1の格子ベクトル方向Cに対して角度θ傾いている。そして、複合回折格子122は、第2の格子ベクトル方向Dを第1の計測方向Xに対して角度θ傾けると共に、第2の計測方向Yに対して角度θ傾けて配置されている。
【0131】
ここで、角度θ=90°とし、角度θ=角度θ=45°とした場合、第1の計測方向Xの変位を求めるには、第1の回折格子122aの格子ピッチΛaもしくは第2の回折格子122bの格子ピッチΛbの√2倍長くなると考えるとよい。なお、第2の計測方向Yの変位も同様に求めることができる。
【0132】
このように、第1の格子ベクトル方向C及び第2の格子ベクトル方向Dと、第1の計測方向X及び第2の計測方向Yが一致していなくてもよい。すなわち、第1の回折格子122a及び第2の回折格子122bの格子ピッチからの情報を元に2次元の変位量を検出することができる。
【0133】
一般に、変位検出の応答速度は、光電変換された後の電子信号の処理で制限がかかっている。そのため、回折格子の格子ピッチの間隔が細かくなるほど、同じ移動速度での電気信号の周波数が上がってしまう。図15に示す複合回折格子122のように、格子ベクトル方向を計測方向に対して傾けることで、特に速度を有する場合に、周波数を軽減させて対応することができる。
【0134】
その結果、図15に示す複合回折格子122によれば、同じ測定軸方向の移動速度の条件で、格子ベクトル方向と計測方向と一致させた複合回折格子に比べて、電子信号の周波数を1/√2に落とすことが可能である。
【0135】
よって、例えば半導体露光装置のウエアステージと、レクチルステージとでは、レクチルステージは、ウエアステージよりも分解能を必要としていないものの、ウエアステージよりも数倍の速さで移動している。よって、レクチルステージには、図15に示す複合回折格子122を用いることが有効であることが分かる。
【0136】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施の形態例では、回折格子として第1の回折格子と第2の回折格子を有する複合回折格子を用いると共に、2つの格子干渉計を用いて、2次元の変位量を検出する例を説明した。しかしながら、1つの格子干渉計を用いて1次元の変位量を検出する変位検出装置であってもよい。なお、この場合、回折格子は、一方向の格子ベクトル方向しか有さない回折格子で十分である。
【0137】
また、光源から照射される光は、気体中だけでなく、液体中又は真空中の空間を飛ばして光を供給するようにしてもよい。更に、受光手段の受光素子は、光ファイバによって離れた位置に配置してもよい。これにより、相対位置情報出力手段等の電気通信部との距離を短くすることができ、高速応答化を図ることができる。
【符号の説明】
【0138】
1,31,61,71,81,91…変位検出装置、 2,92,112,122…複合回折格子、 2a…第1の回折格子、 2b…第2の回折格子、 3…光源、 4,34,84…第1の格子干渉計、 5,35,85,94…第2の格子干渉計、 6,95…第1の相対位置情報出力手段、 7…第2の相対位置情報出力手段、 11…レンズ、 12,12B,102,102B…第1の反射手段、 13,13B,103,103B…第2の反射手段、 14,14B…第1のミラー、 16,16B…第2のミラー、 17,17B…ビームスプリッタ、 18,18B…第1の受光手段、 19,19B…第1の受光手段、 37,37B…第1のレンズ、 38,38B…第2のレンズ、 39,39B…第1の位相板、 40,40B…第2の位相板、 41,41B…第3の位相板、 42,42B…第1の偏光ビームスプリッタ、 43,43B…第1の受光素子、 44,44B…第2の受光素子、 46,46B…第2の偏光ビームスプリッタ、 47,47B…第3の受光素子、 48,48B…第4の受光素子、 62…第1のレンズ群、 62a…第1レンズ、 62b…第2レンズ、 63…第2のレンズ群、 63a…第1レンズ、 63b…第2レンズ、 83…第2の光源、 88…ビームスプリッタ、 C…第1の格子ベクトル方向、 D…第2の格子ベクトル方向、 L,−L…1回回折光、 L,−L…2回回折光、 P…照射スポット、 θ…第1の出射角度、 θ…入射角度、 θ…第2の出射角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を回折する略平板状の回折格子と、
前記回折格子に光を照射し、正負の次数の2つの光に回折し、且つ回折された2つの光を干渉させると共に干渉信号を生成する格子干渉計と、
前記格子干渉計によって生成した前記干渉信号から前記回折格子の相対位置情報を検出する相対位置情報出力手段と、を備え、
前記格子干渉計は、
前記回折格子に光を照射する光源と、
前記回折格子によって回折された1回回折光を反射させて、前記光源からの前記光が照射された位置とほぼ同じ位置に再び入射させる反射手段と、
前記回折格子によって2回回折された2つの2回回折光を重ね合わせるビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって重ね合わされた前記2回回折光を受信して干渉信号を生成する受信手段と、を有し、
前記反射手段は、前記光源から前記回折格子への入射角度及び、前記1回回折光が前記回折格子を透過又は反射した角度と異なる角度で前記回折格子に前記1回回折光を入射させる
変位検出装置。
【請求項2】
前記回折格子と前記反射手段の間には、レンズが設けられている
請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記回折格子は、
光が照射される面と平行をなす第1の格子ベクトル方向に並ぶ第1の回折格子と、
前記面と平行で、且つ前記第1の格子ベクトル方向から所定の角度で傾いた第2の格子ベクトル方向に並ぶ第2の回折格子と、を有する複合回折格子であり、
前記格子干渉計は、
前記第1の回折格子に回折された前記光の干渉信号を生成する第1の格子干渉計と、
前記第2の回折格子に回折された前記光の干渉信号を生成する第2の格子干渉計と、からなり、
前記第1の格子干渉計と前記第2の格子干渉計は、前記光源からの前記光が照射された位置を通り、且つ前記面と直交する第3の方向回りに所定の角度をもって回転させて配置されている
請求項1又は2に記載の変位検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−2787(P2012−2787A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140904(P2010−140904)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】