説明

変位量検出装置

【課題】変位センサの電気的失陥と機構的失陥とを、故障検知方法やシステムを複雑化することなく簡便且つ正確に検出すること。
【解決手段】センサ軸24は連結部34によるペダル10との機械的な連結を解かれた状態ではセンサ本体22に対して正常時の相対変位レンジを超える位置に変位する設定になっており、センサ出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より大きい所定の上限設定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より小さい所定の下限設定値を下回った場合には異常判定を行う電気的異常判定手段と、センサ出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より所定量大きい設定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より所定量小さい設定値を下回るった場合には異常判定を行う機構的失陥異常判定手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量検出装置に関し、特に、変位センサを用いた変位量検出装置の故障検知に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルやブレーキと云った車両の重要操作系のバイワイヤシステム化が進むに連れて、ペダルの踏込量を検出する変位センサ(ストロークセンサ)の適用頻度が高まり、それに伴って故障検知の方法及びシステムの重要性が益々高まっている。変位センサの故障検知には、電源側短絡(天絡)や地絡と云った電気的異常の検出がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−63911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、変位センサの故障検知が重要であるが故に、その故障検知方法や故障検知システムが複雑になりがちである。しかも、バイワイヤシステムに用いられる変位センサにおいて、電源側短絡、地絡と云った電気的異常の検出以外に、変位検出対象物であるペダルと変位センサとを機械的に連結(接続)するリンク機構等による連結部の破損、破壊による機構的失陥も検出しようとすると、変位センサの故障検知方法やシステムは、より一層複雑なものになる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、変位センサの電気的異常と機構的失陥の双方を、故障検知方法やシステムを複雑化することなく簡便且つ正確に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による変位量検出装置は、固定物に対して所定範囲内を変位する変位検出対象物の変位量を検出する変位量検出装置であって、互いに相対変位可能な第1の部材(22)と第2の部材(24)とを有し、前記第1の部材(22)と前記第2の部材(24)との相対変位に応じて電気的な出力値を変化する変位センサ(20)を含み、前記第1の部材(22)が前記固定物側に固定配置で、前記第2の部材(24)が連結部(34)によって前記変位検出対象物(10)と機械的に連結され、当該連結によって前記第1の部材(22)と前記第2の部材(24)との相対変位レンジが所定値に設定される変位量検出装置であって、前記第2の部材(24)は前記連結部(34)による前記変位検出対象物(10)との機械的な連結を解かれた状態では前記第1の部材(22)に対して前記相対変位レンジを超える位置に変位する設定になっており、前記出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より大きい所定の上限設定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より小さい所定の下限設定値を下回った場合には異常判定を行う電気的異常判定手段(112、114)と、前記出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より所定量大きい機構的失陥判定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より所定量小さい機構的失陥判定値を下回るった場合には異常判定を行う機構的失陥異常判定手段(116)とを有する。
【0007】
この構成によれば、電源側短絡、地絡と云った電気的異常の検出と連結部の機構的失陥の検出の双方が変位センサ(20)の出力値と設定値との比較、つまり同じ判定アルゴリズムによって行われるので、変位センサ(20)の電気的異常と機構的失陥の双方が、故障検知方法やシステムを複雑化することなく簡便且つ正確に検出される。
【0008】
本発明による変位量検出装置は、好ましくは、前記相対変位レンジにおける最大値より所定量大きい前記機構的失陥判定値が前記上限設定値と同値、あるいは前記相対変位レンジにおける最小値より所定量小さい前記機構的失陥判定値が前記下限設定値と同値である。
【0009】
この構成によれば、電気的異常を検出するための判定手段と機構的失陥を検出するための判定手段とを兼用できる。
【0010】
本発明による変位量検出装置は、好ましくは、前記第2の部材(24)は、前記連結部(34)によって前記変位検出対象物(10)と機械的に連結された状態では、重力に抗して変位した位置にあり、前記連結部(34)による前記変位検出対象物(10)との機械的な連結を解かれた状態では、重力によって前記第1の部材(22)に対して前記相対変位レンジを超える位置に変位するように設けられている。
【0011】
この構成によれば、特別な機構を追加することなく、前記連結部(34)による前記変位検出対象物(10)との機械的な連結が解かれると、前記第2の部材(24)が前記第1の部材(22)に対して前記相対変位レンジを超える位置に変位する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による位量検出装置によれば、電気的異常の検出と連結部の機構的失陥の検出の双方が変位センサの出力値と設定値との比較、つまり同じ判定アルゴリズムによって行われるので、変位センサの電気的異常と機構的失陥の双方が、故障検知方法やシステムを複雑化することなく簡便且つ正確に検出される
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態1を示す正常状態時の説明図。
【図2】実施形態1の機構的失陥状態時の説明図。
【図3】実施形態1の電気系統のブロック図。
【図4】実施形態1のセンサ出力特性を示すグラフ。
【図5】本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態2を示す正常状態時の説明図。
【図6】実施形態2の機構的失陥状態時の説明図。
【図7】実施形態2の要部の断面図。
【図8】本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態3を示す正常状態時の説明図。
【図9】実施形態3の機構的失陥状態時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態1を、図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
本実施形態では、ブレーキペダル10が変位検出対象物である。ブレーキペダル10は、支持軸14によって車体(図示省略)より回動可能に支持されている。
【0016】
ブレーキペダル10は、図示されていないばねのばね力によって反時計廻り方向に付勢され、車体(図示省略)に固定配置の解放位置ストッパ16に当接することにより、踏み込まれていない状態での位置、つまり解放位置を設定される。ブレーキペダル10は、踏み込まれることにより、前記ばね力に抗して時計廻り方向に回動し、最大踏込位置は、ブレーキペダル10に接続される図示されていないマスタシリンダ装置によって規定される。これにより、ブレーキペダル10の回動範囲が設定される。
【0017】
なお、図示されていないが、ブレーキペダル10には、当該ブレーキペダル10の踏み込みに対して反力を与えるシリンダ装置が接続され、ブレーキバイワイヤ式でない従来のブレーキ装置と同等のペダル踏込感が運転者に与えるようになっている。
【0018】
ブレーキペダル10の踏込量を定量的に検出する変位センサ20がブレーキペダル10の近傍に設けられている。変位センサ20は、回転型のものであり、車体(図示省略)に固定されたセンサ本体22と、センサ本体22に回転可能に設けられたセンサ軸24とを有し、センサ軸24がセンサ本体22に対して回転変位することにより、その回転角に応じて電圧等の電気的なセンサ出力値Vを変化する。本実施形態では、センサ本体22が第1の部材であり、センサ軸24が第2の部材である。なお、変位センサ20としては、ポテンショメータ式、差動変圧式、レゾルバ式、光学式等がある。
【0019】
センサ軸24には連結アーム26の基端部が固定されている。連結アーム26の先端側にはアーム長方向に長い長孔28が形成されている。ブレーキペダル10の端部には連結ロッド30が取り付けられている。連結ロッド30の先端部には連結ピン32が取り付けられている。連結ピン32は長孔28に移動可能に係合している。
【0020】
これらによりセンサ軸24とブレーキペダル10とを機械的に連結する連結部34が構成され、センサ軸24はブレーキペダル10の踏み込みに応じて図1で見て時計廻り方向に回動する。この実施形態では、センサ出力値Vは、図4に示されているように、センサ軸24の時計廻り方向の回転角の増大、つまりセンサ変位量dの増大に比例して増大する。
【0021】
このセンサ軸24とブレーキペダル10との機械的連結により、センサ軸24の最大回転角θmax(図1参照)はブレーキペダル10の最大踏込量により決まり、回転型の変位センサ20では、最大回転角θmaxがセンサ本体22とセンサ軸24との相対変位レンジLを設定することになる。そして、ブレーキペダル10が解放位置にある時のセンサ出力値Vは、相対変位レンジLにおける最小値Vminであり、ブレーキペダル10が最大踏込位置にある時のセンサ出力値Vは、相対変位レンジLにおける最大値Vmaxである。
【0022】
連結部34によってセンサ軸24とブレーキペダル10とが機械的に連結されている状態では、つまり、センサ軸24がセンサ本体22に対して相対変位レンジL内の回転位置にある状態では、図1に示されているように、連結アーム26がセンサ軸24の中心を鉛直線に対して或る角度をもって延在し、センサ軸24が連結アーム26と共に重力に抗して変位した回転位置に位置する初期設定になっている。
【0023】
これにより、センサ軸24がブレーキペダル10との機械的な連結を解かれると、センサ軸24は、図2に示されているように、重力によって連結アーム26がセンサ軸24より真下に垂れ下がる回転位置まで回動することに伴って最大回転角θmaxを超えて時計廻り方向に回動し、センサ本体22に対して相対変位レンジLを超えた回転位置に変位することになる。
【0024】
この重力による動きが、より確実に行われるよう、センサ軸24の中心より偏心した位置、本実施形態では、連結アーム26の中間部に重錘36が取り付けられている。更には、連結アーム26が時計廻り方向にばね付勢されていてもよい。
【0025】
変位センサ20の出力信号、つまりセンサ出力値Vによる電圧信号は、図3に示されているように、ブレーキ制御部100と、異常判定部110とに入力される。バイワイヤブレーキ制御部100と異常判定部110はマイクロコンピュータを含む電子制御装置により構成されている。
【0026】
バイワイヤブレーキ制御部100は、センサ出力値Vに応じたブレーキ力が生じる制御のための指令信号をブレーキアクチュエータ102に出力する。これにより、電動−液圧シリンダ装置の電動機等によるブレーキアクチュエータ102がセンサ出力値Vに応じて駆動され、バイワイヤ式ブレーキ作用が得られる。
【0027】
異常判定部110は、電源側短絡(天絡)判定部112と、地絡判定部114と、機構的失陥判定部116とを含む。本実施形態では、電源側短絡判定部112と地絡判定部114とが電気的異常判定部をなす。
【0028】
電源側短絡判定部112は、センサ出力値Vと相対変位レンジLにおける最大値Vmaxより所定量大きい上限設定値Ves(図4参照)とを比較し、センサ出力値Vが上限設定値Vesを上回った場合に、電源側短絡であるとする異常判定を出力する。
【0029】
地絡判定部114は、センサ出力値Vと相対変位レンジLにおける最小値Vminより所定量小さい下限設定値Veeとを比較し、センサ出力値Vが下限設定値Veeを下回った場合に、地絡であるとする異常判定を出力する。
【0030】
機構的失陥判定部116は、センサ出力値Vと相対変位レンジLにおける最大値Vmaxより所定量大きい機構的失陥判定値Vem(図4参照)とを比較し、センサ出力値Vが機構的失陥判定値Vemを上回った場合に、連結部34が破損した機構的失陥であるとする異常判定を出力する。
【0031】
図2に示されているように、連結部34が破損したことにより、センサ軸24とブレーキペダル10との機械的な連結が解かれると、センサ軸24は、重力によって連結アーム26がセンサ軸24より真下に垂れ下がる回転位置まで回動することに伴って最大回転角θmaxを超えて時計廻り方向に回動し、センサ本体22に対して相対変位レンジLを超えた回転位置に変位する。これにより、センサ出力値Vが相対変位レンジLにおける最大値Vmaxより大きくなる。
【0032】
従って、機構的失陥判定部116によるセンサ出力値Vと機構的失陥判定値Vemとの比較によって、機構的失陥の判定を、上述の電源側短絡判定や地絡判定と同じ判定アルゴリズムによって簡便且つ確実に行うことができる。
【0033】
機構的失陥の判定を行う閾値である機構的失陥判定値Vemは、図4に示されているような判定マージン値Δdの設定により、電源側短絡判定の閾値である上限設定値Vesと同値とすることができる。この場合には、電源側短絡判定部112が機構的失陥判定部116を兼ねることになり、機構的失陥判定のための比較部を別途設ける必要がなくなり、機構的失陥判定を含めた異常判定部110が冗長なものになることがない。
【0034】
このように、連結部34によるセンサ軸24とブレーキペダル10との機械的な連結を解かれると、センサ軸24が重力によってセンサ本体22に対して相対変位レンジLを超える位置に変位し、センサ出力値Vが機構的失陥判定値Vemあるいは機構的失陥判定値Vem=上限設定値Vesを上回る設定だけで、電気的失陥を判定する仕組みと同じ仕組みで機構的失陥の判定を行うことができ、故障検出のシステムが複雑化することがない。
【0035】
なお、異常判定部110の判定出力によってインジケータの点灯、モニタ表示等が行われればよく、運転者に異常を知らせることができる。
【0036】
次に、本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態2を、図5〜図7を参照して説明する。なお、図5〜図7において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0037】
本実施形態では、ブレーキペダル10は、前述の実施形態と同様に、車体(図示省略)に固定された支持部材40(図7参照)に取り付けられた支持軸14によって車体(図示省略)より回動可能に支持されている。
【0038】
変位センサ20は、センサ本体22と、センサ本体22に回転可能に設けられたセンサ軸24とを有する回転型のものであり、センサ本体22がブレーキペダル10の支持軸14と同一軸線上に配置されて連結ピン42(図7参照)によってブレーキペダル10に連結され、センサ軸26が支持部材40に固定されている。センサ本体22にはセンサ中心(センサ本体22の回転中心で、センサ軸24と同心)に対して偏心した位置に重錘36が取り付けられている。これにより、重錘36を含むセンサ本体22の重心は、センサ本体22の回転中心より径方向外方に偏った位置にある。
【0039】
この場合、センサ本体22が第2の部材、センサ軸24が第1の部材となり、ブレーキペダル10の踏み込みによってセンサ本体22がセンサ軸24に対して反時計廻り方向に回転変位することにより、センサ出力値Vが、図4に示されているように、その回転角の増大、つまりセンサ変位量dの増大に比例して増大する。
【0040】
連結ピン42によるセンサ本体22とブレーキペダル10との機械的連結により、センサ本体22の最大回転角θmax(図5参照)は、実施形態1と同様にブレーキペダル10の最大踏込量により決まり、回転型の変位センサ20では、最大回転角θmaxがセンサ本体22とセンサ軸24との相対変位レンジLを設定することになる。そして、本実施形態でも、ブレーキペダル10が解放位置にある時のセンサ出力値Vは、相対変位レンジLにおける最小値Vminであり、ブレーキペダル10が最大踏込位置にある時の変位センサ20の出力値Vは、相対変位レンジLにおける最大値Vmaxである。
【0041】
連結ピン42によってセンサ本体22とブレーキペダル10とが機械的に連結されている状態では、つまり、センサ本体22がセンサ軸24に対して相対変位レンジL内の回転位置にある状態では、図5に示されているように、重錘36がセンサ軸24の中心を鉛直線に対して或る角度をもって延在し、センサ本体22が重錘36と共に重力に抗して変位した回転位置に位置する初期設定になっている。
【0042】
これにより、連結ピン42の破損等によってセンサ本体22がブレーキペダル10との機械的な連結を解かれると、センサ本体22は、図6に示されているように、重力によって重錘36がセンサ軸24より真下に垂れ下がる回転位置まで回動することに伴って最大回転角θmaxを超えて反時計廻り方向に回動し、センサ軸24に対して相対変位レンジLを超えた回転位置に変位することになる。このセンサ本体22の反時計廻り方向の回動が、より一層確実に行われるよう、センサ本体22が反時計廻り方向にばね付勢されていてもよい。
【0043】
変位センサ20のセンサ出力値Vは、実施形態1と同様に、図4に示されているように、ブレーキ制御部100と、異常判定部110とに入力される。
【0044】
図6に示されているように、連結ピン42が破損したことにより、センサ本体22とブレーキペダル10との機械的な連結が解かれると、センサ本体22は、重力によって重錘36がセンサ軸24より真下に垂れ下がる回転位置まで最大回転角θmaxを超えて反時計廻り方向に回動し、センサ軸24に対して相対変位レンジLを超えた回転位置に変位する。これにより、本実施形態でも、センサ出力値Vが相対変位レンジLにおける最大値Vmaxより大きくなる。
【0045】
従って、本実施形態でも、機構的失陥判定部116によるセンサ出力値Vと機構的失陥判定値Vemとの比較によって、機構的失陥の判定を、上述の電源側短絡判定や地絡判定と同じ判定アルゴリズムによって簡便且つ確実に行うことができる。また、本実施形態でも、機構的失陥の判定を行う閾値である機構的失陥判定値Vemは、図4に示されているような判定マージン値Δdの設定により、電源側短絡判定の閾値である上限設定値Vesと同値とすることができる。
【0046】
次に、本発明による変位量検出装置を自動車のバイワイヤ式ブレーキ装置のブレーキペダル踏込量検出装置に適用した実施形態3を、図8、図9を参照して説明する。
【0047】
本実施形態では、直線型の変位センサ50が用いられている。変位センサ50は、基端部を枢軸60によって車体の固定側部材62に揺動可能に取り付けられたセンサ本体52と、センサ本体52に長手方向にスライド可能に設けられたスライドロッド54とを有し、スライドロッド54がセンサ本体52に対して直線的に変位することにより、その直線変位量に応じて電圧等の電気的なセンサ出力値Vを変化する。本実施形態では、センサ本体52が第1の部材であり、スライドロッド54が第2の部材である。なお、変位センサ50としては、ポテンショメータ式、差動変圧式、渦電流式、光学式等がある。
【0048】
スライドロッド54は連結ピン56によってブレーキペダル10の連結ロッド30と枢動可能に連結されている。これにより、ブレーキペダル10とスライドロッド54とが機械的に連結され、ブレーキペダル10の踏み込みに応じてスライドロッド54が伸長方向に変位する。この実施形態では、センサ出力値Vは、図4に示されているように、スライドロッド54が伸長量の増大、つまりセンサ変位量dの増大に比例して増大する。
【0049】
スライドロッド54とブレーキペダル10との機械的連結により、スライドロッド54の最大伸長量はブレーキペダル10の最大踏込量により決まり、センサ本体52とスライドロッド54との相対変位レンジLを設定することになる。そして、本実施形態でも、ブレーキペダル10が解放位置にある時のセンサ出力値Vは、相対変位レンジLにおける最小値Vminであり、ブレーキペダル10が最大踏込位置にある時のセンサ出力値Vは、相対変位レンジLにおける最大値Vmaxである。
【0050】
スライドロッド54とブレーキペダル10とが機械的に連結されている状態では、つまり、スライドロッド54がセンサ本体54に対して相対変位レンジL内の伸長位置にある状態では、図8に示されているように、変位センサ50全体が中心を鉛直線に対して或る角度をもって延在し変位センサ50が重力に抗して変位した傾斜位置に位置する初期設定になっている。
【0051】
これにより、センサ軸24がブレーキペダル10との機械的な連結を解かれると、変位センサ50は、図9に示されているように、重力(自重)によって枢軸60による取付部より下方に垂直に垂れ下がると共に、スライドロッド54が相対変位レンジLを超えて下方に伸長することになる。
【0052】
この重力によるスライドロッド54の伸長が、より確実に行われるよう、スライドロッド5の先端近傍に重錘58が取り付けられている。更には、スライドロッド54が伸長側にばね付勢されていてもよい。
【0053】
変位センサ50のセンサ出力値Vは、実施形態1と同様に、図4に示されているように、ブレーキ制御部100と、異常判定部110とに入力される。
【0054】
図9に示されているように、連結ピン56の破損等によってスライドロッド54とブレーキペダル10との機械的な連結が解かれると、変位センサ50の全体が重力(自重)によって枢軸60による取付部より下方に垂直に垂れ下がると共に、スライドロッド54が相対変位レンジLを超えて下方に伸長することになるので、センサ出力値Vが相対変位レンジLにおける最大値Vmaxより大きくなる。
【0055】
従って、本実施形態でも、機構的失陥判定部116によるセンサ出力値Vと機構的失陥判定値Vemとの比較によって、機構的失陥の判定を、上述の電源側短絡判定や地絡判定と同じ判定アルゴリズムによって簡便且つ確実に行うことができる。また、本実施形態でも、機構的失陥の判定を行う閾値である機構的失陥判定値Vemは、図4に示されているような判定マージン値Δdの設定により、電源側短絡判定の閾値である上限設定値Vesと同値とすることができる。
【0056】
なお、変位センサ20、50は、センサ出力値Vがセンサ変位量dの増大に比例して減少する出力特性を有するものであってもよく、この場合には、機構的失陥判定部116による機構的失陥判定は、センサ出力値Vが相対変位レンジLにおける最小値Vminより小さい所定の設定値を下回ったか否かの判別を行えばよい。そして、この場合の設定値は、下限設定値Veeと同値であってよい。
【符号の説明】
【0057】
10 ブレーキペダル
20 変位センサ
22 センサ本体
24 センサ軸
34 連結部
36 重錘
42 連結ピン
50 変位センサ
52 センサ本体
54 スライドロッド
56 連結ピン
100 バイワイヤ式ブレーキ制御部
110 異常判定部
112 電源側短絡判定部
114 地絡判定部
116 機構的失陥判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定物に対して所定範囲内を変位する変位検出対象物の変位量を検出する変位量検出装置であって、
互いに相対変位可能な第1の部材と第2の部材とを有し、前記第1の部材と前記第2の部材との相対変位に応じて電気的な出力値を変化する変位センサを含み、
前記第1の部材が前記固定物側に固定配置で、前記第2の部材が連結部によって前記変位検出対象物と機械的に連結され、当該連結によって前記第1の部材と前記第2の部材との相対変位レンジが所定値に設定され、
前記第2の部材は前記連結部による前記変位検出対象物との機械的な連結を解かれた状態では前記第1の部材に対して前記相対変位レンジを超える位置に変位する設定になっており、
前記出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より大きい所定の上限設定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より小さい所定の下限設定値を下回った場合には異常判定を行う電気的異常判定手段と、
前記出力値が前記相対変位レンジにおける最大値より所定量大きい機構的失陥判定値を上回った場合、あるいは前記出力値が前記相対変位レンジにおける最小値より所定量小さい機構的失陥判定値を下回るった場合には異常判定を行う機構的失陥異常判定手段と、
を有する変位量検出装置。
【請求項2】
前記相対変位レンジにおける最大値より所定量大きい前記機構的失陥判定値が前記上限設定値と同値、あるいは前記相対変位レンジにおける最小値より所定量小さい前記機構的失陥判定値が前記下限設定値と同値である請求項2に記載の変位量検出装置。
【請求項3】
前記第2の部材は、前記連結部によって前記変位検出対象物と機械的に連結された状態では、重力に抗して変位した位置にあり、前記連結部による前記変位検出対象物との機械的な連結を解かれた状態では、重力によって前記第1の部材に対して前記相対変位レンジを超える位置に変位するように設けられている請求項1または2に記載に変位量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207955(P2012−207955A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72212(P2011−72212)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】